(920) それでもボクはやってない
【監督】周防正行
【出演】加瀬亮、瀬戸朝香、役所広司、山本耕史、もたいまさこ
【制作】2007年、日本
痴漢冤罪を扱った作品。周防作品らしい綿密な取材に基づいた裁判映画の傑作。
フリーターの金子徹平(加瀬亮)は、女子中学生に痴漢に間違えられて警察に連れて行かれる。担当刑事の山田(大森南朋)は虫の居所が悪く、金子を犯人と決めつけた取り調べを行い、彼を収監してしまう。国選弁護士をはじめ、警察官や副検事など、あらゆる人が金子を有罪と決めつけ、彼の言い分はまともに聞いてもらえない。
彼が勾留されていることを知った友人の斉藤(山本耕史)や母親の豊子(もたいまさこ)は、つてのある弁護士に相談し、荒川(役所広司)と須藤(瀬戸朝香)が担当となる。はじめは金子を疑っていた須藤も、やがて彼が無実と信じるようになる。
事件は裁判となり、最初の裁判官(正名僕蔵)は疑わしきは被告人に有利に、を信条に、誠実に裁判を行うが、被告人を無罪にするということは、彼を逮捕・起訴した警察と検察という国家権力にたてつくことを意味しており、裁判官もまた、公務員なのだった。その裁判官は担当を降ろされ、別の裁判官(小日向文世)が担当することになる。今度の裁判官は検察側の意見に与するような偏った審議を行う人物だった。被告人側は、苦労の末、金子の上着の裾が電車のドアに挟まっていたことを見ていた目撃者も見つけるが、結局、金子は執行猶予付きの有罪となってしまうのだった。
どこまでが真実で、どこまでが誇張なのか分からない(たとえば、警察は本当にこれほど容疑者を犯人扱いし、恫喝・罵倒するのか、とか)が、迫真性の高い作品だった。加瀬亮の演技もすばらしく、ハッピーエンドではないところも考えさせられた。痴漢と疑われただけで人生が暗転してしまうというのは、何とも恐ろしい。
【5段階評価】4
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