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2025年5月

2025年5月31日 (土)

(3054) 男はつらいよ 寅次郎純情詩集

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、檀ふみ、京マチ子、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、浦辺粂子、吉田義夫、岡本茉利
【制作】1976年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第18作。「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」(1976)の続編。次作は「男はつらいよ 寅次郎と殿様」(1977)。

とらやでは、博(前田吟)とさくら(倍賞千恵子)が、満男(中村はやと)の家庭訪問に来る柳生雅子先生(檀ふみ)を待っていた。そこに寅次郎(渥美清)が帰ってきて、若くて美人の雅子先生に一目惚れ。家庭訪問に割り込んで担任と両親のやりとりを台無しにし、博の怒りを買う。とらやを去った寅次郎は、長野県上田市の別所温泉で、昔なじみの旅芸人一座と再会。谷町気取りで一座との宴会を開いた寅次郎だったが、持ち合わせはなく、無銭飲食のかどで警察に捕まってしまう。寅次郎は、迎えに来たさくらととらやに戻る。さくらは、寅次郎が、娘の年齢ほど年の差のある雅子先生に熱を上げたことを責め、雅子先生の母親を好きになる分にはいいが、と言う。するとそこに、雅子先生が母親の綾(京マチ子)を連れてくる。綾を好きになっていいとお墨付きをもらった寅次郎は、綾にあれこれ世話を焼き始める。
さくらは雅子先生から、綾が病気を患っており、本人には知らせていないが余命わずかな状態であることを告白される。そうとは知らない寅次郎は、綾を水元公園にピクニックに連れて行ったり、とらやで宴席を設けたりする。とらやの一同と綾は、とらやで食事をしながら、綾が将来どんな仕事をするのがいいかで盛り上がるが、雅子先生とさくらは、思い切り笑うことができないのだった。
寅次郎は、さくらから、綾の容態が悪化したと聞き、急いで綾の家に向かう。綾は寅次郎の来訪を喜ぶ。寅次郎は、仕事を終え、再度、綾の見舞いに向かう。迎えに出た雅子先生は、綾がとらやで振る舞われた芋の煮っ転がしが食べたいと言っていると寅次郎に告げる。寅次郎は芋を買い込んで慌ててとらやに駆け込み、さくらに煮っ転がしを作らせる。そこに、源公(佐藤蛾次郎)が現れ、綾の屋敷の前に車がたくさん停まっていたと伝える。さくらと寅次郎は綾の家に行くが、すでに綾は亡くなっていた。雅子は屋敷を引き払い、新潟の六日町の学校に転任する。寅次郎は雪の中、雅子先生を訪ね、雅子先生は寅次郎の来訪に大喜びするのだった。

綾が亡くなった後、寅次郎が綾と雅子先生の住む屋敷を訪れ、綾の余命がわずかだと知っていたらできたことがあったかもしれないと後悔の念を伝えると、雅子先生が、母親は寅次郎に愛されて幸せだったと伝え、嗚咽するシーンは感動的だった。ほのぼのとした人情噺が多いシリーズだが、本作は泣けた。

【5段階評価】3

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2025年5月30日 (金)

(3053) 男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、太地喜和子、宇野重吉、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、寺尾聰
【制作】1976年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第17作。「男はつらいよ 葛飾立志編」(1975)の続編。次作は「男はつらいよ 寅次郎純情詩集」(1976)。

さくら(倍賞千恵子)と博(前田吟)の一人息子、満男(中村はやと)が小学校に入学。寅次郎(渥美清)はお祝いを準備するが、入学式から帰ってきたさくらは、担任が満男に「君、寅さんの甥御さんね」と言ったら教室に爆笑が起きて悔しかったと話す。不機嫌になった寅次郎はとらやを飛び出し、飲み屋に行く。寅次郎はそこで、金を持たずに酒を飲んでいる老人(宇野重吉)が店員に咎められているのを見かけ、支払いを代替わりし、老人を家に連れ帰る。おいちゃん(下條正巳)やおばちゃん(三崎千恵子)らはルンペン(音声は消されていた)みたいだと不満を言いながらも老人を泊める。翌朝、老人は、風呂を沸かせとか蒲団をたためとか、周囲の人間に失礼千万な振る舞い。寅次郎がやんわりと老人に説教すると、老人は宿屋と勘違いしていたと話し、寅次郎に紙と筆を用意させ、寅次郎の持ってきた画用紙に、筆でなにやら模様を描き、これを神田の古書店に持って行けと言う。寅次郎がその紙を古書店の店主(大滝秀治)に渡すと、店主は鑑定の末、7万を支払う。とらやに泊まった老人は、日本画壇の大家、池ノ内青観だった。
青観は出身地の龍野市に招待され、市役所に向かう。龍野の道を歩いていた寅次郎は、車に乗った青観を見つけ、行動をともにする。青観は市に歓待され、それに付き合った寅次郎は、芸者のぼたん(太地喜和子)と仲よくなる。龍野を出てとらやに戻った寅次郎のもとに、ぼたんが訪ねてくる。彼女は詐欺の被害に遭い、200万円を鬼頭という男(佐野浅夫)に騙し取られており、金を返してもらうために東京に来ていた。タコ社長(太宰久雄)がぼたんに付いていき、鬼頭に金の返還を要求するが、したたかな相手は、不満なら訴訟を起こせとにべもない。寅次郎は青観を訪ね、ぼたんの窮状を説明して彼女のために絵を描いてくれと懇願するが、金のために絵は描けないと青観は断る。怒った寅次郎は捨て台詞を吐いて立ち去る。寅次郎は再び龍野を訪れ、ぼたんに会う。ぼたんは慌てて寅次郎を家の中に招く。そこには、青観のみごとな牡丹の絵が飾られていた。龍野で世話になったお礼に、と青観が送ってきたのだと言う。寅次郎はぼたんに東京の方角を聞くと、青観に向かって、暴言の謝罪と感謝の弁を述べるのだった。

寅次郎の恋煩いは描かれず、気のいい芸者を救う人情噺になっていた。龍野市役所の職員として宇野重吉の息子、寺尾聰が出演していた。

【5段階評価】3

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2025年5月29日 (木)

(3052) 男はつらいよ 葛飾立志編

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、樫山文枝、倍賞千恵子、前田吟、小林桂樹、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、桜田淳子、米倉斉加年(まさかね)
【制作】1975年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第16作。「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(1975)の続編。次作は「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」(1976)。

山形から修学旅行で東京に来た女子高生の最上順子(桜田淳子)が、とらやを訪ねてくる。彼女の家に毎年手紙とお金を送ってくる男を、父親ではないかと考えたのだ。その男とは寅次郎(渥美清)だった。とらやの一同は寅次郎に隠し子がいたのかと疑うが、そうではなかった。16-17年前、一文無しの寅次郎が、寒河江で矢も楯もたまらず食堂に入ったところ、困ったときはお互い様と言って食事を振る舞ってくれたのがお雪だったのだ。順子は昔の母の話を聞いて喜び、帰って行く。お雪が亡くなったと聞き、墓参りに行った寅次郎は、そこの住職(大滝秀治)に学問の大切さを説かれる。
とらやの2階に、御前様(笠智衆)の姪で考古学を研究している筧礼子(樫山文枝)が下宿する。礼子が喫茶店で読書をしていると、偶然横に座った寅次郎は彼女に話しかけ、意気投合してとらやに戻る。相手の女性がとらやに下宿していると知り、寅次郎の恋心が芽生える。寅次郎は礼子に歴史の勉強を教えてもらうことになる。
ある日、とらやに土まみれで身なりに無頓着な男(小林桂樹)が現れる。出迎えた寅次郎は、収入の少ない道路工事の作業員と思い込むが、彼こそは礼子の指導教授、田所雄介だった。草野球で対戦した考古学チームと朝日印刷の面々は試合後に宴会。酔った田所教授を礼子が送る。田所は礼子の去り際、一通の手紙を渡す。それは礼子に宛てた田所のラブレターだった。礼子は思い悩み、ある人から結婚を申し込まれていることを寅次郎に告白する。寅次郎は礼子が結婚すると考え、旅に出る。悩んだ末に礼子は、田所の求婚を断る。寅次郎と田所はともに旅をするのだった。

学問の意味は己を知ることにある、という哲学的な話を、寅次郎が受け売りで礼子にし、礼子が感心したり、寅次郎が博学の田所教授に、人を愛することとは、相手を幸せにしたいと思うことだと説明し、田所が寅次郎を師匠と仰ぐところが印象的。決して聡明とは言えない寅次郎が、大学関係者を唸らせるようなセリフを吐くのが小気味よかった。

【5段階評価】3

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2025年5月28日 (水)

(3051) 男はつらいよ 寅次郎相合い傘

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、浅丘ルリ子、船越英二、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄
【制作】1975年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第15作。「男はつらいよ 寅次郎子守唄」(1974)の続編。次作は「男はつらいよ 葛飾立志編」(1975)。

とらやに、かつて寅次郎(渥美清)と親交のあったリリーが訪ねてくる。リリーは寅次郎がいないことを残念がりながら店を去る。寅次郎は青森におり、突然蒸発した兵藤謙二郎(船越英二)という男と旅暮らしをしていた。二人が函館の屋台のラーメン屋にいるところに、偶然リリーがやって来て、寅次郎と再会。三人はともに旅を続ける。ところがひょんなことから寅次郎とリリーは口喧嘩になり、リリーは寅次郎のもとを去ってしまう。
謙二郎と別れ、とらやに戻った寅次郎が、さくら(倍賞千恵子)たちに、リリーにひどいことを言ったと反省の弁を述べていると、そこにリリーがやってくる。二人は再び意気投合。さくらは夫の博(前田吟)と、リリーが寅次郎と結婚してくれれば、と話し合い、冗談と断りながらリリーにそう告げると、リリーはあたしみたいな女でよかったら、と結婚を肯定する。そこに帰ってきた寅次郎に、さくらがリリーがお兄ちゃんと結婚してもいいと言っていると話す。寅次郎は、冗談なんだろう、と照れ隠しのようにリリーに聞くと、リリーは本音を隠すように「そう、冗談にきまってるじゃない」と返し、二人の結婚話は幻と消える。二人は互いを思い合いながらも、別の道を進むのだった。

