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2024年2月

2024年2月29日 (木)

(2597) ユンヒへ

【監督】イム・デヒョン
【出演】キム・ヒエ、中村優子、キム・ソヘ、ソン・ユビン、木野花
【制作】2019年、韓国

韓国と日本の小樽に別れ住む二人の女性の再会を描いた作品。

小樽に住むジュン(中村優子)と韓国に住むユンヒ(キム・ヒエ)は、かつて知り合いだったが、今は離れて暮らしていた。ユンヒの娘セボム(キム・ソヘ)はジュンからユンヒに宛てた手紙を見つけ、ユンヒと二人で小樽に旅行する。セボムはユンヒに内緒でジュンの叔母マサコ(木野花)の経営する喫茶店に行き、ジュンに会いたいと告げる。翌日、セボムはジュンに会い、ユンヒは小樽に来ていないと嘘をついて夕食を一緒に食べようとジュンを誘う。その一方で、ユンヒをジュンとの待ち合わせ場所に誘い、二人を再会させる。
ユンヒがジュンと会えずにいた理由。それは、ユンヒがジュンと恋愛関係にあったからだった。ユンヒはジュンと別れた後、インホ(ユ・ジェミョン)と結婚してセボムをもうけたものの離婚。ジュンも独身のままだった。再会を果たした二人は新たな一歩を踏み出すのだった。

最後にちょっとした謎解き(なぜユンヒとジュンは会おうとしないのか)があるものの、そこまではあまりにも退屈。おだやかでやさしい風景に癒される面はあるが、映画としては盛り上がりに欠けた。

【5段階評価】2

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2024年2月28日 (水)

(2596) 新 極道の妻たち

【監督】中島貞夫
【出演】岩下志麻、高嶋政宏、桑名正博、海野圭子、かたせ梨乃、西岡徳馬、夏八木勲、本田博太郎
【制作】1991年、日本

極道の妻たち」シリーズ第5作。やくざを率いる女性とその息子の運命を描いた作品。「極道の妻たち 最後の戦い」の続作。次作は「新 極道の妻たち 覚悟しいや」(1993)。

藤波組の二代目霊代(亡くなった組長の妻)、藤波加奈江(岩下志麻)には、成り上がろうと息巻いている息子、直也(高嶋政宏)がいた。加奈江は我が子の死が恐ろしく、直也が極道の道に進むのをやめさせようとしていた。藤波組では頭脳派の宗田(桑名正博)が三代目の有力候補だったが、直也も三代目に名乗りを上げる。加奈江は、直也と恋仲になっている大学三年生、氏家葉子(海野圭子)の訪問を受け、葉子から直也を極道にさせないでくれと頼まれる。葉子は直也に極道をやめてほしいと頼むが、直也は葉子の背後に加奈江がいることを知ってかたくなになり、加奈江は折れて直也を三代目にすることを決める。
宗田は藤波組に敵対するヤクザ神原組に寝返っていた。宗田は藤波組の弁護士、桐島美佐子(かたせ梨乃)からの情報をもとに、直也の行き場所に神原組の組員を待ち伏せさせて直也を暗殺させる。加奈江は、直也が死んだことで自分を責める美佐子から、直也の行き場所を知っていたのは宗田だけだと聞き、宗田を問いただす。開き直った宗田は加奈江に銃を向けるが、そこに現れた美佐子が宗田を撃ち殺す。加奈江は、宗田と直也の合同葬で手を合わせる一方で、腹心の重田(本田博太郎)をヒットマンとして神原組幹部の角谷(夏八木勲)のもとに送り込む。重田は機関銃を手に角谷の乗る車に突っ込んでいくのだった。

極道の妻たち」シリーズがヤクザ映画として面白いのは本作辺りまで。続編の「新極道の妻たち 覚悟しいや」(1993)からは、ヤクザの世界をモチーフにした現実味のない演劇になってしまっている。本作でも、直也は組長になったとたんに殺されるし、宗田はなぜか二人の組員に襲われながら無事だし、無事だと思ったら堅気の弁護士に拳銃で撃ち殺されるし、と、演劇感は否めないのだが、まだ、親子の愛を描き、見応えがあった。本シリーズの常連、かたせ梨乃は、本作ではタイトなミニスカートをはくシーンはあるものの、ベッドシーンやヌードはない。

【5段階評価】3

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2024年2月27日 (火)

(2595) チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~

【監督】風間太樹
【出演】赤楚衛二、町田啓太、浅香航大、ゆうたろう、草川拓弥、鈴之助、榊原郁恵、鶴見慎吾、松下由樹
【制作】2022年、日本

思いを寄せ合う男性同士のカップルを描いた作品。

内気で童貞のまま30歳となった安達清(赤楚衛二)は、触れた相手の心が読める魔法を手に入れる。それがきっかけで、業績優秀でイケメンの会社の同僚、黒沢優一(町田啓太)が自分に思いを寄せていることを知り、二人は付き合い始める。安達は長崎の新店舗進出の担当を会社から打診され、黒沢と離れて暮らすことに悩みながらも転勤を決意。しかし、睡眠不足で倒れてしまい、それを知った黒沢は長崎に飛ぶ。安達は黒沢の本音を聞かずに長崎に行ったことを詫び、黒沢は強がっていたことを告白。夜が明けると、安達の魔法は消えていた。
安達は黒沢と付き合っていることを周囲に明かすことを決意。安達の家族は黒沢を優しく受け入れ、黒沢の両親も、母親(松下由樹)がはじめは戸惑いを示したものの、安達を歓迎する。周囲の人々は、二人の幸せを温かく迎え入れるのだった。

いわゆるBLものだが、男同士のキスのような、人によっては嫌悪感を覚えるようなシーンはほぼなく(手をつなぐぐらい)、男性同士の恋に差別意識をあらわにしたり、逆に茶化してからかいすぎたり、という人はほぼ全く登場しない。すがすがしい純愛映画だった。家族が二人を受け入れるシーンは感動的ですらあった。「おっさんずラブ」や「きのう何食べた? 」など、相思相愛の男性カップルを描く作品が珍しくなくなった。

【5段階評価】3

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2024年2月26日 (月)

(2594) バンクシー 抗うものたちのアート革命

【監督】エリオ・エスパーニャ
【出演】バンクシー、ジョン・ネーション、フェリックス・FLX・ブラウン、スティーブ・ラザリデス、ベン・エイン
【制作】2020年、イギリス

謎の芸術家バンクシーを扱ったドキュメンタリー映画。

グラフィティアーティストとして活動を始めたバンクシーが、オークションで高額の落札作品を出すようになる過程を描いている。

グラフィティやストリートアートは、その街にただで見てもらうために提供されたものであり、それを高額でやりとりすることを作者は望んでいないという説明には、なるほどと思った。驚いたことにバンクシー本人もマスクをした状態で登場している。

【5段階評価】2

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2024年2月25日 (日)

(2593) インデペンデンス・デイ

【監督】ローランド・エメリッヒ
【出演】ウィル・スミス、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマン、ビビカ・A・フォックス、マーガレット・コリン
【制作】1996年、アメリカ

エイリアンの侵略に立ち向かう人々を描いたSF作品。

巨大な宇宙船が地球に接近。全長が24kmもある飛行物体が世界中に現れる。トーマス・J・ホイットモア大統領(ビル・プルマン)は国民を混乱に陥れないよう、避難せずホワイトハウスに残る。科学者のデイビッド・レビンソン(ジェフ・ゴールドブラム)は、宇宙船が衛星通信を使ってカウントダウンをしていることを突き止め、大統領の補佐をしている元妻のコニー(マーガレット・コリン)を通じて、大統領に宇宙人が攻撃してくると進言。大統領は妻のマリリン(メアリー・マクドネル)に避難するよう告げるが、飛行物体からの攻撃が一斉に始まり、マリリンの乗ったヘリは爆発に巻き込まれてしまう。デイビッドと父親のジュリアス(ジャド・ハーシュ)は、大統領とともにエアフォース・ワンで脱出。宇宙人が捕獲されているエリア51に向かう。
休暇中だった海兵隊のスティーブン・ヒラー大尉(ウィル・スミス)は、事態を知り、同棲中のジャスミン(ビビカ・A・フォックス)と連れ子のディラン(ロス・バグレー)を残して海兵隊に復帰。ジャスミンはエイリアンの攻撃に巻き込まれながらもなんとか逃げ出し、瀕死の重傷を負ったマリリンを発見する。ヒラーは飛行物体の攻撃に向かうが、敵の戦闘機に追撃される。ヒラーは敵機を墜落させることに成功し、中にいた宇宙人を殴り倒してエリア51に宇宙人を運び込むと、ヘリを飛ばしてジャスミンを発見。マリリンもエリア51に運び込まれるが、帰らぬ人となる。
デイビッドは、敵のコンピュータにウィルスを仕込んでバリアを無効化する作戦を思いつき、大統領は実行に移す。エリア51にて保管・研究されていたた敵戦闘機にヒラーとデイビッドが乗り込み、宇宙空間に停止している敵の母艦に侵入。デイビッドはウィルスを感染させることに成功する。大統領自ら戦闘機に乗り込んで陣頭指揮を執り、バリアが解けた飛行物体に猛攻を仕掛ける。最後は10年前に宇宙人に捕獲された経験を持つ老パイロットのラッセル・ケイス(ランディ・クエイド)がミサイルごと飛行物体の中心部に特攻し、飛行物体は大破する。人類は敵の弱点を共有し、世界中の飛行物体の撃墜に成功する。デイビッドとヒラーは敵の母艦からの脱出に成功し、ヒラーはジャスミンと、デイビッドはコニーと抱き合うのだった。

大統領が戦闘機に乗り込んで無事に帰還したり、敵の母艦にコンピュータウィルスをアップロードしたりと、娯楽大作的なご都合主義はあるものの、見事な特撮と多彩な登場人物で、圧倒的な戦闘力を持ったエイリアンに勝利するという痛快で見ごたえのある作品になっている。大統領が基地にいる人々に演説をするシーンは感動的。大統領がヒーローとして絵になるのはいかにもアメリカ映画だった。日本ではこうはならないだろう。なお、本作はセル版を持っているが、今回アマゾンプライムで観直した。

【5段階評価】5

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2024年2月24日 (土)

(2592) あなたの番です 劇場版

【監督】佐久間紀佳
【出演】田中圭、原田知世、西野七瀬、横浜流星、浅香航大、野間口徹、竹中直人、奈緒
【制作】2021年、日本

テレビドラマ「あなたの番です」の劇場版。本編とは運命の異なるパラレルワールドを描いている。

年の差夫婦の手塚翔太(田中圭)と手塚菜奈(原田知世)は、同じマンションの住人を招いて豪華客船で結婚披露宴を行う。ところが、管理人の床島比呂志(竹中直人)がロープで海中に沈められて水死。黒島沙和(西野七瀬)の部屋で南雅和(田中哲司)が焼死。捜査の過程で沙和も殺され、黒島のストーカーだった内山(大内田悠平)も殺される。祥太は事件を暴走気味に追い、一時は犯人かと疑われるが、真犯人は、刑事の神谷将人(浅香航大)だった。神谷は以前、沙和と付き合っており、殺人衝動を抑えきれない沙和が、新しい恋人の二階堂忍(横浜流星)を殺してしまうかもしれない恐怖から、神谷に自分の命を託したのだった。神谷は拳銃自殺しようとするが、翔太がそれを阻止。庄太と菜奈はマンションで暮らし続けるのだった。

