« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »

2025年2月

2025年2月28日 (金)

(2962) エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界は僕らの手の中に

【監督】リチャード・リンクレイター
【出演】ブレイク・ジェンナー、グレン・パウエル、ゾーイ・ドゥイッチ、ワイアット・ラッセル、J・クィントン・ジョンソン
【制作】2016年、アメリカ

大学の野球部の男子学生たちの恋と日常を描いた青春作品。

投手のジェイク・ブラッドフォード(ブレイク・ジェンナー)は、特待生として大学の野球部に入り、寮生活となる。先輩部員と車に5人乗りで女性に声をかけていると、一人の女性(ゾーイ・ドゥイッチ)が、後部座席のジェイクがお気に入りだと言って立ち去る。ジェイクはその子の部屋の番号が307であることを確認する。寮では、飲酒や二階に女性を連れ込むことが禁止されていたが、部員たちはお構いなし。パーティに行ったり、寮でパーティをしたりして過ごす。ジェイクは、メッセージとともに三本の花を307号室の部屋に貼る。すると、女性から電話がかかってくる。女性の名はビバリー。ビバリーはジェイクに会おうと言い、夜のパーティにジェイクを招く。ジェイクはチームメイトとパーティに行き、パーティを楽しむ。ジェイクは湖でビバリーと過ごし、ビバリーの部屋で夜を明かして新学期を迎える。ジェイクの大学生活が始まるのだった。

野球部の話だが、野球のシーンはほぼ一度だけ。それでもけっこう本格的だった。それ以外は女の子をパーティでナンパする多愛のない展開だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月27日 (木)

(2961) マリと子犬の物語

【監督】猪股隆一
【出演】船越英一郎、宇津井健、高嶋政伸、広田亮平、佐々木麻緒、松本明子、小野武彦
【制作】2007年、日本

中越地震で被災地に取り残された飼い犬親子と、その飼い主家族の運命を描いた作品。

山古志村の職員、石川優一(船越英一郎)は、父親の優造(宇津井健)と、小学生の長男、亮太(広田亮平)、その妹の彩(佐々木麻緒)と山古志村で暮らしている。亮太と彩の母親はすでに亡くなっていた。ある日、亮太と彩は、おん月が原で捨てられた子犬を見つける。犬は亮太と彩の後を付いて来、二人は子犬と遊ぶようになる。彩は5歳の誕生日に犬を飼いたいと祖父の優造にねだる。犬が苦手な優一は反対するが、母親を失った彩が、親のいない捨て犬をかわいそうだと言っているのを知り、飼うのを認める。犬はマリと名付けられ、1年後には3匹の子を産み、お母さんになる。
2004年、中越地震が起き、自宅にいた優造と彩は崩れた家の下敷きになってしまう。山古志村は道路が寸断されて孤立状態となり、村長(小野武彦)は全民避難を決断する。マリは、捜索に来た自衛隊員の安田(高嶋政伸)を石川家まで導き、家のがれきに優造と彩が埋まっていることを伝える。二人は救助され、ヘリに乗せられるが、マリと子犬をヘリに乗せる時間的余裕はなく、犬たちは取り残されてしまう。
山古志村の村民は避難所暮らしとなる。彩はマリを助けに行きたいと亮太に訴える。亡くなった母親から、彩を守ってあげてと手紙で伝えられていた亮太は、マリを助けに山古志村に行くことにする。亮太は彩に待っていろと言うが、彩は自分も行くと言い、亮太は彩を連れて行くことにする。
亮太と彩は険しい旧道を通って山古志村を目指すが、大雨が降り始め、彩は足を負傷し、さらに発熱してしまう。二人が山古志村に向かっていることを知った優一は、雨の中、懐中電灯を手に山古志村を目指し、廃屋の中で立ち往生している二人を発見。避難所に連れ帰る。
時間が経ち、ようやくヘリによる一時帰宅が実現する。自衛隊員や村民の計らいで、石川家は優一とともに、彩と亮太も村に入る。三人は一生懸命マリを探すが見つからない。三人は、マリを見つけたおん月が原に駆けていく。すると、マリの子どものグー、チョキ、パー、そしてその後から、マリが現れる。彩はマリに抱きついて涙を流す。マリと子犬を取り戻した石川家は、仮設住宅で暮らしながら、いつか山古志村に戻ることを夢見るのだった。

実話を題材にした感動作。飼い犬の話で、ベタな展開ではあるが、泣けた。宇津井健と船越英一郎の演技力の素晴らしさが光ったし、子役に泣かされたものあまり記憶にない。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月26日 (水)

(2960) キングピン/ストライクへの道

【監督】ボビー・ファレリー、ピーター・ファレリー
【出演】ウディ・ハレルソン、ランディ・クエイド、バネッサ・エンジェル、ビル・マーレイ、ロブ・モラン
【制作】1996年、アメリカ

夢を絶たれたプロボウラーが、才能あるアマチュアボウラーと100万ドルを目指すコメディ映画。

父親(ダニエル・グリーン)にボウリングの才能を見出された少年ロイ・マンソン(ウィル・ロスハー)は、17歳(ウディ・ハレルソン)でアイオワ州のアマチュアチャンピオンとなり、プロを目指して地元を飛び立つ。ところが、対戦相手のアーニー・マクラケン(ビル・マーレイ)に、酔った振りをして賭けを持ちかけカモ相手に金を巻き上げる詐欺に誘われ、それが相手にバレてしまう。アーニーは車で逃げてしまい、ロイはリンチされ、右手を失ってしまう。
17年後、家賃すら払えないほど落ちぶれ、酒浸りになったロイは、ボウリング場で、いい球を投げる巨漢のサウスポー、イシュマエル(ランディ・クエイド)を見かけ、自分がボウリングのマネージャーになって、賞金100万ドルの大会で優勝して金を山分けしようという話を持ちかける。敬虔なキリスト教徒アーミッシュであるイシュマエルは、彼の話を断るが、イシュマエルの村は金に困っており、50万ドルを必要としていたため、イシュマエルはロイの話に乗ることにする。
ロイは路銀を稼ぐために賭けボウリングに手を出す。ロイは偽札を見せ金にして、自宅にボウリングレーンを持つ金持ちスタンリー(ロブ・モラン)に勝負を挑む。イシュマエルはスタンリーの連れている美女クラウディア(バネッサ・エンジェル)のお色気作戦に惑わされず、スタンリーに勝利。スタンリーはクラウディアに八つ当たりし、彼女を殴打する。スタンリーはロイの金が偽札だと気づき、ロイたちに襲いかかるが、クラウディアが電気を消してロイとイシュマエルを助け、三人で逃走する。
三人は協力して金稼ぎをしながら旅を続ける。途中で仲違いしたりしながらも目的地のリノに到着。ロイはそこで、右手損失の元凶であるアーニーに再会する。アーニーの態度に腹を立てたイシュマエルは思わず殴りかかろうとして壁に手を打ち付け、利き腕の指を骨折してしまう。スタンリーに再会したクラウディアは、三人の金を持ち逃げしてしまい、ロイは途方に暮れるが、スタンリーはロイ自身に大会に出るよう提案する。ロイはゴム製の義手でトーナメントを勝ち上がり、ついに決勝でアーニーと対戦。ロイは、10フレームめで絶望的な7、10ピンが残るスプリットを出すが、奇跡的にこれをとり、アーニーはパンチアウトするしかなくなる。この状況からアーニーは見事にパンチアウトを決め、100万ドルはアーニーに渡り、ロイは一文無しになってしまう。試合途中でイシュマエルは村の仲間に連れ戻されてしまっており、ロイは一人で家に帰る。
ロイの家に訪問客がある。クラウディアだった。クラウディアは大会のとき、ロイとイシュマエルに危害が及ばないよう、スタンリーに従うふりをして彼と行動をともにし、隙を突いてスタンリーの金8万4千ドルを持ち逃げしていたのだ。クラウディアは三人で山分けしようと提案するが、ロイはそれを断る。コンドーム製造会社が、ゴム製の義手をしているロイのスポンサーとなり、ロイは50万ドルを手にしていたのだ。ロイとクラウディアは先回りしてイシュマエルの家に行き、50万ドルを村に差し出すとともに、イシュマエルのお陰で酒や賭け事、売春婦を辞めることができた、とイシュマエルの家族に報告していた。イシュマエルは村に歓迎され、ロイとクラウディアは口づけをして、イシュマエルの村を去って行くのだった。

痛快なコメディ作品なのだが、ウディ・ハレルソンとビル・マーレイの横分けはげ頭が気になりすぎた。コメディ色を強くするためそうする必要があったのか、起用した俳優がハゲだったというだけなのか。二人とも髪の薄い俳優ではあるが、ここまでではないと思うので、恐らく剃るなりしたのだろう。クライマックスの対決シーン。ビル・マーレイは、スタントなしでターキーを出したらしい。すごい。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月25日 (火)

