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2024年3月

2024年3月31日 (日)

(2628) ミラベルと魔法だらけの家

【監督】ジャレド・ブッシュ、バイロン・ハワード
【出演】ステファニー・ベアトリス(声)、マリア・セシリア・ボテロ(声)、ジョン・レグイザモ(声)、ダイアン・ゲレロ(声)
【制作】2021年、アメリカ

魔法の能力をもった一家に生まれた少女の活躍を描いたディズニーアニメ作品。

コロンビアのエンカントという地域に住むミラベル(ステファニー・ベアトリス)は、マドリガル家の元気な少女。祖母のアブエラ(マリア・セシリア・ボテロ)は夫ペドロと死別しており、息子のブルーノ(ジョン・レグイザモ)は未来を見る力、二人の娘のうち、フリエッタ(アンジー・セペダ)は料理で人を癒やす力、ペパ(カロリーナ・ガイタン)は自分の感情を頭上に天候として示す力を宿していた。ペパの長男カミロ(レンジー・フェリズ)は変身する力、次男のアントニオ(ラビ・キャボット=コニャーズ)は動物と話す力、フリエッタの長女イサベラ(ダイアン・ゲレロ)は花を咲かせる力、次女のルイーサ(ジェシカ・ダロウ)は怪力を授かっていたが、ミラベルは魔法を授かるはずの儀式で何も授からなかった。家族の中で、ブルーノはなぜか一族の元を去っており、彼の話をするのはタブーになっていた。
ある日、ミラベルは意志を持つ家カシータがひび割れていくのに気づく。ミラベルは、家の中の砂の部屋に入り、ブルーノの残した未来のビジョンを写したガラス板を発見。いなくなっていたはずのブルーノが家の中に隠れ住んでいることを知る。
祖母のアブエラは、家族を護りたいあまり、暗い未来を予知するブルーノを遠ざけ、魔法の力のないミラベルにつらくあたっていた。ブルーノの予知の通り、マドリガル家の家は不思議な力によって崩壊してしまうが、ミラベルは前向きにみんなで家を再建することを提案。町の人々も手伝い、家は見事に再建される。ブルーノも家族と再会し、マドリガル一家は仲よく記念写真に収まるのだった。

安定のディズニーアニメ。家族愛が描かれており、主人子の恋愛は描かれていない。登場人物は浅黒い南米の人たちであり、当世の多様性への配慮がうかがわれる。主人公のミラベルも、決して美少女キャラではなく、低身長でずんぐりむっくりした眼鏡少女だ。

【5段階評価】4

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2024年3月30日 (土)

(2627) 風に立つライオン

【監督】三池崇史
【出演】大沢たかお、石原さとみ、萩原聖人、真木よう子、鈴木亮平、石橋蓮司、エリック・オジャンボー
【制作】2015年、日本

アフリカの医療に命を捧げた日本人男性医師を描いた作品。さだまさしの小説が原作。

ケニアの熱帯医学研究所に、島田航一郎(大沢たかお)と青木克彦(萩原聖人)が研修に来る。赴任期間中、二人はロキチョキオにある医療施設の支援に向かう。そこは内戦で負傷した兵士が送り込まれる場所で、負傷者には少年兵も含まれていた。航一郎はそこで、患者の壊死した手や脚を切断したり、治療した男が再び戦闘員になったりという現実に直面。一ヶ月の派遣期間が終わった後、航一郎は再びロキチョキオに戻る。しばらくして、日本人の看護師、草野和歌子(石原さとみ)も着任。二人は少年たちの治療に邁進する。少年兵のンドゥング(エリック・オジャンボー)も脚を負傷して担ぎ込まれ、はじめは航一郎に反抗的な態度をとるが、次第に心を通わせていく。
航一郎には、医学生時代をともに過ごした恋人、秋島貴子(真木よう子)がいた。航一郎はケニアに渡る際、貴子に一緒に来ないかとプロポーズ。貴子は、脳梗塞を患った父親(山崎一)が営む離島の診療所を放っておくことができず、ケニア行きを断ったのだった。
航一郎はケニアで働き続ける決断をするが、ある日、山賊に襲われ、命を落とす。彼が遺した手紙が、ケニアの研究所長の村上(石橋蓮司)を通じて貴子のもとに届く。そこにはただ「お願いだからしあわせになってください」とだけ書かれていた。貴子は嗚咽を漏らす。
時が経ち、東北大震災の被災地に、青年になったンドゥング(パトリック・オケッチ)が立つ。彼は航一郎の遺志を継いで医師になったのだった。

さだまさしが実在の医師、柴田紘一郎をモデルとした作品。いわゆるお涙ちょうだい映画であり、ご都合主義的な展開はあるものの、感動的な作品だった。航一郎のケニアでの赴任の様子を描いた後、一転して日本にいる貴子や青木の航一郎談話になるのが、ドキュメンタリー風の味付けで面白かった。

【5段階評価】4

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2024年3月29日 (金)

(2626) ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃

【監督】金子修介
【出演】新山千春、宇崎竜童、小林正寛、天本英世、佐野史郎、村井国夫、大和田伸也、南夏歩
【制作】2001年、日本

ゴジラ」シリーズ第25弾。日本に出現したゴジラと護国の怪獣との戦いを描いた作品。「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」の続作。

日本の防衛軍がゴジラを撃退してから50年。再びゴジラの出現の兆しが現れる。低俗BS番組の制作に関わる立花由里(新山千春)は、日本の国を護る護国の聖獣が目覚めていると考える。ゴジラが静岡県に上陸。すると、新潟県の地中からバラモンが現れ、ゴジラに戦いを挑むが、倒される。続いて鹿児島県の池田湖からモスラが飛び立ち、さらに富士の樹海から目覚めた三つ首のギドラもゴジラに立ち向かう。ゴジラの吐く光線により、モスラは光の粒子となって飛び散るが、それがギドラと合体し、羽の生えたキングギドラとなる。ゴジラはキングギドラも倒すが、由里の父親で軍人の立花泰三(宇崎竜童)が、潜水艇ごとゴジラの体内に入り込み、ドリル型ミサイルをゴジラに撃ち込む。ゴジラは熱線を吐こうとするが、そのまま消滅。由里は父親の帰還を喜ぶ。しかし、海底ではゴジラの心臓が不気味に鼓動を続けているのだった。

平成の特撮技術によって、映像に多少の迫力は出たものの、やはり町並みは模型だし、怪獣は着ぐるみだし、ヘリコプターはミニチュア。子供だましの作品だった。ただ、加瀬亮が漁師の息子役で出ていたり、山寺宏一がテレビ局プロデューサー役で出ていたり、温水洋一が旅館の宿泊客役で出ていたり、佐藤二朗が防衛軍の報告係役で出ていたり、ゲスト出演ではなく、ガチのちょい役で出演しているのが面白い。他にも篠原ともえやかとうかずこ、「ガメラ3 邪神覚醒」の前田愛が実妹の前田亜季とともにゲスト出演したりしており、知っている俳優を探す楽しみがあった。

【5段階評価】2

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2024年3月28日 (木)

(2625) ジュディ 虹の彼方に

【監督】ルパート・グールド
【出演】レニー・ゼルウィガー、ジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェル、ダーシー・ショウ
【制作】2019年、イギリス、アメリカ

晩年のジュディ・ガーランドを描いた伝記映画。

オズの魔法使」のドロシー役を射止めたジュディ・ガーランド(ダーシー・ショウ)は、大人(レニー・ゼルウィガー)になってからは不遇で、娘のローナ(ベラ・ラムジー)と息子のジョーイ(ルウィン・ロイド)を舞台に立たせて日銭を稼ぐが、料金滞納でホテルを追い出され、元夫のシドニー(ルーファス・シーウェル)のもとに子どもを預けて、ロンドンでステージをこなすことにする。
ロンドンではそれなりに人気が出るが、精神的には不安定で睡眠薬を常用し、酒もあおりがち。付き人のロザリン(ジェシー・バックリー)にきつく当たったり、ステージに遅れて観客のヤジに暴言を放ったりする。知人のミッキー・ディーンズ(フィン・ウィットロック)は、ジュディの人気にあやかった事業を企画し営業に奔走。親密になった二人は結婚するが、事業は失敗。喧嘩になった二人は早々に離婚してしまう。興行主のバーナード・デルフォント(マイケル・ガンボン)は彼女に医者を紹介する。
早く子ども達と暮らしたいジュディだったが、ロンドンを訪れたシドニーから、子ども達は自分の家で暮らし続けたいと言っていると告げる。信じられないジュディは電話で子どもの本音を確認するが、それは本当だった。ジュディは愛していると子どもに告げるが、涙を抑えることはできなかった。
契約を解除されたジュディだったが、代役のロニー・ドネガン(ジョン・ダグリーシュ)にお願いをしてステージに上げてもらう。ジュディは見事な歌声を披露し、観客の喝采を浴びる。しかし2曲目の「虹の彼方に」では、涙声になって歌えなくなる。すると、ジュディの長年のファンだったダン(アンディ・ナイマン)が客席で立ち上がり、ジュディに変わってアカペラで「虹の彼方に」を歌い、パートナーのスタン(ダニエル・セルケイラ)もそれに続く。瞬く間に観客全体の大合唱が始まり、立ち上がったジュディは観客に感謝し、私を忘れないでと告げる。半年後、ジュディは47歳の生涯を終えるのだった。

子役時代から芸能生活を走り続け、決して幸せとは言えない不安定な晩年を過ごしたジュディ・ガーランドの半生を描いている。レニー・ゼルウィガーの演技が素晴らしい。歌はレニー本人が歌っており、本作でアカデミー賞主演女優賞を獲得している。映画ファンなら観ておきたい作品。

【5段階評価】4

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2024年3月27日 (水)

(2624) Dr.コトー診療所

【監督】中江功
【出演】吉岡秀隆、柴咲コウ、高橋海人、生田絵梨花、小林薫、時任三郎、泉谷しげる、大塚寧々、筧利夫
【制作】2022年、日本

山田貴敏の同名漫画が原作のドラマの劇場版。沖縄の孤島の医師の奮闘を描いた作品。

沖縄県の志木那島(しきなじま)の診療所の医師、五島健助(吉岡秀隆)のもとに、研修医の織田判斗(高橋海人)がやってくる。健助の妻で看護師の彩佳(柴咲コウ)は身ごもっており、助産師の西野実登里(藤田弓子)は出産に立ち会うのを楽しみにしていた。しかし、健助は体調が思わしくなく、判斗の協力で骨髄液の検体をとる。結果は急性骨髄性白血病。彩佳は健助の本土での治療を願うが、健助は島民を置いていけないと迷う。そんな中、志木那島に台風が襲来し、多くの島民が怪我で診療所に担ぎ込まれる。健助は病を押して診療所に現れ、患者を診ていく。のぶおじ(中丸新将(しんしょう))の呼吸が止まり、健助が必死で心臓マッサージをする中、身重の彩佳が倒れ、駆け寄ろうとした健助もとうとうその場に倒れてしまう。判斗が絶望する中、島に戻っていた原剛洋(富岡涼)が心臓マッサージを続け、のぶおじの心拍が復活。起き上がった健助は、続いて実登里の心臓バイパス手術に臨み、判斗と和田一範(かずのり)(筧利夫)とともに手術を成功させる。時が経ち、彩佳は無事、子どもを産み、歩き始めた我が子を健助が抱き上げるのだった。

