評価4の映画

2025年6月20日 (金)

(3074) エスター

【監督】ジャウム=コレット・セラ
【出演】ベラ・ファミーガ、ピーター・サースガード、イザベル・ファーマン、CCH・パウンダー、アリアーナ・エンジニア
【制作】2009年、アメリカ

孤児を引き取った一家に起こる惨劇を描いたホラー作品。

三人目の子どもを流産したケイト・コールマン(ベラ・ファミーガ)は、アルコール障害と戦いながらその死を乗り越え、夫のジョン(ピーター・サースガード)と孤児院に行く。シスター・アビゲイル(CCH・パウンダー)に出迎えられた二人は孤児院を見学。ジョンは、一人で絵を描いている少女エスター(イザベル・ファーマン)に声を掛けられ、彼女の才気に惹かれる。ケイトも彼女を気に入り、エスターを養子として家族に迎え入れることにする。
長男のダニエル(ジミー・ベネット)はエスターを警戒するが、聴覚障害を持つ妹のマックス(アリアーナ・エンジニア)は、優しく接するエスターになつく。しかし、エスターの子どもらしからぬ言動に、ケイトは次第に不信感を募らせるようになる。ケイトはジョンにエスターのことを相談するが、ジョンはエスターを信じて疑わない。
ケイトの家にシスター・アビゲイルがやって来る。孤児院に連れ戻されると考えたエスターは、アビゲイルの帰り道で待ち伏せ、彼女の運転する車の前にマックスを飛び出させ、彼女を轢きそうになって車を降りたアビゲイルを、背後からハンマーで殴り殺す。マックスはエスターに共犯だと脅され、口封じされる。ダニエルはマックスとエスターが一緒にいるところを目撃するが、その夜、エスターに刃物を突き付けられて脅され、逆らえなくなる。
ケイトは自らエスターの出自を調べ始める。ケイトはロシアの孤児院から来たということだが、その記録はなかった。ケイトはエスターの持っていた聖書を調べ、彼女がエストニアの精神病院にいたことを突き止める。エスターに恐怖を感じたダニエルは、エスターの隠した殺人の証拠を探しに木の上の小屋に入るが、エスターに先回りされ、小屋に火を放たれる。逃げようとしたダニエルは木から落下し、意識不明の状態で病院に運ばれる。マックスたちと病院に待機していたエスターは、隙を突いてダニエルの治療室に潜入し、ダニエルの酸素マスクを外して枕で窒息させる。ダニエルは何とか一命を取り留めるが、マックスからエスターの不審な行動を知らされたケイトは、問答無用にエスターを張り飛ばす。ケイトは病院のスタッフに鎮静剤を打たれ、取り押さえられてしまう。
ジョンと帰宅したエスターは、濃い化粧をして、酔ったジョンを誘惑する。ジョンは養女であるエスターに対して愛情表現を示すが、大人のような誘惑をしてくるエスターに驚き、彼女を拒絶。エスターは部屋に戻り、マスカラで黒く濁った涙を流す。その頃、病院にいるケイトに電話が掛かってくる。エスターがいたエストニアの精神病院からだった。エスターは、実は9歳の少女ではなく、ホルモン異常により成長が遅れた33歳の女、リーナ・クラマーという凶悪な精神病患者だった。ケイトは車を飛ばして家に帰るが、ジョンはすでにエスターに胸をナイフでめった刺しにされて殺されていた。ケイトはマックスを探し出し、家から逃げ出す。警察車両がようやくやって来るが、エスターはナイフを持って氷の張った池の上でケイトに襲いかかる。池の氷が割れ、ケイトとエスターは池の中に沈む。ケイトは何とか氷の上に這い上がり、追いすがるエスターを蹴り飛ばすと、エスターは水の中に消えていく。ケイトはマックスを抱きかかえ、ようやく警察官に保護されるのだった。

エスターの本性が大きな謎となるホラー作品。超常現象は扱っておらず、リアルな連続殺人である。ネタが割れてから考えてみると、エスターのジョンに対する態度、学校でのクラスメイトに対する態度など、一つ一つに納得が行く、うまい作りになっていた。残虐なスプラッタ映画ではなく、ミステリ要素の強い作品だった。本作はAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年6月10日 (火)

(3064) プリキュアドリームスターズ!

