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2024年12月

2024年12月31日 (火)

(2903) 杉原千畝 スギハラチウネ

【監督】チェリン・グラック
【出演】唐沢寿明、小雪、ボリス・シッツ、アグニェシュカ・グロホフスカ、小日向文世、濱田岳、板尾創路、ミハウ・ジュラフスキ
【制作】2015年、日本、ポーランド、アメリカ

駐リトアニア領事代理として、ユダヤ人を救うためにビザを発給した実在の外交官を描いた作品。

1939年、外交官の杉原千畝(唐沢寿明)は、妻の幸子(小雪)と二人の子を連れ、領事代理としてリトアニアに赴任。彼は、ドイツ軍の虐殺から逃れようとしているユダヤ人の窮状を知る。千畝は本国の方針に逆らい、ユダヤ人たちに大量のビザを発行。多くのユダヤ人の命を救う。千畝は日本の行く末を憂いていたが、予想通り、日本は米英に宣戦布告したものの敗戦。日本に戻った千畝は外務省を追われ、小さな貿易会社に勤める。千畝に命を救われたユダヤ人のニシェリ(ミハウ・ジュラフスキ)は、昭和43年10月、モスクワにいる千畝を捜し当て、再会を喜び合うのだった。

東洋のシンドラーと呼ばれた杉原千畝の功績を映画化した作品。そうなると「シンドラーのリスト」(1993)とも比べてしまうわけだが、本作は当時の町並みの再現、母国語による会話表現など相当がんばっているものの、なんだか豪華なテレビドラマのように見えてしまった。日本が敗戦に至る過程と、千畝と幸子のダンスシーンが交錯するシーンも、何だかなぁという印象。スティーブン・スピルバーグはただ者ではないということなんだろうか。

【5段階評価】3

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2024年12月30日 (月)

(2902) 拝啓総理大臣様

【監督】野村芳太郎
【出演】渥美清、長門裕之、横山道代、壷井文子、宮城まり子、加藤嘉、原知佐子、山本圭
【制作】1964年、日本

漫才で名を揚げることを目指す男の様子を描いたコメディ作品。「続・拝啓天皇陛下様」(1964)の続作。「拝啓天皇陛下様」(1963)とともに「拝啓」シリーズ3部作と呼ばれている。

漫才師をやめて犬殺しの職に就いている鶴川角丸(かくまる)(渥美清)は、鶴松師匠の死に接し、師匠を継いで名漫才師になることを決意。列車の中で、混血児のアヤ子(壷井文子)と偶然、隣の席になる。アヤ子は、京都でともに住んでいた祖母が亡くなり、おばの菰田うめ(宮城まり子)を訪ねて東京に出てきたのだった。うめはアヤ子との再会を喜ぶが、うめの夫、菰田三五郎(加藤嘉)はアヤ子を毛嫌いする。
角丸は、漫才の元相方で、今は東京ムーランルージュというコンビで夫婦漫才をしている東京ムーラン(長門裕之)を訪ね、再びコンビを組もうとする。浮気者のムーランは妻のルージュこと藤原美子(よしこ)(横山道代)に愛想を尽かされ、角丸とコンビでテレビに出ることにするが、収録は全くうまく行かず、出演の話はなくなってしまう。角丸は、町で不遇に耐えているアヤ子と再会し、コンビを組むことにする。はじめはお客にやじられて怒り出したりしたアヤ子だったが、舞台に何度も上がり続けて芸が板に付き、舞台で「こんにちは赤ちゃん」を歌って客席を沸かすのだった。

アヤ子の実の母親はうめだった、という人情話も交えながら、庶民の生き様を描いているという内容。長門裕之に比べると、渥美清の関西弁は嘘っぽかった。クロンボ、ルンペン、気違いなどの差別用語が出てくるのも昭和らしい。

【5段階評価】3

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2024年12月29日 (日)

(2901) 続・拝啓天皇陛下様

【監督】野村芳太郎
【出演】渥美清、宮城まり子、久我美子、小沢昭一、南田洋子、藤山寛美、勝呂誉(すぐろほまれ)
【制作】1964年、日本

太平洋戦争時代を生きた男の半生を描いた作品。「拝啓天皇陛下様」(1963)の続作。

身寄りのない山口善助(渥美清)は徴兵され、散髪に行ったのをきっかけに、散髪屋をしていた中国人の王万林(小沢昭一)とポンヨウとなる。軍犬兵となった善助は、京都の屋敷に住む久留宮(くるみや)ヤエノ(久我美子)が献納した犬、友春(名犬キンタ号)を訓練する。戦争が終わり、かつては戦地にいた善助に差し入れをくれていたヤエノは、夫が行方不明で生活に困窮していた。中国から帰国した善助は、どんな仕事でもこなしながらヤエノの生活を助ける。朝鮮戦争に駆り出された善助は、ヤエノの世話を王に頼み、3年後、帰国。かつての知り合いだった恵子(宮城まり子)と再会し、結婚する。恵子は善助の子を身ごもり、出産するが、敗血症によって世を去る。善助は拾った犬と当てのない暮らしを続けるのだった。

善助が、ヤエノや王と、戦況によって助けたり助けられたりしながら生きていくさまを描いている。コメディ色も多少あるが、全体的には悲しい話である。「うんこ屋」や「びっこ」などの、今でははばかられる言葉が出てくる。善助が憧れる女子(おなご)先生役で、岩下志麻が出演。また、ヤエノの夫役で佐田啓二が出演している。

【5段階評価】3

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2024年12月28日 (土)

(2900) 拝啓天皇陛下様

【監督】野村芳太郎
【出演】渥美清、長門裕之、桂小金治、西村晃、藤山寛美、左幸子、中村メイコ
【制作】1963年、日本

太平洋戦争時代を生きた男と、文筆家の交流を描いた作品。

昭和初期。軍に入隊した棟本(むねもと)博(長門裕之)は、カタカナを書くのがやっとの男、山田正助(渥美清)と同期となる。軍隊に所属することを内心嫌がっている多くの兵士たちとは裏腹に、幼くして独り身になった正助は、ちゃんとした飯にありつける軍隊に所属し続けることを望む男だった。兵隊作家として一時は名を挙げた棟本だったが、太平洋戦争を経て暮らしは困窮。戦後も、再会した正助との付き合いを続ける。独り身だった正助は、母親(清川虹子)の営む飲み屋の手伝いをしている未亡人、井上セイ子(中村メイコ)と婚約し、博とその妻、秋子(左幸子)は喜ぶが、正助は泥酔して車にはねられ、生涯を閉じてしまうのだった。

不器用で滑稽な男の生き様を、棟本という第三者の視点から描いた作品。コメディ要素もあるが、戦争時代の悲劇を描いていた。当時の世相を垣間見ることのできる内容だった。タイトルの「拝啓天皇陛下様」とは、作中で正助が、天皇に恐れ多くも手紙を書こうとしていたという挿話を表現している。

【5段階評価】3

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2024年12月27日 (金)

(2899) 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション

【監督】長崎健司
【出演】山下大輝(だいき)(声)、吉沢亮(声)、岡本信彦(声)、中井和哉(声)、梶裕貴(声)、伊瀬茉莉也(声)
【制作】2019年、日本

堀越耕平の漫画が原作のアニメ「僕のヒーローアカデミア」の劇場作品第3弾。「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング」(2019)の続作。次作は「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」(2024)。

多くの人々が、特殊能力を個性として持って生まれる時代。フレクト・ターン(中井和哉)をリーダーとするテロ集団ヒューマライズは、個性は人類の病だとして、個性を持つ者を殺す爆弾トリガーボムを発動。ヒューマライズの活動を阻止するため、世界各地にヒーローが派遣される。オセオン国でインターンをしていたデクこと緑谷出久(山下大輝)は、宝石店強盗の運び屋をしていたロディ・ソウル(吉沢亮)を捕まえる。彼の持っていた鞄には宝石が入っているはずだったが、中身はただの書類だった。途中で別の鞄と入れ替わっており、それはヒューマライズの狙っている鞄だった。オセオンの警察長官はヒューマライズの一員であり、デクは大量殺人犯に仕立てられてしまい、オセオンの警察とビランのベロス(伊瀬茉莉也(まりや))に追われる。デクは助けに来た爆豪勝己(岡本信彦)や轟焦凍(しょうと)(梶裕貴)らとともにビランを退け、ロディと協力してフレクトを倒すと、鞄に入っていたICチップで爆弾の起爆を停止させ、テロを防ぐのだった。

ヒーローとして純粋に困っている人を助けようとするデクを見て、ロディが心を入れ替え、必死でテロを防ごうとする姿が感動的に描かれていた。コミカルすぎず、映像にも迫力があった。本作は録画できていたのだが、新幹線で見たかったのでAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】3

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2024年12月26日 (木)

(2898) kapiwとapappo ~アイヌの姉妹の物語~

【監督】佐藤隆之
【出演】床絵美、郷右近富貴子、海沼(かいぬま)武史、下倉洋之、郷右近好古
【制作】2016年、日本

アイヌの歌を伝承する二人がライブイベントを開催するまでを描いたドキュメンタリー映画。

姉の床絵美はカモメを意味するカピウ、妹の富貴子は福寿草を意味するアパッポがニックネーム。二人が小さなライブハウスでライブを行う過程を描いている。

子どもとの日常的なやりとりやちょっとしたいざこざをカメラに収めていて、中盤までは正直、あまり観る価値を感じないのだが、ラスト30分ほどのライブのシーンは、資料的価値を感じる。アイヌの言葉は全く分からないが、この歌が映画として記録されていることには、意味を感じざるを得なかった。「エアウア」の歌は耳に残った。

【5段階評価】2

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2024年12月25日 (水)

(2897) 荒野のストレンジャー

【監督】クリント・イーストウッド
【出演】クリント・イーストウッド、ビリー・カーティス、マリアンナ・ヒル、バーナ・ブルーム、ジェフリー・ルイス
【制作】1973年、アメリカ