テレビドラマから16年後の映画化ということで、ファンへのご褒美のような作品だが、いくらなんでもあれこれ詰め込みすぎ。台風でそんなにけが人が出るのかよ、どいつもこいつも容態が悪化するのかよ、しかもなんだかんだでみんな助かるのかよ、というご都合主義極まる内容だった。

【5段階評価】3

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2024年3月26日 (火)

(2623) フラッシュ・ゴードン

【監督】マイク・ホッジス
【出演】サム・J・ジョーンズ、メロディ・アンダーソン、マックス・フォン・シドー、トポル、ティモシー・ダルトン
【制作】1980年、アメリカ

アメコミヒーローが題材のSF作品。悪の支配者と戦う人間の活躍を描いている。

宇宙人のミン皇帝(マックス・フォン・シドー)は、戯れに地球に災害を起こし、楽しんでいた。アメフト選手のフラッシュ・ゴードン(サム・J・ジョーンズ)は、旅行会社の美人社員デイル・アーデン(メロディ・アンダーソン)と飛行機に乗っているところ、飛行機が悪天候に巻き込まれ、地上に不時着。そこには、宇宙人襲来を予言する科学者ハンス・ザーコフ(トポル)がおり、三人はロケットでもみ合いになっているうちに、ロケットがミン皇帝のいるモンゴを目指して飛び立つ。
モンゴでは、ミン皇帝の悪政のもと、種族同士がいがみ合っていたが、フラッシュは友情を示してアルボリアの王、バリン(ティモシー・ダルトン)やホークマンの王、バルタン(ブライアン・ブレスド)らを味方に付け、ミン皇帝を倒す。バリンが新しい王となり、バルタンが将軍に任命され、モンゴに平和が訪れるのだった。

ロックバンド、クイーンの手がけたテーマ曲が有名。宇宙人が普通に英語を話したり、結婚という儀式があるのはともかく、曲が結婚行進曲だったりするという、とんでもSF映画。子供向け特撮映画のできばえだが、大量のホークマンが空を飛ぶシーンは、なんだか印象的。特撮のできはお世辞にもいいとは言えず、俳優のアクションもお粗末だが、いわゆる「迷画」の類いとして、一度観ておいてもいいだろう。

【5段階評価】2

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2024年3月25日 (月)

(2622) アリータ:バトル・エンジェル

【監督】ロバート・ロドリゲス
【出演】ローラ・サラザール、クリストフ・バルツ、キーアン・ジョンソン、ジャッキー・アール・ヘイリー
【制作】2019年、アメリカ

記憶を失ったサイボーグの少女の活躍を描いた作品。木城ゆきとの漫画「銃夢」(がんむ)が原作。

2563年。没落戦争(ザ・フォール)と呼ばれる戦争から300年経った時代。クズ鉄町アイアンシティに住む医師のダイソン・イド(クリストフ・バルツ)は、空中都市ザレムから落ちてきたスクラップの中に、頭部と胸部だけの少女のサイボーグを発見。体を再生させてアリータ(ローラ・サラザール)と名付ける。それはイドの娘の名前だった。イドは医師である一方、犯罪者を退治するハンター・ウォリアーでもあり、それを見たアリータは自らもハンター・ウォリアーとなる。仲よくなった青年ヒューゴ(キーアン・ジョンソン)が、ザレムに行くためにお金を貯めていることを知り、アリータは賞金目当てに危険なスポーツ、モーターボールへの出場を決意。アイアンシティの支配者ベクター(マハーシャラ・アリ)は、火星の技術で作られたアリータの体を求め、アリータの出場するモーターボールに、反則上等の選手やハンター・ウォリアーを出場させる。アリータは敵だらけの中で奮闘するが、ヒューゴから、悪者ハンター・ウォリアーのザパン(エド・スクライン)に襲われていると通信を受け、競技場を飛び出してヒューゴを助けに行く。ザパンの策略により、ヒューゴは殺人犯に仕立てられており、アリータはヒューゴを助けることができなくなり、ザパンは勝ち誇ったように自慢の剣をヒューゴの腹に突き刺す。アリータはヒューゴを抱えて逃げる。そこにイドの妻だったチレン(ジェニファー・コネリー)が現れ、ヒューゴを救う手立てを教える。アリータはヒューゴの頭部に自分の血管を接続し、首を持ち帰ったように見せかけて、警備ロボット、センチュリアンの目を逃れると、イドの元に戻り、ヒューゴにサイボーグの体を与えてもらう。アリータはベクターのもとを訪れ、自分の使命がザレムの壊滅であった記憶を取り戻すと、かつては歯が立たなかったグリュシカ(ジャッキー・アール・ヘイリー)を一刀両断にし、ベクターに乗り移っているノバ(エドワート・ノートン)に宣戦布告してベクターの息の根を止める。ヒューゴはくず鉄の町とザレムを繋ぐ太いパイプを登ってザレムを目指しており、アリータはそれを追うが、防衛装置に阻まれヒューゴは落下。アリータは自らの使命を果たすため、モーターボールチャンピオンを目指して戦い続けるのだった。

特撮が素晴らしく、CG全開でユニークなハンター・ウォリアーが多数登場するのが楽しい。フィギュアを集めたくなるようなかっこよさ。続編が楽しみだ。ただ、本作は日本での人気が今ひとつだったからか、テレビ放映される気配がなく、Amazon Primeで観た。原作が日本の漫画なのに、日本での話題性が低いのは不思議だ。
本ブログでは、アニメ作品のように声だけの出演の場合、「出演」欄の出演者名の後ろに「(声)」と加筆するのだが、本作のローラ・サラザールは「(声)」を付けるべきなのか迷った。声だけではなく、動きもローラ・サラザールがつけているかもしれないからだ。他にもグリュシカの顔はジャッキー・アール・ヘイリーの原型をとどめているとは思えなかった。今後は「(体)」とか「(声・動き)」とか追加しないといけないのかもしれない。

【5段階評価】5

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2024年3月24日 (日)

(2621) ウェイ・ダウン

【監督】ジャウマ・バラゲロ
【出演】フレディ・ハイモア、アストリッド・ベルジュ=フリスベ、リアム・カニンガム、サム・ライリー、ファムケ・ヤンセン
【制作】2021年、スペイン、フランス

スペイン銀行の金庫に収められた財宝を奪おうとするグループの奮闘を描いた作品。

財宝ハンターのウォルター(リアム・カニンガム)は、1645年に沈没した船の積み荷を海底から引き揚げるが、すぐさまスペイン税関に押収され、財宝はスペイン銀行の「工学の奇跡」と呼ばれる金庫に保管される。ウォルターは、原油流出事故を独創的なアイディアで解決したケンブリッジ大学の学生、トム(フレディ・ハイモア)を仲間に引き込み、スリの技術に長けたロレイン(アストリッド・ベルジュ=フリスベ)、コンピュータの専門家クラウス(アクセル・シュタイン)、ダイバーのジェームズ(サム・ライリー)、調達係のシモン(ルイス・トサール)とともに、金庫に潜入する作戦を練る。シモンとトムが清掃員に扮して銀行内に細工をし、ロレインが絵画の鑑定士になりすまして銀行内にある金庫室の鍵の複製データを取る。スペイン銀行の警備主任グスタボ(ホセ・コロナド)は異変を察知し、ワールドカップに揺れる銀行前広場の封鎖を提案するが、総裁(エミリオ・グチエレス・カバ)は聞き入れない。トムは工学の奇跡の謎を解明する。それは、金庫室全体がはかりになっており、重さの変化に反応して金庫室が閉じ、水が流れ込むという仕組みだった。トムは、はかりを液体窒素で凍らせれば、反応を鈍らせることができると考え、シモンが液体窒素を噴射する役目を追う。
ワールド・カップの決勝の日。銀行前の広場に設けられたスペイン・オランダ戦のパブリックビューに大群衆が集まる中、ジェームズ、ロレイン、トムが屋上からスペイン銀行に潜入。はかりを凍らせ、金庫室の潜入に成功する。ところが、屋上の潜入の痕跡が警備にばれ、警備映像に細工をしていることもグスタボに気づかれてしまう。さらに、ジェームズが裏切りを働き、ロレインが金庫室の中から発見した、埋もれた財宝のカギを握るコインを奪い取ってしまう。液体窒素の効果が弱まり、はかりが反応して金庫室に大量の水が流入するが、ジェームズは潜水で金庫室から脱出。トムは、金庫室が満水になると水が止まるのは、重さを感知しているからだと推理し、シモンに、はかりに重しを乗せてくれと指示。シモンはありったけの液体窒素ボンベをはかりに乗せ、天に祈る。トムとロレインは脱出に成功し、大群衆の中に逃げ込む。追っ手の警備員が迫るが、潜入用の服を脱ぎ捨て、スペインサポーターの姿になったところで、スペインのイニエスタが延長戦の決勝ゴールを決め、大群衆が沸き立つ。警備員は身動きが取れなくなり、トムとロレインは脱出に成功する。
ジェームズは、イギリスへの忠誠心のためにコインを奪い取ったが、MI6に持ち込まれたそのコインは偽物だった。ウォルターはジェームズの裏切りを予感していたのだ。コイン奪取に成功した5人は、埋もれた財宝の場所を探し出す。それはイングランド銀行の真下。ウォルターはため息をつく。オリンピック開催を1か月後に控えたロンドンで、彼らの新たな挑戦が始まるのだった。

金庫破りに挑む一団の活躍を描く作品はいろいろある(作中でもトムが「オーシャンズ11」を引き合いに出している)が、本作は、主人公たちが盗賊ではなく、自分たちが探し当てたにもかかわらずスペイン政府に横取りされた財宝を取り戻すという設定になっており、感情移入しやすい。また、本作では誰も死なない。警備員を殺したり、誰かが犠牲になったり、という盛り上げ方をしていないのが、上質なクライム・サスペンスの条件の一つ。しかも、それが決して非現実的なスタイリッシュさにしていないのもいい。そして、実際のサッカー・ワールドカップのスペインの大進撃を物語に組み込んでいる点が最もユニーク。ラストシーンは、スペインチームファンならずとも、快哉を叫びたくなるだろう。
今回はムービープラスの無料放送の自動録画だったが、得した気分になる作品だった。

【5段階評価】5

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2024年3月23日 (土)

