映画・テレビ

2025年11月16日 (日)

(3233) イコライザー THE FINAL

【監督】アントワーン・フークア
【出演】デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、アンドレア・スカルドゥッツィオ、アンドレア・ドデーロ、レモ・ジローネ
【制作】2023年、アメリカ

悪と戦う元DIAエージェントの活躍を描いたアクション映画。「イコライザー2」(2018)の続編。

マフィアのアジトに潜入した元DIAエージェント、ロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、ボス(ブルーノ・ビロッタ)を倒し、彼の持っていた鍵を手に入れる。ところが去り際、車の中に一人残っていたマフィア一家の少年を始末せず、少年に背中を見せたところ、少年に背中を撃たれてしまう。瀕死のロバートを発見した国家憲兵のジオ・ボヌッチ(エウジェニオ・マストランドレア)は、ロバートを地元の医者、エンゾ(レモ・ジローネ)のもとに連れて行く。エンゾは、ロバートの素性を詮索せず彼を治療。ロバートは、彼らの町、アルタモンテを気に入る。
ところが、ビンセント・クアランタ(アンドレア・スカルドゥッツィオ)率いるマフィアが、街の人々の生活を脅かす。彼らは代替覚醒剤の密売に関与し、テロリストの資金源にもなっていた。ビンセントの弟マルコ(アンドレア・ドデーロ)は、捜査を進めるジオをリンチ。ロバートは、ジオを脅しにレストランに来たマルコに、街から手を引けと忠告するが、マルコは老いた黒人の言うことを聞くはずもない。ロバートは、マルコと手下を始末する。
弟を殺されたビンセントは、弟を殺した人物を教えろ、と街の人々を脅す。ロバートは堂々とビンセントの前に現れ、ビンセントに宣戦布告。衆人環視の中、ビンセントはやむなく一度引き上げ、ロバートの殺害を決めるが、ロバートはビンセントのアジトに潜入し、手下もろともビンセント一味を圧倒。ビンセントは、ロバートによって代替覚醒剤を過剰摂取させられ、命を落とす。アルタモンテの街に平和が訪れ、ロバートは街の人々の歓喜の輪に入っていくのだった。

爽快な勧善懲悪娯楽作品。悪者はとにかくステレオタイプな悪者。いい人はとにかくいい人。高齢者のロバートは、決して主人公アビリティ全開の無敵キャラという訳ではない。相手の倒し方は不意打ちだし、殺す価値のないような雑魚まで容赦なく殺害する。やり過ぎじゃないの、という感想も出そうなダークヒーローだが、本作では、序盤に少年を殺さず自らは致命傷を受けるという、ハンディキャップを描きながら、そこから復活して極悪非道の悪者を倒すという筋書きになっており、主人公に肩入れしたくなる要素をうまく盛り込んでいた。ロバートがマフィアから取り戻したかったのは、退職金をネット上で奪われた老夫婦の退職金を取り戻すことだった、という鼠小僧的なヒーロー像もラストに織り込まれていた。格調の高い作品ではないが、デンゼル・ワシントンの代表作だろう。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年11月15日 (土)

(3232) ミッチェル家とマシンの反乱

【監督】マイク・リアンダ
【出演】アビ・ジェイコブソン(声)、ダニー・マクブライド(声)、マーヤ・ルドルフ(声)、マイク・リアンダ(声)、オリビア・コールマン(声)
【制作】2021年、アメリカ

AIと戦う家族の絆を描いた3DCGアニメ作品。

ミッチェル家の長女ケイティ(アビ・ジェイコブソン)は、何かと干渉してくる父親、リック(ダニー・マクブライド)と折り合いが悪く、カリフォルニアでの新たな大学生活を楽しみにしていた。リックは家族関係を修復するため、ケイティのカリフォルニア行きの航空チケットをキャンセルし、母親のリンダ(マーヤ・ルドルフ)、ケイティの弟アーロン(マイク・リアンダ)、飼い犬のモンチとともに、一人暮らしを始めるケイティを、車でカリフォルニアに送ることにする。
スマホのAIアシスタント、パルの生みの親、マーク・ボウマン(エリック・アンドレ)は、新たなロボット型AIアシスタント、パルマックスを生み出すが、粗末に扱われたパル(オリビア・コールマン)が人類に反乱を起こし、パルマックスをしもべとして、人類を宇宙に排除する計画を始める。ミッチェル家は、ぎこちないながらも、協力しながらパルの操るロボットたちと戦い、携帯端末であるパルをコップの中の水に沈めることに成功。家族の絆を取り戻し、ケイティはリックと抱き合った後、新たな大学生活を始めるのだった。

