2025年7月20日 (日)

(3104) 哭声/コクソン

【監督】ナ・ホンジン
【出演】クァク・ドウォン、國村隼、キム・ファニ、チョン・ウヒ、ファン・ジョンミン、キム・ドユン、ソン・カングク
【制作】2016年、韓国

韓国の村で起きる猟奇的事件を描いた作品。超常的なホラーなのか現実的なサスペンスなのか分からないまま話が進んでいく。

谷城(コクソン)の村で男が家族を惨殺するという事件が起きる。キノコによる幻覚症状と判断されるが、村にやってきた日本人(國村隼)のせいではないかという噂もあった。警察官のジョング(クァク・ドウォン)には、かわいい娘ヒョジン(キム・ファニ)がいたが、彼女が父親に対して凶暴な態度を取るようになり、ついには親族をはさみで攻撃してしまう。体には、家族を殺害した犯人と共通する発疹があった。
ジョングの母親が祈祷師のイルグァン(ファン・ジョンミン)を呼び、イルグァンはヒョジンに取り憑く悪霊を追い払うため、日本人の男を殺す祈祷を行うが、ヒョジンが祈祷をやめてと言って苦しみ出したため、ジョングは祈祷を中断させてしまう。ジョングは仲間を従えて、山奥にある日本人の家に向かう。日本人の男は逃げてしまい、ジョングたちは諦めて車で帰るが、途中で日本人の男を轢いてしまう。ジョングは仲間とともに、男を道路脇の森に投げ捨てる。その様子を白い装束の女ムミョン(チョン・ウヒ)が見つめていた。
ヒョジンの症状は消え去り、病院から家に戻るが、大雨の日、ヒョジンが姿を消す。祈祷師は、悪霊は日本人の男ではなく、若い女だと電話でジョングに告げる。ジョングがヒョジンを探していると、ムミョンが現れる。ムミョンは悪霊に罠を仕掛けたのでまだ家に帰るなと言うが、ジョングは信じ切れず、ムミョンを置いて家に戻る。家は血まみれになっており、ジョングの妻と母が倒れていた。部屋には返り血を浴びたヒョジンが立っていた。
ジョングとともに日本人の男の家を訪ねた助祭イサム(キム・ドユン)は日本人の男を探す。男は洞窟の奥にいた。イサムは男が悪霊ではないと信じようとするが、男はイサムの前で爪がとがり、指が節くれ立ち、赤いまなこに変わっていく。祈祷師のイルグァンがジョングの家に現れ、血まみれの家族と座り込んで茫然自失となっているジョングを写真に収め、立ち去る。ジョングは力なくヒョジンの名を呼び続けるのだった。

序盤、鹿を生のまま食らう、赤いまなこの姿の日本人が現れ、それが人の噂だったりジョングの夢だったりするので、ホラー映画なのかそうではないのかよく分からないまま話が進むが、どうやら悪魔憑きの話だった。少女のヒョジンが凶暴になり、乱暴に食べ物を掻き込んだり祈祷に苦しんだりする様子は、「エクソシスト」(1973)を彷彿とさせる迫力。ただ、國村隼演じる日本人が悪霊だったというのであれば、ジョングたちに追われて逃げ惑ったりするのは何故なんだろう、とか、腑に落ちないところがあり、謎を引き延ばすためのご都合主義も垣間見えた。残酷な映像に迫力があるのは韓国らしいところ。

【5段階評価】3

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2025年7月19日 (土)