(2620) パーフェクト・バディ 最後の約束

【監督】ヨン・ス
【出演】チョ・ジヌン、ソル・ギョング、ホ・ジュノ、チン・ソンギュ、キム・サラン
【制作】2019年、韓国

粗野なチンピラと全身まひの弁護士のきずなを描いた作品。

粗暴な性格のカン・ヨンギ(チョ・ジヌン)は、暴行事件を起こして有罪になり、社会奉仕活動を義務付けられる。訪れたのは、全身まひで車いすに乗る富豪の弁護士、ジャンス(ソル・ギョング)の邸宅。ヨンギの無作法な態度に顔をしかめるジャンスだったが、彼の飾らない性格に面白みを感じ、彼の奉仕活動を受け入れる。ヨンギは、相棒のデグク(チン・ソンギュ)とともに、会社の資金7億ウォンを使い込んでおり、首が回らなくなったヨンギは、ジャンスに無心する。ジャンスは、自分が余命2か月であることを明かし、死ぬまでにやりたいことを叶えてくれたら、事故死なら27億ウォンが下りる保険金の受取人をヨンギにすると約束する。ヨンギは、「野球を見に行く」「プールに行く」といったジャンスの希望を叶えていく。ジャンスはかつて、少女を暴行した青年を強引な弁護で無罪に仕立てたことがあった。少女の父親は、ジャンスを激しく恨み、車に乗ってジャンスの車に体当たりをする。ジャンスは全身まひとなり、同乗していたジャンスの妻と娘は即死していた。ジャンスはその父親に再会したいとヨンギに頼み、自分はすべきでない弁護をしたと父親に謝罪する。
ヨンギのボス、チュ・ボムド(ホ・ジュノ)は、部下のギテ(チ・スンヒョン)の調べで、ヨンギが会社の資金を横領していることを知る。デグクは罪をかぶり、自分が7億ウォンを使ったとボムドに白状し、リンチに遭う。そこに現れたヨンギはデグクを助け、金を返すとボムドに意気込む。ボムドは7億ウォンがあれば3倍にできたはずだと言って、3日以内に21億ウォンを返せとヨンギに命じる。
ジャンスを事故死させるしかないと考えたヨンギは、迷いながらもジャンスの家に忍び込むが、ジャンスはそれを読んでいた。ジャンスはヨンギの散歩の誘いに応じると、海辺で自分を突き落とせとヨンギに迫る。ヨンギは車いすを海に落とすが、そこにジャンスは乗っていなかった。ヨンギはジャンスを殺さなかったのだ。ヨンギは金の目当てのないままボムドのもとに向かい、組織を抜けたいとボムドに宣言。ボムドは部下を使ってヨンギをリンチにするが、これまでの付き合いの長さに免じて、ヨンギを帰らせる。ヨンギはジャンスを再訪し、ジャンスに妻と娘の墓参りをさせる。ジャンスは亡くなり、ヨンギはジャンスと奥さんと娘の墓参りをすると、弔問簿に「3人で過ごす」というバケツリストを書いて、完了の意味のバツ印をつけるのだった。

韓国版「最強のふたり」とされる作品で、暴行を受けた少女の父親に再会する辺りまではよかったが、そこからが長すぎ。ジャンスの涙の安売りになってしまった。ほどよい余韻で終わらせるほうがよかった。

【5段階評価】3

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2024年3月22日 (金)

(2619) ドラえもん のび太と空の理想郷

【監督】堂山卓見
【出演】大原めぐみ(声)、水田わさび(声)、永瀬廉(声)、井上麻里奈(声)、中尾隆聖(声)
【制作】2023年、日本

劇場版ドラえもん第42作。空に浮かぶ理想郷で起こる騒動を描いた作品。「ドラえもん のび太の宇宙小戦争 2021」の続作。

のび太(大原めぐみ)は出木杉君(萩野志保子)からトマス・モア作「ユートピア」の話を聞き、ユートピアにあこがれる。野原で寝そべっていたのび太は、空に浮かぶ三日月の物体を発見。ドラえもん(水田わさび)にお願いして、仲間とともに未来の飛行船タイムツェペリンに乗って三日月の飛行物体を探し、ついに発見。その都市の名はパラダピア。のび太らは、パーフェクト猫型ロボット、ソーニャ(永瀬廉)に導かれ、パラダピアを創った三賢者と会う。のび太は争いのないパラダピアに住むことを希望するが、そこは実は、レイ博士(中尾隆聖)という悪者が、人の心を失わせており、ジャイアン(木村昴)やスネ夫(関智一)、しずかちゃん(かかずゆみ)は心を奪われてしまうが、人一倍鈍感なのび太とロボットのドラえもんは心を失っていなかった。のび太とドラえもんは、女性賞金稼ぎのマリンバ(井上麻里奈)と協力してレイ博士と闘い、ソーニャやジャイアン、スネ夫、しずかの心を取り戻すと、パラダピアを四次元ゴミ袋に押し込める。ゴミ袋が爆発寸前となったため、ソーニャは一人で袋を空高く運び上げ、爆発。レイ博士はタイムパトロールにつかまる。ソーニャがいなくなったことを悲しむのび太達だったが、空からソーニャのメインメモリーが落ちてくる。ソーニャが復活できることを知り、のび太達は喜ぶのだった。

序盤に登場する青いコガネムシが、実は変身させられたドラえもんだったという、タイムトラベルならではの種明かしがあり、物語がよくできていた。人に個性や欠点があっていいというメッセージも伝えながら、互いを信じる思いが描かれ、感動的でもあった。ただのドタバタコメディではない秀作。

【5段階評価】4

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2024年3月21日 (木)

(2618) 四十四にして死屍死す

【監督】ホー・チェクティン
【出演】ウォン・ヤウナム、ジェニファー・ユー、テレサ・モー、ロナルド・チェン、イーダン・ルイ、ヨン・ワイルン
【制作】2023年、香港

マンションに突然現れた男性の全裸死体を巡る住民の騒動を描いたコメディ。

香港の高級マンションの14階の住民ミン(ウォン・ヤウナム)は、妻(ジェニファー・ユー)と娘のユイユイ、義母(テレサ・モー)、義兄(ヨン・ワイルン)と5人暮らし。ごみを捨てに外に出て戻ってくると、玄関ドアの前に男性の全裸死体がある。義母は自宅の価格暴落を恐れ、家族とともに死体を隣の家の前に運ぶ。隣家の老夫婦ボウロン(ラウ・コン)とベティ(ボニー・ウォン)も死体を移動させることにし、禁止されている犬を飼う女性も巻き込まれる。さらに同じ階のタクシー運転手(ロナルド・チェン)と息子(イーダン・ルイ)にも見つかり、みんなで死体を隠そうとするがうまくいかない。
翌日、若い女性(ハンナ・チャン)とフィアンセ(ジャー・ラウ)の結婚祝いの隙をぬって死体を外に運び出すことに成功。みんなで死体を土に埋めるが、実は埋められた男は15階の住民で、シャワー中にハチに胸をさされ、助けを求めてミンの家の前で仮死状態になっていたのだった。ユイユイが土の中の助けの声に気づき、男は掘り起こされるのだった。

劇場の芝居のようなセリフ回し。状況設定に現実味がないことも、お芝居感に拍車をかけた。香港の住宅事情を織り交ぜながら、住民らが家族愛に目覚めていくというメッセージはとってつけた感があり、コメディとしての面白さに欠け、メッセージ性も乏しかった。登場人物は中国語だが、頻繁に英語のセリフが混じるあたりは、さすが国際都市香港だった。

【5段階評価】2

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2024年3月20日 (水)

(2617) 敦煌

【監督】佐藤純彌
【出演】佐藤浩市、西田敏行、渡瀬恒彦、田村高廣、中川安奈、柄本明、原田大二郎、新藤栄作
【制作】1988年、日本、中国

敦煌の経典を守ろうとした中国の文人の半生を描いた作品。

宋の科挙の難しさに苦しむ趙行徳(佐藤浩市)は、西夏の言葉や文字に引かれ、西夏を目指すが、道中で、兵士を集める漢人の軍につかまる。軍の隊長、朱王礼(西田敏行)は、行徳を書記係として重用する。王礼はウィグルの城を陥落させる。行徳はそこで、生き残っていたウィグルの王女、ツルピア(中川安奈)と出会い、彼女をかくまう。西夏に派遣されることになった行徳は、ツルピアを王礼に託し、1年で戻ると約束して西夏に赴く。西夏の文字の習得に勤しむ行徳は、辞書を作るよう命じられ、1年での帰還を果たせなかった。ようやく西夏に戻ると、ツルピアは皇太子、李元昊(渡瀬恒彦)と婚約してしまっていた。ツルピアは挙式の日、李元昊の懐の短刀を抜いて李元昊に襲いかかると、そのまま城壁から身を投げて命を絶つ。
近隣都市、敦煌に入った王礼は、敦煌の長、曹延恵(田村高廣)に、李元昊に反旗を翻すよう促す。王礼もまたツルピアを愛し、彼女を死に追いやった李元昊に復讐心をたぎらせていたのだ。李元昊が少ない軍勢で敦煌の城内に入ったとき、王礼の軍が李元昊に襲い掛かるが、王礼は城から脱出。夜、李元昊の軍が反撃してくる。火の矢によって敦煌に火の手が上がり、行徳は延恵が収集した経典や文書を守るため、知人の尉遅光(原田大二郎)のラクダで経典を場外の石窟に運び込む。ところが、尉遅光は、運び込んだものが財宝だと勘違いし、行徳が不在の隙に、運んだ僧侶らを皆殺しにしていた。行徳は自分の運命に涙する。こうして経典は900年後に発見されるが、それらの多くは列強諸国や日本に略奪されたのだった。

撮影は大掛かりで、単なる歴史のお勉強ドラマではなく、行徳や王礼とツルピアとの愛を基軸に据え、映画らしいエンタメ性も持たせている。西田敏行の演技は、うまいなあと思う時もあれば、大仰で嘘くさいなあと思う時もあり、本作は残念ながら芝居臭さが鼻についてしまった。芝居臭さは、冒頭の三田佳子の踊り子姿あたりから際立っていたわけだが。

【5段階評価】3

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2024年3月19日 (火)

(2616) ミラクル・ニール!