犯罪者の復讐に怯える町の人々と、そこに現れた流れ者とのやりとりを描いた西部劇。

ラーゴという湖畔の町に、流れ者(クリント・イーストウッド)が現れる。町の用心棒のビリー・ボーダーズ(スコット・ウォーカー)、アイク・シャープ、フレッド・モリスの三人組が流れ者を挑発すると、流れ者はすさまじい早撃ちで三人を倒す。町の保安官サム(ウォルター・バーンズ)は、流れ者の男に提案を持ちかける。ラーゴでは、かつて用心棒として、ステイシー・ブリッジズ(ジェフリー・ルイス)、コール・カーリン(アンソニー・ジェームズ)、ダン・カーリン(ダン・バディス)の三人を雇っていたが、彼らが暴力的になったため、刑務所送りにしていた。釈放された三人が復讐に来るので、彼らを撃退してほしいというのだ。一度は断る流れ者だったが、町の物は何でもただにすると言われ、流れ者は依頼を引き受ける。
流れ者は、雑貨屋の商品や酒屋の飲み代、ブーツや銃などを好き放題に手に入れ、小男のモーデカイ(ビリー・カーティス)に保安官と町長の権限を与え、ホテルの宿泊客を追い出して独り占めし、町でパーティを開いて建物を全て赤いペンキで塗れ、とめちゃくちゃな要求をする。耐えかねたモーガン(ジャック・ギング)らが流れ者の寝込みを襲おうとするが、流れ者は部屋を抜け出しダイナマイトで泊まっていた部屋を破壊する。
町ではかつて、保安官のジム・ダンカン(バディ・バン・ホーン)がステイシーら3人にむち打たれ、町人たちが見殺しにするという事件があった。サムは、町人は善人ばかりで、保安官を殺したのは町の外の者だと流れ者に説明するが、実は、町の稼ぎの種の鉱山が国有財産だと気づいたジムが、それを通報しようとしたため、町人によって口封じのために殺されていたのだ。
ステイシーたちが町に現れ、町人たちを酒場に集めてやりたい放題を始めるが、酒場の外からコールの首にムチが飛び、コールはムチで滅多打ちにされて殺される。ステイシーとダンは酒場を出て敵を探すが、ダンが首にムチを巻き付けられ、首吊りにされて死ぬ。怯えるステイシーの背後に流れ者が現れ、流れ者の早撃ちによって葬られる。
翌日、町を去る流れ者に、死者の墓石を世話しているモーデカイが名を尋ねると、流れ者は「知ってるさ」と言い、荒野の蜃気楼の中に消えていく。墓石には「保安官ジム・ダンカン安らかに眠る」と刻まれているのだった。

名乗らない流れ者は誰なのか、という謎を主軸に物語が進み、最後に、流れ者は、殺されたジム・ダンカンの亡霊だったのだろう、というオチになる。それにより、主人公が超人的で不死身(本ブログで言う主人公アビリティ全開)であることが正当化され、納得の結末となる。効果音が、ところどころ、バリバリ西部劇というよりホラー映画のようになっているのも、伏線の一つだろう。異色の西部劇だった。

【5段階評価】3

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2024年12月24日 (火)

(2896) 沈黙の監獄

【監督】キオニ・ワックスマン
【出演】スティーブン・セガール、スティーブ・オースティン、マイケル・パレ、ステフ・ソング、アリーヤ・オブライエン
【制作】2012年、アメリカ

女性囚人を狙う集団と戦う元特殊部隊員の活躍を描いた作品。

閉鎖間近の刑務所に、サマンサ(ステフ・ソング)とシャーロット(アリーヤ・オブライエン)の二人が収監される。そこに、クリストファー・ブレイク(マイケル・パレ)率いる連邦保安官が二人の引き渡しを要求。刑務所長(イアン・ロビンソン)が規定を満たしていないと拒否すると、クリストファーは刑務所員を撃ち殺し、刑務所長を脅迫する。刑務所で働くマニング(スティーブ・オースティン)とクロス(スティーブン・セガール)は、ブラッドリー(ブレン・フォスター)ら3人組とともに、刑務所を襲撃した集団に応戦。クロスはサマンサとシャーロットを確保するが、シャーロットはクリストファーの味方で、機密情報を体内に埋め込んだサマンサをさらう。激しい攻防の末、シャーロットはサマンサに殺され、一人残ったクリストファーは2億ドルの半分をクロスに譲るともちかけるが、クロスはクリストファーを亡き者にするのだった。

物語性や派手などんでん返しはなく、敵と味方に分かれて派手な戦闘シーンが繰り広げられるという、いかにもスティーブン・セガール主演作品らしいできばえ。でも、つまらないかというと、そういうわけでもなく、普通に楽しめた。

【5段階評価】3

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2024年12月23日 (月)

(2895) 釣りバカ日誌17 あとは能登なれハマとなれ!

【監督】朝原雄三
【出演】西田敏行、三國連太郎、石田ゆり子、大泉洋、片岡鶴太郎、浅田美代子、宮崎美子、中本賢
【制作】2006年、日本

釣りバカ日誌シリーズ第19弾。「釣りバカ日誌15 浜崎は今日もダメだった♪♪」(2005)の続編。次作は「釣りバカ日誌18 ハマちゃんスーさん瀬戸の約束」(2007)。

スーさんこと鈴木一之助(三國連太郎)が社長を務める鈴木建設に、スーさんの元秘書だった沢田弓子(石田ゆり子)が再雇用され、ダメ社員のハマちゃんこと浜崎伝助(西田敏行)の所属する営業三課に配属される。弓子はハマちゃんに釣りに連れて行ってほしいと頼み、ハマちゃんは太田屋の釣り船で釣りに出る。船長の八郎(中本賢)は弓子に一目惚れする。弓子は寿退社だったが、DVが原因で離婚しており、今は一人暮らしをしていた。八郎は弓子にアプローチするが、弓子は向かいのアパートに住む美術の高校臨時講師、村井徹(大泉洋)に結婚を申し込まれ、それを受け入れる。
徹は弓子の兄、佐伯聖一(片岡鶴太郎)に結婚の許しを得るため、聖一の暮らす能登に向かう。緊張からビールをあおり、酔った勢いで挨拶をした徹を見て、聖一は失礼だと徹を追い返すが、聖一の妻の加代子(宮崎美子)の説得により、二人の結婚を許す。出張で石川に来ていたハマちゃんとスーさんはそれを知って喜ぶ。東京に戻ったハマちゃんは、八郎に弓子が結婚したことを報告。やけになった八郎は船の上で暴れ出し、釣り客がみんなでなだめるのだった。

ハマちゃんが若い二人の仲を取り持つというのが、シリーズの定番の展開になりつつあるが、本作では男性側の徹とハマちゃんは交流がなく、徹と弓子が自力で結婚に至っている。八郎の片思いが全く実らないで終わるのがちょっと寂しかった。式典の職員役でダンディ坂野、地元の釣り人役で道場六三郎がちょこっと出演している。

【5段階評価】3

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2024年12月22日 (日)

(2894) 釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪

【監督】朝原雄三
【出演】西田敏行、三國連太郎、伊東美咲、金子昇、尾崎紀世彦、浅田美代子、ボビー・オロゴン、中本賢、笹野高史
【制作】2005年、日本

釣りバカ日誌シリーズ第18弾。「釣りバカ日誌14 ハマちゃんに明日はない!?」(2004)の続編。次作は「釣りバカ日誌17 あとは能登なれハマとなれ!」(2006)。

鈴木建設のダメ社員、ハマちゃんこと浜崎伝助(西田敏行)は、社長のスーさんこと鈴木一之助(三國連太郎)とともに、長崎の西海橋の連結式に臨む。ハマちゃんは会社の用事より釣りが楽しみで、後輩社員の久保田達也(金子昇)に釣りの世話をさせる。達也は優秀な社員で、長崎から東京の本社に戻るよう何度も打診されていたが、西海橋の完成を見届けたいという理由で異動を断り続けていた。しかし実は、長崎で父親と飲食店を営む川口美鈴(伊東美咲)と交際しており、彼女と離れるのがいやだったのだ。達也はついに美鈴にプロポーズするが、美鈴は父親の輝男(尾崎紀世彦)と、母親に出て行かれてから20年間二人で暮らしており、父を残して結婚することを躊躇していた。ある夜、輝男の店に来た達也は、意を決して、美鈴さんとの結婚を許してください、と輝男に願い出るが、輝男は達也を殴り飛ばしてしまう。美鈴は達也の勇気に喜び、結婚を決意するが、父親との関係はぎくしゃくしてしまう。
ハマちゃんはアメリカ兵のボブ(ボビー・オロゴン)と意気投合し、輝男の店を出た後、米軍のイージス艦に乗せてもらい、そこで酔い潰れてしまう。気がつくとイージス艦はハワイに向かって出港しており、浜崎家や会社では、ハマちゃんが行方不明になったと大騒ぎになる。長崎県警から、ハマちゃんの靴が海で見つかったと、妻のみち子(浅田美代子)に連絡があり、みち子はスーさんと長崎県警に向かう。そこに、アメリカのイージス艦にハマちゃんが乗っていたとの連絡が入り、みち子は一安心する。
ハマちゃんは達也と美鈴の仲人をすることになる。美鈴の父、輝男が結婚式に出ようとしていないことを知ったハマちゃんは、4人の米兵をお供にして、店でくだを巻いている輝男を拉致して式場に連れて行く。強引に娘の前に連れてこられた輝男だったが、娘の晴れ姿を見て、娘を従えて式場に入り、達也は涙ながらに輝男に頭を下げる。スーさんとハマちゃんは長崎の港で釣り糸を垂れ、米軍を首になったボブと再会し、釣りを楽しむのだった。

美鈴の父、輝男が娘と式場に入っていき、仲間が祝福するシーンは目頭が熱くなった。序盤はハマちゃんがスーさんをないがしろにしてスーさんが怒りっぱなしなので、そこは観ていてちょっと不愉快だったが、最後は二人仲よく釣りをし、ボブのちょっとおかしな日本語も楽しく、ハッピーエンドでよかった。長崎県警の刑事役で、さだまさしが出演している。

【5段階評価】4

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2024年12月21日 (土)

(2893) 釣りバカ日誌15 ハマちゃんに明日はない!?