【監督】宮本浩史(ひろし)
【出演】美山加恋(声)、阿澄佳奈(声)、山里亮太(声)、木村佳乃(声)、かないみか(声)
【制作】2017年、日本

テレビアニメ「プリキュア」シリーズの劇場版22作目。「魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身!キュアモフルン!」(2016)の続作。次作は「キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと!思い出のミルフィーユ!」(2017)。

さくら(阿澄佳奈)という少女が、鴉天狗(山里亮太)に追われ、さくらの仲間の青いキツネ、シズク(木村佳乃)と離ればなれになってしまう。それは、宇佐美いちか(美山加恋)の夢の中の出来事だった。いちかは、ペコリン(かないみか)と一緒に花見に出かけ、夢の中と同じような神社の階段を発見。夢の中では階段の先にしだれ桜があるはずだったが、あったのは切り株。そこに、夢の中で見た少女が現れる。すると、夢で見た赤狗(あかいぬ)が現れ、さくらに襲いかかる。いちかはキュアホイップに変身。仲間4人とともに赤狗を倒す。いちかたちは、「魔法つかいプリキュア!」の3人と「Go!プリンセスプリキュア」の4人も仲間につけ、鴉天狗と戦うが、鴉天狗の仲間の五月雨(木村佳乃)に歯が立たず、さくらとキュアホイップ以外は折り紙にされてしまう。キュアホイップは五月雨の攻撃の癖を読み、鋭い攻撃を入れると、五月雨の付けていたお面が割れる。お面の奥にあったのは、シズクと同じ瞳だった。五月雨の正体はシズクだったのだ。さくらはショックを受けるが、キュアホイップに励まされ、シズクを信じて五月雨に抱きつく。五月雨はもとのシズクの姿に戻り、五月雨に折り紙にされていたプリキュアたちも復活する。プリキュアたちとさくら、シズクは協力して、巨大化した鴉天狗を倒すのだった。

子供向けアニメなので特に期待せずに観たのだが、けっこう感動した。キャラクターの変身はかっこよく、仲間を信じる姿は涙を誘う。五月雨の正体がシズクだったというのも、伏線は十分に張られていたのに意外性があった。プリキュア3作分で主要な敵も1体とコンパクトなのもよかったのかもしれない。この手の作品にしては珍しく、評価は4。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年6月 3日 (火)

(3057) バズ・ライトイヤー

【監督】アンガス・マクレーン
【出演】クリス・エバンス(声)、キキ・パーマー(声)、ピーター・ソーン(声)、タイカ・ワイティティ(声)、デール・ソウルズ(声)
【制作】2022年、アメリカ

トイ・ストーリー」シリーズに登場する人形のモデルとなっているスペース・レンジャーの活躍を描いた3DCGアニメ作品。

スペース・レンジャーのバズ・ライトイヤー(クリス・エバンス)は、1,200名の乗員とともに、移住のための未知の惑星にたどり着くが、宇宙船の操作ミスにより、ハイパー・スピード・クリスタルが損傷し、地球に戻ることができなくなる。宇宙船の乗員たちは、未知の惑星で自活しながら、惑星の脱出を目指す。バズは相棒の女性アリーシャ・ホーソーン(ウゾ・アドゥーバ)の指揮のもと、ハイパー・スピードテストを行う。ハイパー航法はなかなか成功せず、試験のたびに、バズはウラシマ効果で惑星の人たちより時間の進みが遅くなり、バズが試験を繰り返すうちに、惑星では62年の年月が経ってしまう。アリーシャにもらったAIペット、ソックス(ピーター・ソーン)は、ハイパークリスタルを生み出す物質の比率を導き出し、バズはついにハイパー航法に成功。ところが、戻ってきた惑星には、巨大な宇宙船ザーグシップが飛来し、宇宙船から放たれたロボットザークがバズの乗っていた宇宙船を接収してしまう。
バズは地上に残っていたイジー・ホーソーン(キキ・パーマー)に導かれ、彼女たちのアジトに行く。そこには、新兵のモー・モリソン(タイカ・ワイティティ)と仮釈放中のダービー・スティール(デール・ソウルズ)がいた。バズは彼らとともにハイパークリスタルの捕球を目指すが、バズは巨大ロボットにつかまり、ザーグシップに連れ去られてしまう。ロボットを操縦していたザーグ(ジェームズ・ブローリン)の正体は、50年後のバズだった。ザーグは、クリスタルの力で過去を変え、バズの宇宙船の操作ミスをなかったことにしようとする。しかし、若いバズは、それではイジーが存在しないことになってしまうことに気づき、ザーグに反抗。イジーたちも加勢し、ザーグシップの自爆装置を起動して脱出。ザーグはバズの乗る宇宙船に飛び移り、搭載しているハイパークリスタルを抜き取るが、バズは宇宙船から飛び出し、ハイパークリスタルを破壊。爆発でザーグは吹き飛ぶ。バズはイジーたちが乗った船に追いつき、惑星への不時着に成功する。バズは迎え出たバーンサイド(イザイア・ウィットロック・Jr)に新たなスペース・レンジャー組織を作るよう命じられるが、バズはチームはもうある、と言ってイジーたちの方を振り返る。バズたちは惑星を故郷として、スペース・レンジャーの任務に就くのだった。