【監督】テリー・ジョーンズ
【出演】サイモン・ペッグ、ケイト・ベッキンセイル、ロブ・リグル、サンジーブ・バスカー、ロビン・ウィリアムズ(声)
【制作】2015年、イギリス

全能の力を手に入れた男の起こす騒動を描いたコメディ作品。

地球の存在を知った宇宙人が、地球を破滅させるべきか確認するため、人間に全能の力を与えるとどうなるかを観察することにする。ランダムに選ばれたのは、さえない学校教師のニール・クラーク(サイモン・ペッグ)。彼は自分の能力に気づくと、飼い犬のデニス(ロビン・ウィリアムズ)をしゃべれるようにしたり、くだらないことに力を使い始める。同僚のレイ(サンジーブ・バスカー)が憧れの女性ドロシー(エマ・ピアソン)が自分を崇拝するように願っているのを叶えると、ドロシーは愛情を超越してレイを神のように崇めはじめる。
同じアパートに住むキャサリン(ケイト・ベッキンセイル)を振り向かせたいニールだったが、キャサリンを狙う横暴なアメリカ軍人グラント(ロブ・リグル)がニールの能力を知り、デニスを人質(犬質か)にして、ニールに自分の願いをかなえさせはじめる。ニールは隙をついてグラントを犬に変え、難を逃れる。
ニールは能力を世界のために使うことにし、すべての人に十分な食料を、あらゆる戦争の原因をなくせ、地球温暖化を止めろ、と念じるが、中国人の体重が増えて万里の長城が壊れたり、無意味な戦争が多発したり、地球が氷河期のようになったり、と、別の問題が起こる。絶望したニールは川に身投げするが死ぬことはできず、デニスに能力を渡すことにする。その頃、宇宙人はニールの行動を見て地球の破壊を決め、破壊の秒読みに入るが、デニスは、この能力の源を破壊しろ、と念じる。すると宇宙人の乗った宇宙船が破壊され、ニールとデニスの能力も消え去る。いつもの姿に戻ったニールは、キャサリンに、いつかディナーでもと誘いをかけ、キャサリンは、今夜はどう、と返す。全ては元に戻ったようだったが、デニスは相変わらず話せるし、グラントは犬のままなのだった。

肩ひじ張らないお気楽なコメディ。涙ほろりも感動も特にない。犬の糞が歩いてトイレの便器に飛び込んだりする外国映画独特の下品なギャグもあった。サイモン・ペッグは、「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」では主人公の仲間を演じている。コミカルなイメージがあるが、実は高身長のイケメンだ。

【5段階評価】3

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2024年3月18日 (月)

(2615) 髪結いの亭主

【監督】パトリス・ルコント
【出演】ジャン・ロシュフォーヌ、アンナ・ガリエナ、モーリス・シェビ、ヘンリー・ホッキング
【制作】1990年、フランス

理髪店を営む女性と結婚した男性を描いた作品。

少年アントワーヌ(ヘンリー・ホッキング)は、ふくよかな独身女性(アンヌ=マリー・ピザニ)が営む床屋に通い詰めており、父親(ローラン・ベルタン)に将来なりたいものを聞かれて、床屋の女性と結婚することと答えて平手打ちされるほどだった。その床屋の女性は、店内でオーバードーズで亡くなる。
大人になったアントワーヌ(ジャン・ロシュフォーヌ)は、年老いたデュプレ(モーリス・シェビ)から床屋を受け継いだマチルド(アンナ・ガリエナ)の店に入り、散髪中にいきなり求婚。マチルドは受け流すが、二度目の来店のとき、マチルドは求婚を受け入れる。
アントワーヌはマチルドと二人だけの幸せを満喫。客の散髪をしているマチルドを、背後からアントワーヌが愛撫したり、官能的な日々を過ごす。ある大雨の日、アントワーヌと店内で抱き合ったマチルドは、買い物に行くと店を出て、川の濁流に身を投げる。アントワーヌが死ぬ前に、アントワーヌが自分に飽きる前に死ぬと遺書には書かれていた。アントワーヌは、マチルドのいなくなった店の中でクロスワードパズルを解く。やってきた客に、かつてマチルドに見せたように、インド歌謡に乗せて自己流の踊りを披露するのだった。

独特で印象に残る作品。フランス映画らしいエロチシズムを味わうことができる。物語としての面白みは感じなかったが、個性的な作品であることは間違いない。

【5段階評価】3

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2024年3月17日 (日)

(2614) X-ミッション

【監督】エリクソン・コア
【出演】ルーク・ブレイシー、エドガー・ラミレス、デルロイ・リンドー、レイ・ウィンストン、テリーサ・パーマー
【制作】2015年、アメリカ、中国

エクストリーム・スポーツの達人による犯罪を追うFBI捜査官の奮闘を描いた作品。

エクストリーム・スポーツの名手、ジョニー・ユタ(ルーク・ブレイシー)は、親友のジェフ(マックス・シエリオット)を事故で失い、FBI捜査官に転じる。強奪したダイヤモンドや紙幣をばらまくという動機不明の犯罪が、エクストリーム・スポーツの達人集団によって行われる。ユタはホール指導官(デルロイ・リンドー)に、犯人は、オザキ・エイトという、八つの究極的なエクストリーム・スポーツに挑戦していると説明。犯行グループが10年に一度の大波が来るフランスのビアリッツに現れると読み、ベテラン捜査官のパパス(レイ・ウィンストン)と組んで現地に向かう。ユタはそこで、ボーディ(エドガー・ラミレス)というサーファーと大波に挑戦。ユタは波にのまれ、ボーディは波の制覇を諦めてユタを救助する。ユタは、ボーディの仲間のグロメ(マティアス・バレラ)やローチ(クレーメンス・シック)、チャウダー(トビアス・ザンテルマン)らと出会い、美しい女性サムサラ(テリーサ・パーマー)と知り合う。
ユタは彼らを犯罪集団とにらみ、行動を共にする。ユタは、オザキ・エイトに挑み、人間の得たものを自然に返そうとするボーディの確信犯的な行為をともにし、彼への共感を深める。しかし、運搬される大量の金を爆弾により鉱山に返すという行為にボーディらが手を染めようとしたとき、ついにユタはFBIだと名乗り、ボーディの行為を止めようとするが、ボーディは爆弾を起爆して逃走する。
ボーディは仲間と銀行強盗を企て、ボーディを追うユタは、ロープウェイに逃げ込んだ犯人を射殺するが、それはボーディではなくサムサラだった。ボーディは生き残ったグロメと、ベネズエラのエンジェルフォールという滝のロッククライミングに挑む。ユタはそれを追い、グロメは途中で落下。ボーディとユタは滝を登り切るが、ボーディはそのまま滝つぼに落下し、行方知れずとなる。
ユタは、ボーディが再び大波に挑むと予想。1年5か月後、果たして彼は大しけの海に現れる。ヘリでボーディを追ったユタは、ボーディと再会するが、ボーディの意志を尊重し、ヘリに戻る。ボーディは大波に挑み、海に飲まれていく。ユタはボーディの意志を継いで雪山のサーフボードに単身で挑むのだった。

Xスポーツの達人の犯行の謎を追うサスペンスかと思いきや、本当に犯人たちは自然を崇拝するだけの確信犯だった。映像の迫力はあるが、物語の魅力は乏しく、派手な映像だけで中身はスカスカの作品だった。

【5段階評価】2

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2024年3月16日 (土)

(2613) 映画ざんねんないきもの事典

【監督】イワタナオミ、ウチヤマユウジ、由水桂
【出演】花江夏樹(声)、ウチヤマユウジ(声)、内田真礼(声)、ムロツヨシ(声)、伊藤沙莉(声)
【制作】2022年、日本

同名の児童書をアニメ化したオムニバス形式の映画化作品。

一話目は「リロイのホームツリー」。コアラのリロイ(花江夏樹)が、母親(日髙のり子)のもとを離れて、アオバネワライカワセミのクーカ(松岡禎丞(よしつぐ))、ウォンバットのワンダ(小松未可子)、ディプロトドンの亡霊ディプロ(玄田哲章)とともに、自分のユーカリ、ホームツリーを探す旅に出る。途中でディンゴのジェイソン(榎木淳弥)に襲われながらも、ついにホームツリーを見つける。
二話目は「ペンたび」。アデリーペンギンのアデリー(ウチヤマユウジ)、ジェンツーペンギンのジェンツー(ウチヤマユウジ)、ヒゲペンギンのヒゲ(ウチヤマユウジ)が、迷子になった皇帝ペンギンのコウテイ姉さん(ウチヤマユウジ)を営巣地に連れていく。
三話目は「はちあわせの森」。ニホンノウサギのウサオ(内田真礼)が、ノウサギのウサギ崎(下野紘(ひろ))に森の知識を教わり、母親(釘宮理恵)から独り立ちする。ツキノワグマの月子(沢城みゆき)も、胸の模様が月の輪ではないことに悩んでいた自分の殻を破る。

動物のユーモラスな知識が詰まったドキュメンタリー映画を予想していたが、アニメ作品だった。残念な知識も登場するものの、二話目はユルめの深夜放送みたいなアニメ。言葉遣いも子供向けとはいいがたい部分もあったが、掛け合いは面白かった。

【5段階評価】3

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2024年3月15日 (金)

(2612) 次郎物語

【監督】森川時久
【出演】伊勢将人、加藤剛、高橋惠子、泉ピン子、樋口剛嗣、永島敏行、大塚道子
【制作】1987年、日本

下村湖人(こじん)の自伝的小説の映画版。乳母に育てられた少年の成長を描いた作品。

乳母のお浜(泉ピン子)に自由奔放に育てられた少年、次郎(樋口剛嗣)は、6歳の時に実家の本田家に戻されるが、母親のお民(高橋惠子)や祖母のおこと(大塚道子)は、言うことを聞かず兄弟に乱暴する次郎に手を焼く。たまに帰宅する父親の俊亮(加藤剛)は、次郎のよき理解者で、次郎は俊亮の言うことを聞くようになっていく。
祖父の恭亮(芦田伸介)が亡くなり、本田家は俊亮が借金の連帯保証人になったせいで破産。病弱なお民は床に臥せるようになり、病院での検査の結果も思わしくなく、正木家で療養することになる。成長した次郎(伊勢将人)は献身的に看病し、お民は次郎とのわだかまりも取れ、一時期は穏やかに過ごすが、次郎が夏祭りの青年として祭り太鼓の叩き手となった日、お浜に看病されながら息を引き取るのだった。

いかにも文学作品を忠実に映画にしましたという内容。出てくる曲がスメタナの「わが祖国」に似ているな、偶然かと思ったら、スメタナの曲にさだまさしが詞をつけた曲だった。舞台は作中では明言されないが、佐賀。セリフの訛りが強くて、聞き取れない箇所が多かった。

【5段階評価】2

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2024年3月14日 (木)

(2611) 宮沢賢治 その愛

【監督】神山征二郎
【出演】三上博史、仲代達矢、八千草薫、酒井美紀、牧瀬里穂、中山忍、田中実、尾美としのり
【制作】1996年、日本

宮沢賢治の人生を描いた伝記作品。

岩手県立盛岡中学校(現在の高校)を卒業した宮沢賢治(三上博史)は、実家の質屋に戻る。父親の政二郎(仲代達矢)は賢治に家業を継がせたかったが、賢治は従わず、十八歳で看護師(早勢美里)と結婚したいと言ったり、日蓮宗への改宗を父に迫ったり、とっぴな行動をとる彼に、政二郎は学者の道を勧める。賢治を慕う最愛の妹トシ(酒井美紀)が肺結核で亡くなったあと、賢治は農学校で土壌学を教えるようになるが、東北地方の農家を苦しめる冷害の前に無力な自分をさいなむ。彼の文才を慕って、小学校教師の高瀬露(牧瀬里穂)や、知人の妹、伊藤チエ(中山忍)といった女性が現れるが、賢治は結婚の選択はしなかった。生来病弱だった彼はやがて病を患い、1933年9月21日13時30分に、両親と弟の清六(田中実)に看取られて息を引き取る。彼が遺した作品は清六の手に渡り、その中には「雨ニモマケズ風ニモマケズ」の詩も含まれていたのだった。

