(2256) 運び屋
【監督】クリント・イーストウッド
【出演】クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ダイアン・ウィースト、アリソン・イーストウッド
【制作】2018年、アメリカ
麻薬の運び屋を始めた園芸農家の運命を描いた作品。
園芸農家のアール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、娘アイリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式も無視して仕事に没頭する男で、アイリスだけではなく、妻のメアリー(ダイアン・ウィースト)からも恨まれていた。ネット販売の波に飲まれて廃業することになったアールは、孫ジニー(タイッサ・ファーミガ)の婚約記念の集まりに顔を出すが、アイリスやメアリーから責められ、追い出されるように帰路に就こうとする。すると、パーティ会場にいた一人の若者が、アールに運び屋の仕事を紹介する。アールが紹介された場所に向かうと、閉ざされたガレージの中に怪しい若者が三人待っており、中身を見るなと言って荷物をトラックに積む。アールは指示された通り、車をホテルの駐車場に止め、しばらくして戻ると車の中にキーと報酬の大金が入っていた。アールはやがて自分が運んでいる物が麻薬であることに気づくが、まとまって入る金を目当てに仕事を続ける。彼はそのお金のお陰で、孫娘のためのパーティの資金を出したり、火事を出した退役軍人集会施設に資金供与し、差し押さえられた自宅も取り戻す。アールは安全運転の老人であり、警察の警戒の目をかわしてマイペースながら安定した仕事を続け、徐々に運ぶ麻薬の量が増えていく。信頼を得たアールは、麻薬組織のボス、ラトン(アンディ・ガルシア)の屋敷に招かれ、歓待を受ける。しかし、ラトンの手ぬるいやり方に業を煮やした部下のグスタボ(クリフトン・コリンズ・Jr)はラトンを殺害。部下を使って、アールに時間をきちんと守らないと命はないと厳命する。
麻薬組織の摘発をもくろむDEAのベイツ捜査官(ブラッドリー・クーパー)は、上長(ローレンス・フィッシュバーン)の指示のもと、相棒となったトレビノ捜査官(マイケル・ペーニャ)とともに捜査の的を絞っていく。そんな中、アールは300キロを超える麻薬を運ぶことになるが、運転中、ジニーから電話が入り、妻のメアリーが病気で倒れて余命数日なので会いに来てほしいと言われる。時間を守らないと命はないと言われているアールは、今は行けないと答えるが、失望するジニーの声を聞き、家族を最優先すべきだと考え直し、メアリーのもとに戻る。メアリーは心の底からアールが来たことを喜び、やがて息を引き取る。娘のアイリスともようやく和解する。麻薬組織は彼の失踪に躍起となり、警察も捜査が進展せず焦っていた。アールは妻の葬儀を終えてようやく麻薬運搬の仕事に戻るが、とうとうベイツに逮捕される。
アールは裁判所で、弁護士の制止を無視して自ら有罪を認め、刑務所に行く道を選ぶが、傍聴席のアイリスやジニーは、アールを抱き、励ます。アールは刑務所で花の栽培に精を出すのだった。
クリント・イーストウッド監督作品は外れがない、ということをまたも再認識させられる、いい作品だった。話はトントン拍子に進んで面白く、マフィアの脅しを意に介さない老人の行動は小気味よい。粋がる若者の暴力的な態度を恐れず平然と立ち向かう姿は、「グラン・トリノ」にも通じる物があった。家族愛に目覚め、自分の命より妻に寄り添うことを選ぶ姿は、ほのぼのとした感動を与えてくれた。
アールの娘を演じたアリソン・イーストウッドは、クリント・イーストウッドの実の娘である。
【5段階評価】4
| 固定リンク
コメント