評価5の映画

2025年2月19日 (水)

(2953) トップガン マーヴェリック

【監督】ジョセフ・コシンスキー
【出演】トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、グレン・パウエル、モニカ・バルバロ、バル・キルマー
【制作】2022年、アメリカ

教官として重要任務に就いたパイロットの活躍を描いたアクション映画。「トップガン」(1986)の続編。

超音速機ダークスターのテストパイロットを務めるピート・ミッチェル(トム・クルーズ)、コードネーム「マーベリック」は、ならず者国家によるウラン濃縮プラントの破壊作戦の実行のため、パイロットの教官に着任。訓練生の中には、マーベリックの相棒で、事故により死亡したグース(アンソニー・エドワーズ)の息子、ルースターことブラッドリー・ブラッドショー(マイルズ・テラー)がいた。マーベリックは、グースの妻(メグ・ライアン)から、息子をパイロットにしないでほしいと言われていたため、ルースターの海軍応募の願書を抜き取っており、それによって4年を無駄にしたルースターはマーベリックを恨んでいた。マーベリックは元同僚で今や病気で死の淵にあるアイスマンことトム・カザンスキー海軍大将(バル・キルマー)に会いに行き、悩みを相談。アイスマンは過去を水に流して指導してやれと助言する。
作戦の破壊対象となる施設は急峻な山に囲まれており、作戦遂行のためには、谷間を低空でジグザグ飛行したあとに急上昇し、山を越えたら背面飛行で急降下し、施設をレーダーでロックして爆撃したあと、再度急上昇して、敵の迎撃ミサイルをかわすという難易度の高い飛行が必要。トップガンと呼ばれる優秀な訓練生たちも訓練を成功させることができない。マーベリックは訓練目標を達成できず、一度お払い箱にされるが、恋人のペニー(ジェニファー・コネリー)に励まされ、自ら戦闘機に乗り込んで作戦通りの飛行をしてみせる。マーベリックは編隊長となり、自ら仲間を率いて作戦を遂行する。マーベリックは、僚機のパイロットとしてルースターを指名する。
空母から飛び立ったマーベリックたちは、施設の爆撃に成功。敵の迎撃ミサイルがマーベリックたちに降りかかり、マーベリックはルースターの危機を救うため、自ら盾となり、被弾して敵地に墜落する。パラシュートで脱出したマーベリックに、敵の戦闘ヘリが襲いかかるが、そこにルースターの戦闘機が現れ、戦闘ヘリを撃破。しかし、ルースターも迎撃ミサイルにやられ、パラシュートで脱出する。マーベリックはルースターの無茶な行動を叱りつつも、敵地から逃れるため、敵の旧式の戦闘機に乗り込んで脱出。二人の乗った戦闘機に第5世代戦闘機2機が気づき、接近してくる。マーベリックはルースターに鼓舞され、1機を不意打ちで撃墜、もう1機も激しいドッグファイトの末、撃破する。しかし、海上でさらにもう1機の敵戦闘機が現れ、マーベリックは必死で逃げるが敵戦闘機にロックされる。敵がミサイルを発射しようとした刹那、味方の戦闘機が敵戦闘機を撃墜。乗っていたのは、ルースターと仲違いしていたプライドの高いハングマンことジェイク・セレシン(グレン・パウエル)だった。命拾いしたマーベリックとルースターは無事に空母に帰還。仲間の祝福を受ける。ルースターとマーベリックのわだかまりは溶け、マーベリックはペニーと小型飛行機でのフライトを楽しむのだった。

パイロットをとにかくかっこよくおしゃれに描きました、という作品。いがみ合っていた二人が厚い信頼関係で結ばれる、粗野な性格の脇役が救世主として現れる、という、ベタな展開なのだが、帰還シーンは感動的。映像にも迫力があり、パイロットの激しい呼吸音も危険な飛行をうまく演出していた。今のご時世、CGなども使われているのだろうが、それをほぼ感じさせないできばえだった。

【5段階評価】5

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2025年1月31日 (金)

