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2024年7月

2024年7月31日 (水)

(2750) ハイジ アルプスの物語

【監督】アラン・グスポーナー
【出演】アヌーク・シュテフェン、イザベル・オットマン、ブルーノ・ガンツ、クィリン・アグリッピ
【制作】2015年、スイス、ドイツ

ヨハンナ・シュピリの「アルプスの少女ハイジ」の実写映画化作品。

両親を亡くした少女ハイジ(アヌーク・シュテフェン)は、デーテ叔母さん(アンナ・シンツ)に連れられ、山奥の小屋に一人住むアルムおんじ(ブルーノ・ガンツ)とともに暮らすことになる。はじめは断るアルムおんじだったが、素直で純朴なハイジを受け入れる。ハイジは山羊飼いの少年ペーター(クィリン・アグリッピ)とも仲良くなる。ハイジが山の暮らしに慣れた頃、デーテ叔母さんが今度はハイジを無理やりフランクフルトに連れていく。金持ちの家のクララ(イザベル・オットマン)の話し相手になるためで、デーテ叔母さんは報酬目当てでハイジを連れてきたのだった。母の死をきっかけに歩けなくなり、車いす生活のクララには友だちがおらず、ハイジとクララはすぐに仲良くなる。しかし、教育係のロッテンマイヤー(カタリーナ・シュットラー)は、マナー知らずで字も読めないハイジに厳しく当たり、ハイジは心を病んで夢遊病を患う。医者(マルクス・ヘリング)はハイジを山に返すしかないとクララの父ゼーゼマン(マキシム・メーメット)に告げる。クララは悲しむが、ハイジは山に帰り、アルムおんじはハイジの帰りを喜ぶ。しばらくしてクララがお婆さん(ハンネローレ・ホーガー)とともに山にやってくる。クララはハイジと美しい山の中で暮らすうち、自分で歩けるようになる。クララを迎えに来たゼーゼマンとおばあさんは驚き、感激する。クララはハイジとの別れを惜しみつつ山を下りる。ハイジは作家になる夢を抱きながら、山での暮らしを続けるのだった。

「アルプスの少女ハイジ」のハイライトがわかりやすくスピーディに描かれ、楽しく観ることができた。ハイジ役のアヌーク・シュテフェンの笑顔がかわいらしく、ほのぼのとした感動作。アルムおんじ役が「ヒトラー ~最後の12日間~」でヒトラー役を怪演したブルーノ・ガンツだとは気づかなかった。

【5段階評価】4

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2024年7月30日 (火)

(2749) The Dog Who Lost His Bark

【監督】ビコ・ニクチ
【出演】マーサ・マローン、イービーン・マクギニティ、スティーブ・ブラウント
【制作】2021年、アイルランド

虐待を受けた犬と少女のかかわりを描いた21分の短編映画。

少女ロイジン(マーサ・マローン)は、母親のエブリン(イービーン・マクギニティ)から、音楽家の父親が公演延期で帰らなくなると聞かされる。エブリンは犬を飼っていいとロイジンに話すが、父親に犬アレルギーがあるため、ロイジンは不思議がる。保護センターでお気に入りの犬を見つけ、オズと名付けるが、オズはかつてバカ犬と呼ばれ虐待を受けて捨てられた犬で、吠えることを忘れていた。
なかなか吠えないオズに、ロイジンがフィドル(バイオリン)を弾いて聞かせると、オズは歌うような声を出す。ロイジンはオズと仲良く遊ぶようになるが、オズは相変わらず吠えなかった。
ロイジンは、母親に父の不在の理由を聞く。エブリンは、父親がジェナディーンという踊り子と浮気して出て行ったと明かす。ロイジンは父親と電話で、犬は欲しくなかったと話す。ロイジンは全く吠えないオズを家から追い出してしまうが、祖父(スティーブ・ブラウント)がロイジンを説得し、みんなでオズを探す。ロイジンはフィドルを使ってオズを見つける。オズはようやくロイジンのフィドルに合わせて吠える。オズを受け入れた家族は、ロイジンとともに楽しく歌を歌うのだった。

話としては、少女が虐待を受けた犬と打ち解けるという単純な内容で、ハッピーエンドのほほえましい作品。ただ、祖父がロイジンに聞かせる話の内容が小難しくてぴんと来なかった。ジェナディーンという「複合名」の意味するところもよくわからなかった。

【5段階評価】2

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2024年7月29日 (月)

(2748) ニューヨーク、アイラブユー

【監督】チアン・ウェン、ミーラー・ナーイル、岩井俊二、イバン・アタル、ブレット・ラトナー、アレン・ヒューズ、シェカール・カプール、ナタリー・ポートマン、ファティ・アキン、ジョシュア・マーストン、ランディ・バルスマイヤー
【出演】ヘイデン・クリステンセン、ナタリー・ポートマン、オーランド・ブルーム、マギー・Q、アントン・イェルチン、ドレア・ド・マッテオ、ジュリー・クリスティ、カルロス・アコスタ、スー・チー、クリス・クーパー、イーライ・ウォラック、エミリー・オハナ
【制作】2009年、アメリカ、フランス

ニューヨークの男女の関係を描いた群像劇。11人の監督による合作。「パリ、ジュテーム」の続作。

美女(レイチェル・ビルソン)を巡る若いスリ(ヘイデン・クリステンセン)と壮年のスリ(アンディ・ガルシア)の応酬、剃髪した女性(ナタリー・ポートマン)と宝石商(イルファーン・カーン)、映画音楽作曲に悩む青年(オーランド・ブルーム)と彼を手伝う女性(クリスティーナ・リッチ)、美女(マギー・Q)が娼婦だと知らず必死で口説く男(イーサン・ホーク)、プロムに車いすの女性(オリビア・サールビー)を連れていく若者(アントン・イェルチン)、一夜を共にした男(ブラッドレイ・クーパー)と女(ドレア・ド・マッテオ)の再会、ホテルの女性客(ジュリー・クリスティ)と足の悪い若いホテルマン(シャイア・ラブーフ)と老ホテルマン(ジョン・ハート)、幼い少女(テイラー・ギア)を子守する黒人ダンサー(カルロス・アコスタ)、中国人女性(スー・チー)の肖像画を描く画家(ウグル・ユーセル)、レストランの外でタバコを吸いながら男性(クリス・クーパー)を誘惑する女性(ロビン・ライト・ペン)、旅行に連れて行けと文句を言う女性(エバ・アムリ)とその彼氏(ジャスティン・バーサ)、杖を突く老人(イーライ・ウォラック)とその妻(クロリス・リーチマン)。

主役級の有名俳優がぞろぞろと登場する豪華な作品。監督欄に11人も並べたのは初めてだ。「チャイナタウン」や「ロッキー」のバート・ヤング、「ゴッドファーザー」や「遠すぎた橋」のジェームズ・カーンといった名脇役も出演。それぞれの物語は完全に独立しておらず、ところどころ重なっているのも、面白い趣向。ニューヨークを知らなくても、郷愁を感じるような作品だ。

【5段階評価】3

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2024年7月28日 (日)

(2747) 犯罪都市

【監督】カン・ユンソン
【出演】マ・ドンソク、ユン・ゲサン、チョ・ジェユン、ホン・キジュン、ホ・ドンウォン、チン・ソンギュ、キム・ソンギュ
【制作】2017年、韓国

極悪非道の中国マフィアの逮捕に挑む韓国警察の奮闘を描いたアクション映画。

2004年、韓国の衿川(クムチョン)警察の管轄に、中国系マフィアの黒竜(フンリョン)組のチャン・チェン(ユン・ゲサン)、ソンラク(チン・ソンギュ)、ヤン・テ(キム・ソンギュ)の3人組が現れ、地元マフィアの幹部や借金返済ができなくなった者を殺害。ファン社長のカラオケ店の店員の腕を斧で切断するといった凶悪な行為を行う。強力班の副班長マ・ソクト(マ・ドンソク)は、ナイフを持ったヤクザを手玉に取るような強面の刑事。極悪非道の限りを尽くすマ・ソクトを追い詰め、空港のトイレで一対一の対決に挑み、チャン・チェンを逮捕するのだった。

無骨で粗暴だが、ちょっと刺されたぐらいではびくともせず、肝が据わっていてかっこいい。弱きを助け、強きをくじく。オーソドックスなようで新しいヒーローだった。韓国のバイオレンス映画の代表作だろう。本作はBS松竹東急の「よる8銀座シネマ」で、残念ながら吹替版のみの放送。日本語字幕がちゃんと選べるようになっていたのはBS松竹東急らしいサービス。

【5段階評価】5

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2024年7月27日 (土)

(2746) ドラゴン・ブレイド

【監督】ダニエル・リー
【出演】ジャッキー・チェン、ジョン・キューザック、エイドリアン・ブロディ、リン・ポン
【制作】2015年、中国

シルクロードの覇権を巡る民族の争いを描いた歴史ドラマ映画。

シルクロードの守護隊長フォ・アン(ジャッキー・チェン)は、ローマから部隊を率いてきたルシウス(ジョン・キューザック)と、フォ・アンが守る砦を巡って一騎打ちとなる。ルシウスの兵は疲弊しており、容態の思わしくない子供を連れていた。砂嵐が来たのを見たフォ・アンは、ルシウスの部隊を砦に招き入れ、子供を治療する。その子供はローマの執政官の息子プブリウス(ジョゼフ・リュウ・ウェイト)だった。フォ・アンとルシウスは意気投合し、協力して砦の建設を完了する。プブリウスはフォ・アンを百人隊長に任命し、短刀を授ける。
シルクロードの覇権を狙うティベリウス(エイドリアン・ブロディ)の軍勢がルシウスを追って現れる。ティベリウスは支配権を得るため、父や兄弟を殺し、プブリウスの目に毒を盛って失明させた男。彼はルシウスを捕らえ、拷問の末、目を潰してしまう。虫の息のルシウスを発見したフォ・アンは、あの世行きを望むルシウスに、涙ながらにとどめを刺す。
ティベリウスの軍勢に対し、フォ・アンの部隊はあまりにも貧弱だったが、シルクロードの周囲にいる多くのフォ・アンらに協力し、戦いは膠着状態になる。そこにローマの女王(ロリー・ペスター)が現れ、ティベリウスに戦いをやめるよう命令。ティベリウスを止め、友であるルシウスのかたきを討つため、フォ・アンは一騎打ちを挑む。戦いで負傷したフォ・アンは圧倒的なティベリウスの攻撃力を前に劣勢となるが、ルシウスのバンダナでティベリウスの喉をかき、致命傷を負わせる。ティベリウスはフォ・アンの短刀を奪うと自らの胸を刺し、絶命する。シルクロードに平和が訪れるのだった。

