(2675) 異人たちとの夏
【監督】大林宣彦
【出演】風間杜夫、片岡鶴太郎、秋吉久美子、名取裕子、永島敏行
【制作】1988年、日本
少年時代に亡くなった両親に出会った男の運命を描いた作品。
脚本家の原田英雄(風間杜夫)は、離婚してマンションで一人暮らし。ある日、同じマンションに住む唯一の住人(名取裕子)がシャンパンを手に秀雄の部屋の玄関に現れる。彼女はシャンパンを一人では飲みきれないので一緒に飲もうと誘ってくるが、仕事中だった英雄は彼女を追い返す。
ある日、仕事終わりに、故郷の浅草に行って寄席に入った英雄は、客席に父親(片岡鶴太郎)によく似た男がいて驚く。男は英雄を見つけると当たり前のように外に秀雄を連れ出し、家に連れて帰る。中には母親(秋吉久美子)がおり、二人は英雄を歓迎する。二人は本当に英雄の両親だった。英雄の両親は、英雄が12歳の時に交通事故で亡くなっていた。英雄は優しく温かい両親との再会を喜ぶ。
英雄が自宅のマンションに戻ると、以前追い返した女がいた。ご機嫌の英雄は、女性に今度飲もうと声をかけ、後日、家に招く。彼女の名は藤野桂(けい)。英雄と桂は愛し合うようになる。桂は胸に火傷の痕があると言い、決して胸を見ないよう英雄に約束させる。英雄は両親の家をたびたび訪ねるようになるが、なぜかほほがこけ、目にクマができてやつれていく。桂は英雄が両親の亡霊に会っている話を聞き、両親に会いに行くのをやめさせようとするが、英雄は約束を守らず、鏡に映る彼の顔は死人のような形相になっていく。とうとう英雄は両親にもう会えないと切り出す。両親は悲しみつつも、英雄が衰弱していることを知り、英雄の頼みを聞き入れる。三人は最後の思い出に、と今半のすき焼きを食べに行く。しかし、すき焼きが煮えた頃には、二人の姿は幻のように消えかかっていた。英雄は子供のように泣きながら「行かないで!」と訴えるが、二人は英雄の前から消えてしまう。家に帰った英雄は、桂に慰められていた。英雄のマンションに、英雄の仕事仲間の間宮一郎(永島敏行)が現れる。衰弱している英雄が心配で訪ねてきたのだ。間宮はロビーで英雄を待つが、管理人(奥村公延)に、マンションには英雄しかおらず、もう一人の住人だった女性は胸をチーズナイフでめった刺しにして自殺したと告げる。間宮は急いで明かりのついている女性の部屋に飛び込む。中には老人のような顔になった英雄と、桂がいた。桂が胸をはだけると、そこにはいくつもの刺し傷があった。桂は英雄に冷たく追い返された夜、自殺したのだった。桂の体は宙に浮き、英雄を道連れにしようとする。英雄はそれを受け入れようとするが、間宮が英雄を守り、桂は一人で消滅する。英雄と間宮は、英雄の両親が住んでいた辺りに行き、両親を弔うと、その場を去るのだった。
子供の頃に亡くした両親との再会という感動的な話と、男に取り付いた女の亡霊という怪談話が同居する珍しい作品。英雄のやつれた顔が、恐怖映画の特殊メイクのようなので、ぞっとする怖さがある。両親との再会は悲しくも心温まる話なのだが、恐怖映画嫌いな人は、観ないほうがいいかもしれない。
【5段階評価】4
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