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2010年6月22日 (火)

(156) 旭山動物園物語 ~ペンギンが空をとぶ~

【監督】マキノ雅彦
【出演】西田敏行、中村靖日、前田愛
【制作】2008年、日本

入場客低迷で閉園の危機にある北海道の旭山動物園を舞台に、当動物園が入場客数日本一の座を獲得するまでの奮闘努力を描いた作品。園長役の西田敏行をはじめ、動物園の飼育員役には、長門裕之、六平直政、塩見三省、岸部一徳、榎本明など、そうそうたる名優がそろっている。

ワンポイントガイドや夜の動物園などの企画の努力を続けるも、旭山動物園の入場客は低下の一途をたどる。起死回生を狙う園長は、新市長に「ペンギンが空を飛びます」と見得を切り、億単位の予算を獲得。その後は、動物の動き、生態を見せる展示を心がけることで、大人気をものにする。

終盤の、動物園の廃園反対というプラカードを掲げた市民が市役所をとりまくシーンは感動的。役者さんの演技もいい。

ついでに、映画の話ではないけれど書いておきたい。よく、赤字の空港はいらないとか、赤字の博物館はいらないとか、そういう話がある。しかし、本来、公共施設の要否を、施設経営の赤字、黒字で判断するのは間違いだ。普通に経営して黒字になるのであれば、それは公共施設として運営する必要はない。それは民営化すればいい。この動物園は赤字だ。じゃあいらないのか、というとそうではない。動物園がいるかいらないかは、「動物園の収入>動物園の支出」で判断するのではない。「動物園が生み出している価値>動物園の維持に必要な費用」で判断するべきなのだ。ここで、動物園を維持するのに必要な費用は、公共の財政支援などがなければ、ほぼ動物園の支出と言ってもいいだろう。しかし、動物園の価値は、入場料収入だけで計ることはできない。入場料を払ってやってくる人たちを楽しませるということ以外にも、動物園には存在意義があるからだ。
この映画では、動物園が廃園されるという情報を聞いた地域の人々が、反対のプラカードを掲げて市役所を取り巻く、という感動的なシーンがある。これはつまり、ふだん入場料を払っていない人たちも、動物園に価値を感じている、ということである。将来の世代に動物園を残してやりたいとか、いつかは見に行くかもしれないとか、なくなると寂しいとか、いろいろな形で、人々は、動物園の存在に、価値を見いだしている。動物園のような社会的意義を持つ施設の要否を判断する際には、この部分を無視してはいけない。

【5段階評価】4

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