子供向けのアニメではあるが、宇宙船やロボットなどのデザインがかっこよく、見応えのある作品。一つ目の黄色のロボットは「機動戦士ガンダム」(1981)のモビルスーツっぽかった。アリーシャが女性と結婚し、子どもを授かるところは、養子ということなのか、若干意味不明。養子であれば、歴史を変えてもイジーが生まれていたかもしれない。包摂性の表現なのだろうが、ここに適用しなくてもいい気がした。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年5月19日 (月)

(3042) 99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE

【監督】木村ひさし
【出演】松本潤、杉咲花、香川照之、西島秀俊、マギー、ベンガル、高橋克実、蒔田彩珠(あじゅ)、道枝駿佑、渋川清彦
【制作】2021年、日本

テレビドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」の劇場版。過去に有罪判決が降りた事件の真相を暴く弁護士の活躍を描いた作品。

だじゃれ好きの弁護士、深山大翔(みやまひろと)(松本潤)は、15年前の天華村(てんかむら)毒物ワイン事件の謎に挑む。事件では、ワイン農家の山本貴信(渋川清彦)が、樽入りのワインに毒を入れ、村人4人を殺害したとして死刑判決を受ける。山本を弁護していた南雲恭平(西島秀俊)は、山本の幼い娘、エリ(佐藤恋和(れんわ))を死刑囚の娘として生きることを避けるため、控訴を諦め、山本からエリを引き取り、我が子として育てていた。天才ピアニスト女子高生として成長したエリ(蒔田彩珠)は、ネットで自分の実の父親が死刑囚だったことを知り、斑目法律事務所長の佐田篤弘(香川照之)に、父親の事件の真相を明らかにしてほしいと頼む。
深山は、彼を師匠と仰ぐ新人弁護士の河野(こうの)穂乃果(杉咲花)と、パラリーガルの明石達也(片桐仁)を連れて、事件現場のワイナリーに行き、山本家を調べ始める。地元民の太田保(ベンガル)や重盛寿一(高橋克実)らは、あからさまに過去の事件を掘り起こされることを迷惑がるが、寿一の息子、守(道枝駿佑)は、事件を明らかにしてほしいと言って、調査に協力する。深山は、大がかりな事件の再現を行い、事件当日、丁寧に唐揚げの二度揚げまでしていた山本が殺人を企んでいたはずがないと推理。彼は検察の丸川貴久(青木崇高)の協力を得て、実際の事件で押収されたワイン樽を持ち込んで、再び事件を再現。そして、毒入りワインのワインの量が、事件前に比べて増えていたこと、押収されたワインの樽が事件後に別の樽とすり替えられていたことを明らかにする。山本がワインに毒を入れたのは事実ではなかった。ワインに有毒物質を入れたのは、当時4歳だった守(加藤叶和(とわ))とその友だちだった。守は、有毒薬品をワインがおいしくなる薬だと思い込んでワイン樽に入れていた。村の大人たちは子どもを庇うために村ぐるみで事件を偽装し、山本を犯人に仕立て上げていた。結局、犯人隠蔽の時効は過ぎており、村人は誰一人有罪とはならなかった。それでも深山は、事実を明らかにしたことに充実感を覚える。南雲恭平は、殺人犯の娘という濡れ衣を晴らしたエリのピアノコンサートに出向き、娘の見事な演奏に拍手を送るのだった。

