(2559) 殺人の疑惑
【監督】クク・ドンソク
【出演】ソン・イェジン、キム・ガプス、イム・ヒョンジュン、カン・シニル
【制作】2013年、韓国
父親が誘拐殺人犯ではないかと疑う女子大生の運命を描いた作品。
記者になることを志望している26歳の大学生チョン・ダウン(ソン・イェジン)は父親のスンマンから溺愛されていた。ダウンは、就活対策として、時効が迫っているハン・チェジン君誘拐事件を取り上げた映画を観る。映画の終わりに犯人の肉声が流れ、ダウンはふと、その声や言葉遣いが父親に似ていることに気づく。気になったダウンは父親のパソコンを調べたり、釣りに行くと言って家を出る父親を尾行したりするが、パソコンにはわいせつ動画程度しかなく、釣りに行くと言っていた父親は金を稼ぐため、若くて高慢な女性に頭を下げながらアルバイトをしているのだった。
ある日、ダウンにシム・ジュニョン(イム・ヒョンジュン)という男が話しかけ、父親宛てのメモを手渡される。男はスンマンに金を要求していた。スンマンが金の用意を渋っていると、ジュニョンはスンマンの家に怒鳴り込み、娘にばらすぞとすごむ。スンマンはジュニョンを殴り倒し、今度家に来たら殺すとすごむ。
ダウンは刑事志望の同級生ジェギョン(イ・ギュハン)に父母の過去の調査を依頼。ジェギョンは先輩のソン刑事(ハ・ギョンミン)に協力してもらい、調べた結果をダウンに伝える。それによると、父親には前科三犯であり、母親は生きているのだった。母親の住所をジェギョンと訪ねると、そこにジュニョンが現れる。母親のシム・ミオフはすい臓がんのため寝たきりの状態で、ジュニョンはその弟、つまりダウンの叔父だった。そこにジュニョンから連絡を受けたスンマンが現れる。ダウンが、なぜ母親は死んだと嘘をついたのかとスンマンに詰め寄る。スンマンは母親が子供を見捨てたのだと説明する。家に帰ったダウンは、スンマンに、スンマンが誘拐殺人犯ではないか疑っていることを正直に伝える。スンマンは真顔で、そんなことあるわけないじゃないかと答える。
時効が迫り、警察はスンマンを調べ始める。テレビを見ていたダウンは、少年の父親ハン・サンス(カン・シニル)が自分の生まれた産婦人科の医者であることを知り、コリョ日報の記者だと偽ってハン・サンスに話を聞く。ダウンは自分がハンの病院で生まれたと言って父親の写真を見せると、ハンの子は流産したはずだと答える。ハンは脅迫状の筆跡をダウンに手渡す。帰り道にそれを見たダウンはショックを受ける。それは、ダウンが幼い頃、書き取りテストだと言ってスンマンがダウンに書かせた文章そのものだったのだ。
警察がスンマンの家に現れ、スンマンに事情を聴こうとする。何のことかわからないスンマンだったが、そこに、スンマンに捜査の手が及んでいることを聞きつけたハンが駆け込んで来る。ハンはスンマンの声を聴いたとたん、スンマンを犯人と確信して掴みかかる。スンマンは後ろに倒れて後頭部を強打し、意識を失う。警察は、ダウンが早くから父親を疑っていたことを突き止め、ダウンが父親をかばっていたのではないかと厳しく追及するが、ダウンは脅迫状のメモが自分の書いたものであることを隠し通す。病室で意識を失ったままの父親を見て、ダウンは時効まで目覚めないでほしいと祈る。しかしスンマンの意識は時効直前に戻り、警察は声紋検査を開始。スンマンはそれに協力する。結果はシロ。ハンは膝から崩れ落ち、スンマンは解放される。ダウンはスンマンを乗せて車を走らせる。向かった先は、ハン・チェジン君がカバンに入れられて川に投げ込まれた現場だった。ダウンは車を降り、改めて父親に真実を告げてほしいと詰め寄る。車の時計が時効を示す12:00を過ぎると、無表情だったスンマンの口が歪み、笑い出す。スンマンは興奮気味に、これまで我慢していたが、これからは楽しく暮らせるとダウンにまくしたてる。スンマンが犯人だったことを知ったダウンは父親を車から引きずり出し、一緒に死のうと叫ぶ。スンマンはダウンをなだめると車に乗り、帰ろうとする。すると、そこにハンの乗った乗用車が突っ込む。ダウンは突き飛ばされ、スンマンとハンは運転席で意識を失う。そのまま車は爆発炎上。スンマンを乗せた車は横転して川に沈み、ハンも死亡する。
ダウンの母親ミオフは、死期が迫り、最後の告白をする。彼女が告白した罪とは、夫が他人の子を誘拐して一緒に暮らしているということを見過ごしたことだった。それを知ったジュニョンがスンマンから金を脅し取り、スンマンはやむなく罪を重ねていたのだった。入院中のダウンの名札は、本来の名前「ユン・ミソン」に差し替えられる。病室に実の母親と思しき女性が入ってくる。昏睡状態だったミソンはゆっくりと目を覚ますのだった。
実際の事件「イ・ヒョンホ君誘拐殺人事件」に着想を得た作品。途中までは、どういう結末が待っているのか目が離せなくなるのだが、本当に父親が犯人でした、という種明かしはがっかりだった。であれば、犯人ではないというスンマンの真顔は何のなせるわざなのかわからないし(単に嘘が上手だったというだけでは納得がいかない)、また、なぜスンマンは全く疑われる心配なく声紋検査に応じ、しかも声紋鑑定をすり抜けたのか、の説明もない。スンマン役のキム・ガプスの怪演が光るとの呼び声高いが、そこは納得がいかなかった。一方、公開当時31歳のソン・イェジンの可愛さは見事だった。
【5段階評価】4
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