(3103) 翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~

【監督】武内英樹
【出演】GACKT、杏、片岡愛之助、二階堂ふみ、藤原紀香、朝日奈央、和久井映見、アキラ100%、加藤諒、川崎麻世
【制作】2023年、日本

全国大阪植民地化計画を阻止するために戦う埼玉県人たちを描いたコメディ作品。「翔んで埼玉」(2019)の続編。魔夜峰央(まやみねお)の漫画が原作。

妊娠中の若月依希(いの)(朝日奈央)は、父親の内田智治(アキラ100%)、母親の直子(和久井映見)とカーラジオで埼玉県人の歴史を伝えるラジオを聞いていた。埼玉県人の麻実麗(あさみれい)(GACKT)は、埼玉に海を作るため、和歌山県白浜に砂を取りに行く。大勢を乗せた船は難破し、麗は白浜に打ち上げられ、滋賀解放戦線のリーダー、桔梗魁(杏)に発見される。白浜は大阪に支配されており、滋賀、奈良、和歌山の県人は虐げられていた。大阪府知事の嘉祥寺晃(片岡千恵蔵)は粉物で人々を大阪人化させるという全国大阪植民地化計画を実行しようとしていた。麗は幼い頃、滋賀で育っており、母親は滋賀解放戦線の初代リーダー(高橋メアリージュン)だった。麗は大阪の野望を阻止するため、淀川に流れる琵琶湖の水をせき止め、粉もんの原料となる粉の実を枯らす作戦を実行。嘉祥寺の野望は打ち砕かれる。こうして埼玉にビーチが作られたのだった。
内田智治は、埼玉県の綱引き大会で、大宮と浦和の対立を防ぐため、綱引きの綱をペットボトルを使った収斂火災で焼き切り、引き分けに持ち込む。県知事(村田雄浩)は事なきを得て喜ぶのだった。

ローカルネタをふんだんに取り入れたコメディ。いろいろ手回しもしたようだが、媚びない突き抜けた地方いじりが面白い。自分は東京も大阪も暮らした経験があり、本ブログ執筆時点では東京と大阪の二拠点生活でもあり、埼玉や千葉だけでなく、滋賀や和歌山、奈良、京都、神戸のいじりもピンと来るので、かなり面白かった。一方で、滋賀県人たちが、全国を救うために自分たちが水没の犠牲になっても琵琶湖の水をせき止めようと一致団結するシーンでは、コメディなのに目頭が熱くなってしまった。続編が前作より面白いという、珍しい作品。

【5段階評価】4

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2025年7月18日 (金)

(3102) 演じる女

【監督】照屋年之
【出演】満島ひかり、品川徹、普久原明、上田真弓、比嘉恭平、喜舎場泉
【制作】2021年、日本

死にゆく老人と若い女性のやりとりを描いた作品。18分の短編映画。

病院で、車椅子に乗る老人(品川徹)に、背後の男性、宮城政人(普久原明)が、「社長、奥様来られました」と声をかける。明るい衣装に身を包んだ若く美しい女性(満島ひかり)が現れると、老人は「よしこ」と嬉しそうに手を伸ばす。背後の男と看護師(上田真弓)は悲しそうにそれを見ている。若い女性は自転車で走り、それを老人は車椅子を押してもらって女性を追いかける。女性は、「祝 ご結婚おめでとう」と書いた横断幕で記念写真を撮ったり、浜辺でパラソルに隠れておどけたりして、老人を喜ばせる。女性はそれを繰り返し、喜んでいた老人は次第に生気を失っていく。
看護師は「今晩持つかどうかだと思います」と女性に告げる。女性は一度帰宅し、着替えると、老人の病室のある2階の窓までクレーンで吊り上げてもらい、老人に沖縄民謡を歌う。女性は老人の娘、こはるだった。死期の近い父親に、彼が妻と結婚して楽しかった頃の思い出のシーンを、再現して見せていたのだった。こはるが涙をこらえながら歌う歌を聴きながら、老人はベッドの上で息を引き取る。こはるは、父と母の思い出のアルバムを眺め、父親の遺影を母の写真の横に置くのだった。

死にかけの老人に似つかわしくない若い女性が奥様として現れる。若い女性の目的は何なのか。ちょっとした謎解き要素のある作品。最初に登場する男女と子どもの写真で、堂々と種明かしをしているのが心憎かった。老人ははじめ、娘を妻だと思って喜んでいるのだが、最後の歌のシーンでは、恐らく老人は、歌っているのが娘だと気づいていたのではないか。そんなことを思わせる仕上がりになっていた。

【5段階評価】3

 

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2025年7月17日 (木)

