(2485) ザ・ファン
【監督】トニー・スコット
【出演】ロバート・デニーロ、ウェズリー・スナイプス、エレン・バーキン、ジョン・レグイザモ
【制作】1996年、アメリカ
狂った野球ファンの恐怖を描いたスリラー作品。
熱狂的なジャイアンツファンのギル・レナード(ロバート・デニーロ)は、ナイフを販売する営業マンだったが、顧客相手に暴言を吐いたり、遅刻をしたりで業績は振るわない。4,000万ドルでジャイアンツに移籍した大選手ボビー・レイバーン(ウェズリー・スナイプス)に心酔するギルは、女性DJジュエル(エレン・バーキン)のラジオ番組を通じてボビーと話す機会を得、ボビーを熱烈に応援する。
ボビーは開幕戦に息子リッチー(アンドリュー・J・ファークランド)を連れていく。別れた妻のエレン(パティ・ダーバンビル)は、ボビーがリッチーと会うことを歓迎しておらず、帰りが遅れたら警察を呼ぶとボビーにくぎを刺す。
センターを守るボビーは初回の守備で味方のライトと交錯し、体を痛め、お守りにしているメダルを失う。動揺するボビーだったが、満塁ホームランを放つ。ギルは試合中にリッチーを球場に残し、一度自分の遅刻で流れた商談に向かうが、相手はおらず、急いで球場に戻るとリッチーの姿はなかった。怖くて家に帰ったのだった。エレンは激怒し、ギルは子供との面会を禁止する命令が出される。それにもかかわらず、ギルはリッチーのリトルリーグの練習に現れ、打席のリッチーに球を投げるコーチを罵倒し、リッチーに接近。エレンは半狂乱になってギルを追い返す。
開幕試合で満塁ホームランを放ったボビーだったが、その後は絶不調。ある夜、ボビーはバーのトイレで、背番号11をつけている若手プリモ(ベニチオ・デル・トロ)に背番号を譲るよう交渉するが取り合ってもらえない。ボビーは興奮してプリモに殴りかかる。ギルはその様子をトイレの個室から盗み見ていた。ジュエルのラジオ番組で再びボビーと話す機会を得たギルは、ボビーの考えを支持。ジュエルは冗談交じりに「ギルを交渉役に雇ったら」と話し、ボビーも賛同する。真に受けたギルは、サウナにいたプリモにスーツ姿で話しかけ、背番号をボビーに譲るよう頼むが、プリモは当然ながら拒否。ギルはプリモをナイフで刺し殺してしまう。
プリモが亡くなってからボビーは調子を取り戻す。記者に好調の理由を聞かれ、わからないと答えるボビーをテレビで見て、ギルは俺に感謝しろとつぶやく。ボビーの生活の盗み見を続けるギルは、ボビーの息子ショーンが海で溺れているのに気づき、急いで救助。感謝の言葉を投げかけるボビーに、ギルはカーリーと名乗る。ボビーはギルに感謝し、家に招く。ギルは野球ファンではないそぶりをしつつ、ボビーにボールを投げてみたいと申し込む。ボビーが、ファンとは気まぐれで薄情な連中だとあしざまに言ったり、復調の理由は野球に打ち込み過ぎずものごとを気にしないことだと言ったりするのを聞いて、ギルは次第に興奮し始め、ボビーの頭めがけてボールを投げる。ギルと別れて家に戻ったボビーは、ショーンがいないことに気づく。ギルが車で連れ出していたのだ。電話をしてきたボビーに、ギルは冷凍庫の中を見てみろと言う。そこには、プリモの肩からはぎ取った、11番の焼き印の残る皮膚が入っていた。
ギルは旧友のクープ(チャールズ・ハラハン)を訪ねる。ギルはボビーの息子を連れてきたことを明かし、クープの前でボビーに電話をし、次の試合で自分のためにホームランを打てと脅す。ボビーの狂気を目の当たりにしたクープは隙をついてショーンを逃がすが、ショーンはクープを襲い、ショーンを追って再び捕まえる。
試合が始まり、ギルは球場にいるジュエルに電話。事態を知るジュエルは、ギルの居場所を突き止めようと電話を引き延ばすがギルは電話を切る。ボビーは激しい不安にさいなまれながら打席に立ち続ける。大雨の中、最後の打席でボビーは大きな当たりを放つ。打球はフェンスは超えないが、ボビーは必死で走り、ホームベースにスライディング。セーフに見えたが、主審はアウトの判定。ボビーは主審に詰め寄るが、マスク越しの顔を見て、それがギルであることに気づく。ショーンの無事を心配するボビーに、ギルは、今ならファンを気に掛けるか、と詰め寄ると、ナイフを手に持ち投球動作に入る。取り囲む警官の拳銃が火を噴き、ギルは死亡する。ショーンはリトルリーグの球場で無事に見つかり、ボビーは息子を抱きしめるのだった。
ギルの狂気が増幅するさまが克明に描写される。はじめは顧客に暴言を吐いたり、野球観戦を優先して面会に遅刻したり、という程度だが、サウナにスーツのまま入り込み、汗を拭きながら立ち去るシーンとプリモにナイフを突き立てるシーンが交錯するあたりから、暴走が止まらなくなっていく。ラッキーナンバーやお守りに固執するボビーにも、狂気の片鱗が見え隠れし、終盤で敬遠されそうになるときに興奮するあたりから、ギルの狂気が顕在化するのでは、という不安に駆られるところも巧みだった。
一方で、ファンと選手の距離が近すぎたり、さすがにアンパイアにすり替わって気づかれないというのはご都合主義だった。
【5段階評価】4
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