【監督】朝原雄三
【出演】西田敏行、三國連太郎、江角マキコ、筧利夫、浅田美代子、益岡徹、小木茂光
【制作】2004年、日本

釣りバカ日誌シリーズ第17弾。「釣りバカ日誌14 お遍路大パニック!」(2003)の続編。次作は「釣りバカ日誌16 浜崎は今日もダメだった♪♪」(2005)。

スーさんこと鈴木一之助(三國連太郎)が社長の建設会社、鈴木建設は、経営コンサルティング会社のオメガコンサルティングの早川薫(江角マキコ)から人事制度提案を受けていた。スーさんはリストラ重視の提案を受け入れられずにいた。一方、鈴木建設のダメ社員、ハマちゃんこと浜崎伝助(西田敏行)は、新年度開始早々、有給休暇を取って秋田に釣りに行く。ハマちゃんは偶然、新幹線で隣の席だった薫と出会い、顔なじみになる。釣り場で知り合った水産振興センターの職員、福本哲夫(筧利夫)と意気投合したハマちゃんは、二人で杯を交わす。
薫は地元の旧友に会い、コンサルティングをしている自分の生き方に疑問を持つようになり、リストラ重視の自社の提案を、鈴木建設には合わないと意見し、上司(小木茂光)の怒りを買う。スーさんは薫に好感を持ち、これからも鈴木建設のコンサルティングをしてほしいと伝えるが、薫はスーさんに感謝しながらも、コンサルティング会社を辞め、秋田に戻る。
哲夫と薫は高校の同級生で、哲夫は薫にずっと片思いをしていた。哲夫は母親の信子(吉行和子)の決めた見合いで結婚することになっていた。哲夫の結婚祝いを持ってきた薫に、信子は、哲夫がハマちゃんを仲介して薫と再会したことで、結婚を断ってしまったのだと告げる。薫は、自分でよければ哲夫さんの妻になると話し、信子は大喜びする。ハマちゃんが仲人を務めることになり、スーさんはたまたま秋田で出席を予定していた水族館の作成式にハマちゃんを連れて行く社命を出し、結納式に参加。ハマちゃんは哲夫と川釣りを楽しみ、スーさんは信子とデートするのだった。

高校卒業から20年経った独身の男女の恋のキューピッド役をハマちゃんが担うという人情話。ホロリとさせる、いい内容の作品だった。舞台は秋田で、おいしそうな魚や料理が作品に色を添えているのもよかった。この調子なら、都道府県の数だけ魅力的な作品が作れてしまいそうだ。
ちなみに、サブタイトルに「ハマちゃんに明日はない!?」とあるが、作中には特にこの表記はなく、あくまで宣伝用の見出しのようだ。内容を表しているとも思えないし。

【5段階評価】3

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2024年12月20日 (金)

(2892) 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング

【監督】長崎健司
【出演】山下大輝(だいき)(声)、岡本信彦(声)、井上芳雄(声)、寺崎裕香(声)、黒沢ともよ(声)、三宅健太(声)、今田美桜(声)
【制作】2019年、日本

堀越耕平の漫画が原作のアニメ「僕のヒーローアカデミア」の劇場作品第2弾。「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ~2人の英雄~」(2018)の続作。次作は「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」(2021)。

多くの人々が、特殊能力を個性として持って生まれる時代。雄英高校1年A組の生徒たちは、沖縄によく似た「那歩島(なぶとう)」で、ヒーローとしての実体験学習を行うことになる。デクこと緑谷出久(みどりやいずく)(山下大輝)は、ヒーローに憧れる幼い男の子、島乃活真(寺崎裕香)と、その姉、真幌(黒沢ともよ)と出会う。二人は母親がおらず、父親は島の外に出稼ぎに出ていた。島にナイン(井上芳雄)率いるビランが出現。狙いは、活真の持つ、細胞を活性化させる個性を取り込むことだった。出久と爆豪勝己(岡本信彦)たちは、仲間とともにナインと、その仲間のスライス(今田美桜)、キメラ(武内駿輔)、マミー(鳥海浩輔)と戦い、活真を守り切る。活真はヒーローになることを出久と勝己に誓うのだった。

ナインがやたらめったら強いのだが、個性を8つ取り込めるという説明はあるものの、それがどういう特殊能力なのかよく分からなかった。そうなると、何が弱点なのかもよくわからず、要するに気合いで倒したのね、みたいになってしまった。本作はAmazonプライムで鑑賞。

【5段階評価】3

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2024年12月19日 (木)

(2891) ダンケルク

【監督】クリストファー・ノーラン
【出演】フィン・ホワイトヘッド、トム・ハーディ、キリアン・マーフィ、ハリー・スタイルズ、アナイリン・バーナード
【制作】2017年、イギリス、アメリカ、フランス、オランダ

第二次世界大戦におけるダンケルクの戦いを描写した戦争映画。

ダンケルクの戦いとは、ドイツ軍によってフランスの海岸ダンケルクに追い詰められた30万人以上のイギリス兵を脱出させた作戦のこと。イギリス兵トミー(フィン・ホワイトヘッド)らの陸での一週間、商船の老船長ドーソン(マーク・ライランス)と乗組員の海での1日、戦闘機パイロットのファリア(トム・ハーディ)らの空での1時間が交差しながら描かれる。
トミーは、寡黙なギブソン(アナイリン・バーナード)やアレックス(ハリー・スタイルズ)と、船に乗り込んでは逃げるという死地をくぐり抜け続ける。ドーソンは戦争に追いやられた若い兵士たちを救うため、危険な戦地ダンケルクに向かい、大勢の兵士を救う。ファリアは相棒のコリンズ(ジャック・ロウデン)ともに戦闘機スピットファイアを操り、限られた燃料で、イギリス兵をねらうドイツ機を撃墜し続けるが、最後に燃料切れでダンケルクの海岸に着陸。ドイツ軍に捕獲される。それでもイギリスは多くの兵士の救出に成功。アレックスとトミーは、列車の中でダンケルクの救出劇が新聞で大々的に取り上げられていることを知る。それは喜ばしいことであったが、同時に、イギリスが国民を鼓舞し、戦争に駆り立てているものでもあるのだった。

群像劇風に描かれ、戦況の説明は最低限なので、ダンケルクの戦いを歴史の知識として知っていないと、脈絡のない戦闘シーンが続くように見えるかもしれない。撃墜されて傾く船から逃げる兵士たちを映しているシーンは、死人が出ていないか心配になるほど真に迫っていた。女性は少し登場しているが、黒人はほとんど登場していなかった。
質の高い映画であることは分かるが、面白いかというと、正直そうでもなかった。

【5段階評価】3

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2024年12月18日 (水)

(2890) 泣くな赤鬼

【監督】兼重淳
【出演】堤真一、柳楽優弥、川栄李奈、麻生祐未、堀家一希(ほりけかずき)、キムラ緑子
【制作】2019年、日本

高校野球の監督と教え子の交流を描いた作品。重松清の小説が原作。

進学校の西高で弱小野球部の監督をしている小渕隆(堤真一)は、胃痛のため通っていた病院で、教え子だった斎藤智之(柳楽優弥)に「赤鬼先生」と声をかけられる。智之はゴルゴというあだな(ゴルゴ13の作者がさいとう・たかをだから)で、小渕が城南工業高校の野球部を率いていたときの部員だったが、甲子園を目指して厳しい指導をしていた小渕に反発し、野球部をやめた上に退学までしてしまっていた。
西高で覇気のない指導をしている小渕のもとに、病院で会った智之の妻、雪乃(川栄李奈)が訪ねてくる。智之は末期癌に冒されており、死期が迫っていたのだった。小渕は智之の見舞いに行き、智之に欲しいものがないか尋ねる。雪乃は、智之に代わって、智之は和田君(武藤潤)に会いたいのだと答える。和田とは、かつて智之(堀家一希)とサードのポジションを争い、智之が辞退したため正サードになった男だった。小渕は和田(竜星涼)に会い、智之を見舞ってほしいと頼むが、智之は、小渕は智之をひいきしていたと責め、見舞いを断る。
小渕は、和田は忙しいようだと智之に嘘の報告をする。智之は、ものではないが野球がしたいと小渕に言う。小渕は西高の野球部に頼んで智之を野球の練習に混ぜてもらう。小渕は智之に容赦のないノックを浴びせる。何とか捕球して倒れ込んだ智之に、ファーストに投げろ、と怒声が飛ぶ。和田だった。智之に歩み寄った和田に、智之はグラブを譲り、ベンチに下がる。和田は、高校時代、智之に、小渕が智之に野球部を辞めてほしがっていると嘘をついたことを詫びる。智之は、野球部を辞めたのは和田のせいじゃないと言い、和田の嘘を許す。
自宅療養中の智之の病状が悪化し、雪乃は小渕を家に呼ぶ。虫の息の智之を見て、人前で涙は見せないと言っていた小渕は、智之のがんばりを褒め、涙を流す。智之も泣きながら小渕を見つめ返す。智之を看取った小渕は、智之が野球部を辞めてからもずっと城南の野球部を見守っていたことを知り、西高の練習に本気で取り組むことにするのだった。

上では雑に書いたが、小渕と智之、智之と和田、和田と小渕の関係が詳しく描かれていて、見応えのある内容になっている。クライマックスで今際の際の智之を小渕が見舞うシーンは胸が熱くなった。川栄李奈の可愛さもみどころ。本作の公開年にできちゃった婚をするわけだが。

【5段階評価】4

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2024年12月17日 (火)