(2934) ゴジラ-1.0

【監督】山崎貴
【出演】神木隆之介、浜辺美波、青木崇高、吉岡秀隆、佐々木蔵之介、山田裕貴、安藤サクラ
【制作】2023年、日本

戦後間もない日本を襲うゴジラと人々との戦いを描いた怪獣映画。「シン・ゴジラ」(2016)の続作。

1945年、特攻隊員の敷島浩一(神木隆之介)は、機体が故障したと偽り、大戸島に不時着。そこにゴジラが現れ、橘宗作(青木崇高)を除く整備兵全員が、ゴジラに襲われて死亡する。敷島は東京に戻るが、両親は死んでいた。敷島は、赤子を抱いた若い女性、大石典子(浜辺美波)と出会う。典子も身寄りがなく、赤子は見知らぬ母親から託されたのだった。敷島と典子、赤子の明子の三人は共同生活を始め、隣に住む太田澄子(安藤サクラ)も子育てに協力する。
敷島は太平洋の機雷を駆除するという危険な任務に就き、そこで艇長の秋津淸治(佐々木蔵之介)、技術者の野田健治(吉岡秀隆)、乗組員の水島四郎(山田裕貴)と知り合う。ゴジラが米軍艦を襲うようになり、敷島たちの船は駆逐艦高尾が到着するまでの時間稼ぎをする任務をさせられる。敷島たちが現れたゴジラに必死で立ち向かう中、高尾がようやく現れるが、ゴジラは高尾を圧倒的な力で撃沈してしまう。ゴジラは東京に上陸して銀座を襲い、敷島は典子と必死で逃げるが、典子はゴジラの熱戦により起きた爆発に巻き込まれてしまう。
生き残った敷島は、野田たちとともにゴジラと戦う道を選ぶ。野田は、ゴジラにフロンガス発生装置を巻き付けて相模湾沖で深海1,500メートルまで一気に沈めて水圧で倒すという作戦を立案。敷島は日本軍が開発中だった戦闘機、震電に乗り込むことにし、自分を恨んでいるはずの橘を呼び寄せ、震電を整備させる。震電に乗り込んだ敷島は、ゴジラを作戦海域に誘導。作戦は成功し、ゴジラは深海に沈むが、絶命しておらず、野田は予備作戦として、バルーンを膨らませてゴジラを急激に海面に上げて減圧によりゴジラを倒そうとする。それでもゴジラは倒れず、熱戦を吐こうとするが、その口に敷島の震電が突っ込み、震電はゴジラの頭部ごと大破。敷島は脱出装置により、爆発を免れていた。橘は敷島に生き残る道を取らせたのだった。死んだと思われていた典子は病院に担ぎ込まれており、無事だった。明子を抱いて病院を訪れた敷島は、典子の無事を泣いて喜ぶ。深海に沈むゴジラの骸は、怪しく鼓動を始めるのだった。

昭和時代の着ぐるみとミニチュア模型丸出しのゴジラシリーズとは一線を画し、特撮は本格的(オープニングのゼロ戦はちょっとCGぽかったが)。物語も感動的で、敷島の決死の突入シーンは胸が熱くなった。最後に典子が生きていましたというオチは、ちょっと見え見えだったが、首筋に謎のあざがある(この後、典子が何かの後遺症に悩まされるのかもしれないし、もしかするとゴジラのような異常な再生能力を持ったのかもしれない、と思わせる)という一ひねりが加えられていた。また、佐々木蔵之介の演技がやや芝居がかっていたのだが、あえてああいう不自然なキャラにしたのか、佐々木蔵之介の個性なのか。ちなみに、銀座でゴジラに襲われる市民の中に、橋爪功が混じっていた。本作は、テレビ放映を機にAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】5

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2025年1月 7日 (火)

(2910) こん、こん

【監督】横尾初喜
【出演】遠藤健慎、塩田みう、中山晴華、森あゆ、大橋彰、栄信、遠藤久美子
【制作】2023年、日本

大学生の男女の恋の顛末を描いた青春恋愛映画。

海岸で、カメラを持った若者(遠藤健慎)が、年上の男(栄信)から「堀内賢星くん?」と声をかけられる。男は妻とおぼしき女性(遠藤久美子)と一緒で、宇海(うみ)という人物の話を賢星に尋ねる。賢星は、宇海との出会いを話し始める。
長崎で平凡な大学生活を送っていた賢星は、ある夜、酔ってうめいている高岡雪乃(中山晴華)と、それを介抱している七瀬宇海(塩田みう)に出会う。二人は賢星と同じ大学で、雪乃は、賢星にとって高嶺の花のミスコン優勝者。雪乃は酔い潰れており、賢星は宇海と飲み明かす。雪乃は親しくなった賢星を食事に誘い、賢星は有頂天になる。雪乃は激辛の店に賢星を連れて行き、次々に辛い料理を頼む。辛い料理が苦手な賢星が困っていると、遅れてきた宇海が現れ、賢星が苦しんでいるのを察したように、激辛料理を自ら平らげ、無頓着に賢星に料理を勧める雪乃をよそに、さりげなく賢星をかばう。雪乃は、先日のお礼だからおごると言うが、支払ったのは、店にやってきた雪乃の年上の彼氏だった。賢星と宇海は二人で過ごすことになり、ある日、宇海は、賢星が好きだ、と素直に賢星に告白。二人の生活が始まる。
カメラや甘いカレー、家族の手形が好きな宇海に、賢星は感化されていく。宇海との暮らしに幸せを感じていた賢星だったが、大学で宇海が他の男(橋本和太琉(わたる))と親しそうにしているのを見て嫉妬し、バイト先の先輩(大橋彰)に誘われた合コンに参加。そこで出会った年上の女性、長沢杏花(森あゆ)と浮気し、杏花は賢星の部屋に泊まり込む。そこに合鍵を持っていた宇海が現れる。杏花は、賢星に合鍵を持った女がいることを知って怒って帰ってしまう。宇海は賢星の浮気を怒るどころか、宇海も男と親しそうにしていたじゃないかと責める賢星に、不愉快な思いをさせてごめん、と謝る。感情の行き場を失った賢星は、誰とでも仲よくできる宇海に悪態をつき、それでも賢星が好きだと言う宇海に、賢星は、重い、浮気相手の方が一緒にいて楽だ、と言ってしまう。宇海は持ってきた土産を部屋に置き、賢星が幸せならそれでいいと言い残して去っていく。
あっけなく宇海との生活が終わってしまった賢星は、ある日、宇海が溺れて亡くなったというニュースをスマホで見て唖然とする。宇海は、賢星と一緒に行こうと約束していた島に一人で渡り、そこで溺死事故に遭ったようだった。冒頭で賢星に話を聞いていたのは、宇海の離婚した両親だった。母親は宇海のスマホを賢星に見せ、暗証番号が分からないか、と賢星に話す。暗証番号になっていたのは、賢星の誕生日だった。スマホには、宇海が残していた音声の日記が記録されていた。そこには、賢星に好きな人ができたらしいこと、賢星と島に来たかったこと、賢星に愛されたかったことを話す宇海の声があった。賢星は嗚咽し、聞き続けるのもままならなかったが、宇海の両親は、賢星の肩を優しく抱き、三人は最後まで録音を聞く。「ごめんなさい」と言うのが精一杯の賢星は、「宇海と来たかったなぁ」と口にし、母親は泣きながら賢星の肩を抱くのだった。