人類に対するAIの逆襲という古典的な設定を絡めながら、家族が協力して戦い、絆と互いの信頼を取り戻していくお話。3DCGによるアクションは賑やかで楽しく、独創的だが、物語としてはよくある展開だった。ファービー人形が登場したり、映画のタイトルがネタになったり、にやりとさせる演出がところどころあった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年11月14日 (金)

(3231) ガメラ2 レギオン襲来

【監督】金子修介
【出演】水野美紀、永島敏行、吹越満、藤谷文子、石橋保、螢雪次朗、川津祐介、長谷川初範、渡辺裕之、ラサール石井
【制作】1996年、日本

ガメラとレギオンの戦いを描いた怪獣映画。「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995)の続編。次作は「ガメラ3 邪神覚醒」(1999)。

北海道に隕石が飛来。しかし、飛来物は消えていた。札幌市青少年科学館の学芸員、穂波碧(みどり)(水野美紀)は、飛来物が移動していることに気づく。札幌の地下鉄線路内で、未知の生物が地下鉄車両を襲撃。デパートの建物を突き破って、巨大な草体が出現する。群体の生物と草体は、地球上のハキリアリとアリタケのような共生関係にあるようだった。草体は大きな花を咲かせる。碧は、同僚の帯津(おびつ)(吹越満)のシミュレーション分析により、草体が、札幌が壊滅するほどの爆発を起こして、宇宙に向かって種子を飛ばそうとしていることに気づく。そこにガメラが現れ、大きな花を倒し、爆発を防ぐ。
仙台に新たな草体が出現し、札幌から飛び去った巨大怪獣レギオンが現れる。そこにガメラが飛来し、レギオンと交戦する。ガメラと通じ合う能力を持つ草薙浅黄(あさぎ)(藤谷文子)は、ガメラが人々を守ってくれていると感じる。ガメラはレギオンを倒すと、爆発を起こそうとしている草体をなぎ倒すが、爆発を防ぐことはできず、仙台の都市は大爆発により壊滅し、ガメラも爆発に巻き込まれ焼け焦げて動かなくなってしまう。
陸上自衛隊の渡良瀬佑介(永島敏行)は、レギオンが電磁波の多い都市を狙っていることを知り、次の標的が東京になると予想。政府はレギオンの首都侵入を防ぐため、足利でレギオンを迎撃するが、歯が立たない。浅黄と碧は仙台に行き、子どもたちとともに、動かなくなったガメラに祈りを捧げる。するとガメラが復活し、レギオンに向かって飛翔する。ガメラはレギオンを攻撃し、最後は腹部から強力な光線を放射し、レギオンを倒すと、空に向かって飛び立つ。指揮を執った師団長(辻萬長(かずなが))が作戦の終了を宣言し、隊員たちは喜び合う。雪まつりの開かれている札幌で、碧は渡良瀬に、地球の生態系を守るガメラを、人類が敵に回さないようにしないと、と語るのだった。

前作同様、着ぐるみとミニチュア模型、派手な爆破演出の作品。水野美紀が常にスカート姿で、やたらと美脚を披露して(というよりさせられて)いた。前作でギャオスの出現に遭遇した長崎県警の警官だった大迫(螢雪次朗)が、本作ではビール会社の警備員に転職して、またもレギオンの群体を発見する役どころだったり、共通する登場人物と俳優が何人かいたので、前作を観た方が楽しめるだろう。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年11月13日 (木)

