(97) 硫黄島からの手紙
【監督】クリント・イーストウッド
【出演】二宮和也、渡辺謙
【制作】2007年、アメリカ
「父親たちの星条旗」と同様、硫黄島での戦いを描いている。本作は日本軍が主役である。
よくあるアメリカの戦争映画では、日本軍と言えばとにかく卑怯、残酷、そして時代遅れという描かれ方で、日本人として見ていると歯がみをしたくなるようなものが多いが、この映画では邦画と見まがうぐらい、日本人が日本人らしく描かれている。バロン西(伊原剛志)や栗林中将(渡辺謙)なんかは、美化されすぎかもしれないが。
ただ、主役の二宮和也については、ほかの役者さんのほうがよかったかなぁ、という気がした。しゃべり方が妙に軽くて(「武士の一分」のキムタクもそうだったけど)、この重々しい映画の中で、なんでこんな演出にしたのかなぁという感じ。
戦争のシーンの描き方は、凄絶だ。空爆で座ったまま死んでいたり、被弾して腕がちぎれ、そのまま息絶えたり。特に自決のシーンはやるせなかった。
「父親たちの星条旗」のワンシーンで、日本軍を壊滅させた米軍の兵士が、洞窟内に入って、内臓を吹き出したような肉塊になった日本兵の死体を見つけるというシーンがあり、自分はこの死体はなんだろうと思っていたのだが、手榴弾で自爆した兵士だったのかと、この映画を見て分かった。
気になったのは、この映画は外国人から見てどうなのだろう、理解できるのだろうか、ということ。「父親たちの星条旗」と比べるまでもなく、日本の兵士は自決しすぎだ。手榴弾での自決のシーンでは、アメリカでは笑い声が起きたという噂も聞く。
戦って死ぬのならともかく、洞窟の中、敵を巻き込むでもなく、ただただ自分一人が死ぬために手榴弾を使う。頭を自ら銃で撃ち抜く。当時の軍人の中にあって進歩的な思想の持ち主であり、玉砕は許さないと部下に言った栗林中将すら、最後は自分の胸を銃で撃って死ぬ。たしかに戦争の狂気とはいえ、見る人が見れば滑稽なのかもしれない。
【5段階評価】4
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