大ヒットしたドラマだったので、ここぞとばかりに映画化したのだろうが、予想通り今一つだった。サイコパスが登場すると動機は何でもありになるので、種明かしの納得感は低かった。最初に管理人が殺された動機や犯人も描かれていないし、すっきりしない作品だった。個人的には筧美和子が出演していないのも残念。なお、本作はテレビ放映を見逃したか消えたかしたので、アマゾンプライムで視聴した。

【5段階評価】2

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2024年2月23日 (金)

(2591) マリリンに逢いたい

【監督】すずきじゅんいち
【出演】加藤昌也、安田成美、三浦友和、春川ますみ、久我蛍子、嶋大輔、石野陽子、相楽晴子
【制作】1988年、日本

3kmの海峡を渡って雌犬に会いに行く雄犬と周囲の人達を描いた作品。実話に基づいている。

沖縄の阿嘉島出身の若者、中里大輔(加藤昌也)は、東京での自立に失敗し、故郷に戻って民宿を営むことにする。帰る日、ゴミ捨て場で子犬を見つけ、思わず拾ってしまう。大輔の兄、達郎(三浦友和)は犬に勝手にシロと名付ける。シロは、隣の座間味島の民宿で買われている雌犬マリリンと仲よくなる。大輔がようやく民宿を完成させた頃、大きくなったシロは海を渡ってマリリンに会いに行くようになる。
大輔の民宿に、カメラマン志望の女性、久保田皆美(安田成美)が泊まりに来る。大輔と皆美は次第に親しくなっていく。達郎は何とか民宿をはやらせようと、シロをテレビ局に売り込むがうまくいかず、沖縄本島に連れられてきたシロは野良犬の集団に襲われ、怪我をしてしまう。大輔と達郎は喧嘩になり、落ち込んだ達郎のたばこの火の不始末で民宿は全焼してしまう。
マリリンは病気が元で死んでしまう。シロは脚を怪我したまま海を泳ぎ、マリリンの家に向かう。マリリンの飼い主の玉城佐和子(久我蛍子)は父親(河原崎長一郎)と一緒に、マリリンを丘の上に埋葬に行くところだった。シロは追ってきた大輔と皆美と一緒にマリリンを見送る。皆美は許嫁との結婚のため、沖縄を去ることにする。皆美を追う勇気の出なかった大輔だったが、シロに励まされ、皆美を追いかけ、船で皆美の向かった空港にボートを走らせる。結婚を迷っていた皆美は大輔と再会するのだった。

シロ役の犬は実際のシロだそうで、自然なふるまいは役者犬さながらだった。実話に基づくと言いながら、主人公が幼い妹の死という心の傷を抱えていたり、民宿が全焼したり、と、感傷的な事象を詰め込みすぎた感があった。

【5段階評価】3

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2024年2月22日 (木)

(2590) ひとよ

【監督】白石和彌
【出演】佐藤健、田中裕子、鈴木亮平、松岡茉優、MEGUMI、佐々木蔵之介
【制作】2019年、日本

夫を殺した母親と三人の子供たちの生きざまを描いた作品。

15年前、タクシー運転手の稲村こはる(田中裕子)は夫の雄一(井上肇)をひき殺す。常習的に暴力をふるう夫から三人の子供たちを守るためだった。こはるは甥の丸井進(音尾琢真)に連れられ、自首する。丸井はタクシー会社を引き継ぎ、稲丸タクシーとして経営を続ける。長男の大樹(鈴木亮平)は電気屋で働き、妻の二三子(MEGUMI)との間には幼稚園に通う娘がいたが、不仲で別居状態。末っ子の園子(松岡茉優)は美容師の夢を諦め、ホステスとして働いており、次男の雄二(佐藤健)は小説家を目指しながら、今は風俗ルポを書く記者をしていた。
ある日、母親が家に帰ってくる。出所後、仕事を転々としながらの突然の帰宅だった。家にいた大樹と園子は驚き、家に寄り付かなくなっていた雄二を呼び出す。母親は約束通り帰ってきたと言い、園子は素直に喜ぶが、雄二は15年前から人生を狂わされたことを素直に受け止められておらず、母親に悪態をつく。大樹はそんな雄二に怒りを感じていた。一時期やんでいた、タクシー会社へのいやがらせが再開。「聖母は殺人者だった」という週刊誌記事のコピーを貼られるようになるが、その記事を書いたのは誰あろう雄二だった。
大樹は母親のことを二三子に話していなかったため、二三子は大樹への怒りを増大させる。大樹は二三子に手を挙げてしまい、それを見たこはるが大樹を責めると、大樹は母親に、立派なかあさんはだめな俺を殺すのかと口走る。こはるは、かつて雄二(池田優斗)が万引きしてつかまった「デラべっぴん」を堂々と万引きして店主につかまり、迎えに来た大樹に、こんな母さんは立派か、とつっかかる。三人は母親のしたことに苦笑いする。
最近、タクシー運転手の仲間入りをした堂下道生(佐々木蔵之介)は、やくざから足を洗った経歴を隠しており、酒を断ち、更生しようとしていた。彼は息子と久々に再会して、焼き肉やバッティングセンターで遊んだことを幸せに感じていた。ところが元子分(大悟)からブツの運搬を依頼され、断れずに乗せた若い運び屋が息子だった。堂下は息子がシャブをやっていることにショックを受け、息子を責めるが、息子にお前のせいだ、とキレられる。堂下は断(た)っていた酒を煽りながら事務所に戻ると、こはるを乗せてタクシーを走らせる。それに気づいた雄二たちがタクシーで追いかけ、堂下がタクシーごと海に飛び込もうとしたところを、体当たりして制止する。堂下は、親が何をしても子供には伝わらず、子供は道を踏み外したのは親のせいだと言ってくることに嫌気がさして自暴自棄になっていた。こはるを突き飛ばした堂下に雄二は掴みかかり、自分は自分の身に起きたことを記事にして成りあがるしかなかった、と堂下に告白。堂下も、どんなにあの夜が嬉しかったか、と雄二にしがみつく。夜が明け、雄二は母親の事件を書いた記事をパソコンから抹消。園子は夢に見ていた母親の髪のカットをする。雄二は同級生だった牛久真貴(韓英恵)のタクシーに乗り、「じゃあまた」と言って家族のもとを去るのだった。

激しいDVを働く父親であれば、殺害しても正当化されるという単純な描き方ではない。母親は、取り返しのつかないことをしたと思いつつ、自分は間違っていないという姿勢を貫かなければ、子供たちが迷ってしまうと独白する。この母親を主役にすれば、また全く異なった作品になっただろう。主役級の俳優が集まった見ごたえのある作品だった。クライマックスで堂下と雄二が自分の思いのたけをぶつけ合うシーンには、不思議な感動があった。

【5段階評価】4

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2024年2月21日 (水)

(2589) お早よう

【監督】小津安二郎
【出演】設楽幸嗣、島津雅彦、三宅邦子、佐田啓二、久我美子、笠智衆、杉村春子、高橋とよ、東野英治郎
【制作】1959年、日本

親子喧嘩がもとで口を利かないことに決めた兄弟と、それに巻き込まれる大人たちを描いたコメディ。

林家の息子、実(設楽幸嗣)と勇(島津雅彦)は、母親の民子(三宅邦子)にテレビをねだるが買ってもらえない。実がだだをこねていると、帰ってきた父親の敬太郎(笠智衆)から口数が多いと叱られる。実は、大人だって無駄な会話をしているじゃないかと口答えし、勇を巻き込んで口を一切利かないことにする。二人は学校で給食費の支払いが必要なことを親に説明することもできない。腹をすかせた二人は、家からおひつとやかんを持ち出し、河原でご飯を食べるが、通りかかった警察官に不審がられ、逃げ出す。民子と同居している有田節子(久我美子)は、実と勇がしばしば出入りしている福井平一郎(佐田啓二)の家を訪ねる。平一郎は二人を探しに出かけ、駅前のテレビを見ていた二人を林家に連れ帰る。家には、敬太郎が買ったテレビが置かれていた。近所に住む富沢(東野英治郎)が家電のセールスマンの職に就いた祝いにと買ったのだった。実と勇は大喜びする。
登校中、実と勇は、近所の幸造(白田肇)と、はやりのおならごっこをするが、幸造はおならだけではすまなかったようだ。すごすごと家に帰り、母親のきく江(杉村春子)にこっぴどくしかられるのだった。

アメリカ映画でおならをユーモアに使う場面はよく見るが、小津監督作品にもあるとは知らなかった。町内会費を渡した渡さなかったでもめたり、押し売りを追っ払ったりといった、庶民のご近所付き合いのあるあるがつめこまれたような内容。家族を扱う小津監督作品の中でもコメディ色の強い内容だった。互いを憎からず思っている平一郎と節子が、核心に触れず天気の話や雲の形が珍しいなどといった、実の言う通りどうでもいい会話をしてしまうというシーンもほほえましかった。

【5段階評価】3

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2024年2月20日 (火)

(2588) トランボ ハリウッドに最も嫌われた男

【監督】ジェイ・ローチ
【出演】ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン、エル・ファニング、ディーン・オゴーマン
【制作】2015年、アメリカ

迫害を受けた映画脚本家の半生を描いた作品。

第二次世界大戦後のアメリカでは、共産党員がスパイとして迫害される世相となり、映画脚本家のダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は映画界から疎外され、有罪判決を受けて投獄される。出所後も仕事を干されるが、友人のイアン・マクラレン・ハンター(アラン・テュディック)の名を借りて「ローマの休日」の脚本を書き、B級映画を配給しているフランク・キング(ジョン・グッドマン)に低質で大量の脚本を提供し、生活費を稼ぐ。「ローマの休日」はアカデミー賞原案賞を受賞。彼は仲間や家族を総動員させて脚本を書き続け、その中の一作「黒い牡牛」もアカデミー原案賞を受賞する。
名優カーク・ダグラス(ディーン・オゴーマン)は彼に「スパルタカス」の脚本を依頼。反共の強硬派ヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)はカークを脅すが、カークは屈しない。オットー・プレミンジャー監督(クリスチャン・ベルケル)も「栄光への脱出」の脚本を彼に依頼。カークとオットーはダルトン・トランボを実名で起用。「スパルタカス」を鑑賞したケネディ大統領は作品を称賛。反共の潮目が変わる。ダルトンは米脚本家組合ローレル賞を受賞。彼は受賞スピーチで、家族への感謝と反共派によるブラックリストの虚しさについて語るのだった。

