評価3の映画

2025年6月19日 (木)

(3073) カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし

【監督】宮川麻里奈
【出演】角野栄子、くぼしまりお、横山眞佐子、宮﨑あおい(声)、ルイス・カルロス・ディアス、ソニア・カラド・ディアス
【制作】2024年、日本

童話作家の暮らしを捉えたドキュメンタリー作品。

「魔女の宅急便」で知られる角野栄子は、鎌倉で元気に暮らしている。彼女がブラジルに渡ってルイジンニョ少年と出会ったこと、大学の恩師にドキュメンタリー執筆を依頼されたこと、そこから文学作品を世に出すようになったことが語られる。撮影当時、88歳になっている角野氏だが、元気で朗らかな日常を送っていることが分かる。角野氏は62年ぶりに、ルイジンニョことルイス氏と再会。ルイスと彼の妻ソニアを、角野栄子児童文学館に連れて行く。ルイス氏は、自分が文学館の一部になっていることを喜ぶのだった。

角野栄子の作品を読んでみたいな、老後はこんなふうに暮らしたいな、と思わせる、ほのぼのとした作品。ただ、旧友の横山眞佐子さんに無駄にとげとげしい反応をしてみたり(横山氏が「私と角野氏は似ている、と話すと、角野氏が「この人の方が理屈っぽい」とか「この人の方が弱い」とか、言わなくてもいい反論をしていた)、娘のくぼしまりおと意見が合わなかったり、芝居じゃないからしょうがないか、と思うものの、映さなくてもいいようなちょっとギスギスした部分も垣間見えたりもしていた。

【5段階評価】3

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2025年6月18日 (水)

(3072) アイリッシュ・グッバイ

【監督】トム・バークリー、ロス・ホワイト
【出演】シェイマス・オハラ、ジェームズ・マーティン、パディー・ジェンキンス、ミシェル・フェアリー(声)
【制作】2022年、アイルランド

母の残したバケットリストをこなそうとする兄弟を描いた作品。23分の短編映画。

母(ミシェル・フェアリー)を亡くした兄トゥーロッホ(シェイマス・オハラ)と弟ローカン(ジェームズ・マーティン)は、アイルランドの農場で再会。神父(パディー・ジェンキンス)は、母親のジーンズから見つかったメモを取り出し、生前やりたかったことのリストだと思う、と話し、去って行く。トゥーロッホは、一人で暮らすことができないローカン(語られないがダウン症だろう)を叔母に預けようとするが、ローカンは、兄の作ったまずい食事に悪態をつきながら、母の農場で暮らすと言って譲らない。翌日、ローカンは、母の残したリストを達成すると宣言し、一つ目の太極拳をやり出す。あきれるトゥーロッホだったが、付き合うことにする。彼らは絵を描いたり、気球に見立てたヘリウム入り風船を飛ばしたり、リストをこなし始める。その一方でトゥーロッホは、農場売却の手続きを進める。
リストの99個目はスカイダイビングだった。ローカンは骨壺を高いところから投げ落とし、骨壺は割れてしまう。トゥーロッホはローカンの愚かさにあきれ果てる。神父が久々にやって来る。トゥーロッホが神父に、母のリストを弟に渡すなら言ってほしかったと話すと、神父は渡してないよ、と言ってポケットからメモを取り出す。ローカンが持っていたのは、母のメモではなく、彼の創作だったのだ。トゥーロッホはローカンを責めず、100個目をやろうと言い、宇宙に行くという願いを叶えるため、花火を打ち上げる。その夜、ローカンは101個目の願いをトゥーロッホに伝える。それは農場で二人で暮らし、トゥーロッホは料理のレッスンを受ける、というものだった。トゥーロッホは笑顔で承諾するのだった。

兄弟二人が絆を取り戻す、心温まるお話。ジェームズ・マーティンは、恐らく本人がダウン症なのだろう。特有の顔つきをしているが、ひげ面なのにどこか愛嬌のある憎めない顔をしており、本作の役どころにぴったりはまっていた。母親のバケットリストに見せかけて、最終的に兄との関係を修復するなんて企みを思いつくなんて、とても自立できないとレッテルを貼られた人間にできるとは思えない機転だった。