寅次郎が謙二郎からもらったメロンを、おばちゃん(三崎千恵子)が寅次郎を頭数に入れずに切ってしまい、そこに帰ってきた寅次郎が、自分を勘定に入れていないことに怒り出し、謝り続ける周囲に怒鳴り散らす寅次郎に耐えかねたリリーが、本来なら寅次郎がみんなで食べてくれ自分の分はいらないと言うところだろう、と寅次郎を責めるというシーンがあり、「メロン騒動」と言われている。このときのリリーのセリフは小気味よく、名シーンだった。

【5段階評価】3

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2025年5月27日 (火)

(3050) 男はつらいよ 寅次郎子守唄

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、十朱幸代、倍賞千恵子、前田吟、下條正巳、三崎千恵子、太宰久雄、上條恒彦、春川ますみ
【制作】1974年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第14作。「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」(1974)の続編。次作は「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(1975)。

旅先の佐賀の唐津で、女に逃げられ赤子を押しつけられた男(月亭八方)と出会った寅次郎(渥美清)は、男をねぎらい、ともに酒を飲む。翌朝、寅次郎が起きると、男は赤子を寅次郎に任せていなくなっていた。寅次郎は仕方なく、赤子をとらやに連れ帰る。熱を出した赤子を診てもらった病院の看護婦、木谷京子(十朱幸代)が、とらやを尋ねてくる。寅次郎は京子に一目惚れ。京子はとらやをちょくちょく訪ねるようになる。やがて赤子の父親が唐津の踊り子(春川ますみ)とともにとらやにやってきて、赤子を引き取る。
京子は趣味でコーラスをしており、寅次郎の妹さくら(倍賞千恵子)をコーラスに誘う。寅次郎はいそいそとさくらに付いていき、一緒に来た源公(佐藤蛾次郎)と見学するが、寅次郎と源公がふざけている様子をみてコーラスメンバーは笑い出し、練習にならない。コーラスの指導者、大川弥太郎(上條恒彦)はしかたなく練習を中止する。恥を掻かされたさくらは、寅次郎に、大川に謝罪に行くよう命令。寅次郎は大川のぼろアパートに行き、簡単な詫びを入れると、酒を酌み交わす。寅次郎は、大川が京子に惚れていることを見抜き、当たって砕けろと助言する。寅次郎と大川が酒に酔って歌いながらとらやにやって来ると、偶然、とらやに京子が来ていた。京子に気づいた大川は、酔った勢いもあって、好きだと告白し、立ち去る。京子は驚きながらも、大川の告白を受け入れる。新年会の日、二人はコーラス仲間に結婚することを報告する。大川からお礼の報告を受けた寅次郎は、結果的に京子に振られ、また旅に出る。寅次郎は唐津に赴き、赤子を背負った踊り子と再会。踊り子は父親と三人暮らしをしていた。寅次郎は彼らが仲よく暮らしているのを知り、喜ぶのだった。

おいちゃん役が松村達雄から下條正巳に交代。1-8作目の森川信から数えて三代目となる。本作は寅次郎がマドンナに恋をして振られるという、定番のパターンだった。

【5段階評価】3

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2025年5月26日 (月)

(3049) 男はつらいよ 寅次郎恋やつれ

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、吉永小百合、倍賞千恵子、宮口精二、前田吟、松村達雄、三崎千恵子、太宰久雄、佐藤蛾次郎、高田敏江
【制作】1974年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第13作。「男はつらいよ 私の寅さん」(1973)の続編。次作は「男はつらいよ 寅次郎子守唄」(1974)。

寅次郎(渥美清)は、島根の津和野で、以前知り合った歌子(吉永小百合)と偶然再会。彼女は夫を亡くしており、結婚に反対していた小説家の父親、高見修吉(宮口精二)とは連絡を絶っている状態だった。歌子は柴又のとらやに現れ、2階に泊めてもらいながら、自分に合った職を探す。
寅次郎は、高見修吉の家に行き、修吉に向かって、歌子に三つ指突いて謝れと説教に行く。寅次郎の思いに心を打たれた修吉は、とらやを訪ね、自分の道をまっすぐ進んでくれたことが嬉しい、口下手でうまく伝えられなかったと涙を流す。こうして修吉と歌子の関係は修復し、歌子はとらやを出て修吉の家に帰る。寅次郎は、修吉の家に行き、歌子に仕事をどうするのか尋ねる。歌子は、大島の障害児施設で働く決意をしたことを告げる。寅次郎は歌子を応援するのだった。

マドンナ役として、吉永小百合が再び登場。本作では、寅次郎が歌子にぞっこんになるという展開は控えめで、父親のように彼女の成功を願う立場になっており、むしろ序盤に登場する絹代(高田敏江)に対して、結婚を真剣に考えていた。結局、絹代の蒸発していた夫が戻ってきて、寅さんはただのいい人になったわけだが。

【5段階評価】3

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2025年5月25日 (日)

(3048) リバー、流れないでよ

【監督】山口淳太
【出演】藤谷理子、永野宗典(むねのり)、鳥越裕貴、早織、本上まなみ、近藤芳正、中川晴樹、久保史緒里
【制作】2023年、日本

2分間の時間を繰り返すループに陥った人々が、元の時間に戻ろうと奮闘する様子を描いたコメディ作品。

貴船の旅館「ふじや」で、突如、同じ2分間を繰り返すという現象が発生。従業員や宿泊客たちは、2分間のループから抜け出そうと奮闘する。はじめは従業員のミコト(藤谷理子)が貴船の水神様に、フランスに行こうとしている恋人のタク(鳥越裕貴)と離れたくなくて、時間を止まれとお願いしたせいかと思われたが、違った。近くに来ていた未来からのタイムパトロールの女性、ヒサメ(久保史緒里)の乗っていたタイムマシンの不具合が原因だったのだ。従業員たちは協力して不具合に対策を施し、時間はまた正常に流れるようになる。従業員や宿泊客は安堵し、ミコトはタクと貴船神社にお参りに行くのだった。

時間は繰り返すが、人々の記憶は蓄積されていくという、かなりぶっ飛んだ設定。一瞬、絶望的な状況と思え、どう回収するのだろうと興味がわくが、登場人物はそれほどパニックになるわけでもなく、大事件も起こらず、こじんまりと事態は進展。そしてまさかのタイムマシンの故障という落ちで、事態は元に戻る。藤谷理子はアニメ声優のような声質だった。本作はAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】3

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2025年5月24日 (土)

(3047) 東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-

【監督】英勉
【出演】北村匠海、吉沢亮、今田美桜、永山絢斗(けんと)、高杉真宙、村上虹郎、山田裕貴、杉野遥亮(ようすけ)、間宮祥太郎
【制作】2023年、日本

和久井健の漫画「東京リベンジャーズ」の劇場版。「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-運命-」(2023)の続編。

東卍(トーマン)こと東京卍會の総長、マイキー(吉沢亮)が、東卍創設メンバーの一人、羽宮一虎(村上虹郎)を殺したことを、死刑囚となったドラケン(山田裕貴)から聞かされた花垣武道(北村匠海)は、かつての恋人、ヒナ(今田美桜)の命を救い、マイキーに人を殺させず、キサキ(間宮祥太郎)が東卍を凶悪組織にすることを防ぐため、過去に戻る。
東卍の創設メンバーの一人、場地(永山絢斗)は、東卍を抜け、敵対組織の芭流覇羅(ばるはら)に鞍替え。芭流覇羅と東卍との抗争は避けられなくなる。抗争当日。両組織が大乱闘となる中、キサキがマイキーの護衛を買って出る。場地は芭流覇羅の一員としてキサキに挑みかかるが、それは実は東卍のためだった。キサキは東卍を牛耳ろうと画策していたのだ。キサキを倒した場地は、マイキーに倒された親友の一虎に近寄り声を掛けるが、場地の裏切りを恐れた一虎は、あろうことか場地の背中をナイフで突き刺す。怒りが頂点に達したマイキーは一虎を激しく殴りつけるが、場地は自力で立ち上がると、一虎には殺されないと言って、自らナイフを腹に突き立て、息絶える。一虎を殴り殺そうとするマイキーを武道が必死で止め、抗争は収束する。
こうしてヒナの命を救うことができた武道だったが、ヒナをこれ以上危険な目に遭わせないよう、別れを決意する。ドラケンは死刑囚ではなくなり、一虎が刑務所入り。一虎の面会に来たドラケンは、マイキーが一虎を許したと伝言する。武道は東卍の壱番隊隊長となるのだった。

臭い芝居と言えばそうなのだが、けっこう目頭の熱くなる展開だった。ただ、ヒナとはハッピーエンドになってほしかった。別れる理由がよく分からなかった。続編への伏線としたのかもしれないが。

【5段階評価】3

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2025年5月23日 (金)

(3046) 東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-運命-

【監督】英勉
【出演】北村匠海、吉沢亮、今田美桜、山田裕貴、杉野遥亮(ようすけ)、間宮祥太郎、村上虹郎、永山絢斗(けんと)
【制作】2023年、日本

和久井健の漫画「東京リベンジャーズ」の劇場版。「東京リベンジャーズ」(2021)の続編。次作は「東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編-決戦-」(2023)。