いやあ、泣いた。序盤は青春恋愛映画の片思いあるあるの展開なのだが、クライマックスのシーンはすさまじい感動だった。もちろん、そりゃあ人が死ねば泣ける作品になるよね、だし、宇海はいかにも男の妄想が生み出したいい人キャラだし、宇海が親しくしていた男は単に福岡で急に入院した母親に会いに行く宇海のために車で駅まで送っただけだったし、なんだが、それでも、賢星のほんのちょっとした反発心によって、宇海と別れてしまったことへの悔恨を想像すると、涙を流さずにはいられない。序盤3点から、一気に評価5に上り詰める作品だった。
宇海役の塩田みうは、ちょっと上野樹里に似ていた。

【5段階評価】5

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2024年11月25日 (月)

(2867) タイガー 伝説のスパイ

【監督】カビール・カーン
【出演】サルマーン・カーン、カトリーナ・カイフ、ランビール・ショウリー、ロシャン・セス、ギリーシュ・カルナード
【制作】2012年、インド

インドとパキスタンのスパイの恋の逃避行を描いたアクション映画。次作は「タイガー 甦る伝説のスパイ」(2017)。

インドのスパイ、タイガー(サルマーン・カーン)は、アイルランドのダブリンに赴き、情報の横流しの疑いのあるキドワイ教授(ロシャン・セス)の監視任務に就く。タイガーは、キドワイ教授宅の家事手伝いのゾヤ(カトリーナ・カイフ)と出会い、恋が芽生える。ところが、ゾヤはインドの敵国パキスタンのスパイだった。タイガーはゾヤにインドに寝返るよう説得するが、ゾヤは断る。タイガーはゾヤを殺さず、逃がす。
イスタンブールでゾヤに再会したタイガーは、組織を抜けて二人で逃亡することを持ちかける。インドのスパイ組織RAW、パキスタンのスパイ組織ISIの双方が二人を追うが、二人は神出鬼没の逃亡生活を続ける。両国の組織は初めて協力して捜査活動を行う。それは両国の融和を願うタイガーの思惑通りなのだった。

よくできた(面白い、というだけの意味ではなく、丁寧で凝った作りの)インド映画としては、有名な「ムトゥ 踊るマハラジャ」(1995)が印象にあるが、本作も素晴らしい作品だった。アクションシーンは建物の構造を生かしたパルクールが多用されており、銃撃戦が派手なだけのアクションとは一線を画している。世界を股に掛けた展開も豪華。物語も二転三転しながら進むので、主人公二人が互いを裏切ることなくハッピーエンドに向かう爽快さゆえの単純さに陥らない工夫が見られる。上のあらすじはかなり端折って書いているが、スパイとして自分の身分を偽りながら任務を続け、恋愛も許されないことへの葛藤も丁寧に描かれていた。アクション映画では派手さを狙いすぎて現実味が薄れてしらけてしまうこともあるが、カーアクションや、セスナでの逃走など、ぎりぎり現実的で見ていて楽しい。欠点が特に見当たらない作品だった。次作も楽しみだ。インド映画によくある集団のダンスシーンが何度か出るところは、好みが分かれるかもしれない。

【5段階評価】5

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2024年8月19日 (月)

(2769) ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

【監督】コリン・トレボロウ
【出演】クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、イザベラ・サーモン、サム・ニール、ローラ・ダーン、キャンベル・スコット
【制作】2022年、アメリカ