【5段階評価】3

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2025年6月16日 (月)

(3070) ピッチ・パーフェクト

【監督】ジェイソン・ムーア
【出演】アナ・ケンドリック、スカイラー・アスティン、アンナ・キャンプ、ブリタニー・スノウ、レベル・ウィルソン
【制作】2012年、アメリカ

大学の女性アカペラグループの活躍を描いた青春映画。次作は「ピッチ・パーフェクト2」(2015)。

大学に入ったベッカ(アナ・ケンドリック)は、DJとなり音楽プロデューサーとなる夢を描くが、父親(ジョン・ベンジャミン・ヒッキー)からは大学の勉強をしっかりするよう指示される。歌うことに興味のないベッカだったが、ベッカのシャワールームでの鼻歌を、女性アカペラグループ「バーデン・ベラーズ」のクロエ(ブリタニー・スノウ)が聞き惚れ、ベッカをアカペラグループに引き入れる。伝統を重んじるリーダーのオーブリー(アンナ・キャンプ)に、メンバーは窮屈さを感じる。大会で客席がしらけていることを感じたベッカは、自分のパートでアドリブを入れるが、チームは準決勝で敗退する。ところが、決勝に残ったチームの一人が大学生ではないことが発覚し、ベラーズが決勝に繰り上げ。ベッカがチームに復帰し、ベラーズは個性を生かしたグループに変身。見事なアカペラで優勝を飾るのだった。

恋愛とかメンバー同士の喧嘩とか、ドロドロした湿っぽいシーンは控えめで、明るくアカペラが楽しめる作品。オーブリーが大量のゲロを吐くシーンが二度もあるのは受け付けなかったが。リリー役のハナ・メイ・リーは菊地凛子に似ていた。

【5段階評価】3

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2025年6月14日 (土)

(3068) 泥棒成金

【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【出演】ケーリー・グラント、グレース・ケリー、シャルル・バネル、ブリジット・オーベール、ジェシー・ロイス・ランディス
【制作】1955年、アメリカ

濡れ衣を着せられそうになった元泥棒が真犯人を暴くため奮闘するさまを描いた作品。

屋根伝いに金持ちの宝石を盗む盗難事件が連続して起きる。かつての泥棒キャットことジョン・ロビー(ケーリー・グラント)と同じ手口であったため、警察はジョンを疑う。ジョンはかつての仲間に自分ではないと言いに行く。かつての仲間たちは更生してレストランを営んでおり、従業員たちはジョンに冷たく当たる。オーナーのベルタニ(シャルル・バネル)はジョンをかばい、給仕係のフッサール(ジャン・マルティネッリ)の娘ダニエル(ブリジット・オーベール)と逃げるよう手を回す。
ジョンは、真犯人が狙いそうな富豪を見定めるため、保険業を営むヒューソン(ジョン・ウィリアムズ)に接触。彼から、宝石を持つ富豪のジェシー・スティーブンス(ジェシー・ロイス・ランディス)とその娘フランシー(グレース・ケリー)を紹介してもらう。ジョンは次第にフランシーと親密になっていく。ジョンはフランシーの手引きでパーティ会場に潜入。そこに現れた真犯人は、ダニエルだった。ベルタニが首謀者で、フッサールが盗みをしていたが、フッサールが死に、娘のダニエルが引き継いだのだった。ジョンは身の潔白を証明し、フランシーと結ばれるのだった。

公開当時51歳のケーリー・グラントと、26歳のグレース・ケリーが結ばれるという、おじさん妄想全開の作品。推理中心のサスペンス作品というよりは、ジョンとフランシーの恋物語が中心。自分の作品に隠れ出演するヒッチコックは、バスに乗り込んだ主人公の隣に座っている乗客として登場していた。

【5段階評価】3

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2025年6月11日 (水)