過去に戻り、かつての恋人だった橘日向(今田美桜)を死から救った花垣武道(北村匠海)は、日向と再会し、デートを楽しむが、日向の乗っていた車に別の車が突っ込み、またも日向が命を落とす。武道は、日向の弟、直人(杉野遥亮)と握手することにより、再び過去に戻り、東卍(トーマン)こと東京卍會のトップになることを誓う。
東卍は芭流覇羅(ばるはら)と敵対。東卍の壱番隊隊長、場地圭介(永山絢斗)は、東卍を辞め、芭流覇羅に鞍替えする。東卍のトップ、マイキーこと佐野万次郎(吉沢亮)は、武道に、場地を連れ帰るよう命じる。武道は、日向を死に追いやった稀咲(きさき)鉄太(間宮祥太郎)を新たに参番隊隊長に任命したマイキーに、場地を連れ帰ったら稀咲を東卍から追い出すよう条件を付ける。
芭流覇羅のナンバー3、羽宮一虎(村上虹郎)と場地は、東卍の創設メンバーだった。二人はマイキーにプレゼントするため、バイクを盗もうとするが、所有者の真一郎(高良健吾)に見つかってしまい、一虎は真一郎を工具で殴り殺してしまう。しかし真一郎はマイキーの兄だった。一虎は少年院行きとなり、マイキーとの間に深い溝ができてしまう。
東卍の一番隊副隊長を務める松野千冬(高杉真宙(まひろ))は、武道に声をかけ、二人で芭流覇羅に乗り込んで場地を連れ帰ろうとするが、場地は二人を殴り飛ばし、二人は芭流覇羅にリンチされる。現代に戻った武道は、直人とともに、死刑囚として収監中のドラケンこと龍宮寺堅(山田裕貴)に、芭流覇羅のトップが誰か聞きに行く。その答えは、マイキーだった。マイキーは、芭流覇羅との抗争の日、一虎を殺してしまっていた。武道は、日向を取り戻し、マイキーに人を殺させないため、再度、過去に行くことにするのだった。

本作の中で前作の簡単なあらすじがあるので、本作だけを見てもある程度は話に入れるが、人間関係がけっこう複雑で細かいので、前作と続けて鑑賞した方がいいだろう。今田美桜演じる日向が、人間性のない、完全なマクガフィンだった。もうちょっと人間らしく描けばいいのに。

【5段階評価】3

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2025年5月22日 (木)

(3045) 終わった人

【監督】中田秀夫
【出演】舘ひろし、黒木瞳、広末涼子、田口トモロヲ、臼田あさ美、今井翼、笹野高史、高畑淳子
【制作】2018年、日本

銀行員の男性の定年退職後の人生を描いた作品。内館牧子の小説が原作。

東大法学部卒で大手銀行に進みながら出世しきれず、子会社専務で定年退職を迎えた田代壮介(舘ひろし)は、やることがなくなり、愚痴をこぼす毎日。美容院に勤める妻、千草(黒木瞳)からは冷ややかな目で見られる。壮介は、スポーツジムで知り合った若手のIT企業社長、鈴木直人(今井翼)に、学歴を買われて鈴木の会社の顧問となる。カルチャースクールの受付をしている35歳の美女、浜田久里(くり)(広末涼子)とも、岩手出身という共通点をきっかけに懇意になり、バラ色の定年後人生に壮介は心が躍る。ところが社長の直人が急死。壮介は顧問から身を引こうとするが、社員たちから社長になってほしいと懇願される。千草は反対するが、壮介は社長になることを決める。ところが、システム納品をした海外企業が倒産して不払いを起こし、会社は倒産。壮介は取締役として9,000万円の借金を背負うことになる。
独立して美容院を始める予定だった千草は驚きあきれ、家から壮介を追い出す。壮介は高校ラグビー部時代の友人たちと会い、地元の岩手のNPO法人で働くことを決意。美容院開業直前の千草に、離婚を申し出る。千草は離婚はしないと言うが、娘の道子(臼田あさ美)は千草に向かって、根性が座っていない女だよね、と断罪。父親にも、地元に戻ったって誰もちやほやしてくれないとダメ出しする。二人は、離婚はせず、卒婚という道を選ぶ。地元に戻ってNPO法人で働き始めた壮介のもとに、突如、千草がやってくる。仕事を続けることにした壮介の白髪染めに来たのだ。千草は、これからも二月に一回、染めに来ると言い、二人は仲睦まじく桜の木の下を歩くのだった。

序盤はコメディタッチで、「免許がない!」(1994)のような作風かと思ったら、中盤以降は笑いなしのシリアスな展開になる。壮介と千草の微妙な関係、高学歴な主人公。あまり観客の共感を得られない設定の中、どうなるのがハッピーエンドなのか、よく分からない夫婦の話だった。

【5段階評価】3

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2025年5月21日 (水)

(3044) 冒険活劇 上海エクスプレス

【監督】サモ・ハン・キンポー
【出演】サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウ、ケニー・ビー、エリック・ツァン、シンシア・ロスロック、リチャード・ン、ジェームズ・ティエン
【制作】1986年、香港

金持ちの乗った特急列車を巡る大騒動を描いたアクションコメディ作品。

雪の中で全滅している兵団から金品を盗んだチェン(サモ・ハン・キンポー)だったが、兵団は訓練中で死んだふりをしているだけだった。捕まった兵団からなんとか逃げおおせたチェンは、国際警察の男(ケニー・ビー)に捕らえられるが、彼からも逃げ切る。故郷の漢水に戻ったチェンは、消防隊長のチョウ(ユン・ピョウ)に目を付けられる。中国の重要な地図を持った日本人や多くの富豪を乗せた列車が漢水にやってくる。チェンは線路を爆破して列車をとめ、街で乗客相手に商売をしようとする。
町には、日本人を追うギャング団や、国際警察の男、銀行強盗を働いた集団などが入り乱れ、大乱闘となるが、チェンとチョウはともに戦い、日本人から地図を取り戻すのだった。

物語はわちゃわちゃしていて、面白さよりは、展開を追うのが面倒くさい微妙なところだったが、カンフーシーンはよくできているし、香港映画で見たことのある俳優が数多く登場して賑やかなので、評価は3。

【5段階評価】3

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2025年5月20日 (火)

(3043) 地上より永遠に

【監督】フレッド・ジンネマン
【出演】モンゴメリー・クリフト、バート・ランカスター、ドナ・リード、デボラ・カー、フランク・シナトラ、フィリップ・オーバー
【制作】1953年、アメリカ

第二次世界大戦直前のアメリカ兵士の生き様を描いた作品。第26回アカデミー賞作品賞受賞作品。邦題は「ここよりとわに」と読む。

1941年、ハワイのスコフィールド兵営に、転属を願い出たラッパ手のプルーイット(モンゴメリー・クリフト)が着任する。ウォーデン曹長(バート・ランカスター)は、プルーイットに、伍長の地位を捨てて2等兵に格下げになる転属を願い出た理由を聞くが、彼は私的な理由だと答える。大尉であるホームズ中隊長(フィリップ・オーバー)は、プルーイットがプロボクサーであることを知り、ボクシングの連隊対抗戦での優勝のため、彼をボクシング部に入れようとするが、彼は拒絶する。彼には、仲間をスパーリング中に殴って失明させた過去があった。
ホームズには美しい妻カレン(デボラ・カー)がいたが、関係は冷え切っていた。ウォーデン曹長はカレンに言い寄り、二人は不倫の関係になる。ボクシング部入りを拒否したことで、訓練でいびられるようになるプルーイットだったが、それでもかたくなにボクシングは拒否。彼はナイトクラブに勤めるロリーン(ドナ・リード)を好きになる。プルーイットの理解者で、お調子者のマッジオ(フランク・シナトラ)は、命令を無視して夜遊びに出かけ、営倉(懲罰房のこと)に入れられ、マッジオとそりの合わなかった営倉担当のジャドソン(アーネスト・ボーグナイン)に暴行される。マッジオは営倉を脱走し、プルーイットの前に姿を現すが、息絶える。プルーイットはジャドソンを呼び出し、反撃されながらも彼を刺し殺す。プルーイットはロリーンのもとに匿ってもらうが、12月7日、日本軍による真珠湾攻撃が起き、軍に戻ることにする。ところが、警戒中の兵士に怪しまれ、銃撃により命を落としてしまう。ウォーデンとともに生きることを諦め、ハワイを離れる船に乗ったカレンは、乗り合わせたロリーンから、婚約者のプルーイットが死んだ話を聞くのだった。

ウォーデンとカレンの不倫、プルーイットとロリーンの恋という二組のカップルを軸に話が進むのだが、結局何を言いたい作品だったのか、よく分からない内容だった。文学性の高い作品なのだろう。アカデミー賞作品賞受賞作品の中では、ハズレの部類だった。

【5段階評価】2

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2025年5月19日 (月)

(3042) 99.9-刑事専門弁護士-THE MOVIE

【監督】木村ひさし
【出演】松本潤、杉咲花、香川照之、西島秀俊、マギー、ベンガル、高橋克実、蒔田彩珠(あじゅ)、道枝駿佑、渋川清彦
【制作】2021年、日本

テレビドラマ「99.9-刑事専門弁護士-」の劇場版。過去に有罪判決が降りた事件の真相を暴く弁護士の活躍を描いた作品。

だじゃれ好きの弁護士、深山大翔(みやまひろと)(松本潤)は、15年前の天華村(てんかむら)毒物ワイン事件の謎に挑む。事件では、ワイン農家の山本貴信(渋川清彦)が、樽入りのワインに毒を入れ、村人4人を殺害したとして死刑判決を受ける。山本を弁護していた南雲恭平(西島秀俊)は、山本の幼い娘、エリ(佐藤恋和(れんわ))を死刑囚の娘として生きることを避けるため、控訴を諦め、山本からエリを引き取り、我が子として育てていた。天才ピアニスト女子高生として成長したエリ(蒔田彩珠)は、ネットで自分の実の父親が死刑囚だったことを知り、斑目法律事務所長の佐田篤弘(香川照之)に、父親の事件の真相を明らかにしてほしいと頼む。
深山は、彼を師匠と仰ぐ新人弁護士の河野(こうの)穂乃果(杉咲花)と、パラリーガルの明石達也(片桐仁)を連れて、事件現場のワイナリーに行き、山本家を調べ始める。地元民の太田保(ベンガル)や重盛寿一(高橋克実)らは、あからさまに過去の事件を掘り起こされることを迷惑がるが、寿一の息子、守(道枝駿佑)は、事件を明らかにしてほしいと言って、調査に協力する。深山は、大がかりな事件の再現を行い、事件当日、丁寧に唐揚げの二度揚げまでしていた山本が殺人を企んでいたはずがないと推理。彼は検察の丸川貴久(青木崇高)の協力を得て、実際の事件で押収されたワイン樽を持ち込んで、再び事件を再現。そして、毒入りワインのワインの量が、事件前に比べて増えていたこと、押収されたワインの樽が事件後に別の樽とすり替えられていたことを明らかにする。山本がワインに毒を入れたのは事実ではなかった。ワインに有毒物質を入れたのは、当時4歳だった守(加藤叶和(とわ))とその友だちだった。守は、有毒薬品をワインがおいしくなる薬だと思い込んでワイン樽に入れていた。村の大人たちは子どもを庇うために村ぐるみで事件を偽装し、山本を犯人に仕立て上げていた。結局、犯人隠蔽の時効は過ぎており、村人は誰一人有罪とはならなかった。それでも深山は、事実を明らかにしたことに充実感を覚える。南雲恭平は、殺人犯の娘という濡れ衣を晴らしたエリのピアノコンサートに出向き、娘の見事な演奏に拍手を送るのだった。