さっきまでの敵が仲間になるという「ドラゴンボール」システムで劣勢の主人公が活躍。映像に金はかかっているが中身は薄いという中国映画らしい作品。ジャッキー・チェンがアクション監督を務めており、戦闘シーンの剣術や棒術の動きが、通常のチャンバラ作品よりは見ごたえがあった。

【5段階評価】3

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2024年7月26日 (金)

(2745) 必殺! ブラウン館の怪物たち

【監督】広瀬襄(じょう)
【出演】藤田まこと、京本政樹、村上弘明、鮎川いずみ、ひかる一平、沖田浩之、中井貴恵、森田健作、柏原芳恵
【制作】1985年、日本

テレビドラマ「必殺仕事人」の映画化作品第2弾。「必殺! THE HISSATSU」の続編。次作は「必殺! III 裏か表か」。

中村主水(藤田まこと)は黒谷のからくり屋敷の沽券(今で言う権利書)を入手するため、京都に向かう。結婚を控えた伊賀の忍者、辰之進(森田健作)とお千(柏原芳恵)も同じ目的で屋敷に向かう。さらに公家の仕事人、丑寅の角助(笑福亭鶴瓶)の軍勢も加わる。
屋敷には300年にわたり代々屋敷を守ってきた服部佐一郎(沖田浩之)、純平(高田純次)、小太(竜小太郎)、お国(兵藤ゆき)、お時(塩沢とき)が住んでおり、からくりで主水らを翻弄する。
屋敷を狙う外国人のブラウン(ポール・セレスキー)は、金儲けを企む大黒屋(金田龍之介)を使って佐一郎らを皆殺しにし、辰之進とお千も命を落とす。加代(鮎川いずみ)は、亡くなる直前の辰之進から仕事人の依頼を受け、主水や竜(京本政樹)、政(村上弘明)順之助(ひかる一平)らとともにブラウン館(やかた)に突入し、一味を全滅させるのだった。

塩沢ときやら兵頭ゆきやら、昭和時代のバラエティタレントが登場している時点で、ドタバタコメディ時代劇だと分かるのだが、さらに、新選組役で明石家さんまや西川のりおが出演していたり、ケント・ギルバートがちょい役で出ていたり、と、物語より話題づくりを重視した作品。
途中で「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」(1984)のトロッコを模したような滑り台シーンや、「E.T.」(1982)のような宙を走る自転車シーン、「蒲田行進曲」(1982)のような階段落ちなど、パクリ映像も登場。もともと現実味のない仕事人の悪者退治シーンが、さらに技の必然性を失っており、学芸会でももうちょっと真面目に作るんじゃないのと言いたくなるほどのひどさだった。最後はラスボスのブラウンが腕に仕込んだ機関銃を主水に放つが、主水はかすり傷だけで相手を斬り倒す。丸腰を斬り殺すわけにはいかないので悪役が腕に機関銃仕込んどきました、というだけの展開。次作を見る気がどんどん失せていくが、けっこうなシリーズものなんだよな、これ。

【5段階評価】2

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2024年7月25日 (木)

(2744) Behind the Curtain

【監督】ティーム・ニッキ
【出演】バルテリ・コイブミエス、オラビ・ニエミ、ペッカ・フオタリ
【制作】2014年、フィンランド

歌の苦手な少年が学校で歌の披露に挑戦する物語。7分の短編映画。

ミッコ(バルテリ・コイブミエス)は通学途中、いじめられている少年(オラビ・ニエミ)を助ける。学校では歌のテストがあり、一人ずつ教室の真ん中で歌を披露し、先生(ペッカ・フオタリ)が点をつける。ミッコの番になるが、ミッコは人前で歌うのが苦手で途中でつっかえてしまう。彼は場所を変えると言ってカーテンの裏に隠れ、窓際で歌おうとするが、それでもうまくいかない。すると、ミッコに助けてもらった少年がトイレに行くと言って教室を出る。少年は窓際に行き、ミッコの代わりに見事な歌声を披露。先生はミッコに「10+」の点を与え、あがり症を克服したらクリスマスに歌ってもらおうと助言。うまくいって笑顔だったミッコの顔が青くなるが、エンドロールで、ミッコがCDデビューしたことが示されるのだった。

歌声が違うのでバレるだろ、という気はするものの、他愛もないインチキで難を逃れるだけの話かと思いきや、最後にミッコのCDが登場し、おそらくその曲自体がエンドロールで流れるのだが、お世辞にも上手とはいえないだみ声のおじさんの歌で、観客をニヤリとさせる。
本作はネット上に出演者の情報が見当たらなかったが、幸い、エンドロールに役名と名前が併記されていたので、そこから書いた。

【5段階評価】3

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2024年7月24日 (水)

(2743) 昨日・今日・明日

【監督】ビットリオ・デ・シーカ
【出演】ソフィア・ローレン、マルチェロ・マストロヤンニ、ジャンニ・リドルフィ
【制作】1963年、イタリア

3組の男女が織りなす人間模様をオムニバス形式で描いたコメディ作品。3組の男女とも、女性役をソフィア・ローレン、男性役をマルチェロ・マストロヤンニが演じている。

一話目は「アデリーナ」。違法タバコ販売の罰金を踏み倒したかどで、妊娠中のアデリーナ(ソフィア・ローレン)は刑務所行きに処されるが、妊婦は出産後6か月まで刑務所行きを猶予されるため、収監を逃れる。アデリーナと夫のカルミネ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、アデリーナが刑務所に行かなくて済むよう、子を産んでから6か月以内にアデリーナを妊娠させ続ける。7人の子持ちとなったところでカルミネが文字通り精魂尽き果て、アデリーナはとうとう収監される。町の人はカルミネとアデリーナのためにカンパをして罰金を集め、恩赦の請願書も通じて、アデリーナは釈放となる。アデリーナは7人の子供と夫に囲まれ、喜ぶのだった
二話目は「アンナ」。裕福な女性アンナ(ソフィア・ローレン)は、レンゾ(マルチェロ・マストロヤンニ)をロールスロイスに乗せて浮気を楽しもうとする。レンゾに車を運転させたとき、前方不注意でロールスロイスは工事車両にぶつかる。アンナは手のひらを返したようにレンゾに悪態をつき、通りかかった男性の車に乗って走り去ってしまう。レンゾはアンナを見捨て、歩き出すのだった。
三話目は「マーラ」。高級娼婦のマーラ(ソフィア・ローレン)は金持ちの息子ルスコーニ(マルチェロ・マストロヤンニ)から言い寄られていた。マーラの部屋の隣に住む神学生の青年ウンベルト(ジャンニ・リドルフィ)はマーラにあこがれ、神学校への進学をやめてしまいそうになり、ウンベルトの祖母ジョバンナ・リデンツォーネ(ティーナ・ピーカ)がマーラに泣きつく。マーラとルスコーニはウンベルトを説得し、神学校に行かせることに成功する。

三話の主人公を同じ俳優二名が演じるオムニバス映画は初めて観た。一話目の、刑務所行きを逃れるために子作りを続けるというのは、ユニークなシナリオだったが、他の二話はそれほど珍しくもなく、特に二話目は序盤の展開の意味がよくわからず、観ていてつらかった。公開当時39歳のソフィア・ローレンのグラマラスな肢体を楽しむ作品ということだろうか。

【5段階評価】2

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2024年7月23日 (火)

(2742) ワラライフ!!

【監督】木村祐一
【出演】村上純、香椎由宇、吉川晃司、鈴木杏樹、高岡蒼佑、田中祥平、田畑智子
【制作】2011年、日本

とある家庭に育った青年の生涯を描いた作品。タイトルの意味が最後に明かされる。

綾城まり(香椎由宇)との結婚を控える古川修一(村上純)は、子供時代(田中祥平)のことを思い出す。曲がったことの嫌いな父親(吉川晃司)や、明るい母親(鈴木杏樹)から愛情を受け、小さな幸せを積み上げていた。修一は小学校の時、気まずい関係になったまま疎遠となった小倉弘之(高岡蒼佑)に謝罪し、関係を修復。修一とまりは結婚し、子宝に恵まれる。そしてこう言うのだ。「What a life(ワラライフ)!」と。

静かな感動を生む佳作といったところ。序盤は、つまらなくはないが盛り上がりもなく、些細な家族あるある、子供時代あるあるの繰り返し。ラストシーンで、修一とまりの夫婦が一気に年を重ねていくのだが、その映像がチープだったのが、ちょっと残念。次長課長や監督の木村祐一本人、板尾創路などがちょい役で出演している。

【5段階評価】3

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2024年7月22日 (月)

(2741) 時雨の記

【監督】澤井信一郎
【出演】渡哲也、吉永小百合、林隆三、佐藤友美、神山繁
【制作】1998年、日本

思いを寄せていた女性との暮らしを願う壮年の男性と、相手の女性との恋を描いた作品。

建設会社の専務を務める壬生孝之助(渡哲也)は、20年前に出会って一目ぼれした堀川多江(吉永小百合)に偶然再会。強引に彼女との交際を始める。孝之助には妻(佐藤友美)も二人の息子もおり、仕事にも自らを捧げてきたが、スペインでの仕事を片付けたら引退し、自分の思うままに生きることを決意。多江はとまどいながらも純粋な孝之助の愛を受け入れていく。しかし、孝之助は狭心症を患っており、仕事の合間に訪れた多江の家で発作を起こし、他界する。多江は、孝之助の親友、庄田(林隆三)から、彼が多江と二人で住むために吉野に建てようとしていた庵の設計図面を受け取り、涙する。多江は孝之助への思いを抱きながら生き続けることにするのだった。

