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2024年1月19日 (金)

(2558) 薄化粧

【監督】五社英雄
【出演】緒形拳、藤真利子、浅野温子、川谷拓三、浅利香津代、竹中直人、松本伊代
【制作】1985年、日本

実在の犯罪者の逃避行を描いた作品。

民家をダイナマイトで爆破し、逃走する坂根藤吉(緒形拳)。目撃者がいたため逮捕され、刑事の真壁一郎(川谷拓三)と松井捨蔵(大村崑)に厳しい取り調べを受ける。爆破では徳市とすゑが犠牲になったと言う。坂根は剃刀で首を切って自殺しようとするが未遂に終わる。真壁らは坂根と付き合いのあったテル子(浅野温子)に事情を聴く。坂根の妻と子供は里帰りしたということだったが、坂根の家の床下から妻の遺体が見つかる。坂根の子供の遺体も、こうち谷で発見されていた。絞殺され、腐乱が進んでおり、身元不明の状態だった。
収監されていた坂根は独房の床下を20メートルも掘り進んで脱獄。小さな仏壇を買い、中に二つの石を供えて逃避行を続ける。坂根は古葉平四郎という偽名で阿部組の工事現場で働き始め、工員の氏家(竹中直人)と親しくなる。坂根はちえ(藤真利子)の営む飲み屋で氏家の身の上話を聞きながら、いなくなった母親にしきりに会いたがる息子の喬(たかし)をこうち谷に連れて行ったことを思い出す。
坂根は、氏家に暴力をふるう上司の森谷(小林稔侍)に食ってかかり、阿部組から去る。道中、彼は以前の職場の落盤事故のことを思い出していた。彼は労働者代表として経営側に補償金を支払うよう交渉するが、上瀧(笑福亭松鶴)や立石(萩原流行)から裏金を渡され、労働者を言いくるめるよう言われる。坂根は寡婦となったテル子に金を渡す。胸元に札束をしまうテル子を見て、坂根はテル子の胸をまさぐりながら物陰へ消える。二人は懇意になるが、それに気づいた坂根の妻ふくえ(浅利香津代)はテル子につかみかかり、乞食呼ばわりする。テル子は坂根の妻になってやるとふくえに宣言。家を出てテル子と情事にふける坂根を見たふくえは、坂根に怒りをぶつけ、坂根が大事にしているラジオを斧で叩き割ろうとする。坂根はその斧を取り上げて、ふくえの脳天に打ちおろし、ふくえを殺害したのだった。
真壁はちえの店で平さんが店に来たら内緒で教えてほしいとちえに連絡先を渡す。銭湯の指名手配の張り紙を見て、ちえは平さんが犯罪者だと知るが、ちえは平さんに言い寄り、長野の赤石という親戚の家に移ることを伝える。ついに二人は結ばれ、ちえは恍惚の表情を浮かべる。情事を終えたちえは、戯れに平さんの眉に墨を塗る。坂根は自分の人相が変わったことに驚く。
坂根は信州に身を移して働き始めるが、そこにも坂根の人相書きが貼られていた。同僚の明賀英之(柳沢慎吾)は平四郎が人相書きに似ていることに気づき、坂根は三沢に移ることにする。バスの中で、坂根は仙波弘子(松本伊代)のことを思い出す。落盤事故で負傷した仙波徳市の世話をしていた坂根は、徳市の娘、18歳の弘子から色仕掛けをされる。坂根は徳市の妻すゑ(宮下順子)を手籠めにしつつ、弘子と結婚したいとすゑに頼み込むが、すゑは相手にしない。坂根は弘子に直接意志を問うが、弘子は手のひらを返し、庶務課長の息子と結婚する、何かあったらいられなくしてやる、自分のほうが上だ、ときっぱり言い放つ。坂根は自分が手玉に取られていたことに気づき、苦笑する。坂根はテル子に性交渉するが、テル子は病気のため性行為を医者に止められており、坂根に対する愛情も冷めていた。坂根は弘子の結婚式が行われた仙波の家をダイナマイトで爆破したのだった。
信州の飯場で聞き込みをした真壁は、平八郎という男が妻をちえと呼び、首に傷があって眉に墨を入れていたという情報を得る。仕事場で氏家の訪問を受けた坂根は、自分に捜査の手が及びつつあることを知り、携行していた仏壇を燃やし、職場を離れる。
真壁は長野で妾になっているちえのもとを訪ねる。ちえはしらを切るが、坂根はちえの近くの旅館にいた。ちえに別れを告げにきたのだ。ちえは坂根を愛していた。二人は体を重ねる。それでも坂根はちえに別れを告げ、駅に向かう。ちえは我慢できず、旅支度を整えて駅に向かい、そこにいた坂根に一緒に行きたいと叫ぶ。坂根が返事をしようとした刹那、坂根にライトが当たる。ちえは真壁らに尾行されており、坂根は包囲されていた。二人は茫然と立ちすくむしかなかった。これが昭和24年に起きた実話であることを伝え、映画は終わるのだった。

現在と過去が入り交じる形で話が進むので、注意して観ていないと訳が分からなくなるが、首の傷を覆っているか、仏壇があれば現在、首に傷がなければ過去ということがわかるようになっている。一人の殺人犯の運命を克明に描き、見応えがある。映像は写実的で、他の五社作品に見られるような抽象的な心理描写などはない。また、こちらは五社英雄監督作品らしく、女同士のつかみ合いの喧嘩シーンや、濡れ場では浅野温子や藤真利子、宮下順子のヌードシーンがある。

【5段階評価】4

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