(2959) 望み

【監督】堤幸彦
【出演】堤真一、石田ゆり子、岡田健史(けんし)、清原果耶、松田翔太、竜雷太、市毛良枝
【制作】2020年、日本

雫井脩介(しずくいしゅうすけ)の小説を原作としたサスペンス映画。殺人事件の関与を疑われている、行方不明になった息子の無事を信じる家族の心情を描いている。

建築事務所を営む石井一登(かずと)(堤真一)は、出版関係の仕事に就く妻、貴代美(石田ゆり子)、高校生の規士(ただし)(岡田健史)、中学3年生の雅(清原果耶)と四人家族。規士はサッカーに打ち込んでいたが、練習中に膝を痛めてサッカーを諦めて目標を見失っているようだった。一登は食事の場で規士に「何もしなかったら、何もできない大人になるだけだ」と説教する。規士は食事を辞めて席を立つ。
規士の部屋を掃除していた貴代美は、規士が切り出しナイフを手に入れているのを見つけ、一登に報告。一登は規士に何のために買ったのか尋ねるが、規士は答えない。規士は顔にあざがあり、一登はもめ事に巻き込まれているのか、あざと関係あるのか、と聞くが、規士は即座に「ない」と答え、買った目的は言わずに部屋に行く。一登は家に隣接する仕事場の工具入れに切り出しナイフをしまう。
年が明けた1月5日、規士は前日の夜、家を出たまま、帰ってこなくなる。その夜、高校生ぐらいの年代の死体が発見される。死亡したのは倉橋与志彦(工藤孝生)。翌日、警察が石井家にやってくる。警察は、死亡した倉橋は規士の遊び仲間だったと言い、規士のことを一登と貴代美に尋ねる。
一登は、優しい心根の規士が、人殺しに関与したとは思えず、むしろ事件に巻き込まれた被害者なのではないかと考える。しかし貴代美は規士が犠牲者になったなどとは考えたくもなく、加害者であっても生きていてほしいと考える。受験生の雅は、親族に犯罪者がいたら名門校に入れないので兄が加害者では困る、と心情を父に吐露する。規士の無事を願う貴代美と、規士が加害者であることを否定する一登との間に亀裂が生まれる。
一登は、仕事場の工具入れを確認する。そこにしまったはずの切り出しナイフはなくなっていた。同僚の梅本(長友郁真)は、規士が持って行ったと一登に話す。一登は、規士が加害者側だったのかとショックを受ける。倉橋殺害の主犯とされる塩山翔吾(小野寺晃良(あきら))が逮捕され、行方不明の人物の消息も時間の問題と思われた。貴代美は捕まった後の規士のために、差し入れの食事の準備を始める。一登は、規士の部屋の荷物を調べる。そこにはリハビリに関する医学書があり、そこには「何もしなければ、何もできない大人になる」というメモが挟まれていた。一登は規士の机の上の物入れを調べる。そこには、切り出しナイフが収められていた。規士が加害者ではないと確信した一登は、殺された倉橋の葬儀に出席する。遺族側は一登を追い返し、関係者の高山(竜雷太)は、規士に代わって拝ませてくれとすがる一登を殴りつけ、「うせろ、常識をわきまえろ」と吐き捨てる。
その頃、貴代美は警察の訪問を受け、とある場所に向かっていた。電話を受けた一登もそこに駆けつける。そこは遺体安置所で、中には規士の遺体があった。貴代美と一登は嗚咽を漏らす。
警察が事情を説明する。サッカー部で活躍する規士を不愉快に思った上級生の堀田(河野宏紀)は、わざと規士に怪我をさせる。義憤に駆られた倉橋は少年A、Bと共謀して堀田に危害を加えるが、堀田は不良グループに相談。倉橋とA、Bは逆に治療代を脅される。A、Bは倉橋に金を出させようとしたため、倉橋は規士に相談。規士は間に入って倉橋を庇おうとしたものの、Aに殴り殺されてしまった。殺されたのは1月5日だった。
規士の葬儀が営まれ、高山は葬儀場に現れ、泣きながら土下座して一登に詫びる。残された一登、貴代美、雅は悲しみと同時に、息子、兄に対する誇らしさも同時に胸に抱くのだった。貴代美は、情報提供を受けていたジャーナリストの内藤(松田翔太)に、自分は規士が加害者であることを望んでおり、規士が生きていると分かった瞬間はほっとしたかもしれないが、それから苦しみに押しつぶされたはずだった、私たち家族は規士に救われたのだ、と話す。4月になり、雅は念願の高校に入学。一登は、リハビリの本を貸してくれた医療従事者の宮崎(三浦貴大)に会いに行く。宮崎は、規士が父親の言葉を胸に、リハビリ師を目指そうとしていたことを一登に明かす。一登たちは三人家族として新たな一歩を踏み出すのだった。

容疑者Xの献身」(2008)を彷彿とさせる堤真一の涙の演技が光る作品だった。行方不明の規士は、加害者なのか被害者なのか。ハッピーエンドを期待する観客は、被害者だが生きていた、という結末を予想しながら観るわけだが、結果は残酷なもの。それでも、家族が前を向いて生きていくという話になっていた。霊安室の規士の口が半開きになった遺体の姿(もしかして演技ではなく人形?)はかなりリアルで、動かなくなった息子を前にした両親の悲しみを強調していた。ただ、ラストに出てくるリハビリの専門家を目指すくだりは、規士を好人物に仕立てる美談にしすぎの蛇足感があった。「何もしなかったら、何もできない大人になるだけだ」という、陳腐な説教の言葉が、友人を救うために動こうと決意した規士の背中を押して死に至らしめたことに気づいた父親の絶望的な後悔を描いた方がよかったかも。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月24日 (月)

(2958) 危険な女たち

【監督】野村芳太郎
【出演】石坂浩二、寺尾聰、池上季実子、大竹しのぶ、三田村邦彦、和由布子、北林谷栄、夏八木勲
【制作】1985年、日本

海辺で起きた銃殺事件の謎を追う推理物。アガサ・クリスティの「ホロー荘の殺人」が原作。

絹村家の老夫婦、健一郎(小沢栄太郎)とハナ(北林谷栄)の家に、甥の升森弘(三田村邦彦)、藤井冴子(池上季実子)、水野美智子(和由布子)、棚瀬秀雄(寺尾聰)と妻の紀子(大竹しのぶ)がやってくる。秀雄と紀子の息子、小学生の守は、呼吸器が弱く、絹村家で過ごしていた。守はモデルガンが好きで、その中には殺傷能力のある改造銃もあった。秀雄はハンサムで優秀な医者で、不器用な妻の紀子を愛していたが、同時に冴子や、ジャズ歌手の橘まゆみ(藤真利子)に浮気をしていた。
健一郎たちは、近所に住む推理小説作家の枇杷坂周平(石坂浩二)を誘い、早朝から釣りに出かける。おのおのが釣りを楽しむ中、何者かが銃を秀雄に向け、発砲。銃声に気づいた人々が集まると、心臓を打たれた秀雄が悲しげな表情を浮かべ、目の前で銃を持つ紀子を見上げており、秀雄はその後、冴子に目を移し、「冴子・・・」とつぶやいて命を落とす。紀子が持っていた銃で自害すると思ったのか、冴子は銃を取り上げて海に放り込む。紀子は気絶する。
警察の堂園(夏八木勲)は紀子が犯人と考えるが、海中から引き上げた銃はただのモデルガンだった。殺傷能力のある改造銃は、守の部屋から消えていた。行方不明の改造銃は、枇杷坂の車の助手席から見つかる。作品の締切が迫っていた枇杷坂は、この事件を題材に小説を書きながら、事件の真相を追う。枇杷坂は書き上げた小説をハナに読ませる。ハナは、推理小説では、最初に疑われた人はだいたい真犯人ではなく、真犯人は、小説の中で2番目か3番目に目立たない、影の薄い人物であることが多いと言い、この小説はよくできているが、犯人がすぐわかるのが欠陥だと枇杷坂に告げる。
冴子は、ハナから枇杷坂の小説の話を聞き、紀子に会いに行く。冴子は、枇杷坂は犯人を言い当てていたと紀子に話す。紀子は犯人が誰か分からないのになぜ、と聞くが、冴子は、「紀子さん、私見てたのよ」と紀子に告げる。紀子は、持っていた銃を岩場に隠し、別の銃を取り出していたのだった。真犯人は紀子だった。自分を騙し続けていた夫が許せず、殺害したのだった。冴子は、紀子の隠した銃を持ち出し、無関係な人の指紋を付けておいたから、紀子が犯人だという物証はないので、小説が発表されても慌てなくていいと言って立ち去る。
冴子が帰宅すると、紀子が家の中に上がり込んで待っていた。夫の秀雄が持っていた鍵で入ったのだ。紀子は冴子と秀雄の浮気に気づいていた。紀子は、最期に秀雄が冴子の名を呼んだのは、秀雄が冴子を最も愛していたからだ、と冴子を責めるが、冴子はそうではない、秀雄は自分を撃った紀子を責めることなく、紀子を頼むと冴子に訴えたのだ、秀雄が最も愛していたのは紀子だったのだ、と告げる。紀子は、冴子に差し出したコーヒーを自ら飲み、苦しんで息絶える。冴子を殺そうと出した毒入りコーヒーを自らあおって自殺したのだった。

犯人だと思われた人物の疑いが白紙に戻ったと思ったら本当に犯人だった、愚鈍と思われた人物が用意周到な犯罪を企てた、というところに意外性のある推理物。本格的な推理物であり、見応えがあった。何度もどんでん返しのある作品が受けがちだが、そうではないのもあり。石坂浩二演じる枇杷坂が、金田一耕助ばりの活躍をし、最期に真犯人の自殺を止められないのもそれらしかった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月23日 (日)

(2957) ONE PIECE ねじまき島の冒険

【監督】志水淳児
【出演】田中真弓(声)、中井和哉(声)、山口勝平(声)、岡村明美(声)、平田広明(声)、堀内賢雄(声)、矢島晶子(声)
【制作】2001年、日本

アニメ「ONE PIECE」の劇場版第2作。「ONE PIECE」(2000)の続作。次作は「ONE PIECE 珍獣島のチョッパー王国」(2002)。

ルフィたちの船、ゴールデンメリー号がトランプ海賊団に奪われる。小型ボートに乗り込んでいたルフィたちは、泥棒兄弟ボロード(堀内賢雄)とアキース(矢島晶子)の二人組に捕まる。ルフィたちは、ダイアモンドクロックというからくり時計のお宝を手に入れるため、ねじまき島に向かう。ねじまき島はトランプ海賊団に支配されており、島には海賊団の本拠地があった。トランプ海賊団の船長で、カチカチの実の能力により体を固く熱くできるベアキング(玄田哲章)は、ナミ(岡村明美)に一目惚れし、ナミを奪い取ってプロポーズ。ナミは強いことを証明してくれ、と挑発する。ルフィたちはナミを奪い返すためにトランプ海賊団の本拠地を目指す。ボロードとアキースも島民を海賊団の支配から解放するために戦い、最後はルフィがベアキングを倒す。トランプ海賊団の一人で、トロトロの実の能力により、体を液体にできるハニークイーン(林原めぐみ)も、ナミによって瓶のなかに封じ込められて、無力化する。アキースは、実の親と再会。ボロードはアキースを島に残して船を出すが、アキースはボロードと旅を続ける道を選ぶのだった。

60分の短い作品。ゾロ(中井和哉)、ウソップ(山口勝平)、サンジ(平田広明)にもそれぞれ見せ場があり、個性を生かした戦いを楽しめる内容。本作はAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月22日 (土)