宮沢賢治の生涯をドラマ化している。創作に取り組む描写は限定的で、土地改良に取り組み、病に苦しみ続けた姿に焦点が当たっていた。賢治の残した文章が作中で数多く用いられており、有名な「あめゆじゅ とてちて けんじゃ」も登場する。歴史と文学の勉強のためなら観てもいいだろう。観終わったあと、ついつい「注文の多い料理店」を読み直してしまった。

【5段階評価】3

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2024年3月13日 (水)

(2610) オズランド 笑顔の魔法おしえます

【監督】波多野貴文
【出演】波瑠、西島秀俊、岡山天音、中村倫也、柄本明、濱田マリ、橋本愛、深水元基
【制作】2018年、日本

遊園地で働く女性の奮闘ぶりを描いたコメディ作品。

波平久瑠美(なみひらくるみ)(波瑠)は、彼氏の小西俊郎(中村倫也)と同じホテルチェーンへの就職が決まって喜ぶが、配属先は熊本の遊園地、グリーンランドになる。配属当日に、いきなりトイレに置かれた時限爆弾の処理を頼まれ、爆弾を持ったまま同期の吉村豪太郎(岡山天音)と送り込まれた先は、ヒーローショーの舞台。爆弾騒ぎはドッキリ企画だった。
久瑠美は東京本社勤務の俊郎に電話し、ハチャメチャな職場の愚痴を言うが、俊郎は久瑠美を応援する。久瑠美の教育係の小塚(おづか)慶彦(西島秀俊)は、久瑠美と吉村にゴミ拾いを指示。吉村は忠実にこなすが、久瑠美はゴミ箱のゴミを回収するズルをする。久瑠美の作った企画書は、小塚に読んでもらえている気配はなく、久瑠美は不満を漏らすが、ある日、入場客に道案内を頼まれた久瑠美は答えることができず、吉村がさっと案内を代わったことにショックを受ける。小塚は、ゴミ拾いを通じて、久瑠美に園内の地理の把握やスタッフとの関係構築をさせようとしていたのだった。久瑠美は次第に、小塚が客の笑顔のために自らも笑顔で働いていることを知り、積極的に仕事に取り組むようになる。
夏になり、俊郎が久瑠美に会いにグリーンランドにやってくる。久瑠美は熱心に園内を案内するが、俊郎は、ここはダメだ、久瑠美の言う通りだ、とグリーンランドを批判。遠距離恋愛がつらいので東京に戻って前のように楽しく過ごそうと久瑠美に告げる。久瑠美は俊郎に距離を感じ、彼のもとを去る。
グリーンランドの50周年記念イベントとして、久瑠美は1万個の風船を気球から降らせる企画を提案。時限爆弾を小塚に処理させるというドッキリも実現し、イベントは大成功。小塚は当初の予定通り、グリーンランドをやめて旅行代理店に転職。1年後、久瑠美は先輩スタッフとして、笑顔で後進の指導にあたるのだった。

ほのぼのとした娯楽作品。時限爆弾騒ぎはまんまと2回とも騙された。気球イベントのときに、俊郎がグリーンランドに再訪して久瑠美の働き方を肯定し、二人が再び結ばれるというハッピーエンドを予想したが、そうはならず、俊郎は単に久瑠美に合わない男という役回りだった。柄本明演じる園長の言葉がステレオタイプだったのも残念。とは言え、実際の遊園地を使った映像は感動的で、遊園地で働くのもいいかも、と思わせてくれる作品だった。
それにしても、どうしてライトノベルの表題のような長ったらしいサブタイトルをつけるんだろうな。これだけで作品の質が下がったように感じる。一方でメインタイトルの方はそれだけ聞いてもよくわからないという。「ハッピーフライト」ぐらいの方がセンスがいい。

【5段階評価】4

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2024年3月12日 (火)

(2609) ディファイアンス

【監督】エドワード・ズウィック
【出演】ダニエル・クレイグ、リーブ・シュレイバー、ジェイミー・ベル、アレクサ・ダバロス、ミア・ワシコウスカ
【制作】2008年、アメリカ

森の中でドイツ軍から逃げ続けたユダヤ人の集団を描いた伝記作品。実話に基づいている。

ユダヤ人の虐殺により、両親をドイツ軍に殺されたビエルスキ家のトゥビア(ダニエル・クレイグ)、ズシュ(リーブ・シュレイバー)、アザエル(ジェイミー・ベル)、アーロン(ジョージ・マッケイ)の4人の兄弟は、森の中に逃げ込む。そこにはほかにもユダヤ人たちがいた。ズシュは人数が多くなることに難色を示すが、トゥビアはユダヤ人たちと行動を共にする。トゥビアは手に入れた銃で、両親の殺害を手引きしたベルニッチ警察署長を、その場にいた二人の息子もろとも銃殺し、復讐を遂げる。ズシュもドイツ兵への攻撃を決行するが、反撃に遭い、仲間を失う。逃走したアザエルは無事で、中年女性ベラ(イーベン・ヤイレ)と、若く美しいハイア(ミア・ワシコウスカ)とともにトゥビアらと合流。トゥビアは生き残ることが復讐だと考えるようになる。彼らは森の中に小屋を建て、苦しい生活を送る。ズシュは仲間と食料調達に出かけ、通りかかった牛乳配達人から牛乳を奪うが、トゥビアの指示により配達人は殺さず、略奪も半分だけにする。ところが牛乳配達人が警察に通報。警察が森の集落に攻め込んできたため、トゥビアらは集落を手放さざるを得なくなる。ズシュはトゥビアのやり方に反発し、パンチェンコ(ラビル・イシヤノフ)が率いるソ連のパルチザンと合流。ドイツ軍と戦う道を選ぶ。
トゥビアは、アザエルとともにゲットーに潜入して、殺されるのを待つばかりのユダヤ人たちを連れ帰り、仲間にする。その中にはハイアの両親もいた。アザエルはハイアと結婚。トゥビアはチフスにかかるが、リルカ(アレクサ・ダバロス)の献身的な看護により、回復する。ドイツ兵に強姦されたタマラ(ジョディ・メイ)が出産。出産を禁じていたトゥビアはタマラと父親を追放しようとするが、リルカから事情を聴き、トゥビアは出産を認める。リルカは喜び、トゥビアはリルカに口づけをして、人を愛することを自分にも許す。
ドイツ軍が集落を囲って総攻撃をする情報を入手したトゥビアらは逃げる準備をする。パルチザンのパンチェンコは撤退を決意。ズシュは集落を見殺しにするのかとパンチェンコに詰め寄るが、パンチェンコに犠牲はつきものだとはねつけられ、反抗すれば銃殺だと告げられる。共同体への空爆が始まり、トゥビアらは再び逃走。目の前に広がる果てしない沼地を前にトゥビアは絶望し、膝をつくが、敵の進撃を食い止めて戻ってきたアザエルが仲間を鼓舞し、つないだベルトを頼りに何とか渡りきる。しかし休息もつかの間、そこにドイツ軍の戦車と歩兵隊が現れる。絶望的な状況の中、トゥビアらを救ったのは、パルチザンから離脱したズシュの隊だった。ドイツ兵を一掃したズシュは、トゥビアの共同体に戻ることを決め、トゥビアはそれを歓迎する。彼らは1,200人ものコミュニティとなり、森の中で2年以上も生き続けたのだった。

タイトルのディファイアンスは、反逆、果敢な抵抗という意味。ナチスドイツになすすべなく殺されるのではなく、抗戦するユダヤ人たちを描いている。映像は写実的で、厳冬の森を耐え、共同体の中で食料を争う姿なども克明に描いている。ただ、最後の戦車との戦いはドイツ軍が無策すぎで、作り物感が漂っていた。「ジェームズ・ボンド」ではないダニエル・クレイグが見られる作品。

【5段階評価】4

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2024年3月11日 (月)

(2608) ファーストラヴ

【監督】堤幸彦
【出演】北川景子、中村倫也、芳根京子、窪塚洋介、木村佳乃、板尾創路、菊地麻衣、石田法嗣、坂上梨々愛
【制作】2021年、日本

島本理生のミステリ小説の映画化作品。女子大生による父親刺殺事件を追う公認心理士を描いている。

芸術大学の女子トイレで教授の聖山那雄人(ひじりやまなおと)(板尾創路)が包丁で刺し殺される事件が起き、父親をトイレに呼び出した娘の環菜(かんな)(芳根京子)が逮捕される。公認心理士の真壁由紀(北川景子)は環菜に取材を申し込む。環菜の弁護士は庵野迦葉(あんのかしょう)となる。迦葉は由紀の夫、我聞(窪塚洋介)の弟(正確には従弟)で、二人は大学時代に交際した過去があったが、我聞には秘密にしていた。
驚いたことに、環菜の母親の昭菜(木村佳乃)は、弁護側ではなく検察側の証人になると言う。由紀と迦葉は母親を訪問するが、昭菜は環菜には虚言壁があると言い、父親を殺して帰宅しておきながら涙も見せない娘への処罰感情を口にする。
面会室で、環菜から、小学生の時にコンビニ店員が好きだったことがあると聞いた由紀は、その店員を探す。迦葉は、環菜が父親の開くデッサン会でモデルをしていたことを知り、当時の生徒を探す。由紀と迦葉は富山に住む元生徒に訪ね、デッサンを見せてもらう。そこには全裸の男性に囲まれた少女時代の環菜の姿があった。
由紀は、元コンビニ店員の小泉裕二(石田法嗣)を探し当て、話を聞く。彼は、小学生の環菜が店の前でひざをすりむいて座っており、手当てをした後、家に帰りたくないと話す彼女をアパートに連れ帰ったことをきっかけに、週に一度ほど環菜がアパートを訪ねるようになったこと、二人で一つの布団で寝ていたとき、欲情して環菜の肩に手を伸ばしたところ、慣れているからいいよと環菜がほほ笑んだことを明かすが、証言台に立つことは拒否する。由紀は、環菜が大人の気持ちを優先するがために嘘をつくのだと考える。実は由紀自身、我聞に隠していることがあった。由紀の父親(カゴシマジロー)には少女買春癖があり、由紀自身も父親の目におびえていたのだ。由紀は環菜に面会し、勝手に小泉裕二に会ったことを詫びつつ、自分の過去を環菜に告白。環菜が父親を刺し殺したとしても、あなたは大人たちに心を殺されたんだと理解を示すと、環菜は、自分は父親を刺し殺していないと驚きの証言する。また、環菜は那雄人の実の子ではなく、昭菜と同棲中の男性との間にできた子だった。同棲相手は昭菜に堕胎を迫ったが、那雄人は産むように言ったため、母親は那雄人に頭が上がらず、環菜も父のおかげで生を受けたため父に逆らえずにいたのだ。
由紀はすぐさま迦葉のもとを訪ね、環菜が殺意を否定したことを伝えるが、迦葉は今更方針変更しても心証が悪くなるだけだ、由紀は環菜に自分を投影しているだけではないのか、と反論。たまらず迦葉の事務所を飛び出た由紀は、心配でやってきた我聞を見つけ、車道によろよろと歩み出て、車に追突される。運び込まれた病室で、由紀は我聞に、父親に少女趣味があったこと、かつて迦葉と交際していたことを告白するが、我聞には全てお見通しだった。罪の意識から解放された由紀は、我聞に抱き着いて号泣する。
環菜の裁判が始まる。環菜は殺意を否定し、迦葉も争う姿勢を見せる。迦葉は、環菜の異常な生育環境を説明し、デッサン会のことを知らないという母親の証言の矛盾を突く。さらに小泉裕二も罪の意識から証言台に立ち、当時の環菜がデッサンモデルになることに怯えていたことを証言する。環菜は改めて、包丁は父親ともみあいになった際に、濡れた床で足を滑らせた父親に包丁が刺さったと証言する。しかし、救急措置をせずに父親を放置したことが殺意の証明となり、環菜は懲役8年の実刑判決を受ける。環菜は、感謝の言葉とともに、罪を甘んじて受け、いずれ手記を出したいという手紙を由紀と迦葉に送る。由紀と迦葉の間のわだかまりも消えるのだった。