(3065) ヘリウム

【監督】アンドレス・ウォルター
【出演】キャスパー・クランプ、ペル・フォーク・クルスベク、マリアナ・ヤンコビッチ
【制作】2013年、デンマーク

入院中の少年と清掃員の交流を描いた作品。23分の短編映画。

清掃員のエンツォ(キャスパー・クランプ)は、難病で入院している少年アルフレッドに、ヘリウムという夢の世界があると話しかける。アルフレッドは彼の話を聞くのが楽しみになる。看護師(マリアナ・ヤンコビッチ)は、エンツォがアルフレッドに元気を与えていると話す。しかしアルフレッドは容態が悪化し、隔離病棟に入れられてしまう。エンツォは病院のルールを破ってアルフレッドの病室に入り、アルフレッドに話を聞かせてあげるが、警備員に見つかって追い出されてしまう。看護師はエンツォをこっそりアルフレッドの病室に入れてあげる。アルフレッドは、ヘリウム行きのエクスプレスへの乗り方をエンツォに尋ねる。エンツォが話し始めると、ヘリウムと書かれた巨大な飛行船がアルフレッドの病室の窓の外に出現する。アルフレッドは荷物を背負って、飛行船に乗り込むのだった。

少年に、やがて訪れる死を怖い物ではなく、好きなことができて好きな人がいる夢のような場所だと伝える優しさが描かれている。アルフレッドが病気で苦しむ姿は描かれず、きれい事の作品ではあるが、自分が死ぬときはこのような気持ちでいたいな、という気にさせられた。

【5段階評価】3

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2025年6月 8日 (日)

(3062) 必殺仕掛人 春雪仕掛針

【監督】貞永方久(まさひさ)
【出演】緒形拳、岩下志麻、夏八木勲、林与一、山村聡、ひろみどり、花沢徳衛(はなさわとくえ)
【制作】1974年、日本

江戸時代の殺し屋の暗躍を描いた作品。池波正太郎の小説が原作。しゅんせつしかけばり、と読む。「必殺仕掛人 梅安蟻地獄」(1973)の続編。

小津屋という問屋に賊が入り、一家を皆殺しにして盗みを働く。手引きしたのは、小津屋に後妻に入った、猿塚のお千代だった。千代の育ての親、小兵衛(花沢徳衛)は、千代を諫めるが、千代は相手にせず、新たに大阪屋の手代(てだい)、幸太郎(村井国夫)に取り入り始める。元締の音羽屋(山村聡)から3人の盗人の仕掛けを依頼された藤枝梅安(緒形拳)は、小津屋に入った盗人の件だと当たりを付ける。梅安はまず、女好きの定六(地井武男)を銭湯で暗殺。千代に付く剣豪の三上(竜崎勝)は、梅安を怪しむ。
盗人三人の仕掛けを依頼したのは、小兵衛だった。冷酷非情な千代の心を入れ替えたい一心で、千代の手下の三人の仕掛けを依頼していた。三上は梅安の家に侵入するが、梅安は迎え撃ち、小杉が助太刀をして三上を倒す。三上が倒された報せを聞いた千代は、しばらく江戸から離れることを提案するが、勝四郎(夏八木勲)はそれに反対する。
音羽屋の指示で千代を偵察した梅安は、千代が昔の女であることを音羽屋に告白する。梅安は千代に会い、あのうちにいると殺されるぞと忠告する。千代は梅安の家を訪ね、9年前に梅安に捨てられた恨みを伝え、泣き崩れる。梅安は千代の待つ隠れ家に行き、勝四郎の到着を待つが、それは千代の罠だった。梅安は千代の手下に捕らえられ、拷問を受ける。そこに小兵衛が現れ、拷問を引き受けると、梅安に、自分が起こり(仕掛けの依頼人)だと告げ、梅安を逃がす。小兵衛は千代に心を入れ替えるよう伝えるが、勝四郎に斬り捨てられる。小兵衛を殺され、嘆き悲しむ千代は、手下に向かって、大阪屋の盗みを延期すると告げる。勝四郎は千代に従わず、大阪屋の蔵の合鍵を手に入れ、手下を連れて大阪屋の蔵に忍び込むが、そこには音羽屋や小杉らが待ち受けていた。勝四郎の一味はあえなく全滅させられる。梅安は、一人待つ千代に近づく。千代は命乞いをするが、梅安は千代の首に針を突き立てる。
仕事を終えた梅安は、音羽屋と小杉に、殺しの針はしばらく封印すると話す。小杉は、真面目に生きていても人の恨みを買わずにいることはできないものだ、と話すのだった。

