(2541) 騙し絵の牙
【監督】吉田大八
【出演】大泉洋、松岡茉優、佐藤浩市、木村佳乃、池田エライザ、宮沢氷魚、國村隼
【制作】2021年、日本
出版業界で新風を起こそうとする編集長の戦いを描いた作品。
老舗出版社の薫風社の小説雑誌「小説薫風」の若手編集者、高野恵(松岡茉優)は、「バイバイを言うとちょっと死ぬ」という持ち込み原稿を目にし、惚れ込むが、編集長の江波百合子(木村佳乃)は取り合わない。薫風社の社長が亡くなり、新社長に東松龍司(佐藤浩市)が就く。彼は小説薫風を月刊誌から季刊誌に変え、恵は担当を外される。自宅の本屋で働いていた恵の前に、雑誌トリニティの編集長、速水輝(大泉洋)が現れ、彼女をトリニティの担当に引き抜く。速水は奇抜な企画を次々に打ち上げ、恵が目を付けた八代聖(宮沢氷魚)の「バイバイを言うとちょっと死ぬ」の連載も決める。さらに速水は、ファッションモデルの城島咲(池田エライザ)が銃器マニアで同人誌に小説を書いたことがあることに気づき、彼女の作品の掲載も決める。ところが、咲がストーカーに襲われ、咲は3Dプリンターで自作し所持していた銃で反撃。咲は逮捕されてしまう。また、八代は速水が自分を芸能人のように扱うことに不満を感じ、小説薫風の再起を狙う宮藤和生常務(佐野史郎)側に寝返る。ところが、宮藤の開いた記者会見で、八代は自分は作者ではなく、作品は行方不明になった友人の書いたものだと暴露。作者は、22年前に大ヒットした小説の作者、神座(かむくら)詠一(リリー・フランキー)だった。全ては、「バイバイを言うとちょっと死ぬ」が神座詠一の作品だと見抜いた速水の仕組んだ狂言だった。得意満面の速水だったが、恵は騙されたことに憤る。
速水は前社長の息子、惟高(これたか)と組んで、雑誌のアマゾン独占販売の契約を進めることにする。恵は薫風社を退社すると、世界のどこでも同じ物が手に入るアマゾンとは逆に、小さな本屋でしか手に入らない書籍を売るという計画を実行に移す。その作品を見て速水は驚愕する。それは、神座詠一の作品だった。神座は恵の編集者としての腕を買い、トリニティへの連載ではなく、恵の提案に乗ることにしたのだった。出し抜かれた速水は悔しがるが、すぐさま服役中の咲のもとに出向き、小説を書かないかと薦めるのだった。
先の展開に目が離せない優れた作品だった。大物作家に漫画の原作を書かせるなど、具体的なアイディアが盛り込まれているのも興味深い。恵の逆転劇も痛快だった。松岡茉優以外にも、斎藤工や中村倫也といった若手有名俳優が出演していた。
【5段階評価】4
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