(2889) きみの瞳が問いかけている

【監督】三木孝浩
【出演】横浜流星、吉高由里子、風吹ジュン、町田啓太、奥野瑛太、やべきょうすけ、田山涼成、野間口徹
【制作】2020年、日本

視力を失った女性と元キックボクサーの純愛を描いた作品。チャップリン主演の「街の灯」(1931)を題材にした韓国映画「ただ君だけ」(2011)のリメイク。

地下格闘技の世界に手を染め、非合法な借金取り立てをなりわいにしていたアントニオ・篠崎塁(横浜流星)は、懲役刑を終えて住み込みのビルの駐車場管理の仕事に就く。彼が管理人室で眠そうにしていると、突然、盲目の若い女性、柏木明香里(吉高由里子)が飛び込んでくる。明香里は前任の管理人だったおじいさんと仲がよく、一緒にテレビドラマを見ていたのだった。それをきっかけに塁は明香里と付き合うようになる。明香里と同棲生活を送るようになった塁は、明香里が盲目になった過去の話を聞く。運転免許を取り立ての彼女が両親を乗せて車を走らせていたとき、突然、ビルから火だるまの人間が落ちてきて、それに目を奪われて事故を起こし、両親は亡くなり、明香里は失明したというのだ。火だるまで落下した男(岡田義徳)は、塁が借金取り立てで追い込んだ相手だった。明香里の両親を死なせ、明香里を失明させた原因が自分にあることを知った塁はショックを受ける。
裏社会にいた頃の塁のボス、佐久間恭介(町田啓太)は、再び塁を地下格闘技の世界に引きずり込もうとする。それは、塁を勝てるはずのない相手(アレックス・ハンター)と戦わせて、組織を抜けた塁に報復するとともに、対戦相手側の組織に花を持たせる策略だった。明香里の視力を取り戻すための手術代が必要だった塁は、地下格闘技に再び身を投じる。体格差の違う相手に苦戦する塁だったが、捨て身のかかと落としで相手を失神させ、逆転勝利。相手組織のボス(般若)の機嫌を損ねた佐久間は、部下の久慈(きゅうじ)(奥野瑛太)を使って塁を車で轢き、ナイフを突き刺して報復する。
2年が経ち、手術が成功して視力を取り戻した明香里は、塁の帰りを待ちながら、陶芸品店「アントニオ」を開いていた。マッサージのボランティアをしている明香里は、入院中の塁にマッサージをするが、塁の顔を見たことがない明香里は、それが塁だと気づかない。明香里に正体を現せない塁は、偽名を使って入院していた。塁は明香里の店に行く。店に明香里はおらず、店員(坂ノ上茜)が対応する。塁は、店に置いてあったオルゴールを聴いて涙する。オルゴールの曲は、明香里の好きだった「椰子の実」だった。店員からその話を聞いた明香里は、その男が塁だと気づき、塁をおいかける。思い出の砂浜にいた塁を見つけた明香里は、塁におかえり、と声をかける。塁はただいま、と答え、二人は抱き合うのだった。

強すぎるキックボクサー。可愛すぎる盲目の女性。手術で全快する視力。作り話感が半端なかった(作り話なんですけども)。明香里に正体を現せないはずの塁が、明香里の来る病院に入院していたり、明香里の店に行ったり、もはや「見つけてください」と言っている状態だし。
また、主役二人以外は、完全に引き立て役で、魅力的な人物は皆無というのも残念だった。シスター役の風吹ジュンは、塁の思いを明香里に伝えるメッセンジャー役でしかなかったし、町田啓太と奥野瑛太は何の背景も持たない記号のような悪役、やべきょうすけは安定のやべきょうすけ役(!)だった。それでも最後のシーンはベタに感動した。

【5段階評価】3

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2024年12月16日 (月)

(2888) リリイ・シュシュのすべて

【監督】岩井俊二
【出演】市原隼人、忍成修吾、伊藤歩、蒼井優、松田一沙(かずさ)、吉岡麻由子、大沢たかお、勝地涼、高橋一生
【制作】2001年、日本

非行に走る中学生を、あるミュージシャンの活動に絡めて描いた青春映画。

中学生の蓮見雄一(市原隼人)は、同じ剣道部に入った星野修介(忍成修吾)と友だちになる。雄一は、修介をきっかけに、リリイ・シュシュという歌手を知る。雄一と修介は、友人とともに、不良がオヤジ狩りで手にした大金を横取りし、夏休みに沖縄旅行に行く。二学期になると修介は、茶髪のクラスメート、犬伏(沢木哲)に嘗められたことにキレてカッターナイフで襲いかかり、犬伏を登校拒否に追い込む。それを機に修介は素行不良になり、雄一はいやいやそれに付き合わされるようになる。
雄一は、リリイ・シュシュのCDを万引きして捕まり、担任の小山内(吉岡麻由子)が彼を引き取る。雄一は修介に呼び出され、万引きをチクったことを理由に仲間に暴行され、自慰を強要される。雄一は、ネットの掲示板でリリイ・シュシュへの熱い思いを書き込みつつ、日常生活では鬱屈していく。
学校で、合唱コンクールが行われる。女子の不良グループのリーダー、神崎すみか(松田一沙)は、ピアノが得意で男子に人気のある久野(くの)陽子(伊藤歩)が注目されることに腹を立て、修介のつるんでいる不良グループに陽子をしめるよう命じる。雄一は、不良グループが待ち受ける廃工場に陽子を連れて行く役をさせられ、陽子は男子たちに強姦される。すみかはそれを楽しそうに傍観し、雄一は悔しさで涙ぐむ。陽子は学校に来ないと思われたが、陽子は丸刈り姿で登校する。
修介はクラスメイトの津田詩織(蒼井優)に売春を強要。詩織の監視役になった雄一は、詩織と親しくなり、学級委員長の佐々木健太郎(細山田隆人(たかひと))に頼まれて詩織との仲を取り持つが、詩織は佐々木を振る。詩織は陽一の聞くリリイ・シュシュに興味を示し、CDを借りる。その後、彼女はスポーツカイトを飛ばしている男性たちに話しかけてカイトに乗って空を飛びたいと話した後、鉄塔から飛び降りて自殺する。
リリイ・シュシュのライブが行われることになり、雄一は一人で出かけるが、修介に見つかり、持っていたチケットを無理矢理交換させられ、さらにコーラを買いに行かされた間にチケットを捨てられてしまう。ライブが終わるまで会場の外にいた雄一は、修介が雄一を適当にあしらって立ち去ると、「リリイ・シュシュがいる」と叫び声を上げる。群衆が混乱しているのに乗じて、雄一は修介の背後に回り、持っていたナイフで修介を刺し殺し、人混みに紛れて逃走する。
陽子は吹奏楽部に入り、シンバルとピアノを担当していた。雄一は放課後、吹奏楽部顧問をしている小山内先生に呼び出され、成績の低下を心配される。隣の部屋では陽子がピアノを弾いていた。小山内先生から、陽子にそろそろ帰るよう伝えてくれと言われた雄一は、ピアノを弾き続けている陽子の後ろで、声をかけるきっかけもなく立ちすくむのだった。

いじめ、万引き、売春、オヤジ狩り、自慰の強要、自殺など、中学生の負の部分をふんだんに取り入れた作品。ネットへの書き込みが随所にちりばめられ、実験的な要素も感じられる内容で、物語自体は正直、退屈だった。
一方で、出演している俳優には目を見張るものがある。当時まだ十代の市原隼人、蒼井優、勝地涼、二十代の高橋一生といった、のちに主役級で活躍する俳優の若い頃が観られるのは楽しい。蒼井優ってこんなに可愛かったんだ、とびっくりした。よく言われるが奈緒に確かに似ていた。

【5段階評価】2

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2024年12月15日 (日)

(2887) カンフー・パンダ

【監督】ジョン・スティーブンソン
【出演】ジャック・ブラック(声)、ダスティン・ホフマン(声)、アンジェリーナ・ジョリー(声)、イアン・マクシェーン(声)
【制作】2008年、アメリカ

カンフーに憧れるパンダの活躍を描いた3DCGアニメ映画。声優陣が豪華なので、ぜひオリジナル音声で楽しみたい。

ラーメン屋の息子、ポー(ジャック・ブラック)は、カンフーの達人を夢見る太ったパンダ。龍の戦士を決める催しが翡翠城で行われることになり、ポーは仕事そっちのけでそれを見に行く。ガラパゴスゾウガメのウーグウェイ師匠(ランドール・ダク・キム)が龍の騎士として指さしたのは、レッサーパンダのシーフー老師(ダスティン・ホフマン)のもとで修行をしているマスター・タイガー(アンジェリーナ・ジョリー)、マスター・ツル(デビッド・クロス)、マスター・モンキー(ジャッキー・チェン)、マスター・ヘビ(ルーシー・リュー)、マスター・カマキリ(セス・ローガン)のいずれでもなく、会場に無理矢理飛び込んだポーだった。
チョーゴン刑務所に入れられていたユキヒョウのタイ・ラン(イアン・マクシェーン)が脱走。タイ・ランはシーフー老師の息子としてカンフーをたたき込まれた達人だが、ウーグウェイ師匠はタイ・ランを龍の戦士に認めず、龍の巻物を渡さなかった。タイ・ランは龍の巻物を手に入れるため、翡翠城を目指す。シーフー老師は、ポーが龍の戦士としてタイ・ランを倒すとは信じられずにいたが、ウーグウェイ師匠は信じる心を持つようシーフー老師に伝え、師匠の座をシーフー老師に委ねて天に召される。マスター・タイガーたち5人は、先回りしてタイ・ランを迎え撃つが、善戦するもタイ・ランに秘孔を突かれ、倒されてしまう。
シーフー師匠は、ポーのたくましい食欲を生かし、食べ物を取り合うような修行でポーを鍛え、ポーは見事に成長する。シーフー師匠はポーに龍の巻物を渡す。しかし、そこには何も書かれていなかった。シーフー師匠は、タイ・ランをここまで育てた自分がタイ・ランを止めると言って、ポーやマスター・ファイブを町の人々ともども逃がすことにし、ポーはラーメン屋に戻る。父親のシナガチョウ、ミスター・ピン(ジェームズ・ホン)はポーの帰還を喜び、新たな商売をしようと明るくポーに話しかける。修行を果たせず落ち込むポーに、ミスター・ピンは、秘密を明かすときが来たと言って、(話の流れからは、ポーがミスター・ピンの実の子ではないと告白するところ(だってパンダと鳥だし)だが、)実は秘密にしている秘伝のスープに秘密の材料などありはしない、特別だと信じるだけでいいんだ、と伝える。それを聞いて、何も書かれていない巻物は自分を信じればいいということだと気づいたポーは、翡翠城に戻ると、シーフー老師の息の根を止めようとしていたタイ・ランに龍の巻物を見せて、タイ・ランを挑発。ポーはタイ・ランと互角の戦いを見せる。タイ・ランの秘孔突きも、ぶよぶよのお腹を持つポーには通じず、ポーは見事にタイ・ランを倒す。ミスター・ピンや町の人々は大喜びし、ポーはシーフー師匠と仲よく肉まんを食べるのだった。