(3101) NAGISA

【監督】照屋年之
【出演】江口のりこ、新井美羽、北川彩子、上田真弓、当山(とうやま)彰一
【制作】2017年、日本

自殺を図った女性と天真爛漫な少女とのやりとりを描いた作品。20分の短編映画。

望まれぬ子を妊娠して中絶した女性(江口のりこ)が、自殺を考える。帰宅すると母親(北川彩子)は何も聞かずに彼女の好きなカレーを振る舞うが、女性はカレーをテーブルから突き飛ばす。女性は島で海に身を投げるが、気がつくと砂浜に倒れていた。天真爛漫な少女(新井美羽)が女性を助けたのだ。少女は命を粗末にしようとする女性に考え直せと偉そうに話し、後ろ向きなことを言う女性を容赦なく蹴り倒す。少女は女性を荷台に乗せ、なぎさ号と書いた旗を立てた自転車で彼女を引っ張り始める。少女は女性に名前を聞くが、女性は答えない。少女はなぎさと名乗り、名前の通り海が好きで、名前通りになるから人間の名前は不思議だ、と明るく話す。なぎさは自転車で村を回りながら友人を紹介し始める。彼女の友人は中高年ばかりで、彼女が話しかけても彼らは反応しない。どこか様子がおかしい。日が暮れ、二人は砂浜に戻る。なぎさは女性に明るく話しかけ続けるが、気持ちが塞いでいる女性はなぎさに鬱陶しいと叫ぶ。少女の顔が悲しみで歪み、女性に砂浜の砂を投げつけて泣きじゃくる。
女性は一人、暗くなった島の中を歩く。とある民家の前に、なぎさが乗っていた自転車があった。自転車は古びて壊れており、花や蝋燭が供えられていた。女性がその家に入ると、母親(上田真弓)が出迎える。家の中には、なぎさの遺影があり、島の人たちが集まっていた。なぎさは1年前に不治の病で亡くなっていた。なぎさは近所の人たちを助けて回る少女だったが病気にかかり、5年もたないと言われたのに10年も生き、海で泳ぐのをずっと楽しみにしていたのだと言う。それを聞いて、女性はなぎさにしたことを悔い、嗚咽する。
女性が砂浜に戻ると、笑顔の少女がいた。女性は「私の名前、恵まれるって書いて恵(めぐみ)って言うの。恵まれてたの私」と言って、泣きながらなぎさに謝り、ありがとうと伝える。なぎさは満面の笑みでうなづく。恵は母親に電話し、「今から帰るね、今日、カレーが食べたい」と伝える。母親は優しい声で「そうだろうなと思った」と答えるのだった。

短編としては出色の出来。途中で、「ああ、このなぎさという子はすでにこの世にいないのだな」と察しは付くのだが、最後に女性が名前を伝える伏線回収が素晴らしく、胸が震えた。短編映画の持つ力を存分に感じられる作品。

【5段階評価】5

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2025年7月16日 (水)

(3100) 選ばれた男

【監督】ゴリ
【出演】陳彦達、比嘉梨乃(ひがりの)、伊波雅美、ゴリ
【制作】2017年、日本

メッセージボトルを拾った男の顛末を描いたコメディ。20分の短編映画。

ヒカルという女性が書いたメッセージ入りボトルを拾った台湾の男性、チョウ(陳彦達)が、その女性に会いに石垣島にやって来る。自転車に乗った男(ゴリ)に出会った彼は、二人で天文台のショーを見学。そこに、ヒカルと呼ばれた車椅子のかわいい女性(比嘉梨乃)が現れ、チョウは驚く。自転車の男は、メッセージボトルの話を聞き、ボトルを横取りしようとするが、チョウはそれを取り返し、自ら車椅子の女性に、自分がボトルを拾ったと告白。女性は車椅子から思わず立ち上がって驚く。女性は、付き添っていた太った姉に、「よかったね、ヒカル姉ちゃん」と呼ぶ。ヒカルと呼ばれたのは車椅子の女性ではなく、車椅子を押していた姉の方だった。チョウは、太ったヒカルに抱かれ、悲しい表情で天を仰ぐのだった。

落ちは見え見えのコメディだったが、まあまあ楽しい内容だった。

【5段階評価】3

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2025年7月15日 (火)