壮年の男女の純愛を描いている。感情を高ぶらせたようなシーンはなく、抑制のきいた上品な作品だった。一方で、渡哲也と吉永小百合だから成り立つ作品でもあり、これが現実だとすると、小太りの禿げ上がった会社専務が、40代後半のおばさんにストーカー行為を働く話にもなりかねないわけで、ずいぶんと美化されたお話だった。招かれた多江の家で紳士のふるまいから豹変して抱き着いて唇を奪う壬生の行為は、普通に考えれば極めて汚らわしい行為なのに、なんだかきれいごとになっている。会社専務が仕事の合間に女性と逢瀬を重ねたり家まで一人で出かけたりできるものかね、というのも疑わしい。そしてとってつけたような狭心症で他界。死ぬと不倫が正当化されるわけでもなく、妻の無念はいかばかりか。純愛映画として描かれていることへの違和感や嫌悪感がさほど沸いたわけではないが、作り話だなあ、とも思った。
なお、本作はBS松竹東急で鑑賞したが、BS松竹東急って東映の映画も流すんだ、と知った。BS松竹東急の映画番組は、邦画でも字幕が選択できるし、ノーカットでエンドロールまで放送してくれるので、ありがたい。

【5段階評価】3

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2024年7月21日 (日)

(2740) ホルモン女

【監督】遠藤光貴
【出演】山下リオ、河本準一、坂本純一、増田修一朗
【制作】2011年、日本

津山市のホルモンうどんを国体のおもてなし料理にするため奮闘する市役所職員を描いた作品。

津山市役所の職員、坂井ひろこ(山下リオ)は、国体で選手をもてなす料理を担当。提案した料理は審査員に不評で、東京からシェフを呼ぶことになってしまう。課長の刑部(おさかべ)(河本準一)に、老舗旅館の青年、松本(増田修一朗)を紹介された坂井は、彼に一目ぼれ。松本に次の手はないのかと問われ、地元の居酒屋を営む知人の良ちゃん(坂本純一)が作っていたホルモンうどんを紹介。松本と課長は気に入り、ひろこはホルモンうどんの歴史を調べ、ホルモンうどんを国体のおもてなし料理にするよう奮闘する。
刑部の努力で試食会が再度開かれることになる。ひろこは作り手として試食会に臨むが、ガスの火が弱かったり、会場に現れた松本が婚約者を連れて来たりしたことでやる気を失い、会場から逃げてしまう。追ってきた良ちゃんに励まされ、会場に戻ると、常連さんにガスを修理してもらい、おいしいホルモンうどんを仕上げる。ホルモンうどんは審査員にも好評で、見事におもてなし料理に決まる。その後、ホルモンうどんはB級グルメの祭典、B-1グランプリで入賞するなど、一躍、名物料理となるのだった。

30分と短いが、地元の人たちの応援を受けて頑張る女性の活躍に、素直に感動できる作品。ホルモンうどんが食べたくなること間違いなし。
冒頭で女性が疾走するシーンが登場し、これが何だったのかが後半明かされるという作りになっている。これ自体はよくある映画の展開だが、会場から走って逃げるという種明かしは、正直ちょっと弱かった。
次長課長の河本準一や、GAG少年楽団の坂本純一が重要な役どころで出演している。

【5段階評価】3

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2024年7月20日 (土)

(2739) エビータ

【監督】アラン・パーカー
【出演】マドンナ、ジョナサン・プライス、アントニオ・バンデラス
【制作】1996年、アメリカ

貧困層から大統領夫人にまで上り詰めた女性の生涯を描いたミュージカル映画。エビータは実在の人物。

有力者の妾の娘、エバ(マドンナ)は、売れっ子になる夢を抱いてブエノスアイレスに出る。男を利用して雑誌のモデルやラジオCM出演などを経て頭角を現し、大物政治家ホアン・ペロン(ジョナサン・プライス)と出会う。エバとペロンは結婚。労働者の味方としてペロン氏は大統領となる。エバはペロンの支持を得るため精力的に活動するが、健康を害し、若くして亡くなるのだった。

全編がほぼ歌で構成されている。個人的に、このスタイルは作り物感が強くて好きではないのだが、別の理由として、歌がセリフを読むような説明口調でメロディが頭に残らず、聞き心地がよくない、という点もある。本作は、同じ曲が場面や立場を変えて何度も登場する工夫がされており、聞いたことのないつまらない曲を何曲も聞かされるよりはよかった。映像は豪華で、狂言回しの男(アントニオ・バンデラス)が状況説明をするという趣向もこらされていたものの、作品は134分と長めで、「そろそろ終わってくんないかなぁ」感はぬぐえなかった。

【5段階評価】3

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2024年7月19日 (金)

(2738) CUBE

【監督】ビンチェンゾ・ナタリ
【出演】モーリス・ディーン・ウィント、ニッキー・グァダーニ、ニコール・デ・ボア、デビッド・ヒューレット
【制作】1997年、カナダ

複数の立方体の部屋からなる建物に閉じ込められた人々の脱出劇を描いたカルト映画。日本でも「CUBE 一度入ったら、最後」としてリメイクされている。

6面全部に扉のある立方体の中に閉じ込められた人々。部屋にはところどころ罠が仕掛けられており、不用意に移動するとむごたらしい死が待っている。黒人警官のクエンティン(モーリス・ディーン・ウィント)がリーダーとなり、女医のハロウェイ(ニッキー・グァダーニ)、数学科の女子大生レブン(ニコール・デ・ボア)、脱獄7回の経験者レン(ウェイン・ロブソン)、愛想のない会社員ワース(デビッド・ヒューレット)が行動をともにする。レンは早々に罠にかかって死亡。途中で精神障害を持った青年カザン(アンドリュー・ミラー)が加わる。はじめはみんなを奮い立たせていたクエンティンだったが、次第にワースやハロウェイ、カザンに対して攻撃的になっていく。扉の先に書かれた3つの三桁の数字を手掛かりに、レブンが謎を解き始める。ワースが外壁の設計者だと分かり、一同はついに建物の端の部屋にたどり着く。衣服をロープ代わりにしてハロウェイが外の様子を確認するが、ロープを支えきれず、ハロウェイが落ちそうになる。クエンティンが身を乗り出してハロウェイの手をつかむが、疑心暗鬼に陥っていたクエンティンは、ハロウェイを落下させ、仲間には手が滑ったと嘘をつく。
仮眠の最中、クエンティンはレブンをそっと起こし、ワースとカザンを置いて移動しようと持ち掛けるが、レブンは拒否。そこにワースとカザンが追いつくと、クエンティンはワースをスパイ扱いして殴りつけ、下の部屋に突き落とす。そこにはレンの死体があった。彼らはもとの部屋に戻ってきていた。ワースは、部屋自体も動いていることに気づく。レブンは数字の因数の数がカギであることを解き明かす。カザンはサバン症候群で、因数の数を瞬時に言うことができた。一同はカザンに因数の数を言わせて部屋を進んでいく。クエンティンが凶悪な態度をむき出しにするようになったため、ワースはレブン、カザンと協力してクエンティンを下の部屋に落下させる。ついに彼らは外壁に通じる通路の役割を果たす部屋にたどり着き、外に通じる扉を開く。その時、追ってきたクエンティンが現れ、扉を開けるバーでレブンを突き殺し、ワースの腹も刺す。カザンは出口に向かい、クエンティンもそれを追うが、まだ息のあったワースがクエンティンにしがみつき、クエンティンは動き出した部屋と外壁に挟まれて死亡する。ワースは部屋の中に倒れ、カザンたった一人が、光に包まれた屋外に進むのだった。

非現実的な設定の中でのパニック・スリラー。細い金属線で「バイオハザード」のレーザー・トラップのように体が切り刻まれたり、顔が薬品で焼けただれたり、と残酷な描写もあり、ハラハラドキドキする展開。なぜこのような建物があり、誰が何の目的でここに人を送り込んだのか。その説明は一応なされるが、さほど深刻に考えてはいけない。特殊な状況は受け入れたうえで作品にのめり込む必要がある。クエンティンが最後に追いついてくるあたりは、盛り上げようとするのはわかるが、ちょっとやりすぎ。ただ、ワースやレブンが本当に死んだのかは明らかではなく、もしかすると続編で登場したりするのかもしれなかった。
「SAW」シリーズもそうだが、こういったカルト映画はなかなかテレビ放送されることはないので、今回放映してくれたテレビ大阪のシネマクラブに感謝。ただ、いつも字幕がないのと、エンディング間際で次回告知のテロップを出すのだけはなんとかしてほしい。本作は興味があったのであえて観たが、他の作品は正直、二か国語で字幕なしだと分かった段階で観ずに消去している。次回告知を終わり際に出すのも、「ああ、ここで終わりか」って分かって極めて興ざめなので、本当にやめてほしい。エンドロールも流してくれとまでは言わないので。(このことを知り合いのテレビ大阪の人に言ったら「投書したほうがいい」と言われました(笑)。ごもっとも。)

【5段階評価】4

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2024年7月18日 (木)

(2737) Joey

【監督】ウィリアム・アッシュ、アンドリュー・ノット
【出演】ジョン・シム、アンドレア・ロウ
【制作】2020年、イギリス

カフェの女性店員にデートに誘われたピエロの男の運命を描いた作品。14分の短編映画。

孤独なピエロのジョゼフ(ジョン・シム)は、ピエロの姿のままカフェに入り、店員のアニー(アンドレア・ロウ)にデートに誘われる。ジョゼフは普通の顔でデートに臨み、アニーと楽しいひと時を過ごす。部屋でこれからお楽しみというとき、ジョゼフは酒に酔って寝てしまう。アニーが寝ているジョゼフの顔を触ると、化粧の下から白い皮膚、赤い鼻が顔を出す。ジョゼフはピエロが素顔で、化粧で人間の顔になっていたのだ。驚いたアニーは部屋を出ていく。
アニーがいなくなったことを知ったジョゼフは落ち込み、バスタブに浸かりトースターで感電死しようとするがうまくいかない。そこにドアをノックするアニーの声が聞こえてくる。ドアを開けたジョゼフの前には、ジョゼフと同じピエロ姿のアニーが現れるのだった。

