(2307) ベン・イズ・バック
【監督】ピーター・ヘッジズ
【出演】ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジズ、キャスリン・ニュートン、コートニー・B・バンス
【制作】2018年、アメリカ
薬物依存症の息子を守るために奔走する母親の奮闘を描いた作品。
クリスマス・イブの朝。ホリー・バーンズ(ジュリア・ロバーツ)の家に、薬物依存症の矯正施設に入院していた息子、ベン(ルーカス・ヘッジズ)が帰ってくる。継父のニール(コートニー・B・バンス)とベンの妹アイビー(キャスリン・ニュートン)は、勝手に帰ってきたことを心配するが、ホリーはベンを受け入れる。その夜、ホリーたちが家族で出席した教会の催しから帰ってくると、家が何者かに荒らされ、飼い犬のポンスがいなくなっていた。ベンはニールにお前が帰ってきたからこうなったと責められ、家を抜け出す。ホリーはベンを追い、彼を車に乗せて一緒にポンスを探しに行く。家に押し入ったのは、ベンが関わっていた麻薬組織だった。ベンは母親の隙を突いて単身で車に乗り込み、麻薬組織のリーダー、クレイトン(マイケル・エスパー)のもとに向かう。ベンはホリーに引き出してもらったお金で借金の一部を返済するが、クレイトンはベンに金だけではすまされないと言って麻薬取り引きの仲介を強要。ベンは何とかそれをやり終えると、クレイトンから一包みの薬物を報酬として渡され、ポンスを連れ戻すことに成功する。しかしポンスは車を途中で降り、薬物を摂取してショック状態となってしまう。ホリーはベンが車に残した置き手紙により彼の居場所を突き止め、何とか彼の意識を取り戻すことに成功するのだった。
アメリカで多くの死者を出して問題となっているオピオイド中毒を扱い、薬物依存の恐ろしさ、そこから抜け出すことも難しさをストレートに描いている。しかし、禁断症状で半狂乱になって叫んだり、暴力を振るったりといった、目を背けたくなるようなどぎついシーンは使っていない。ベンは常に感情を抑え込んでおり、冷静に薬物依存から抜け出そうと歯を食いしばっている。しかし周囲は彼を不審がり、継父はベンへの嫌悪感をあらわにするし、母親ですら彼への不信感をはっきりと伝え、ベンは常に感情の爆発の危険にさらされる。麻薬組織も、ベンとの縁を切ろうとせず、彼を薬物の世界に引き込もうとする。しかしベンは継父に感情的になることをせず、クレイトンにも冷静に犬を返してくれ、とだけ伝える。施設での訓練により、そこまで自分を抑制できるようになった彼でも、最後はショック状態になるのが分かっていながら、クレイトンに渡された麻薬に手を出してしまう。ホリーは継父とは別の意味でベンが再度薬物に手を出すことを確信しており、最後まで必死にベンを探し続け、彼をショック状態から救い出す。この愛情表現はなかなか深い。ジュリア・ロバーツやルーカス・ヘッジズの演技が素晴らしかった。
本作はBSテレ東4Kで観たが、番組の冒頭にジュリア・ロバーツとキャスリン・ニュートンのインタビューがあったのは、ちょっと嬉しいボーナスだった。
【5段階評価】4
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