恐竜が人類と共存するようになった世界を描いたSF作品。「ジュラシック・ワールド/炎の王国」(2018)の続編。

ジュラシック・ワールドの従業員だったオーウェン・グレイディ(クリス・プラット)とクレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)は、ベンジャミン・ロックウッドの孫娘メイジー(イザベラ・サーモン)と山奥で暮らしていた。近くにはオーウェンが育てたベロキラプトル、ブルーが住んでおり、彼女は子どものベータを育てていた。指名手配犯の密猟者レイン・デラコート(スコット・ヘイズ)は、ベータを捕獲し、メイジーをさらう。
テキサスではDNAの操作により巨大化したイナゴが大量発生。農作物が食い荒らされるが、恐竜の保護活動を認められたバイオシン社の種で育った穀物には被害がなく、科学者のエリー・サトラー(ローラ・ダーン)は、バイオシン社を怪しむ。エリーは、ジュラシック・パークで行動をともにしたアラン・グラント(サム・ニール)を誘ってバイオシン社の研究施設「サンクチュアリ」に向かう。そこには、おなじくジュラシック・パークでともに恐竜と戦ったイアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)もいた。アランとエリーは、施設内で育成されているイナゴのDNAの採取に向かう。
オーウェンとクレアは、メイジーを追って恐竜の闇市場が開かれるマルタ島に向かう。メイジーとベータは、バイオシン社のCEO、ルイス・ドジスン(キャンベル・スコット)と通じている闇商人、ソヨナ・サントス(ディーチェン・ラックマン)が引き取っていた。クレアはソヨナに襲われるが、スタンガンで逆襲し、メイジーとベータがサンクチュアリに送り込まれたことを聞き出す。闇取引の世界に身を落としていた元軍人のケイラ・ワッツ(ディワンダ・ワイズ)は恐竜に追われているクレアを救い、サンクチュアリ行きの飛行機に乗り込む。オーウェンはデラコートと争うが、デラコートは恐竜に食い殺される。オーウェンは恐竜に追われながらもバイクでクレアに追いつき、クレアとともに飛行機でサンクチュアリを目指す。飛行機は巨大翼竜ケツァルコアトルスに襲われながらも、何とかサンクチュアリに到着する。
メイジーは、サンクチュアリの研究者ヘンリー・ウー(B・D・ウォン)から、自らの出生の秘密を聞かされる。メイジーの母親シャーロット(エルバ・トリル)は、自らのDNAをコピーして妊娠・出産していた。自分がクローンだと思っていたメイジーは、母親がいたことに驚く。シャーロットは自分に遺伝性疾患があることを知り、自分のDNAから遺伝性疾患の情報を消してメイジーを生んでいた。巨大イナゴの誕生に手を染めてしまったヘンリーは、遺伝性疾患の操作方法を知ることで、自らの過ちを正したいとメイジーに話す。
サンクチュアリの地下研究室に潜入したアランとエリーは、イナゴのDNAの採取に成功。自力で逃げ出したメイジーと合流した二人は、バイオシン社の広報部長ラムジー・コール(マムドゥ・アチー)の協力を密かに得て、メイジーとともに施設の脱出を試みる。それに気づいたドジスンは、彼らの乗っているハイパーループポッドを停止させる。アランはエリー、メイジーとともに坑道跡を抜け、ドジスンに捨て台詞を吐いてバイオシン社を出たイアンと合流。機械音痴のイアンの運転する車は、崖地を転落するが、そこにはオーウェンとクレア、ケイラがいた。クレアとオーウェンはメイジーの無事を喜ぶ。
ドジスンは証拠隠滅のためにイナゴを焼き払うが、イナゴは施設を抜け出し、サンクチュアリは火の海となる。ドジスンは恐竜の胚を収めたスプレー缶(「ジュラシック・パーク」(1993)で登場したものだろう)を抱えて施設から逃げようとするが、口から毒液を吐く恐竜ディロフォサウルスに襲われてしまう。アランたちは、翼竜の飛行高度を制限する装置を起動させ、ベータを確保。巨大イナゴの問題解決を誓うヘンリーとともにヘリで脱出。ラムジーはバイオシン社の企みを国会で証言することになり、アラン、エリー、イアンも意見聴取に臨む。ヘンリーは遺伝子疾患を持つイナゴを放ち、アランたちはベータをブルーに返す。人類は新たな世界で恐竜と共存することになるのだった。

ジュラシック・ワールド」シリーズ完結編となる作品。前作で「アラン博士(サム・ニール)も出ていたら受け狙いのやりすぎ」と書いたが、本作では、アラン博士のみならず、エリーとイアン、さらには、「ジュラシック・パーク」で恐竜の胚を盗もうとしたドジスンまで(俳優は違うが)登場。ドジスンを襲うのが、1作目でドジスンに買収されて胚を盗んだデニスが襲われたのと同じディロフォサウルスだったりと、シリーズファンには楽しいオマージュが見られた。主人公の不死身さはお約束だが、映像や音響に迫力があり、映画館で観たら大満足の作品だろう。結局、ジュラシックシリーズ6作は、「ジュラシック・パークIII」(2001)に評価4を付けた以外は、全て評価5という結果だった。