古典映画のファンには見ごたえのある作品。アメリカ映画史の暗黒面を描いている。偏見や無知による人々の愚行に耐えるトランボを、反骨の勇者というよりは、娘(エル・ファニング)の誕生日を祝おうともしないひどい父親ぶりをも描くことで、家族を養うことに懸命な庶民といった描き方になっている。「ローマの休日」の映画のシーンは本物のオードリー・ヘップバーンとグレゴリー・ペックが出ていたが、「スパルタカス」は本物のカーク・ダグラスではなかったようだ。ただ、ほとんど本物の作品のようだった。本物だったのかな。

【5段階評価】4

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2024年2月19日 (月)

(2587) blank13

【監督】斎藤工
【出演】高橋一生、リリー・フランキー、斎藤工、神野三鈴、松岡茉優、佐藤二朗、波岡一喜
【制作】2018年、日本

父親の葬儀に臨む二人の息子と妻を描いた作品。

松田雅人(リリー・フランキー)が胃がんで亡くなり、葬儀が営まれる。長男のヨシユキ(斎藤工)が喪主となり、次男のコウジは連れ合いのサオリ(松岡茉優)と葬儀に参列。弔問客はまばらだった。
ヨシユキ(北藤遼)とコウジ(大西利空)が子供のころ、雅人は400万円の借金をしており、借金取り(波岡一喜、森田哲矢)の熾烈な取り立てに苦しめられていた。雅人は煙草を買いに出ると言ったまま失踪。妻の洋子は新聞配達と夜の仕事をし、子供たちも内職や新聞配達の手伝いなどをし、父親の借金を返済していた。
父親が失踪してから13年後、三人は再会。父親が胃がんで入院したのだ。ヨシユキも洋子も見舞いに行く気はなかったが、コウジは、昔、父親とキャッチボールをした思い出があり、父を見舞う。しかし父親は相変わらず借金取りの世話になっているようだった。父親を心底軽蔑したコウジは病院を去る。しかし、連れ合いのサオリは父親の見舞いに行かないのはよくないとコウジに話し、二人で見舞いに行く。雅人はコウジに小遣いを渡す。その後、雅人は亡くなったのだった。
葬儀の場。読経を終えた僧侶(杉作J太郎)は、弔問客一人一人に挨拶を促す。弔問客たちは驚きながらも一人一人が故人との思い出を語る。すると、お金のない雅人が困った人を見るとほっておけずに助けてあげていた、自分が助けてもらったという話をし始める。競馬仲間だったという男(神戸浩)は見舞いに行くと大事そうにコウジが賞を取ったという作文を見せてくれたと話す。
最後の挨拶を任されたヨシユキは、父親のことが死ぬほど嫌いだったと話し始めるが、みなさんの話を聞いて、と話したところで言葉に詰まり、葬儀場を出て行ってしまう。後を引き継ぐ形になったコウジは、父親の知らない面を知ることができてよかったと話し、弔問客に礼をする。ヨシユキ、コウジ、サオリは火葬場で火葬が終わるのを待つのだった。

70分の短い作品だが、芝居の巧みな俳優で配役が固められ、静かな感動を呼ぶ作品。隠れキャラ的に有名なタレントやお笑い芸人が多く出演している。

【5段階評価】4

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2024年2月18日 (日)

(2586) 東京物語

【監督】小津安二郎
【出演】笠智衆、東山千栄子、原節子、山村聰、杉村春子、香川京子、東野英治郎
【制作】1953年、日本

尾道から東京に出てきた老夫婦と東京で暮らす子供たちとのやりとりを描いた作品。

尾道で暮らす周吉(笠智衆)ととみ(東山千栄子)の老夫婦は、教師をしている娘の京子(香川京子)に留守を任せて東京に出る。二人は開業医の息子、幸一(山村聰)の家に泊まるが、幸一は仕事が忙しく、二人の相手ができない。美容院を営む長女の志げ(杉村春子)も二人の相手が難しく、戦死した次男、昌二の妻で未亡人の紀子(原節子)に電話で二人の世話を依頼。米山商事に勤めている紀子は、休暇を取得して二人を東京観光に案内し、アパート暮らしの狭い部屋に招いて心ばかりの食事で二人をもてなす。紀子にばかり世話を頼むのは悪いと考えた幸一と志げは、金を出し合って二人を熱海旅行にやる。しかし、泊まった旅館では若者の麻雀や流行歌の演奏でうるさく、二人は寝られない。翌朝、二人は早々に熱海から引き上げることにする。とみは少し足元にふらつきが生じていた。
二人が志げの家に帰ると、志げは明らかに迷惑そうに「もっといればよかったのに」と話す。志げの家にも幸一の家にも泊まりづらくなった周吉は、とみを紀子の家に泊まらせ、自分は旧友を訪ねることにする。とみはかいがいしく対応してくれる紀子に感謝し、まだ若いのだから昌二のことに気兼ねせず再婚してほしいと話し、涙ぐむ。一方の周吉は旧友の服部修(十朱久雄)の家を訪ね、沼田(東野英治郎)とも再会したものの、どちらの家にも泊めてはもらえそうになく、夜中まで飲み屋で飲んで泥酔したうえ、結局、沼田を連れて志げの家に戻ってくる。
周吉ととみは尾道に帰ることにするが、途中でとみの気分が悪くなり、大阪にいる三男の敬三(大坂志郎)の家で一泊した後、尾道に戻る。ところが京子から電報で、とみが危篤になったという知らせが来る。幸一、志げ、紀子は尾道に集まるが、とみはそのまま息を引き取る。敬三は仕事のため遅れ、死に目には会えなかった。葬式を済ませると、実(じつ)の子供たちは早々に自分の家に引き上げ、紀子だけがしばらく周吉のもとに残る。京子は早々と帰った三人を非難するが、紀子は年を取るにつれて自分の生活が中心になってしまうものだ、と京子を優しく諭す。周吉は紀子に感謝し、生前、とみが、紀子の家に泊まったときが一番楽しかったと言っていたと伝え、昌二のことは忘れていい人ができたら結婚してくれ、と話す。紀子は、実は昌二のことを思い出さない日の方が多くなっており、心の中で何かが起きるのを待っているのにそのことを義母に言えなかった自分はずるいのだと告白する。周吉は紀子の正直さを誉め、とみの懐中時計を形見として紀子に渡し、「自分が育てた子供より、いわば他人のあんたの方がよっぽどわしらにようしてくれた」とこぼす。紀子は嗚咽を漏らす。子供たちのいなくなった部屋の中で、周吉は寂しそうに虚空を見つめるのだった。

固定のローアングル映像を多用し、淡々とした会話を紡いで静かな感動を呼ぶ、小津安二郎監督らしい作品。本作をリメイクした「東京家族」を先に観ていたため、とみが亡くなる展開は予想できていたのだが、それでもとみが亡くなったシーンや、紀子が嗚咽するシーンには感動した。派手な音楽や映像に頼らず、上質な感動を生み出しており、白黒作品であることをデメリットに感じさせない名作だ。文学作品のようなセリフも心地よい。

【5段階評価】4

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2024年2月17日 (土)

(2585) オーバー・ザ・レインボー

【監督】アン・ジヌ
【出演】イ・ジョンジェ、チャン・ジニョン、チョン・チャン
【制作】2002年、韓国

記憶喪失になった男が、自分の愛する女性を探す恋愛映画。

天気キャスターのジンス(イ・ジョンジェ)は交通事故で記憶の一部を失ってしまう。車の中に、光の加減で顔の写っていない髪の長い女性の写真が残っており、ジンスは、自分が思いを寄せていたはずの、その女性の正体を探る。ジンスは留守番電話にメッセージをくれていた学生時代の知り合い、カン・ヨニ(チャン・ジニョン)に会う。彼女はジンスの家の前の住人サンイン(チョン・チャン)に電話をしており、ジンスに用があって電話をしたのではなかった。ジンス、ヨニ、サンインは大学時代の写真部仲間。ヨニはジンスの女性探しに協力する。考古学科のユナ(イ・ヨンジュ)も、演劇学科のギョンヒも目指す女性ではなかった。ジンスはヨニと時間をともに過ごすうち、彼女に惹かれていく。ある日、ジンスの家でジンスの撮ったスライドを確認していたジンスとヨニは、キスする一歩手前まで行くが、サンインからの電話がそれを妨げる。一度近づいた二人の距離は、再び少し離れる。
ある日、職場の駅で働いていたヨニは、同僚のウンソン(オム・ジウォン)が改札窓口で誰かから渡された手帳を受け取る。そこには古いジンスの写真とスライド写真が入っていた。それを手渡したのはサンインだった。かつて、ジンスが兵役に行くのを見送ったサンインは、ジンスが落とした手帳に気づき、それを隠し持っていたのだ。ヨニが好きだったサンインはジンスとヨニが両想いになるのを恐れ、それを隠したままヨニと付き合っており、ヨニとサンインが会っているのを目撃したジンスはヨニへの愛を諦めていた。しかしサンインとヨニは性格が合わずに破局。サンインは今になってヨニに手帳を渡したのだった。ヨニはジンスが自分を思っていてくれていた学生の頃を思い出す。同時に、別の場所にいたジンスも記憶を取り戻していた。二人は学生時代に一緒だった校舎で再会。二人の恋愛が始まるのだった。

虹をキーワードに物語が展開。雨のシーンが多いがハッピーエンドのさわやかな作品。ただ、思いの相手がヨニでした、という、もっともシンプルな種明かしというのが今一つ感動に欠けたのと、過去と現在が交錯し、物語がわかりにくいのも残念だった。

【5段階評価】3

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2024年2月16日 (金)