Creepy NutsのR-指定や、柳亭(りゅうてい)小痴楽、とろサーモンの村田秀亮(ひであき)などが序盤の事件に登場。途中にもお笑い芸人やものまね芸人、プロレスラーがちょこちょこ出演している楽しい作品。推理の過程もちゃんと作ってあり、南雲恭平が村人に怒りをぶつけるシーンは感動的だった。テレビドラマの劇場版の中では当たりの部類だろう。ただ、杉咲花演じる河野穂乃果が、漫画のセリフを絶叫するところは、ついていけなかった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年5月11日 (日)

(3034) インファナル・アフェアII 無間序曲

【監督】アンドリュー・ラウ、アラン・マック
【出演】ショーン・ユー、アンソニー・ウォン、フランシス・ン、エリック・ツァン、カリーナ・ラウ、エディソン・チャン
【制作】2003年、香港

マフィアと警察の攻防を描いた作品。「インファナル・アフェア」(2002)の次作であり、その前日譚。次作は「インファナル・アフェアIII 終極無間」(2003)。

香港マフィアのボス、クワン(チェン・タンチョー)が、サングラスをした若者、ラウ(エディソン・チャン)に殺される。ラウとクワン殺害を共謀したのは、クワンの下部組織を束ねるサム(エリック・ツァン)の妻マリー(カリーナ・ラウ)だった。ラウはマリーに恋い焦がれており、「サムがラウを警察に潜入させたいと言っている」とマリーに言われ、警察学校に入ることを決意。警察学校で警察官を目指すヤン(ショーン・ユー)は、殺されたクワンが実の父であることが警察に判明し、警察学校を首になる。マフィアの一掃を目指すウォン警部(アンソニー・ウォン)は、ヤンを潜伏警察官として、クワンの跡を継いだハウ(フランシス・ン)の組織に潜入させる。
ハウとヤンは異母兄弟の関係であり、ハウはヤンを重用する。ハウは強引に組織をまとめ上げるが、ヤンの情報により、取引現場を押さえられ、警察に連行される。しかし、彼の鞄に入っていたのは、一本のビデオテープ。そこにはウォン警部がサムの妻マリーと接触し、ウォン警部がマリーにクワン殺害を指示した映像が記録されていた。ハウは組織をまとめ上げるため、抵抗派の幹部を次々と殺害させていた。腹心のロ・ガイ(ロイ・チョン)も警察のスパイであることを知り、ヤンの目の前で自ら殺害する。クワン殺害に関わったウォン警部は、車に爆弾を仕掛けられるが、ウォン警部の同僚のルク警視(フー・ジュン)が、車の運転を代わろうとしたため死亡。サムを心配して空港に向かったマリーも、ハウの部下に車でひき殺される。
香港返還による体制変更が迫る中、警察幹部はウォン警部の一件を不問に処し、彼に引き続きハウ逮捕の陣頭指揮を執らせる。ウォン警部は、これまで通じ合ってきたサムに、ハウの悪事の証言をさせることにする。それを知ったハウは、タイにいるサムの家族を拘束し、サムを呼び出してサムを脅すが、サムは先を読んでおり、タイの仲間を使って家族の安全を確保するとともに、ハワイに逃げていたハウの家族を拘束。立場が逆転して狼狽するハウのもとに、ウォン警部がラウを含む部下を連れて現れ、ハウの一味を取り囲む。ハウはサムに銃を突き付けるが、ウォン警部がハウの眉間を撃ち抜く。倒れ込むハウをヤンが抱える。ハウはヤンの胸元に盗聴器があることに気づき、彼がスパイだったと悟るが、そのまま息を引き取る。サムがマフィアのボスにのし上がり、ヤンは引き続きサムの腹心として、潜伏捜査を続ける。ラウもまた、警察官として警察に潜伏することになるのだった。

筋書きは、始めは分かりづらかったが、よくできていた。前作の前日譚ということを知らずに観たのと、前作を観てからかなり時間が経ってからの鑑賞だったので、前作とは別設定の潜伏劇だと思ってしまった。前作と共通する俳優、登場人物もいるので、続けて観た方が断然いいだろう。3作目もあるが、自動録画されていなかったので、観るのはだいぶ先になりそうなのが残念。この辺は自動録画鑑賞の辛いところ。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年5月 9日 (金)

(3032) 世界でいちばん長い写真

【監督】草野翔吾
【出演】高杉真宙(まひろ)、松本穂香(ほのか)、武田梨奈、前原滉(こう)、田村杏太郎(きょうたろう)、黒崎レイナ、水野勝、吉沢悠
【制作】2018年、日本

