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2024年4月25日 (木)

(2653) 永遠の人

【監督】木下惠介
【出演】高峰秀子、仲代達矢、佐田啓二、加藤嘉、乙羽信子、田村正和
【制作】1961年、日本

望まぬ結婚を強いられた女性の半生を描いた作品。

昭和7年の阿蘇。小作人の娘、さだ子(高峰秀子)は、戦地にいる隆(佐田啓二)と思いを寄せ合っていたが、負傷して戻ってきた地主の息子、小清水平兵衛(仲代達矢)は横恋慕でさだ子を手籠めにする。地元に戻った隆はさだ子に夜逃げしようと約束し、さだ子は夜明けに待ち合わせ場所に向かうが、隆は直前で思い直し、さだ子の幸せを願って一人で旅立つ。
昭和19年。さだ子は平兵衛と結婚し、二男一女を儲けていたが、夫婦関係は冷え切っていた。家では平兵衛の父親の平左衛門(永田靖)が寝たきりになっており、彼が鈴を鳴らすとさだ子が世話をしなければならない。隆と大阪で結婚したが戦地に出ており、妻の友子(乙羽信子)が、息子を連れてさだ子の住む村に疎開してくる。平兵衛は手伝いに友子を雇い、さだ子と隆の関係を知子に話す。友子はさだ子に複雑な感情を抱き、さだ子に反発。平兵衛は友子の同情を買いつつ友子に言い寄るが、知子は拒絶。手伝いをやめ、地元に帰る。
昭和24年。さだ子は平兵衛に馬された長男の栄一(田村正和)を愛することができずにいた。平兵衛は過去の恨みを引きずるなとさだ子を責めるが、であればあなたは村に戻ってきた隆と私が会っても何も言わないのかと言い返す。隆は肺病を患って村に帰って来ていたのだ。さだ子と平兵衛の話は地元で有名であり、栄一は自分の出自の経緯を知って自分が母親に愛されない理由を悟り、遺書を残して失踪。探しに出たさだ子は、久しぶりに隆と再会。二人で栄一を探すが、栄一は阿蘇の火口に身を投げ、自殺してしまう。
昭和35年。さだ子と平兵衛の娘、直子(藤由紀子)が、隆の息子、豊(石浜朗)が結婚し、大阪に渡る。そのことをさだ子から聞かされた平兵衛は怒り、結婚を許さないと言い張って、隆を呼ぶよう、さだ子の父の草二郎(加藤嘉)に命じる。草二郎が隆を連れてくる道中、隆の別れた妻、友子が隆の前に現れる。友子は隆の看病をせずに逃げたことを謝罪し、息子の豊の居場所を隆に聞き出そうとするが、知子を恨んでいた隆ははねつけると、血を吐いて倒れてしまう。
昭和36年。死の床に臥せている隆のもとに、豊と直子が生まれた子を連れて帰ってくる。さだ子も枕もとで、生まれた孫がさだ子と隆の間にできた子供のようだと隆に話す。隆が、平兵衛に悪いことをした気がするので謝っておいてほしいと言ったのを聞いて、さだ子は居てもたってもいられず、自宅に走って帰り、囲炉裏端にいた平兵衛に謝罪して、直子の結婚を許してやってほしいと懇願する。平兵衛はそれでも結婚を許さなかったものの、自分は人の道には外れたがさだ子を愛していたことは本当だと心情を吐露する。さだ子は、平兵衛の許しが出たと隆に嘘をつくと言って家を後にする。すると、さだ子を呼ぶ声がし、平兵衛が杖を突いて家から出てくる。さだ子が自分を許すなら、自分も直子の結婚を許そうと言うのだ。平兵衛はさだ子に先に行くよう促し、さだ子を追うように隆の家に急ぐのだった。

戦前戦後の日本の映像に、激しいフラメンコの楽曲という独特な組み合わせが印象的。世代をまたがる長期間を描くので、退屈しそうだが、本作は一章から五章までの章立てで物語が進行し、小気味よく時代が移っていき、展開に中だるみがない。さだ子と平兵衛、そして隆の運命はどうなるのか、興味をそがれることなく見続けられた。映画の冒頭に登場する、記者に乗った若い男女が、主人公の娘でした、というのも、映画ではよくある演出ながら、「そういうことかぁ」という感慨が面白かった。役者の世代を超えた老けメイクも、古い作品にしては違和感がなかった。白黒映像のおかげかもしれない。
作中、「ちんば」や「かたわ」といった用語が登場するが、最近は「ピー」音入れずに流す風潮だな。

【5段階評価】4

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