(3230) ガメラ 大怪獣空中決戦

【監督】金子修介
【出演】伊原剛志、中山忍、小野寺昭、藤谷文子、螢雪次朗、本田博太郎、長谷川初範
【制作】1995年、日本

ガメラとギャオスの戦いを描いた大怪獣映画。「宇宙怪獣ガメラ」(1980)の続作。次作は「ガメラ2 レギオン襲来」(1996)。

プルトニウムを運搬する船が、動く環礁に座礁。海上保安庁の米森良成(伊原剛志)は、環礁の調査に加わる。同じ頃、五島列島の姫神島(ひめがみじま)で巨大怪鳥が目撃される。鳥類学者の長峰真弓(中山忍)は、環境庁審議官の斎藤雅昭(本田博太郎)から、怪鳥の捕獲を命じられ、長崎県警の大迫力(おおさこつとむ)(螢雪次朗)のアイディアで、福岡ドームに怪鳥をおびき寄せることにする。三羽の怪鳥は、ヘリの誘導で福岡ドームに入り込むが、屋根が閉まる前に麻酔銃を撃ってしまい、一羽は逃げる。そこに巨大な環礁の正体、ガメラが現れ(このときはまだ名付けられていないが)、逃げる怪鳥をはたき落とし、街を破壊しながら福岡ドームに張り付く。残る二羽は、口から光線を発して檻を切り裂き、飛び去る。ガメラも、回転しながら飛び去っていく。
怪鳥ギャオスは人を襲うが、ガメラは人を守り、米森は、ガメラが人類の味方だと気づく。真弓は、ギャオスが爆発的に増える可能性があることを知る。ギャオスは東京市街に現れ、鉄道車両を襲う。ギャオスは誘導ミサイルを東京タワーに命中させ、真っ二つに折れた東京タワーに営巣する。ガメラと通じ合う能力を持った女子高生の草薙浅黄(あさぎ)(藤谷文子)は、ガメラの出現を予感。ガメラが現れ、ギャオスを攻撃。死闘の末、ギャオスを倒すと、海に帰っていくのだった。

現実の世界を設定に取り入れてリアリティを持たせており、福岡ドームがギャオス捕獲に用いられるという趣向は面白かった。とは言え、全体的にはミニチュア模型と着ぐるみによる特殊撮影に、大爆発で派手さを演出した昔ながらの特撮映画。何度も観たいかというと、そうでもなかった。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2025年11月12日 (水)

(3229) 大怪獣ガメラ

【監督】湯浅憲明
【出演】船越英二、内田喜郎、姿美千子、霧立はるみ、山下洵一郎
【制作】1965年、日本

東京湾を襲う大怪獣を描いた特撮映画。ガメラの初登場作品。

北極海で、アメリカ軍が国籍不明の航空機を撃墜。その影響で、北極海で眠っていた全長60mの大怪獣、ガメラが目を覚ます。ガメラは襟裳岬に出現。カメが大好きな少年、俊夫(内田喜郎)は、ガメラは悪者ではないと考える。日高教授(船越英二)は、ガメラが火力や原子力などのエネルギーを吸収する性質があることを突き止める。ガメラは世界各地で目撃される。日高教授は、火星ロケットの発射基地にガメラをおびきよせ、ガメラを火星に飛ばすことに成功するのだった。

ペットとして生命力が強くて飼いやすいカメを、大怪獣に仕立て上げたガメラ。ゴジラに次いで親しみやすい巨大怪獣と言えるだろう。昭和40年の着ぐるみ感満載の作品ではあるが、国際的な対策チームが描かれ、当時としては恐らく相当未来感のある作品だったのだろう。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年11月11日 (火)

(3228) 君たちはどう生きるか

【監督】宮崎駿
【出演】山時聡真(さんときそうま)(声)、木村佳乃(声)、菅田将暉(声)、あいみょん(声)、柴咲コウ(声)、木村拓哉(声)
【制作】2023年、日本

継母を探す少年の冒険を描いたスタジオジブリ作品。吉野源三郎の同名小説が作中に登場する。

母親を空襲による火事で失った少年、眞人(まひと)(山時聡真)は、父親の勝一(しょういち)(木村拓哉)の再婚に伴い、継母となる夏子(木村佳乃)の住む家に引っ越す。家の近くには入り口を塞がれた塔があった。あるとき、アオサギ(菅田将暉)が眞人に、塔に来るよう誘いをかける。夏子が行方不明になり、眞人は家に住むばあやの一人、キリコ(柴咲コウ)とともに、塔に夏子を探しに行く。塔は不思議な世界で、眞人はそこで、火をおこす少女ヒミ(あいみょん)やインコ大王(國村隼)、大伯父(火野正平)と出会いながら、夏子を取り戻し、塔を出ることに成功する。ヒミは眞人の母親の若い頃の姿だった。

つまらなくはないがあまり面白くもない哲学的な内容で、あらすじを詳しく書く気が起きなかった。映像的にもさほど斬新とは思わなかったが、第96回アカデミー長編アニメ映画賞を受賞している。声優陣は豪華で、木村拓哉は、あれそうかな、と気づいたが、菅田将暉は全く分からなかった。「もののけ姫」(1997)のジコ坊(小林薫)と似ている気がした。芸達者な俳優さんだ。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年11月10日 (月)