高校の思い出に世界一長い写真を撮ろうと奮闘する高校生を描いた青春映画。

序盤は純白のドレスに身を包んだ女性(武田梨奈)に会う青年(高杉真宙)が登場。この二人の関係は何なんだろう、というところから物語が始まる。序盤、新郎新婦に思えた二人は、従弟の関係。高校時代、序盤に登場した彼、写真部の内藤宏伸(ひろのぶ)はクラスで目立たない存在で、部長の三好奈々恵(松本穂香)に馬鹿にされる日々。ある日、宏伸の従姉でアンティークショップを営む竹中温子(武田梨奈)に荷物運搬の手伝いを強制される。彼はそこで、アンティークなカメラを発見。カメラ店の宮下賢一(吉沢悠)に見てもらうと、それは水平に回転しながら3360度を撮影できるパノラマカメラであることが分かる。宏伸は、温子の紹介で、小出智也(水野勝)のヒマワリ畑で360度のヒマワリ畑の撮影に挑戦。見事な写真ができあがる。それがきっかけで、宏伸は一方的に片思いしていたクラスのマドンナ、安藤レイカ(黒崎レイナ)と親しくなる。
宏伸は、このカメラは360度だけではなく、カメラを水平に13回転半させながら撮影を続けることで、世界一長い写真を撮ることができることを知る。引っ込み思案だった宏伸が奈々恵やレイカたちとクラスを説得し、高校生活の思い出に写真撮影に挑戦する。校庭に集まった仲間たちは、宏伸の構えるカメラを中心として輪を作り、次々とポーズを変えながら、写真撮影を敢行する。
時が戻って現代。新婦の温子と宮下賢一との披露宴で、宏伸は披露宴の様子をパノラマカメラに収める。そこには、カメラの仕事を続ける奈々恵もいた。後日、学校で再会した宏伸と奈々恵は、今もカメラを続けていることを話し合う。宏伸は、パノラマ写真を披露した文化祭の最終日のことを思い出すのだった。

タイトルは意味深長だが、文字通り、物理的に横に長い写真の話だった。従姉の温子、クラスメイトの奈々恵という、二人の美女を中心に物語が進む。もう一人の美少女レイカは、最終的に医学部に合格したクラスメイト(前原瑞樹)になびき、温子はカメラ店の賢一と結婚。奈々恵は、レイカと親しくなる宏伸に焼き餅を焼いたり、文化祭最終日に花飾りを宏伸の背中に貼り付けたり、実は宏伸を気にしていたことをほのめかしつつも、奈々恵と宏伸が最終的にどうなったかは描かれない。薄着が多い温子にメロメロになる館沼淳(前原滉)の一方的な片思いなども交え、ほろ苦く楽しい青春を描いたさわやかな作品だった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年5月 7日 (水)

(3030) 虹をつかむ男

【監督】山田洋次
【出演】西田敏行、吉岡秀隆、田中裕子、田中邦衛、笹野高史、柳沢慎吾、すまけい、松金よね子、倍賞千恵子、前田吟
【制作】1996年、日本

家出をした若者と、古い映画館を営む男性との交流を描いた、映画愛あふれる作品。

就職活動に落ちこぼれた若者、平山亮(りょう)(吉岡秀隆)は、父親(前田吟)と喧嘩して家出。徳島の光町の古い映画館オデオン座の社長、白銀活男(しろがねかつお)(西田敏行)と出会い、彼の元で働くことにする。活男は、映画愛は強いが経営には無頓着で、オデオン座は慢性的な経営不振。それでも活男とオデオン座は地元民に愛されていた。亮は安月給に不満ながらも、活男の人柄に惚れ、映画館勤めを続ける。
活男は幼なじみの十成(となり)八重子(田中裕子)に好意を寄せていたが、本人はそのことを表に出さない。しかし、映写技師の常さん(田中邦衛)や周囲の人には活男の片思いはお見通しだった。八重子は結婚経験があったが、夫を病気で失っていた。八重子の父(高原駿雄)が亡くなり、八重子は、前の夫と同じ会社に勤める服部という男との再婚を決める。八重子にアプローチを続けていた活男は、そのことを八重子から聞かされ、ショックを隠して八重子を祝福する。八重子は、活男が自分を好きであることに気づいていた。八重子は、活男の思いに答えず別の男との結婚を決めたことを活男に謝り、涙する。
活男は、とうとう映画館をたたむ決意をするが、常さんが1,200万の貯金を活男に渡し、オデオン座は窮地を脱することになる。活男は、将来のある亮をあえて首にして実家に帰らせる。亮は実家から感謝の手紙を活男に送る。活男は満足げに手紙を読み終えると、映画館にふらっとやって来た男(上島竜兵)に、ここで働かないかと気安く声をかけるのだった。