ラストはおそらく、実はアニーもジョゼフと同じピエロ族(とでも言うのか)だった、ということなんだろう。アイディア一発勝負の短編だが、予想外の展開は面白かった。映像や演出も映画らしい作品。

【5段階評価】3

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2024年7月17日 (水)

(2736) 志乃ちゃんは自分の名前が言えない

【監督】湯浅弘章
【出演】南沙良、蒔田彩珠、萩原利久、奥貫薫、山田キヌヲ、渡辺哲
【制作】2018年、日本

押見修造の漫画の映画化作品。うまく話せない少女の高校生活を描いた青春映画。

沼津市の西高に入学した大島志乃(南沙良)は、人前で話そうとするとどもってしまう性質があり、最初の自己紹介も失敗。クラスには、空気を読めずバカ騒ぎする菊地強(萩原利久(りく))や、性格の暗そうな岡崎加代(蒔田彩珠(あじゅ))がいた。互いに友だちのいない志乃と加代はやりとりするようになり、加代は志乃を家に招く。志乃は加代の部屋にギターがあるのを見つけ、加代に弾いてほしいとねだる。加代は笑ったら殺すと言いながら弾き語りを始めるが、加代は極度の音痴だった。思わず噴き出した志乃を見て、加代は「帰れ!」と志乃を追い出す。志乃はせっかくできた友だちを失った悲しみで、泣きながら帰宅する。
志乃は加代に笑ったことを謝罪。二人でカラオケ店に入り、加代は志乃に歌わせる。志乃は歌ではまったくどもらず、きれいな歌声を聞かせる。加代は志乃とバンドを組み、文化祭で披露しようと提案。バンド名を「しのかよ」に決め、二人で路上で歌い始める。人前で歌うことに慣れてきた二人だったが、初めて人通りの多い駅前で歌い始めたとき、菊地が現れる。志乃は驚き、その場から逃げ去ってしまう。
菊地は学校で二人をからかい、加代は菊地にビンタを食らわせる。帰り道、菊地は二人に謝罪し、仲間に入れてほしいと言ってタンブリンを取り出す。菊地もお調子者の性格が災いしてクラスメートからウザがられていて友だちがおらず、居場所がなかったのだ。しかし志乃は菊地と一緒の状況を受け入れられず、バンドの練習から遠ざかり、学校にも行けなくなってしまう。
加代は志乃がバンドを続けられないことを受け入れ、一人で文化祭に出演。自分で作詞作曲した「魔法」という歌を披露する。校舎裏でそれを耳にした志乃は会場に現れ、うまく話せないことで葛藤している自分の気持ちを爆発させる。加代はステージ上で温かい目で志乃を見守る。文化祭が終わり、加代、菊地、志乃はそれぞれで昼休みを過ごす。席にいた志乃の席に「あげる」と言って飲み物を置いたのは、クラスの別の女子だった。志乃はあいかわらずどもりながら「ありがとう」と言ってほほ笑むのだった。

吃音を抱える少女が主人公。「惡の華」や「血の轍」など、少年少女の心の内面を描く漫画の多い押見修造らしい作品。人から笑われないように話さないようにしてきた、私が私を追いかけてくる、話せない自分を馬鹿にしているのは自分なんだ、自分はこれからも大島志乃なんだ、と叫ぶ志乃の言葉に、はっとさせられた。吃音も音痴も、自ら望んでそうなったわけではない。ラストシーンは、吃音を持つ自分を受け入れ始めた志乃の姿が暗示されていた。加代が歌った「魔法」の歌詞もよかった。

【5段階評価】3

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2024年7月16日 (火)

(2735) 蛇鶴八拳

【監督】チェン・チーホワ
【出演】ジャッキー・チェン、ノラ・ミャオ、カム・コン、キム・チンラン、リー・マンチン
【制作】1978年、香港

少林寺拳法の極意書を守る青年の活躍を描いたカンフー映画。

少林寺八流派の長老が集まって蛇鶴八歩の拳を編み出すが、その後、長老と極意書が行方不明となる。徐英風(ジャッキー・チェン)は、わざと蛇鶴八歩の拳の極意書を持ち歩き、それを狙って戦いを挑む者の相手をしながら、左肩に痣のある者を探す。その者こそが、長老7名を殺した犯人。生き残ったリン長老(チャン・シー)が、徐英風に蛇鶴八歩の拳の伝え、犯人捜しをしていたのだ。仲間の協力を得て、徐英風は、黒龍党のボス、錢(カム・コン)が真犯人であることを発見。長老は、果し合いを錢に申し込み、徐英風と錢が戦う。互角の戦いだったが、最後は徐英風が黄振中の鉄球を使って優勢に立ち、勝利するのだった。

リズミカルなカンフーの攻防と、椅子や木の板を使ったコミカルな攻撃などが見どころ。笛を武器に戦う美女(ノラ・ミャオ)や棒術を使う赤鼻の老人(リー・マンチン)など、個性的なキャラクターが登場するのも独創性があり、のちのジャッキー・チェンのカンフー映画の原点のような作品。ノラ・ミャオは、「ドラゴン怒りの鉄拳」でブルース・リー演じる主人公チャンの恋人役を演じたことで有名。

【5段階評価】4

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2024年7月15日 (月)

(2734) 続・荒野の用心棒

【監督】セルジオ・コルブッチ
【出演】フランコ・ネロ、ロレダナ・ヌシアック、エドゥアルド・ファヤルド、ホセ・ボダロ、アンヘル・アルバレス
【制作】1966年、イタリア、スペイン

アメリカとメキシコの軍勢と闘うガンマンを描いたマカロニ・ウェスタン。邦題に「続」とついているが、「荒野の用心棒」(1964)の続編ではない。

棺桶を引きずるガンマン、ジャンゴ(フランコ・ネロ)は、男たちに襲われている女性マリア(ロレダナ・ヌシアック)を助け、メキシコとアメリカの境にある酒場にたどり着く。アメリカの残忍なジャクソン少佐(エドゥアルド・ファヤルド)は、メキシコの血の混じっているマリアを嫌っており、マリアを助けたジャクソンを殺そうとするが、ジャンゴは早撃ちで少佐の部下を全滅させ、少佐を逃がす。少佐は40人の部下を連れて戻ってくるが、ジャンゴは棺桶に隠し持っていた機関銃で少佐の軍勢を壊滅させ、少佐は逃走する。
メキシコのロドリゲス将軍(ホセ・ボダロ)が酒場にやってくる。将軍はジャンゴにかつて命を救われた恩義があり、ジャンゴを兄弟と呼ぶ。ジャンゴは将軍と組み、少佐の金を強奪。ジャンゴは分け前を将軍に要求するが、将軍は渡そうとしない。ジャンゴは金を盗み出し、それに気づいたマリアと酒場から逃げる。しかし、底なし沼まで来たとき、金を積んだ棺桶を底なし沼に落としてしまう。底なし沼に飛び込んで沈みそうになっているジャンゴをマリアが助けようとしたところに将軍の軍勢が追い付き、マリアを撃つと、底なし沼からジャンゴを引き上げる。将軍はジャンゴに恩があるため命までは取らなかったが、両手を馬の脚で踏んで潰してしまう。将軍の部隊はメキシコに戻ろうとするが、待ち伏せしていた少佐に殺される。
ジャンゴはまだ息のあるマリアを抱えて酒場に戻ると、酒場の主人ナタニエレ(アンヘル・アルバレス)にマリアの手当てと、少佐が来たら墓場で待っているという伝言を頼む。酒場にやってきた少佐は伝言を聞くとナタニエレを撃ち殺し、墓場に向かう。墓場で待っていたジャンゴは、引き金を保護するトリガーガードを外した拳銃を使って、現れた少佐と取り巻き数人を早撃ちで倒すのだった。

子供が憧れるようなヒーロー映画という作り。かっこいい主題歌。無敵の早撃ち。棺桶からは機関銃。ストーリー性はたいしてなく、残忍な悪役を主人公が倒すという、わかりやすいダークヒーロー作品だ。

【5段階評価】3

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2024年7月14日 (日)

(2733) プリティ・リーグ

【監督】ペニー・マーシャル
【出演】ジーナ・デイビス、ロリ・ペティ、トム・ハンクス、マドンナ、ミーガン・カバナー、ロージー・オドネル、ビル・プルマン
【制作】1992年、アメリカ

第二次世界大戦中に誕生した女子プロ野球チームの活躍を描いた作品。

第二次世界大戦が起こり、プロ野球選手も兵役に就く。プロ野球の衰退を憂うチョコレート会社の経営者ハービー(ゲイリー・マーシャル)は、女子プロ野球リーグを立ち上げる。地元の野球チームのキャッチャーでスラッガーのドティ・ヒンソン(ジーナ・デイビス)は、スカウト(ジョン・ロビッツ)の目に留まり、入団テストを勧められる。出征中の夫がいるドティは断るが、ピッチャーの妹キット(ロリ・ペティ)に説得され、二人で入団テストに参加。妹とともにロックフォード・ピーチズの選手となる。
ピーチズの監督には、かつて名選手だったが酒癖の悪さから選手寿命を縮めて引退したジミー・ドゥーガン(トム・ハンクス)が就任。はじめは女性を選手と認めず、やる気のなかったジミーだったが、次第に監督をしっかり務めるようになる。キットは完璧で間違いのないドティに反発。ストレスを感じたドティはチームを去ろうとするが、リーグ運営を担当するローエンスティン(デビッド・ストラザーン)は、キットを他チームにトレードしてしまう。
チームメイトのベティ(トレイシー・ライナー)の夫が戦死したという訃報がとどき、ドティは夫の安否に不安になる。そこに夫のボブ(ビル・プルマン)が帰ってくる。ドティは喜び、野球をやめてボブとともにチームを去ることにする。ジミーは後悔するぞと引き留めるが、ドティは去る。ワールド・シリーズに進出したピーチズは、キットの移籍したラシーン・ベルズと闘うことになる。3勝ずつで迎えた最終戦に、ドティは復帰。ドティの活躍で2対1と逆転したピーチズは、9回裏の守備につく。ベルズはランナーを一人置いてキットの打順。キットが高めのボール球に手を出すと知っているドティは、ピッチャーのエレン・スー(フレディ・シンプソン)に高めのボール球を要求。キットは2回空振りするが、3球目を強打し、ランニングホームラン。ベルズはサヨナラ勝ちし、キットはヒーローとなる。試合に負けたベティだったが、チームメイトに歓迎されている妹の姿を見てほほ笑む。試合後、ベティとキットの間のわだかまりは溶け、二人は互いに抱き合い、将来の幸せを願いあう。
時がたち、老人となったドティ(リン・カートライト)は、殿堂入りの記念集会に参加。懐かしいチームメイトたちやキット(キャスリーン・バトラー)らと再会を喜び合うのだった。