(3227) デンジャラス・ラン

【監督】ダニエル・エスピノーサ
【出演】ライアン・レイノルズ、デンゼル・ワシントン、ブレンダン・グリーソン、ベラ・ファミーガ、ノラ・アルネゼデール
【制作】2012年、アメリカ、日本、南アフリカ

命を狙われる元CIA工作員と、彼を追うCIAの若者を描いたサスペンス作品。

南アフリカのケープタウンで、何か重要な情報を手に入れたトビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)は、バルガス(ファレス・ファレス)率いる謎の集団に命を狙われる。トビンは追っ手を巧みにかわし、アメリカ総領事館に逃げ込む。トビンは元CIA工作員で、今はCIAを裏切り、指名手配中であり、CIA副長官のハーラン・ホイットフォード(サム・シェパード)は、彼を「隠れ家」で尋問することにする。隠れ家とは、CIAが用いる秘密の場所。CIA職員のマット・ウェストン(ライアン・レイノルズ)は、隠れ家の管理人で、トビンと尋問部隊を受け入れる。するとそこに、バルガス率いる、重装備で武装した集団が乱入してくる。尋問部隊は全滅してしまい、マットはトビンに手錠を掛けたまま、何とか逃走する。
CIA本部から、次の隠れ家を指示されたマットは、追っ手を撹乱しようと、群衆のひしめくサッカースタジアムにトビンを連れて行くが、トビンは衆人環視の中で突然、自分は誘拐された、と手錠をした両手を上げて叫び、マットは警察に取り押さえられてしまう。トビンは医務室に連れて行かれるがまんまと抜け出し、マットも警官を振り払い、トビンを追うが、逃げられる。マットは、恋人のアナ(ノラ・アルネゼデール)に危害が及ばないよう、自分がCIA職員であることを明かし、アナをパリに向かわせる。アナは、マットを叩いて怒りながらも、マットの元を去って行く。
トビンは新しい身分証を手に入れるため、スラム街のランガ地区に住む偽造屋(ルーベン・ブラデス)を訪ねる。マットは、トビンとの道中、彼がランガを気にしていたことを思い出し、ランガに向かう。すると、偽造屋の家をバルガスの部隊が襲撃する。偽造屋は殺され、トビンは逃走。マットはトビンの逃走を援護し、二人を追ってきた男たちを倒す。マットは、倒した男に、背後にいるのは誰かを吐かせる。男は、CIAのバルガスだと答え、マットはショックを受ける。
トビンは、かつてCIAが、内部告発しようとした男を、組織ぐるみで殺害した話をマットに聞かせる。マットのいた隠れ家が襲撃されたのは、CIAに内通者がいたためであり、その人物はCIA本部からケープタウンに飛んだデビッド・バーロー(ブレンダン・グリーソン)だった。CIAの指示が信用できないことを悟ったマットは、指示された新たな隠れ家の管理人(ヨエル・キナマン)にも銃を突き付け、慎重に行動するが、背中を見せた隙に管理人がマットに襲いかかる。マットは死闘の末、腹をガラス片で刺されながらも、何とか管理人の首を絞め、息の根を止める。鉄パイプに手錠でつながれたままのトビンは、その様子を静かに眺めていた。マットは、なぜトビンがCIAに追われているのかを尋ねる。トビンは、自分が持っている情報が、MI-6やドイツの情報機関、そしてCIAの汚職者のリストであることをマットに明かす。トビンは、傷を負ったマットを置いて立ち去る。
気がつくと、マットはベッドで寝ており、目の前にはデビッドがいた。デビッドの横には、マットやトビンを襲っていたバルガスもいた。デビッドは、マットにデータファイルのありかを尋ねる。そこにトビンが現れ、デビッドの取り巻きを倒していく。デビッドは外で起きた車の爆発に巻き込まれて吹っ飛び、バルガスはトビンに倒される。トビンはマットに「行こう」と声をかけるが、背後からデビッドがトビンを銃撃。デビッドは、倒れていたマットに勝ち誇った顔を見せるが、マットは手にしていた銃でデビッドを撃ち殺すと、トビンを介抱しようとする。トビンは、マットに、お前は自分より優れている、と話すと、静かに息を引き取る。
マットはCIA副長官に報告書を提出。副長官はマットに、昇格を条件に、汚職リストにデビッドの名があったことは伏せるよう伝える。マットは汚職リストをリークし、副長官は捜査の対象となる。マットはパリを訪ね、パリで暮らしているアナを見届ける。アナがマットに気づくと、マットは微笑みを返しながらその場を去るのだった。