映画館が舞台ということで、いくつかの映画の映像が実際に流れる。「トイレの花子さん」(1995)、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)、「鞍馬天狗・天狗廻状」(1952)、「野菊の如き君なりき」(1955)、「かくも長き不在」(1961)、「雨に唄えば」(1952)、「禁じられた遊び」(1952)、「東京物語」(1953)、「男はつらいよ」(1969)。さすがに3,000本以上も映画を観ていると、半分以上は観たことがあるというのが、この手の趣味では結構楽しい。ラストは「男はつらいよ」(1969)に焦点が当たり、車寅次郎も、CG合成でちょこっと登場。思えば亮の父親は倍賞千恵子と前田吟だし、亮が通う職安には佐藤蛾次郎が現れるのだった。本作は、撮影直前に亡くなった渥美清を悼む形での制作だが、今回の放映は、これまた亡くなった西田敏行を悼んでのものだった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年5月 6日 (火)

(3029) ラブ・アクチュアリー

【監督】リチャード・カーティス
【出演】ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、アラン・リックマン、ビル・ナイ、マルティン・マカッチョン、エマ・トンプソン
【制作】2003年、イギリス、アメリカ、フランス

夫婦や親子、恋人たちのクリスマスの愛を描いた群像劇コメディ作品。

登場するのは、イギリス首相のデビッド(ヒュー・グラント)と公邸のスタッフのナタリー(マルティン・マカッチョン)、妻を亡くしたダニエル(リーアム・ニーソン)と妻の連れ子サム(トーマス・サングスター)、サムの片思いの相手ジョアンナ(オリビア・オルソン)、撮影のラブシーンのリハーサルの代役(スタンドイン)を担当しているジョン(マーティン・フリーマン)とジュディ(ジョアンナ・ペイジ)、撮影スタッフのトニー(アブダル・サリス)、その友人でイギリスではもてないのでアメリカにナンパに行こうと考えるコリン(クリス・マーシャル)、新婚のジュリエット(キーラ・ナイトレイ)と新郎のピーター(キウェテル・イジョフォー)、ピーターの友人で実はジュリエットが好きなマーク(アンドリュー・リンカーン)、下品なロック歌手ビリー・マック(ビル・ナイ)とそのマネージャーのジョー(グレゴール・フィッシャー)、ダニエルの相談相手の女性カレン(エマ・トンプソン)、カレンの夫で会社社長のハリー(アラン・リックマン)、ハリーが恋愛を後押しする奥手の女性社員サラ(ローラ・リニー)、サラの好きな相手カール(ロドリゴ・サントロ)、ハリーを誘惑する女性ミア(ハイケ・マカチュ)、恋人(シエンナ・ギロリー)が弟と浮気していることを知ってコテージ暮らしを始めた作家ジェイミー(コリン・ファレル)と家政婦に来たオーレリア(ルシア・モニス)、などなど。それぞれがクリスマスにハッピーエンドを迎え、1ヶ月後に空港で多くの再会があるのだった。

主役級の有名俳優が多数登場する賑やかな作品。Mr.ビーンことローワン・アトキンソンもちょい役で出演しており、最後には「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)のデニス・リチャーズまで登場。アメリカでモテモテになるコリンや、オーレリアにプロポーズするジェイミー、ジョアンナに気に入られるサム、ナタリーの家を尋ね当てるデビッドなど、できすぎな展開もあるが、妻のカレンに浮気がバレるハリーや、ジュリエットに好きな気持ちを伝えて去るマークなど、ほろ苦い部分もあった。ベタだがジョアンナの歌のシーンや、ジェイミーのプロポーズのシーンは感動的。長いし登場人物が絡み合っているのでしっかり覚えていないと訳が分からなくなってくる部分はあるが、楽しい作品だ。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年5月 1日 (木)

(3024) ある兵士の賭け

【監督】キース・エリック・バート
【出演】石原裕次郎、デイル・ロバートソン、フランク・シナトラJr.、新珠三千代、三船敏郎、ディナ・メリル
【制作】1970年、日本