魅力的な謎の提示から、登場人物のおぞましい親子関係があらわになっていき、事件の真相が明らかになるという展開は、ミステリ映画として十分な内容。無罪を勝ち取れないという苦い結末ではあったが、見ごたえのある作品だった。一点、終盤に環菜の母親の腕にもリストカットの傷跡があることが明らかになるのだが、それが何を意味するのかが、よくわからなかった。環菜の自傷癖は母親譲りだということなのかと思ったが、母親も昔、那雄人にモデルをさせられたのか、と考えたりもした。もう少し説明があるとよかった。

【5段階評価】4

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2024年3月10日 (日)

(2607) スノーデン

【監督】オリバー・ストーン
【出演】ジョセフ・ゴードン=レビット、シャイリーン・ウッドリー、リス・エバンス、ニコラス・ケイジ、ザカリー・クイント
【制作】2016年、フランス、ドイツ、アメリカ

アメリカの国家安全保障局の職員が、政府の国際的監視網の実在を暴く様子を描いた作品。実話に基づいている。

エドワード・ジョセフ・スノーデン(ジョセフ・ゴードン=レビット)は、香港のホテルで、ドキュメンタリー映画作家のローラ・ポイトラス(メリッサ・レオ)とガーディアン誌のコラムニスト、グレン・グリーンウォルド(ザカリー・クイント)から極秘の取材を受ける。国家安全保障局NSAの職員であった彼は、ある秘密を暴露しようとしていた。
コンピュータ技術に秀でたスノーデンは、訓練中の脚の骨折から兵士の道を諦め、サイバーテロ対策に身を投じる。彼は政府の行為を尊重する主義だったが、恋人のリンゼイ・ミルズ(シャイリーン・ウッドリー)の影響で、政府の間違った行為は批判する立場に傾いていく。スノーデンは、テロ対策のための情報傍受の任務に就くが、アメリカ政府は、あらゆる個人情報にアクセス可能な検索システムを持っていた。彼はハワイの施設から、国際的監視網PRISMのデータを盗み出し、信頼できるマスコミとしてガーディアン誌のイーウェン・マカスキル(トム・ウィルキンソン)にデータを託す。マカスキルらはスノーデンの取材結果をニュースに流す。政府はスノーデンをスパイとして拘束しようとするが、スノーデンはロシアに亡命。やがて国際的監視網は違法との司法判断が下される。スノーデンは安定した暮らしを失うが、世界中の人々の基本的人権を守ることを優先したのだった。

最後にはスノーデン本人も映像に登場。政府の機密施設での行為が丁寧に描かれていた。日本がアメリカの同盟国でなくなった場合に電力供給を遮断するマルウェアを仕込んだ、なんていう怖い話も挿入されていた。残念だったのは、スノーデンとリンゼイが日本滞在時に泊まっていた部屋の描写。全編を通して写実的な作風なのに、日本の部屋は、すだれとか古風な箪笥とか、今どきそんな部屋ねぇよ的な描写。世界中でスノーデンの暴露が流れたというシーンでも、日本語のニュースの映像は、中国だか北朝鮮だか、明らかに日本ではない映像だった。欧米人には見分けがつかないのだろうな。とは言え、日本でも騒がれたスノーデンの社会的事件を理解するにはわかりやすい作品だろう。

【5段階評価】3

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2024年3月 9日 (土)

(2606) 婚前特急

【監督】前田弘二
【出演】吉高由里子、浜野謙太、杏、石橋杏奈、加瀬亮、青木崇高、榎木孝明
【制作】2011年、日本

複数の男性と交際している女性の結婚までを描いたラブコメディ。

営業職の池下チエ(吉高由里子)は、年下の大学生、野村健二(吉村卓也)、美容院を構える既婚者、三宅正良(榎木孝明)、道楽でバイク店を営む出口道雄(青木崇高)、バツイチの西尾みのる(加瀬亮)、風呂なしアパートに住む貧乏パン工員、田無タクミ(浜野謙太)と五股をかけていた。結婚願望のなかったチエだったが、できちゃった結婚をした親友のトシコ(杏)から相手を一人に絞るよう助言され、手始めに最も魅力のないタクミに別れを告げる。ところがタクミは、そもそも付き合っていないから別れるまでもないよね、と軽く受け流す。プライドを傷つけられたチエは、タクミを思いきり自分に惚れさせてから振ることで復讐しようと決意。タクミを監視することにする。タクミが工場長の娘、奥田ミカ(石橋杏奈)に好意を寄せていることを知ったチエはミカに接近。ミカがヤリマンで、金持ちの息子と結婚する狙いでケーキ屋でバイトしている、とタクミに吹き込む。タクミは逆にやる気を出し、ミカに声をかけると、何と二人は交際に発展する。タクミはチエに感謝を伝え、ミカの家にチエを招待する。チエは西尾を伴ってミカの家に行く。タクミはその場の雰囲気に押され、ポケットに忍ばせた空の指輪ケースを取り出し、お金がたまったら指輪を買うから、とミカにプロポーズ。ミカはそこにない指輪をはめるしぐさをして、プロポーズを受け入れる。ミカの心づくしの料理に西尾は満足するが、チエは終始不機嫌。三人が旅行に行こうと盛り上がり、タクミがチエちゃんも行くか、と聞くと、チエは突然タクミにキスをして家を飛び出す。タクミはあわてて後を追い、スクーターで去るチエを自転車で追いかけ、二人は道路わきの藪に突入。そこで喧嘩を始めたため、近所に通報され、二人は警察に捕まる。留置場の中で、チエはタクミに追いかけてきた理由を問い詰め、タクミがチエを好きなのかも、と言うのを聞くと、満足げな表情で、タクミの気を引いていたのは演技で、自分は他に四人の男性と付き合っていると暴露する。チエはトシコに迎えに来てもらい、タクミは遅れてミカに迎えに来てもらう。ミカはタクミがチエのことを好きだと見抜き、見えない指輪をタクミに返すと、ビンタを食らわせて立ち去る。
タクミはチエの家を訪ね、チエもまた、タクミの家に合鍵で侵入。そこにタクミが帰ってきたため、狼狽したチエはとっさに寝たふりをする。タクミはチエに、ミカに振られたがショックじゃなかったこと、チエが真っ先に頭に浮かんだことを話す。チエは跳ね起きてタクミのいいかげんさをなじり、つかみ合いの喧嘩になった二人は壁をぶち破って隣の部屋に倒れ込む。そこで食事をとっていた老いた未亡人(白川和子)は、二人に、喧嘩は生きているうちに思う存分やったほうがいい、と話す。二人はすごすごとタクミの部屋に戻り、チエは、自分の付き合っている他の男性に比べたら、タクミが最後の一人になる可能性は万に一つだ、と言うが、タクミは最後の一人になるように頑張る、と宣言し、チエを押し倒す。その後、二人はゴールイン。元彼たちやトシコ夫婦、ミカらに祝福されながら、二人で電車に乗り込み、熱い口づけをかわすのだった。

最初でなかば結末は予想できる展開ではあったが、面白い作品だった。濃厚なシーンはないが、終盤、タクミに押し倒され、困った声でもだえるチカの声は、なんとも色っぽかった。ところで、何が婚前特急なのかはよくわからなかった。

【5段階評価】3

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2024年3月 8日 (金)

(2605) 極道の妻たち 決着

【監督】中島貞夫
【出演】岩下志麻、とよた真帆、愛川欽也、かたせ梨乃、中条きよし、トミーズ雅、大杉漣、細川ふみえ、竹内力
【制作】1998年、日本

極道の妻たち」シリーズ第10作。弟分殺害の復讐劇を描いた作品。「極道の妻たち 危険な賭け」(1996)の続作。次作は「極道の妻たち 赤い殺意」(1999)。

井出組の若手、秋葉吟二(竹内力)が、井出組の客人、玉城(トミーズ雅)に殺される。玉城は井出組の親分(名古屋章)に命じられたと自供する。かつて競輪場で一文無しになっていたところを吟二の妻、杏子(とよた真帆)に拾われ、玉城と同様に井出組の客人となっていた五橋東造(愛川欽也)は、玉城に妻と子がいたことを井出の妻、春日(岩下志麻)に知らせる。井出組の幹部、番水(ばんすい)(大杉漣)の妻、彩子(さいこ)(かたせ梨乃)は、春日に代わって玉城の妻(小嶋ゆか)を沖縄から大阪に連れてくる。玉城は妻に説得されて、本当は吟二の部下、徳田(金山一彦)に金を渡されたことを白状。病気の息子(杉田林太郎)を救ってくれるよう春日に頼むと、獄中で自殺する。
番水は、同僚幹部、名越(中条きよし)と組んで株で大儲けして喜ぶが、妻の彩子は吟二の犠牲の上の金だと喜べない。杏子と東造は、徳田を脅し、徳田は名越が背後にいたことを自供。その後、吟二の忠臣だった工藤(山本太郎)に刺し殺される。番水は、吟二殺害が名越の仕業と確信するが、名越の手下に撃たれてしまう。
春日は部下らに井出の引退を表明し、吟二を偲びつつ、あがりを遺族である杏子に送る盆を開くことにする。名越は、堺和(かいわ)信用金庫の岩岡理事長(品川隆二)の秘書、磯部七歩(細川ふみえ)を愛人として飼っており、二人で盆に参加する。東造が手本引きの胴を引き、連敗した名越は、自分が胴になると宣言。東造は一点張りで勝負に出る。そこに春日と彩子が現れ、番水の得た5億を東造の目に乗る。勝負は、名越の小戻りの六の目を当てた東造の勝ちとなり、23億の大敗を喫した名越は開き直って子分らをけしかけるが、彩子が銃を乱射し、子分らは全滅。春日は名越の脳天を撃ち抜き、吟二の復讐を果たすのだった。