(3099) born、bone、墓音

【監督】ゴリ
【出演】ゴリ、佐藤仁美、具志堅あずさ、古謝(こじゃ)美佐子、山城智二(ともじ)、伊波雅美、福田加奈子
【制作】2016年、日本

粟国島(あぐにじま)で今も残る洗骨の風習を描いた作品。25分の短編映画。

与那城等(ゴリ)は妻の優子(佐藤仁美)と彼女の連れ子の花子を地元に連れてくる。優子は亡くなった祖父の骨を洗うために呼んだと知り、激怒する。等の独身の兄、勝(山城智二)は、洗骨に参加しそうにない優子を罵倒する。等の母、知子(古謝美佐子)は、夫が亡くなってから口がきけなくなっていた。
洗骨の日、花子は見に行くと言い、優子も付いていくことにする。棺桶を取り出し、蓋を開ける瞬間、花子は悲鳴を上げて逃げ出すが、やがて戻ってくる。棺桶の中には骨だけになった遺体が横たわっていた。等と勝は、霊媒師的存在のカメおばの導きで、知人の安里多枝子(伊波雅美)も手伝い、洗骨を始める。逃げていた花子が戻ってきて、骨に水をかけて洗骨を手伝い始める。優子も遺骨を手に取り、洗骨に加わる。洗骨が終わると、勝は優子に優しく声をかけ、等とぎこちない関係だった花子が、等と手を繋ぐ。それを見ていた知子は、声が出るようになり、みんなは喜ぶのだった。

洗骨に優子が加わるシーンは感動的。あまりよけいなものを描きすぎず、短編の中ではかなりいい作品だった。

【5段階評価】4

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2025年7月14日 (月)

(3098) やんばる キョ!キョ!キョ!

【監督】ゴリ
【出演】普久原一生、照屋まさお、普久原明、金城奈津希、石川彩楓、福田加奈子、かでかるさとし、城間やよい
【制作】2015年、日本

ヤンバルクイナの保護活動をしている少年の活躍を描いた作品。38分の短編映画。

国頭村(くにがみそん)でリポーターのジャネット宮城(ロドリゲス)が、ヤンバルクイナの密猟を取材している。ヤンバルクイナの保護活動をしている少年、マナブ(普久原一生)、ユウナ(金城奈津希)、ハナ(石原彩楓)たちを東京の雑誌ライター(秋山ひとみ)とカメラマン(どさんこ室田)が取材に来る。しかし、彼らはヤンバルクイナを盗みに来たのだった。それに気づいたマナブは彼らの犯行を防ぐ。
マナブの祖父(照屋まさお)は国頭村長だが、頭を打って5歳児の記憶になっており、期日までに元に戻らないと真栄田康弘副村長(普久原明)が村長に繰り上がることになっていた。期日を迎え、村長交代となりかけるが、村長が再度頭を打って記憶を取り戻す。村長は村民と家族、特に妻(福田加奈子)に感謝の言葉を伝えるのだった。

沖縄を舞台に、地元俳優を起用した作品。ガレッジセールのゴリが監督をしている。作品としての質は低めで、素人の秀作に毛が生えた程度のできばえだった。

【5段階評価】2

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2025年7月13日 (日)

(3097) 四万十川

【監督】恩地日出夫
【出演】山田哲平、樋口可南子、小林薫、高橋かおり、小島幸子、石橋蓮司、菅井きん
【制作】1991年、日本

四万十川沿いの貧しい家で暮らす少年の生きる姿を描いた作品。笹山久三(きゅうぞう)の小説が原作。

四万十川沿いで小さな食料品店、山本商店を営む山本家。その次男、小学5年生の篤義(あつよし)(山田哲平)は、貧しい家を支えるため、兄の和夫と四万十川で鰻を捕り、生計の一部を担っている。母のスミ(樋口可南子)は山本商店の仕入れと経営に汗を流し、出稼ぎに出ている父親の秀男(小林薫)は、足に大けがをして入院する。長女の朝子(高橋かおり)は、家にいてほしいという母親の願いとは裏腹に、家を出て就職しようとしていた。
大人しい性格の篤義は、同級生の千代子(小島幸子)が「塩飯(しおめし)」といじめっ子たちにからかわれてもなにもできずにおり、和夫や朝子はそんな篤義の勇気のなさを責める。篤義は勇気を振り絞って、千代子をいじめる俊博に喧嘩を挑み、俊博は鼻血を出すが、駆け込んできた担任の青木先生(石橋蓮司)は、一方的に篤義を悪者と決めつける。千代子は篤義に感謝しつつ、やがて親の事情で転校する。
父親の秀男が退院して家に戻ってくる。秀男は家を出たいという朝子の気持ちを理解しつつも、朝子の出発の日には涙を流す。篤義は、家を出て行く朝子と喧嘩していたが、友だちの太一に誘われ、朝子を見送る。太一は、両親と離れて、祖母のハル(菅井きん)と暮らしていたが、ついに両親のもとに移ることになる。篤義が太一の家に行くと、太一はすでにいなかった。家に一人でいたハルは、喜んでいたはずの太一は、出発の日になると、いい子でいるから婆ちゃんとここで暮らしたいと泣いていた、と言って涙を流す。
台風十五号が上陸して四万十川は氾濫し、山本商店は大きな被害を受ける。スミは商店の再生に向けて動き出し、秀男も出稼ぎに出ることにする。篤義は秀男を駅まで見送る。四万十川は、人力から機械浚渫に砂利取りの様子を変えながらも、住民の暮らしを見守るように流れ続けるのだった。