食べ物を取り合いながら修行をする姿は、ジャッキー・チェンの映画でもおなじみ。物語は分かりやすく、先の展開が楽しみになる内容だった。
冒頭にも書いたが、声優陣が豪華。知らずに観たので、思わず観直した。上で挙げた以外にも、渋いダミ声が特徴のマイケル・クラーク・ダンカンや、「ファンタスティック・ビースト」シリーズでマグル(魔法を使えない人間)を演じたダン・フォグラーも声優を担当している。

【5段階評価】4

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2024年12月14日 (土)

(2886) またいつか夏に。

【監督】土屋哲彦
【出演】村上健志、小松悠太、鈴木ちなみ、黒沢かずこ、亘健太郎
【制作】2012年、日本

小学生とフリーターの男との友情を描いた作品。

茨城県筑西市で飲食店のバイトをしている青年、渡辺(村上健志)は、小学校教諭の宮本早紀(鈴木ちなみ)に好意を持っていた。渡辺は、早紀が、転校してきた小学5年生の男子が心を開いてくれないという悩みを友人(松田百香)に話しているのを耳にする。
渡辺は、河川敷にたたずんでいる小学生の男子(小松悠太)を見かける。その子が早紀の言っていた梅田ヒロキだと気づいた渡辺は、ヒロキに話しかけ、一緒に釣りをするようになる。ヒロキは次第に心を開き、学校にも行くようになる。渡辺は、ヒロキに、地元には大きな神輿を担ぐ祭りがあると話す。
しかし、ヒロキは九州に引っ越すことになってしまう。ヒロキは渡辺と別れることになることを悲しみ、神輿が見たかったと言って涙ぐむ。渡辺はヒロキに神輿を見せてやると約束し、地元の人達に神輿を出してほしいとお願いするが、渡辺は人付き合いが苦手で地元に何の貢献もしてこなかった男だったため、口利きを頼まれた先輩(川口真五)も渋い顔をする。それでも渡辺は、ヒロキに神輿を見せたいという張り紙を作って町に貼り、地元の協力をあおぐ。
そして神輿を担ぐ日。神輿の前にはふんどし一丁の渡辺一人がいるだけだった。一人では神輿はびくともせず、渡辺は仕方なく、ふんどし姿で走り出し、駅にいるヒロキのもとに向かう。渡辺はヒロキに、神輿はダメだったと謝る。すると、どこからともなく祭り囃子の音が聞こえてくる。渡辺とヒロキが慌てて駅を出ると、そこには渡辺の頼みを断った地元の人達が大勢、神輿を担いでいた。渡辺の先輩が現れて渡辺の頭をはたき、張り紙の日付が間違っていると指摘。先輩はヒロキのために神輿を世話してくれたのだった。渡辺もはっぴを着て担ぎ手の一人になり、ヒロキは神輿に乗せてもらい、大喜びするのだった。

40分弱の短い作品だが、祭り囃子の聞こえるところは感動的。渡辺は、友だちもおらずひとりぼっちでいるヒロキに、かつての自分を見たのだろう。年の離れた二人の交流がほほえましかった。フルーツポンチのネタの中ではナルシズム全開の役が多い村上だが、本作では見栄っ張りだが内気な青年を好演している。マドンナ役の鈴木ちなみもほどよく絡み、ハッピーエンドだった。BSよしもとの短編にしては珍しく評価は4。

【5段階評価】4

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2024年12月13日 (金)

(2885) ブロウアップ ヒデキ

【監督】田中康義
【出演】西城秀樹、クルクル、吉野藤丸とUFO、永尾公弘とザ・ダーツ
【制作】1975年、日本

昭和のトップスター、西城秀樹の全国ツアーの様子を収めたドキュメンタリー映画。

西城秀樹が20歳のときに行われた「'75 全国縦断サマー・フェスティバル」の様子を収めている。西城秀樹本人やツアースタッフ、ファンのインタビューと、コンサートの様子で構成されている。

楽曲はたっぷり聴かせており、西城秀樹の歌や恋愛への思いを聞くこともできる内容だった。

【5段階評価】2

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2024年12月12日 (木)

(2884) たまえのスーパーはらわた

【監督】上田慎一郎
【出演】白石優愛(ゆあ)、工藤綾乃、西沢仁太、ほりかわひろき、斉藤慎二、太田博久、池田一真、おたけ
【制作】2018年、日本

映画好きの女子高生が地域PR動画を作成する様子を描いた作品。監督は「カメラを止めるな!」(2017)と同じ上田慎一郎。

高校で映画作りをしているスプラッター映画好きの女子高生、浦野玉恵(白石優愛)は、友人の埼田栞(工藤綾乃)をカメラマン、卓球部の隆史(上妻成吾)と貞子(春川桃奈)を役者にしてホラー映画を撮影。しかし、思いが強すぎて一人一人に強烈なダメだしをし、栞の意見にも全く耳を貸さないわがままぶり。役者の二人はやる気を失い、撮影を投げ出して帰ってしまう。
ある日、玉恵は、さいたま市役所の河野(斉藤慎二)から、市のPR動画を制作してほしいと依頼される。河野からなんでもありと言われた玉恵は、サッカーファン同士が殺し合いをして生首でサッカーをするという、とんでもない内容を企画。困る河野に、監督補佐となった映画監督の日暮弘樹(ほりかわひろき)が、さいたま市の商工会の人に地域の魅力を話してもらっては、と助け船を出す。
話し合いに集まったのは、玉恵の父親でうなぎ屋をしている健二(西沢仁太)、盆栽を推す小宮(太田博久)、人形制作を推す岩田(池田一真)。それぞれが自分の話ばかりをして相手の話を聞かず、日暮は黙っているだけ。話し合いを終えた玉恵は、栞に、日暮は監督に向いてないと愚痴を言い、栞を動画作成に誘うが、栞は困った顔で、自分の話ばかりして人の意見を聞かないのは玉恵だ、玉恵は監督に向いていない、と強烈な言葉を浴びせ、走り去る。
落ち込んだ玉恵は、日暮にPR動画作成を諦める、と伝える。すると日暮は持っていた単語帳を玉恵に差し出す。そこには玉恵のいいところが書かれていた。日暮は陰で栞に会って玉恵の話を聞き、玉恵の作った作品を観ていたのだ。やる気を取り戻した玉恵は、人形制作の岩田にうなぎを、盆栽の小宮に人形を、うなぎ屋の健二に盆栽をPRさせるという企画を提案。互いのいいところを学び合い、それをホラー映画調でアピール。最後にはさいたま市民がサッカーコートでにせものの凶器で戦いごっこをする映像を取り入れた斬新なPR動画ができあがるのだった。

ホラー映画の撮影を題材にしたところは、「カメラを止めるな!」(2017)と同じ。安っぽいホラーシーンから始まり、物語が膨らんでいくところも同じ。45分の短編映画だが、ハッピーエンドの楽しい作品だった。公開当時17歳の小柄な白石優愛のミニスカート姿も可愛かった。

【5段階評価】3

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2024年12月11日 (水)

(2883) スリー・リバーズ

【監督】ローディー・ヘリントン
【出演】ブルース・ウィリス、サラ・ジェシカ・パーカー、トム・サイズモア、ロバート・パストレリ、ジョン・マホーニー
【制作】1993年、アメリカ

連続殺人事件を追う警察官の死闘を描いたサスペンス作品。

ピッツバーグ市警の警官、トーマス・ハーディ(ブルース・ウィリス)は、警官一家の生まれで、父親のビンス(ジョン・マホーニー)や叔父のニック・デティロ(デニス・ファリーナ)はもちろん、ニックの二人の息子、つまりトーマスのいとこに当たるジミー(ロバート・パストレリ)とダニー(トム・サイズモア)も警官だった。トーマスは、相棒のジミーの暴行事件を認める証言をしたことで、ジミーは有罪となり、トーマスは警察仲間から白い目で見られていた。
トーマスは警察のパーティに出席するため、父を乗せて車を走らせるが、そこに殺人事件の容疑者を発見したとの無線が入り、トーマスは父とともに犯人の車を追う。激しいカーチェイスの末、トーマスの車は犯人の車を追い詰めるが、二台とも坂を横転し、トーマスは気を失う。トーマスは足に重傷を負い、叔父のニックらに救出される。ニックは、トーマスの父ビンスは犯人に撃ち殺され、しかも犯人は逃走したとトーマスに伝える。トーマスは父の遺体にすがりついて涙する。
ジミーの裁判に出席するため、松葉杖を突いて裁判所にやってきたトーマスは、ニックから、父ビンスを撃ち殺した犯人が捕まったと聞かされる。犯人はケッサー(ロバート・グールド)という小男で、チケイニス(ギャレス・ウィリアムズ)という男がケッサーの死体遺棄を目撃したというのだ。トーマスはそれが信じられなかった。裁判が始まるが、刑務所行きが確実なジミーは裁判に出廷しておらず、橋の上で自殺を図ろうとしていた。説得に来ていたニックとダニー、トーマスの目の前で、ジミーは飛び降り自殺してしまう。
2年後、トーマスは水上警察官になっていた。新たな相棒にジョー・クリスマン(サラ・ジェシカ・パーカー)という女性が就く。トーマスの管轄内でトーマスの知る女性が次々と殺され、川に捨てられる。それはまるで、トーマスに発見されるのを狙っているかのようだった。トーマスはチケイニスの出入りする酒場に向かい、チケイニスに銃を突きつけてなぜ偽証したか吐かせようとするが、ジョーに制止される。自暴自棄になるトーマスをジョーは放っておかず、二人は恋人同士となる。
トーマスを疑うニックは、トーマスを審問会にかけることにする。審問会にエミリー・ハーパー刑事が呼ばれる。そこに現れたのはジョーだった。ジョーはペンシルバニア州警察内務調査局員だったのだ。ジョーは、トーマスが殺人事件に固執していたと証言するが、トーマスがチケイニスに銃を突きつけて脅し、ジョーがトーマスを制止したことを確認されると、ジョーは、自分はトーマスを援護したと偽証する。
審問会の後、帰宅したジョーは、何者かに襲われてしまう。彼女が危険だと察知したトーマスは、死体遺棄の場所を手がかりに、昔、自分とジミー、ダニーが仲よくしていた小屋に向かう。そこにはダニーがいた。トーマスはダニーにジョーはどこか尋ねるが、突如、何者かに襲われる。真犯人はジミーだった。彼は生きていたのだ。ジミーはトーマス、ダニー、ジョーを後ろ手に手錠を掛けて椅子に拘束し、得意そうにトーマスへの恨みを話し始める。そこにニックが現れ、ジミーに銃を突きつけ、二人で自首しようとジミーを説得する。トーマスの父親ビンスを殺したのは、ニックだった。トーマスとビンスの乗った車が、犯人であるジミーの車を追って二台の車が横転したとき、現場に駆けつけたニックは、車から這い出てきた殺人犯が、息子のジミーであることを知って驚く。ニックはジミーを逮捕しようとするができず、ジミーを逃がすと、車から這い出してジミーを追おうとしたビンスを撃ち殺したのだった。ニックは今度こそジミーに銃を発砲するが、防弾チョッキを着ていたジミーはニックに反撃。隙を突いてダニーとトーマスが椅子ごとジミーに体当たりし、トーマスは小屋の外に出る。小屋に警察が集まったため、ジミーはボートで逃げるが、トーマスも水上警察のボートに乗り込んでジミーを追跡。最後は鉄橋に逃げ込んだジミーを捕らえて川に飛び込み、ジミーの持っていたスタンガンを奪ってジミーの口に押し込むと、ジミーは防弾チョッキの重さで川底に沈んでいった。
トーマスは汚名を返上し、ジョーと抱き合う。トーマスは父親の墓に事件の解決を報告。その後ろにはジョーの4歳の連れ子サラがおり、トーマスは、父親の墓に、孫だよと紹介するのだった。

