【監督】ジョン・ファブロー
【出演】ジョン・ファブロー、エムジェイ・アンソニー、ジョン・レグイザモ、ソフィア・ベルガラ、オリバー・プラット
【制作】2014年、アメリカ
評判の失墜した腕利きシェフの復活と家族との交流を描いた作品。
ロサンゼルスのフランス料理店ガロワーズで働く腕利きのシェフ、カール・キャスパー(ジョン・ファブロー)は、有名な料理ブロガー、ラムジー・ミシェル(オリバー・プラット)の来店を前に、新作料理の準備に余念がなかった。ところがオーナーのリーバ(ダスティン・ホフマン)は、定番料理を出すよう命令。しかたなくそれに従うと、ラムジーは、シェフに勇気がないと料理を酷評する。仲間からツイッターを気にするな、とやたら言われたカールは逆に気になり、息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)にツイッター登録してもらってネットの書き込みを確認。腹の立ったカールは、ラムジーに暴言を打ち返すが、それが公開メッセージになっており、カールのフォロワーが激増する。ラムジーがガロワーズを再訪することになり、カールは今度こそ新作料理で迎え討とうとするが、またもリーバは、リピーターを大事にせよ、と定番料理を出すよう指示し、反論するカールに従わないなら首だと宣告。怒ったカールは店を出て行く。席に着いたラムジーは、全く同じ料理が振る舞われたことにあきれ、シェフは逃げた、とネットに書き込む。我慢ならなくなったカールは店に戻り、命がけで作った料理を酷評するだけのラムジーに、たまりにたまった怒りをぶつけ、激しく罵る。ところがその様子を他の客が撮影しており、映像がネットに流出。カールはレストランを首になった上に、評判が地に墜ちて再就職もできなくなる。
カールの元妻イネズ(ソフィア・ベルガラ)は、これまで息子の相手より仕事を優先してきたカールに、パーシーが父親と過ごしたがっているから、マイアミ旅行に一緒に来てほしいとカールに話す。マイアミに同行したカールは、そこでキューバサンドイッチのおいしさを知り、これをロスで提供したら受けるのではないかとイネズに相談。イネズは同意する。カールはイネズに、始めからそのつもりで自分をマイアミに呼んだのか、と問うが、イネズは「何のこと? 」ととぼける。
カールは、イネズの元夫マービン(ロバート・ダウニー・Jr)を訪ねて援助を依頼。マービンからおんぼろのフードトラックを譲り受ける。カールはパーシーと一緒にフードトラックを掃除し、調理設備や食材を購入。パーシーにバイト代として調理ナイフを買い与える。ガロワーズの同僚でカールを慕うマーティン(ジョン・レグイザモ)は、2番手に昇格したばかりのガロワーズを辞めてカールに合流。カールは息子にサンドイッチの作り方を手ほどきし、パーシーは熱心に父親の仕事ぶりを学ぶ。ロサンゼルスに戻ることになり、夏休み中のパーシーは、母親と飛行機で、ではなく、父親とフードトラックでロスを目指すことを望み、母親の了解を得る。カール、パーシー、マーティンは三人で、フードトラックでロスを目指す。パーシーは父親の知らない間に旅の様子をネットに上げており、行く先々で、フードトラックの前には長蛇の列ができる。カールは、パーシーは宣伝部長だ、と喜び、群がるお客さんに料理を振る舞う。楽しかった旅も終わりを迎え、カールはパーシーに、ロスに着いたら学校に行くようにパーシーに話す。パーシーは、放課後と週末だけども手伝いたいと言うが、カールはそれを断る。パーシーをイネズのもとに送り届けたカールは、一人暮らしの寂しい家に戻る。そこに、パーシーからの動画が届く。それはカールとパーシーが過ごした期間の1日1秒の動画をつなげたものだった。カールはそれを見ながら、パーシーとの楽しかった日々を思い出し、パーシーがこの旅をいかに楽しんでいたのかを知る。カールはすぐさまパーシーに電話し、放課後と週末、仕事を手伝ってくれないかと話し、パーシーは大喜びして、パパが手伝ってほしいと言っていると母親に報告する。かくして、カールとマーティンとパーシー、さらにイネズも加わり、四人でフードトラックを営業。大評判のフードトラックに、あの批評家ラムジーが現れる。警戒心露わにカールが応じると、ラムジーはなんと、カールに投資したいと言い、ブログの収益で店を買ったので、かつてのようにオーナーの言いなりではなく、自分の出したい料理をそこで出してくれ、と持ちかける。そして、カールのサンドイッチを食べたかったが売ってくれないと思って他の人に買わせて食べた、と言って、食べ終わった包み紙を見せながらカールのサンドイッチを絶賛する。
6ヶ月後、カールはラムジーの店で開店祝いを開いていた。そこには料理をつまみ食いしようとしてパーシーにたしなめられるラムジーや、幸せそうにダンスをするカールとイネズの姿があるのだった。
また、自動録画でいい映画に出会ってしまった。多少の親子げんかやすれ違いのシーンはあるものの、終始ポジティブで明るく楽しい内容。ネットの炎上は、ともすれば自殺したくなるほど落ち込むようなシーンとして描くこともできるが、カールはネット音痴という設定もあり、本作では、その辺りはからっと軽めに描いている。
料理のシーンも丁寧に作られており、エンドロールでは主役のジョン・ファブローが料理方法のレクチャーを受けているメイキング映像が登場する。見終わったあと「キューバサンドイッチ食べたい! 」になることは間違いなく、ダイエット中の人には危険な作品だ。
主人公はカールだが、本作の魅力は息子のパーシーの存在抜きには語れないだろう。焦げたサンドイッチを出そうとして父親に咎められ「はい、シェフ」と敬意を持って応じたり、カールとマーティンが車の運転中に下品な歌で盛り上がっているのを苦笑いしながら聞いていたり、マイアミから母親の家に帰り着いた後に何度も父親に抱きついたり、仕事を手伝ってくれという父からの電話を嬉しそうに母親に報告したり、愛らしいシーンがいっぱい。これ見よがしではなく、父親への無償の愛と尊敬の念をうまく描いている。マーティンとカールの息の合った掛け合いには思わず微笑んでしまうし、イネズはカールにストレスフルな苦言を呈したりあれこれ指図したりせず、カールの成功とパーシーの成長を信じて見守る、ほどよい距離感。監督、脚本、主演、製作を務めたジョン・ファブローに脱帽だ。
残念なのは邦題。原題は「Chef」だけなので、何か付け足したかったんだろうけれども、青春映画みたいな副題で、名作のタイトルとしては軽すぎだった。
【5段階評価】5
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