【5段階評価】5

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2024年7月28日 (日)

(2747) 犯罪都市

【監督】カン・ユンソン
【出演】マ・ドンソク、ユン・ゲサン、チョ・ジェユン、ホン・キジュン、ホ・ドンウォン、チン・ソンギュ、キム・ソンギュ
【制作】2017年、韓国

極悪非道の中国マフィアの逮捕に挑む韓国警察の奮闘を描いたアクション映画。

2004年、韓国の衿川(クムチョン)警察の管轄に、中国系マフィアの黒竜(フンリョン)組のチャン・チェン(ユン・ゲサン)、ソンラク(チン・ソンギュ)、ヤン・テ(キム・ソンギュ)の3人組が現れ、地元マフィアの幹部や借金返済ができなくなった者を殺害。ファン社長のカラオケ店の店員の腕を斧で切断するといった凶悪な行為を行う。強力班の副班長マ・ソクト(マ・ドンソク)は、ナイフを持ったヤクザを手玉に取るような強面の刑事。極悪非道の限りを尽くすマ・ソクトを追い詰め、空港のトイレで一対一の対決に挑み、チャン・チェンを逮捕するのだった。

無骨で粗暴だが、ちょっと刺されたぐらいではびくともせず、肝が据わっていてかっこいい。弱きを助け、強きをくじく。オーソドックスなようで新しいヒーローだった。韓国のバイオレンス映画の代表作だろう。本作はBS松竹東急の「よる8銀座シネマ」で、残念ながら吹替版のみの放送。日本語字幕がちゃんと選べるようになっていたのはBS松竹東急らしいサービス。

【5段階評価】5

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2024年5月 6日 (月)