Creepy NutsのR-指定や、柳亭(りゅうてい)小痴楽、とろサーモンの村田秀亮(ひであき)などが序盤の事件に登場。途中にもお笑い芸人やものまね芸人、プロレスラーがちょこちょこ出演している楽しい作品。推理の過程もちゃんと作ってあり、南雲恭平が村人に怒りをぶつけるシーンは感動的だった。テレビドラマの劇場版の中では当たりの部類だろう。ただ、杉咲花演じる河野穂乃果が、漫画のセリフを絶叫するところは、ついていけなかった。

【5段階評価】4

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2025年5月18日 (日)

(3041) 言ってくれよ

【監督】高橋栄一
【出演】菟田高城(うだたかき)、成沢(なるさわ)真奈、大石真奈未、一色眞妃果(いしきまいら)、村松和輝、杉山ひこひこ
【制作】2022年、日本

一人親の父と中学生の娘の関係を描いた作品。26分の短編映画。

中学生のさわむらみこ(成沢真奈)は、同級生(一色眞妃果)の財布を盗んだと疑われ、ラーメン店を営む父親の寛(菟田高城)は、先生(村松和輝)から学校に呼び出される。みこは何も言わず、下校のチャイムが鳴ると1,000円を財布から差し出し、立ち去る。帰宅したみこは、寛のラーメン店を手伝う。
父親は、ショックを受けている様子のみこを気遣い、学校を休んでどこかに行こうとみこを誘う。みこの同級生の一人(大石真奈未)は、みこが盗んだのかと先生に問いただす。みこは、車でみこをラーメン屋に連れて行こうとする父親に、学校に行きたいと言い、寛はみこを学校に送る。みこは学校には行かず、自分を信じてくれた友だちと話した後、帰宅する。
寛のもとには、財布は家にあり盗まれたと思ったのは勘違いだったと、当該の生徒と友人(稲垣蘭)、そして先生が謝罪に来る。寛は帰宅したみこに、「しゃべれないのか。俺とは話したくないんだな。何でお金盗ったって嘘ついた!」と問い詰める。みこは「早く帰りたかったから。だってお店あるし」と答える。寛は常連客(杉山ひこひこ)が大量に食べ残したラーメンと置いていった1,000円を見て涙ぐみ、「みこ、仲直りしよっか」とみこに話しかける。みこはそれには答えず、やってきたお客に「いらっしゃいませ」と挨拶し、寛も呼応するのだった。

寛は、そそくさと帰って行った常連客の置いていった千円札を見て、みこが先生に差し出した千円も、早くこの気まずい空間から立ち去りたくて出しただけだったことに気づき、そのみこの気持ちに気づけなかった自分が情けなくて涙したのかもしれない。ただ、残念ながら作品では、みこが千円札を出したときのセリフが「財布は盗んでない」と言っているように聞こえ、後半の寛の「なんでお金盗ったって嘘ついた!」のセリフと合わない。よく考えると、「財布は盗んでない」と言って千円札を出すいうことは、中身だけ盗ったという意味だったのかもしれないが、ここは分かりづらかった。「中2映画プロジェクト」と銘打ち、総指揮をつんく♂が担当しており、若い女優の卵たちが登場している作品。

【5段階評価】2

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2025年5月17日 (土)

(3040) 金田一耕助の冒険

【監督】大林宣彦
【出演】古谷一行、田中邦衛、熊谷美由紀、吉田日出子、仲谷(なかや)昇、山本麟一、坂上二郎、東千代之介
【制作】1979年、日本

失われた石膏像を巡る殺人事件に挑む探偵の活躍を描いたコメディ作品。

全国的な有名人となった探偵、金田一耕助(古谷一行)は、ローラースケートを履いた窃盗団ポパイに囲まれ、彼らのアジトに連れて行かれる。女ボスのマリア(熊谷美由紀)は、石膏でできた不二子像の頭部を耕助に見せ、耕助の登場する「瞳の中の女」という短編が未解決になっているので解決してほしいとお願いする。耕助は石膏像の頭部を預かるが、散髪屋で何者かに奪われてしまう。耕助は等々力警部(田中邦衛)とともに石膏像の頭部を探す。石膏像を造ったのは故人の灰田勝彦で、今は新興美術協会の会長を引き継いだ古垣和哉(仲谷昇)が管理していた。耕助と等々力は灰田邸に行き、使用人(樹木希林)に石膏像の保管場所に案内してもらうが、当然、石膏像の頭部は消失しているのだった。
石膏像の頭部は、美術商の明智小十郎(東千代之介)が、故買屋の石田五右衛門(坂上二郎)から手に入れていた。明智邸に向かった耕助と等々力は、明智小十郎の妻、文江(吉田日出子)に会いに行き、そこで小十郎の浮気相手の綾香(小川亜沙美)の死体を発見。文江は自分が犯人だと話し、等々力は不満ながらも彼女を連行する。綾香は、借金のカタに頭部を八甲商事の隅田(夏木勲)に預け、隅田は頭部を金庫に保管していたが、それをサラ金大王の蛸島(佐藤蛾次郎)たちが盗み出す。盗賊団ポパイは八甲商事の金庫を盗んで持ち帰るが、中に入っていたのは蛸島の首だった。文江は夫を庇って犯人を名乗ったのだった。
帰宅した耕助の前に、明智小十郎の秘書の高木(草野大悟)が現れ、自分が頭部を盗んで綾香や蛸島を殺したと証言し、逃げ去る。耕助は、灰田勝彦の弟子として、古垣のほかに、片桐と森という男がおり、古垣が、勝彦の妻、不二子と片桐が不倫していることを勝彦に告げ口し、それが原因で片桐は海外に逃亡し、不二子が入水自殺したことを知る。耕助は、老人ホームで不二子像の頭部を作り続けている老人(山本麟一)が森だと考える。しかし、そうではなかった。老人の正体は片桐であり、片桐は古垣の屋敷に灰田に変装して入り込み、石膏像を見に来た古垣の前に現れて、古垣をショック死させる(正確には壁に激突して死ぬというコミカルな展開)。
文江の正体は不二子だった。不二子は自殺に失敗し、小十郎の妻、文江として生きながら、片桐の帰りを待っていた。再会した片桐に失望した不二子は、片桐を老人ホームに半ば幽閉し、不二子像の頭部を作らせ続けていた。そして、もう一人の弟子、森は、古垣の秘書の男(南州太郎)だった。窃盗団ポパイの真の黒幕である不二子が、不二子像の頭部を手に入れたことを知った森は、不二子と不二子像を我が物とするため、不二子に接近。高木を使って頭部を手に入れようとし、高木や明智を殺害したのも森だった。
事件を解決した耕助は、CM撮影に臨むが、CMスタッフたちは耕助の事件解決が遅いために何人も死人が出たことを批判する。耕助は、自分がおどろおどろしい犯罪を求めていることを訴え、スタジオから消える。彼は砂浜で、釣り鐘や日本刀などのものものしい小道具を愛でているのだった。

ナンセンスなギャグが多めなので、あらすじを書く気が起きなかったのだが、一応の推理劇はあったので、ある程度はまとめてみた。「犬神家の一族」(1976)や「獄門島」(1977)、「悪魔の手毬唄」(1977)、「八つ墓村」(1977)、「病院坂の首縊りの家」(1979)といった横溝正史作品だけでなく、「人間の証明」(1979)なんかもパロディとして使われているし、当時のヒット曲やテレビCM、テレビドラマ(太陽にほえろとか)もネタになっていた。終盤、横溝正史本人と、彼のの家にスーツケースに入ったお金を届ける男として角川春樹が出演していたり、出演者は豪華。

【5段階評価】2

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2025年5月16日 (金)

(3039) 花束みたいな恋をした

【監督】土井裕泰
【出演】菅田将暉、有村架純、オダギリジョー、小林薫、八木アリサ、韓英恵(かんはなえ)、森優作、古川琴音、中崎敏(はや)
【制作】2021年、日本

偶然出会った二人の男女の恋愛を描いた作品。

2020年。とある喫茶店で、一つのイヤホンを分け合って音楽を聴いている男女を見て、彼女(萩原みのり)と別の席にいた山音(やまね)麦(菅田将暉)は、左右で音の違う音楽を片方だけで聴くことを批判。同時に、別の席にいた八谷(はちや)絹(有村架純)も、彼氏(福山翔大(しょうだい))に同じことを告げる。立ち上がった麦と絹は、互いに気づく。二人は別れた恋人同士だった。
2015年、21歳の大学生だった絹と麦は、明大前駅で偶然出会う。天竺鼠の単独ライブに行き損ねたり、同じ作家の小説が好きだったり、趣味が同じで意気投合した二人は付き合うことになる。しばらくは仲よく暮らし、互いの親への紹介も済ませて同棲生活を送るが、就職した頃から関係がギクシャクする。2019年、二人は友人(森優作、古川琴音)の結婚式の日、別れることを決めたのだった。

番組説明に「共感度100%の不滅のラブストーリー」と書かれていたが、あまり共感することのない内容だった。別れのシーンでは、麦と絹が入ったジョナサンに、若い男の子(細田佳央太(かなた))と女の子(清原果耶)が入ってきて、かつての麦と絹のようなやりとりを始め、絹が涙をこらえきれず店を飛び出し、麦が追いかけて絹を抱きしめるのだが、全く涙を誘われなかった。LINEやパズドラ、スマスマやシン・ゴジラなど、当時の流行がちりばめられている点は共感ポイントだったが、それだけでは物足りなかった。