見た目は悪いがスラッガーのマーラ・フーチ(ミーガン・カバナー)や、字の読めないシャーリー・ベイカー(アン・キューザック)など、登場しただけで応援したくなるような個性的な選手が登場。登場シーンでは悪者っぽいメイ(マドンナ)は、意外にもさほど悪役ぶりを発揮せず、メイの親友のドリス・マーフィ(ロージー・オドネル)のほうがキットに喧嘩を吹っかける粗野な役どころだった。
個性的な人物を登場させているが、試合内容はあまり深く描かれず、野球シーンは細切れであまり見どころはなかった。ボールをキャッチしたり打ったりするシーンは割ときちんと撮影されているが、残念ながら主役のドティのバッティングシーンはあまり上手とは言えなかった。男性でも野球の動作は素人っぽく見えるので、女子ならなおさらではある。最後がOG会のようになっていて、心温まるエンディングなのはよかった。エンドロールで、おばあさんたちが野球をしている様子が延々と流れるのはなんだかよくわからなかったが。

【5段階評価】4

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2024年7月13日 (土)

(2732) 必殺! THE HISSATSU

【監督】貞永方久
【出演】藤田まこと、片岡孝夫、三田村邦彦、中条きよし、山田五十鈴、蘆屋雁之助、鮎川いずみ、石堂淑朗
【制作】1984年、日本

テレビドラマ「必殺」シリーズの映画化作品。仕事人同志の戦いを描いている。次作は「必殺! ブラウン館の怪物たち」(1985)。

南町奉行所の同心、中村主水(藤田まこと)の周囲で、六文銭を口にくわえた仕事人の死体が複数見つかる。おりく(山田五十鈴)の育てた仕事人、庄兵衛(石堂淑朗)が江戸の仕事人の仕事を独占するため、主水らに勝負を挑む。主水らは人形浄瑠璃の人形遣いの仕事人、此竹朝之助(片岡孝夫)の協力を得て、庄兵衛の軍勢を倒すのだった。

テレビドラマの豪華版という形式。ユニークな仕事人が出てきては雑魚キャラのように殺されていく。最後は主人公の無双が始まり、飾り職人の秀(三田村邦彦)や三味線屋の勇次(中条きよし)、おりくの決めポーズで、敵が無為無策に殺されていき、ラスボスも全く強くない。テレビドラマなら観ていられるが、2時間待った挙句に、最後はこれかい、という作品だった。

【5段階評価】2

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2024年7月12日 (金)

(2731) 鬼畜

【監督】野村芳太郎
【出演】緒形拳、岩下志麻、小川真由美、蟹江敬三、岩瀬浩規、吉沢美幸、石井旬、鈴木瑞穂、大竹しのぶ、田中邦衛
【制作】1978年、日本

松本清張の小説の映画化作品。三人の隠し子を押し付けられた男と妻のとった所業を描いている。

貧乏暮らしをしている菊代(小川真由美)は、6歳の長男、利一(りいち)(岩瀬浩規)、3歳の長女、良子(よしこ)(吉沢美幸)、まだ幼い次男の庄二(石井旬)を連れて、川越の印刷所、竹下印刷に向かう。そこでは竹中宗吉(緒形拳)、妻のお梅(岩下志麻)、従業員の阿久津(蟹江敬三)が働いていた。菊代は宗吉の妾で、十分な養育費がもらえず怒鳴り込みに来たのだった。お梅は驚き、夫をひっぱたく。菊代はお梅と宗吉に目いっぱい悪態をつくと、子供を残して失踪する。お梅は子供たちを露骨に毛嫌いし、邪険に扱う。次男の庄二は栄養不足で衰弱しており、宗吉は病院に運び込むが死亡する。お梅は一人片付いてよかったと宗吉に話し、宗吉は言葉を失う。庄二は死ぬ間際、印刷用のシートが覆いかぶさった状態だった。お梅の仕業かもしれなかった。
宗吉はお梅の圧力に屈するように、長女の良子を連れて東京に行き、良子がまだ父親の名前や住所を言えないことを確認した後、良子を東京タワーの展望台に置き去りにして家に帰る。利一は良子がいなくなった理由が尋常ではないことを薄々感じているようだった。お梅は利一が誰かに何かを話すのではないかと怯える。お梅は宗吉に青酸カリを渡し、少しずつ飲ませればわからないと宗吉に告げる。宗吉は利一を上野に連れていき、青酸カリをアンパンにまぶして利一に食べさせようとするが、利一は気づいたのか途中で吐き出し、毒殺は未遂に終わる。
お梅は、断崖から海に突き落とせば発見が遅れると言い、利一の服のタグを取り外して身元が調べられないようにする。宗吉は利一を連れて旅に出る。石川の東尋坊まで行ったが息子を突き落とすことはできず、二人は能登に向かう。能登の海辺で、宗吉は眠りこけた利一を抱きかかえると、海に落とし、立ち去る。
幸い、利一は海に落ちず、救助される。利一は婦警(大竹しのぶ)から優しく話しかけられ、事情を聴かれるが、利一は名前も住所も父親の名前も答えない。しかし、利一が持っていた石けり用の石が、石版印刷用の石の欠片だったことから、竹下印刷につながり、宗吉は刑事(鈴木瑞穂)に連れられて石川に向かい、利一と対面する。利一は、宗吉を見ても「父ちゃんじゃない。知らないおじさんだ」と言い続ける。宗吉は利一の足元に縋り付き、号泣しながら勘弁してくれ、と詫びる。宗吉は逮捕され、利一は石川県の児童相談所に預けられるのだった。

子供を殺すというショッキングなテーマを扱った作品。育児放棄という社会問題を取り上げた作品でもあった。岩下志麻の鬼のような児童虐待ぶりは迫力があり、緒形拳による気弱で不安定な宗吉の演技も見ごたえがあった。公開当時21歳の大竹しのぶの婦警さん役が作品に花を添えていた。

【5段階評価】4

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2024年7月11日 (木)

(2730) タバコイ ~タバコで始まる恋物語~

【監督】中川通成
【出演】又吉直樹、遠藤久美子、庄司智春、載寧龍二、日比野玲、梶原善
【制作】2012年、日本

相手の嘘を見破れるタバコを手に入れた男の恋の行方を描いた作品。

正直者だが合コンで全く持てないサラリーマンの宮内正(又吉直樹)は、いきつけの中華屋のオヤジ(梶原善)から、タバコを渡される。正は、それを吸うと、嘘をついている相手の本音が吹き出しのように見えるようになることに気づく。正は合コンで相手の本音が分かるようになり、女性に受けるようになるが、夜の営みに対する自分の評価が低いことも分かってしまい、落ち込む。
社長秘書の美山愛樹(あき)(遠藤久美子)から仕事ができない男はもてないと叱咤された正は、タバコを使って大物顧客の佐久間(坂本あきら)の男色趣味を見抜き、ご機嫌をとって契約を取りつける。さらに正は、自社の社長(日比野玲)が堂々と意見の言える社員を求めていることをタバコの力で知り、社長に直言して社長の目に留まる。正は愛樹にデートを申し込み、交際に発展する。しかし、同僚の誠司(載寧(さいねい)龍二)から、愛樹は社長の愛人だという噂だと聞き、正はタバコを使って愛樹を問いただす。愛樹の本音が、社長との関係は言えない、であることを知った正は愛樹と別れることにする。
社長からアメリカ進出の責任者を任されることになった正は、社長との会食の場で、愛樹と社長の関係を聞き、愛樹が社長の隠し子であることを知る。愛樹が社長の愛人だと勘違いしていた正は、愛樹に会い、プロポーズ。タバコの力を借りず、愛樹の言葉を信じることにする。幸せに包まれる二人。実は、愛樹も中華料理屋の常連で、正と同じタバコを吸っていたのだった。

物語はベタだが面白い。愛樹も同じタバコを吸っているなというのは、作中の伏線であからさまだったので、最後のオチは見え見えだったが、そこに不穏な効果音をつけていたのは謎だった。二人の愛はまやかしだといいたいのだろうか。
又吉の演技は棒読み調で、これが演出なのか、芝居が本当に下手なのかはよくわからなかった。相方は俳優志望なのに。正の同僚役の庄司智春が、作中で「ミキティー」を連発するシーンはちょっと受けた。ハリセンボンの近藤春菜も合コン相手役で出演。ただし持ちネタの披露はなかった。

【5段階評価】3

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2024年7月10日 (水)

(2729) 名探偵コナン 黒鉄の魚影

【監督】立川譲
【出演】高山みなみ(声)、林原めぐみ(声)、山崎和佳奈(声)、種﨑敦美(声)
【制作】2023年、日本

名探偵コナン劇場版シリーズ第26作。洋上施設で起きる殺人事件と人物探索システムを巡る攻防を描いている。「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」の続作。「魚影」はサブマリンと読ませる。