岩下志麻の演技力が光る作品。不幸な境遇で盗人の首領となった千代は、ときに男にすがり、ときに男を裏切り、真の姿が見えない。最期のシーンでも、死を覚悟しているようでありながら、迫る梅安から逃げ回り、捕まると悲鳴を上げる。ラストで、人の恨みを買うような生き方から距離を置こうとする梅安に、人の恨みを買わずに生きることなどできないと小杉が話すシーンも、印象的だった。

【5段階評価】3

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2025年6月 6日 (金)

(3060) 必殺仕掛人

【監督】渡辺祐介
【出演】田宮二郎、高橋幸治、山村聡(そう)、津坂匡章(まさあき)、川地民夫、野際陽子、森次晃嗣、室田日出男、ひろみどり
【制作】1973年、日本

江戸時代の殺し屋の暗躍を描いた作品。池波正太郎の小説が原作。次作は「必殺仕掛人 梅安蟻地獄」(1973)。

鍼医者の藤枝梅安(田宮二郎)は、元締の依頼で殺しを請け負う仕掛人としての裏の顔を持っていた。梅安は音羽屋半右衛門(山村聡)からの依頼で、蝋燭問屋の辻屋文吉(穂積隆信)の後添い、お照(川崎あかね)を暗殺。その様子を見ていたお照の同業者、孫八(川地民夫)は、梅安が仕掛人だと見抜き、徳治郎(浜田寅彦)と連れ立って湯治に出た梅安のあとを付ける。徳治郎は、悪人だったお照の父親、音蔵を仕掛けており、孫八は報復のため徳治郎を殺す。
梅安の仲間、西村左内(高橋幸治)は、八丁堀同心の峯山又十郎(室田日出男)から、30両払えば同心にしてやると持ちかけられていた。峯山は町人にたかって金をせしめる悪者だった。八丁堀を仕切る三の松の平十(へいじゅう)(河村憲一郎)は、たびたびゆすりを働く峯山の仕掛けを音羽屋に依頼していたが、平十に取り入った妾のお吉(きち)(野際陽子)と、孫八、峯山によって薬で弱らされ、殺されてしまう。平十の弟分である聖天(しょうてん)の大五郎(三津田健)は音羽屋に赴き、改めて平十の依頼した峯山の仕掛けと、新たに孫八の仕掛けを音羽屋に依頼する。平十の息子、為吉(森次晃嗣)は、お吉と孫八の悪行に業を煮やし、叔父の大五郎に相談。大五郎は二人の仕掛けを提案する。音羽屋は二人の仕掛けを梅安に依頼。梅安はお吉に近づき、暗殺を決行しようとするが、予定を変えて戻ってきた孫八に見つかり、簀巻きにされて川に投げ込まれる。様子をうかがっていた岬の千蔵(せんぞう)(津坂匡章)が梅安を救出し、梅安は九死に一生を得る。その頃、左内は峯山の仕掛けを終える。
梅安は改めて孫八とお吉の仕掛けを実行。為吉は大五郎に礼を言うが、大五郎は為吉に縄張りを自分によこすよう告げ、怒った為吉を手下に殺させる。元締め衆の会合で、大五郎が平十の縄張りを引き継ぐことが決まり、喜ぶ大五郎に客人が来る。大五郎が中庭に出ると音羽屋が現れる。音羽屋は大五郎に祝いの言葉を述べた後、自分を騙した罰として大五郎を殺害。大五郎は中庭の庭に浮く。
仕事を終えた梅安、左内、音羽屋は小舟で釣りをする。梅安は、殺したお吉が、不幸な境遇をともにした自分の妹だったのではないかと考えるが、左内はそんな偶然はありえないと一笑に付す。音羽屋は次の仕掛けの話を二人に始めるのだった。