6作目あたりから品質の低下を感じていた極妻シリーズだったが、本作はまともだった。最後の銃の乱射は主人公アビリティのご愛敬だったが、義理堅い五橋東造や情婦の七歩などが、いい脇役を演じていた。新人、中野若葉のおっぱいも見事。

【5段階評価】3

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2024年3月 7日 (木)

(2604) ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

【監督】ジョー・ライト
【出演】ゲイリー・オールドマン、リリー・ジェームズ、クリスティン・スコット・トーマス、ロナルド・ピックアップ
【制作】2017年、イギリス、アメリカ

ドイツの進撃に立ち向かうイギリス首相の奮闘を描いた作品。主演のゲイリー・オールドマンの特殊メイクを担当した辻一弘がアカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことで有名。

ナチスドイツのフランス侵攻が激化する中、イギリスではチェンバレン首相(ロナルド・ピックアップ)が失脚。挙国一致内閣設立のため、ウィンストン・チャーチル(ゲイリー・オールドマン)が首相となる。チャーチルは徹底抗戦を説き、国王(ベン・メンデルソーン)は彼の感情的な性格を恐れる。チェンバレンとハリファックス(スティーブン・ディレイン)は自らの辞職を賭けてチャーチルにイタリアを通じた和平交渉を説き、不利な戦況を前にチャーチルは屈服の姿勢を見せる。ところが、国王がチャーチルの家を訪ね、自分はチャーチルに賛成だ、戦おうと語り掛け、市民の声を聴けとチャーチルに助言する。それまでろくに地下鉄にも乗ったことのなかったチャーチルは、送迎用の車を突然降り、普通の少女に乗り方を聞いて地下鉄に乗り込む。乗客たちは驚くが、すぐにチャーチルのユーモアにほほを緩ませる。チャーチルは乗客たちの名前を聞き、もしドイツ軍が攻めてきたらどうするか聞く。乗客たちは口々に戦うと話す。次にチャーチルは、では和平交渉をしてドイツから有利な条件を引き出そうとするのはどうか、と問う。乗客たちは皆、若い少女までもが強い口調で「絶対ダメ(Never! )」と口にする。チャーチルは下院の大臣たちの意見も聞き、国会で徹底抗戦を改めて訴える。国会はチャーチルの熱弁に沸き、ハリファックスは負けを確信する。その後、連合軍はドイツ軍への勝利を手に入れるのだった。

史実に基づく物語で、主な場面は軍事作戦の議論や演説だが、チャーチルのタイピストとして登場するミス・レイトン(リリー・ジェームズ)が、退屈になりがちな物語のよいアクセントになっている。はじめはチャーチルに恫喝されて逃げ出すレイトンだが、次第に彼の魅力にひかれていく。リリー・ジェームズは「シンデレラ」や「ガーンジー島の読書会の秘密」で主役を務めている美しい女優だ。
ダンケルクに取り残されたイギリス陸軍の救出作戦がしっかり描かれなかったのは残念だったが、映画では退屈になりがちな政治という主題をわかりやすく描いていた。そして見どころは、やはりゲイリー・オールドマンの演じるチャーチル。特殊メイクとは全く気づかないが、ゲイリー・オールドマンの面影はあるのが面白い。「ハンニバル」のメイスン・バージャー役の方が本人の面影がなかった。

【5段階評価】4

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2024年3月 6日 (水)

(2603) 蜘蛛巣城

【監督】黒澤明
【出演】三船敏郎、山田五十鈴、千秋実、佐々木孝丸、三好栄子
【制作】1957年、日本

物の怪の予言に翻弄された武将の運命を描いた作品。シェイクスピアのマクベスを題材にしている。

迷路のような蜘蛛手の森に守られた蜘蛛巣城が乾の軍勢に攻められるが、一の砦を守る鷲津武時(三船敏郎)と二の砦を守る三木義明(千秋実)の活躍により、敵を北の舘(たち)に追い込む。武時と義明は勝利を大殿(佐々木孝丸)に報告するため、蜘蛛巣城に向かうが、蜘蛛手の森で迷い、老婆の物の怪(三好栄子)に出会う。物の怪は、武時が今宵、北の舘の殿となり、のちに蜘蛛巣城の城主となること、義明は今宵、一の砦の大将となり、息子が蜘蛛巣城の城主となると予言する。二人が城に戻ると、大殿は武時を北の舘の主に、義明を一の砦の宰領に任じる。予言が本当になり、二人は驚く。
北の舘の主となった武時に、妻の浅茅(あさじ)(山田五十鈴)は、義明が大殿に予言の話をしたら、大殿は地位を守るため武時を殺すだろうから、先手を打って大殿を討った方がいいと説く。武時は大殿を信じようとするが、そこに大殿が軍勢を率いて現れる。大殿は北の舘に本陣を構え、乾を討つと宣言し、武時に先陣の将を命じ、義明に蜘蛛巣城の留守を任せる。武時は浅茅の心配は杞憂だったと笑うが、浅茅は武時が前後から弓を射られ、義明は高見の見物をすると言い、いまが大殿を討つ好機だとそそのかす。浅茅は大殿の警護の者にしびれ薬入りの酒をふるまい、その隙に武時が大殿を殺害。浅茅は血濡れの槍を寝ている警護の者に持たせ、手水鉢で手を洗うと、則保(志村喬)の狼藉だと叫び、則保を追い出す。
武時は大殿の棺を蜘蛛巣城に運び、城を守る義明は開門して武時を迎え入れ、乾の攻撃に備えて武時を城主にすることを決める。子のいない武時は、義明の恩に報いるため、義明の息子を跡継ぎに選ぶことにする。浅茅はそれに反対し、身ごもったと報告。武時は義明と息子の義照(久保明)を暗殺させる。しかし、放った刺客は義明を仕留めたものの義照を逃がしてしまう。怒った武時は刺客を刺し殺す。
義照は乾の軍勢に身を寄せ、大群となって蜘蛛巣城に攻め寄せる。武時は森に入って老婆を探し、どうすればよいか尋ねる。物の怪は、蜘蛛手の森が動いて攻め込まない限り武時は無敵だと予言。武時は安心して城に戻る。ところが、懐妊した浅茅は死産し、気が触れてしまう。城内の兵士たちが浮足立つので、武時が外を見ると、何と森が城に迫っていた。武時は兵に向かて配置に付けと叫ぶが、彼に大量の矢が放たれる。兵士たちが敵に寝返ることを決めたのだ。武時は大量の矢を浴びて絶命。外には、切り出した木を盾にして進軍する乾の軍勢がいた。こうして予言は現実のものとなったのだった。

古いモノクロの作品だが、さすがは黒澤明監督作品。ところどころのシーンが微妙に長めだなと思うことはあるものの、物語の展開は先が気になり、引き込まれた。展開が読めてはしまったが。三船敏郎の鬼気迫る演技は見ごたえがあり、山田五十鈴の怪しさは、恐怖映画の域。最後の大量の矢も名シーンだった。

【5段階評価】4

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2024年3月 5日 (火)

(2602) オスカー・ピーターソン: ジャズ界の革命児

【監督】パリー・アブリッチ
【出演】オスカー・ピーターソン、ビリー・ジョエル、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコック、ケリー・ピーターソン
【制作】2020年、カナダ

伝説のピアニストの生涯を描いた伝記映画。

カナダのモントリオールが生んだ天才ジャズピアニスト、オスカー・ピーターソンが、若くしてカーネギー・ホールで演奏の機会を得、全米で有名になり、欧州や日本でも腕前を披露。トリオやソロで素晴らしい演奏を披露し、数々の賞を受けるが、脳卒中を発症し、2007年に妻のケリーに看取られて亡くなる。

多くのミュージシャンが彼の功績と見事な指さばきと即興の能力をほめたたえていた。過去の古い演奏や彼の歌の映像も収められた作品になっている。

【5段階評価】3

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2024年3月 4日 (月)

(2601) クルーガー 絶滅危惧種

【監督】M・J・バセット
【出演】フィリップ・ウィンチェスター、レベッカ・ローミン、イザベル・バセット、マイケル・ジョンストン、クリス・フィッシャー
【制作】2021年、ケニア、アメリカ

ケニアのサバンナで孤立した家族の死闘を描いたパニック作品。

エクソン社に勤めるジャック・ハルシー(フィリップ・ウィンチェスター)は、妻のローレン(レベッカ・ローミン)、娘のゾーイ(イザベル・バセット)とその恋人ビリー(クリス・フィッシャー)、息子のノア(マイケル・ジョンストン)と、5人でケニアのアンボセリ国立公園に観光旅行に来る。会社で不始末を起こし、金欠のジャックはオプショナルサファリツアーをキャンセルしており、自分で車を運転して、ガイドなしでサファリに出ることにする。ローレンがサイを見たがったため、ジャックは立ち入り禁止区域に入る。ノアが車を運転したがり、運転を交代し、しばらくすると大きなサイに遭遇。近くに子供のサイがいたため、ジャックはノアに車をバックさせようとするが、ノアが運転を失敗。興奮した大人のサイがジャックらの車に突進し、車は横転。ジャックはサイの角が脚に刺さって負傷し、血糖値が高いローレンが必要とするインシュリンの投与器具や、ガラス瓶の飲料水はサイの突進により損なわれてしまう。
携帯の電波を確認するため、ビリーとノアが車を離れて高台に向かう。ノアは高台から小屋を見つけるが、直後にビリーがヒョウに襲われてしまう。思わずビリーを置いて逃げ出したノアは、意を決して引き返すが、ビリーの姿は消えており、残っていたのは血だまりだった。ノアは何とか車に戻り、家族で小屋を目指すことにする。一方、ビリーは死んでいなかった。ヒョウは木の上にビリーを置いて昼寝をしていた。意識を取り戻したビリーは逃げようとして木から落ち、一緒に木から落ちたヒョウは、どこかに逃げ去っていく。ビリーは重傷を負いながらも横転した車に戻るが、中には誰もいない。ビリーは仕方なく社内で休息をとる。しばらくして観光客の車が横転した車を発見し、ビリーは保護される。
ジャック一家は、言い争いをしながらも歩みを進めるが、行く手を川に阻まれる。意を決して川を渡ろうとしたところを、ハイエナの群れに囲まれる。そこに通りがかったハンターのミッチ(ジェリー・オコンネル)の一隊が銃でハイエナを威嚇し、ジャックは助けられる。安堵するジャックだったが、ミッチたちはサイやゾウの密猟者だった。ゾーイにサイの角を見られたミッチとチャーリー(ジョージ・グレン・オウマ)は手のひらを返し、ジャックらを縛り上げると、サファリに放置してハイエナの餌食にすることを決める。ジャックは密猟者たちが談笑している間に、自分が囮になるので母親を助けて逃げるようゾーイとノアに告げる。ジャックは一人でわざと見つかるように逃げ出し、ミッチとチャーリーはジャックを追いつめ、ミッチがジャックを撃ち殺す。その隙にゾーイとノアが母親をジープに乗せて逃走。それに気づいたミッチとチャーリーが車で追いかけるが、二人の車は木に激突。チャーリーは死に、ミッチも車から降りたところをハイエナに囲まれ万事休すとなる。ゾーイが喜んだのもつかの間、彼らは別の密猟者の車に出くわしてしまう。そこに密猟者を追うレンジャー部隊が現れ、ゾーイらは保護される。ジャックの残した資金により、親を失ったサイを保護する活動が始まるのだった。

