(2101) 人生の特等席
【監督】ロバート・ロレンツ
【出演】クリント・イーストウッド、エイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、ジョン・グッドマン
【制作】2012年、アメリカ
プロ野球の老スカウトと一人娘との心の絆を描いた作品。
残り契約が3ヶ月の老スカウト、ガス(クリント・イーストウッド)は、今年のブレーブスのドラフト1位を決めるため、地方の野球観戦をしていた。視力が低下し、調子を落とした彼を心配した同僚のピート(ジョン・グッドマン)は、ガスの娘で弁護士のミッキー(エイミー・アダムス)に、一緒にいてやってほしいと頼む。パートナー(共同経営者)への昇進の条件となる重要な案件を抱えていたミッキーは始めは断るが、父親が心配になり、遠征先に駆けつける。二人は球場で、かつてガスがスカウトした元ピッチャーのジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)と出会う。彼はレッドソックスのスカウトになっていた。
ガスは33歳にもなるミッキーのことをいまだに過剰に心配し、男が彼女の腕に触れただけで激怒する始末。一方、母親が亡くなってから親戚に預けられ、父親の愛情を十分に受けられなかったと感じていたミッキーは、ダイナーでの朝食中、父親を責める。ミッキーは休暇が長引いたことが響いて昇進の話が先送りになり、弁護士のボーイフレンドとも破局してしまうが、素朴なジョニーと恋仲になっていく。
ガスはミッキーとともに選手のチェックを続け、有望視されていたパワーヒッター、ボー(ジョー・マッシンギル)が、カーブを打てないことを見抜き、ジョニーにボーは指名しないと助言。チームにもボーを指名するなと伝える。しかし責任者のビンス(ロバート・パトリック)は若いスカウトのフィリップ(マシュー・リラード)の説得に負けてボーを1位指名する。ジョニーはブレーブスがボーを1位指名したのを知って騙されたと勘違いし、怒ってミッキーのもとを去る。ガスは、かつてミッキーが6歳のとき、球場に連れて行ったミッキーが目を離した隙に知らぬ男に小屋に連れ込まれ、それを見つけたガスは男を殴り殺してしまったことを告白する。
ガスは帰宅し、残ったミッキーは、モーテルの少年、リゴ(ジェイ・ギャロウェイ)が素晴らしい球を投げるのを発見。ピートに連絡を入れて球場でボーと対決させる。ボーはリゴのストレートにも、カーブを投げると宣言したカーブにも全くバットを当てることができない。ビンスはリゴとの契約を決め、ガスにも契約延長を申し出る。ガスはリゴのエージェントにミッキーを推し、契約延長については考える、と返事する。意気揚々と事務所を出たガスとミッキー。ミッキーに法律事務所から電話が入り、ミッキーの昇進のライバル、トッド(ジェームズ・パトリック・フリートリー)が失敗したので復帰してほしいと言われるが、ミッキーは父親と同じように考える、と返事し、携帯をゴミ箱に投げ捨てる。球場の外にはジョニーが待っていた。ジョニーとミッキーは口づけを交わし、ガスは苦笑いをして一人で去って行くのだった。
親子が絆を取り戻していく様子が心地いい、心温まる作品。原題は「Trouble with the Curve」で、カーブに難あり、といった意味。「人生の特等席」というと、「最高の人生の見つけ方」(2007)みたいな高齢者が人生の最後を楽しむ話のようなイメージがあり、原題よりは安っぽい印象がある。それよりは原題の方が「どういう意味だろう」と考えながら作品を観ることができ、始めはカーブの苦手なボーを指した言葉だと思いつつ、実は人生の曲がり角で問題を抱えるガスとミッキーをも指しているのか、とも受け取れる、なかなか含みのあるタイトル。ただ、日本語にするのは難しい。
いい作品ではあったが、リゴが登場してボーとフィリップをやり込める、というのはできすぎでご都合主義的ではあった。ボーのキャラクターが記号的で、人間味がないのは残念。彼にも何か救いを与えたほうが、作品としては味がよかった。
【5段階評価】4
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