大五郎の依頼がなぜ音羽屋への裏切りだったのか、よく分からなかったが、悪者が成敗されるお話。本作の梅安は、一度お吉の暗殺に失敗したり、女たらしの一面を見せたり、三枚目の顔も見せていた。

【5段階評価】3

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2025年6月 4日 (水)

(3058) 劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~

【監督】大森貴弘(総監督)、伊藤秀樹
【出演】神谷浩史(かみやひろし)(声)、井上和彦(声)、村瀬歩(声)、堀江一眞(声)、高良健吾(声)、島本須美(声)
【制作】2018年、日本

妖怪と人との関わりを描いたアニメ作品。緑川ゆきの漫画が原作。

祖母にあたる夏目レイコ(小林沙苗)から、妖怪の名を封じた友人帳を受け継いだ夏目貴志(神谷浩史)は、妖(あやかし)を見ることができる。ある日、貴志は、五丁町(ごちょうまち)からやって来た妖、もんもんぼう(小峠英二)に名を返す。ともに暮らす藤原塔子(伊藤美紀)からお使いを頼まれた貴志は、五丁町に行き、そこで、中学時代のレイコを知る夫人、津村容莉枝(よりえ)(島本須美)に偶然出会う。容莉枝は貴志がレイコの孫だと聞き、貴志を家に招く。容莉枝の家には、息子の椋雄(高良健吾)がいた。椋雄は優しい笑顔で貴志を迎える。
貴志は、もんもんぼうの様子を見るという名目で、ニャンコ先生(井上和彦)を連れて再び五丁町に向かう。3体の妖を見つけたニャンコ先生は、彼らを追いかけて社近くの木のうろに飛び込み、何かの種を体にくっつけて帰ってくる。種に気づいた貴志がその種を家の庭に捨てると、それは翌日、巨木に成長しており、ニャンコ先生に似た実が三つ成っていた。食いしん坊のニャンコ先生がそれを食べると、木は消滅。やがてニャンコ先生は苦しみ出し、言葉の話せない三匹の小さな子猫に分裂する。三匹はやがて一匹ずつ行方不明になり、そのうちの一匹を見つけて追いかけた女子生徒、多軌透(たきとおる)(佐藤利奈)は、友だちから存在を認識されなくなってしまう。
貴志は残っていた一匹のニャンコ先生を連れて、田沼要(堀江一眞)とともに逃げたニャンコ先生を探す。ニャンコ先生は容莉枝の家におり、そこには透もいた。透はなぜか、友人である貴志や田沼を覚えておらず、容莉枝の親戚ということになっていた。ニャンコ先生二匹が縦に重ねると言葉を話すようになる。ニャンコ先生は、椋雄が妖怪ホノカゲであることを見抜く。ホノカゲは、出会う人の中に、過去からの知人として入り込むという能力を持っていた。しかし、その地を離れると人々から忘れ去られてしまうため、ホノカゲには友人がいなかった。ホノカゲがお社のそばに立つ木のうろの中に閉じこもっていると、そこに足繁く通う容莉枝に気づく。成長した容莉枝が息子を失ったことを知り、ホノカゲは彼女に近づき、椋雄として容莉枝と6年間過ごしたのだった。ホノカゲは容莉枝のもとを去る決心をする。もう一匹のニャンコ先生も見つかり、ホノカゲは三匹のニャンコ先生と木のうろに入る。そこに、ホノカゲを狙っていた式、ハバキ(落合福嗣)が襲いかかってくる。式の解放に来ていた名取周一(石田彰)が貴志と協力してハバキを解放。貴志に名を返してもらったホノカゲは小さな光となって空に散る。貴志は容莉枝に会いに行き、容莉枝が椋雄の死を乗り越えたことを見届けるのだった。