連続殺人事件の謎を追う推理ものの作品。ジョーが捜査員だったといったどんでん返しも入れながら、面白い展開の作品だった。知能犯との戦いが最後に肉弾戦になるというのは、よくある展開ではあったが。

【5段階評価】3

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2024年12月10日 (火)

(2882) さかなのこ

【監督】沖田修一
【出演】のん、井川遥、さかなクン、柳楽優弥、夏帆、磯村勇斗、岡山天音、宇野祥平
【制作】2022年、日本

魚好きの少年がテレビで活躍するまでを描いた作品。さかなクンの自叙伝を原作としている。

さかなが大好きな少年、ミー坊(西村瑞樹)は、自由に育てる母親(井川遥)のもとで、魚好きのまま育つ。中学生になったミー坊(のん)は、勉強はできなかったが、学校の不良たちも仲間にしてしまう奔放さで、友だちを増やしていく。総長(磯村勇斗)やカミソリ籾(岡山天音)との縁で魚のイラストを描く仕事に付くようになり、テレビ局のディレクターになった幼なじみのヒヨ(柳楽優弥)からテレビ出演の話をもらい、ミー坊はテレビで活躍するようになり、子ども達の人気者になるのだった。

少年ミー坊を女性が演じるという珍しい手法を採っている。映画好きとしては、男に見える友人が実は女だった、のようなどんでん返しが来るのかと思ったりしたが、性別を逆転しているのはミー坊だけだった。さかなクンの半生を描いた実話に基づく作品かと思いつつも、さかなクン自身がハコフグ帽をかぶった「ギョギョおじさん」として出てくるので、フィクション仕立てということだろう。加賀屋の賀屋壮也が水族館の職員役で出演している。

【5段階評価】4

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2024年12月 9日 (月)

(2881) CLASSMATE

【監督】ハビエル・マルコ
【出演】ジミー・ショウ、メリーナ・マシューズ、アナ・アダムズ
【制作】2016年、スペイン

バスで出会った二人の男女のやりとりを描いた作品。10分の短編映画。

バスに乗った男性(ジミー・ショウ)が、乗ってきた女性(メリーナ・マシューズ)に、小学校の同級生だったジョンだ、と自己紹介する。女性は見覚えがなく、自分はエマだと名乗るが、ジョンはもちろん覚えていると返す。ジョンはエマに職業を聞き、エマが土木技術者だと答えると、ジョンはホームレスであることをほのめかす。ジョンはエマに無理矢理思い出話をする。エマは何も思い出せないが、相づちを打つだけ。エマはバスを降り際、ジョンにホテル代にと、お金を渡す。バスが発車すると、ジョンは次の女性(アナ・アダムズ)に目を付け、声をかけるのだった。

要は詐欺を働く男の話。何のどんでん返しもない作品だった。

【5段階評価】2

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2024年12月 8日 (日)

(2880) プリンス/パープル・レイン

【監督】アルバート・マグノーリ
【出演】プリンス、アポロニア・コテロ、モリス・デイ、ジェローム・ベントン、ビリー・スパークス、クラレンス・ウィリアムズ3世
【制作】1984年、アメリカ

バンドのリーダーの挫折と栄光の過程を描いた作品。

ライブハウス「ファースト・アベニュー」に出演しているバンド、ザ・レボリューションのギタリスト兼メインボーカルのキッド(プリンス)は、ライバルのザ・タイムに人気を奪われており、バンドのメンバー、ウェンディ(ウェンディ・メルボワン)、リサ(リサ・コールマン)との関係もぎくしゃくしていた。彼の父親(クラレンス・ウィリアムズ3世)は母親(オルガ・カルラトス)にDVを働いており、キッドは心を痛めていた。歌手志望のアポロニア(アポロニア・コテロ)と出会ったキッドは、彼女と愛し合うようになる。キッドはアポロニアをメンバーに入れようと考えるが、ザ・タイムのボーカル、モリス(モリス・デイ)がアポロニアを引き入れ、彼女をアポロニア6というガールズグループとしてデビューさせる。キッドはアポロニアを取り返そうとするが、二人の関係は壊れてしまう。
キッドの父親が拳銃自殺を図り、自暴自棄になったキッドは地下の部屋で暴れるが、そこに、父親が書き残していた楽譜を見つける。キッドは不幸を乗り越え、リサとウェンディが作曲した「パープル・レイン」をライブで披露。静かに聞いていた客たちは感動し、大きな拍手が起きる。客に受けなければ首にすると言っていたオーナーのビリー(ビリー・スパークス)も曲に乗り、ライブハウスは興奮に包まれる。キッドとアポロニアの仲も復活するのだった。

序盤の物語はものすごく退屈で、全く面白くないのだが、パープル・レインのシーンだけは感動した。アポロニアが上半身裸のヌードになって湖に飛び込むというサービスショットがある。ザ・レボリューション、ザ・タイム、アポロニア6は実在したバンドで、本人が出演している。

【5段階評価】2

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2024年12月 7日 (土)

(2879) 極道の妻たち 危険な賭け

【監督】中島貞夫
【出演】岩下志麻、工藤静香、原田龍二、石橋凌、かたせ梨乃、中尾彬、原田大二郎、北村和夫、火野正平
【制作】1996年、日本

極道の妻たち」シリーズ第9弾。「極道の妻たち 赫い絆」(1995)の続作。次作は「極道の妻たち 決着」(1998)。

坂松組のかしらを務める霊代(南田洋子)が身を引くことを決め、四代目を坂松組若頭の海原(かいばら)泰明(原田大二郎)と佐渡組組長の佐渡拓磨(北村和夫)が争うことになる。軍資金の欲しい佐渡は、北陸の女帝と呼ばれる洲崎香矢(すざきかや)(岩下志麻)に金を借りに行き、香矢は快く金を貸す。香矢が味方に付いたことで、海原有利と思われた跡目争いは、佐渡有利に傾く。
香矢は、一人娘の香織(工藤静香)を堅気の人と結婚させようと見合いの相手を熱心に探す。ところが香織は、出所したばかりの村木新(しん)(原田龍二)に出会い、彼に興味を持つ。新は、神鳥(かんどり)組の組長、神鳥亮平(石橋凌)の妻、静尾(しずお)(かたせ梨乃)の弟。新は極道の道を進もうとするが、亮平に断られ、香織と堅気として生きていくことにする。
佐渡は滋賀で決起集会を開くが、海原側に付く坂松組幹部の市元(中尾彬)の抱えるヒットマン、崎津清(火野正平)がパーティ会場で佐渡を殺害。同じく海原側に乗った神鳥亮平は、佐渡だけではなく香矢も消さなければならないと考え、香矢に銃を向けるが、香矢に会いに来ていた新が割って入り、亮平は立ち去る。亮平が香矢に銃を向けたことを知った市元は、亮平を暗殺。静尾は亮平の亡骸を抱いて号泣する。
四代目争いは海原に決まる。洲崎組に捕らえられた崎津は、香矢に寝返り、1億円の報酬をもとに海原を暗殺。跡目候補だった海原と佐渡の両方がいなくなり、お鉢が回ってきた市元は組事務所の廊下で一人ほくそ笑むが、そこに夫を市元に殺された静尾が現れ、市元を銃で撃ち殺し、復讐を遂げる。香矢は誰か(おそらく静尾)からの電話を受け、指示を出すと、一人、抹茶をすするのだった。

主人公の香矢が組長に推す佐渡拓磨が、あまりカリスマ性のあるキャラクターに見えず、感情移入が難しかった。また、本作では主役の香矢は最初から夫を亡くしており、復讐の見せ場が特になく、復讐するのはかたせ梨乃演じる静尾。ラストシーンもなんだかよくわからなかった。本作で濡れ場を演じるのは新の一時的な恋人役の及川麻衣だった。
香矢が北海道で佐渡を出迎えた部屋のランプは、前作の堂本組の事務所に置かれているものと同じだった。ちょっとした使い回し。

【5段階評価】2

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2024年12月 6日 (金)