【5段階評価】3

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2025年5月15日 (木)

(3038) エルヴィス

【監督】バズ・ラーマン
【出演】オースティン・バトラー、トム・ハンクス、オリビア・デヨング、リチャード・ロクスバーグ、ケルビン・ハリソン・Jr
【制作】2022年、アメリカ

伝説の歌手、エルビス・プレスリーの生涯を描いた伝記映画。

エルビス・プレスリー(オースティン・バトラー)の幼少期から42歳の若さで死に至るまでを、彼のマネージャーを務めたトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)の視点で描いている。人種分離政策がまかり通っていた時代。黒人街で育ち、黒人の歌唱技術を身につけたエルビス・プレスリーは、ステージで腰をくねらせて唄い、女性客を熱狂させる。その様子を見たトム・パーカーは、彼の専属マネージャーを申し出て、彼を一躍スターダムに押し上げる。しかし、当時の政策に反抗的な歌唱によってエルビスは逮捕され、再起のため2年の兵役に就く。
兵役を終えたエルビスは、パーカーの戦略により映画に出るがヒットに恵まれず、ラスベガスのステージに立ち、大人気を博す。トム・パーカーは、インターナショナル・ホテルのオーナーと、エルビスをショーに出し続ける限り報酬を得られる契約を結ぶ。また、トムは実は不法移民であり、国外に出ることができなかった。そのため、トム・パーカーは、海外進出意欲を示すエルビスを、警備の不安を理由に国内にとどめ続ける。観客の愛に飢えたエルビスは薬に依存し始め、結婚したプリシラ(オリビア・デヨング)との関係は悪化。42歳の若さで心臓発作によりこの世を去るのだった。

「何が彼を殺したか? 医師団は心臓と言い、ほかの者たちは薬と言う。私だと言う者もいる。違う。本当に彼を殺したもの。それは愛だ。あなた方、ファンへの愛。」というトム・パーカーの独白が印象的。そこからエルビスの最後のステージのシーンとなり、「ゴースト/ニューヨークの幻」(1990)で有名な「アンチェインド・メロディ」を熱唱するのだが、それまでオースティン・バトラーが演じていたエルビスが、途中から本人の映像に変わる。これは迫力があった。それまで「ぶっちゃけ退屈な映画だな。評価2か」と思っていたのが、一気に評価4になった。ということで、間を取って評価3。普通かよ。

【5段階評価】3

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2025年5月14日 (水)

(3037) 奴らを高く吊るせ!

【監督】テッド・ポスト
【出演】クリント・イーストウッド、パット・ヒングル、インガー・スティーブンス、エド・ベグリー、ブルース・ダーン
【制作】1968年、アメリカ

自分を首つりにした集団に復讐する保安官の奮闘を描いた西部劇。

元保安官のカウボーイ、ジェド・クーパー(クリント・イーストウッド)は、ウィルソン元大尉(エド・ベグリー)率いる9人組に、牛泥棒と決めつけられ、弁明もむなしく首吊りにされる。9人が去ったところに通りかかったブリス保安官(ベン・ジョンソン)はジェドを助ける。首に縄の傷が残ったジェドは、アダム・フェントン判事(パット・ヒングル)に、冤罪であることを認められ、釈放される。復讐を口にしたジェドに、フェントン判事は保安官になるよう告げ、バッジを渡す。
ジェドは、自分の馬の鞍を奪い去った9人組の一人、レノ(ジョセフ・シノーラ)を見つける。フェントン判事は9人を生きて連れ帰るようジェドに命じていたが、レノがジェドに銃を向けたため、ジェドはレノを撃ち殺す。それを知った9人組の一人、ジェンキンス(ボブ・スティール)はフェントン判事のもとに自首し、9人組の残りがレッド・クリークにいると情報提供する。レッド・クリークに向かったジェドは、9人組の一人、ストーン(アラン・ヘイル・Jr)を発見。彼を逮捕して地元の保安官カルフーン(チャールズ・マッグロー)に預ける。ジェドはカルフーンと9人組のうち4人がいるW牧場に向かうが、3人組の牛泥棒に身内を殺されたという男が現れたため、その事件を追う。犯人の一人は、9人組の一人、ミラー(ブルース・ダーン)だった。ジェドは、途中で縛られた手の縄をほどいたミラーに襲われながらも逆襲し、生きたままミラーと、残り二人の若い牛泥棒を判事の下に連れ帰る。
ジェドは、フェントン判事に、若い男二人は殺人には関わっていないと言ったと話すが、判事は伝聞は聞き入れないと言い、ミラーとともに若い男二人も絞首刑にする。復讐を恐れたウィルソンは、トミー(ジョナサン・リッペ)、ルーミス(L・Q・ジョーンズ)と白昼のフォート・グラントでジェドを襲撃し、逃走。ジェドは、日用品店を営む女性、レイチェル(インガー・スティーブンス)に看病され、一命を取り留める。ジェドはレイチェルと二人で出かけ、彼女がかつて夫ポールを二人組の男に殺された上、強姦されたという身の上を明かす。彼女は今も、夫を殺し、自分を襲った男が死刑になることを願い、保安官に捕らえられた囚人の顔を確認し続けているのだった。
回復したジェドは、ウィルソンの家に向かい、トミーとルーミスを倒す。観念したウィルソンは自ら家の中で首を吊る。復讐の炎が燃え尽きたジェドは、バッジをフェントン判事に返すと、ジェンキンスを釈放するよう詰め寄る。フェントン判事はジェンキンスの釈放に応じる代わりに、保安官を続けるようジェドに命じる。判事は9人組の残りであるチャーリー(ネッド・ロメロ)とマドウ(ラッセル・トーソン)の情報をジェドに伝え、ジェドは彼らを捕らえに向かうのだった。

開始早々、主人公が首吊りになるという、衝撃的なオープニング。そこから九死に一生を得た主人公の復讐劇が始まるが、悪者を全員やっつけて、復讐完了、といった単純なハッピーエンドではないところが特徴的だった。西部劇はあまり観ないのだが、本作は主人公が好きな俳優、クリント・イーストウッドだし、「Hang'em High」という原題も有名な作品ということで鑑賞。しかし面白かったかというと、あまりすっきりしない終わり方で、微妙な内容だった。

【5段階評価】3

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2025年5月13日 (火)

(3036) ドクちゃん -フジとサクラにつなぐ愛-

【監督】川畑耕平
【出演】グエン・ドク、グエン・トゥエン、グエン・フーシー、グエン・アンダオ
【制作】2024年、日本

結合双生児として生まれた男性の生きる姿を描いたドキュメンタリー作品。

ベトナム戦争で米軍が撒いた枯れ葉剤の影響とされる、結合双生児として生まれたグエン・ドクとグエン・ベト。兄のベトは分離手術後に介護が必要な状態となるが、ドクは片足(と、作中で明言されていないがおそらくオストメイト)の状態になりながらも生き、健常者とほぼ変わらない生活を送り、トゥエンと結婚。その後、ベトは亡くなるが、ドクとトゥエンは双子を授かり、長男フーシー(日本語でフジ)、長女アンダオ(日本語でサクラ)は14歳になる。広島国際大学客員教授としての長い経歴を持っているドクは、普通の人と変わらない、家族との質素ながらも楽しい生活を送りながら、今も平和を訴える地道な活動を続けているのだった。

日本ではベトちゃんドクちゃんとして有名になったが、その後を知る人は少ないだろう。監督は、今もロシアのウクライナ侵攻のような戦争が続く中、この記録を伝えなければならないという使命感から、本作を手がけたということだ。ベト、ドクを生んで二人を見捨てたとされる両親も作品に登場する。ドクは両親との交流を続けているが、心境は複雑なようだ。自分の意志の強さを語るドクが、「もし僕がマイナス思考だったら、誰が報いを受ける? 考えてみて。僕だよね? だから僕たちは前向きに生きなきゃいけないんだ」という言葉が印象的だった。誰にでも当てはまる言葉だ。確かにそうなんだ。

【5段階評価】3

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2025年5月12日 (月)

(3035) エディット・ピアフ 愛の讃歌

【監督】オリビエ・ダアン
【出演】マリオン・コティヤール、ジャン=ピエール・マルタンス、シルビー・テステュー、ジェラール・ドパルデュー、マルク・バルベ
【制作】2007年、フランス、イギリス、チェコ

シャンソン歌手の生涯を綴った伝記映画。シャンソン歌手、エディット・ピアフ(マリオン・コティヤール)の生涯を、時代を交錯させながら描いている。マリオン・コティヤールがアカデミー主演女優賞を受賞した。

晩年のエディット・ピアフは舞台で倒れるなど、健康を害していた。子どもの頃、幼いエディット(マノン・シュバリエ)は、大道芸人の父親(ジャン=ポール・ルーブ)に引き取られ、娼館に預けられて育つ。エディットは娼婦のティティーヌ(エマニュエル・セニエ)に、実の子のようにかわいがられるが、戦地から戻った父に引き取られる。一度は父親とサーカス団で暮らすが、父親がサーカス団を去り、大道芸人暮らしとなる。父親の大道芸の場つなぎにエディット(ポリーヌ・ビュルレ)が歌を歌うと、人々は拍手喝采。彼女の天性の素質が開花する。道ばたで歌を歌う20歳のエディットは、ナイトクラブのオーナー、ルイ・ルプレ(ジェラール・ドパルデュー)の目に止まり、クラブデビューを果たす。ルイ・ルプレはエディットに、雀を意味するピアフと名付ける。時の人となるエディットだったが、ルイ・ルプレが何者かに殺され、エディットは犯人扱いされる。作曲家のレイモン(マルク・バルベ)は落ち目のエディットを厳しく指導し、そのお陰でエディットは見事な復活を遂げる。
エディットはプロボクサーのマルセル(ジャン=ピエール・マルタンス)と恋に落ちる。マルセルは妻子持ちだったが、エディットはマルセルなしでは生きられないほど彼を愛する。マルセルは世界チャンピオンに上り詰めるが、飛行機事故に遭い、死亡。エディット自身も自動車事故を経験し、薬物依存度が増していく。死亡前夜、舞台で歌を披露することができず、ベッドに担ぎ込まれたエディットは、若い頃に産んだ娘マルセルを失った記憶を思い出す。後年、後悔などしないと歌う名曲に出会ったエディットは、体はボロボロになりながらも見事な歌唱を披露するのだった。