(2956) ONE PIECE

【監督】志水淳児
【出演】田中真弓(声)、中井和哉(声)、岡村明美(声)、山口勝平(声)、今井由香(声)、青野武(声)、内海賢二(声)
【制作】2000年、日本

尾田栄一郎の同名漫画の劇場版第1作。原作にはないオリジナルストーリーになっている。次作は「ONE PIECE ねじまき島の冒険」(2001)。

伝説の海賊ウーナンに憧れる少年トビオ(今井由香)は、悪者の海賊エルドラゴ(内海賢二)に捕まり、働かされていた。エルドラゴの手下が、ルフィ(田中真弓)らの乗る船から宝を奪ったため、ルフィが、トビオの操縦する手下の船を破壊。そこにエルドラゴが現れ、ゴエゴエの実の能力を使って声の力でルフィたちのゴーイングメリー号を吹っ飛ばし、ナミ(岡村明美)、ウソップ(山口勝平)たちはちりぢりになってしまう。トビオと一緒になったルフィ、ゾロ(中井和哉)は、匂いに釣られて、海上でおでん屋をしている岩蔵(がんぞう)(青野武)の船に到着。岩蔵はトビオの祖父で、トビオはおでん屋を継がせようとしている岩蔵のもとから家出を繰り返していた。
ルフィたちはナミ、ウソップと合流し、トビオとともにウーナンの居場所を探す。彼らが険しい崖を登っていると、岩蔵と出くわす。岩蔵とウーナンは幼なじみで、海賊を目指すウーナンは、おでんにこだわる岩蔵と袂を分かち、海賊になっており、ウーナンが生きていると信じる岩蔵は、ウーナンにおでんを食べさせるため、ウーナンとの再会を果たそうとしていた。エルドラドはウーナンの宝を手に入れようとしてルフィたちの前に立ちはだかるが、ルフィの敵ではなく、ルフィたちはついに洞窟奥のウーナンの部屋にたどり着く。しかし、ウーナンは白骨化していた。ウーナンは、お宝を集める興奮が自分の目的であったことを悟り、それを果たした後は奪ったお宝を返し、岩蔵との友情の証である海賊旗だけを手に、この世を去っていたのだった。ルフィたちは、岩蔵と、自分の夢を探し続けることを誓ったトビオと別れ、新たな旅に出るのだった。

51分と短めの作品。ルフィの一団には、まだゾロ、ウソップ、ナミがいるだけで、サンジは、オープニング映像などには登場するが本編には出てこない。テレビアニメの延長のようなこじんまりした内容だった。本作はAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月21日 (金)

(2955) バッドボーイズ フォー・ライフ

【監督】アディル・エル・アルビ、ビラル・ファラー
【出演】ウィル・スミス、マーティン・ローレンス、パオラ・ヌニェス、バネッサ・ハジェンズ、ジェイコブ・スキピオ
【制作】2020年、アメリカ

マイアミ市警の二人の刑事の活躍を描いたアクション映画。「バッドボーイズ2バッド」の続編。

女性服役囚イサベル・アレタス(ケイト・デル・カスティーリョ)は、息子アルマンド(ジェイコブ・スキピオ)の手引きで脱獄。イサベルは、夫を死に追い込んだ人々への復讐をアルマンドに命じる。その中には、マイアミ市警のマイク・ラーリー(ウィル・スミス)が含まれていた。アルマンドに銃撃されたマイクは九死に一生を得るが、上司コンラッド・ハワード警部(ジョー・パントリアーノ)は、マイアミ・ハイテク捜査班AMMOに捜査を任せ、マイクが捜査に関わることを禁じる。マイクの相棒マーカス・バーネット(マーティン・ローレンス)も、マイクへの協力を拒否する。
しかし、ハワード警部がアルマンドに暗殺され、マーカスとマイクはAMMOのメンバーと協力して事件を追うことにする。マイクは、アルマンドの母親イサベルが、かつて自分が潜入捜査をした際に愛し合った相手であり、アルマンドが自分の息子であることに気づく。マイクは、イサベルを一度は愛したものの、黒魔術に心酔する彼女を選ばず、刑務所に送り込むことにしたのだった。マーカスとマイクはイサベルとアルマンドのいるメキシコシティに飛ぶ。そこにAMMOのメンバーも合流する。
マイクたちはイサベルのいるアジトに向かい、アルマンドたちと激しい銃撃戦となる。マイクを恨んでいるイサベルは、マイクを亡き者にしようとするが、マイクが自分の父親だと知ったアルマンドは、マイクを殺すことができない。イサベルがマイクに向けて放った銃はアルマンドに当たり、イサベルはAMMOのリタ(パオラ・ヌニェス)に撃たれ、命を落とす。マイクとマーカスは撃たれたアルマンドとともに炎上する建物から脱出。マイクは収監されたアルマンドに、贖罪の道を選ばせるのだった。

悪者が自分の息子だったという、ちょっとした物語はあるものの、脇の甘い突入によって逃げてしまう悪者を、派手なカーアクションや銃撃戦で追いかけるという、大味な内容だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月20日 (木)

(2954) 男はつらいよ 奮闘篇

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、榊原るみ、倍賞千恵子、田中邦衛、ミヤコ蝶々、森川信、三崎千恵子、前田吟、光本幸子
【制作】1971年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第7作。「男はつらいよ 純情篇」(1971)の続編。次作は「男はつらいよ 寅次郎恋歌」(1971)。

寅次郎(渥美清)の生みの親、お菊(ミヤコ蝶々)が、寅次郎から、嫁を貰うという報せを受け、とらやを訪ねてくる。寅次郎がいまだ独身で、女性を好きになっては振られることを繰り返していると知ったお菊は、会いに来た寅次郎に、お前は手足や頭の足りない嫁でもありがたいと思えと怒りをぶつける。寅次郎は、べっぴんの嫁を見せてやると意気込んで旅に出る。寅次郎は、旅先で頭が弱く、派出所で難儀している太田花子(榊原るみ)を見かけ、彼女が青森の故郷に帰ろうとしているのを知り、汽車賃を融通して、困ったらとらやを訪ねろと送り出す。花子は本当にとらやに現れ、花子が気がかりになった寅次郎もとらやに帰ってくる。寅次郎は花子の働き口を探すが、悪い男にひっかかりはしないかと心配で目が離せず、結局、花子はとらやで働くようになる。花子は、寅次郎の嫁になろうかなと話し、寅次郎は喜ぶ。ところが、地元の鰺ヶ沢から、花子を教えていた福士先生(田中邦衛)がやってきて、花子を引き取り、青森に帰っていく。寅次郎は青森まで花子に会いに行き、花子が幸せそうにしているのを見て満足する。寅次郎からとらやにはがきが届くが、それが何やら遺書めいていたため、さくら(倍賞千恵子)は心配になって鰺ヶ沢まで出向き、福士先生や花子に再会。さくらが帰りのバスに乗っていると、のんきに青森の温泉を楽しんでいる寅次郎に出くわす。さくらは、兄が自殺をするわけないと安堵するのだった。

いわゆる「知恵遅れ」の女性がマドンナという異色作。過去作で寅次郎が恋した女性の話が出てくるなど、。一作目(1969)のマドンナ役だった光本幸子や二作目(1969)に出演したミヤコ蝶々が出演するというのも見所だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月19日 (水)

(2953) トップガン マーヴェリック

【監督】ジョセフ・コシンスキー
【出演】トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、グレン・パウエル、モニカ・バルバロ、バル・キルマー
【制作】2022年、アメリカ

教官として重要任務に就いたパイロットの活躍を描いたアクション映画。「トップガン」(1986)の続編。

超音速機ダークスターのテストパイロットを務めるピート・ミッチェル(トム・クルーズ)、コードネーム「マーベリック」は、ならず者国家によるウラン濃縮プラントの破壊作戦の実行のため、パイロットの教官に着任。訓練生の中には、マーベリックの相棒で、事故により死亡したグース(アンソニー・エドワーズ)の息子、ルースターことブラッドリー・ブラッドショー(マイルズ・テラー)がいた。マーベリックは、グースの妻(メグ・ライアン)から、息子をパイロットにしないでほしいと言われていたため、ルースターの海軍応募の願書を抜き取っており、それによって4年を無駄にしたルースターはマーベリックを恨んでいた。マーベリックは元同僚で今や病気で死の淵にあるアイスマンことトム・カザンスキー海軍大将(バル・キルマー)に会いに行き、悩みを相談。アイスマンは過去を水に流して指導してやれと助言する。
作戦の破壊対象となる施設は急峻な山に囲まれており、作戦遂行のためには、谷間を低空でジグザグ飛行したあとに急上昇し、山を越えたら背面飛行で急降下し、施設をレーダーでロックして爆撃したあと、再度急上昇して、敵の迎撃ミサイルをかわすという難易度の高い飛行が必要。トップガンと呼ばれる優秀な訓練生たちも訓練を成功させることができない。マーベリックは訓練目標を達成できず、一度お払い箱にされるが、恋人のペニー(ジェニファー・コネリー)に励まされ、自ら戦闘機に乗り込んで作戦通りの飛行をしてみせる。マーベリックは編隊長となり、自ら仲間を率いて作戦を遂行する。マーベリックは、僚機のパイロットとしてルースターを指名する。
空母から飛び立ったマーベリックたちは、施設の爆撃に成功。敵の迎撃ミサイルがマーベリックたちに降りかかり、マーベリックはルースターの危機を救うため、自ら盾となり、被弾して敵地に墜落する。パラシュートで脱出したマーベリックに、敵の戦闘ヘリが襲いかかるが、そこにルースターの戦闘機が現れ、戦闘ヘリを撃破。しかし、ルースターも迎撃ミサイルにやられ、パラシュートで脱出する。マーベリックはルースターの無茶な行動を叱りつつも、敵地から逃れるため、敵の旧式の戦闘機に乗り込んで脱出。二人の乗った戦闘機に第5世代戦闘機2機が気づき、接近してくる。マーベリックはルースターに鼓舞され、1機を不意打ちで撃墜、もう1機も激しいドッグファイトの末、撃破する。しかし、海上でさらにもう1機の敵戦闘機が現れ、マーベリックは必死で逃げるが敵戦闘機にロックされる。敵がミサイルを発射しようとした刹那、味方の戦闘機が敵戦闘機を撃墜。乗っていたのは、ルースターと仲違いしていたプライドの高いハングマンことジェイク・セレシン(グレン・パウエル)だった。命拾いしたマーベリックとルースターは無事に空母に帰還。仲間の祝福を受ける。ルースターとマーベリックのわだかまりは溶け、マーベリックはペニーと小型飛行機でのフライトを楽しむのだった。

パイロットをとにかくかっこよくおしゃれに描きました、という作品。いがみ合っていた二人が厚い信頼関係で結ばれる、粗野な性格の脇役が救世主として現れる、という、ベタな展開なのだが、帰還シーンは感動的。映像にも迫力があり、パイロットの激しい呼吸音も危険な飛行をうまく演出していた。今のご時世、CGなども使われているのだろうが、それをほぼ感じさせないできばえだった。

【5段階評価】5

| | コメント (0)

2025年2月18日 (火)

(2952) 男はつらいよ 純情篇

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、若尾文子、倍賞千恵子、前田吟、森川信、三崎千恵子、宮本信子、森繁久彌
【制作】1971年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第6作。「男はつらいよ 望郷篇」(1970)の続編。次作は「男はつらいよ 奮闘篇」(1971)。