(2664) 60歳のラブレター

【監督】深川栄洋
【出演】中村雅俊、原田美枝子、井上順、戸田恵子、イッセー尾形、綾戸千絵、原沙知絵
【制作】2009年、日本

60歳を迎える男女の恋や愛情を描いた作品。

大手建設会社の専務取締役、橘孝平(中村雅俊)は定年を迎え、会社を辞して愛人(原沙知絵)の営むベンチャー企業に再就職する。30年間連れ添ったちひろ(原田美枝子)とは離婚。家族は孝平の不倫を知っており、娘のマキ(星野真里)は父親に冷たく当たる。専業主婦で仕事経験のないちひろは、独身女性翻訳家の長谷部麗子(戸田恵子)の家事手伝いを始める。ちひろは、麗子に勧められて、バツイチ作家の麻生圭一郎(石黒賢)の主催するパーティに出席し、麻生の目に留まる。麻生とデートしたちひろは、従順に夫に尽くしてきた過去を明かし、一度だけラベンダー畑を見に行きたいとわがままを言ったことがある、と話す。麻生はちひろに同情し、彼女を富良野に誘う。孝平は、麻生がスポーツカーでちひろを家まで送るのを見かけ、嫉妬する。孝平は新会社にベテランとして入ったのだが、大手企業にいた頃の影響力を喪失していることを自覚する。
麗子は、翻訳の技術的監修を医師の佐伯静夫(井上順)から受けていた。静夫は妻と死別しており、一人娘の理花(金澤美穂)と二人暮らし。静夫は血を見るのが苦手で大腸菌の研究に没頭してきた経緯を持ち、医者としては冴えない男だったが、麗子は彼に好意を抱く。麗子は料理上手のちひろに教えを請いながら、静夫と理花を食事に招き、目いっぱいもてなすが、理花は、気を遣って話しかける麗子の気持ちも、麗子に英語を教えてもらうといいと言って両者の関係をとりなそうとする父親の気持ちも一顧だにせず、煙草と酒をたしなみ、派手な服と化粧に身を包んだ麗子を罵倒し、部屋から出て行ってしまう。静夫は娘の非礼を麗子に謝罪するが、麗子は静夫を見送り、さよなら、と別れを告げる。部屋で落ち込んでいた麗子の部屋に、理花が再び現れる。ひどいことを言ったことの謝罪かと思ったら、まじめな父親に軽い気持ちで接しているのなら許さない、という宣戦布告だった。麗子は、この年で人に恋することが軽い気持ちな訳がないだろう、子供と大人を使い分けてかき回すな、と本気で言い返した後、父親は返す、と力なく告げる。理花は部屋のソファで横たわったままの麗子の横で何かをしたため始める。
ちひろの行きつけの魚屋を営む松山正彦(イッセー尾形)と光江(綾戸千絵)の夫妻は、表面上は口喧嘩ばかりだが、仲睦まじく暮らしており、糖尿気味の正彦のジョギングに妻が付き合っていた。正彦は元グループサウンズのボーカルで、追っかけをしていた光江と結婚したのだった。正彦はジョギングルートの楽器店に飾られたギターの名品マーチンを物欲しそうに眺めるのが常だったが、ついにマーチンは売れてしまう。妻の支援の甲斐もあって、正彦は担当医の静夫から、ようやく制限付きの飲酒の許可が出て喜ぶが、静夫は正彦の妻、光江の異変に気付く。彼女に脳腫瘍ができており、成功率5割ほどの手術を受けることになる。手術に臨む光江は、押し入れのふすまを直してほしいと正彦に頼む。帰宅して光江の身の回りの物を荷物詰めした静夫が押し入れを開けると、そこには、静夫が望んでやまなかったマーチンがあった。光江が誕生祝にへそくりで27万もするギターをプレゼントしてくれていたのだ。完全に死亡フラグ。静夫はそのギターを抱えて病院に入り、昏睡中の光江の横でビートルズの「ミッシェル」を歌い続ける。翌朝、光江は目を覚ます。光江の手術が成功したことを知り、静夫は光江に泣きついて喜ぶ。
麗子が静夫にさよならを言った次の日。静夫が突然、麗子の家を訪ねてくる。化粧を落とし、普段着でみすぼらしい恰好を恥ずかしがる麗子を気にも留めず、静夫は、娘に英語が分からないので訳してほしいと頼まれた、と言って、英文を読み始める。それは拙い中学生英語で、お金もなく出世もしておらず、もう年で生意気な娘までいるが、それでもよければ結婚を前提に付き合ってほしい、というラブレターだった。麗子は泣きながら一文一文を日本語に訳すと、最後の「I love you, Reiko.」は訳さず、「I love you too, Shizuo」と返す。理花が二人の交際を認めたのだった。
病院の新生児室に孫を見に来ていた孝平のもとに、彼を探して四国から来た若い男、北島進(石田卓也)が現れる。彼は、孝平とちひろが新婚旅行で訪れた写真館の主人の孫だった。ちひろは写真館で、30年後の夫に手紙を書いていた。そこには、画家志望だったあなたの絵を見てみたいと書かれていた。孝平はひざを落とす。光江に一心不乱に歌を聞かせている正彦を見た孝平は病室を飛び出して、娘のマキが八木沼等(内田朝陽)と同棲している家に上がり込み、白い布地に絵を描き殴りはじめる。翌朝、彼は愛人に辞表を渡して北海道に飛び、麻生と富良野に来ていたちひろの前に現れると、そこに自分の描いた絵を張り出す。それは紫色に塗りたくられた、お世辞にも上手とは言えないラベンダー畑の絵だった。麻生の車からそれを見たちひろは、麻生と別れ、孝平のもとに戻る。孝平はやり直そうと言い、ちひろは頷く。抱き合う二人の周りには、さっきまでなかったはずのラベンダーの花が一面に咲いているのだった。

泣ける映画はこれまでにも観てきたが、本作ほど泣いている時間の長い作品はなかった。後半は泣いては落ち着き、泣いては落ち着き、の繰り返しだった。
まず、描き方の品がいい。絶叫してみたり、人が死んでみたり、みたいなお涙頂戴ではなく、抑制のきいた芝居になっている。ところどころ、それは作り話すぎるだろ、というところはなくもないが、三組の男女の話がどれもよかった。
また、オムニバス形式だが、登場人物の重なり合い具合もいい。全然重ならないのは、別々の話をくっつけただけじゃん、となるが、あんまり絡めすぎると作り話感(そんなに都合よくいくかよ的な)が増す。孝平と麗子は面識はないままだし、ちひろと静夫も接点はない。正彦と光江も麗子とは会わない。上のあらすじは、人物ごとにまとめて書いているが、作品では個々の話がもっと織り交ざって進行する。最初に登場する、首都高を迷いながら走る田舎の若者は何者なのか、という大きな謎が背骨のように物語の軸に居残り続け、後半にやっと明かされるというのも巧みな脚本。ベタなタイトルの作品だが、こんなに感動するとは思わなかった。
一方、何のとりえもない専業主婦という設定にしては、ちひろを演じる原田美枝子は、美人すぎた。もうちょっと性格俳優的な人の配役で観てみたかった気がした。もう一つ残念だったのは、孝平が仕事面でうまくいかなくなるという描写に時間を使い過ぎたこと。大手企業を離れて影響力を失った彼が、分かれた妻とよりを戻すという展開は、逆に言えば愛人とのベンチャー企業経営に挫折し、元妻に逃げ戻った都合のいい男とも受け取れてしまう。業務の流れが他の登場人物ともからまず、時間をかけて描く意味が薄かった。それであればむしろ彼の絵画に対するぬぐい切れぬ憧憬の念、妻に絵描きの夢を語っていた過去などを描くのもありだった。

【5段階評価】5

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2024年4月14日 (日)

(2642) SING/シング: ネクストステージ

【監督】ガース・ジェニングス
【出演】マシュー・マコノヒー(声)、リース・ウィザースプーン(声)、ボビー・カナベイル(声)、ボノ(声)
【制作】2021年、アメリカ

