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2024年1月12日 (金)

(2551) 8月の家族たち

【監督】ジョン・ウェルズ
【出演】メリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ、ジュリアンヌ・ニコルソン、ジュリエット・ルイス、ユアン・マクレガー
【制作】2013年、アメリカ

父親の失踪を機に母親の元に集まった三姉妹と家族の騒動を描いた作品。

酒を愛する老詩人ベバリー・ウェストン(サム・シェパード)は、妻のバイオレット(メリル・ストリープ)とオクラホマの邸宅で二人暮らしをしていた。ベバリーはネイティブアメリカン嫌いのバイオレットに無断で、ネイティブアメリカンの家政婦ジョナ(ミスティ・アッパム)を雇い、直後に失踪。バイオレットの近くに住む次女のアイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)が駆けつけ、バイオレットの妹マティ・フェイ(マーゴ・マーティンデイル)も夫のチャールズ(クリス・クーパー)と家に来る。長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)も、夫のビル(ユアン・マクレガー)と娘のジーン(アビゲイル・ブレスリン)とともに車でやってくる。バーバラは口腔癌を患っており、大量の薬を摂取しているせいか、バーバラに攻撃的な発言をする。バイオレットは、両親を見捨てて離れて暮らしているバーバラが気に入らないのだった。
捜索の結果、ベバリーの遺体が見つかる。葬儀が行われることになり、バーバラの家族、アイビー、マティ・フェイ夫婦のほか、三女のカレン(ジュリエット・ルイス)が派手なスポーツカーで婚約者のスティーブ・ハイデブレクト(ダーモット・マローニー)とともにやってくる。マティ・フェイの息子リトル・チャールズ(ベネディクト・カンバーバッチ)は寝坊のため遅れて到着。葬儀には間に合わず、葬儀後の食事会に現れる。次女のアイビーはリトル・チャールズと交際しており、彼の到着を喜ぶ。二人は従弟の関係にあるため、交際は家族に内緒にしていた。
食事会が始まり、男性陣は当たり障りのない会話で場を和ませようとするが、そのたびにバイオレットは出席者に攻撃的な言葉を浴びせる。周囲が指摘しても、真実を言っているだけだと悪びれない。バイオレットは、すでにベバリーと相談して財産を全て自分が相続することで合意したと、死人に口なしとばかりに説明し、一方的に三姉妹の同意を取り付ける。その後もビルが若い女性と浮気をしていてバーバラと別居状態であることを話題にするなど、出席者への失礼な物言いをやめないバイオレットに、バーバラはたまりかね、バイオレットの持っている錠剤を力尽くで奪い取る。彼女には大量の薬が処方されており、バーバラは担当医のバーク(ニューウェル・アレクサンダー)のもとに出向き、錠剤入れを投げつけて猛抗議する。
家に戻り、三姉妹は今後について話し合う。次女のアイビーは、母親の面倒を見るのをやめ、リトル・チャールズとニューヨークに引っ越すと言う。バーバラはアイビーを咎めるが、アイビーは、すでに親の面倒を見ることを放棄しているバーバラに責める資格はないと言い返し、バーバラは黙るしかなくなる。カレンもスティーブとフロリダに渡ることを決めていた。
翌朝、アイビーとリトル・チャールズが仲睦まじくしていると、マティ・フェイが現れ、失職中のリトル・チャールズを責め立てる。常日頃からマティ・フェイが息子に厳しく当たっていることに耐えかねた夫のチャールズは、妻に向かって、38年間ともに暮らしてきたが、息子にこれ以上辛く当たるなら39年目はないと吐き捨てる。その様子を見てしまったバーバラに、マティ・フェイはリトル・チャールズとアイビーが付き合っているのか問いただす。バーバラは、いとこ同士とは言え愛し合う二人の関係を認めるようマティ・フェイを説得するが、マティ・フェイは、二人の関係はいとこではない、姉弟だと告げる。リトル・チャールズはマティ・フェイとベバリーの間にできた子どもだったのだ。そのことをマティ・フェイは誰にも明かしておらず、バーバラにアイビーを止めてほしいと頼む。
その夜、庭で話し声が聞こえたジョナが庭を覗くと、30歳過ぎのスティーブが14歳のジーンにマリファナを吸わせていた。スティーブがジーンに胸を見せてとせがんでいるのを見て、ジョナは庭に飛び出し、スコップでスティーブを殴りつける。騒ぎに気づいた家族が庭に出てくる。ジョナから、スティーブがジーンに手出ししたと聞いたバーバラはスティーブに飛びかかろうとするが、カレンが制止し、スティーブと家の中に入る。バーバラとビルはジーンに説明を求めるが、ジーンはマリファナを吸っただけで何も起きていないと説明。まだ14歳なのにと責めるビルに向かって、ジーンはパパの浮気相手より少し年齢が低いだけだと言い返す。バーバラが反射的にジーンの頬を平手打ちすると、ジーンは大っ嫌いと叫んで家に駆け込む。ビルはバーバラを責め、ジーンの後を追う。バーバラはカレンに文句を言いに行くが、カレンもまた、ジーンに問題がなかったとは思えないと言い、スティーブとともに家を出て行く。翌朝、ビルとジーンも車で去って行く。
アイビーが、母親にニューヨーク行きを話そうとしているのを見て、バーバラは何とか阻止しようとするが、アイビーの意志は固い。アイビーが「私とリトル・チャールズは・・・」と言いかけると、バイオレットは「姉弟なんだろう、知っていたよ」と答える。そうとは知らなかったアイビーはショックを受け、バーバラとバイオレットをののしって家から去る。バイオレットは、ベバリーは私が知っていたことを知っていたと話し、ベバリーが死ぬ前にモーテルにいたことを明かす。バイオレットはベバリーが死ぬつもりであることを知りながら、彼との共有財産である貸金庫の中身の入手を優先していたのだった。バーバラは、バイオレットがベバリーの自殺制止より貸金庫を優先したことを責めるが、バイオレットは、バーバラが家を出て行かなければベバリーは自殺しなかった、自殺を自分だけのせいにするなと言い返す。バーバラもまた、追いすがる母親を尻目に、バイオレットの家を去る。バイオレットは力なくベバリーを呼ぶが答えはない。彼女は次いでジョナを探し始める。声に気づいたジョナが目の前に現れると、バイオレットは力なくジョナに身を任せる。ジョナはとまどいながらもバイオレットの頭をなでる。バーバラは一人、車でオクラホマを後にするのだった。

本作をブラック・コメディと評している記事を見かけるが、本作にコメディ要素はない。家族の絆が次々と崩壊し、救いのない関係になっていく様子が描かれている。作品中では描かれていないが、アイビーとリトル・チャールズ(チャールズの実の息子ではないのにリトル・チャールズという名であることが皮肉になっている)の関係が続くとは思えないし、14歳の少女に手を出そうとしたスティーブとカレンの関係も崩壊は目に見えている。父親の浮気を責めたジーンが、帰りの車で父親のビルと意気投合したとも考えられない。バイオレットの心のよりどころとなるのは、もはや、彼女が冒頭でさげすんだ、血の繋がらないネイティブアメリカンのジョナのみというのが、本作の強烈なメッセージとなっていた。
メリル・ストリープとジュリア・ロバーツという大女優を配した本作は、やはり演技が素晴らしい。脇役も有名な俳優ばかりで見応えがあった。

【5段階評価】4

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