ベタな英語の邦題から、「ミッドナイト・ラン」(1988)のようなコミカルなクライムアクション映画かと思ったら、笑いの要素のない、完全にシリアスな内容だった。原題が「Safe House」なので、そのままでは日本人には分かりにくそうだが、日本語でもいいから、もうちょっとかっこいいタイトルにならなかったものかと思った。とは言え、「隠れ家」という表現も何だかイメージと違うし、結構難しいな。
序盤はトビンが犯罪者のように扱われ、観客も当然、CIAは正義の組織と思っているわけだが、なぜトビンの命が狙われるのか、という謎が明らかになるにつれ、CIAの闇の部分が明かされていく。この手の裏切り、汚職を題材にしたものは、全てを疑ってかかった結果、何が真実だったかよく分からなくなることがあるが、本作は、正義の主人公と、わかりやすい悪役がおり、すっきりと理解できた。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年11月 9日 (日)

(3226) 幼な子われらに生まれ

【監督】三島有紀子
【出演】浅野忠信、田中麗奈、南沙良、寺島しのぶ、宮藤官九郎、新井美羽、鎌田らい樹
【制作】2017年、日本

再婚した男と相手の連れ子の関係を描いた作品。重松清の小説が原作。

サラリーマンの田中信(浅野忠信)は、元妻の友佳(ゆうか)(寺島しのぶ)と別れ、奈苗(田中麗奈)と再婚。奈苗は信との間に新たな命を宿していた。奈苗は生むことを決意するが、信の表情は冴えない。奈苗の連れ子で小学6年生の薫(南沙良)が、新しい子が産まれることを歓迎していなかったのだ。薫は信を父親と認めておらず、信に、本当のお父さんに会いたいと告げる。信自身、友佳との間の子ども、沙織(鎌田らい樹)と定期的に会っており、信は薫を実の父の沢田(宮藤官九郎)に会わせようと考えるが、奈苗はその考えに反対する。
信に友佳から電話がかかってくる。次の沙織との面会を延期してほしいと言うのだ。信は久しぶりに友佳に会う。友佳は、再婚相手の江崎が、末期癌で余命幾ばくもないので、それまでは沙織とできるだけ一緒にいさせてやりたいと説明する。帰り際、自分の気持ちを聞こうとしない信を責め、友佳は、自分は後悔ばかりしていると話す。
薫はついに、奈苗と信に向かって、こんな家はいやだ、パパに会いたい、と叫ぶ。信は家庭の雰囲気を改善したい思いで、横田基地で自衛隊の給食作りを仕事にしている沢田に会い、薫と会ってくれと頼む。沢田は、自分は子どもが嫌いだと言って、それを拒む。沢田はかつて暴力亭主で、奈苗だけでなく薫にも暴力を振るい、薫は殴られて歯を折られたこともあったのだ。信は薫に、できれば沢田に会ってほしくないと伝えるが、薫は、前の子どもと会っている信を責め、自分もパパに会いたいと言い返す。信は、気楽な様子の奈苗に苛立つようになり、薫との関係の悪化もあって、ついに奈苗に別れを切り出すようになる。信は再び沢田に会う。ギャンブル依存の沢田は、薫に会うのに10万円、一緒に暮らすなら更に40万円を信に要求する。
帰り道の途中で、沙織が信を待っていた。二人は飲食店に入る。沙織は信に、今の父親が死んでも泣けないと感情を吐露する。突然、外が雷雨になり、友佳から沙織に電話が入る。江崎の容態が悪化したのだ。信は奈苗に車で迎えに来てもらい、沙織を江崎の入院する病院まで乗せていくことにする。沙織がいることを聞かされていなかった奈苗は、幼い次女の恵理子(新井美羽)を乗せてきていた。気まずい空気の中、沙織は車に乗り込む。恵理子は沙織に誰なのかを聞き、沙織は、自分は信の友だちだと説明する。恵理子は無邪気に、自分にもうすぐ弟が産まれると沙織に説明。沙織は黙っているなんて水くさい、親子なのに、とつぶやく。病院に着き、沙織は中に入っていく。信も、奈苗に促されて沙織に同行する。江崎の病室の枕元には友佳が座っていた。沙織は病室で呼吸器を付けている江崎の手を握り、号泣する。信は、意識のないであろう江崎に、沙織を育ててくれてありがとう、かわいがってくれてありがとう、と口にして病室を去る。
薫は沢田に会うため、奈苗に見送られて出かけていく。信は、様子を見届けるため、奈苗と恵理子を連れてデパートに行き、恵理子を連れて待ち合わせ場所の屋上に行く。そこには沢田だけがおり、薫は来ていなかった。沢田は40万の話はなしにしよう、と言い、信に来てくれてよかったと話し、用意していたプレゼントを信に手渡す。信たちが帰宅すると、薫がいた。薫は父親に会ったと言うが、信はプレゼントを渡し、薫が嘘をついていることを優しく咎める。薫は信の胸に体を預けて嗚咽する。
その後、薫は祖母の家で暮らすことを決めた。そして奈苗は赤子を産む。病院には恵理子はもちろん、薫も駆けつけ、信とともに、生まれたばかりの赤ちゃんと対面するのだった。