地方の劇場で活躍する動物たちが、より大きな舞台を求めて奮闘する3DCGアニメ作品。「SING/シング」の続編。

地元の劇場で大評判のステージを披露しているバスター・ムーン(マシュー・マコノヒー/内村光良)ら一団は、ショービズ都市レッドショア・シティでの興行を目指す。伝説の大物歌手クレイ・キャロウェイ(ボノ/稲葉浩志)を仲間に引き入れ、見事なステージを披露するのだった。

やはり音楽の力はすごい。3DCGによる、音楽に負けないダイナミックな映像が、感動を盛り上げる。観ていて思わず声が出るほどの素晴らしい作品だった。ゴリラのジョニー(タロン・エガートン/大橋卓弥)が苦労してダンスを身に付けたり、ステージのボス、ジミー・クリスタル(ボビー・カナベイル/大塚明夫)のわがまま娘ポーシャ(ホールジー/アイナ・ジ・エンド)が主役を明け渡して脇役を生き生きと演じたり、15年間歌ってこなかったクレイがヤマアラシのアッシュ(スカーレット・ヨハンソン/長澤まさみ)のパフォーマンスを目にして歌に加わったり、感動的な話が目白押し。胸が熱くならざるを得なかった。いつもはアニメだろうが何だろうがオリジナル音声で鑑賞するのだが、本作はやはり、MISIAや稲葉浩志のように、音楽活動でしかお目にかかれない人物の声優ぶりが聞けるとあって、日本語吹き替えを楽しんだ。稲葉浩志はライオンの役だが、話し声は甘めのハイトーンだった。

【5段階評価】5

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2024年3月25日 (月)

(2622) アリータ:バトル・エンジェル

【監督】ロバート・ロドリゲス
【出演】ローラ・サラザール、クリストフ・バルツ、キーアン・ジョンソン、ジャッキー・アール・ヘイリー
【制作】2019年、アメリカ

記憶を失ったサイボーグの少女の活躍を描いた作品。木城ゆきとの漫画「銃夢」(がんむ)が原作。

2563年。没落戦争(ザ・フォール)と呼ばれる戦争から300年経った時代。クズ鉄町アイアンシティに住む医師のダイソン・イド(クリストフ・バルツ)は、空中都市ザレムから落ちてきたスクラップの中に、頭部と胸部だけの少女のサイボーグを発見。体を再生させてアリータ(ローラ・サラザール)と名付ける。それはイドの娘の名前だった。イドは医師である一方、犯罪者を退治するハンター・ウォリアーでもあり、それを見たアリータは自らもハンター・ウォリアーとなる。仲よくなった青年ヒューゴ(キーアン・ジョンソン)が、ザレムに行くためにお金を貯めていることを知り、アリータは賞金目当てに危険なスポーツ、モーターボールへの出場を決意。アイアンシティの支配者ベクター(マハーシャラ・アリ)は、火星の技術で作られたアリータの体を求め、アリータの出場するモーターボールに、反則上等の選手やハンター・ウォリアーを出場させる。アリータは敵だらけの中で奮闘するが、ヒューゴから、悪者ハンター・ウォリアーのザパン(エド・スクライン)に襲われていると通信を受け、競技場を飛び出してヒューゴを助けに行く。ザパンの策略により、ヒューゴは殺人犯に仕立てられており、アリータはヒューゴを助けることができなくなり、ザパンは勝ち誇ったように自慢の剣をヒューゴの腹に突き刺す。アリータはヒューゴを抱えて逃げる。そこにイドの妻だったチレン(ジェニファー・コネリー)が現れ、ヒューゴを救う手立てを教える。アリータはヒューゴの頭部に自分の血管を接続し、首を持ち帰ったように見せかけて、警備ロボット、センチュリアンの目を逃れると、イドの元に戻り、ヒューゴにサイボーグの体を与えてもらう。アリータはベクターのもとを訪れ、自分の使命がザレムの壊滅であった記憶を取り戻すと、かつては歯が立たなかったグリュシカ(ジャッキー・アール・ヘイリー)を一刀両断にし、ベクターに乗り移っているノバ(エドワート・ノートン)に宣戦布告してベクターの息の根を止める。ヒューゴはくず鉄の町とザレムを繋ぐ太いパイプを登ってザレムを目指しており、アリータはそれを追うが、防衛装置に阻まれヒューゴは落下。アリータは自らの使命を果たすため、モーターボールチャンピオンを目指して戦い続けるのだった。

