(1616) アイデンティティー
【監督】ジェームズ・マンゴールド
【出演】ジョン・キューザック、レイ・リオッタ、アマンダ・ピート、ブレット・ローア
【制作】2003年、アメリカ
モーテルで起きる連続殺人の謎を追うサスペンス映画。
大嵐の夜、モーテルにけがした女性が運び込まれる。ヨーク一家は3人でドライブ中、タイヤがパンク。父親のジョージ(ジョン・C・マッギンリー)がタイヤ交換をし、母親のアリス(レイラ・ケンズル)が傘を持ってそれを見守っていると、息子のティミー(ブレット・ローア)の目の前で、アリスが車に跳ね飛ばされる。アリスをはねた車を運転していたのはエド(ジョン・キューザック)。落ち目の女優、カロライン(レベッカ・デモーネイ)に雇われていた。エドは車を降り、アリスの容態を確認。二台の車でモーテルに向かう。モーテルの主人、ラリー(ジョン・ホークス)が対応するが、電話はつながらず、救急道具もろくになかった。エドはいやがるカロラインをモーテルに残し、50km先にあるという病院を目指す。エドは途中で、故障した車で立ち往生していた娼婦のパリス(アマンダ・ピート)を拾う。ところが道路は嵐で崩れており、先に進めなかった。エドの車は崩壊した道路に突っ込んでしまう。そこに車に乗った男女、ジニー(クレア・デュバル)とルー(ウィリアム・リー・スロット)が現れる。エドとパリスはジニーの車でモーテルに戻る。さらに、モーテルに警察車両が乗り付けられ、凶悪犯のロバート・メイン(ジェイク・ビジー)を護送中のロード(レイ・リオッタ)が宿を求める。ロードはロバートをトイレの給水管に手錠でつなげる。こうして、モーテルに11人が集う。
女優のカロラインは、携帯に一瞬つながった電波を頼りに雨の中、外に出る。物音がして振り返った直後、何者かに襲われる。エドはモーテルにあった針と糸でなんとかアリスの裂傷を縫い付ける。不審な物音に気づいて外に出たエドは、洗濯機のドラムの中にカロラインの首が転がっているのを発見。そこには「10」の番号の付いた鍵があった。給水管につながれていたロバートはパイプを取り外して姿を消していた。ジニーはおびえて部屋に戻り、モーテルを出ようとする。それを止めるルーと口論となり、ジニーはトイレに逃げ込み、鍵をかける。ルーは扉を開けろと叫ぶが、それが急にやむ。恐る恐る外に出たジニーは、ナイフを持った何者かに気づき、慌ててトイレに逃げ込んで鍵をかけると、窓から外に逃げ出す。それに気づいたエドとロードが部屋に入ると、そこには血まみれになったルーの死体があり、手には「9」の鍵が握られていた。
エドとロードはロバートを探すが見つからない。ロバートは雨の中、モーテルから逃げ出していた。その先の明かりを目指したロバートだったが、たどり着いたのはもとのモーテルだった。ロバートに気づいたロードとエドがロバートを取り押さえ、柱にくくりつける。ラリーが監視役をさせられる。ところが、ロバートは口の中にラリーの持っていたバットが突っ込まれ、絶命していた。足下には「8」の鍵。ロードはラリーを犯人だと決めつけるが、ラリーはパリスを人質にとって逃げようとする。パリスはラリーを冷凍庫に激突させる。すると、中から凍り付けになった死体が転がり出てくる。ラリーは車でモーテルから逃げようとする。ラリーはティミーを跳ね飛ばしそうになり、助けようとしたジョージが車に轢かれて即死する。ラリーは持ち金がなく、たどり着いたモーテルの主人が死んでいたので代わりにモーテルの主人をすることになったと説明するが、ロードは殺人犯はラリーだと主張する。エドはアリスを確認する。いつの間にかアリスは絶命していた。そして遺体の下から「6」の鍵が出てくる。エドとロード、パリスは協力してジョージの遺体を確認。遺体のポケットから「7」の鍵が出てくる。エドは、ジニーとパリスに、ティミーを連れてモーテルから離れるよう指示。ところが、彼らの乗ろうとした車は大爆発を起こす。ラリーが消火器で火を消すが、中には誰もいなかった。エドとロード、パリスは、ジョージの遺体もなくなっていることに気づく。アリスの遺体も、ルーの遺体や壁の血痕、そしてランドリーの首も消失していた。パリスは「降参よ」と叫ぶ。
一方、雨の中で死刑囚の最後の審議が行われようとしていた。殺人犯のマルコム・リバース(プルイット・テイラー・ビンス)は肉体的には殺人者であったが、幼い頃の事件がもとで多重人格者となっており、エドはそのうちの一人だったのだ。医師により、多くの人格が一堂に会し、殺人者の人格を消滅させようという試みだった。モーテルはマルコムが生み出した心理的な空間だったのだ。
パリスがロードの乗っていた車の中を調べると、犯罪者の調書が出てきた。調書は二つあり、一つはロバートのもの。そしてもう一つは、ロードのものだった。ロードは護送中に運転手を殺害。運転手の服に着替えてモーテルに来ていたのだ。パリスはエドを探すが、ロードに見つかってしまう。そこにラリーが現れ、消火器でロードに殴りかかり、パリスを助けようとするが、ロードに撃ち殺されてしまう。逃げ惑うパリスを見つけたエドが彼女をなだめ、拳銃を持ってロードと対峙。エドはロードに撃たれながらもロードにとどめを刺し、彼自身も息を引き取る。
マルコムの中にはパリスの人格が残った。医師のマリック(アルフレッド・モリーナ)は、マルコムは肉体的には殺人者だが、人格としての殺人者はいなくなったと宣言。マルコムの死刑は正式に取り消される。
パリスは夢だったオレンジ園の経営を始めていた。彼女がオレンジの木の根元を掘ると、そこから「1」の鍵が出てくる。驚愕する彼女の目の前に現れたのは、ティミーだった。そう、彼こそがマルコムの中に眠る殺人者の人格だったのだ。マルコムの中のパリスの人格は消され、ティミーの人格が残った。マルコムを乗せた車の助手席にいたマリックは、後部席のマルコムの異変に気づいて振り返るが、マルコムはマリックと運転手に襲いかかる。マルコムの乗った車は荒野の中、路肩で停止するのだった。
普通の連続殺人事件かと思いきや、一気に超常現象的ホラーの可能性を見せつつ、最後は見事なサイコサスペンスとして結末を迎える。爆発を起こす車から不気味に立ち去るティミーの映像は若干コミカルだったが、ハラハラドキドキ感があり、見応えのある作品だった。ただ、想像の世界ということであれば、子供が大人を殺そうが何をしようが、何でもありなので、なぞ解きという意味では、ややルール違反と感じた。
今回はWOWOWの無料放送で、吹き替えのみだったのだが、できればオリジナル音声で観たかった。
【5段階評価】4
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