(2878) 極道の妻たち 赫い絆

【監督】関本郁夫
【出演】岩下志麻、宅麻伸、萩原流行、赤坂晃、島木譲二、鈴木砂羽、内田朝雄、渡辺裕之、毬谷友子、古田新太
【制作】1995年、日本

極道の妻たち」シリーズ第8弾。「新 極道の妻たち 惚れたら地獄」(1994)の続作。次作は「極道の妻たち 危険な賭け」(1996)。

大阪のヤクザ、堂本組初代組長、堂本増吉(内田朝雄)は、組長の座を、娘のきわ(岩下志麻)の夫、久村(くむら)修一郎(宅麻伸)に譲る。襲名披露の宴のさなか、きわは、堂本組と敵対する三東会の幹部、後藤信治(古田新太)に襲われ、止めに入った修一郎が三東会の組員を射殺。その場にいた村上徳一(渡辺裕之)は、組長になったばかりの修一郎をかばい、犯人役を買って出る。村上は12年の懲役、そして後藤の目にガラス片を突き刺して負傷させたきわも、5年服役する。きわは、三東会に被害を与えた自分の存在が修一郎の邪魔にならないよう、修一郎と離婚。修一郎はホステスだった眉子(鈴木砂羽)と再婚する。出所したきわは堂本組に戻らず、東京で堅気となる。
きわを連れ戻す役目を与えられた堂本組の若手組員、菅井宣生(のぶお)(赤坂晃)は、きわのアパートを尋ね当て、スーパーで働くきわにつきまとう。きわは宣生に愛着を感じ、家に招き入れ、シャブに手を出している宣生を厳しく叱る。きわを疎んじる宣生だったが、早くに親を失った宣生は、きわを母親のように感じるようになる。
修一郎は、関空近くの土地にドリームランドというレジャー施設を整備する計画に命を賭けて取り組んでおり、地上げのために先代の増吉が持つ土地の権利を譲ってほしいと増吉に頼むが、増吉は断る。眉子は入院中の増吉の寝込みを襲い、暗殺する。増吉は、自分の土地の権利を村上に譲るという手紙を遺していた。修一郎はきわに土地の権利を譲ってほしいと頼むが、きわもそれを断る。今度は眉子がきわの家に現れ、土下座して土地の権利書を求める。それでも首を縦に振らないきわに、眉子は包丁で斬りかかり、二人はもみあいになる。眉子が全身に入れ墨をしていることに気づいたきわは、眉子に権利書を渡す。しかし、政権が変わり、ドリームランドの計画は棚上げになってしまう。首が回らなくなった修一郎は、買収した土地の権利を30億で三東会の組長、後藤修造(萩原流行)に売り渡すと、堂本組を解散し、身を隠す。堂本組の幹部の一人、兵藤明(長谷川初範)は三東会に寝返り、妻の美佐(佳那晃子)は夫の前で組長の修造に寝取られる。美佐は、亭主に尽くせと助言したきわに、亭主につくすことができなかったと詫びる手紙を遺し、手首を切って自殺する。修一郎も乗っていた車の爆発で焼死。
宣生は、きわから足を洗えと言われながらも三東会に入ることにするが、三東会がシャブの凌ぎをしているのを見て、それを妨害。そこに現れた修造に斬りかかろうとするがナイフを奪われ、逆に半殺しにされてきわの家の玄関に放置される。宣生はきわの腕の中で息を引き取る。堂本組は壊滅状態となり、修造は、癒着している刑事の橋爪(六平直政)と、三東会の躍進を祝う宴会を開く。きわは、宴会の踊り手に扮して宴会場に現れ、サブマシンガンで修造や橋爪をはじめ、その場にいた三東会の組員を皆殺しにする。
きわは、修一郎との思い出の場所、エキスポランドに行く。そこに死んだはずの修一郎が現れる。脱獄した村上に自分のロレックスの腕時計をはめて自分の死体代わりにしたのだろう。きわは、子分たちを見殺しにした修一郎を撃ち殺し、けじめを付けると、逮捕される。そのニュースが流れる中、眉子は若い川瀬稔(目黒大樹(だいじゅ))を連れて、しぶとく海外を飛び回ることにするのだった。

前作同様、極悪非道の(極道なんですけども)敵のヤクザの仕打ちに耐えた主人公が、最後に復讐を果たすという王道のストーリー。茶番劇のような浮世離れした話ではあるが、美佐が堂本組の妻たちに別れを告げるシーンや、宣生が息を引き取るシーンはけっこう泣けた。鈴木砂羽のヌードシーンが2回あり、女同士でつかみ合いの喧嘩をするシーンでは、染谷まさ美もおっぱい丸出しになる。お約束。
作中、いかにもスポンサーになりましたという形で、ラーメンチェーンの天下一品が登場。なぜか中にいる客の一人は松方弘樹だった。きわが東京で住むアパートの窓から見えるネオンサイン(「CLUB Hanabusa」だろうか)は、前作の侠和会のクラブのネオンサインと同じ。よく言えばオマージュ、悪し様に言えば使い回しだったが、シリーズファンとしては面白いネタだ。

【5段階評価】4

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2024年12月 5日 (木)

(2877) 新 極道の妻たち 惚れたら地獄

【監督】降旗康男
【出演】岩下志麻、山下真司、世良公則、中条きよし、斉藤慶子、川島なお美、あいはら友子、清水宏次朗、小西博之
【制作】1994年、日本

極道の妻たち」シリーズ第7作。「新 極道の妻たち 覚悟しいや」(1993)の続作。次作は「極道の妻たち 赫い絆」(1995)。

大阪ミナミを仕切る御蔵(みくら)組の組長、村木俊作(高島忠夫)が、ヘリに乗った複数のヒットマンに銃撃されて命を落とし、妻の芙由(ふゆ)(岩下志麻)も負傷して入院する。敵対する広域暴力団、侠和会のしわざだった。御蔵組の幹部、権藤啓太(世良公則)や輪島武司(清水幸太郎)、野田哲男(小西博之)らは侠和会への復讐を主張するが、芙由は夫の死に涙しながらも、政財界とからむ100億円の利権を組のものとするため、もめ事を禁じる。それにもかかわらず、御蔵組の賭場の若い者(赤坂晃)が侠和会の枝の辰巳組のチンピラ(志賀勝)に因縁を付けられて相手を撃ち殺してしまったため、芙由は新谷清二(山下真司)の妻、斎子(斉藤慶子)一人をおともに連れて侠和会三代目の坂本重秋(中条きよし)のもとに向かい、3,000万円を差し出して詫びを入れる。重秋の妻、英子(あいはら友子)は指を詰めろと言い寄り、芙由は堂々とした態度で小指を詰める。
芙由を恐れる英子は芙由の殺害を指示。芙由の影武者役をした志津江(中野みゆき)が、病院を出ようとしたところを銃撃され、死亡。志津江の夫、哲男は怒りを制御しきれず、侠和会のナンバー2、加納修示(渡辺哲)を殺害し、自らも命を落とす。斎子とともに身を隠していた芙由は、建設大臣になった神辺(かんべ)に隠密で会おうとするが、御蔵組による加納殺害事件が表沙汰になったため、密会はふいになり、利権は侠和会傘下の談合屋に奪われてしまう。芙由の居場所を知らない侠和会は、斎子と清二を捕らえ、芙由を殺さないと清二を殺すと斎子を脅す。隠れ家に戻った斎子は、芙由を車に乗せると、山道で車を止めて芙由に銃を向ける。後ろには侠和会の車が付いてきており、後部座席には組員に挟まれた清二が座らされていた。事情を悟った芙由は自分の負けを悟り、車を降りて斎子に自分を撃てと命じるが、斎子は撃てず、銃声だけを響かせる。車に乗っていた侠和会ナンバー3の菊地(安岡力也)は、山の中に倒れている芙由を確認すると、清二と斎子を車で行かせ、後ろからダンプカーで二人の乗った車を崖から突き落とす。車は炎上し、清二と斎子は命を落とす。
失意の中、一年を過ごした芙由は、組の再起のため、生き残っている啓太に隠し資金を託そうとするが、啓太もまた、町なかで侠和会の凶刃に倒れる。芙由は、侠和会の二代目、南雲(なぐも)誠吾の三回忌の法要の会場に、式衆(法会を務める僧侶)の一人に扮して入り込み、サブマシンガンで、列席していた重秋と英子、菊地を銃殺。口上を述べて、厳重な警戒体制を取る警官隊の方に悠然と歩き出すのだった。

悪役の極悪非道に耐えに耐えた主人公が、最後に復讐を遂げるという、典型的なヤクザ映画。映像の派手さばかりを狙った大味な前作に比べたら、シンプルな展開ながらも、はるかにできがよかった。川島なお美と世良公則の濡れ場が見所の一つ。世良公則は1作目(1986)でも、かたせ梨乃のたわわなおっぱいを思う存分揉んでおり、なかなかの役得である。

【5段階評価】3

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2024年12月 4日 (水)

(2876) 恋人たち

【監督】橋口亮輔
【出演】篠原篤、成嶋瞳子、光石研、池田良、安藤玉恵、黒田大輔、リリー・フランキー、木野花
【制作】2015年、日本

妻を失った男、夫と姑に冷たくされる女、同性愛者の弁護士らの生き様を描いた群像劇。

弁当屋で働く瞳子(成嶋瞳子)は、夫の指示でコンドームを買いに行って性処理をするような存在で、愛想の悪い姑(木野花)の冷たい態度にも耐えていた。彼女は近所の鶏肉業者の藤田(光石研)と知り合い、不倫の関係を持つ。藤田は瞳子に、一緒に鶏卵業をしないかと持ちかけるが、それは嘘だった。家に帰った瞳子は、夫から避妊具なしでいいと言われ、妻として扱われたことを感じる。
同性愛者の弁護士、四ノ宮(池田良)は、階段で突き飛ばされて足を骨折。妻の悦子と子どもを連れて見舞いにも来てくれた友人、聡(山中聡)から、子どもに手を出していると疑われる。四ノ宮は聡に弁明しようと電話するが一方的に切られ、切れた電話に向かって学生の時から好きだったと話し続ける。
妻を通り魔に殺された篠原アツシ(篠原篤)は、心神喪失状態にあったと認定されて生き延びている犯人への恨みを募らせ、なけなしの収入を弁護士の四ノ宮に託して訴訟を起こそうとするが、四ノ宮は自分の経歴に傷が付くと言ってアツシの依頼を断る。自暴自棄になったアツシは自死を試みるが果たせない。かつての左翼活動で左腕を失った経歴を持つ同僚の黒田(黒田大輔)は、アツシに優しく接し、アツシは笑顔を取り戻し、青い空を見上げるのだった。

主役と思える人物は三人ほどいる群像劇。「恋人たち」というタイトルだが、アツシや瞳子に恋人がいたかというと、あまりそうは思えない。とは言え、なんだか引き込まれる作品だった。橋口亮輔監督作品らしく、ゲイの人物も登場していた。

【5段階評価】3

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2024年12月 3日 (火)

(2875) ハッシュ!