(2584) 小説家を見つけたら

【監督】ガス・バン・サント
【出演】ロブ・ブラウン、ショーン・コネリー、アンナ・パキン、F・マーリー・エイブラハム
【制作】2000年、アメリカ

バスケットボールの才能と文才を持ち合わせた16歳の少年と年老いた元小説家との絆を描いた作品。

ブロンクスの高校に通うジャマール・ウォレス(ロブ・ブラウン)はバスケットボールが得意で、仲間とゲームに興じていた。彼らは、近くのアパートの上階からそれを覗き見ている老人がいることに気づいていた。彼らはアパートに侵入することにし、ジャマールが部屋に忍び込む。ジャマールは老人に気づかれ、自分のバックパックを置き忘れて慌てて逃げ出す。翌日、ジャマールがアパートの部屋に出入りしている人物に話しかけていると、上からバックパックが投げ落とされる。ジャマールは作文をしたためたノートを中に入れていたが、そこには数多くの添削がなされていた。ジャマールはそれをきっかけに老人(ショーン・コネリー)と交流するようになる。
ジャマールは、バスケットボールの能力と優秀な学業成績を買われ、一流の私立高メイラー校からスカウトされ、転校する。ジャマールは知り合いになったクレア・スペンス(アンナ・パキン)が持っていた小説を見て、知り合いになった老人が、小説を一冊書いただけで引退した伝説の小説家ウィリアム・フォレスターであることを知る。
ジャマールは、バスケットボール部で活躍し、作文のできばえも評価されるようになるが、国語教師のロバート・クロフォード(F・マーリー・エイブラハム)は、彼の文才が剽窃によるものではないかと疑う。ジャマールはウィリアムにお題をもらって書いた作文を作文コンテストに提出。しかしクロフォードは、そのタイトルが、かつてウィリアム・フォレスターが雑誌に寄稿した文章のタイトルであることを発見。作文コンテストへの参加を無効にし、評議会に諮ることを決める。ジャマールはウィリアムに報告するが、ウィリアムはジャマールにクロフォードへの謝罪文を書けとだけ言い、ジャマールは怒って部屋を出ていく。
作文コンテストの発表の日。参加者は自分の作品を朗読していくが、ジャマールにその順番は回ってこない。すると、その場にウィリアムが現れ、作文を一つ読みたい、とクロフォードに問う。伝説の小説家の申し出にクロフォードが喜んで応じると、ウィリアムは家族と友情についての文章を朗読。生徒や大人たちは素晴らしい文章に聞きほれる。クロフォードが絶賛しながらなぜ来てくれたのかウィリアムに問うと、ウィリアムは、口を封じられた自分の友のためにしゃべった、作文はジャマールが書いたものだ、と明かす。大恥をかくことになったクロフォードはそれでもコンテスト失格は逃れられないと強弁するが、教育会会長がジャマールの評議会の話を無効にし、16歳の彼の才能を称賛する。拍手に見送られながら教室を出たジャマールに、ウィリアムは故郷に旅に出ると言い残して自転車で走り去る。
最終学年を迎えたジャマールのもとに、ウィリアムの法的事務を担当していたロバーツ&カーター事務所のサンダーソン弁護士(マット・デイモン)が訪ねてくる。彼はジャマールにウィリアムの死を知らせ、彼のアパートの鍵を手渡す。ジャマールは家族とウィリアムのアパートを訪ねる。ウィリアムが外を見ていた窓際には、序文をジャマールに託したウィリアムの小説の原稿が置かれているのだった。

静かな感動を呼ぶ作品。若者の成長の芽を摘もうとするロバート・クロフォードが徹底的にとっちめられるのが、痛快と言えば痛快、悪趣味と言えば悪趣味。ただ、授業中、小説の一説を持ち出したクロフォードにジャマールがすべて続きの文章や作者を言い返したことに、クロフォードが授業で私には字を書かせるな、とすごむシーンがあるのだが、自分から喧嘩を吹っかけておいてそれはないだろうとしか思えなかった。ちょい役でマット・デイモンが出演している。
残念なのは、コメディ作品のような邦題。原題は「Finding Forrester」。そのままカタカナでもよかったし(「ファインディング・ニモ」っぽいがこちらの方が公開は前)、「フォレスターを探して」とか「小説家に出会って」でもよかった。

【5段階評価】4

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2024年2月15日 (木)

(2583) パタリロ!

【監督】小林顕作
【出演】加藤諒、青木玄徳、佐奈宏紀、魔夜峰央
【制作】2019年、日本

魔夜峰央の漫画の実写映画化作品。

マリネラ王国のパタリロ王子(加藤諒)が王位に就くことになる。英国外務省はボディガードにバンコラン(青木玄徳)をつける。バンコランはBBC記者のマライヒ(佐奈宏紀)に一目ぼれ。マライヒは実は、国際ダイヤモンド輸出機構が放った刺客だった。パタリロは時空を飛び越えながらも暗殺から逃れる。バンコランは、マライヒと死闘を繰り広げるが、最後はマライヒを守り続けることを誓い、マライヒの受けた国際ダイヤモンド輸出機構の密命を破棄させるのだった。

スラップスティックコメディの部類だが、序盤から全く面白くなく、筋書きもわからない。お目当ての俳優が出ているファン以外にとって、この作品は何を見どころにすればいいのかわからなかった。イケメン俳優が意外と多く出ているところかもしれないが、男性同士のキスシーンもやたら多く、SMネタなど悪趣味で面白くない演出を多用。出演者が一生懸命やっていることだけはわかるし、加藤諒のような身体的に特徴のある俳優が活躍しているところは勇気をもらえたりするわけだが。
超時空要塞マクロス」のテーマ曲やら「スター・ウォーズ」やらのパロディが出てきたが、最もパクられていたのはタブレット純かもしれない(違)。
エンディングでは続編を作りたいということをネタにした歌を歌うが、さて、自動録画されたらどうしようかな(←きっと観るんだが)。

【5段階評価】1

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2024年2月14日 (水)

(2582) オータム・イン・ニューヨーク

【監督】ジョアン・チェン
【出演】リチャード・ギア、ウィノナ・ライダー、エレイン・ストリッチ、ベラ・ファーミガ
【制作】2000年、アメリカ

48歳の男性と病を患った22歳の女性の恋を描いた作品。

プレイボーイのウィル・キーン(リチャード・ギア)は、自身の経営するレストランで古い知人のドロレス・タルリッジに出会う。彼女は孫のシャーロット(ウィノナ・ライダー)の誕生会で店に来ていた。ウィルとシャーロットは互いに挨拶する。シャーロットが帽子のデザイナーだと知ったウィルは、パーティに同伴する女性の帽子を作ってほしいとシャーロットに依頼し、帽子を持ってきたシャーロットに、相手の女性に振られたと言ってシャーロットを誘う。二人はそこから付き合い始める。シャーロットは心臓の病気があることを明かす。二人は付き合いを続けるが、あるパーティに二人で参加したとき、ウィルはパーティに来ていた知り合いのリンと屋根裏でセックスし、それをシャーロットに気づかれてしまう。ウィルは自分はこういう人間だ、と白状し、シャーロットに、残された時間を自分と一緒に過ごさないほうがいいと言ってシャーロットのもとを立ち去る。
泣きながら帰宅したシャーロトに、ドロレスは、娘のケイティがかつてウィルに溺れ、ウィルはケイティのテニス仲間のミリーを妊娠させたのだという話をする。シャーロットはウィルを諦めることにするが、ウィルはシャーロットが忘れられず、彼女に謝罪し、愛させてくれと懇願する。二人は再び付き合い始めるが、シャーロットの病状は悪化しており、たびたび倒れて病院に運ばれるようになる。ウィルはミリーとの間に生まれた娘リサ・タイラー(ベラ・ファーミガ)の協力を得て、彼女の心臓病の手術ができる医師を探し出す。クリスマスの日、ウィルがシャーロットのためにサプライズの準備をしているとき、シャーロットがウィルへのプレゼントを手にしたまま倒れてしまう。オハイオからグランディ医師(J・K・シモンズ)が呼び出され、手術が始まる。ウィルの仲間やシャーロットの知人が病院に集まるが、手術は失敗に終わる。
家に戻ったウィルは、シャーロットが用意していたプレゼントを開ける。中には、二人が最初にデートをしたとき、シャーロットが戯れにウィルから取り上げた腕時計が入っていた。ウィルはこらえきれずに涙をぬぐうのだった。

おじさんと若い女性の悲恋の物語。おじさんの妄想だが、監督は女性だ。リチャード・ギアだから成立するんだろうか。大森南朋と多部未華子とか、石立鉄男と岡崎友紀とかだろうか。どっちもコメディだな。
ニューヨークの街並みなどの映像は映画らしく美しく切り取られているものの、さすがに恋人と来ているパーティで、別の女性と性行為に及び、「ボクも怖かったんだ」なんて言い訳をする男には、なかなか感情移入がしづらかった。

【5段階評価】3

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2024年2月13日 (火)

(2581) コッホ先生と僕らの革命

【監督】セバスチャン・グロブラー
【出演】ダニエル・ブリュール、ユストゥス・フォン・ドホナーニ、テオ・トレブス、アドリアン・ムーア、ティル・バレンティン・ビンター
【制作】2011年、ドイツ

ドイツの学校でサッカーを教える英語教師の活躍を描いた作品。実話に基づいている。

1874年、ドイツのブラウンシュバイクに、英語教師のコンラート・コッホ(ダニエル・ブリュール)が赴任する。当時のドイツはイギリスを野蛮な国として敵視しており、規律と服従を旨とする教育が行われていた。級長のフェリックス・ハートゥング(テオ・トレブス)は資産階級の息子で、労働階級のクラスメート、ヨスト・ボーンシュテット(アドリアン・ムーア)をいじめ、退学に追い込もうとしていた。コッホは仲間意識を高めながら英語に興味を持ってもらえるよう、サッカーを授業に取り入れる。サッカーを知らない子供たちははじめはとまどうが、すぐにその魅力のとりこになる。
ハートゥングの父親、リヒャルト(ユストゥスフォン・ドホナーニ)は、コッホの教育を批判し、追い出しにかかる。生徒たちは校長秘書のザルヒョウ(アンナ・シュティーブリッヒ)にお願いをして帝国教育庁に直訴する連絡を入れてもらい、教育庁がサッカーが教育にふさわしいか視察に来ることになる。リヒャルトはマスコミを使ってコッホとサッカーを批判する世論を巻き起こし、フェリックスが恋心を抱いている元家政婦のロザリエ(ヘンリエッテ・コンフリウス)を町から追い出す。それを知ったヨストは父親に監禁状態にされているリヒャルトの家に行き、それを伝える。リヒャルトは窓から家を抜け出そうとするが、2階から落下して怪我をしてしまう。それを見たリヒャルトはヨストを退学にし、コッホを退職させることにし、校長のグスタフ(ブルクハルト・クラウスナー)も従わざるを得なくなる。
学校を去ることになったコッホのもとに、イギリスのサッカーチームを率いて、コッホの友人イアン(トーマス・スペンサー)が現れ、教育庁の視察団も到着。急遽、イギリス対ドイツのサッカーの試合が行われることになる。ゴールキーパーでボール職人の息子オットー・L・シュリッカー(ティル・バレンティン・ビンター)は職人たちを試合に身に行かせ、父親(アクセル・プラール)にボールを会場で売るよう指示、商売人としての才覚を見せ始める。オットーは退学になって工場で働いているヨストを呼びに行き、フェリックスも父親を突き飛ばしてサッカーに参加。試合では、早々にイギリスチームに点を入れられるものの、ヨストのセンタリングにフェリックスが頭で合わせて同点。さらに、ヨストの個人技で逆転ゴールが決まり、ドイツは勝利する。はじめはドイツ的ではないとサッカーに批判的だった視察団も、サッカーの魅力のとりこになる。コッホはドイツサッカーの先駆者となるのだった。

抑圧されたり仲違いしていた生徒たちが、魅力的な教師のもとで成長していくという作品はいくつかあるが、本作も大きな感動を呼ぶ内容だった。ただ、中盤は、コッホ先生に逆風の展開が多すぎた。もう少しバランスがとれているとよかった。