浅野忠信と田中麗奈だけでなく、小学生役の二人の演技が見事な作品。怒る演技は比較的やりやすいほうだと思うが、沙織が江崎の手を握って泣くシーンは感動的だった。重松清という作家の作品をそんなに読んだことはないのだが、胸に響く物語だった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年11月 8日 (土)

(3225) 侍タイムスリッパー

【監督】安田淳一
【出演】山口馬木也、冨家ノリマサ、沙倉ゆうの、峰蘭太郎、福田善晴、紅萬子、庄野﨑謙
【制作】2024年、日本

現代にタイムスリップした侍が時代劇の役者として活躍するさまを描いたコメディ。

会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也)は、同士の村田左之助(高寺裕司)とともに、討幕派の長州藩士、山形彦九郎(庄野﨑謙)に戦いを挑む。村田は剣豪の山形にあっけなく気絶させられ、新左衛門と山形の一騎打ちとなるが、にわかに雨が降り出し、二人に雷が落ちる。新左衛門が気がつくと、そこは現代の時代劇撮影所だった。新左衛門は、助監督をしていた山本優子(沙倉ゆうの)に撮影現場から追い出される。新左衛門は撮影所の中で迷子になり、ゾンビ姿の役者に驚いて逃げたところで、撮影機材に頭をぶつけ、病院に運ばれる。目が覚めた新左衛門は病室を抜け出し、商店街の張り紙を見て、自分が、幕府が滅んで140年後の未来に来ていることを知る。新左衛門は、山形に戦いを挑んだ場所にたどり着き、そこで夜を明かす。そこは、西経寺という寺の前だった。寺の住職(福田善晴)に発見された新左衛門は、寺の居候をしながら、時代劇の斬られ役をして生きていくことにする。芝居を見た経験のある新左衛門は、斬られ役として活躍し、次第にセリフのある役を務めるようになる。
ある日、斬られ役から大スターになった大物俳優、風見恭一郎(冨家ノリマサ)が、新作の時代劇映画の主演をすることがニュースとなる。風見は、ライバル役として、新左衛門を抜擢。新左衛門は身分不相応と辞退しようとするが、風見は聞かない。なんと風見は、新左衛門同様、現代にタイムスリップした山形彦九郎だった。山形の飛ばされた年代が新左衛門より前だったため、もともと新左衛門より年下だった山形の方が、現代では年上になっていた。新左衛門は、討幕派の山形を未だに恨んでおり、なおさらのように抜擢を拒否するが、周囲の後押しもあり、ライバル役を引き受けることにする。
撮影で、今ひとつ力を発揮できず、思い悩む新左衛門は、最後の二人での勝負のシーンで、真剣を使うことを提案。優子は猛反対するが、武者小路監督(吹上タツヒロ)と山形は、その提案に乗る。ラストシーンで、新左衛門は、山形に、決められた殺陣ではなく、仕合を願い出る。山形も応じ、二人は真剣の斬り合いを始める。撮影陣が固唾を呑んで見守る中、ついに新左衛門が山形の刀を打ち払い、山形は刀を落とす。山形は覚悟を決め、目を閉じる。新左衛門は山形を袈裟懸けにする。完成した映画を観ていた住職と妻の節子(紅萬子)は、スクリーンに喝采を送る。
しかし、撮影シーンでは、新左衛門は山形を斬ったのではなかった。新左衛門は、山形を斬れず、「俺は情けない男だ」と言って涙し、山形は座したまま、「俺たちは互いにこの国を思って精一杯生きた。それでよいではないか」と返したのだった。その後、優子は危ない撮影をした新左衛門にビンタして本気で心配したことを伝えた後、あっけらかんと、次は血が吹き出すシーンです、と叫んで撮影の段取りを回し始める。映画の後も、新左衛門は、斬られ役を続ける。するとそこに、新左衛門の同士だった村田が、遅れてタイムスリップしてくるのだった。