独特な世界観のアニメ作品。コミカルな要素もありながら、後半は文学的な趣向を凝らした展開。漫画もテレビアニメも見たことがなく、予備知識なしで鑑賞したが、物語は分かりやすかった。

【5段階評価】3

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2025年6月 2日 (月)

(3056) 仕掛人梅安

【監督】降旗康男
【出演】萬屋錦之介、中村嘉葎雄、伊丹十三、藤田進、小川真由美、中尾彬、五代高之、真行寺君枝、宮下順子
【制作】1981年、日本

江戸時代の暗殺者の活躍を描いた時代劇。池波正太郎の小説が原作。

鍼師を表の稼業とする藤枝梅安(萬屋錦之介)は、依頼を受けて暗殺を行う仕掛人としての裏の顔を持っていた。相棒の彦次郎(中村嘉葎雄)と仕事を終えた梅安は、料亭で情婦のおもんと抱き合う。厠に出た梅安は、廊下で安部主税之助(中尾彬)という男が、若い女を手込めにしているのを見かける。女は殺されてしまう。主税之助に手を焼く父親の安部長門守(ながとのかみ)(中村勘五郎)は、主税之助の殺害を裏稼業の元締め、音羽屋半右衛門(藤田進)に依頼する。
長門守の弟、近江屋佐兵衛(伊丹十三)が大阪から江戸にやって来る。佐兵衛は病気で苦しむ妹のお園(小川真由美)に梅安を紹介。梅安は、近江屋が大阪の元締めであることを知りつつ、お園の針治療を請け負う。音羽屋から主税之助殺害の依頼を受けた梅安は、料亭の部屋で寝る彼の殺害を実行するが、その様子を、部屋に隠れていた女中、お咲(真行寺君枝)に見られてしまう。梅安は彼女を殺さず、その場を去る。それを聞いた彦次郎は、お咲を始末するべきと主張。自らお咲の暗殺をもくろみ、彼女を尾行する。お咲は、小杉十五郎(五代高之)という若い侍に会い、小杉は、お咲の弟の宗太郎(島英津夫(えつお))の療治を頼むため、お咲を梅安のもとに連れて行く。お咲と梅安は相手を見て互いに驚くが、主税之助殺害のことは互いに口にせず、梅安は宗太郎を療治する。
元締めの音羽屋が、口封じのため安部長門守の手のものに襲撃される。近くにいた小杉が音羽屋に加勢し、音羽屋は難を逃れる。近江屋は梅安を呼び寄せ、音羽屋を暗殺して近江屋に付くように言うが、梅安はそれを断る。梅安が帰宅すると、お咲がいた。梅安はお咲から、梅安が主税之助を殺したとき、盗みを働くために部屋に隠れていたこと、過去に主税之助に抱かれおもちゃにされたことを告白する。お咲にとって梅安は、恨む相手を殺してくれた人だったのだ。日が暮れると、梅安の家に近江屋の手のが襲いかかる。梅安は逃げるが銃撃で重傷を負い、争いに巻き込まれたお咲は殺されてしまう。瀕死の梅安をお園が見つけ、隠れ家に匿う。料亭に戻ったお園は、兄の近江屋が梅安を探すよう手下に命じているのを見て、梅安を襲ったのが兄であることを知る。お園は梅安のもとに戻り、近江屋とは実の兄妹でありながら男女の関係を持ち、近江屋の呪縛から逃れられずにいることを告白し、自分を連れてどこかに逃げてほしいと懇願する。梅安はそれには答えず、お園のもとから消える。
梅安は、彦次郎、小杉と合流。長門守と近江屋の仕掛けを実行することにする。梅安は、船には乗らないように、という文をお園に届けるが、お園は長門守と近江屋と同じ船に乗せられてしまう。彦次郎が船頭のふりをして乗り込み、小杉は小舟から屋形船に飛び移って手下たちを倒す。梅安は橋から屋形船に飛び移り、長門守と近江屋を殺害。お園は梅安を見て驚く。お園は梅安に抱き寄せられ「嫌なこと苦しいことみんな忘れられる。嬉しい」と言い残す。梅安はお園の首に針を突き立て、命を奪う。小杉の操る船の上で、彦次郎は梅安に「あの人はなんと言ったんだね」と問う。梅安は「ひとでなし」と答えるのだった。