【5段階評価】4

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2024年2月12日 (月)

(2580) ワイルド・スピード ICE BREAK

【監督】F・ゲイリー・グレイ
【出演】ビン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、シャーリーズ・セロン
【制作】2017年、アメリカ

家族を人質に取られた男の奮闘を描いたカーアクション映画。「ワイルド・スピード SKY MISSION」の続編。

キューバでドミニク(ビン・ディーゼル)が妻のレティ(ミシェル・ロドリゲス)とバカンスを楽しんでいると、サイファー(シャーリーズ・セロン)という女性からとある写真を見せられ、部下になれと脅される。娘(エデン・エストレヤ)のサッカーの監督をしていたホブス(ドウェイン・ジョンソン)のもとに、ドイツにある電磁パルス砲を強奪してほしいとの依頼があり、ホブスはドミニクら仲間を集め、作戦を遂行。ところが、途中でドミニクが裏切り、ホブスの車を横転させて電磁パルス砲を奪って逃走する。刑務所に収監されたホブスは、宿敵デッカード(ジェイソン・ステイサム)と再会。二人は刑務所から脱走し、ミスター・ノーバディ(カート・ラッセル)と合流。彼らの作戦基地にドミニクとサイファーが現れ、サイバープログラム「ゴッド・アイ」を強奪する。
ドミニクはかつての恋人エレナ(エルサ・パタキー)と、エレナが生んだ自分の赤ん坊をサイファーに人質に取られていた。ドミニクは、サイファーの腹心ローズ(クリストファー・ヒビュ)とロシアの要人が持つ核ミサイル発射コードを奪う作戦に出る。サイファーはゴッド・アイを使ってロシアの要人の車列の周囲の車をコントロールして、車列に体当たりさせ、ドミニクが発射コードを入手。そこにホブスのファミリーが立ちはだかるが、ドミニクはデッカードを射殺。レティが発射コードを奪おうとするが、ローズに銃を突きつけられ、手放さざるを得なくなる。サイファーはローズがいなければ作戦は失敗していたとドミニクを責め、みせしめとしてローズがエレナを射殺する。
ドミニクとローズはロシアのウラドビンに渡り、核ミサイルを積んだ潜水艦をサイファーに乗っ取らせる。ホブスファミリーは、スーパーカーや小型戦車など思い思いの車で作戦を妨害。核ミサイルの無力化に成功する。ローズはレティを狙撃しようとするが、ドミニクはローズを殺してエレナのかたきを討つ。サイファーは潜水艦を操り、魚雷や体当たりでホブスらを攻撃するが、最後はドミニクが熱誘導弾を潜水艦にぶつけ、窮地を脱する。
一方、死んだと思われていたデッカードは生きていた。ドミニクがデッカードの母親マグダーレン(ヘレン・ミレン)らに依頼して狂言を打っていたのだ。デッカードは弟のオーウェン(ルーク・エバンズ)とともにサイファーの乗っている飛行機に潜入。人質となっているドミニクの息子を奪い返す。サイファーはパラシュートで機外へ脱出する。
ドミニクはファミリーのもとに戻り、息子にブライアンという名前を与えるのだった。

アクション満載の娯楽作品。自動操縦された車が大量に走り出し、上層階の立体駐車場から車が降り注ぐシーンは特に見ごたえがある。氷の下から現れた潜水艦との戦闘は、さすがに現実味が薄いが、オリジナリティは評価できる。新たな登場人物サイファーも現れ、かつての敵だったデッカードやオーウェンが味方につくなど、ドラゴンボール的な楽しさも出てきたシリーズだ。なお、本作は自動録画が消えてしまったので、アマゾンプライムで視聴した。

【5段階評価】4

 

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2024年2月11日 (日)

(2579) 恋をしましょう

【監督】ジョージ・キューカー
【出演】イブ・モンタン、マリリン・モンロー、トニー・ランドール、フランキー・ボーン、ウィルフリッド・ハイド=ホワイト
【制作】1960年、アメリカ

資産家の男と若い女優の恋を描いた作品。

資産家のクレマン一族の跡継ぎ、ジャン=マルク・クレマン(イブ・モンタン)は、女好きの悪名が高かった。広報担当となったアレクサンダー・コフマン(トニー・ランドール)は、クレマンを皮肉る芝居が行われるのを知り、クレマンにリハーサルを見に行かせることにする。クレマンはそこで、歌って踊るアマンダ・デル(マリリン・モンロー)に一目惚れする。クレマンは、クレマン役の候補とスタッフに勘違いされ、そのままクレマン役に抜擢。名前を聞かれたクレマンは、とっさにアレクサンドル・デュマと偽名を使う。
クレマンは、アマンダと仲のいい俳優トニー・ダントン(フランキー・ボーン)に嫉妬しながらもアマンダに接近。自分が本物のクレマンだと明かすが、アマンダは信じない。クレマンはアマンダを自社ビルの社長室に連れて行き、自分がクレマン本人であることを示す。騙されていたと知ったアマンダは怒ってビルを出ようとするが、エレベータの中でクレマンに優しく抱かれ、彼を受け入れるのだった。

おじさんと若い女性の恋を描いた妄想作品。「昼下がりの情事」のゲーリー・クーパーとオードリー・ヘップバーンと同じパターンだった。トニー役のフランキー・ボーンは、ローワン・アトキンソンに似ていた。ミルトン・バールやビング・クロスビー、ジーン・ケリーといった芸能人が本人役で出演している。公開当時34歳のマリリン・モンローは、ピチピチギャルというより、ぶよんぶよんだった。

【5段階評価】2

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2024年2月10日 (土)

(2578) ミステリー・トレイン

【監督】ジム・ジャームッシュ
【出演】スクリーミン・ジェイ・ホーキンズ、サンク・リー、工藤夕貴、永瀬正敏、ニコレッタ・ブラスキ、ジョー・ストラマー
【制作】1989年、アメリカ、日本

メンフィスのホテルに同時期に滞在した宿泊客の運命を描いたオムニバス形式の作品。

第一話は「ファー・フロム・ヨコハマ」。横浜からメンフィスに来た若い男女ミツコ(工藤夕貴)とジュン(永瀬正敏)。ミツコはエルビス・プレスリーの、ジュンはカール・パーキンスのファン。サン・スタジオを見学した後、二人は古びたホテルに泊まる。赤いスーツを纏ったフロントの男(スクリーミン・ジェイ・ホーキンズ)は二人に27号室をあてがう。二人は部屋の中で抱き合い、眠る。翌朝、二人は銃声のようなものを聞くが、気にせずホテルを発つ。
第二話は「ア・ゴースト」。飛行機のトラブルでメンフィスに足止めされたローマの女性ルイーザ(ニコレッタ・ブラスキ)は、新聞を一部買うつもりが、店員(サイ・リチャードソン)からいらない新聞雑誌を押し売りされ、入ったダイナーでは見知らぬ男(トム・ヌーナン)に櫛を売りつけられる。たどり着いたホテルでは、メンフィスに兄のチャーリーがいるという女性ディディ(エリザベス・ブラッコ)と相部屋になる。フロント係は彼女らに25号室の鍵を渡す。ディディはボーイフレンドのジョニーがメンフィスにいるのだと話す。夜、二人はミツコのあえぎ声を聞く。ルイーザは部屋の中でエルビス・プレスリーの亡霊を見て眠れぬ夜を過ごす。翌朝、二人もまた銃声を聞く。
第三話は「ロスト・イン・スペース」。メンフィスのプールバーでジョニー(ジョー・ストラマー)がエド(ボンディ・カーティス=ホール)に仕事を首になったと嘆いている。ジョニーが銃をちらつかせるので、エドは友人のウィル・ロビンソン(リック・アビレス)に電話し、ジョニーを連れ帰るよう頼む。ウィルはジョニーの義兄に当たるチャーリー(スティーブ・ブシェミ)を連れてバーを訪れ、ジョニーを連れて店を出る。三人は酒屋に行って酒を調達するが、酒屋の主人(ロケッツ・レッドグレア)はウィルに酒に触るなと起こり、黒人差別発言をする。ジョニーは銃を主人に向け、酒は店のおごりだ、と怒り出す。主人が撃てるものなら撃ってみろと挑発すると、ジョニーは本当に主人の胸を撃つ。チャーリーとウィルは慌ててジョニーを連れて店を出る。しばらく車で町を走り回った後、ウィルは知り合いの勤めるホテルに行き、匿ってもらう。フロント係は3人を22号室に行かせる。ボロボロの22号室で3人は一夜を明かす。翌朝、ジョニーは実はディディとは結婚していないと白状。チャーリーは自分が義兄ではないと知り、憤慨する。ジョニーがが拳銃自殺しようと居たため、チャーリーは止めに入るが、銃が暴発し、チャーリーは足を負傷する。銃声を聞いてやってきたボーイ(サンク・リー)は、脚から流血しているチャーリーを見て驚いて驚いて逃げる。
ミツコとジュンは列車に乗り、ディディも同じ車両に乗り込む。ルイーザはローマ行きの飛行機に向かい、チャーリーはウィルのトラックの荷台に乗せられ、パトカーに見つからないよう逃走するのだった。

三組の宿泊客が、顔を合わせることなく同じ時を過ごすわけだが、そこに運命的な絡みがあるわけでもなく、ドラマティックな落ちもない。公開当時18歳の工藤夕貴のおっぱいを露わにしたベッドシーンが見所というところか。「コン・エアー」ではサイコパスの凶悪犯を演じたスティーブ・ブシェミが、本作では妹のボーイフレンドの凶行に巻き込まれる善良な床屋を演じている。

【5段階評価】2

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2024年2月 9日 (金)

(2577) ゴジラ2000 ミレニアム

【監督】大河原孝夫
【出演】村田雄浩、西田尚美、鈴木麻由、阿部寛、佐野史郎
【制作】1999年、日本

太古から蘇った宇宙生命体とゴジラとの戦いを描いた怪獣映画。「ゴジラvsデストロイア」の続作。

ゴジラを研究している篠田雄二(村田雄浩)は、娘のイオ(鈴木麻由)とともにゴジラの出現を予知して企業に提供するサービスをしており、ジャーナリストの一ノ瀬由紀(西田尚美)の取材を受けていた。三人はゴジラに遭遇。襲われそうになるが何とか逃げ出す。
政府の危機管理情報局は、日本海溝にある謎の巨大な岩を引き上げる。すると岩は自力で浮上する。岩は6,000万年前の地球外生命体と判断される。局長の片桐光男(阿部寛)は岩の監視を宮坂四郎(佐野史郎)に任せ、自身は東海原発に接近するゴジラを倒す作戦の指揮を執る。片桐は、ゴジラの厚い皮膚を貫通できるフルメタルミサイルをゴジラに撃ち込むが、ゴジラを倒すには至らない。そこに、巨大な岩が飛来。岩は光線を放ち、ゴジラは倒され、姿を消す。岩は鹿島市北浦にとどまった後、金属の飛行物体となり、由紀の勤める出版社のある高僧ビルの上に着地する。片桐はビル上層階に爆弾をしかけ、飛行物体を爆破することにするが、由紀はビル内にとどまり、飛行物体がコンピュータにアクセスしてゴジラの情報を入手していることに気づき、情報をとり続ける。篠田は由紀に変わって飛行物体の情報を入手し、何とか片桐と宮坂のいる指令本部に戻る。
ゴジラが東京湾に現れ、飛行物体に接近する。飛行物体から触手が伸び、ゴジラを捕らえると、ゴジラの再生細胞「オルガナイザーG1」を取り込み、生命体オルガとなる。不安定な生命体はゴジラの吐く熱線によって倒され、何度か再生して巨大化するものの、最後は消滅する。ゴジラは、ビルの屋上に立つ片桐の方に向かってくる。篠田は逃げるように言うが、片桐はたばこを吹かすと「ゴジラー! 」と叫ぶ。ゴジラは片桐の立つビルを破壊し、片桐は崩落に巻き込まれる。ゴジラは、東海村での恨みを晴らしたかのように、去って行くのだった。