篤義の半生を描くような作品かと思ったら、小学生時代のみを切り取った内容だった。笹山久三の自伝的小説ということで、劇的な展開というよりは、当時の貧しい村民の暮らしを、いくつかの小学校時代のエピソードとともに、素朴に描く作品だった。主要な登場人物も小学生が中心で、大人の事情は、子どもたちが貧乏に耐えざるを得ない状況を説明する程度の描写に抑えられているのも特徴的だった。

【5段階評価】3

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2025年7月12日 (土)

(3096) アイガー・サンクション

【監督】クリント・イーストウッド
【出演】クリント・イーストウッド、ジョージ・ケネディ、ボネッタ・マッギー、ジャック・キャシディ、セイヤー・デビッド
【制作】1975年、アメリカ

仲間を殺した暗殺者に制裁を加えるため、アイガー北壁に挑む男を描いたスパイアクション映画。

チューリッヒで、スパイ組織の男が殺される。美術の大学教授ジョナサン・ヘムロック(クリント・イーストウッド)は、スパイ組織のドラゴン(セイヤー・デビッド)から、2万ドルと、彼の持つ絵画コレクションの課税対象外の証明書を報酬に、仲間を殺した暗殺者2名に制裁を加える任務を受ける。チューリッヒで一人目の暗殺者ガルシア・クルーガーを片付けたジョナサンは、帰国の便の中で、客室乗務員のジェマイマ(ボネッタ・マッギー)に話しかけられ、到着地で彼女と一夜を明かすが、朝目覚めると、がなくなっていた。ジェマイマは、ドラゴンの部下だった。
再びドラゴンのもとに呼ばれたジョナサンは、殺されたのが、ジョナサンの命の恩人、アンリ・バックであると知らされる。もう一人の暗殺者は片方の足を引きずる優れた登山家で、この夏にアイガー北壁に挑むということだった。今年はアメリカ、ドイツ、フランス、オーストリアのメンバーからなる国際チーム1組だけが登ると言う。ヘムロックは負傷したアメリカメンバーの代わりに国際チームに参加し、アメリカメンバー以外の中にいる暗殺者の情報を得て、その者に制裁を加えることになる。かつて戦友でありながらジョナサンを裏切り敵と通じていたマイルス・メロー(ジャック・キャシディ)も事件に絡んでいるということだった。
ジョナサンは、旧友で登山の師匠でもあるベン・ボウマン(ジョージ・ケネディ)とアリゾナで再会。彼は基地主任として国際チームに参加することになっており、過酷な練習でジョナサンを鍛える。アリゾナにマイルズが現れ、ジョナサンを狙うが、ジョナサンはマイルズを捕らえ、砂漠の真ん中に置き去りにし、彼への恨みを晴らす。
ジョナサンはベンとスイスに渡り、フランスのジャン・ポール・モンテーン(ジャン=ピエール・ベルナルド)と妻のアンナ(ハイディ・ブルール)、ドイツのカール・フライタグ(ライナー・ショーン)、オーストリアのアンドレ・マイヤー(マイケル・グリム)と合流する。結局、組織から誰が暗殺者かの情報がないまま、ジョナサンはアイガー北壁に挑むことになる。途中で落石によりジャンが頭部を打ち、滑落は逃れるものの、翌朝に死亡。残った三人はジャンの死体とともに中腹のトンネルの入り口を目指して下山することにする。下から望遠鏡で様子を見ていたベンは、トンネル入り口で三人を待ち構える。ところが、マイヤーもフライタグも滑落してしまい、ジョナサンだけがトンネル入り口の手前で宙吊りの状態になる。ベンがジョナサンに命綱を投げ渡すが、彼は片足を引きずっていた。ベンがもう一人の暗殺者だったのだ。ベンは、ジョンに命綱を投げ渡し、それを体に巻き付け、ぶら下がっている方の綱を切れとジョナサンに命じる。ベンが暗殺者だと知ったジョナサンだったが、ベンを信じて綱を切る。ベンは周囲の仲間とともに必死でジョナサンをトンネルに引き上げる。
帰りのトンネル列車の中で、ベンは、麻薬依存症になった娘ジョージ(ブレンダ・ビーナス)の件でマイルスの世話になったため、バックからマイクロフィルムを奪う企みに加わったが、クルーガーがバックを殺してしまったのだと説明する。ドラゴンは、国際チームの三人が死んだことに満足しており、ジョナサンは真相を闇に葬り、ベンとまた登山しようと話す。ふもとでジョナサンを待っていたジェマイマは、ジョナサンに、三人をわざと殺したのか尋ねるが、ジョナサンは答えないのだった。