糖尿病を患う妻。ゲイの息子を持つ父親。血のつながらない娘。ガイドなしのサファリツアー。ペットボトルじゃなくガラス瓶の水。係員のチェックを受けずに出発。立ち入り禁止ゾーンへの進入。お膳立てが整ったところで、予定通り家族は事故に遭う。前半はあまりにも予定調和な展開だが、後半は絶望的な状況から人に出会って助かったと思いきや、今度は密猟者に命を狙われる。ヒョウに襲われた男は生きていたので、全員助かるハッピーエンド化と思いきや、父親は助からない。密猟の被害を訴える社会的メッセージも発して映画は終わる。ところどころ物語に意外性はあるのだが、動物はがんばってはいるがやはりCGで、B級映画感はぬぐえなかった。

【5段階評価】3

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2024年3月 3日 (日)

(2600) パイプライン

【監督】ユ・ハ
【出演】ソ・イングク、イ・スヒョク、ペ・ダビン、ウム・ムンソク、ユ・スンモク、テ・ハンホ
【制作】2021年、韓国

パイプラインから石油を盗み取る犯罪者の騒動を描いたコミカルサスペンス作品。

パイプラインにドリルで穴を開け、石油を盗み取る技術に長けた若者、ピンドリことカン・セドル(ソ・イングク)は、金儲けを企む精油会社のファン代表(イ・スヒョク)に雇われ、期日内に山の上の貯水タンクを石油で満たす計画を実行する。仲間として土木担当のナ課長(ユ・スンモク)、溶接担当のチョプセ(ウム・ムンソク)、掘削担当のビッグショベル(テ・ハンホ)と組むことになり、監視役にファン代表の秘書カウンター(ペ・ダビン)が就く。彼らはキャピタル観光ホテルを隠れ蓑にして地下を掘り進める。
ファンは金の亡者で、ピンドリらを駒のようにこき使う。ファンの非人道的な行為にピンドリは反発し、契約を破棄しようとするが、ファンは銃をつきつけてピンドリらを脅し、止めに入ったナ課長が撃たれて死んでしまう。石油盗掘犯を追うチョ・マンシク刑事(ペ・ユラム)が銃声に気づき、ホテルは使えなくなってしまう。
ピンドリはファンへの復讐を誓い、米軍の共同溝を使って石油を盗む計画をファンに持ち掛ける。ファンはチョプセをスパイ役に仕立て、ピンドリの行動を監視。ピンドリらはチョの捜査をかいくぐりながら、石油パイプラインを貯水タンクに通じるパイプに接続することに成功。地下の接続現場を確認したファンはピンドリを裏切り、彼らと追ってきたチョ刑事を縛り上げ、接続現場に爆弾を仕掛ける。ファンはさらに貯水タンクも爆破し、山の下にある貯油所を火災に巻き込むことで、自社の保有する石油の価格高騰を企んでいた。勝ち誇った顔でファンが立ち去ると、ピンドリらは必死で縛られた縄をとき脱出。ファンは爆破スイッチを押すが、貯水タンクは爆発しない。ピンドリは先手を打って、貯水タンクに石油ではなく、ただの水を送り込んでいたのだ。計画失敗を知ったファンは、手下とともにピンドリらに襲い掛かるが、ピンドリらは反撃し、大乱闘となる。そこに警察が到着。ファンは逮捕され、ピンドリらも捕まる。刑期を終えたピンドリは仲間とともに新たな仕事に励むのだった。

石油を盗むというマニアックな犯罪を題材にしたユニークな作品。ピンドリに反発し、仲間を裏切っていたチョプセが、ナ課長の思いに涙し、ファンを裏切ってピンドリの味方になって奮闘するという、ちょっとしたどんでん返しも効いていた。最後の乱闘でピンドリがファンにとどめを刺さず、ファンがピンドリに捨て台詞を吐く。次回作も期待できそうなエンディングになっていた。

【5段階評価】4

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2024年3月 2日 (土)

(2599) 新源氏物語

【監督】森一生
【出演】市川雷蔵、寿美花代、若尾文子、水戸光子、中村玉緒、中田康子
【制作】1961年、日本

川口松太郎原作小説の映画化作品。

帝(市川寿海)の寵愛を受ける桐壺(寿美花代)は男児を儲け、この世を去る。青年となった光源氏(市川雷蔵)は、桐壺とうり二つで帝の女御の藤壺(寿美花代、二役)を見初める。光源氏は左大臣(丸山修)の娘、葵の上(若尾文子)と結婚するが、政略結婚と知る葵の上は光源氏に愛を感じていなかった。光源氏は藤壺に夜這いをかけ、朧月夜と名乗る娘(中村珠緒)とも体を重ねる。葵の上の妊娠がわかったのちも、年上の六条の御息所(みやすどころ)(中田康子)に甘え、心を慰める。藤壺が光源氏の子を産み、事情を知らない帝は、我が子が光源氏に似ていると喜び、藤壺は良心が痛む。光源氏は、馬の脚が折れたために偶然訪ねた家で末摘花(すえつむはな)(水谷八重子)と一夜を明かす。光源氏は、笛の音に引かれてその家を訪ねる。笛の主は紫(高野通子)という藤壺の姪だった。光源氏は強引に紫を連れ帰り、育てることにする。
葵の上の出産が近づき、光源氏と葵の上はようやく思いが通じるようになるが、葵の上に嫉妬する六条の御息所の執念がもののけとなって葵の上に取り付き、葵の上は出産後まもなく命を落とす。帝が退位し、光源氏の身分が危うくなる中、新しい帝の女御になることが決まった朧月夜は、恋する光源氏に言い寄る。それに気づいた弘徽殿(こきでん)の女御(水戸光子)は光源氏の失墜を狙って朱雀帝(成田純一郎)に報告。帝の怒りを買った光源氏は須磨明石に下ることを決意。紫に将来を託して都を去るのだった。

光源氏の半生をコンパクトに描いている。浮名を流す印象の強い光源氏だが、本作では女好きの色男というより、藤壺を一途に思いながら添い遂げられない悲劇の主人公として光源氏を描いている。濃厚なシーンはないが、次々と若く美しい女性が登場するのが見どころ。

【5段階評価】3

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2024年3月 1日 (金)

(2598) コロンビアーナ

【監督】オリビエ・メガトン
【出演】ゾーイ・サルダナ、クリフ・カーティス、マイケル・バルタン、レニー・ジェームズ、アマンドラ・ステンバーグ
【制作】2011年、アメリカ、フランス

両親を殺された女性の復讐劇を描いたアクション映画。

コロンビアのマフィア幹部、ファビオ(ジェシー・ボレゴ)は、マフィアのボス、ドン・ルイスに命を狙われる。ファビオは娘のカトレア(アマンドラ・ステンバーグ)にマイクロチップとメッセージを託し、逃走しようとするが、敵に囲まれ、妻のアリシア(シンシア・アダイ=ロビンソン)とともに殺される。ルイスの腹心マルコ(ジョルディ・モリャ)は、テーブルについて身動きできないでいるカトレアに、ファビオの持っていた小さなチップを返してほしいと優しく話すが、カトレアは素直に従うふりをして突然テーブルの下に忍ばせたナイフをマルコの手のひらに突き立てて逃走。アメリカ大使館に逃げ込み、保護される。アメリカに渡ったカトレアは叔父のエミリオ(クリフ・カーティス)のもとを訪ね、殺し屋になりたいと宣言。エミリオは彼女を守ることを誓い、教育を施す。
15年後。大人になったカトレア(ゾーイ・サルダナ)は、わざと事故を起こして留置所に入り、ルイスの一味で収監されていたリッツォを暗殺。FBIのロス捜査官(レニー・ジェームズ)は徹底的な捜査を開始する。カトレアは、エミリオが受けた殺しの依頼をこなしながら、ドン・ルイスの一味の暗殺を続けていた。エミリオはそれをやめるよう命じるが、カトレアは従わない。カトレアの恋人ダニー(マイケル・バルタン)は、カトレアの寝顔の写真を友人に見せる。友人はサプライズに、と彼女の正体を調べるようFBIに勤める知り合いの女性に頼むが、その情報がロス捜査官に伝わる。写真照合によってカトレアの居場所を突き止めたロス捜査官はSWATを送り込むが、カトレアは包囲網をかいくぐって脱出。エミリオの家に向かうが、エミリオ一家はルイスの一味によって皆殺しにされていた。カトレアはロス捜査官の家に潜入し、ルイスの居場所を教えなければ家族を殺すと脅す。ロス捜査官はCIAのリチャード(カラム・ブルー)にルイスの情報を渡すよう頼むが、ルイスと裏取引をしているリチャードは無視。するとリチャードの胸元にレーダースコープの赤い光が灯る。ロス捜査官はリチャードにカトレアが狙っていると告げ、リチャードは住所を明かさざるを得なくなる。カトレアは重装備に身を包んでルイスのアジトに恐慌突入。一味を皆殺しにし、宿敵マルコも死闘の末に倒す。ルイスは車で逃走しようとするが、その車にはカトレアが猟犬を忍ばせていた。ルイスは猟犬に襲われて命を落とす。カトレアはダニーに電話をし、いつか戻ることをにおわせながら姿を消すのだった。

主人公アビリティ全開の陳腐な娯楽作品だろうと思って見始めたが、予想以上に面白かった。序盤から小さい女の子がパルクールで敵から逃走。この時点で「面白いじゃん」となる。成長したカトレアは、大勢を相手に撃ち合いになっても弾が当たらないとか、敵につかまってもなかなか殺されないとか、その手の主人公アビリティに頼らない。華麗な身のこなしで敵の追撃をかわし、銃撃戦では反撃を許さず一方的に圧勝する。唯一、マルコとの格闘だけは脇が甘く主人公アビリティを使うが、迫力はなかなかのものだった。俳優陣も、「アバター」のゾーイ・サルダナや「ダイ・ハード4.0」のクリフ・カーティス、「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」のレニー・ジェームズなどしっかりしていた。

【5段階評価】4

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