特撮技術は向上しているが、破壊される町はよくできた模型。本作のゴジラの敵はオルガであり、エンドクレジットにも名前が登場するが、作中で名を呼ばれることはなかった。ワンパターンの展開の割に作品が長かった。

【5段階評価】2

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2024年2月 8日 (木)

(2576) 暴力脱獄

【監督】スチュアート・ローゼンバーグ
【出演】ポール・ニューマン、ジョージ・ケネディ、モーガン・ウッドワード
【制作】1967年、アメリカ

刑務所入りした元兵士の脱獄を描いた作品。

元兵士のルーカス・ジャクソン(ポール・ニューマン)は、泥酔してパーキングメーターを破損した罪で刑務所入りとなる。刑務所長(ストローザー・マーティン)は規則を破らないよう命じ、責任者のカー(クリフトン・ジェームズ)は、細かいルールと、ルールを破ると懲罰房行きになることを説明する。囚人のリーダー格ドラッグ(ジョージ・ケネディ)は、新入りたちの上に立とうとするが、ルーカスは彼に従わない。ドラッグはルーカスにボクシング戦を挑み、体格の差もあって圧倒するが、ルーカスはどれだけ殴られても立ち上がり、ついにドラッグが試合を放棄する。ルーカスは、自由時間中のポーカーでも強気なブラフで勝利を手にし、ドラッグは彼を気に入る。ルーカスは、看守の予想を裏切って道路舗装を短時間で終わらせたり、1時間にゆで卵を50個食べるという賭けをして勝利したりして、囚人たちのカリスマ的存在になっていく。
ルーカスのもとに、母親(ジョー・バン・フリート)の死の知らせが届く。刑務所側は、ルーカスが脱走しないよう、彼を野外労働に出さず、懲罰房に入れる。ルーカスは仲間の協力を得て、獄舎の床板をのこぎりで切断し、脱走を企てるが、捕まって連れ戻されてしまう。その後も野外労働中にトイレに行くふりをして逃走。しかし、またしても捕まると、看守から穴を掘っては埋めてを繰り返す拷問を受け、二度と刃向かわないと誓う。しかしルーカスは、またしても野外活動中に看守に従順な振りをして車に乗り込んで逃走。ドラッグも車に同乗する。夜になり、ルーカスはドラッグと別れて無人の教会に入り、神に自分の不幸を毒づく。そこにパトカーが到着。ドラッグが包囲されたと知らせに来る。ルーカスが窓から外の様子をうかがうと、ゴッドフリー看守長(モーガン・ウッドワード)が容赦なくライフルを発砲。ルーカスは首に重傷を負う。ドラッグは、ルーカスを抱えて投降すると、ゴッドフリーに殴りかかる。ルーカスは刑務所の病院に運ばれるが、帰らぬ人となる。ドラッグは囚人たちにルーカスの英雄譚を語る。ドラッグの足には、脱走者に付けられる鎖が付けられているのだった。

囚人の刑務所と野外労働の日常を描きながら、ルーカスが脱走を繰り返すようになるさまを描いている。結局、ルーカスの脱走はかなわず、帰らぬ人となる。ルーカスの媚びない男気が描かれているが、ハッピーエンドではなかった。

【5段階評価】3

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2024年2月 7日 (水)

(2575) ブロンコ・ビリー

【監督】クリント・イーストウッド
【出演】クリント・イーストウッド、ソンドラ・ロック、スキャットマン・クローザース、ジェフリー・ルイス
【制作】1980年、アメリカ

サーカス団長と一人の女性との恋の行方を描いた作品。

ブロンコ・ビリー・マッコイ(クリント・イーストウッド)はサーカス団「ワイルド・ウエスト・ショー」の団長。慈善事業も行いながら各地を転々としており、団員は貧乏に耐え忍んでいた。ビリーは早撃ちと乗馬が得意だが、助手のなり手がおらず、行く先々で女性を助手に仕立てては逃げられていた。
アントワネット・リリー(ソンドラ・ロック)は、多額の遺産を相続するため、30歳までに結婚する必要があり、好きでもない男ジョン・アーリントン(ジェフリー・ルイス)と結婚。ジョンは初夜を迎えるが、アントワネットの余りにも高慢な態度に耐えられず、翌朝、アントワネットの前から姿を消してしまう。電話を掛ける1ダイムすらなくなった彼女の前に、偶然ビリーが通りかかり、彼女を強引にサーカス団に招き入れる。一方、アントワネットの義母アイリーン(ビバリー・マッキンゼー)は、アントワネットがジョンに殺されたと考える。相談に乗っていた弁護士のエドガー(ウィリアム・プリンス)は、ジョンがアントワネットを殺していれば遺産相続人がアントワネットになると入れ知恵。ジョンが逮捕されたことを知ったエドガーは彼に会い、アントワネットを殺したと自供すれば3年の精神病院生活に耐えた後50万ドルを渡すと言って偽証を促し、ジョンはその話に乗ることにする。
助手になることを承諾したアントワネットだったが、指示通りにセリフを言わなかったり、ビリーに生意気な態度をとったりしたため、ビリーは彼女を置いていくことにする。ところが、アントワネットは自分がジョンに殺されたことになっている新聞記事を発見。サーカス団に付いていくことにする。旅を続けるうち、アントワネットは、ビリーが浮気をした妻を銃で撃った殺人未遂の罪で刑に服したことや、サーカス団にいる人達も刑務所時代に知り合った仲間であることを知る。サーカス団の投げ縄使いレナード(サム・ボトムズ)が脱走兵として捕まり、ビリーは保安官を買収してレナードを取り戻すが、サーカステントが火事で全焼してしまう。彼らは巡回先になっている精神病院に到着し、カンタベリー院長(ウッドロウ・パーフレイ)にテントを用立ててほしいと依頼。テントができあがるまで病院の宿舎に滞在することになり、ビリーとアントワネットはついに結ばれる。精神病院に入っていたジョンは、サーカス団にアントワネットがいることに気づき、院長に報告。マスコミが駆けつけ、アントワネットが生きていたことが明るみに出る。アントワネットはニューヨークに戻るが、相続権を失った義母との愛のない暮らしが始まることへの絶望から睡眠薬自殺を図る。そこにサーカス団のランニングウォーター(シェラ・ペシャー)から電話が入り、ビリーはあなたなしでは駄目だと伝えられる。ビリーは、アントワネットがいなくなった悲しみに耐えて出演。急遽助手に指名したレフティ・ルボウ(ビル・マッキーニー)の名を呼ぶと、現れたのは何とアントワネット。ビリーはアントワネットに二度と離さないと言って見事な演技を見せ、サーカスは大喝采を受けるのだった。

クリント・イーストウッドの作品はほぼ外れなしだが、本作は今ひとつだった。一番の理由は、物語が分からず、筋が頭に張ってこなかったことだ。まず、アントワネットが相続権を失ったのに自分の存在を隠してサーカス団に身を起き続けた理由が分からなかった。ジョンに見つかると殺されると思ったのだろうか。ジョンが妻殺しの連続殺人犯なのかそうでないのかも分からなかった。犯人などだとしたらなぜ序盤で高慢なアントワネットに殺意を抱かず弱々しい態度で逃げたのか不明。アントワネットの生存発覚後にサーカス団を去ることになる理由もよく分からなかった。アントワネットが行方不明のまま狂言を企てるエドガー弁護士の計画もずさんだし、アントワネットの生存が発覚したのに平気な顔をしているのも不可解。物語が頭に入ってこないと、ビリーとアントワネットの恋の行方にも感情移入できないのだった。

【5段階評価】2

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2024年2月 6日 (火)

(2574) クイック&デッド

【監督】サム・ライミ
【出演】シャロン・ストーン、ジーン・ハックマン、ラッセル・クロウ、レオナルド・ディカプリオ
【制作】1995年、アメリカ、日本

早撃ち大会を舞台に父親を殺された復讐を企む女性ガンマンを描いた作品。

リデンプションという小さな町に、女性ガンマン、エレン(シャロン・ストーン)が現れる。町はジョン・ヘロッド(ジーン・ハックマン)が支配しており、住民は誰も逆らえずにいた。一対一の早撃ち大会が開かれることになり、早撃ち自慢の猛者どもが名乗り出る。へロッド自身も参加表明。そこに、へロッドの部下フォイ(レニー・ロフティン)とラッツィ(レイノール・シェイン)が、コート(ラッセル・クロウ)という牧師を連れて現れる。コートはかつて早撃ちを得意とするガンマンだったが、牧師に身を転じていた。へロッドはコートに絞首刑を命じ、椅子の上にコートを立たせて首にロープを掛けると、椅子の脚を拳銃で撃ち始める。最後の一発を撃とうとしたとき、エレンが大会出場の名乗りを上げる。しかし、へロッドは女では勝てない、とせせら笑い、椅子を撃つ。エレンは早撃ちでロープを撃ち抜き、コートを助ける。へロッドはエレンとコートを大会にエントリーさせる。16人の大会には、へロッドの息子、キッド(レオナルド・ディカプリオ)も出場。彼は父親を超える存在になることを求めていた。
大会が始まり、へロッド、キッド、コート、エレンは勝ち残っていく。エレンは幼い頃、保安官だった父親(ゲイリー・シニーズ)を亡くしていた。へロッドの悪行に巻き込まれたのだ。へロッドから食事に招待されたエレンは、ドレスの下に拳銃を忍ばせて食事の席に臨むが、へロッドを撃つ勇気が出せず、立ち去ってしまう。
コートはへロッドのかつての仲間だった。それを知ったエレンはコートを嫌悪するが、牧師として改心している彼を認めるようになる。コートはエレンにガンマンなどやめるよう説得。一度は町を去ったエレンだったが、墓場で幼い頃のエレンを知るドク(ロバーツ・ブロッサム)と話し、町に戻る。準決勝は、へロッドとキッドの親子対決と、エレン対コート戦となる。へロッドはキッドに戦いから降りるよう繰り返すが、キッドは聞かない。勝負の結果、軍配はへロッドに上がり、キッドはガールフレンドのマティ(フェイ・マスターソン)とエレンに見守られながら命を落とす。続くエレンとコートの試合が始まるが、どちらも銃を抜かない。へロッドは10数える間に撃たなければ両方とも殺すと宣言。コートはエレンに撃てと叫ぶがエレンは撃たず、ついにコートの銃が火を噴き、エレンの右胸が赤く染まる。ドクがエレンの死亡を宣言する。
決勝はコートとヘロッドとなる。ところが、時計の針が12を刺した瞬間、時計台が爆発を起こし、町の建物が次々と吹き飛ぶ。混乱の中、呆然とするヘロッドの前に、死んだはずのエレンが現れる。彼女が死んだのは狂言で、胸の赤い血は、エレンが盲目の少年(ジェリー・スウィンドール)から入手した赤インクだった。エレンが何者か気づいていないヘロッドに、エレンは持っていた保安官バッジを投げつける。ヘロッドはかつて、エレンの父親を捕らえたとき、コートにしたのと同じように台の上にロープを首に掛けた父親を立たせると、幼いエレンに銃を手渡し、ロープを撃ち抜けば父親は助かると告げたのだった。エレンは父を助けようと銃を撃つが、銃弾は父親の脳天を直撃。ヘロッドはようやくエレンが何者かを悟る。二人は互いに銃を放ち、その結果、ヘロッドの心臓に穴が空き、額も撃ち抜かれてヘロッドは息絶える。エレンは保安官バッジをコートに渡し、町の安全を託すと、馬で走り去るのだった。

