(1624) あん
【監督】河瀨直美
【出演】永瀬正敏、樹木希林、内田伽羅、浅田美代子、市原悦子
【制作】2015年、日本
ドリアン助川の小説の映画化作品。ハンセン病患者として暮らしてきた老女とどら焼き屋の店長との交流を描いている。
女子中学生のたまり場になっている小さなどら焼き屋の店長、千太郎(永瀬正敏)。ある日、千太郎に75歳の徳江(樹木希林)がアルバイトをしたいと話しかけてくる。75歳という年齢を聞いて、千太郎はその申し出を断るが、次の日、徳江はお手製の粒あんを置いていく。千太郎は、一度はそれをゴミ箱に放り投げるが、思い直してタッパーの中のあんをなめてみる。それは想像以上のおいしさだった。店によく来る女子中学生、ワカナ(内田伽羅)の後押しもあり、千太郎は徳江にあん作りを手伝ってもらうことにする。徳江は千太郎にあんの作り方を教える。それは小豆にありったけの愛情をそそぐ、丁寧な作り方だった。おいしくなったどら焼きはあっという間に行列ができるほどの評判となる。しかしある日、オーナー(浅田美代子)が店にやってきて、徳江はハンセン病患者で隔離されたところに住んでいるから、雇うのを辞めた方がいいと告げる。千太郎はかつて、酒屋の乱闘で相手に重い障害を負わせて刑に服していた時期があり、オーナーに借金があるのだった。それでも千太郎は、徳江とお店を続ける。
しかし、ある日を境に、ぱったりとどら焼きが売れなくなる。ワカナが母親(水野美紀)に、徳江の指に障害があることを話したのだという。千太郎は、世間は恐ろしいが、それよりひどいのは徳江を守れなかった自分だ、とワカナに話す。
ワカナは千太郎とともに徳江の家を訪ねる。バス停から雑木林を抜けた先にある一帯は、ハンセン病患者が隔離されて住む地域だった。徳江はワカナと千太郎の来訪を喜び、指に障害のある佳子(市原悦子)を紹介する。千太郎は、徳江の作ったおしること塩昆布を食べながら涙を流す。
ワカナと一緒に塩どら焼きの開発をする千太郎のもとに、甥っ子(兼松若人)を連れたオーナーが現れ、コック志望の甥のために、どら焼き屋をお好み焼きも出せる店に改装すると言い出す。甥っ子はガムをくちゃくちゃ噛みながらチャラい挨拶を千太郎にする。千太郎はとまどい、ワカナは嫌悪感をあらわにする。
店は改装に入り、千太郎は酒に浸るようになる。千太郎を見つけたワカナは、二人で徳江を訪ねる。出迎えた佳子は、徳江が3日前に亡くなったと告げる。佳子は徳江の暮らしていた家に二人を案内し、徳江が残した音声テープの入ったカセットプレーヤーを手渡す。そこには、徳江がワカナと千太郎に残したメッセージが込められていた。千太郎は満開の桜の下で、どら焼きの露天売りを始め、威勢よく客寄せの大声を出すのだった。
シリアスなテーマを、最小限の登場人物で重厚に描いている。樹木希林という個性的な女優をうまく使って泣かせる作品に仕上がっていた。後半の徳江の独白が、若干説教くさかったのが残念。
【5段階評価】4
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