(2001) アジョシ
【監督】イ・ジョンボム
【出演】ウォンビン、キム・セロン、タナヨン・ウォンタラクン、キム・ヒウォン、キム・ソンオ
【制作】2010年、韓国
元軍人の男が、犯罪組織に拉致された孤独な少女を救うために死闘を繰り広げるアクションサスペンス。
とあるクラブの踊り子ヒョジョン(キム・ヒョソ)は、麻薬の密売人をスタンガンで倒し、麻薬を横取りする。ヒョジョンの娘、ソミ(キム・セロン)は、質屋を営むチャ・テシク(ウォンビン)に懐いており、彼をアジョシ(おじさん)と呼んでは家に上がり込み、無愛想なテシクもソミに愛着を感じていた。
組織のオ社長(ソン・ヨンチャン)は、責任者のマンソク(キム・ヒウォン)を鼻血が出るほど殴り、麻薬の奪回を指示。マンソクはヒョジョンを突き止め、マンソクの弟、ジョンソク(キム・ソンオ)がヒョジョンを拷問。ソミとともに拉致する。ジョンソクの手下がテシクの店に現れ、ヒジョンが預けていたバッグを差し出すよう脅迫。テシクは手下の一人をあっという間にねじ伏せてしまうが、ヒョジョンとソミが拉致されたことを知ると、大人しくバッグを渡す。組織は中味を確認すると、携帯電話を残して二人を連れ去ってしまう。
翌日、テシクは、かかってきた電話の指示により、立体駐車場の車を運転して麻薬をオ社長のもとに運ぶが、それはマンソク兄弟の罠だった。テシクの乗っていた車のトランクには、臓器売買のために目と内臓を奪われたヒョジョンの遺体があった。テシクは警察に捕まってしまうが、テシクは食事のために手錠を外された一瞬の隙を突いて警察を脱走。警察の調べでは、テシクはオ社長とつながりがなく、麻薬にも手を染めていないことが判明。さらに、彼が元軍情報部特殊作戦部隊の要員、特殊殺傷武術の教官であることが分かる。
ソミは、ジョンソクの息のかかった組織に軟禁され、麻薬密売に加担させられる。テシクは渡された携帯を手がかりにマンソク兄弟の居場所を突き止め、ディスコクラブに向かうが、彼らの雇う傭兵、ラムロワン(タナヨン・ウォンタラクン)がテシクに襲いかかる。トイレで互角の死闘を演じた二人だったが、マンソクはラムロワンとともに店から消える。テシクには、子供を身ごもった妻のキム・ヨンスを亡くした過去があった。ソミに娘の面影を感じたテシクは、彼女の救出を決意する。ソミは組織に軟禁された状態だったが、母親の無事を信じて健気に生きており、額を負傷したラムロワンに絆創膏を貼ってあげる優しさも見せていた。
麻薬製造場所を突き止めたテシクは、ジョンソクを拘束し、携帯でマンソクに電話をかけると、ジョンソクの太ももにネイルガン打ち込み、ジョンソクの悲鳴を聞かせてソミの居場所を聞き出そうとするが、マンソクは弟に手を出したらソミの目玉と内臓をくりぬくと逆に脅すと、手下にソミの目玉をくりぬけ、と指示する。テシクはジョンソクの麻薬工場を爆破。ジョンソクは爆死する。
ソミは監禁された車の中で、臓器摘出を行う男とラムロワンとともにいた。母親の心臓を取り出した、とニヤニヤしながら話す男に向かって、ソミはママは生きていると言ってと叫ぶが、麻酔を嗅がされてしまう。
テシクはマンソクのアジトに単独で入り込む。マンソクは目玉の入ったガラス瓶をテシクに転がして渡す。怒りが頂点に達したテシクは10人以上いるマンソクの手下を次々と殺害。ラムロワンは正々堂々とナイフ一本を持った一対一の戦いを挑むが、テシクはラムロワンを下す。車で逃げようとするマンソクだったが、テシクは防弾フロントガラスに何発も銃弾を撃ち込み、ついにガラスを貫通させてマンソクを殺す。全てを終え、全てを失った哀しみに自らの命を絶とうとするテシクは、「アジョシ」と呼ぶ声を耳にする。ソミだった。ソミは殺されておらず、マンソクの持っていた目玉は、ラムロワンが臓器摘出の男からくりぬいたものだったのだ。テシクは警察に捕らえられるが、最後にソミを強く抱きしめるのだった。
臓器が摘出され、目玉がくりぬかれた遺体やハードなナイフ武術など、リアリティを追求した映像が見もの。麻薬と臓器の密売という社会の闇を題材に、身寄りのなくなった少女を救おうとする無償の愛が描かれる。社会派の作品というよりは、アクションが見ものの娯楽作品。
多少残念なのは、例えばラストシーンで、テシクが単身で乗り込んでいったときに誰も彼を拘束しないし銃も向けないとか、まだ銃弾が残っているのにラムロワンのナイフでの一騎打ちに挑むところとか、ところどころ嘘くささが見えるところ。この辺り、娯楽作品とは言え、もっとリアリティや緊迫感があればよかった。でも、ソミが殺されないですむところには、ソミの健気さを見てきたラムロワンが関わっているという設定が効いていて、よかった。一度観たときは、ラストで目玉をくりぬかれている遺体が臓器摘出の男と気づかず、「???」だったのだが。
【5段階評価】4
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