マリオン・コティヤールによる、40代にして老婆のようなエディット・ピアフの怪演が特徴的。受け狙いかのような細い眉毛の線と縮れ毛。歌はマリオン本人ではないだろうが、口パクとは思えない自然な演技だった。時代を交錯させながら描くのは、映画ではよくある手法。物語が分かりにくくなることがあるが、本作はそうでもなく、エディット・ピアフ本人への興味をかき立てるのに十分な内容だった。なんで突然ボクサーと恋に落ちるの、というのは、映画としては不思議だったが、伝記だからしかたがないのだった。

【5段階評価】3

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2025年5月11日 (日)

(3034) インファナル・アフェアII 無間序曲

【監督】アンドリュー・ラウ、アラン・マック
【出演】ショーン・ユー、アンソニー・ウォン、フランシス・ン、エリック・ツァン、カリーナ・ラウ、エディソン・チャン
【制作】2003年、香港

マフィアと警察の攻防を描いた作品。「インファナル・アフェア」(2002)の次作であり、その前日譚。次作は「インファナル・アフェアIII 終極無間」(2003)。

香港マフィアのボス、クワン(チェン・タンチョー)が、サングラスをした若者、ラウ(エディソン・チャン)に殺される。ラウとクワン殺害を共謀したのは、クワンの下部組織を束ねるサム(エリック・ツァン)の妻マリー(カリーナ・ラウ)だった。ラウはマリーに恋い焦がれており、「サムがラウを警察に潜入させたいと言っている」とマリーに言われ、警察学校に入ることを決意。警察学校で警察官を目指すヤン(ショーン・ユー)は、殺されたクワンが実の父であることが警察に判明し、警察学校を首になる。マフィアの一掃を目指すウォン警部(アンソニー・ウォン)は、ヤンを潜伏警察官として、クワンの跡を継いだハウ(フランシス・ン)の組織に潜入させる。
ハウとヤンは異母兄弟の関係であり、ハウはヤンを重用する。ハウは強引に組織をまとめ上げるが、ヤンの情報により、取引現場を押さえられ、警察に連行される。しかし、彼の鞄に入っていたのは、一本のビデオテープ。そこにはウォン警部がサムの妻マリーと接触し、ウォン警部がマリーにクワン殺害を指示した映像が記録されていた。ハウは組織をまとめ上げるため、抵抗派の幹部を次々と殺害させていた。腹心のロ・ガイ(ロイ・チョン)も警察のスパイであることを知り、ヤンの目の前で自ら殺害する。クワン殺害に関わったウォン警部は、車に爆弾を仕掛けられるが、ウォン警部の同僚のルク警視(フー・ジュン)が、車の運転を代わろうとしたため死亡。サムを心配して空港に向かったマリーも、ハウの部下に車でひき殺される。
香港返還による体制変更が迫る中、警察幹部はウォン警部の一件を不問に処し、彼に引き続きハウ逮捕の陣頭指揮を執らせる。ウォン警部は、これまで通じ合ってきたサムに、ハウの悪事の証言をさせることにする。それを知ったハウは、タイにいるサムの家族を拘束し、サムを呼び出してサムを脅すが、サムは先を読んでおり、タイの仲間を使って家族の安全を確保するとともに、ハワイに逃げていたハウの家族を拘束。立場が逆転して狼狽するハウのもとに、ウォン警部がラウを含む部下を連れて現れ、ハウの一味を取り囲む。ハウはサムに銃を突き付けるが、ウォン警部がハウの眉間を撃ち抜く。倒れ込むハウをヤンが抱える。ハウはヤンの胸元に盗聴器があることに気づき、彼がスパイだったと悟るが、そのまま息を引き取る。サムがマフィアのボスにのし上がり、ヤンは引き続きサムの腹心として、潜伏捜査を続ける。ラウもまた、警察官として警察に潜伏することになるのだった。

筋書きは、始めは分かりづらかったが、よくできていた。前作の前日譚ということを知らずに観たのと、前作を観てからかなり時間が経ってからの鑑賞だったので、前作とは別設定の潜伏劇だと思ってしまった。前作と共通する俳優、登場人物もいるので、続けて観た方が断然いいだろう。3作目もあるが、自動録画されていなかったので、観るのはだいぶ先になりそうなのが残念。この辺は自動録画鑑賞の辛いところ。

【5段階評価】4

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2025年5月10日 (土)

(3033) 猫なんかよんでもこない。

【監督】山本透
【出演】風間俊介、松岡茉優、市川実日子、つるの剛士、矢柴俊博
【制作】2015年、日本

2匹の捨て猫と暮らす男の暮らしを描いた作品。杉作の漫画が原作。

プロボクサーを目指している杉田ミツオ(風間俊介)は、漫画家の兄貴(つるの剛士)のアパートに居候。ある日、兄貴が2匹の捨て猫を家に連れ帰ってきて、ミツオに世話を任せる。兄貴はオスの黒猫にクロ、白黒のメスにチンと名付ける。ミツオはしぶしぶ2匹を育てる。ミツオはA級ライセンスをかけた試合に勝利し、日本ランカーとなって世界に挑戦する権利を手に入れるが、その試合で網膜裂孔になり、プロボクサーの道を断たれてしまう。兄貴は結婚を機に家を出て行き、アパートにはミツオと猫2匹が残される。
無職状態のミツオは、幼稚園の給食のバイトを始める。そこには、ある日公園で、ミツオに猫の避妊と去勢を勧めてきた女性(松岡茉優)が働いていた。彼女は管理栄養士のウメさんだった。ミツオはチンに避妊手術をしたが、その日から行動的だったチンが大人しくなり、他の猫に相手にされなくなってしまったことで、罪の意識に駆られる。それもあってミツオはクロを去勢せず、次第に外に出るようになったクロは地域のボスにのし上がるが、他の猫との喧嘩が原因で猫エイズにかかり、まもなく死んでしまう。ボクシング漫画を懸賞に応募しては落ち続けていたミツオは、クロとの思い出を漫画にして応募する。夕方、チンと熟睡しているミツオのもとに、出版社からの電話が入るのだった。

なんてことはない物語だが、ちょっとした感動が味わえる作品。猫の様子が自然で、行き当たりばったりなのか、バッチリ演技しているのか、不思議だった。

【5段階評価】3

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2025年5月 9日 (金)

(3032) 世界でいちばん長い写真

【監督】草野翔吾
【出演】高杉真宙(まひろ)、松本穂香(ほのか)、武田梨奈、前原滉(こう)、田村杏太郎(きょうたろう)、黒崎レイナ、水野勝、吉沢悠
【制作】2018年、日本

高校の思い出に世界一長い写真を撮ろうと奮闘する高校生を描いた青春映画。

序盤は純白のドレスに身を包んだ女性(武田梨奈)に会う青年(高杉真宙)が登場。この二人の関係は何なんだろう、というところから物語が始まる。序盤、新郎新婦に思えた二人は、従弟の関係。高校時代、序盤に登場した彼、写真部の内藤宏伸(ひろのぶ)はクラスで目立たない存在で、部長の三好奈々恵(松本穂香)に馬鹿にされる日々。ある日、宏伸の従姉でアンティークショップを営む竹中温子(武田梨奈)に荷物運搬の手伝いを強制される。彼はそこで、アンティークなカメラを発見。カメラ店の宮下賢一(吉沢悠)に見てもらうと、それは水平に回転しながら3360度を撮影できるパノラマカメラであることが分かる。宏伸は、温子の紹介で、小出智也(水野勝)のヒマワリ畑で360度のヒマワリ畑の撮影に挑戦。見事な写真ができあがる。それがきっかけで、宏伸は一方的に片思いしていたクラスのマドンナ、安藤レイカ(黒崎レイナ)と親しくなる。
宏伸は、このカメラは360度だけではなく、カメラを水平に13回転半させながら撮影を続けることで、世界一長い写真を撮ることができることを知る。引っ込み思案だった宏伸が奈々恵やレイカたちとクラスを説得し、高校生活の思い出に写真撮影に挑戦する。校庭に集まった仲間たちは、宏伸の構えるカメラを中心として輪を作り、次々とポーズを変えながら、写真撮影を敢行する。
時が戻って現代。新婦の温子と宮下賢一との披露宴で、宏伸は披露宴の様子をパノラマカメラに収める。そこには、カメラの仕事を続ける奈々恵もいた。後日、学校で再会した宏伸と奈々恵は、今もカメラを続けていることを話し合う。宏伸は、パノラマ写真を披露した文化祭の最終日のことを思い出すのだった。

タイトルは意味深長だが、文字通り、物理的に横に長い写真の話だった。従姉の温子、クラスメイトの奈々恵という、二人の美女を中心に物語が進む。もう一人の美少女レイカは、最終的に医学部に合格したクラスメイト(前原瑞樹)になびき、温子はカメラ店の賢一と結婚。奈々恵は、レイカと親しくなる宏伸に焼き餅を焼いたり、文化祭最終日に花飾りを宏伸の背中に貼り付けたり、実は宏伸を気にしていたことをほのめかしつつも、奈々恵と宏伸が最終的にどうなったかは描かれない。薄着が多い温子にメロメロになる館沼淳(前原滉)の一方的な片思いなども交え、ほろ苦く楽しい青春を描いたさわやかな作品だった。

【5段階評価】4

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2025年5月 8日 (木)

(3031) 火天の城

【監督】【出演】西田敏行【制作】

安土城築城の総棟梁となった男の奮闘ぶりを描いた時代劇映画。

織田信長(椎名桔平)に命じられた(西田敏行)。

中盤までは普通に面白いのだが、それ以降、急にお涙ちょうだいの安っぽい展開になった。妻が死ぬところまではともかく、女が実は間者で彼女を愛していた熊蔵が殺されるところは、やりすぎ。また、太い柱をみんなで引っ張り上げるシーンも、縄には体重以上の力は働いていないので、手から血を流して引っ張る必要が実はなく、ひもを伸ばして足でもかけて全体重を乗せればいいだけ。それでも、調整が成功したところは感動的だった。