旅ガラスの車寅次郎(渥美清)は、旅先で、乳飲み子を抱えた女性、絹代(宮本信子)が宿賃もなく困っているのを見かけ、宿代を世話する。彼女は父親の反対を押して男と駆け落ちしたが、結局男から逃げてきたのだった。父親(森繁久彌)は絹代を責め、寅次郎も、帰る場所があると思うから甘えが出るんだ、と父親の意見に賛同する。
寅次郎はおじちゃん(森川信)の団子屋とらやに帰り、別れを告げようとするが、団子屋に下宿している夕子(若尾文子)に出くわして一目惚れ。団子屋に居着くようになる。寅次郎のアプローチに夕子は困り、それとなく寅次郎に困っていることを伝えようとするが、寅次郎にはさっぱり通じない。夕子は夫の関係がうまく行かなくなって別居していたが、夫(垂水悟郎)が夕子を迎えに来て、事態は収束。寅次郎は再び旅に出る。年が明け、とらやに絹代と夫(城戸卓)がやってきて、寅次郎への感謝をさくら(倍賞千恵子)たちに伝える。絹代は、五島に住む父親に元気にやっていると電話し、父親は涙ぐむ。その父親のもとには、寅次郎からの年賀状が届いていた。寅次郎は源公(佐藤蛾次郎)と、浜名湖で元気にたたき売りをしているのだった。

博(前田吟)の独立話も絡めながらの展開。感動で号泣するほどでもなく、肩肘張らない心地いい作品だ。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月17日 (月)

(2951) 惡の華

【監督】井口昇
【出演】伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨、飯豊まりえ、鶴見辰吾、坂井真紀、高橋和也
【制作】2019年、日本

中学生の性衝動を描いた青春映画。押見修造の漫画が原作。

ボードレールの詩集「悪の華」を愛読する中学生、春日高男(伊藤健太郎)は、才色兼備のクラスメート、佐伯奈々子(秋田汐梨)に憧れていた。ある日、教室に置き忘れた悪の華を取りに戻った高男は、誰もいない教室の後ろに、奈々子の体操着袋が落ちているのを発見。ついつい中身を取り出して匂いをかぐ。すると教室でゴトリと音がし、高男は体操着を抱えて教室を飛び出し、家まで持ち帰ってしまう。その様子を密かに見ていた高男のクラスメート、仲村佐和(玉城ティナ)は、高男に契約を結ぼうと持ちかける。
運よく奈々子と話す機会を得た高男は、奈々子を古本屋に誘い、OKをもらう。高男は喜ぶが、それを知った佐和は、高男に、服の下に奈々子の体操着を着てデートするよう命じる。逆らえない高男は、それがバレないようにデートし、奈々子に付き合ってほしいと申し出る。奈々子はOKし、高男は有頂天になるが、同時に奈々子に対して隠し事がある後ろめたさに苛まれる。高男は佐和に、体操着を盗んだことを奈々子に伝えてほしいとお願いする。佐和は高男を夜の教室に連れて行き、黒板に、自分は佐伯さんの体操着を盗んだ変態だと書け、と命じる。拒否する高男に業を煮やした佐和は契約を解消して帰ろうとするが、佐和をつなぎ止めたい衝動に駆られた高男は、黒板に佐和の言ったとおりのことを書き、二人で教室内をチョークや墨汁でめちゃくちゃにする。床には大きく、悪の華の絵が描かれていた。
翌日、教室内は変質者の仕業かと騒然となるが、奈々子は、悪の華の絵を見て、それが高男のしたことだと気づく。高男の両親(鶴見辰吾、坂井真紀)も高男が犯人だと気づいており、高男は家を飛び出して合流した佐和と家出する。大雨の夜、二人が雨宿りしているところに、ずぶ濡れで自転車に乗った奈々子が現れ、どうして私と付き合っているのに仲村さんの方に行くの、と高男を責める。佐和は一人、自転車で去ろうとするが、高男は佐和を引き留める。それを見た奈々子は、高男にもらった悪の華の文庫本を地面に叩き付け、自転車で去る。
佐和への心酔を自覚した高男は、佐和を退屈させないようにするため、クラスの奈々子以外の女子全員のパンティを盗んで河川敷に立てた段ボール小屋の中に飾る。二人はそこで、夏休みの祭りの日の計画を立てる。二人が会っているのを知った奈々子は、小屋で高男を待ち伏せし、自ら服を脱いで高男と性行為に及ぼうとするが、高男は拒絶。奈々子は小屋に放火する。奈々子は、やってきた佐和に、高男と性行為をしたと言って勝ち誇ろうとするが、佐和は奈々子をさげすむ。
高男と佐和は、夏祭りの盆踊りの舞台で、焼身自殺を図る。奈々子はそれをテレビ中継を通して見ていた。灯油を浴びた二人はライターを手にするが、佐和は高男を舞台から突き落とし、佐和の父親(高橋和也)が佐和を取り押さえ、心中は未遂に終わる。
それを境に佐和と会わなくなった高男は高校生になり、常磐文(ときわあや)(飯豊まりえ)と、小説がきっかけで付き合うようになる。文は高男のことを知りたいと言い、高男は中学時代の経験を赤裸々に綴り、そのノートを文に読ませる。高男と文は、千葉で母と暮らしているという佐和に会いに行く。三人は海辺で互いを突き飛ばし、ずぶ濡れになりながらはしゃぐ。佐和は高男を「普通人間」と馬鹿にしたように呼ぶが、それは高男が普通の幸せを求めて生きることへの許しでもあった。帰りの電車を待つホームで、高男の頭上の空に浮かんだ巨大な惡の華が霧散する。電車の中で高男と文は微笑み合い、帰途に就く。海辺には佐和がたたずんでいた。立ち去った彼女の後方にはセーラー服姿の女子学生がおり、空の上に大きな惡の華が現れるのだった。

多少の省略(文の元彼の話や、奈々子の親友と高男とのやりとり)はあるものの、原作をかなり忠実に再現した内容。公開当時22歳の伊藤健太郎が中学生を演じるという強引さには目をつぶろう。佐和のぶっとんだ感情の演技は、ところどころ芝居臭さが目立った。ラストシーンは、倒錯した衝動に駆られる新たな人物が現れることを暗喩したのだろうか。本作はAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月16日 (日)

(2950) ハンターキラー 潜航せよ

【監督】ドノバン・マーシュ
【出演】ジェラルド・バトラー、カーター・マッキンタイア、トビー・スティーブンス、ミカエル・ニクビスト、ゲイリー・オールドマン
【制作】2018年、アメリカ

ロシアのクーデターを制止する作戦を遂行するアメリカ潜水艦の活躍を描いた戦闘映画。

ロシアのバレンツ海で、ロシア連邦海軍のアクラ級原潜コーニクと、それを追っていたアメリカ海軍ロサンゼルス級原潜タンパ・ベイが相次いで沈没。米軍は原潜アーカンソーを出陣させる。艦長のジョー・グラス(ジェラルド・バトラー)は調査を行い、米原潜は外部から、ロシア原潜は内側から爆発を起こしていることを突き止める。米原潜の乗員は全滅しており、グラスは乗員の反対を受けながらも、ロシア原潜に取り残されていた艦長のアンドロポフ(ミカエル・ニクビスト)と数名の乗務員を救助する。
ロシアでは、ドゥーロフ国防省(ミハイル・ゴア)がクーデターを起こし、ロシア大統領ニコライ・ザカリン(アレクサンドル・ディアチェンコ)を拘束。特殊部隊からその情報を得た米軍は、ロシア大統領を救出してクーデターを防ぐよう、アーカンソーとロシアに潜入している特殊部隊に命じる。グラスは、ロシア海域に詳しいアンドロポフにルートを尋ね、アンドロポフはそれに答える。特殊部隊は、犠牲を出しながらも大統領の救出に成功。ザカリン大統領は銃撃を受けながらも、生きてアーカンソーにたどり着く。しかし、ロシアの駆逐艦ヤブチェンコがアーカンソーを攻撃。ヤブチェンコの乗員はアンドロポフの教えを受けた者たちだと聞いたグラスは、アンドロポフに説得を依頼。アンドロポフは通信で攻撃をするなとヤブチェンコの乗員に指示。乗員はそれに従う。ヤブチェンコが攻撃をしないと知ったドゥーロフは自らアーカンソーにミサイルを撃ち込む。ドネガン闘争参謀本部議長(ゲイリー・オールドマン)はアーカンソーに攻撃を命じるが、グラスは攻撃せずに耐える。すると、ロシアの放ったミサイルがアーカンソーに着弾する直前、ヤブチェンコが銃撃でミサイルを破壊。さらにドゥーロフのいる作戦本部に向けてミサイルを発射。ドゥーロフは本部基地ごと吹き飛ばされ、クーデターは阻止される。グラスとアンドロポフは互いの指揮官としての能力をたたえ合い、握手をして別れるのだった。

クーデターにより拘束されたロシアの大統領を米軍が救出するという、驚きの展開。ロシア側を単なる悪者ではなく、誇りを持った軍人として描いており、清々しい戦闘映画になっていた。ジェラルド・バトラーやミカエル・ニクビスト、ゲイリー・オールドマンなど、有名な俳優が出演しており、邦題はしょぼいが、しっかりした内容の作品だった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月15日 (土)

(2949) エマニエル夫人

【監督】ジュスト・ジャカン
【出演】シルビア・クリステル、ダニエル・サーキー、アラン・キュニー、マリカ・グリーン、クリスティーヌ・ボワッソン
【制作】1974年、フランス

外交官の妻が性に目覚めていく姿を描いたソフトポルノ作品。

美しい女性、エマニエル(シルビア・クリステル)は、タイのフランス大使館に勤めるジャン(ダニエル・サーキー)を追ってタイに入る。ジャンは性に奔放な性格で、美しい妻に嫉妬することをよしとせず、エマニエルにも自由に振る舞わせる。エマニエルは、若い女性マリー=アンジュに誘われるように自慰行為にふけったり、アリアンヌ夫人(ジャンヌ・コレティン)やビー(マリカ・グリーン)とレズ行為に及んだりと、新たな性に目覚めていく。エマニエルを自由に振る舞わせるはずだったジャンは、エマニエルを独占できないことを悔しがるが、それを乗り越えるように、マリオ(アラン・キュニー)という初老の男性とエマニエルを二人だけで過ごさせる。マリオは、通りすがりの男にエマニエルの脚を触らせたり、阿片窟の男にエマニエルを輪姦させたり、キックボクシングの勝者にエマニエルを抱かせたりする。エマニエルは自由な性を解放させるのだった。

全裸で泳いだり、ノーブラでスカッシュをしたり、といったヌード描写が連続する作品。子どもにはお勧めできない。伝説の作品なので、人生に一度ぐらいは観ておいてもいいのだろうが、面白いかというと、ほぼポルノ映画、一応文学的ではあった。本作はザ・シネマの無料放送で鑑賞。地上波ではなかなか放送しないだろうから、貴重な機会だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月14日 (金)

(2948) レジェンド・オブ・ゾロ

【監督】マーティン・キャンベル
【出演】アントニオ・バンデラス、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ルーファス・シーウェル、アドリアン・アロンソ
【制作】2005年、アメリカ