江戸川コナン(高山みなみ)らは、ホエールウォッチングをしに八丈島に向かう。八丈島沖にはインターポールが洋上施設を建設。顔認証システムを発展させた老若認証システムと全世界の監視カメラを接続することで、年代を超えて人物の検索を可能にしようとしていた。コナンは白鳥刑事とともに施設内に入る。
システムの開発者、直美・アルジェント(種﨑敦美)が、黒ずくめの組織に誘拐される。彼らは記録映像に残された自らの痕跡を消去することに用いようとする。システムの機能によって、灰原哀(林原めぐみ)が、かつて組織にいたシェリーではないかと黒ずくめの組織は疑い、ホテルに泊まっていた哀を誘拐。潜水艦に拉致する。哀は直美を連れて潜水艦からの脱出に成功する。
組織を施設内に導いたのは、施設職員のレオンハルト(諏訪部順一)。レオンハルトは罪を認めて自殺したと思われたが、コナンは、職員に扮装した黒ずくめの組織の一員、ピンガ(村瀬歩)が殺害したと推理。ピンガは施設を抜けて海中に逃げ去る。老若認証システムが欠陥システムだと知った黒ずくめ組織のジン(堀之紀)は、施設を攻撃。さらに潜水艦も爆破し、潜水艦に逃げ込もうとしたピンガは爆発に巻き込まれる。
コナンは、潜水艦の位置をFBI捜査官の赤井秀一(池田秀一)に知らせるため、海中から光を放つが、爆発の衝撃で気を失う。哀は阿笠博士(緒方賢一)の発明した海中スクーターで海に潜り、コナンを発見。人工呼吸をしてコナンの意識を取り戻し、救い出す。コナンとキスをしたことになった哀だったが、助けに来た毛利蘭(山崎和佳奈)に突然キスをし、コナン(新一)の唇を蘭に返すのだった。

自殺に見せかけた殺人事件のトリックを推理するシーン、阿笠博士のクイズなども盛り込みつつ、犯罪組織との戦いを描いたアクションサスペンス調の作品。直美と哀が幼馴染だった(哀はしらばっくれるが)という過去も明かされるなど、哀に焦点が当たった作品でもあった。あまり面白いと思わなくなっていた名探偵コナンシリーズだったが、本作はよくできていた。

【5段階評価】4

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2024年7月 9日 (火)

(2728) 許されざる者

【監督】ジョン・ヒューストン
【出演】オードリー・ヘップバーン、バート・ランカスター、オーディ・マーフィ、ジョセフ・ワイズマン
【制作】1960年、アメリカ

先住民族と闘う家族を描いた作品。クリント・イーストウッド監督の「許されざる者」(1992)と同じ邦題で、どちらも西部劇だが、内容は全く別物。

レイチェル・ザカリー(オードリー・ヘップバーン)は、父親ウィリアムを亡くしており、母親のマティルダ(リリアン・ギッシュ)、兄のベン(バート・ランカスター)とともに牧場で暮らしていた。レイチェルはウィリアムとマティルダの実の子ではなかったが、ザカリー家の娘として暮らしていた。レイチェルは、サーベルを持った男、エイブ・ケルシー(ジョセフ・ワイズマン)と出会う。彼は、レイチェルがマティルダの実の娘ではないことを知っていた。マティルダはケルシーを銃で追い返す。
ある日、ザカリー家の敷地に先住民族のカイオワ族が3人で現れ、その一人、ロスト・バード(カルロス・リバス)が3頭の馬を差し出し、レイチェルは自分の妹だから返してくれと言ってくる。ベンは拒否し、彼らを追い返す。レイチェルは、チャーリー(アルバート・サルミ)からプロポーズされ、それを受け入れるが、チャーリーはカイオワ族に襲われ、殺される。チャーリーの母ヘイガー(ジューン・ウォーカー)は、カイオワの血が流れているレイチェルのせいだとレイチェルをののしり、レイチェルはショックを受ける。
ケルシーは捕らえられ、馬に乗った状態で首に縄をかけられる。ケルシーは、過去のできごとを語る。かつてケルシーは、ウィリアムとカイオワ族を襲撃。そこでカイオワ族の赤子を見つけ、ウィリアムは殺さずに自分の子として育て始める。ケルシーも息子のアーロンをカイオワ族にさらわれたため、ウィリアムの赤子と引き換えに息子を取り戻したいとウィリアムに頼んだが、ウィリアムは拒否。アーロンはさらわれたままだと言う。ベンは、父が言っていたのは、アーロンとレイチェルの両親はカイオワ族に殺され、息子の死を信じないケルシーがレイチェルを引き渡せと言ったのだと語る。ケルシーは、赤子の体にあったカイオワ族の化粧を洗い落としたマティルダが真相を知っていると語ると、マティルダはケルシーの乗った馬をけしかけ、ケルシーを首吊りにする。家に戻ったマティルダは、ケルシーの言っていたことは本当だと白状する。
ザカリー一家の家に、再びカイオワ族のロスト・バードが2人のお供を連れて現れる。レイチェルは家を出ていこうとするが、ベンはレイチェルを行かせず、弟のアンディ(ダグ・マクルーア)に一人を殺せと命令。アンディは仕方なく、平和の合図を示しているカイオワ族の一人を撃つ。カイオワ族は一度引き返すと、総攻撃をかける。ベンらは家にこもって銃で応戦するが、マティルダが命を落とし、ついに貯蔵室に追い込まれる。そこに次男のキャッシュ(オーディ・マーフィ)が助けに現れる。貯蔵室にロスト・バードが現れ、レイチェルの前に立つが、レイチェルはロスト・バードに銃弾を浴びせ、ロスト・バードは死亡。レイチェルは血のつながらないベンと愛を誓いあうのだった。

タイトルの許されざる者。本作で許されざる者は誰か。ケルシーなのか、カイオワ族なのか。そうは思えない。許されざる者は、ウィリアムであり、マティルダであり、ベン、そして、実の兄かもしれない無抵抗の男を射殺したレイチェルだろう。ベンとレイチェルが結ばれて幸せに暮らしました、めでたしめでたし、とはとても思えない内容だった。
また、カイオワ族の襲撃シーンもひどかった。大勢でザカリー宅に襲い掛かり、一家を惨殺かと思いきや、ザカリーの家の周りを何の攻撃もせずにぐるぐる馬で走り回るだけで、ザカリー家に撃たれるたびに死んでいく。ベンが、カイオワ族のまじないに対抗して、ピアノを家の外に持ち出すと、カイオワ族は無防備なまま一生懸命ピアノを壊し始め、ザカリー家のかっこうの標的にされて死んでいく。わが身を守る概念がないかのような描き方。火攻めにすればいいじゃん、と思ったら、なんとベン自身が家の屋根に乗った牛を追い払うため自ら家に火を放ち、貯蔵庫にこもって家が全焼。万事休すと思ったら味方がひとり来ただけでカイオワ族は敗走。ご都合主義もはなはだしい。非常に後味の悪い作品だった。
オードリー・ヘップバーンが唯一出演した西部劇という珍しい作品。しかもその役が先住民というのだから、二重の珍しさだった。

【5段階評価】2

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2024年7月 8日 (月)

(2727) 砂の器

【監督】野村芳太郎
【出演】丹波哲郎、森田健作、加藤剛、島田陽子、緒形拳、加藤嘉、春田和秀、佐分利信、山口果林
【制作】1974年、日本

蒲田操車場で起きた殺人事件を扱った作品。刑事の説明、過去の回想、ピアノ協奏曲が同時進行するクライマックスシーンが圧巻。

蒲田操車場で顔を殴打された身元不明の死体が発見される。刑事の今西栄太郎(丹波哲郎)と吉村弘(森田健作)が遺留品のマッチをもとに店の従業員に話を聞くと、殺された男には東北訛りがあり、もう一人の若い男に「かめだ」と言っていたという証言が得られる。若い男は白いスポーツシャツを着ており、相当の返り血を浴びたはずだが、シャツは発見されていない。その恰好で遠くに行くとは思えないため、男は蒲田近くに住んでいるのか、蒲田でシャツを処分したのかと思われた。今西と吉村は東北まで行くが手掛かりは得られない。帰りの食堂車で、二人は新進気鋭の音楽家、和賀英良(えいりょう)(加藤剛)を見かける。
手掛かりのないままだったが、ようやく死体の身元が判明する。岡山に住む三木謙一だった。謙一の養子の彰吉(松山省二)が、謙一が旅に出ると言って50日も戻らないので捜索願を出していたのだ。謙一が東北弁を話すはずはないと彰吉は言う。今西は国語研究所で、東北訛りと同じ音韻は出雲の一部にもあると聞かされ、島根県の地図を調べると、「亀嵩(かめだけ)」という地名を発見する。三木謙一はそこで長年巡査をしていた。亀嵩に赴いた今西が人々に話を聞くと、三木謙一は温情のある立派な人物で、乞食の親子の面倒を見たこともあり、彼を恨むような人はいないということだった。
吉村は、中央線の甲府付近で列車から紙吹雪を撒いている女がいたという新聞の随筆を読み、女が撒いたのは紙ではなく切り刻んだスポーツシャツではないかと考え、筆者の川野栄造(穂積隆信)に連絡。その女性の情報を教えてもらう。吉村は情報をもとに、高級クラブ「ボヌール」の女給、高木理恵子(島田陽子)に会う。吉村が理恵子に、中央線に乗らなかったかと聞くと、理恵子は否定し、そのまま席を外して行方をくらます。吉村は中央線沿線をしらみつぶしに調べ、血の付いた布の欠片を発見。鑑識の結果、血は三木謙一の血液型O型と一致する。理恵子は和賀の情婦だった。和賀には後援者の前大蔵大臣、田所重喜(しげき)(佐分利信)の娘、佐知子(山口果林)という婚約者がいた。理恵子は和賀の子を身ごもっており、和賀は堕ろすよう理恵子に命じていた。理恵子は生む決心をするが、出血流産し、そのまま命を落とす。
今西は、謙一が旅の途中で訪れた伊勢に向かい、謙一が宿泊中に行ったという映画館を訪ねる。事務所の壁には、田所重喜の写真があった。今西は、そこで別の写真に気づく(それが何かは後でわかる)。今西が亀嵩で話を聞いた、謙一の知人、桐原小十郎(笠智衆)から今西に手紙が届く。そこには謙一が養子にした乞食親子の名前と本籍地が記されていた。今西は本籍地の石川県上沼郡大畑村に向かい、親子の縁者(菅井きん)に話を聞く。父親の本浦千代吉が病を患って、母親は出ていき、千代吉は息子の秀夫を連れて村を離れたということだった。
今西は続いて、和賀英良の本籍地である大阪市浪速区の区役所を訪ねる(なぜ和賀英良の本籍を調べたのかは後でわかる)。区の職員(松田明)の説明によると、英良の両親は空襲で死亡しており、戸籍も焼失したため、本人の申し立てにより戸籍が作り直されたということだった。現地で話を聞くと、英良の両親とされる夫婦には子供はおらず、従業員の小僧をかわいがっていたということだった。
警視庁で合同捜査会議が開かれ、今西は和賀英良の逮捕状を要求。事件の全容を話す。和賀英良の本名は本浦秀夫。彼の父親、千代吉(加藤嘉)はらい病を患い、幼い秀夫(春田和秀)を連れて各地を転々としながら亀嵩にたどり着いた。謙一(緒形拳)は、息子と離れたがらない千代吉を説得してらい病の隔離病院に送り、秀夫を我が子として育てることにするが、秀夫は謙一の家を出ていき、大阪の和賀夫婦の世話になる。空襲を機に、秀夫は戸籍を捏造し、和賀英良として高校を出、音楽家としての道を歩んだのだった。謙一が映画館で見たものは、田所重喜や佐知子と並ぶ、和賀英良の写真だった。和賀英良が本浦秀夫だと気づいた謙一は、急遽、東京に向かって和賀に会い、まだ生きている父親に会うよう説得。自分の過去が明かされることを恐れた和賀が、秀夫の首に縄をつけてでも父親のもとに連れていくと話す謙一を殺害したのだった。
和賀は、自ら作曲したピアノ協奏曲「宿命」を大ホールで披露していた。今西と吉村は、和賀英良こと本浦秀夫の逮捕状を手に、ホールで待機するのだった。