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2025年5月 7日 (水)

(3030) 虹をつかむ男

【監督】山田洋次
【出演】西田敏行、吉岡秀隆、田中裕子、田中邦衛、笹野高史、柳沢慎吾、すまけい、松金よね子、倍賞千恵子、前田吟
【制作】1996年、日本

家出をした若者と、古い映画館を営む男性との交流を描いた、映画愛あふれる作品。

就職活動に落ちこぼれた若者、平山亮(りょう)(吉岡秀隆)は、父親(前田吟)と喧嘩して家出。徳島の光町の古い映画館オデオン座の社長、白銀活男(しろがねかつお)(西田敏行)と出会い、彼の元で働くことにする。活男は、映画愛は強いが経営には無頓着で、オデオン座は慢性的な経営不振。それでも活男とオデオン座は地元民に愛されていた。亮は安月給に不満ながらも、活男の人柄に惚れ、映画館勤めを続ける。
活男は幼なじみの十成(となり)八重子(田中裕子)に好意を寄せていたが、本人はそのことを表に出さない。しかし、映写技師の常さん(田中邦衛)や周囲の人には活男の片思いはお見通しだった。八重子は結婚経験があったが、夫を病気で失っていた。八重子の父(高原駿雄)が亡くなり、八重子は、前の夫と同じ会社に勤める服部という男との再婚を決める。八重子にアプローチを続けていた活男は、そのことを八重子から聞かされ、ショックを隠して八重子を祝福する。八重子は、活男が自分を好きであることに気づいていた。八重子は、活男の思いに答えず別の男との結婚を決めたことを活男に謝り、涙する。
活男は、とうとう映画館をたたむ決意をするが、常さんが1,200万の貯金を活男に渡し、オデオン座は窮地を脱することになる。活男は、将来のある亮をあえて首にして実家に帰らせる。亮は実家から感謝の手紙を活男に送る。活男は満足げに手紙を読み終えると、映画館にふらっとやって来た男(上島竜兵)に、ここで働かないかと気安く声をかけるのだった。

映画館が舞台ということで、いくつかの映画の映像が実際に流れる。「トイレの花子さん」(1995)、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)、「鞍馬天狗・天狗廻状」(1952)、「野菊の如き君なりき」(1955)、「かくも長き不在」(1961)、「雨に唄えば」(1952)、「禁じられた遊び」(1952)、「東京物語」(1953)、「男はつらいよ」(1969)。さすがに3,000本以上も映画を観ていると、半分以上は観たことがあるというのが、この手の趣味では結構楽しい。ラストは「男はつらいよ」(1969)に焦点が当たり、車寅次郎も、CG合成でちょこっと登場。思えば亮の父親は倍賞千恵子と前田吟だし、亮が通う職安には佐藤蛾次郎が現れるのだった。本作は、撮影直前に亡くなった渥美清を悼む形での制作だが、今回の放映は、これまた亡くなった西田敏行を悼んでのものだった。

【5段階評価】4

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2025年5月 6日 (火)

(3029) ラブ・アクチュアリー

【監督】リチャード・カーティス
【出演】ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、アラン・リックマン、ビル・ナイ、マルティン・マカッチョン、エマ・トンプソン
【制作】2003年、イギリス、アメリカ、フランス

夫婦や親子、恋人たちのクリスマスの愛を描いた群像劇コメディ作品。

登場するのは、イギリス首相のデビッド(ヒュー・グラント)と公邸のスタッフのナタリー(マルティン・マカッチョン)、妻を亡くしたダニエル(リーアム・ニーソン)と妻の連れ子サム(トーマス・サングスター)、サムの片思いの相手ジョアンナ(オリビア・オルソン)、撮影のラブシーンのリハーサルの代役(スタンドイン)を担当しているジョン(マーティン・フリーマン)とジュディ(ジョアンナ・ペイジ)、撮影スタッフのトニー(アブダル・サリス)、その友人でイギリスではもてないのでアメリカにナンパに行こうと考えるコリン(クリス・マーシャル)、新婚のジュリエット(キーラ・ナイトレイ)と新郎のピーター(キウェテル・イジョフォー)、ピーターの友人で実はジュリエットが好きなマーク(アンドリュー・リンカーン)、下品なロック歌手ビリー・マック(ビル・ナイ)とそのマネージャーのジョー(グレゴール・フィッシャー)、ダニエルの相談相手の女性カレン(エマ・トンプソン)、カレンの夫で会社社長のハリー(アラン・リックマン)、ハリーが恋愛を後押しする奥手の女性社員サラ(ローラ・リニー)、サラの好きな相手カール(ロドリゴ・サントロ)、ハリーを誘惑する女性ミア(ハイケ・マカチュ)、恋人(シエンナ・ギロリー)が弟と浮気していることを知ってコテージ暮らしを始めた作家ジェイミー(コリン・ファレル)と家政婦に来たオーレリア(ルシア・モニス)、などなど。それぞれがクリスマスにハッピーエンドを迎え、1ヶ月後に空港で多くの再会があるのだった。

主役級の有名俳優が多数登場する賑やかな作品。Mr.ビーンことローワン・アトキンソンもちょい役で出演しており、最後には「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)のデニス・リチャーズまで登場。アメリカでモテモテになるコリンや、オーレリアにプロポーズするジェイミー、ジョアンナに気に入られるサム、ナタリーの家を尋ね当てるデビッドなど、できすぎな展開もあるが、妻のカレンに浮気がバレるハリーや、ジュリエットに好きな気持ちを伝えて去るマークなど、ほろ苦い部分もあった。ベタだがジョアンナの歌のシーンや、ジェイミーのプロポーズのシーンは感動的。長いし登場人物が絡み合っているのでしっかり覚えていないと訳が分からなくなってくる部分はあるが、楽しい作品だ。

【5段階評価】4

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2025年5月 5日 (月)

(3028) ブルークリスマス

【監督】岡本喜八
【出演】勝野洋、竹下景子、仲代達矢、岡田英次、岡田裕介、小沢栄太郎、沖雅也、田中邦衛、大滝秀治、中条静夫、天本英世
【制作】1978年、日本

青い血を持つ者の出現に怯える人類の選択を描いたSF作品。タイトルからは想像のつかない異色作。

宇宙学者の兵藤光彦(岡田英次)が、UFOや宇宙人の存在を肯定する説を唱え、総スカンを食らうが、彼は何者かに拉致される。国営放送JBCの報道部員、南一矢(仲代達矢)は、大河ドラマの主演に抜擢された新人女優の高松夕子(新井晴美)と交際している芸能記者の木所(岡田裕介)から、夕子の血が青かったという話を聞かされる。南は一笑に付すが、世間ではUFOの目撃談や、青い血を持つ者の出現が噂されるようになる。南は、兵藤博士がアメリカにいるという噂の真相を確かめるため、ニューヨークで調査を進める。ようやく兵藤博士と対面できた南だったが、兵藤博士は何者かに拘束されてしまう。南は強制帰国させられ、上司(小沢栄太郎)から調査の中止を命じられる。パリ支局に飛ばされた南は、そこで兵藤博士を見かけるが、彼の頭にはロボトミー手術の跡があり、意志を奪われていた。
国防庁の職員、沖退介(勝野洋)は、特殊部隊に転属となり、青い血を持つ者を隔離する任務を負っていた。彼は理髪店に勤める西田冴子(竹下景子)と親しくなり、彼女の処女を奪うが、彼女の流した血は青かった。沖は彼女とともに田舎で暮らすことを決意する。しかし、沖には国防庁司令から、青い血を持つ者の抹殺を命じられる。沖の担当する対象敵性物は冴子だった。クリスマスイブの夜。家で沖を待つ冴子の前に沖が現れ、冴子は喜ぶが、沖は機関銃で冴子を銃撃。家を出ると、外で待ち構えた国防庁の陣営に銃を向けようとし、銃殺される。沖の流す赤い血に、冴子の青い血が流れ、混じり合うのだった。

人類の一部が青い血を持つようになるという、魅力的な設定を持ち込んでいるのだが、その設定を生かし切れておらず、有名俳優が続々と登場しているにもかかわらず、社会ドラマとしても、人間ドラマとしても、驚きや感動のない、消化不良な作品だった。国連を始めとする機関が、なぜ青い血の者は人間ではない恐怖の対象だという印象を人類に植え付けようとしているのか、よく分からないし、ヒトラーのユダヤ人虐殺にも重ねているようだったが、人類が過去の過ちを乗り越えて賢明な道を進んだわけでもなかった。南がパリで兵藤博士と偶然再会したり、沖の殺害対象が冴子だったり、ご都合主義なところもあった。公開当時25歳の竹下景子の可愛らしさは一見の価値あり。

【5段階評価】2

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2025年5月 4日 (日)

(3027) ナイト・オブ・フォーチュン

【監督】ラッセ・リスケル・ノアー
【出演】レイフ・アンドレー、イェンス・ヨルン・スポッテイグ、イェスパー・ローマン
【制作】2022年、デンマーク

遺体安置所で妻の遺体と対面することになった男を描いた作品。24分の短編映画。

老いた男カール・ベリストローム(レイフ・アンドレー)が、遺体安置所の係の者(イェスパー・ローマン)に連れられ、妻カレンの棺と対峙する。「もしかすると口が少し垂れていて肌が黄色いかもしれません」と言われ、カールは棺の蓋を開けることができず、トイレの個室に閉じこもる。すると隣から、紙をくれと言って男が壁の下の隙間から手を伸ばしてくる。カールはトイレットペーパーを引き出して男に渡す。男はトーベン(イェンス・ヨルン・スポッテイグ)と名乗り、妻イェッテの棺の蓋を一緒に開けてほしいとカールに頼む。カールは断り切れず、トーベンと二人で蓋を開ける。トーベンは遺体の女性(ボディル・ラッセン)を前に、謝罪をしたためた手紙を読み始める。すると、そこに大勢の遺族が係の者に連れられて入ってくる。その遺体はトーベンの妻ではなかった。後から来た男性(ディック・カイソ)の妻ロッテだった。カールとトーベンは、遺族たちとロッテを悼む。
カールはトーベンと別れ、再度、自分の妻の棺に対峙する。そこに係の者が現れ、トーベンはここの有名人で、3年前に妻を亡くしたが、ひどいボートの事故で遺体が見つからず、別れを告げられていないのだとカールに教える。カールは新米の係員セーレン(オリバー・デュー)から遺品を受け取り、棺の蓋を開けられないまま安置所を出る。外のベンチにはトーベンが座っていた。カールは迷いながらもトーベンに近づき、横に座る。二人は何となく笑い合う。カールはトーベンを連れて妻の棺の前に戻り、ようやく蓋を開けると、妻(マーギット・クリステンセン)の額に口づけをする。トーベンは、自分の妻が、そしてカールの妻も好きだったという歌、幸運の騎士(ナイト・オブ・フォーチュン)を口ずさむのだった。