孤児院建設のために奮闘する米軍大尉と、彼に興味を持つ戦場カメラマンを描いた作品。実話を元にしている。

米軍大尉のクラーク・J・アレン(デイル・ロバートソン)は、野戦装備を付けて座間キャンプから別府市までの1,321kmを14日で踏破するという計画をたて、成功すれば全額が別府の孤児施設、白菊寮に全額が寄付され、失敗すると半額が戻されるという賭けを発表する。全世界から6,500ドル(234万円)が賭けられ、彼は米兵のデニス・ディクソン(フランク・シナトラJr.)と座間を出発する。戦場カメラマンの北林宏(石原裕次郎)は、かつてアレンが、朝鮮戦争で一般市民の夫婦を誤射により殺害し、幼い子どもを孤児にしたところを目撃しており、一見美談に見えるアレンの賭けに、偽善を感じる。北林は先輩の衣笠忠夫(三船敏郎)に、アレンの調査を依頼。北林は衣笠に勧められ、白菊寮を見に行く。白菊寮の寮長、山田シゲ(新珠三千代)は、孤児にお母さんと慕われ、雨漏りの絶えない古びた寮で健気に子ども達を育てていた。朝鮮戦争後に白菊寮を訪問したアレンは、子ども達が雨漏りのしないうちが欲しい、と願うのを聞いて、1,321km踏破の賭けを企てたのだった。北林は、アレンの行程で彼を待ち受け、朝鮮戦争での行為を伝え、君はアメリカだ、と責めるが、アレンは歩いているのは私の国ではなく二人の男だと答える。
アレンは、途中でディクソンが高熱で脱落するというトラブルに見舞われながらも、別府に13日9時間でたどり着く。白菊寮の新築工事が始まるが、資金は足りず、アレンは翌年も座間から別府まで寄付を募りながら歩くが、集まったのはわずか3万円、米軍将兵からは1,000ドルだった。アレンは翌年も募金旅行を行った。衣笠と北林がの働きかけで、日本中から寄付が集まるようになる。アレンは一度アメリカに戻るが、ベトナム戦争に派遣されることが決まり、妻のケリー(ディナ・メリル)や娘(リンダ・パール)、息子(キース・ラーセンJr.)は悲しむ。
アレンに共感するようになった北林は、中央ジャーナルのカメラマンとして戦地でアレンに会い、白菊寮が完成したことを称える。アレンは北林を見送ったあと、戦地で命を落とす。アレンの日本到着を待っていた白菊寮の山田や子ども達は悲しむ。北林はアレンの遺志を受け継ぎ、徒歩旅行を始めるのだった。

タイトルを見ると、戦場で一か八かの賭けに出た兵士の運命を描いたような、サスペンス作品かと思ったが、座間から別府まで14日以内に歩けるかという賭けの話だった。英語の題名が「The Walking Major」なので、むしろ「歩く米軍大尉」なんかのほうがわかりやすかったかも。ようやく別府にたどり着いた大尉に、孤児院の子どもたちが駆け寄る姿は感動的。静かな感度を呼ぶ作品だった。
石原裕次郎や浅丘ルリ子、新玉三千代が流ちょうな英語を披露しているのに驚き。石原裕次郎というと、「嵐を呼ぶ男」(1957)や「銀座の恋の物語」(1962)のようなかっこいいヒーロー役というイメージを抱きがちだが、「黒部の太陽」(1968)のような硬派な作品や、こうしたヒューマンドラマにも携わっている。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年4月27日 (日)

(3020) ソウ

【監督】ジェームズ・ワン
【出演】リー・ワネル、ケイリー・エルウィス、ダニー・グローバー、モニカ・ポッター、マイケル・エマーソン、トビン・ベル
【制作】2004年、アメリカ

古びたシャワー室に鎖で繋がれ閉じ込められた二人の男の運命を描いたホラーサスペンス映画。前から気になっていたが、テレビで無料放送されなさそうなので、Amazonプライムで鑑賞。次作は「ソウ2」(2005)。