伝説の英雄、ゾロの活躍を描いたアクション映画。「マスク・オブ・ゾロ」(1998)の続編。

合衆国入りを控えたカリフォルニアで、悪党のマクギブンス(ニック・チンランド)らが選挙を妨害しようとするが、民衆の英雄、ゾロ(アントニオ・バンデラス)が颯爽と現れ、悪者を退治する。ゾロの正体はアレハンドロ・デラ・ベガ。帰宅したアレハンドロを妻のエレナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)が出迎えるが、エレナは、民衆の期待に応えようとするあまり、家族を顧みないアレハンドロに不満を抱いていた。
ある日、エレナは複数人の謎の集団に襲われ、行方不明となる。アレハンドロのもとには、エレナからの離婚手続き申し立て書が届き、アレハンドロは腕白息子のホアキン(アドリアン・アロンソ)の面倒を見ることになる。
ワイナリーを買収した富豪のアルマン伯爵(ルーファス・シーウェル)がパーティを開き、招かれたアレハンドロは、アルマン伯爵のパートナーの座にエレナがいるのを見て驚く。アレハンドロは酔ってエレナとアルマン伯爵にからむ。アレハンドロは、決闘で決着を付けようとアルマン伯爵に挑まれ、それに応じるが、エレナの妨害に遭ってアレハンドロは敗北する。
しかし、エレナはアルマン伯爵に惹かれたのではなかった。エレナを襲ったのは悪者ではなく、政府公認のピンカートン探偵社の捜査員、パイク(シュラー・ヘンズリー)とハリガン(マイケル・エマーソン)であり、エレナはアルマン伯爵の悪事を暴くため、スパイとして彼に接近し、伝書鳩でパイクとハリガンに情報を送っていた。パイクとハリガンからそのことを聞かされたアレハンドロは、アルマンの野望を打ち砕くため、エレナとともに戦うことを決意する。
アルマンは、石けんの成分から強力な爆薬ニトログリセリンを作り出すことに成功していた。アメリカ合衆国の崩壊を狙うアルマンは、蒸気機関車に大量のニトログリセリンを積み込み、カリフォルニアの合衆国入りの調印式に突っ込もうとするが、そこにゾロが現れ、列車に乗っていたエレナとホアキンとともにアルマン一味と戦い、アルマンの野望を阻止。アルマンは暴走した蒸気機関車ごと車両止めに突っ込み、列車は大爆発を起こす。調印式は無事に終わり、アレハンドロとエレナは再婚。父親がゾロだったことを知ったホアキンも二人の再婚の式に立ち会う。エレナはアレハンドロがゾロとして活躍することを認め、ホアキンと二人でゾロを見送るのだった。

勧善懲悪のアクション映画。スティーブン・スピルバーグが製作総指揮として参加しており、美女と子どもとともに行動するところは「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」(1984)に、列車での立ち回りは「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」(1989)も似た雰囲気があったが、本作のヒーロー像がステレオタイプなのと、冒険のスケールの差から、軍配は「インディ・ジョーンズ」シリーズに上がるだろう。前作から7年が経っていても、キャサリン・ゼタ=ジョーンズの美貌は健在。美女の点では本作に軍配だった。

【5段階評価】3

 

| | コメント (0)

2025年2月13日 (木)

(2947) さまよえ記憶

【監督】野口雄大
【出演】永(はる)夏子、モロ師岡、竹原芳子、野口聡太
【制作】2023年、日本

息子が行方不明になった母親が、自分の記憶を犠牲に息子を取り戻そうとするファンタジー作品。24分の短編映画。

佐藤詩織(永夏子)は、6歳の息子の隆(野口聡太)と川遊びに行き、息子が行方不明になってしまう。チラシを手に息子を探し続ける詩織の姿に、詩織の父親、英樹(モロ師岡)は心を痛めていた。二人はとある駄菓子屋を訪ねる。詩織はいつものように息子を探しているというチラシを駄菓子屋の老婆(竹原芳子)に渡し、息子を見たことあるかと尋ねると、老婆は、「信じるか。記憶を預けたら居場所が分かると言われたら」と返す。自分は情報質屋で、大事な記憶を渡してくれれば欲しい情報を渡す、と告げる。詩織は戸惑うが、英樹は冗談交じりに、俺の指輪を探してくれるか、と言って詩織と店を去る。
詩織は隆を探しに出ては、川辺で見つけた石を窓際の棚に積み上げていた。英樹は妻と死別しており、結婚指輪をなくしたことを、あの世で妻が怒っているかも、と詩織に冗談を言った後、一緒に住まないかと詩織に持ちかける。それは3年に及ぶ息子捜しを諦めてほしいとの願いでもあった。詩織は隆が見つかったらそうすると答える。
情報質屋のことが気になった詩織は、父親との記憶を駄菓子屋の老婆に渡す。すると、詩織のスマホの地図に息子の居場所が表示される。店から駆け出そうとする詩織に、老婆は「英」と書かれた平たい石を詩織に手渡し、これを持ってくれば手に入れた情報と引き換えに記憶を返すと説明する。隆の居場所は川の方を示していた。心配になった英樹が詩織に話しかけるが、詩織は英樹を不審者扱いして突き飛ばす。隆の居場所は、川の中だった。詩織は川の中に跪いて号泣する。
詩織の家にあった隆の思い出の品々が段ボール箱に収められ、棚の上には「隆」と書かれた平たい石が乗っていた。英樹はそれを手にすると、話しかけてきた詩織に、指輪が見つかってよかった、と言って指輪を見せる。畑に落ちていたのだ。英樹と詩織は川辺に行き、詩織は、これまで集めていた石を川に投げ入れ、「私、何の記憶を預けたんだろう」と言いながら、「隆」と書かれた平たい石を手にすると、その石も川に投げ込む。石は川底に沈み、詩織は笑顔で英樹に、お昼にしようと話しかける。ふと詩織は川に目をやるが、そのまま河川敷で父親と昼食を取り始めるのだった。

真相ははっきりと描かれないが、恐らく次のようなことだろう。詩織は情報質屋に行き、父、英樹の記憶と引き換えに、息子の情報を手に入れるが、それは息子が川で死んだというつらい事実だった。詩織はそれを受け入れることができず、「英」の石を情報質屋に渡して英樹の記憶を取り戻すと、今度は息子の記憶と引き換えに、父親のなくした指輪の情報を得る。英樹は、詩織が「隆」の石を使って息子をなくしたという辛い記憶を取り戻さないよう、詩織と川辺に行き、ほかの石とともに「隆」の石を川に投げ込ませたのだろう。あるいはもしかすると、詩織自身が、「隆」の石を捨てに行こうとあらかじめ父親に言っていたのかもしれない。
ちなみに、老婆が示すQRコードは実際に読み取ることができ、「情報質屋」という文字情報になっていた。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月12日 (水)

(2946) FALL/フォール

【監督】スコット・マン
【出演】グレイス・キャロライン・カリー、バージニア・ガードナー、メイソン・グッディング、ジェフリー・ディーン・モーガン
【制作】2022年、アメリカ、イギリス

古い鉄塔に登った二人の女性のサバイバルを描いたパニック映画。

ベッキー(グレイス・キャロライン・カリー)は、夫のダン(メイソン・グッディング)とロッククライミング中、目の前で夫が転落死してしまう。喪失感に包まれたベッキーは、父親のジェームズ(ジェフリー・ディーン・モーガン)の励ましを拒絶していた。ある日、友人のハンター(バージニア・ガードナー)が、B67テレビ塔という、郊外にある高さ600mの古びた鉄塔に登り、そこからダンの遺灰を撒いて新たな一歩を踏み出そうと提案。尻込みするベッキーだったが、ハンターに励まされ、行くことにする。
モーテルで一晩過ごした二人は、車で現地に向かう。鉄塔は柵で囲われており、二人は車を止めて徒歩で鉄塔に向かう。途中、二人はハゲワシが瀕死の動物にたかっているのを見る。鉄塔に到着し、ハンターが先導する形で、二人は鉄製のはしごを登る。ベッキーは恐怖に耐えながらハンターを追い、何とか登り切るが、ところどころで古びたはしごの横棒が外れたり、ボルトが抜け落ちたりする。人が二人ほど座るのがやっとのような広さの足場で、記念撮影をし、遺灰を撒き終え、二人は、いよいよ降りることにする。ベッキーが最初にはしごに足をかけ、降り始めるが、老朽化したはしごが鉄塔の本体から外れ、ベッキーは落下。ハンターと繋がれた命綱でぶら下がった状態になる。はしごは鉄塔上部の大部分が落下してしまい、ハンターは命綱をたぐり寄せてベッキーは足場に戻る。撮影用ドローンや水を入れたバッグは、鉄塔の途中にあったアンテナの付け根に乗っかっていた。
スマホの電波は圏外で助けを呼ぶことができず、二人は途方に暮れる。地上近くは圏内だったため、ハンターは自分の靴にスマホと、緩衝材として靴下やブラジャーを入れてスマホを下に落とすが、発信はできなかったようだった。下に犬を散歩させる男が通りかかったため、ベッキーは履いていた靴を投げ落として気づいてもらおうとするが、男は立ち去ってしまう。遠くに男二人組のキャンパーが見えたため、鉄塔に供えられた信号弾を撃つと、キャンパーが気づくが、キャンパーは二人を救助せず、二人の乗っていた車を盗んで走り去ってしまう。二人は足場で夜を明かす。
翌日、ハンターはバッグを取り戻すため、ロープを頼りに下に降り、バッグを取り返すことに成功。ロープを登って足場に戻ろうとするが、もう少しで足場にたどり着くというところで、足が滑って落下してしまう。ハンターは、垂れ下がるロープの先端に引っかけていたバッグに再びしがみついており、ベッキーはロープを必死で引っ張りあげてハンターを引き上げる。取り戻したドローンに救援メッセージを書いた紙を付けてモーテルまで飛ばそうとするが、充電切れで届かないため、ドローンを呼び戻す。鉄塔の上で明滅するランプからドローンの充電ができることに気づいたベッキーは、足場からさらに上に伸びる棒状の部分を登り、ドローンを充電。ハゲワシに襲われながらも充電に成功し、ドローンをダイナーまで飛ばすが、ドローンは無残にも通過した車に激突して道路上に落下してしまう。
ベッキーは、自分のスマホを下に落として通信を試みることにし、ハンターにもう一足の靴を渡してくれと頼むが、ハンターは、それはできないと答える。彼女の顔は血まみれだった。ハンターの姿は幻影であり、ハンターはバッグを取りに下に降りて落下した際、バッグにしがみつくことはできず、アンテナの上に転落していたのだった。彼女のかたわらにはハゲワシがいた。華奢なベッキーがハンターを引っ張り上げることなどできておらず、彼女が引き上げたのはバッグだけだったのだ。
ベッキーは、死んだふりをして、やってきたハゲワシを捕まえて食べて空腹をしのぎ、父親へのメッセージをスマホに打ち込むと、ハンターの死体のあるところまで降り、ハンターの靴にスマホを入れ、それをハゲワシが食い破ったハンターの腹の中に押し込むと、ハンターの遺体を落下させる。
メッセージを受け取ったベッキーの父ジェームズは、事故現場に車を走らせていた。すでに多くの緊急車両が塔の近くに来ている。遺体袋に遺体が納められている様子を見てジェームズはパニックになりかけるが、ベッキーは生きていた。遺体はハンターのものだった。ベッキーは父親に抱きつき、再会を喜び合うのだった。