殺害の動機は弱い気がするが、オーケストラの演奏を背景に、秀夫の幼少時代の回想と、今西の事件の全容の説明が同時に進む演出は見事。回想シーンはオーケストラの演奏がBGMとしてあるだけで無音声であり、これは、人形浄瑠璃における三味線と、声を出さず動く人形、そして語りをする太夫と同じスタイルになっているということらしい。回想シーンはちょっと長いなあと思ったが、名シーンだった。公開当時21歳の島田陽子のスレンダーなヌードも登場。とても美人である。

【5段階評価】4

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2024年7月 7日 (日)

(2726) 風とライオン

【監督】ジョン・ミリアス
【出演】ショーン・コネリー、キャンディス・バーゲン、ブライアン・キース、サイモン・ハリソン、ポリー・ゴッテスマン
【制作】1975年、アメリカ

モロッコの盗賊の頭(かしら)と、彼に誘拐されたアメリカ人家族のやりとりを描いた歴史ドラマ。

1904年のモロッコ。リフ族の族長ライズリ(ショーン・コネリー)は、アメリカ人のイーデン・ペデカリス婦人(キャンディス・バーゲン)と息子のウィリアム(サイモン・ハリソン)、娘のジェニファー(ポリー・ゴッテスマン)を誘拐。欧米人と癒着する兄の太守(ブラデク・シェイバル)と敵対しており、アメリカへの交渉材料としてペデカリス一家を誘拐していた。イーデンはライズリに屈さず毅然とした態度をとり、ライズリは一家を客人として接遇。ウィリアムは威厳のあるライズリに好意を持つ。
アメリカのルーズベルト大統領(ブライアン・キース)は、ペデカリス一家をライズリから取り返すことで世論の人気を確かなものにしようとする。米軍は太守を捕虜とし、ペデカリス一家を返せばライズリの自由を保障すると交渉。ライズリは罠であることを恐れず、アメリカ軍やドイツ軍が駐留する拠点に赴き、ペデカリス一家を解放するが、ドイツ軍はライズリを捕虜としてしまう。数で劣るアメリカは手出しを控える。翌朝、イーデンは米軍をたきつけ、激しい戦闘の末、ライズリを解放する。ペデカリス一家の解放を知ったルーズベルト大統領は、ライズリからの手紙を読む。そこには、自分はライオンのようになわばりにとどまり、ルーズベルト大統領は風のようにとどまる地を知らない、と書かれているのだった。

蛮族の英雄と、誘拐された女性がきずなを深めるという、ストックホルム症候群の一種とも言える内容。人の首をはねるシーンをリアルに描いている辺りは邦画の「戦国自衛隊」(1979)や「魔界転生」(1981)などと通じていた。血しぶきがカメラに付着するシーンもあり、「プライベート・ライアン」(1998)や「トゥモロー・ワールド」(2006)でも登場する演出が、こんな時代からあったのかと驚いた(演出じゃないかもしれないけれども)。作品自体は、つまらないとは言えないまでも、あまり面白くもなかった。ライズリは実在の人物であり、歴史の勉強には少しなるかも。

【5段階評価】2

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2024年7月 6日 (土)

(2725) わるいやつら

【監督】野村芳太郎
【出演】片岡孝夫、宮下順子、藤田まこと、松坂慶子、梶芽衣子、藤真利子、緒形拳、渡瀬恒彦
【制作】1980年、日本

松本清張の小説の映画化作品。犯罪を重ねる医師の運命を描いた作品。

医師の戸谷信一(片岡孝夫)は、浮気相手の横武たつ子(藤真利子)に粉薬を渡す。たつ子は夫、常次郎(米倉斉加年(まさかね))を殺したがっており、信一は疑われる恐れのない薬をたつ子に渡していた。常次郎は亡くなるが、たつ子は殺人を疑われて信一に泣きつく。婦長の寺島トヨ(宮下順子)は、たつ子に注射を続けて殺害。信一はたつ子の死亡診断書に心筋梗塞と書き、殺害は闇に葬られる。信一は、料亭のおかみ、藤島チセ(梶芽衣子)とも関係を持っていた。チセは、料亭の経営に口出しする料理人の夫を疎ましく思っていた。妻の慶子(神崎愛)との離婚の慰謝料として3,000万円が必要だった信一は、チセから3,000万円をもらうため、チセにも薬を渡し、チセの夫を死に至らしめる。
信一は、新進気鋭のファッションデザイナー、槙村隆子(松坂慶子)に入れ込んでいた。信一は隆子にいい顔を見せるため、懇意にしている計理士の下見沢(藤田まこと)に実印を預け、持っている土地を担保に1億3,000万円を工面してもらう。信一は慰謝料を除いた1億円の残高が口座にあることを確かめると、隆子に通帳と印鑑を渡し、歓心を買おうとする。
信一は、婦長のトヨとも関係を持っていた。信一の悪事を見抜いているトヨは、隆子との浮気を許さず、信一を束縛。トヨを疎んじた信一は、トヨの首を絞め、動かなくなったトヨを車で山奥に運び、捨て去る。
3,000万円が必要な信一は、チセに会おうとするが会えない。隆子も信一と距離を置く。信一は隆子に会ってくれない理由を聞くが、女から信一の悪事を夜な夜な電話で聞かされるのだと答える。信一は、トヨが生きているのではないかと恐怖する。しかも口座の1億円は下見沢にだまし取られていた。刑事の井上(緒形拳)は全てを調べ上げていた。信一は、自分を騙した下見沢を捕まえるためなら、と犯行を自供。信一は無期懲役に処される。下見沢は隆子のマネージャーに収まっていた。網走刑務所に向かう途中、信一は、下見沢が隆子を刺し殺したという事件を知るのだった。

序盤、信一の屋敷にいるトヨが、信一の妻のように見え、なぜたつ子が信一に泣きついても涼しい顔をしているのか不思議だったが、婦長だった。妻は別にいたので、序盤で別居していることをちゃんと描いた方が分かりやすかっただろう。女性が多く登場するが、話は分かりやすく作られていた。善人に見えた隆子もしたたかな悪女であり、最後に大きな報いを受ける。ちょい役で蟹江敬三や小林稔侍が出演していた。

【5段階評価】3

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2024年7月 5日 (金)

(2724) ミセス・ダウト

【監督】クリス・コロンバス
【出演】ロビン・ウィリアムズ、サリー・フィールド、ピアース・ブロスナン、ロバート・プロスキー、リサ・ジェイカブ
【制作】1993年、アメリカ

子供との面会を制限された男が家政婦に化けて子供たちに会う様子を描いたコメディ作品。

声優のダニエル・ヒラード(ロビン・ウィリアムズ)は自由奔放な性格。アニメのアテレコでアドリブを聞かせ過ぎ、雇い主と口論になって失業。そんな彼だが、長女のリディア(リサ・ジェイカブ)、長男のクリス(マシュー・ローレンス)、次女のナタリー(マーラ・ウィルソン)は父親が大好きで、ダニエルも子供たちを溺愛していた。しかし、好きが高じて移動動物園を自宅に呼んで大騒ぎし、とうとう妻のミランダ(サリー・フィールド)に愛想をつかされ離婚。失業中のダニエルは養育権を認められず、週に一度しか子供に会えなくなり、3か月後に養育権の再審査となる。
ミランダが家政婦を雇うのを知ったダニエルは、特殊メイクアップアーティストの弟、フランク(ハーベイ・ファイアスタイン)におばさんに変身させてもらい、ミセス・ダウトファイアと名乗って家政婦の座に収まる。子供たちはダウトファイアになじみ、ミランダも家政婦を気に入る。
ミランダは、ハンサムなビジネスマンのスチュワート・ダンマイア(ピアース・ブロスナン)と家族ぐるみでレストラン「ブリッジズ」で食事をすることになり、ダウトファイアも誘われる。ダニエルは同じ時間に同じ店でテレビ局のジョナサン・ランディ社長(ロバート・プロスキー)と重要な仕事の会食が入る。どちらも断れないダニエルは、ダウトファイアとダニエルを行ったり来たりしながら両方の会食をこなそうとするが、とうとうばれてしまう。
養育権の再審査が始まり、ダニエルは子供との間を引き裂かないでほしいと懇願するが、審査官はこれまで通りの週に一度の面会、しかも監視付きという結果を言い渡す。ミランダは再び家政婦を探すが、ダウトファイア以上の家政婦は見当たらない。そんなとき、テレビからダウトファイアの声が聞こえ、子供たちはテレビの前に飛んでいく。テレビではダウトファイアの出演する子供番組が始まっていた。子供とともにテレビを楽しむうち、ミランダは考えが変わり、放課後の子供の世話をダニエルに託すことにする。ダニエルも子供たちも大喜びするのだった。