序盤は、侍が現代にタイムスリップして時代劇の斬られ役になる、という、斬新なような陳腐なような設定で話が進み、あまり魅力を感じない展開。殺陣師の関本(峰蘭太郎)に弟子入り志願した新左衛門に、住職たちが「落ちた」「滑った」と言わないようにしようと言っておきながら、ついつい言っちゃう、みたいな、コメディとしては陳腐すぎるシーンもあったりして、「何だよ駄作なのか」と思うのだが、だんだん、人が無残に斬り殺されるという、時代劇で描かれる世界観の重みに焦点が当たり、真剣度が増してくる。クライマックスの新左衛門と山形の勝負は、どちらに転ぶか分からない、まさに手に汗握る展開。斬り合いのシーンにこんなに集中したのは、初めてだった。本作は、SNSでの評判を見てから、Amazonプライムで鑑賞。評判に違わぬ面白い作品だった。
なお、新左衛門が恋心を抱く相手、優子は、可愛らしい本作のヒロインで、20代かせいぜい30代前半かと思っていたら、公開当時44歳。本作でいちばん驚いたことだった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年11月 7日 (金)

(3224) 男はつらいよ 旅と女と寅次郎

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、都はるみ、ベンガル、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、吉岡秀隆
【制作】1983年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第31作。「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」(1982)の続編。次作は「男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎」(1983)。

とらやに帰ってきた寅次郎(渥美清)は、博(前田吟)が息子の満男(吉岡秀隆)の運動会に仕事で行けないと聞き、代わりに行ってやることにするが、満男は言葉を選びつつも迷惑顔を隠せない。おいちゃん(下條正巳)が満男を庇ったため、寅次郎はへそを曲げて旅に出る。新潟に向かった寅次郎は、佐渡島に向かう船を見つけ、船頭(山谷初男)に頼んで乗せてもらうことにする。すると、近くにいた女性(都はるみ)が寅次郎に声をかけ、船に同乗。二人は同じ旅館に泊まる。寅次郎は女性に見覚えがあったが思い出せず、事情は深く聞かずに女性と酒を酌み交わす。旅館のおばあちゃん(北林谷栄)の言葉で、寅次郎はその女性が、人気歌手の京はるみであることを思い出す。はるみは多忙すぎる歌手活動から逃げているところだった。
はるみのマネージャー(ベンガル)や事務所の社長(藤岡琢也)らは、必死ではるみを探し、寅次郎とはるみがいた食堂に駆け込んでくる。はるみは大人しく戻ることにするが、去り際、付けていた指輪を思い出代わりに、と寅次郎に手渡す。とらやに帰った寅次郎は、はるみに会ったことを誰にも伝えずにいたが、はるみ自身が、寅次郎に会いにとらやを訪ねたため、とらやは大騒ぎ。大勢の近所の人が集まり、はるみはとらやの庭で「アンコ椿は恋の花」を披露する。寅次郎は、はるみからリサイタルのチケットをもらうが、寅次郎はリサイタルには行かず、博とさくら(倍賞千恵子)がリサイタルに行く。はるみはステージ上で、寅さんに会ったエピソードを歌の合間に披露する。その頃、寅次郎は、旅先でテキ屋仲間と楽しく過ごしているのだった。

本作のマドンナは、31歳という設定の演歌歌手。演じる都はるみの公開当時の実年齢は35歳。若くて親子ほど寅さんと年齢が離れているわけでもなく、寅さんに年齢が近いわけでもない、微妙な設定だった。歌はさすがに上手で、はるみのステージ上での思い出話にも、ホロリとさせられた。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

より以前の記事一覧