高い塔に登って危険になるという単純な設定で、登場人物も少ないが「I love you」と言わず「143」と伝えるダン、電球ソケットでスマホを充電する裏技、ハゲワシ、ハンターの143というタトゥー、鉄塔のランプ、といった、物語に登場する細々とした伏線が、巧みに回収されていく。特撮も不自然さがなく、あの、高いところで感じる足のゾワゾワ感を存分に味わえた。ハンターとダンが浮気していたことにベッキーが気づくという展開もあるが、狭い足場で取っ組み合いをしたり殺し合いをしたり、といった事態には発展しなかった。それはそれでよかったが、だったら浮気のくだりもいらなかったのかもしれない。
こうしたパニック映画では無名俳優が起用されるのが定番だが、本作は父親役が「タイム・トゥ・ラン」(2015)のジェフリー・ディーン・モーガンだったり、俳優陣は比較的有名。本作はムービープラスの無料放映で鑑賞したが、当たりの部類だろう。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月11日 (火)

(2945) エアフォース

【監督】ズルカルナイン・アズハル、フランク・シー
【出演】アイマン・ハキーム・リザ、ダト・アディ・プトラ、ナス-T、サーラー・アリ、パブロ・アミルル
【制作】2022年、マレーシア

紛争地帯に取り残された一般人や兵士たちの救出劇を描いた作品。

フィリピン東部の島国、ナンブリ国では、北部と南部の内戦が5年続いていたが、4ヶ月前に停戦を宣言。マレーシア特殊航空隊は、世界人道組織による現地支援を護衛。しかし、停戦は終了し、南部の過激な分離主義勢力が国の半分以上を支配。マレーシア軍は、人道組織やジャーナリストたち外国人の撤退を支援する。撤退の直前、隊長のレジェン(ダト・アディ・プトラ)らは、南部過激派の負傷兵を救助して基地に連れ込んだため、北部軍の恨みを買ってしまう。結局、負傷兵は死亡し、レジェンは、残った兵士や外国人とともに、輸送機アンガサ11で撤退する。北部軍はアンガサ11を地対空ミサイルで攻撃。レジェンは、同乗していたロックこと防御担当班長アディブ(ナス-T)、衛生兵パコ(ヨハン・アサリ)、通信兵フジャン(ジャック・タン)、狙撃兵ガバン(ルクマン・ハフィズ)、斥候兵トゥアイ(パブロ・アミルル)、女性ジャーナリストのナトラ・ハムザ(サーラー・アリ)、新聞社カメラマンのマトノ(アナス・リズアン)、世界人道組織の医師スーザン(イマン・コリンヌ)とともにパラシュートで脱出。機長と副機長は死亡する。
レジェンは、武器とブラックボックスを回収し、南部軍の基地に戻って救援を受ける作戦を採る。しかし、スーザンは民間兵に襲撃された際に死亡。娘を失った過去を持つパコは、移動中、縄で繋がれた少女を救おうとして、罠と知りながら駆け寄り、地雷で命を落とす。レジェンは地下道を使い、敵に襲撃されて脚を負傷しながらも基地に戻ろうとするが、基地は敵に占領されてしまっていた。作戦は失敗し、次々と仲間を失ったレジェンは自信を失っていく。アディブはレジェンを励ましながら逃走を続ける。
航空機パイロットのマンティスこと小隊長ザフ(アイマン・ハキーム・リザ)は、妹のハナ(アジラ・シャフィナズ)と無断で交際していた幼なじみのアディブと仲違いしてしまっていたが、兵装担当のスプーンと戦闘機に乗り込み、彼らの救出に向かう。レジェンらは、ナンブリの大量の民間兵に追われ、フジャンが敵の狙撃兵に胸を撃たれて死ぬ。レジェンは一団の指揮をアディブに託し、その場に残る決断をする。レジェンは発信器を掲げ、ザフの戦闘機による空爆を誘導し、命を落とす。ザフも敵の戦闘機に狙われるが、決死の飛行を続けて敵機を撃墜する。アディブたちは、南部軍と北部軍の双方から襲撃されながらも、最後まで奮闘し、ついにマレーシア軍のヘリで救出される。基地では、命を落とした8名の追悼が行われるのだった。

マレーシア空軍の全面協力という触れ込みの作品。映像の迫力はかなりのもの。マレーシア作品は本ブログで初めて取り上げたが、敵の攻撃が、物語の進行に合わせて激しくなるようなご都合主義的な部分はあったものの、ハリウッド映画に見劣りしない作品だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月10日 (月)

(2944) ブルーロック -EPISODE 凪-

【監督】石川俊介
【出演】島﨑信長(声)、内田雄馬(声)、興津和幸(声)、浦和希(声)、神谷浩史(声)
【制作】2024年、日本

金城(かねしろ)宗幸原作、三宮宏太作画の同名漫画の劇場アニメ作品。世界一のストライカーを養成する施設で競い合う高校生たちを描いている。

ゲーム好きで何事もめんどくさいと言って過ごしている高校2年生の凪誠士郎(島﨑信長)は、金持ちの息子、御影玲王(れお)(内田雄馬)にサッカーの才能を見出され、サッカーをするようになる。二人は、サッカーワールドカップの日本優勝を請け負った絵心(えご)甚八(神谷浩史)に選ばれ、ストライカー育成施設、ブルーロックに入る。凪と玲王は一次選考でチームVに入り、リーグ戦を戦う。4戦4勝で迎えた最終戦で、チームZと戦うことになったチームVは、まさかの敗戦。しかし、終始めんどくさい気持ちでプレーしていた凪は、この戦いで初めて、がんばろうと思うようになる。
二次選考で三人組を作ることになり、凪は玲王と組まず、自分を燃え上がらせたチームZの潔世一(いさぎよいち)(浦和希)と組む。凪は二次予選を勝ち上がる。育成方針が変わり、彼らは日本代表チームと戦うことになる。凪は玲王の激励を受け、試合に臨むのだった。

漫画「ブルーロック」のダイジェスト版といった内容。スポーツとしてのサッカーと、アイドルグループオーディション番組的なノリを組み合わせたような内容だった。とは言え、何もスポーツをしていない人間が、いきなり超高校生級の活躍をするとか、漫画みたいな展開なので(いや、漫画なんですけど)、娯楽作品として割り切って楽しむしかなかった。キャラクターの感情を、目の描き方で表すという独特のセンスが見られた。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月 9日 (日)

(2943) ドラゴンボール超 スーパーヒーロー

【監督】児玉徹郎
【出演】野沢雅子(声)、古川登志夫(声)、宮野真守(声)、神谷浩史(ひろし)(声)、入野自由(声)、皆口裕子(声)
【制作】2022年、日本

鳥山明の漫画「ドラゴンボール」が原作のアニメ映画。「ドラゴンボール超 ブロリー」(2018)の続編。

レッドリボン軍のマゼンタ(ボルケーノ太田)は、世界征服のため、人造人間に詳しい天才科学者、Dr.ヘド(入野自由)を軍に引き入れる。悪者ではなくスーパーヒーローを生み出す夢を持つヘドだったが、レッドリボン軍の豊富な研究資金に惹かれ、人造人間セルマックスの開発に着手。並行してガンマ1号、2号を開発する。ガンマ2号(宮野真守)は、ピッコロ(古川登志夫)に戦いを挑み、ピッコロを木っ端みじんにしたと勘違いして基地に戻る。ガンマ2号を追ったピッコロは、レッドリボン軍兵士になりすまして基地に潜入。ヘドがセルマックスを開発しようとしているのを知り、ブルマ(久川綾)に連絡して、孫悟空(野沢雅子)とベジータ(堀川りょう)を呼び出すよう頼む。ブルマは二人を呼び出そうとするが連絡が付かず、やむなくピッコロは神龍(大友龍三郎)を呼び出し、潜在能力を引き出してもらう。
レッドリボン軍は、世界征服の邪魔になる孫悟飯(野沢雅子)を倒すため、悟飯の娘、パン(皆口裕子)を誘拐。レッドリボン軍の基地に連れてこられた悟飯はガンマ1号と、ピッコロはガンマ2号と戦い、互いに能力を覚醒させて相手を圧倒する。焦ったマゼンタは、まだ制御の効かないセルマックス(若本規夫)を呼び起こす。悟飯とピッコロは、正義に目覚めたガンマ1号2号や、集まった仲間達とともに死闘を繰り広げ、ついに悟飯がピッコロと協力してセルマックスを倒す。2号は犠牲となり、ヘドと1号はブルマのカプセルコーポレーションで働くことになる。
一方、破壊神ビルス(山寺宏一)のもとで修行をしている孫悟空とベジータは試合を行い、初めてベジータが孫悟空を倒したのだった。

強大な敵を倒すため、かつての敵と協力するという、ドラゴンボールシリーズの定番の内容。公開当時、御年86歳の野沢雅子が現役で声優を務め、張りのある声を披露している。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月 8日 (土)