何かとんでもないオチが待っているのかと思いながら観ていたが、そういうことはなく、妻を亡くした恰幅のよいおじさんたちのお話だった。映画らしいできばえだが、面白かったかというと微妙。

【5段階評価】2

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2025年5月 3日 (土)

(3026) 栄光への5000キロ

【監督】蔵原惟繕
【出演】石原裕次郎、浅丘ルリ子、ジャン=クロード・ドルオー、ロバート・A・キナラ、仲代達矢、エマニュエル・リバ、三船敏郎、伊丹十三
【制作】1969年、日本

過酷なラリーに挑戦するドライバーと、彼を待つ恋人を描いた作品。

日本人ドライバー、五代高行(たかゆき)(石原裕次郎)は、恋人の坂木優子(浅丘ルリ子)、ケニア人のジュマ・キンゴリー(ロバート・A・キナラ)、フランス人のピエール・ルデュック(ジャン=クロード・ドルオー)、その妻アンナ(エマニュエル・リバ)と、ジプシー・クルーというフリーランスのチームでラリーに参戦。五代は無理な走行で路上の落石を避けきれず、大事故を起こす。右こめかみに傷跡を残しつつも奇跡の復帰を遂げた五代は、日産のチームに参入し、日本グランプリに出場。UACに所属したピエールは五代の妨害役を命じられ、不満ながらもその役に徹し、グランプリはUACが優勝。五代は惜しくも2位となる。
五代を待ち続ける生き方に悩んでいた優子は、ファッションデザイナーのジャック・シャブロル(アラン・キュニー)と再会。ジャックはデザイナーの実力のある優子を誘う。優子は迷いながらもサファリラリーに出る五代と別れ、ジャックとパリに向かう。ラリーで重要な出発順の抽選で、五代は90番という不利な順番になる。ラリー本番の日。五代と、改めてナビゲーターに迎え入れられたジュマは、スタート地点に、パリにいるはずの優子が立っているのを見つける。
五代は驚異的な走りで順位を上げ、3番出発からトップになったピエールとの一騎打ちとなる。ところがピエールは、過去にもあった、路上に突然現れた鹿に衝突するアクシデントに見舞われ、リタイアを余儀なくされる。ライバルの脱落により、五代とジュマの車が優勝。五代は優子とホテルの部屋で抱き合うのだった。

3時間近い大作だが、終始退屈だった。レースの映像は、巧みなカメラワークで迫力があるのだが、レースの全体像がよく分からないので、結果をナレーションで知ることになり、抜きつ抜かれつのドキドキ感が薄い。全体的に音楽も暗かった。ようやくサファリラリーの後半から、五代とピエールの一騎打ちという分かりやすい構図になった。石原裕次郎の英語でのやりとりや、浅丘ルリ子のフランス語は見事だった。

【5段階評価】2

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2025年5月 2日 (金)

(3025) 甦える大地

【監督】中村登
【出演】石原裕次郎、三国連太郎、寺尾聰、司葉子、岡田英次、志村喬、北林谷栄、渡哲也、奈良岡朋子
【制作】1971年、日本

鹿島工業地域の開発の過程を描いた作品。原作は木本正次の小説「砂の十字架」。

江戸時代。たびたび洪水の被害を受けていた鹿島を救おうと、中館(なかだて)広之助(渡哲也)という郷士(ごうし)が、鹿島灘までの掘り割り工事を行う。しかし、鹿島灘の海水が逆流し、工事は失敗に終わる。時が変わり現代、茨城県庁の植松一也(石原裕次郎)は、県知事岩下三雄(岡田英次)とともに鹿島港、鹿島工業地域と農業団地の造成を目指す。植松は建設省の野田鋭介(三国連太郎)に陳情に行き、野田を鹿島に招いて協力を要請する。地元では鹿島町長の権藤義一郎(志村喬)が始めは開発賛成側につくものの、町会議員の滝井善吉(高原駿雄(としお))にそそのかされ、土地の値段を吊り上げるため反対派に回る。
植松は野田を再度説得。野田が茨城県庁の開発部長になる。野田は土地を売却した地主に報奨金を出すという方策を打ち出し、植松は常陸川の川底の肥沃な土をパイプで農業団地に送り込み、豊かな土地に変える。住民たちは土地の売却に応じるようになり、ついに鹿島港の工事が始まる。農業団地に移った農民たちの中には、農業をろくにせず、いかがわしい店を出したり遊ぼ呆けたりする者もおり、植松の描いた緑の楽園は簡単には実現しなかった。野田は一時的な現象だと話すが、植松は自分が7年かけて説得して回ったことは誤りだったのかと悩む。それでも鹿島港は開港。植松は、新天地で農業に勤しむ青年(寺尾聰)から取れたてのピーマンを受け取り、農道を歩むのだった。

鹿島港開発の経緯を描いた硬派な作品。役所の人間が主役になっている。序盤に江戸時代の土木事業が登場するが、こういった説明的な部分は、絵と朗読だけで済ませることもよくあるものの、本作では渡哲也が郷士を演じ、セリフは相当説明っぽいものの、しっかり力を入れてを描いている。鹿島灘逆流の映像は、つぎはぎで何だかよく分からなかったり、なんで農民が川に落ちてんの、みたいな演出もあったりはしたが。ただ、興行的には振るわなかったらしい。
石原裕次郎は、「黒部の太陽」(1968)や「富士山頂」(1970)のような歴史的土木事業をいくつも取り上げている。三國連太郎は、クレジットの表記が「国」だったのであえて「三国」と書いた。

【5段階評価】3

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2025年5月 1日 (木)

(3024) ある兵士の賭け

【監督】キース・エリック・バート
【出演】石原裕次郎、デイル・ロバートソン、フランク・シナトラJr.、新珠三千代、三船敏郎、ディナ・メリル
【制作】1970年、日本

孤児院建設のために奮闘する米軍大尉と、彼に興味を持つ戦場カメラマンを描いた作品。実話を元にしている。

米軍大尉のクラーク・J・アレン(デイル・ロバートソン)は、野戦装備を付けて座間キャンプから別府市までの1,321kmを14日で踏破するという計画をたて、成功すれば全額が別府の孤児施設、白菊寮に全額が寄付され、失敗すると半額が戻されるという賭けを発表する。全世界から6,500ドル(234万円)が賭けられ、彼は米兵のデニス・ディクソン(フランク・シナトラJr.)と座間を出発する。戦場カメラマンの北林宏(石原裕次郎)は、かつてアレンが、朝鮮戦争で一般市民の夫婦を誤射により殺害し、幼い子どもを孤児にしたところを目撃しており、一見美談に見えるアレンの賭けに、偽善を感じる。北林は先輩の衣笠忠夫(三船敏郎)に、アレンの調査を依頼。北林は衣笠に勧められ、白菊寮を見に行く。白菊寮の寮長、山田シゲ(新珠三千代)は、孤児にお母さんと慕われ、雨漏りの絶えない古びた寮で健気に子ども達を育てていた。朝鮮戦争後に白菊寮を訪問したアレンは、子ども達が雨漏りのしないうちが欲しい、と願うのを聞いて、1,321km踏破の賭けを企てたのだった。北林は、アレンの行程で彼を待ち受け、朝鮮戦争での行為を伝え、君はアメリカだ、と責めるが、アレンは歩いているのは私の国ではなく二人の男だと答える。
アレンは、途中でディクソンが高熱で脱落するというトラブルに見舞われながらも、別府に13日9時間でたどり着く。白菊寮の新築工事が始まるが、資金は足りず、アレンは翌年も座間から別府まで寄付を募りながら歩くが、集まったのはわずか3万円、米軍将兵からは1,000ドルだった。アレンは翌年も募金旅行を行った。衣笠と北林がの働きかけで、日本中から寄付が集まるようになる。アレンは一度アメリカに戻るが、ベトナム戦争に派遣されることが決まり、妻のケリー(ディナ・メリル)や娘(リンダ・パール)、息子(キース・ラーセンJr.)は悲しむ。
アレンに共感するようになった北林は、中央ジャーナルのカメラマンとして戦地でアレンに会い、白菊寮が完成したことを称える。アレンは北林を見送ったあと、戦地で命を落とす。アレンの日本到着を待っていた白菊寮の山田や子ども達は悲しむ。北林はアレンの遺志を受け継ぎ、徒歩旅行を始めるのだった。

タイトルを見ると、戦場で一か八かの賭けに出た兵士の運命を描いたような、サスペンス作品かと思ったが、座間から別府まで14日以内に歩けるかという賭けの話だった。英語の題名が「The Walking Major」なので、むしろ「歩く米軍大尉」なんかのほうがわかりやすかったかも。ようやく別府にたどり着いた大尉に、孤児院の子どもたちが駆け寄る姿は感動的。静かな感度を呼ぶ作品だった。
石原裕次郎や浅丘ルリ子、新玉三千代が流ちょうな英語を披露しているのに驚き。石原裕次郎というと、「嵐を呼ぶ男」(1957)や「銀座の恋の物語」(1962)のようなかっこいいヒーロー役というイメージを抱きがちだが、「黒部の太陽」(1968)のような硬派な作品や、こうしたヒューマンドラマにも携わっている。

【5段階評価】4

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