【監督】橋口亮輔
【出演】田中誠一、高橋和也、片岡礼子、つぐみ、冨士眞奈美、光石研、秋野暢子、斉藤洋介
【制作】2001年、日本

様々な性癖を持つ若者達を描いた作品。

ペットショップで働く長谷直也(高橋和也)は、土木研究所で働く栗田勝裕(田辺誠一)と同棲している。歯科技工士の藤倉朝子(片岡礼子)は二度の中絶経験がある性に開放的な女性。筋層内筋腫を患い、医者(岩松了)に原因を尋ねると「ヤリダコとも言う」と言われる。ある雨の日、直也と勝裕は蕎麦屋で昼食をとる。同じ店にいた朝子は、直也と勝裕はゲイのカップルだと見抜く。食事を終えた朝子は、傘がなくなったと店員(加瀬亮)に文句をつけるが、店員は取り合わない。支払いを済ませた勝裕は、いらない傘だから、と言って朝子に持っていた傘を譲る。帰宅した朝子は、家に勝手に入り込んでいた無神経な若い男マコト(沢木哲)を傘で殴って追い返し、傘を壊してしまう。朝子は傘を買い直し、勝裕の職場に届けに行く。朝子は、勝裕がゲイでパートナーがいることを知りながら、子どもが欲しいと勝裕に精子の提供を求める。勝裕は、自分が父親になる可能性に気づく。直也は、勝裕が朝子と会っていることを歓迎せず、勝弘と別れる可能性を口にする。
友人の結婚式のため実家に帰った勝裕は、兄の勝治(かつじ)(光石研)と妻の容子(秋野暢子)に会う。二人は冷え切った関係だった。直也に再会した勝裕は、改めて朝子と本気で向き合うと言い、直也もそれを認める。三人は家で食事の準備をしたり、ボーリングをしたり、交流を深める。
ある日、勝治夫婦と娘のカオル(真柄佳奈子)が家にやってくる。勝弘と同じ職場で彼に思いを寄せる永田エミ(つぐみ)が、勝裕が朝子という精神病歴や中絶経験を持つ女性と関係を持っているという手紙を勝治に送ったためだった。さらに、以前、エミから相談を受けていた直也の母親、克美(冨士眞奈美)も家に来る。勝裕、直也、朝子を前に、勝治は、勝裕や朝子に気遣う姿勢を見せるが、容子は朝子を毛嫌いし、栗田家に朝子の血が混じり、その子が相続の可能性を持つことを拒絶。子どもがいる未来に希望を託す朝子に、容子は、母親になる資格はない、ろくな子どもにならない、と暴言を吐く。耐えていた朝子は容子につかみかかろうと興奮して気を失い、勝治は思わず容子に手を上げてしまう。勝治は勝裕が直也と付き合うことを認めて帰っていく。家族たちが去った後、朝子は勝裕と直也に謝罪して帰る。朝子が気になった勝裕と直也は、食料をたっぷり買い込んで朝子の家に出向く。家に閉じこもっていた朝子は、ドアの外から声をかけてくる二人の気遣いに涙ぐむ。二人が帰宅の途に就くと、勝裕にエミからの連絡が入る。エミはプレゼントのネクタイを持って勝裕に改めて接近する。彼女の思いを退けながらも話を聞いてやろうとする勝裕を見て、直也は勝裕を無理矢理家に連れ帰る。直也ははっきりと拒絶しない勝裕の態度を責めるが、勝裕はそうできないのが自分だ、と座り込む。直也は優しく勝裕の頭をなでる。そこに容子から電話があり、勝治がバイクで頭を怪我したと告げられる。大事には至らないと思ったのもつかの間、勝治は死んでしまう。河川敷で泣き崩れる勝裕を、朝子と直也が慰める。
朝子が引っ越しし、手伝いをした勝裕と直也は朝子と鍋を囲む。朝子は長いスポイトを二つ買ってきていた。朝子は一人っ子はかわいそうだから勝裕との子ができたら直也との子も作ると言い、三人は吹き出すのだった。

二十才の微熱」(1993)や「渚のシンドバッド」(1995)同様、ゲイを扱った橋口亮輔監督作品。凝ったシナリオによって、主要な登場人物の人格が描かれる。また、脇役の一人一人も、全くの人畜無害だったり、特徴的な性格のない単なる説明役ということはなく、どことなく毒の部分、歪んだ部分を秘めた存在として丁寧に作られている。勝裕の一番の理解者で人格者として描かれている勝治すら、妻に対して冷たく無神経な言葉を放つ側面を見せるし、その子どもカオルも、ただの無邪気な少女ではなく、大人のゴシップに顔を突っ込みたがる性格を垣間見せる。ちょっと長いが、これまで観た橋口亮輔作品の中では出色だった。加瀬亮や佐藤二朗(勝裕の同僚役)がちょい役で出演している。

【5段階評価】4

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2024年12月 2日 (月)

(2874) バウンド

【監督】リリー・ウォシャウスキー、ラナ・ウォシャウスキー
【出演】ジーナ・ガーション、ジェニファー・ティリー、ジョー・パントリアーノ、リチャード・C・サラフィアン、バリー・キベル
【制作】1996年、アメリカ

レズビアンの二人の犯罪計画を描いた作品。「マトリックス」の監督ウォシャウスキー兄弟(姉妹か?)が初監督を務めている。

マンションの部屋の清掃・修理を請け負った前科持ちの女性、コーキー(ジーナ・ガーション)は、隣に住む女性バイオレット(ジェニファー・ティリー)から誘惑され、関係を持つ。バイオレットがともに暮らしているシーザー(ジョー・パントリアーノ)はマフィアで、シェリー(バリー・キベル)という男を拷問にかけて200万ドルを手に入れる。バイオレットは、コーキーと共謀して200万ドルを盗む計画を立てる。手先の器用なコーキーが、バイオレットの手引きでシーザーの部屋に潜入し、スーツケースにしまわれた200万ドルを持ち出すというもの。200万ドルの入手は成功。札束が新聞紙に変わっていることを知ったシーザーは、マフィアの追求を恐れてシーザーが逃げるというコーキーとバイオレットの予想に反し、犬猿の仲のジョニー(クリストファー・メローニ)が、自分を陥れるために金を盗んだということにしようと画策。ジョニーと、父親のジーノ・マルゾーニ(リチャード・C・サラフィアン)が金を受け取りに来ると、シーザーはあえて200万ドルの代わりに新聞紙の束が入ったスーツケースをジョニーに開けさせ、ジョニーの罠だと言い張ってジーノとジョニーを撃ち殺す。
シーザーは通報を受けた警官をやりすごし、バイオレットを連れてジョニーの家で金を探すが見つからない。シーザーの家に戻ったバイオレットは、シーザーの目を盗んでコーキーに電話して指示を仰ぐが、シーザーに気づかれてしまう。シーザーはコーキーを捉え、金の場所を吐かせる。そこに親玉のミッキー(ジョン・P・ライアン)がやってくるが、バイオレットの機転でミッキーを追い返す。シーザーはコーキーの部屋にある金を取りに行くが、バイオレットがシーザーを撃ち殺す。コーキーとバイオレットは大金を手に入れ、車の中で口づけを交わすのだった。

同性愛の女性二人の成功譚。男物のパンツを穿く男性的なコーキーと、豊満な肢体で女性的なバイオレットという対照だが、二人の濡れ場ではバイオレットはもちろん、コーキーも豊かな胸を露わにして女性的な魅力も見せていた。血糊はいかにも作り物という陳腐さだった。悪役のシーザーを演じたジョン・パントリアーノは、サム・ニールを悪い奴にしたような顔だった。

【5段階評価】3

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2024年12月 1日 (日)

(2873) 鉄砲玉の美学

【監督】中島貞夫
【出演】渡瀬恒彦、森みつる、杉本美樹、川谷拓三、小池朝雄
【制作】1973年、日本

鉄砲玉になったチンピラの末路を描いた作品。

風俗嬢のよし子(森みつる)のひもになっているチンピラ、小池清(渡瀬恒彦)は、天祐会から鉄砲玉になれという指令を受け、拳銃と100万円を手に宮崎に飛ぶ。南宮会の杉町(小池朝雄)の店で暴れろと命令された清は、杉町にいちゃもんを付けるが、杉町は清を大人の対応で受け流す。清は杉町から田中潤子(杉本美樹)という女をあてがわれ、享楽の日々を過ごす。清は24回目の誕生日を迎え、ホテルの部屋で潤子に料理を振る舞うため、厨房で料理を作って部屋に持って行くが、潤子はいなくなっていた。そこによし子が現れ、天祐会が宮崎に戦争を仕掛けるのをやめたと聞く。天祐会から大阪に戻れと言われた清は、潤子と行こうとしていた霧島旅行を実現するため、以前、車でレイプされそうになっていたところを助けた律子(碧川ジュン)を誘いに行くが、清を恐れていた律子は部屋に警察を呼んでいた。興奮した清は刑事に発砲してしまい、清も腹を撃たれる。清はそのまま霧島行きの観光バスに乗り込み、息絶えるのだった。

清が宮崎に何をしにいったのかよくわからないまま終わってしまう内容だった。女性のヌードはなんだかいろいろ出てくる昭和っぽい作品。

【5段階評価】2

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