青年アダム・フォークナー(リー・ワネル)は、突然、古びたシャワールームに足首を鎖で固定された状態で監禁される。部屋の対角には、医師のローレンス・ゴードン(ケイリー・エルウィス)が、アダム同様、鎖で繋がれていた。部屋の中央の二人から手の届かないところには、頭から血を流して動かない男が横たわっていた。男は手にテープレコーダーと拳銃を持っていた。
二人は、ポケットの音声テープに気づき、それを聴く。アダムには死にたくなければ抜け道を探せというメッセージ、ローレンスには、6時までにアダムを殺さないと妻のアリソン(モニカ・ポッター)と娘のダイアナ(マッケンジー・ベガ)が死に、ローレンスもここで死ぬという内容が吹き込まれていた。二人は互いを疑いながらも、協力して部屋を脱出しようとする。二人はのこぎりを二本発見するが、鎖を切ることはできない。ローレンスは、これは自分の足を切断して拘束から抜けろということだと悟る。ローレンスは、ジグソウと呼ばれる殺人鬼が、命を軽んじる人物にゲームと称して命がけの試練を与え、その人物を死に至らしめる事件が起きていることを知っていた。ローレンスは、彼のペンが事件現場に落ちていたことから、デビッド・タップ刑事(ダニー・グローバー)に犯人と疑われており、自分がそれに巻き込まれていると気づく。
一方、アリソンとダイアナのもとには、ローレンスの勤める病院の雑用係、ゼップ・ヒンドル(マイケル・エマーソン)がおり、二人を拘束していた。ゼップはモニタごしに、アダムとローレンスを見ていた。ジグソウがゲームの現場を観察していると考えたローレンスは一計を案じ、アダムに毒入りのたばこを吸わせて殺したように見せかける。アダムは死んだふりをして倒れるが、彼の足に電流が走り、狂言はあっさりとバレてしまう。ローレンスが壁の穴から手に入れた携帯が鳴る。時間切れにより、アリソンとダイアナが殺される報せだ。ゼップが拳銃を持ってアリソンに近づくが、アリソンはギリギリで自分の手を縛るロープをほどき、ゼップに逆襲。ローレンスの家を張り続けていたタップは現場に駆けつけ、ゼップを追う。アリソンは娘を連れて何とか逃げ出すことに成功するが、ローレンスには電話越しに格闘の音と銃声が聞こえるばかり。半狂乱になったローレンスは、とうとうのこぎりで拘束された自分の足を切断すると、中央の死体に這い寄り、銃を手に入れてアダムを撃つ。そこに、追うタップを撃ち殺してゼップがやってくる。ローレンスは、ゼップに、アダムを撃ったから妻と娘を解放しろと叫ぶが、ゼップはルールだと言ってローレンスに銃口を向ける。すると、死んだと思われていたアダムがゼップに襲いかかり、便器の排水タンクの蓋でゼップを滅多打ちにする。全てが終わったと考えたローレンスは、まだ繋がれたままのアダムに、外に助けを呼びに行くと告げ、大量出血で真っ青な顔をしながら、床を張って部屋を出ていく。アダムは、鎖の鍵がないかゼップの体をまさぐる。彼はテープレコーダーを持っていた。ジグソウの正体はゼップではなかった。彼もまた、ゲームの参加者で、ルールを守らないと殺される立場だったのだ。すると突如、部屋の中央に倒れていた死体が起き上がる。死体ではなかった。彼こそがジグソウ(トビン・ベル)だった。ジグソウは、特等席でゲームの様子を確認していた。ジグソウは部屋を出ると、叫び声を上げるアダムに「ゲームオーバー」と言って扉を閉ざすのだった。

上のあらすじは、書けていない情報が多いので、参考程度。ジグソウがローレンスの診ている患者のジョンだったり、アダムはタップの依頼でローレンスの密会を盗撮していたり、といった人間関係も描かれていた。おどろおどろしい独特の映像が魅力的で、死体が起き上がるところは、うわ、そうだったのか、というカタルシスがあった。ジグソウは特等席でゲームを診ているという伏線があり、であればジグソウが現場をモニタ越しに見ているはずはないのだが、観客はすっかりモニタ越しに現場を見ているゼップがジグソウなのだと思い込まされる。この手の映画で黒幕が序盤に顔を晒すのも珍しいので、その点からも、実はゼップはジグソウではないという情報を観客に明示していたのも心憎い。一方で、どうしてこの絶望的な状況にローレンスやアダム、ゼップが置かれ、ジグソウが何を目指したのか、はよくわからないままで、もやもやがすっきり晴れるカタルシスはあまり得られなかった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

より以前の記事一覧