ロビン・ウィリアムズのコメディ役者としての演技力が光る作品。ではあるのだが、女性と男性を行き来してあたふたしたり家具や人にぶつかったり、と、慌てぶりが芝居がかっており(いや芝居なんですけども)、作り物っぽさが鼻に付いた。また、レストラン「ブリッジズ」でのドタバタも長すぎた。ジャッキー・チェンの映画でも、似たようなドタバタがときどきある(「ツイン・ドラゴン」とか)が、けっこう匙加減の難しいシーンなのだと知った。

【5段階評価】3

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2024年7月 4日 (木)

(2723) 道頓堀川

【監督】深作欣二
【出演】真田広之、松坂慶子、佐藤浩市、山崎努、加賀まりこ、名古屋章、古館ゆき、カルーセル麻紀、柄本明
【制作】1982年、日本

大阪の道頓堀を舞台に、喫茶店で働く絵描きの卵と小料理屋のママの恋模様、そしてハスラーの親子のやりとりを描いた作品。

絵描きの卵の安岡邦彦(真田広之)が、道頓堀川で絵を描いていると、小太郎という犬を追う和服姿の美しい女性(松坂慶子)と出会い、好意を持つ。邦彦は独り身で、美術大学に通いながら道頓堀川沿いのリバーという喫茶店でアルバイトをしていた。リバーのマスター、竹内鉄男(山崎努)は元ハスラーで、息子の政夫(佐藤浩市)は邦彦の同級生。政夫はビリヤードで名を馳せようとしていたが、ビリヤードはばくちだと考えている鉄男は、政夫の生き方に反対していた。邦彦は鉄男に小料理屋「梅の木」に連れて行ってもらう。そこのママが道頓堀川で出会った女性、まち子だった。邦彦とまち子は互いに魅かれ合う。まち子はパトロンの社長(安部徹)と縁を切り、邦彦と同棲することにする。
鉄男は、政夫の覚悟を問うため、辞めていたビリヤードを再開。政夫が勝てば鉄男の店を政夫に手渡し、負ければビリヤードをやめさせるという、ナインボール9番勝負を息子に挑む。鉄男は勝負の最中、母親が自殺したのは、自分が体を売れと言ったからだ、と告白する。動揺した政夫は4対4の対戦成績で臨んだ第9ゲームで最後のナインボールを落としきれず、ナインボールはポケットの手前で止まってしまう。鉄男の勝ちは必至だったが、鉄男は「これがばくちや」と言いながら指でナインボールをポケットに落として政夫を勝たせ、「すきなことをせえ」と言って店を出る。
勝負を観戦していた邦彦は、二人のやりとりに耐えきれず、ビリヤード場を飛び出す。まち子の待つ家に戻る途中、リバーの常連のかおる(カルーセル麻紀)が包丁を振りかざして浮気者の三味線弾き、石塚(江本明)に襲い掛かっている場面に遭遇。石塚は邦彦を盾にし、かおるは邦彦の腹を刺してしまう。邦彦は倒れ、何も知らないまち子が邦彦の帰りを待つ道頓堀川に、パトカーと救急車のサイレンが鳴り響くのだった。

道頓堀の周辺が舞台となっており、道頓堀界隈を知る人には楽しい作品だろう。松坂慶子と真田広之の濡れ場も見どころ。邦彦の高校の同級生、さとみ(古館ゆき)が全裸で踊り狂うシーンも見どころかも。
鉄男が政夫の生き方を認める結末はよかったが、邦彦が腹を刺されて、鍋の用意をして待つまち子のもとにたどり着けないというのは、芝居がかりすぎていて、興ざめだった。

【5段階評価】3

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2024年7月 3日 (水)

(2722) ドラえもん のび太とアニマル惑星

【監督】芝山努
【出演】大山のぶ代(声)、小原乃梨子(声)、田中真弓(声)、野村道子(声)、たてかべ和也(声)、肝付兼太(声)
【制作】1990年、日本

ドラえもんの劇場版第11作。動物が平和に暮らす惑星を守るためにドラえもん(大山のぶ代)たちが奮闘する姿を描いている。

のび太(小原乃梨子)の家が、どこでもドアに似たどこでもガスという未来の道具の力で、動物が人間のように進化して暮らしているアニマル星とつながる。のび太はそこで犬の少年チッポ(田中真弓)と友だちになる。アニマル星の衛星「地獄星」に住むニムゲは、自然破壊が進み廃墟のようになった自分たちの星を捨ててアニマル星への侵略を開始。ドラえもんたちはがんばって抵抗する。すると、地獄星の政府軍が現れ、アニマル星を攻撃している人たちを逮捕する。地獄星の人たちは、自分たちの星を自然豊かな星に戻すことを誓ってアニマル星から去っていく。のび太たちはチッポに別れを告げ、地球に戻るのだった。

環境破壊に警鐘を鳴らすメッセージ性強めの作品。最初に、のび太がアニマル星にたどり着くのが夢なのか現実なのか分らないという謎が提示され、それが次第に解き明かされていくという作り方をしており、中盤も、しずかちゃん(野村道子)をアニマル星に連れてきたのに動物が全然いないとか、後から来たジャイアン(たてかべ和也)とスネ夫(肝付兼太)が謎の人影に怯えたり、と謎とその回収が何度かあり、教育的な内容もあって、子供向けによくできている作品だった。本作はアマゾンプライムで鑑賞。

【5段階評価】3

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2024年7月 2日 (火)

(2721) 鴨川ホルモー

【監督】本木克英
【出演】山田孝之、濱田岳、栗原千明、芦名星、荒川良々、石田卓也、斉藤祥太、斉藤慶太
【制作】2009年、日本

万城目学の小説が原作のファンタジー青春映画。鬼を使って戦う儀式を行う大学サークルの様子を描いている。

二浪して京都大学に入った安倍明(山田孝之)は、同じ新入生の高村(濱田岳)とともに、上回生の菅原真(荒川良々)から、青竜会というサークルの新人歓迎会に誘われ、参加。安倍は、歓迎会に現れた早良京子(芦名星)に一目惚れし、京子目当てで青竜会に入る。安倍は、そのサークルが、小さな式神の集団を操って大学同士で戦う伝統的な行事、ホルモーを目的としていることを知る。新人は鬼語を学び、式神を操る方法を訓練し、1年後、式神が見えるようになる。
安倍は勝ち気な性格の芦屋(石田卓也)と何かと衝突。京子が芦屋と付き合っていることを高村に教えられ、ショックを受ける。芦屋と一緒にいたくない安倍は、チームの10人を5人ずつに分けることにする。すると、神の怒りに触れたのか、京都の空に巨大な黒い式神が現れる。安倍は5人ずつの2チームで立派な紅白戦を行うことで神の怒りを静めることにする。
京子が安倍の家を訪ね、芦屋の気を引くため、時折、安倍を出しに使っていたことで、芦屋が安倍を敵視するようになったことを白状する。そこに芦屋が現れ、お前は振られたんだと言って安倍を殴り倒すと、京子を連れて去って行く。それを見ていたサークル仲間の楠木ふみ(栗山千明)は、ずっと安倍が好きだったと告白し、紅白戦でがんばろうと言って去って行く。
紅白戦で白組の安倍、楠木らは劣勢から奮戦し、芦屋の軍を全滅させる。神の怒りが頂点に達し、芦屋が怪しい気に取り憑かれ危険な状態になったため、安倍は芦屋に飛びかかって助け出す。神の怒りは晴れ、芦屋は助かるが、安倍が相手の体に触れるという反則を犯したことで、白組は敗北する。安倍と芦屋は晴れ晴れとした顔で握手を交わす。安倍は眼鏡の壊れた楠木に、コンタクトの方がかわいい、と照れながら声をかける。年が明け、安倍は、自分が1回生のときされたように、新人をサークルに勧誘するのだった。

タイトルは知っていてどういう話か気になっていたが、予想も付かない内容だった。京都大学出身者は、より楽しめるだろう。式神に命令する鬼語は、例えば「潰せ」が「ゲロンチョリー」などおかしな言葉で、しかも独特の振り付けもある。万城目学とパパイヤ鈴木のセンスが光り、これを俳優が大真面目でやるのがよかった。
なお、今回はTOKYO MX2で観たのだが、画質が粗く、ひどかった。また、セリフも妙に聞き取りづらかった。

【5段階評価】3

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2024年7月 1日 (月)

(2720) 珍遊記

【監督】山口雄大
【出演】松山ケンイチ、倉科カナ、溝端淳平、藤本泉、今野浩喜、温水洋一、笹野高史、田山涼成、ピエール瀧
【制作】2016年、日本

漫☆画太郎の漫画「珍遊記 -太郎とゆかいな仲間たち-」の実写映画化作品。僧侶と暴れん坊が起こす騒動を描いている。

じじい(田山涼成)とばばあ(笹野高史)は暴れ者の大男、山田太郎(ピエール瀧)に手を焼いていた。尼僧、玄奘(倉科カナ)は法力で太郎の妖力を封じる。小さくなった太郎(松山ケンイチ)だったが、暴れ続けるため、玄奘は太郎の頭に暴れると締まる金の輪をはめる。玄奘は太郎に徳を積ませながら天竺を目指す。
太郎に恨みを持つ龍翔(溝端淳平)は、太郎に戦いを挑む。龍翔の部下、奈落(藤本泉)に「はげ頭天竺馬鹿女」と挑発された玄奘が龍翔らを追い散らす。玄奘と太郎は旅を続けるのだった。

パタリロ!」と同類のおバカ映画。おならや男の全裸など、見るに堪えないお下劣な内容だが、それを松山ケンイチや倉科カナといった、ちゃんとした俳優が演じているというのが、唯一の見所。これを無名の役者がやっていたら、ほぼ間違いなく評価1だっただろう。

【5段階評価】2

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