特撮が素晴らしく、CG全開でユニークなハンター・ウォリアーが多数登場するのが楽しい。フィギュアを集めたくなるようなかっこよさ。続編が楽しみだ。ただ、本作は日本での人気が今ひとつだったからか、テレビ放映される気配がなく、Amazon Primeで観た。原作が日本の漫画なのに、日本での話題性が低いのは不思議だ。
本ブログでは、アニメ作品のように声だけの出演の場合、「出演」欄の出演者名の後ろに「(声)」と加筆するのだが、本作のローラ・サラザールは「(声)」を付けるべきなのか迷った。声だけではなく、動きもローラ・サラザールがつけているかもしれないからだ。他にもグリュシカの顔はジャッキー・アール・ヘイリーの原型をとどめているとは思えなかった。今後は「(体)」とか「(声・動き)」とか追加しないといけないのかもしれない。

【5段階評価】5

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2024年3月24日 (日)

(2621) ウェイ・ダウン

【監督】ジャウマ・バラゲロ
【出演】フレディ・ハイモア、アストリッド・ベルジュ=フリスベ、リアム・カニンガム、サム・ライリー、ファムケ・ヤンセン
【制作】2021年、スペイン、フランス

スペイン銀行の金庫に収められた財宝を奪おうとするグループの奮闘を描いた作品。

財宝ハンターのウォルター(リアム・カニンガム)は、1645年に沈没した船の積み荷を海底から引き揚げるが、すぐさまスペイン税関に押収され、財宝はスペイン銀行の「工学の奇跡」と呼ばれる金庫に保管される。ウォルターは、原油流出事故を独創的なアイディアで解決したケンブリッジ大学の学生、トム(フレディ・ハイモア)を仲間に引き込み、スリの技術に長けたロレイン(アストリッド・ベルジュ=フリスベ)、コンピュータの専門家クラウス(アクセル・シュタイン)、ダイバーのジェームズ(サム・ライリー)、調達係のシモン(ルイス・トサール)とともに、金庫に潜入する作戦を練る。シモンとトムが清掃員に扮して銀行内に細工をし、ロレインが絵画の鑑定士になりすまして銀行内にある金庫室の鍵の複製データを取る。スペイン銀行の警備主任グスタボ(ホセ・コロナド)は異変を察知し、ワールドカップに揺れる銀行前広場の封鎖を提案するが、総裁(エミリオ・グチエレス・カバ)は聞き入れない。トムは工学の奇跡の謎を解明する。それは、金庫室全体がはかりになっており、重さの変化に反応して金庫室が閉じ、水が流れ込むという仕組みだった。トムは、はかりを液体窒素で凍らせれば、反応を鈍らせることができると考え、シモンが液体窒素を噴射する役目を追う。
ワールド・カップの決勝の日。銀行前の広場に設けられたスペイン・オランダ戦のパブリックビューに大群衆が集まる中、ジェームズ、ロレイン、トムが屋上からスペイン銀行に潜入。はかりを凍らせ、金庫室の潜入に成功する。ところが、屋上の潜入の痕跡が警備にばれ、警備映像に細工をしていることもグスタボに気づかれてしまう。さらに、ジェームズが裏切りを働き、ロレインが金庫室の中から発見した、埋もれた財宝のカギを握るコインを奪い取ってしまう。液体窒素の効果が弱まり、はかりが反応して金庫室に大量の水が流入するが、ジェームズは潜水で金庫室から脱出。トムは、金庫室が満水になると水が止まるのは、重さを感知しているからだと推理し、シモンに、はかりに重しを乗せてくれと指示。シモンはありったけの液体窒素ボンベをはかりに乗せ、天に祈る。トムとロレインは脱出に成功し、大群衆の中に逃げ込む。追っ手の警備員が迫るが、潜入用の服を脱ぎ捨て、スペインサポーターの姿になったところで、スペインのイニエスタが延長戦の決勝ゴールを決め、大群衆が沸き立つ。警備員は身動きが取れなくなり、トムとロレインは脱出に成功する。
ジェームズは、イギリスへの忠誠心のためにコインを奪い取ったが、MI6に持ち込まれたそのコインは偽物だった。ウォルターはジェームズの裏切りを予感していたのだ。コイン奪取に成功した5人は、埋もれた財宝の場所を探し出す。それはイングランド銀行の真下。ウォルターはため息をつく。オリンピック開催を1か月後に控えたロンドンで、彼らの新たな挑戦が始まるのだった。

金庫破りに挑む一団の活躍を描く作品はいろいろある(作中でもトムが「オーシャンズ11」を引き合いに出している)が、本作は、主人公たちが盗賊ではなく、自分たちが探し当てたにもかかわらずスペイン政府に横取りされた財宝を取り戻すという設定になっており、感情移入しやすい。また、本作では誰も死なない。警備員を殺したり、誰かが犠牲になったり、という盛り上げ方をしていないのが、上質なクライム・サスペンスの条件の一つ。しかも、それが決して非現実的なスタイリッシュさにしていないのもいい。そして、実際のサッカー・ワールドカップのスペインの大進撃を物語に組み込んでいる点が最もユニーク。ラストシーンは、スペインチームファンならずとも、快哉を叫びたくなるだろう。
今回はムービープラスの無料放送の自動録画だったが、得した気分になる作品だった。

【5段階評価】5

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