主人公側と悪者側が分かりやすく分かれた勧善懲悪の作品。なぜお咲は梅安のことを誰にも話さないのかという、ご都合主義的状況について、後半で種明かしがある点はよかった。伊丹十三の演じる近江屋が金髪のちょんまげという独特の容貌をしていた。藤枝梅安役の萬屋錦之介と彦次郎役の中村嘉葎雄の風貌が似ているが、二人は実の兄弟。

【5段階評価】3

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2025年5月31日 (土)

(3054) 男はつらいよ 寅次郎純情詩集

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、檀ふみ、京マチ子、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、浦辺粂子、吉田義夫、岡本茉利
【制作】1976年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第18作。「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」(1976)の続編。次作は「男はつらいよ 寅次郎と殿様」(1977)。

とらやでは、博(前田吟)とさくら(倍賞千恵子)が、満男(中村はやと)の家庭訪問に来る柳生雅子先生(檀ふみ)を待っていた。そこに寅次郎(渥美清)が帰ってきて、若くて美人の雅子先生に一目惚れ。家庭訪問に割り込んで担任と両親のやりとりを台無しにし、博の怒りを買う。とらやを去った寅次郎は、長野県上田市の別所温泉で、昔なじみの旅芸人一座と再会。谷町気取りで一座との宴会を開いた寅次郎だったが、持ち合わせはなく、無銭飲食のかどで警察に捕まってしまう。寅次郎は、迎えに来たさくらととらやに戻る。さくらは、寅次郎が、娘の年齢ほど年の差のある雅子先生に熱を上げたことを責め、雅子先生の母親を好きになる分にはいいが、と言う。するとそこに、雅子先生が母親の綾(京マチ子)を連れてくる。綾を好きになっていいとお墨付きをもらった寅次郎は、綾にあれこれ世話を焼き始める。
さくらは雅子先生から、綾が病気を患っており、本人には知らせていないが余命わずかな状態であることを告白される。そうとは知らない寅次郎は、綾を水元公園にピクニックに連れて行ったり、とらやで宴席を設けたりする。とらやの一同と綾は、とらやで食事をしながら、綾が将来どんな仕事をするのがいいかで盛り上がるが、雅子先生とさくらは、思い切り笑うことができないのだった。
寅次郎は、さくらから、綾の容態が悪化したと聞き、急いで綾の家に向かう。綾は寅次郎の来訪を喜ぶ。寅次郎は、仕事を終え、再度、綾の見舞いに向かう。迎えに出た雅子先生は、綾がとらやで振る舞われた芋の煮っ転がしが食べたいと言っていると寅次郎に告げる。寅次郎は芋を買い込んで慌ててとらやに駆け込み、さくらに煮っ転がしを作らせる。そこに、源公(佐藤蛾次郎)が現れ、綾の屋敷の前に車がたくさん停まっていたと伝える。さくらと寅次郎は綾の家に行くが、すでに綾は亡くなっていた。雅子は屋敷を引き払い、新潟の六日町の学校に転任する。寅次郎は雪の中、雅子先生を訪ね、雅子先生は寅次郎の来訪に大喜びするのだった。

綾が亡くなった後、寅次郎が綾と雅子先生の住む屋敷を訪れ、綾の余命がわずかだと知っていたらできたことがあったかもしれないと後悔の念を伝えると、雅子先生が、母親は寅次郎に愛されて幸せだったと伝え、嗚咽するシーンは感動的だった。ほのぼのとした人情噺が多いシリーズだが、本作は泣けた。

【5段階評価】3

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