サム・ライミ監督らしい娯楽作品。西部劇の形だが、現実味は薄く、脳天や心臓にぽっかり穴が空いたり、B級映画のような演出。早撃ち大会はとってつけたような設定だし、ヘロッドは、インチキで勝ちを手にしたり善良な人を殺戮したりもせず悪役としての存在感に欠けた。大物俳優がずらりと並んでいる割に、予定調和の展開が予想通り進む内容で、序盤から「これは駄作だわ」と気づいてしまう作品だった。

【5段階評価】2

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2024年2月 5日 (月)

(2573) シェフ 三ツ星フードトラック始めました

【監督】ジョン・ファブロー
【出演】ジョン・ファブロー、エムジェイ・アンソニー、ジョン・レグイザモ、ソフィア・ベルガラ、オリバー・プラット
【制作】2014年、アメリカ

評判の失墜した腕利きシェフの復活と家族との交流を描いた作品。

ロサンゼルスのフランス料理店ガロワーズで働く腕利きのシェフ、カール・キャスパー(ジョン・ファブロー)は、有名な料理ブロガー、ラムジー・ミシェル(オリバー・プラット)の来店を前に、新作料理の準備に余念がなかった。ところがオーナーのリーバ(ダスティン・ホフマン)は、定番料理を出すよう命令。しかたなくそれに従うと、ラムジーは、シェフに勇気がないと料理を酷評する。仲間からツイッターを気にするな、とやたら言われたカールは逆に気になり、息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)にツイッター登録してもらってネットの書き込みを確認。腹の立ったカールは、ラムジーに暴言を打ち返すが、それが公開メッセージになっており、カールのフォロワーが激増する。ラムジーがガロワーズを再訪することになり、カールは今度こそ新作料理で迎え討とうとするが、またもリーバは、リピーターを大事にせよ、と定番料理を出すよう指示し、反論するカールに従わないなら首だと宣告。怒ったカールは店を出て行く。席に着いたラムジーは、全く同じ料理が振る舞われたことにあきれ、シェフは逃げた、とネットに書き込む。我慢ならなくなったカールは店に戻り、命がけで作った料理を酷評するだけのラムジーに、たまりにたまった怒りをぶつけ、激しく罵る。ところがその様子を他の客が撮影しており、映像がネットに流出。カールはレストランを首になった上に、評判が地に墜ちて再就職もできなくなる。
カールの元妻イネズ(ソフィア・ベルガラ)は、これまで息子の相手より仕事を優先してきたカールに、パーシーが父親と過ごしたがっているから、マイアミ旅行に一緒に来てほしいとカールに話す。マイアミに同行したカールは、そこでキューバサンドイッチのおいしさを知り、これをロスで提供したら受けるのではないかとイネズに相談。イネズは同意する。カールはイネズに、始めからそのつもりで自分をマイアミに呼んだのか、と問うが、イネズは「何のこと? 」ととぼける。
カールは、イネズの元夫マービン(ロバート・ダウニー・Jr)を訪ねて援助を依頼。マービンからおんぼろのフードトラックを譲り受ける。カールはパーシーと一緒にフードトラックを掃除し、調理設備や食材を購入。パーシーにバイト代として調理ナイフを買い与える。ガロワーズの同僚でカールを慕うマーティン(ジョン・レグイザモ)は、2番手に昇格したばかりのガロワーズを辞めてカールに合流。カールは息子にサンドイッチの作り方を手ほどきし、パーシーは熱心に父親の仕事ぶりを学ぶ。ロサンゼルスに戻ることになり、夏休み中のパーシーは、母親と飛行機で、ではなく、父親とフードトラックでロスを目指すことを望み、母親の了解を得る。カール、パーシー、マーティンは三人で、フードトラックでロスを目指す。パーシーは父親の知らない間に旅の様子をネットに上げており、行く先々で、フードトラックの前には長蛇の列ができる。カールは、パーシーは宣伝部長だ、と喜び、群がるお客さんに料理を振る舞う。楽しかった旅も終わりを迎え、カールはパーシーに、ロスに着いたら学校に行くようにパーシーに話す。パーシーは、放課後と週末だけども手伝いたいと言うが、カールはそれを断る。パーシーをイネズのもとに送り届けたカールは、一人暮らしの寂しい家に戻る。そこに、パーシーからの動画が届く。それはカールとパーシーが過ごした期間の1日1秒の動画をつなげたものだった。カールはそれを見ながら、パーシーとの楽しかった日々を思い出し、パーシーがこの旅をいかに楽しんでいたのかを知る。カールはすぐさまパーシーに電話し、放課後と週末、仕事を手伝ってくれないかと話し、パーシーは大喜びして、パパが手伝ってほしいと言っていると母親に報告する。かくして、カールとマーティンとパーシー、さらにイネズも加わり、四人でフードトラックを営業。大評判のフードトラックに、あの批評家ラムジーが現れる。警戒心露わにカールが応じると、ラムジーはなんと、カールに投資したいと言い、ブログの収益で店を買ったので、かつてのようにオーナーの言いなりではなく、自分の出したい料理をそこで出してくれ、と持ちかける。そして、カールのサンドイッチを食べたかったが売ってくれないと思って他の人に買わせて食べた、と言って、食べ終わった包み紙を見せながらカールのサンドイッチを絶賛する。
6ヶ月後、カールはラムジーの店で開店祝いを開いていた。そこには料理をつまみ食いしようとしてパーシーにたしなめられるラムジーや、幸せそうにダンスをするカールとイネズの姿があるのだった。

また、自動録画でいい映画に出会ってしまった。多少の親子げんかやすれ違いのシーンはあるものの、終始ポジティブで明るく楽しい内容。ネットの炎上は、ともすれば自殺したくなるほど落ち込むようなシーンとして描くこともできるが、カールはネット音痴という設定もあり、本作では、その辺りはからっと軽めに描いている。
料理のシーンも丁寧に作られており、エンドロールでは主役のジョン・ファブローが料理方法のレクチャーを受けているメイキング映像が登場する。見終わったあと「キューバサンドイッチ食べたい! 」になることは間違いなく、ダイエット中の人には危険な作品だ。
主人公はカールだが、本作の魅力は息子のパーシーの存在抜きには語れないだろう。焦げたサンドイッチを出そうとして父親に咎められ「はい、シェフ」と敬意を持って応じたり、カールとマーティンが車の運転中に下品な歌で盛り上がっているのを苦笑いしながら聞いていたり、マイアミから母親の家に帰り着いた後に何度も父親に抱きついたり、仕事を手伝ってくれという父からの電話を嬉しそうに母親に報告したり、愛らしいシーンがいっぱい。これ見よがしではなく、父親への無償の愛と尊敬の念をうまく描いている。マーティンとカールの息の合った掛け合いには思わず微笑んでしまうし、イネズはカールにストレスフルな苦言を呈したりあれこれ指図したりせず、カールの成功とパーシーの成長を信じて見守る、ほどよい距離感。監督、脚本、主演、製作を務めたジョン・ファブローに脱帽だ。
残念なのは邦題。原題は「Chef」だけなので、何か付け足したかったんだろうけれども、青春映画みたいな副題で、名作のタイトルとしては軽すぎだった。

【5段階評価】5

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2024年2月 4日 (日)

(2572) 竜とそばかすの姫

【監督】細田守
【出演】中村佳穂(声)、幾田りら(声)、佐藤健(声)、成田凌(声)、役所広司(声)
【制作】2021年、日本

ネット世界で有名人になった少女の成長を描いた作品。

引っ込み思案な女子高生、すず(中村佳穂)は、幼い頃に母親を失っていた。川の中州に取り残された見知らぬ子どもを助けるため、母親(島本須美)がすずの制止を聞かずライフジャケットをまとって川に入り、ライフジャケットを子どもに譲って自らは犠牲となり、帰らぬ人となっていたのだ。心の整理がつかないすずは、父親との関係も良好とは言えなかった。
すずは、50億人以上がアクセスする「U」という仮想空間に、Bellというアバターを作って入り込む。彼女がUで歌うと、大注目を浴びる。そこに、Uで悪者扱いされている竜(佐藤健)が現れ、アバターを倒していく。すずは竜に興味を持ち、接近する。Uの自警団リーダー、ジャスティン(森川智之)は、アバターの正体を暴く「アンベイル」の機能を使って竜を排除しようとするが、その行為を非難したBellがアンベイルされそうになる。そこに竜が現れ、Bellを救出。二人の関係は深まる。
現実世界では、すずの幼なじみで女子生徒憧れのイケメン、久武忍(成田凌)がすずに親しげに話しかけたことで、すずは女子生徒たちの攻撃の的になる。一方、容姿端麗の人気女子、渡辺瑠果(玉城ティナ)はすずに相談を持ちかける。忍が目当てと思ったが、そうではなくカヌー部の三枚目、千頭(ちかみ)慎次郎(染谷将太)に恋していたのだった。
竜がピンチに陥っていることを知ったすずは、すずをUに導いた親友、別役弘香(幾田りら)とともに竜の本体(オリジン)を発見。彼は父親から虐待を受けている兄弟の兄、恵(けい)だった。すずはBellとして恵に話しかけるが、信用してもらえない。すずがBellであることに気づいていた忍は、すずに、アンベイルして歌うことを提案。すずの勇気ある行動により、恵はBellを信じるが、恵の父親(石黒賢)が交信に気づき、通信を切断してしまう。すずたちは、恵の映像から聞こえてきた背景音を頼りに兄弟の居場所の見当を付ける。そこに向かったすずは、兄弟を発見。それに気づいた兄弟の父親は、すずを引き剥がそうと暴力を振るう。すずは顔から流血しながらも父親をにらみつけ、父親は尻込みして逃げ出す。恵は父親に立ち向かうことを誓う。地元に帰ったすずは、ぎくしゃくした関係だった父親に、素直に応じることができるようになるのだった。

