(2340) メッセージ
【監督】ドゥニ・ビルヌーブ
【出演】エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー
【制作】2016年、アメリカ
宇宙人との交流を試みる言語学者の運命を描いた作品。
地球上の12カ所に謎の巨大宇宙船が出現。言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は、アメリカ軍大佐のウェバー(フォレスト・ウィテカー)から宇宙船内の生命体との対話を依頼される。ルイーズは物理学者のイアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)とともに船内に入り、ホワイトボードやジェスチャーを使って宇宙人と言語の交換を始める。7本足の彼らは、水中に吐いた墨がリング状に固定化されるようにして書かれる表意文字を使用。彼らの言語を理解するようになったルイーズは、彼らに地球に来た目的を尋ねる。彼らの回答は「武器を提供(offer weapon)」だった。米軍は宇宙人を警戒し、撤退を準備。中国も戦闘態勢に入り、各国との連絡回線は断たれてしまう。
中国のシャン上将(ツィ・マー)が宇宙船攻撃を決断する中、ルイーズは宇宙人の真意を問うため、単身で宇宙船内に入る。彼らは時間の流れに制約されない概念を持っていた。彼らは3,000年後、地球に助けてもらうため、時間の流れを超える概念をルイーズに提供する。彼女は、夫と結婚し、やがて離婚、授かった子どもが重い病気で夭折するという「将来の記憶」を体験する。
結局、中国の宇宙船攻撃は実施されなかった。ルイーズはパーティ会場でシャン上将と初対面する。シャン上将は、攻撃を中止するようルイーズに電話で説得された、と告白。ルイーズが、シャン上将の電話番号を知らない、と不思議がると、シャン上将は自分の携帯電話を見せて、「今知った」と話す。時間を超越するルイーズの記憶が、過去のルイーズに伝わったのだ。シャン上将は続けて、自分しか知らない妻の最期の言葉をルイーズに伝える。ルイーズはその言葉を開戦直前のシャン上将に伝えることで、シャン上将の説得に成功したのだった。かくして宇宙船との戦闘は回避され、宇宙船は世界各地で姿を消した。ルイーズは、その先に不幸が待っていることを知りながら、イアンとの結婚を受け入れるのだった。
SF作品ではあるが、ルイーズの人生を描いたドラマになっているのが特徴的。離婚後に娘を失うルイーズの回想シーンで始まるため、宇宙船に向かうルイーズは、夫と別れ、子を失うという経験を乗り越えた人物だと完全にミスリードされるわけだが、実はそれは、宇宙船飛来後の将来に起きる彼女の記憶であり、夫とはこの事件を通じて知り合ったイアンで、愛娘ハンナを授かるのもこれからなのだった。この辺りの見せ方は見事だった。
宇宙人の造形がステレオタイプなタコ怪物みたいだったり、世界各国が通信を遮断する流れがやや強引だったと感じたりはしたものの、将来の記憶があるという概念について思索にふける機会を与えてくれる秀作だった。
ちなみに、二体の宇宙人に付けられた「アボット」と「コステロ」は、アメリカの昔のコメディアンの名前から来ている。
【5段階評価】4
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