(2942) 天城越え

【監督】三村晴彦
【出演】平幹二朗、田中裕子、渡瀬恒彦、伊藤洋一、金子研三、吉行和子、小倉一郎、山谷初男(やまやはつお)
【制作】1983年、日本

天城山隧道近くで起きた殺人事件の真相に迫るサスペンス映画。松本小説の小説が原作。

年老いた男、田島松之丞(渡瀬恒彦)が、印刷所に書類の印刷を依頼に来る。印刷所の小野寺建造(平幹二朗)は、書類が「天城山の土工殺し事件」の捜査記録であることを知って驚く。彼は14歳(伊藤洋一)のとき、叔父(小倉一郎)と性行為に及ぶ母親(吉行和子)に耐えられず、家を出て天城山を越えたことがあった。なけなしの金で下田を出て天城山を越えようとしたが、途中で断念。そこで23歳の裸足の女、大塚ハナ(田中裕子)を見かけ、行動をともにしたのだ。
天城山の土工殺し事件とは、天城山隧道近くで土工(金子研三)が惨殺された事件。事件を追う若い田島は、現場近くの氷倉(こおりぐら)に女性のものとおぼしき足跡があるのを発見。周囲の聞き込みから、裸足の若い女性がいたとの情報を得る。建造は田島の訪問を受け、ハナと一緒に歩いたこと、ハナが土工と話していたことを証言する。やがてハナは逮捕される。ハナははじめは容疑を否認したが、拷問とも言える厳しい取り調べにより犯行を自供する。ハナがパトカーで連行される様子を、建造は遠くから見守る。ハナは建造に気づくと、凍り付いた表情を笑顔に変え、パトカーに乗り込む。建造には、ハナがさようならと言ったように見える。
書類の製本が終わり、田島が建造のもとを訪ねる。田島は、ハナを逮捕したものの証拠不十分でハナは無罪となったこと、足跡を女性と決めつけたが、14歳ぐらいの男のものである可能性もあったことを建造に告げる。田島は建造への疑いは口にせず、去り際、もう時効だが、動機だけが分からないと告げる。なんとか平静を保っていた建造だったが、強烈な吐き気に襲われる。田島はその姿を見て、立ち去る。
天城山で途方に暮れていた14歳の建造は、通りがかったハナに付いていき、ハナに話しかけられる。足の指の間を痛めて歩いていた建造に、ハナは優しく応急措置を施し、二人で裸足で歩く。二人で野宿しようと言って歩いていると、道の先に土工の男がいた。するとハナは、男に用事があるから先に行って、と建造に告げる。建造は仕方なく天城隧道を通って先に行くが、ハナが気になり引き返す。ハナは土工に売春をしていた。建造は土工がハナを後ろから突き上げているのを遠くから眺める。男が果てるとハナは立ち去る。男が物足りなそうにその場を後にするのを見て、建造は持っていた短刀を振りかざして土工に襲いかかり、顔面を切りつけると、何度も男を突き、男は川に逃げ、流されていったのだった。初めて女性を意識した建造が、恋する相手を獣のような行為で汚した男に強烈な殺意を覚えたのだ。そこには、母を犯した叔父への恨みも重なっていた。逮捕されたハナは、恐らく建造が真犯人だと知りながら、自分に好意を持ってくれた建造をかばい、犯行を自供しようとしかねない建造の行動を諫めたのだ。
建造は外科手術を受けることになる。天城隧道はいまや、若者がけたたましい排気音を立てるバイクで賑わう場所に変わってしまっているのだった。

田中裕子の妖艶な演技と、彼女に恋心を抱き、それゆえに凶行に走った少年の衝動が印象に残る作品。石川さゆりの歌に「天城越え」という名曲があるが、個人的には「天城越え」と言えば本作なので、石川さゆりの歌を聴いても田中裕子の色っぽい表情が浮かんでしまう。映画の方が先なので、そういう人は意外と多いかもしれない。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月 7日 (金)

(2941) 影の車

【監督】野村芳太郎
【出演】加藤剛、岩下志麻、小川真由美、岡本久人、芦田伸介、岩崎加根子
【制作】1970年、日本

不倫相手の女の息子に怯える男の運命を描いたサスペンス映画。松本清張の短編小説「潜在光景」が原作。

旅行会社に勤める浜島(はまじま)幸雄(加藤剛)は、仕事帰りのバスの中で、幼なじみの小磯泰子(岩下志麻)に声をかけられる。泰子に家に来るよう誘われた浜島は、彼女が夫と死別し、6歳の息子、健一(岡本久人)と二人で暮らしていることを知る。結婚10年の浜島には子どもがおらず、妻の啓子(小川真由美)との関係は冷え込んでいた。浜島は泰子の家をたびたび訪れるようになり、健一の寝かしつけては抱き合うようになる。
ある日、浜島が泰子の家で泰子の帰りを待っていると、健一が包丁を手にして浜島の前に現れる。驚く浜島だったが、健一は木彫りの船を包丁で削り始める。その後も、饅頭を持ってきてと頼んだ浜島の前に、健一が殺鼠剤入りの団子を持ってきたり、泰子の家の中でガス漏れが発生し、泰子を待っていた浜島が閉じ込められてガス中毒になりかけたり、といったことが続き、浜島は健一の殺意に怯えるようになる。
浜島には幼い頃の記憶があった。浜島の母親(岩崎加根子)もかつて夫を亡くし、浜島(小山梓)を寝かしつけては家に上がり込んでくる男(滝田裕介)と抱き合っていたのだった。浜島はその男を好きになれなかったが、釣りを一緒にしてくれるところは気に入っていた。浜島は健一とプラモデルを一緒に作り、泰子は健一が浜島に懐いてきたと喜ぶ。
浜島は妻に嘘をついて、初めて泰子の家に泊まることにする。健一を寝かしつけ、浜島は泰子と抱き合う。深夜、起きてたばこに火を付けた浜島は、起きてきた健一が、薪(たきぎ)を切り落とすなたを手にしているのを見る。健一がなたを振りかざしたため、浜島はなたを持つ健一の手を掴み、無我夢中で健一の首を絞めてしまう。気づいた泰子が医者(稲葉義男)を呼び、健一は息を吹き返すが、医者は警察に事件を報告。浜島は殺人未遂の容疑者となる。浜島は、健一に殺されそうになったので防衛したと説明するが、刑事(芦田伸介)は、6歳の子どもがそのようなはっきりした殺意を持つことなどありえないと、浜島の訴えを退ける。それでも浜島は、あるんだ、と強く主張する。浜島は、自分が6歳の時の話を口にする。浜島の妻と会っていた男が、命綱を腰に巻いて海に面した断崖で釣りをしていたとき、浜島は、なたでその綱を断ち、バランスを失った男は岩に頭部を強打して海に転落死したのだ。泰子の家では、健一が一人、物憂げな顔でぶらんこをこぐのだった。

6歳の無表情な健一の姿が、主人公に迫る姿は、恐怖映画のような恐ろしさ。そして主人公もまた、かつて、健一と同じようなうつろな目で、母を奪おうとする男の死を見つめていたのだ。ぞっとする作品だった。タイトルの「影の車」は、内容をどう表しているのかよく分からないが、特に内容とは関係ないらしい(短編集の名前であって短編の作品名ではなく、松本清張はあまり内容と関係ない作品名を付けることがよくあったとのこと)。若い岩下志麻の濡れ場が観られるのも本作の魅力かもしれない。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月 6日 (木)

(2940) デッドマン・ウォーキング

【監督】ティム・ロビンス
【出演】スーザン・サランドン、ショーン・ペン、レイモンド・J・バリー、ロベルタ・マクスウェル
【制作】1995年、アメリカ、イギリス

死刑囚と尼僧の心の交流を描いた作品。

黒人街に住む白人の尼僧、シスター・ヘレン(スーザン・サランドン)は、手紙を送ってきた死刑囚、マシュー・ポンスレット(ショーン・ペン)に面会する。マシューは、もう一人の男カールと共謀し、若いカップルを襲い、山中でホープを強姦してナイフで刺した上で銃で撃ち殺し、男も撃ち殺した罪で死刑となっていた。彼はヘレンを信用したのか、自分は殺しはしていない、殺したのはカールだと告げ、死刑を取り消してくれるようヘレンに頼む。ヘレンはマシューを死刑を免れるよう動く。殺された男の父、アール・デラクロア(レイモンド・J・バリー)や、ホープの両親はヘレンに冷たく当たる。
ヘレンと協力者のヒルトン・バーバー(ロバート・プロスキー)の努力もむなしく、マシューの上訴審は却下され、マシューの死刑が決まってしまう。マシューは死刑の日にようやく、自分は男を撃ち殺し、少女を強姦した、少女を殺したのはカールだと懺悔する。それでもヘレンはマシューの心の平穏のために最後まで寄り添い、彼の死刑を見届ける。帰宅したヘレンの家のドアには、「シスター・ヘレン、愛してる」という応援の張り紙があった。ヘレンが神に祈る日は続くのだった。

死刑判決は正当なのか冤罪なのか、という謎を追って話は進む。真相は語られない作品もあるように思うが、本作では、犯行シーンが映像として示されており、マシューが少女を犯し、男を殺したことは真実であると示される。潔い演出だった。それでもなお、死刑制度は適切なのかを本作は問うているのだろう。スーザン・サランドンは本作でアカデミー主演女優賞を受賞。ショーン・ペンの演技も出色のできで、主演男優賞にノミネートされている。

【5段階評価】4

 

| | コメント (0)

2025年2月 5日 (水)

(2939) ミュージアム

【監督】大友啓史
【出演】小栗旬、妻夫木聡、尾野真千子、松重豊、野村周平、市川実日子、伊武雅刀、田畑智子、大森南朋
【制作】2016年、日本

猟奇的連続殺人事件に巻き込まれた刑事の苦闘を描いたサスペンス作品。巴亮介の同名漫画が原作。

刑事の沢村久志(小栗旬)は、連続殺人事件を担当。犯人は雨の日にコート姿で犯行を重ねており、動機は不明だったが、被害者は、過去に起きた幼女樹脂詰め殺人事件の裁判員だったことが分かる。久志の妻の遥(尾野真千子)も裁判員の一人だった。しかし、遥は久志があまりにも仕事を優先しすぎることから、幼い息子の将太(五十嵐陽向(ひなた))を連れて家を出てしまっており、久志には遥と将太の居場所が分からなかった。
事件の捜査から外された久志は、後輩の西野純一(野村周平)から捜査情報を教えてもらい、犯人を探そうとする。すると、久志と西野の目の前にカエルのかぶり物をした犯人が現れ、久志を挑発。逃げる犯人は追ってきた西野をビルの屋上から落として殺害する。久志は必死で二人を探し、ようやく友人の秋山佳代(田畑智子)が家に匿っていることを知る。しかし、犯人(妻夫木聡)は二人を拉致して連れ去ってしまっていた。
久志は、犯人が日光に弱いのではないかと仮説を立て、病院をしらみつぶしに当たり、ついに光線過敏症を患っている霧島早苗という男にたどり着く。久志は彼の住む屋敷に忍び込むが、早苗に襲われ、施錠された部屋に監禁されてしまう。部屋には暗証コード入力式のロックがかかっており、久志は早苗が時折放り込むハンバーガーで飢えをしのぎながら、部屋にあるジグソーパズルを完成させ、「EAT」というキーワードにたどり着く。機器にEATと入力するとロックが解除され、部屋を出た久志は、そこにあるロッカーの中に、遥と将太の切断された頭部が置かれているのを見て絶叫する。彼の食べたハンバーガーの肉は・・・。
しかし、遥と将太は生きていた。早苗は、泣き叫ぶ久志を監視カメラ越しに見て満足すると、カエル男の姿になって久志の前に現れ、久志を挑発して逃走。犯人は、カエル男の格好をさせた遥と入れ替わって逃げる。拳銃を手に狂ったようにカエル男を追う久志は、目の前にうつむき加減で立つカエル男を見つけるが、久志はそれが遥だと気づく。久志が遥を撃たなかったことを残念がる犯人は、人質にとった将太に拳銃を向け、遥を殺せば息子は助けると久志に告げる。そこにようやく警察が現れる。犯人は走って逃げるが、屋外に出た途端、日光を浴びて動けなくなり、倒れる。
早苗には医者の姉、幹絵(市川実日子)がおり、幹絵は入院中の早苗の枕元に歩み寄り、そのアレルギーは心因性だと言って、早苗の点滴に薬剤を注入。早苗は発作を起こし、幹絵は警察に捕まる。事件は終結し、久志は遥と将太との日常を取り戻す。運動会の日。両親に見守られている将太は、さんさんと日を浴びながら、早苗と同じように、しきりに首を掻くのだった。