スパイものにしては、物語の脇が甘く、必然性の薄い戦いや色仕掛けが目立った。いろんな派手な映像をてんこ盛りにした結果、収拾が付かなくなったような内容。登山ものは、意外と退屈になりがちで、本作もその感がなくはなかったが、CGや特撮技術が乏しい時代に、これだけの作品を世に出したのは立派と言えるだろう。

【5段階評価】3

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2025年7月11日 (金)

(3095) ハロルドとモード/少年は虹を渡る

【監督】ハル・アシュビー
【出演】バッド・コート、ルース・ゴードン、ビビアン・ピックレス、チャールズ・タイナー
【制作】1971年、アメリカ

自殺の狂言癖のある少年と、個性的な老婆の出会いと恋を描いた作品。

裕福な家庭で暮らすハロルド・チェイセン(バッド・コート)は母親(ビビアン・ピックレス)と暮らす19歳の少年。彼は母親の前で自殺のふりをする癖があり、好きなことは葬儀に行くこと。ハロルドの母親は、ハロルドをまともな人物にしようと、カウンセリングに通わせたり、軍人のビクター伯父さん(チャールズ・タイナー)に会わせたり、若い女性を家に招いて見合いをさせたりするが、ハロルドの奇行が治ることはない。
中古車屋で霊柩車を手に入れたハロルドは、知らない人の葬儀に繰り返し出席。彼は教会で、80歳間近の老女、モードことデイム・マジョリー・シャルダン(ルース・ゴードン)に声をかけられる。モードは他人の車に勝手に乗ったり、高速道路の料金所を突っ切って、追いかけてきた白バイを振り回した挙げ句、白バイに乗って逃げてしまうような個性的な人物で、ハロルドは彼女に興味を示す。二人は同じ時間を過ごすようになり、ハロルドは、母親のお膳立てした3人の若い女性よりも、モードに惹かれていく。ついにハロルドはモードと一夜を過ごす。
モードの80歳の誕生日を迎え、ハロルドは母親にモードと結婚すると伝えると、モードの家で彼女の誕生日を祝う。モードはハロルドのもてなしに喜びながらも突然、想像以上に素敵なお別れになりそう、と告げる。モードは今日を最期の日にしようと1時間前に服毒していたのだ。驚いたハロルドは慌ててモードを病院に運ぶが、手当の甲斐なく、モードは他界する。ハロルドは、霊柩車型に改造したジャガーをぶっ飛ばし、ジャガーは崖から転落。しかし、ハロルドはジャガーに乗っておらず、崖の上で、モードにもらったバンジョーを弾き、陽気に踊りながら引き返していくのだった。

邦画でも時々見るような、不条理な展開を織り交ぜた内容。ハロルドの奇行は強烈で、あまり付いていけるものではないが、年齢を超えた永遠の愛を映画として形にすると、例えばこうなるよね、という作品だった。

【5段階評価】3

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