(3025) 甦える大地
【監督】中村登
【出演】石原裕次郎、三国連太郎、寺尾聰、司葉子、岡田英次、志村喬、北林谷栄、渡哲也、奈良岡朋子
【制作】1971年、日本
鹿島工業地域の開発の過程を描いた作品。原作は木本正次の小説「砂の十字架」。
江戸時代。たびたび洪水の被害を受けていた鹿島を救おうと、中館(なかだて)広之助(渡哲也)という郷士(ごうし)が、鹿島灘までの掘り割り工事を行う。しかし、鹿島灘の海水が逆流し、工事は失敗に終わる。時が変わり現代、茨城県庁の植松一也(石原裕次郎)は、県知事岩下三雄(岡田英次)とともに鹿島港、鹿島工業地域と農業団地の造成を目指す。植松は建設省の野田鋭介(三国連太郎)に陳情に行き、野田を鹿島に招いて協力を要請する。地元では鹿島町長の権藤義一郎(志村喬)が始めは開発賛成側につくものの、町会議員の滝井善吉(高原駿雄(としお))にそそのかされ、土地の値段を吊り上げるため反対派に回る。
植松は野田を再度説得。野田が茨城県庁の開発部長になる。野田は土地を売却した地主に報奨金を出すという方策を打ち出し、植松は常陸川の川底の肥沃な土をパイプで農業団地に送り込み、豊かな土地に変える。住民たちは土地の売却に応じるようになり、ついに鹿島港の工事が始まる。農業団地に移った農民たちの中には、農業をろくにせず、いかがわしい店を出したり遊ぼ呆けたりする者もおり、植松の描いた緑の楽園は簡単には実現しなかった。野田は一時的な現象だと話すが、植松は自分が7年かけて説得して回ったことは誤りだったのかと悩む。それでも鹿島港は開港。植松は、新天地で農業に勤しむ青年(寺尾聰)から取れたてのピーマンを受け取り、農道を歩むのだった。
鹿島港開発の経緯を描いた硬派な作品。役所の人間が主役になっている。序盤に江戸時代の土木事業が登場するが、こういった説明的な部分は、絵と朗読だけで済ませることもよくあるものの、本作では渡哲也が郷士を演じ、セリフは相当説明っぽいものの、しっかり力を入れてを描いている。鹿島灘逆流の映像は、つぎはぎで何だかよく分からなかったり、なんで農民が川に落ちてんの、みたいな演出もあったりはしたが。ただ、興行的には振るわなかったらしい。
石原裕次郎は、「黒部の太陽」(1968)や「富士山頂」(1970)のような歴史的土木事業をいくつも取り上げている。三國連太郎は、クレジットの表記が「国」だったのであえて「三国」と書いた。
【5段階評価】3
| 固定リンク
コメント