原作は昔読んでいたが、ストーリーをあまり覚えていなかったので、割と新鮮に楽しめた。ただ、映画で観ると、物語の粗(あら)が目に付いてしまった。まず、久志の行動が感情に流されすぎで嘘くさい。ビルから落ちる西野を見て、犯人確保より、間に合うはずもない西野の方に走ってへたり込んでしまうとか、監視されているのが分かっているのに監禁部屋の中で感情むき出しにして叫んでみたり、マネキンの妻と子に泣いて詫びたり。もうちょっと冷静に行動するのでは。しかも刑事なんだし。クライマックスで犯人が久志に遥を殺せと言い、遥が自分を殺してと叫ぶくだりも、芝居がかっていた(芝居なんですけど)。また、そこに他の刑事がやってきたときに、誰も殺さず逃げる早苗も無策すぎだった。また、早苗が西野のネクタイ一本で斜めに直立した彼の体を支えているシーンも、映像で見ると、西野が体の自由を奪われているようには見えず、ふつう直立じゃなくてしゃがんだり体をくの字に曲げたりするだろ、と思え、そうとう無理があった。
なお、犯人の動機は、殺人を芸術と考える犯人にとって、樹脂詰め殺人が、冤罪によって別の人間の仕業とされてしまったことへの怒りということなのだが、久志を執拗に狙い、差し違えそうになりながら犯行に及ぶ理由は明確ではなく、計画の詰めも甘いと感じられるのも残念だった。
本作はAmazonプライムで鑑賞。死体は恐怖映画なみのグロさなので、テレビ放映はしていない作品かもしれない。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2025年2月 4日 (火)

(2938) タイガー 甦る伝説のスパイ

【監督】アリー・アッバース・ザファル
【出演】サルマーン・カーン、カトリーナ・カイフ、サジャード・デラクルーズ、ギリーシュ・カルナード
【制作】2017年、インド

テロ組織の人質となった看護師救出のために奮闘するスパイの活躍を描いたアクション映画。「タイガー 伝説のスパイ」(2012)の続編。次作は「タイガー 裏切りのスパイ」(2023)。

イラクのテロ組織ISCが、インド人とパキスタン人の看護師を人質にとり、病院に立てこもる。インドの対外情報機関RAWのシェノイ局長(ギリーシュ・カルナード)は、オーストリアで暮らす伝説のスパイ、タイガー(サルマーン・カーン)に人質救出を依頼する。タイガーの妻で、パキスタンの情報機関ISIのスパイだったゾヤ(カトリーナ・カイフ)は、タイガーに任務を受けるよう助言する。
タイガーは仲間とともにISCの運営する精油所に不法労働者として潜入。精油所内の火災で火傷をしたという設定で病院に入り込む。ゾヤもISIの仲間とともに人質救出作戦に加わり、RAWとISIが協力するという前例のない作戦が実行され、タイガーたちは人質の救出に成功するのだった。

前作は工夫の施された素晴らしい作品だったが、本作は非現実的な状況で派手な映像が展開する陳腐な内容になってしまっていた。敵の数が予定より増えたり、工作をしているところを見つかって殺されそうになったり、という危機的な状況を描くのだが、敵が大量にいても主人公は敵の目の前に踊り出て機関銃をぶっ放すと敵は次々と倒れて主人公には敵の弾は全く当たらないし、敵に囲まれているはずの病院から、人質と主人公たちが一台の車に乗り込んで抜け出すし、そんな解決方法なら何でもありだ。インド映画独特のミュージカルシーンも、そうなると何だか辟易としてしまうのだった。好みの分かれる作品だろう。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月 3日 (月)

(2937) 男はつらいよ 望郷篇

【監督】山田洋次
【出演】渥美清、倍賞千恵子、長山藍子、前田吟、杉山とく子、井川比佐志、津坂匡章、松山省二、森川信、三崎千恵子
【制作】1970年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第5作。「新・男はつらいよ」(1970)の続編。次作は「男はつらいよ 純情篇」(1971)。

車寅次郎(渥美清)は、おじちゃん(森川信)がご臨終となる夢を見て、とらやに電話。おばちゃんは「おじちゃんは長くない」と寅次郎をからかい、真に受けた寅次郎は葬儀屋の手配をしてしまい、大騒ぎとなる。工場でまじめに働いている博(前田吟)たちをからかったことで寅次郎は妹のさくら(倍賞千恵子)から大目玉を食らい、油まみれで地道に働くことの大変さを説かれる。寅次郎は、昔世話になった正吉親分が病に伏せていると知らされ、舎弟の川又登(津坂匡章)を連れて見舞いに行く。親分(木田三千雄)は昔、女中に生ませた息子に会いたいと言い、寅次郎は息子の石田澄雄(松山省二)を探し当てる。澄雄は、正吉が母親の葬式にも顔を出さないひどい男だったと話し、自分が死にそうになったら息子に会いたいなんてふざけるなと寅次郎に話し、寅次郎は返す言葉がなかった。寅次郎は病院に電話をするが、正吉は亡くなってしまっていた。地道に働くことの大事さを痛感した寅次郎は、浮草稼業の登を宿から追い出し、地道に働くためとらやに戻る。ところが、梅太郎社長(太宰久雄)の印刷工も、天ぷら屋も風呂屋も務まらず、またとらやを出て行ってしまう。
ある日、寅次郎からさくら宛に大量の油揚げが届く。寅次郎は浦安の豆腐屋で働いていた。会いに行ったさくらは、豆腐屋には年老いた三浦富子(杉山とく子)と、その娘の節子(長山藍子)がいるのを知る。節子は寅次郎に、いつまでもうちの豆腐屋で働いてくれるか、と聞き、寅次郎がいいよと言うと節子はたいそう喜ぶ。横で聞いていた源公(佐藤蛾次郎)は、今のはプロポーズだと言い、寅次郎もバカ野郎と言いながらも真に受ける。しかし節子には恋人の木村剛(井川比佐志)がおり、彼の転勤を機に結婚する予定で、節子が母親のもとを離れても豆腐屋が続けられることを喜んでいたのだった。それを知った寅次郎は意気消沈して豆腐屋を出てしまい、また旅に出る。一月後、寅次郎は旅先で登に遭遇。二人で再会を喜び合うのだった。

寅次郎が片思いをして振られるという定番の展開。地道に働こうとするがうまく行かないというのが、もう一つの話の流れとなっていた。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月 2日 (日)

(2936) 新・男はつらいよ

【監督】小林俊一
【出演】渥美清、栗原小巻、森川信、三崎千恵子、前田吟、佐藤蛾次郎、太宰久雄、津坂匡章、倍賞千恵子
【制作】1970年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第4作。「男はつらいよ フーテンの寅」(1970)の続編。次作は「男はつらいよ 望郷篇」(1970)。

競馬で大もうけした車寅次郎は、とらやのおじちゃん(森川信)とおばちゃん(三崎千恵子)をハワイ旅行に連れて行くことにする。ところが旅行会社の社長が金を持ち逃げしてしまい、近所の目を気にした寅次郎は、ハワイに行った振りをして、おじちゃんおばちゃんと、とらやの中に隠れ住む。ところがそこに泥棒(財津一郎)が入り込み、潜伏が近所にバレてしまう。悪銭身につかずだとおじちゃんに罵られた寅次郎は、とらやを出て行く。
一ヶ月後、戻ってきた寅次郎は、二階の部屋に、美人の幼稚園の先生、宇佐美春子(栗原小巻)が借家暮らししているのを知り、とらやに居着いて、春子のいる幼稚園に出入りするようになる。春子の父親が亡くなり、気が沈んでいる春子を寅次郎は一生懸命励まし、春子も笑顔を取り戻す。春子に夢中になる寅次郎だったが、春子は立派ななりをした男の友人(横内正)を連れてきて二階の部屋に上げる。男は春子の恋人のようだった。それを知った寅次郎はショックを受け、またとらやを去っていくが、乗っている汽車の中で、泥棒を捕まえた顛末を面白おかしく乗客に話し、車内は盛り上がるのだった。

いわゆるマドンナ役の栗原小巻の可愛さが見所。公開当時24歳で、当時41歳の寅次郎が熱を上げるのも無理はないような無理があるような。前作の公開が1970年1月、本作が1970年2月、次作は1970年8月。すさまじいペースで公開されているのは驚き。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2025年2月 1日 (土)

(2935) 男はつらいよ フーテンの寅

【監督】森崎東(あずま)
【出演】渥美清、新珠三千代、森川信(しん)、三崎千恵子、河原崎健三、香山美子、前田吟、倍賞千恵子
【制作】1970年、日本

「男はつらいよ」シリーズ第3弾。「続・男はつらいよ」(1969)の続編。次作は「新・男はつらいよ」(1970)。

旅ガラスの車寅次郎(渥美清)に、隣の社長(太宰久雄)と親戚の車竜造(森川信)が見合い話を持ってくる。緊張して縁談に臨んだ寅次郎の前に現れたのは、寅次郎の知り合いの駒子(春川ますみ)。駒子に夫がいることを知っていた寅次郎は、駒子が夫に浮気されて自分も男を作ろうと思ったと聞き、夫(晴乃ピーチク)とよりを戻させる。二人を盛大に祝った金を竜造の店の付けにしたため、竜造は激怒。寅次郎はまた旅に出る。
寅次郎は湯の山温泉の古い旅館の美人おかみ、お志津(新珠三千代)に惚れ込んで番頭として働くようになる。寅次郎は、お志津の弟、信夫(河原崎健三)と芸者の染奴(香山美子)の縁を取り持ち、二人を送り出す。お志津は大学教授の吉井(高野真二)と結ばれ、寅次郎は旅館を去り、旅に出る。年が明け、1970年のテレビの生中継番組に寅次郎が登場。さくら(倍賞千恵子)たちは驚くのだった。

寅次郎の気っぷのいいセリフが見所。取り立てて感動するほどではないが、寅次郎のキャラクターを生かした内容だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

« 2025年1月 | トップページ | 2025年3月 »