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2021年7月18日 (日)

(2344) 新聞記者

【監督】藤井道人
【出演】シム・ウンギョン、松坂桃李、田中哲司、高橋和也、本田翼、北村有起哉
【制作】2019年、日本

新聞記者、望月衣塑子の自伝「新聞記者」を題材にした作品。官僚の自殺の真相を追う、内閣府情報調査室の若手職員と新聞記者の奮闘を描いている。

東都新聞の記者、吉岡エリカ(シム・ウンギョン)は、ジャーナリストだった父を失った過去を持っていた。彼女の父は、政府の汚職を暴く記事を出したものの誤報とされ、自殺を図ったことになっていたが、真相は闇の中だった。ある日、東都新聞に、羊のイラストが添えられたファックスが届く。それは、新設大学院大学に関する情報だった。エリカはチーフの陣野(北村有起哉)の指示で、ファックスの発信者を追う。
外務省から内閣府情報調査室に出向している若手官僚、杉原拓海(松坂桃李)は、上司の多田智也(田中哲司)から、政府に都合の悪い情報をもみ消すような記事の拡散を指示される日々を送っており、自らの仕事に疑問を感じていた。家には身重の妻、奈津美(本田翼)がおり、彼女は仕事に打ち込む拓海を気遣っていた。
拓海は、外務省勤務時代の上司、神崎俊尚(高橋和也)から飲みの誘いを受ける。彼には、上司の指示で行った不祥事の責任を取った過去があった。その神崎が、突如、妻(西田尚美)と娘(宮野陽名)を残して自殺する。杉原は、神崎の自殺に、内閣情報調査室がからんでいるとにらむ。神崎の自殺の真相を追っていたエリカは、神崎の葬儀の場で、拓海と出会う。エリカは神崎家を訪問し、妻の伸子から、俊尚の書斎に通される。鍵のかかった引き出しの中には、東都新聞社に送られたファックスの原稿と、一冊の本があった。それは、かつてアメリカで細菌兵器が羊の大量死に繋がったことを記したノンフィクションだった。エリカは俊尚の書斎に拓海を呼び、政府が軍事転用可能な生物兵器の研究施設を作ろうとしているという仮説を立てる。拓海は、家族もろとも我が身を危険にさらす恐怖を感じながらも、真実を把握するため、大学建設の担当者の同僚の部屋から情報を盗み出し、エリカに送る。エリカと拓海は陣野を説得し、東都新聞は「新大学で生化学兵器研究」の記事を一面で出す。エリカは、誤報を出して死んだ父親のことを明るみに出されるが、他の主要紙が問うと新聞に追随することを知り、自らを奮起させるが、そこに、多田とおぼしき声から、あなたの父親は真実を書き、それでも死んだ、という脅しの電話が入る。エリカは慌てて、内閣府に向かって走り出す。多田の席の前には、血の気を失った拓海がいた。外務省に戻って外国で数年過ごせばいい、と多田に言われた拓海は、憔悴しきった表情のまま、地下鉄の入り口に向かう。交差点の横断歩道を挟んで、エリカと拓海は向かい合うが、拓海は何事かをつぶやき、それを見ていたエリカは、思わず叫び声を上げそうになるのだった。

ラストシーンで何があったかは、観る者の想像に委ねられているが、おそらく拓海は「ごめん」とつぶやき、そのまま車道に歩き出し、それを見たエリカが目を見開いたのだろう、というのが、最もありそうな展開だ(実際、首相官邸前の交差点を高速で走る車はいないと思うが)。
森友学園の問題で自殺した職員の事件とも共通するような、大学設立に関する不正を扱っており、見ようによってはなかなか生々しい。硬派で見応えのある作品だった。ちなみに本作を最初に観たのは飛行機の中だったのだが、シム・ウンギョンを完全に上野樹里だと思っていて、「上野樹里、英語うまいじゃん」などと脳天気な感想を持ったのだった。

【5段階評価】4

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