(2728) 許されざる者
【監督】ジョン・ヒューストン
【出演】オードリー・ヘップバーン、バート・ランカスター、オーディ・マーフィ、ジョセフ・ワイズマン
【制作】1960年、アメリカ
先住民族と闘う家族を描いた作品。クリント・イーストウッド監督の「許されざる者」(1992)と同じ邦題で、どちらも西部劇だが、内容は全く別物。
レイチェル・ザカリー(オードリー・ヘップバーン)は、父親ウィリアムを亡くしており、母親のマティルダ(リリアン・ギッシュ)、兄のベン(バート・ランカスター)とともに牧場で暮らしていた。レイチェルはウィリアムとマティルダの実の子ではなかったが、ザカリー家の娘として暮らしていた。レイチェルは、サーベルを持った男、エイブ・ケルシー(ジョセフ・ワイズマン)と出会う。彼は、レイチェルがマティルダの実の娘ではないことを知っていた。マティルダはケルシーを銃で追い返す。
ある日、ザカリー家の敷地に先住民族のカイオワ族が3人で現れ、その一人、ロスト・バード(カルロス・リバス)が3頭の馬を差し出し、レイチェルは自分の妹だから返してくれと言ってくる。ベンは拒否し、彼らを追い返す。レイチェルは、チャーリー(アルバート・サルミ)からプロポーズされ、それを受け入れるが、チャーリーはカイオワ族に襲われ、殺される。チャーリーの母ヘイガー(ジューン・ウォーカー)は、カイオワの血が流れているレイチェルのせいだとレイチェルをののしり、レイチェルはショックを受ける。
ケルシーは捕らえられ、馬に乗った状態で首に縄をかけられる。ケルシーは、過去のできごとを語る。かつてケルシーは、ウィリアムとカイオワ族を襲撃。そこでカイオワ族の赤子を見つけ、ウィリアムは殺さずに自分の子として育て始める。ケルシーも息子のアーロンをカイオワ族にさらわれたため、ウィリアムの赤子と引き換えに息子を取り戻したいとウィリアムに頼んだが、ウィリアムは拒否。アーロンはさらわれたままだと言う。ベンは、父が言っていたのは、アーロンとレイチェルの両親はカイオワ族に殺され、息子の死を信じないケルシーがレイチェルを引き渡せと言ったのだと語る。ケルシーは、赤子の体にあったカイオワ族の化粧を洗い落としたマティルダが真相を知っていると語ると、マティルダはケルシーの乗った馬をけしかけ、ケルシーを首吊りにする。家に戻ったマティルダは、ケルシーの言っていたことは本当だと白状する。
ザカリー一家の家に、再びカイオワ族のロスト・バードが2人のお供を連れて現れる。レイチェルは家を出ていこうとするが、ベンはレイチェルを行かせず、弟のアンディ(ダグ・マクルーア)に一人を殺せと命令。アンディは仕方なく、平和の合図を示しているカイオワ族の一人を撃つ。カイオワ族は一度引き返すと、総攻撃をかける。ベンらは家にこもって銃で応戦するが、マティルダが命を落とし、ついに貯蔵室に追い込まれる。そこに次男のキャッシュ(オーディ・マーフィ)が助けに現れる。貯蔵室にロスト・バードが現れ、レイチェルの前に立つが、レイチェルはロスト・バードに銃弾を浴びせ、ロスト・バードは死亡。レイチェルは血のつながらないベンと愛を誓いあうのだった。
タイトルの許されざる者。本作で許されざる者は誰か。ケルシーなのか、カイオワ族なのか。そうは思えない。許されざる者は、ウィリアムであり、マティルダであり、ベン、そして、実の兄かもしれない無抵抗の男を射殺したレイチェルだろう。ベンとレイチェルが結ばれて幸せに暮らしました、めでたしめでたし、とはとても思えない内容だった。
また、カイオワ族の襲撃シーンもひどかった。大勢でザカリー宅に襲い掛かり、一家を惨殺かと思いきや、ザカリーの家の周りを何の攻撃もせずにぐるぐる馬で走り回るだけで、ザカリー家に撃たれるたびに死んでいく。ベンが、カイオワ族のまじないに対抗して、ピアノを家の外に持ち出すと、カイオワ族は無防備なまま一生懸命ピアノを壊し始め、ザカリー家のかっこうの標的にされて死んでいく。わが身を守る概念がないかのような描き方。火攻めにすればいいじゃん、と思ったら、なんとベン自身が家の屋根に乗った牛を追い払うため自ら家に火を放ち、貯蔵庫にこもって家が全焼。万事休すと思ったら味方がひとり来ただけでカイオワ族は敗走。ご都合主義もはなはだしい。非常に後味の悪い作品だった。
オードリー・ヘップバーンが唯一出演した西部劇という珍しい作品。しかもその役が先住民というのだから、二重の珍しさだった。
【5段階評価】2
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