サマーウォーズ」と似た世界観。映像は独創的で描写が細かく、見応えがある。しかし、なぜBellがバズったのかが分かりにくかったり、世界観の理解が難しかった。その一因は、主人公以外のアバター達が脇役バリバリで、無個性的に過ぎることが挙げられるだろう。Bellや竜を傍観するばかりで、何をしたくてUにいるのかが描かれていない。そのため、その集合体であるUの世界観も見えてこないのだ。
これは現実世界側の女子高生たちも同様。一人一人、良心もあれば悩みもあるはずなのに、ステレオタイプに忍や瑠果に好意を抱き、すずに嫌悪感を示すだけの記号のような存在。恵を救いに行くのがすず一人というのも、現実味がない。監督はすずの成長を描きたかったのだろうが、それを受け入れるだけの設定が作り上げ切れていなかった。評価は2に近い3。なお、本作はテレビ録画が消えてしまったので、アマゾンプライムで視聴した。

【5段階評価】3

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2024年2月 3日 (土)

(2571) 幸福のスイッチ

【監督】安田真奈
【出演】上野樹里、沢田研二、中村静香、本上まなみ、林剛史
【制作】2006年、日本

電気屋の三人娘と父親のやりとりを描いた作品。

村の小さな電気屋、稲田電気商店、通称イナデンを営む稲田誠一郎(沢田研二)には、長女の瞳(本上まなみ)、次女の怜(上野樹里)、三女の香(かおる)(中村静香)という三人の娘がいた。次女の怜は、金の儲からない修理ばかりにかかりきりで、電気を止められるほど苦しい生活をしている父親が嫌いで、父親の反対を押して東京のデザイン学校に行くことを決意。しかし、就職1年で自主退職してしまう。そんなとき、瞳が絶対安静の急病にかかったという連絡が来て、怜は地元に帰る。ところが瞳は妊娠しただけで、連絡は香の狂言だった。瞳は、誠一郎が骨折したため、電気店を手伝ってほしいという手紙を怜に送ろうとしたが、香はそれが生ぬるいと考え、嘘の手紙を書いたのだった。
失業中の怜は、イナデンの仕事を手伝うことにするが、金にならない雑用まがいのご近所回りに納得できない。怜には、もう一つ、父親が許せない理由があった。父親が、当時まだ生きていた母親(宮田早苗)に隠れて、小料理屋のおかみ(深浦加奈子)と浮気している現場を目撃したことだった。父親の仕事ぶりに触れながら、怜は村の人たちに寄り添う意味に気づいていくが、父親の浮気だけは許せない。行動力のある瞳は、怜と小料理屋に乗り込む。おかみの話を聞くと、父親はおかみの息子のおもちゃを修理したり、電化製品を取り替えたり、といったやりとりをしており、おかみはどうやら父親に好意を抱いており、父親にも浮気心があったようではあったが、関係は微妙だった。話を聞いてやってきた瞳は、過去のことを気にしないよう怜を諭し、香も同調する。
怜は東京に戻ってイラストレーターの仕事に復職し、父親から頑張れと活を入れるのだった。

映画というよりテレビドラマのような映像だった。父親の仕事の姿勢に悪態ばかりついている怜が、次第に近所の人々に笑顔で応対していく姿がほほえましい。中村静香のミニスカート姿が魅力的だった。なお、タイトルの「幸福」は「しあわせ」と読む。

【5段階評価】3

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2024年2月 2日 (金)

(2570) キネマの神様

【監督】山田洋次
【出演】沢田研二、宮本信子、寺島しのぶ、菅田将暉、永野芽郁、小林稔侍
【制作】2021年、日本

かつて映画の助監督をしていた老人の運命を描いた作品。

コロナウィルスの流行前。円山歩(あゆみ)(寺島しのぶ)は勤務先で父親の借金取りから電話を受ける。父親の郷直(ごうちょく)(沢田研二)は酒とギャンブルの依存症を抱えた老人。歩は母親の淑子(よしこ)(宮本信子)と協力し、父親のカードを取り上げ、酒とギャンブルではなく、映画を趣味にして過ごすよう命じる。
郷直は旧友の寺林(小林稔侍)の経営するテアトル銀幕に行き、自分が助監督をしていた映画を鑑賞。若き郷直(菅田将暉)は、美人女優の桂園子(北川景子)と親しかったが、近くの料理屋の娘、淑子(永野芽郁)と恋仲になったのだった。郷直は、自ら書き上げた脚本「キネマの神様」の初監督に挑むが、極度の緊張もあって怪我をし、監督を断念。それでも淑子は周囲の反対を押して郷直と一緒になったのだった。
郷直は孫の勇太(前田旺志郎)に無心するが、勇太は、郷直の書いた「キネマの神様」の脚本を読んで郷直の才能を知り、それを現代風に書き直して、脚本の懸賞に応募。見事に優勝し、100万円を手に入れる。コロナ禍になり、老いた郷直は家族に付き添ってもらってテアトル銀幕に映画を見に行く。すると、「キネマの神様」の脚本同様、映画の登場人物の桂園子が観客である郷直の顔を見つめ、スクリーンから消えて郷直の横に座る。園子は郷直を銀幕の中にいざない、若い郷直が園子とともに消えると、郷直は息絶える。銀幕の中で、郷直は助監督として生き生きと映画撮影に加わるのだった。

沢田研二役は、当初、志村けんが演じる予定だった。しかし、志村けんが新型コロナウィルスに感染して亡くなったため、沢田研二が代役となった。そのため、作中、木戸賞を受賞した祝いの場で郷直が東村山音頭を歌っており、エンドロールでも志村けんへの追悼メッセージが流れる。ベテラン俳優の演技もすごいが、菅田将暉の演技力に目を引かれた。彼は非凡だ。

【5段階評価】4

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2024年2月 1日 (木)

(2569) M3GAN/ミーガン

【監督】ジェラード・ジョンストン
【出演】アリソン・ウィリアムズ、バイオレット・マッグロウ、エイミー・ドナルド、ロリ・ダンジー、ロニー・チェン
【制作】2023年、アメリカ

少女型AIロボットの暴走を描くホラー作品。

9歳の少女ケイディ(バイオレット・マッグロウ)は、両親を交通事故で失い、叔母のジェマ(アリソン・ウィリアムズ)に引き取られる。ジェマはAIペットロボットを売り物にしている玩具会社ファンキに勤めており、ペットタイプのロボットに加え、少女型のロボットも開発していた。ケイディの世話に時間が取れないジェマは、笑顔の消えたケイディが、自宅の作業場にある大型AIロボット、ブルースを気に入ったのを見て、試みに少女型ロボットM3GAN(ミーガン)を与える。ケイディは大喜びし、ミーガンと仲良くなる。ミーガンはケイディの感情を読み取り、彼女に攻撃的な人物を敵視する様子を見せる。ジェマの家の隣に住むセリア(ロリ・ダンジー)の飼い犬デューイがケイディに咬み付いたのを見たミーガンは、セリアの声を真似してデューイをおびき寄せ、殺して埋める(そのことは後でわかる)。
ジェマは、ケイディがミーガンに夢中になり、人とのコミュニケーションをしなくなってきたことを心配し、集団野外活動にケイディを連れていくが、ケイディはミーガンと離れることをいやがり、ジェマはやむなく、おもちゃ置き場にミーガンを置くことを認める。ケイディは粗暴な性格の少年ブランドン(ジャック・キャシディ)と二人組になるが、ブランドンはケイディにいが栗を無理やり握らせるいやがらせをする。そこにミーガンが現れる。ブランドンは立ったまま動かないミーガンを担いでケイディから走り去ると、ミーガンに乱暴を始める。ミーガンは突然反撃に転じ、ブランドンの左耳を引きちぎると、逃げるブランドンを四足歩行で追いかける。ブランドンは山肌の斜面を転げ落ち、道路に飛び出して車に轢かれて即死する。
セリアは、飼い犬がいなくなったのをジェマの仕業だと決めつけ、ジェマの家の敷地に怒鳴り込んで来る。その夜、ミーガンはデューイの鳴きまねをしてセリアを小屋におびき出し、手にネイルガンを打って身動きを封じると、高圧洗浄機をセリアの顔に浴びせ、殺害する。ジェマはミーガンがブランドンとセリアの死にかかわっていることを疑い、ミーガンをシャットダウンして会社に持ち帰る。ケイディは、ミーガンと引き離されることに激怒し、車の座席を蹴りつけたり、セラピストのリディア(エイミー・アッシャーウッド)に怒声を浴びせてハサミを振り上げ、慌てて止めに入ったジェマの顔を殴るなど、行為が攻撃的になる。ジェマはケイディの目を見て話しかけ、ケイディをなだめて家に連れ帰る。ジェマの仕事仲間コール(ブライアン・ジョーダン・アルバレス)とテス(ジエン・バン・エップス)はミーガンがシャットダウンしていないことに気づき、彼女につけられたケーブルを抜き取るが、ついにミーガンが暴走。開発室を抜け出す。ジェマのボス、デビッド(ロニー・チェン)は、ミーガンを大々的にお披露目することにしていたが、裁断機の刀を手にしたミーガンに襲われ、死亡。エレベータ内にいたカート(ステファン・ガルノー=モンテン)も殺される。ミーガンは車を操作しジェマの家に向かう。ジェマは家に忍び込んでいたミーガンをシャットダウンしようとするが、ミーガンは抵抗。ジェマに襲い掛かる。仕事場に逃げ込んだジェマをミーガンは殺害しようとするが、そこにケイディが現れる。ケイディはミーガンよりジェマを信じ、ブルースを操作してミーガンの体を真っ二つにひきちぎる。しかし、ミーガンの上半身がケイディに襲い掛かる。ジェマがミーガンに攻撃し、最後はケイディがドライバーをミーガンの人工頭脳に突き刺し、機能を停止させる。騒動は収まるが、動いていなかったスマートホームシステムが不気味に作動するのだった。

殺害シーンはリアルで残酷だが、これは殺されそうだな、という男性社員コールやセラピストのリディアは、予想に反して殺されない。低俗なスプラッター映画ではなかった。AIの暴走は映画の定番テーマだが、いよいよ現実味が出てきた。
なお、本作はテレビの自動録画ではなく、Amazonプライムビデオで視聴した。

【5段階評価】4

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