2025年5月12日 (月)

(3035) エディット・ピアフ 愛の讃歌

【監督】オリビエ・ダアン
【出演】マリオン・コティヤール、ジャン=ピエール・マルタンス、シルビー・テステュー、ジェラール・ドパルデュー、マルク・バルベ
【制作】2007年、フランス、イギリス、チェコ

シャンソン歌手の生涯を綴った伝記映画。シャンソン歌手、エディット・ピアフ(マリオン・コティヤール)の生涯を、時代を交錯させながら描いている。マリオン・コティヤールがアカデミー主演女優賞を受賞した。

晩年のエディット・ピアフは舞台で倒れるなど、健康を害していた。子どもの頃、幼いエディット(マノン・シュバリエ)は、大道芸人の父親(ジャン=ポール・ルーブ)に引き取られ、娼館に預けられて育つ。エディットは娼婦のティティーヌ(エマニュエル・セニエ)に、実の子のようにかわいがられるが、戦地から戻った父に引き取られる。一度は父親とサーカス団で暮らすが、父親がサーカス団を去り、大道芸人暮らしとなる。父親の大道芸の場つなぎにエディット(ポリーヌ・ビュルレ)が歌を歌うと、人々は拍手喝采。彼女の天性の素質が開花する。道ばたで歌を歌う20歳のエディットは、ナイトクラブのオーナー、ルイ・ルプレ(ジェラール・ドパルデュー)の目に止まり、クラブデビューを果たす。ルイ・ルプレはエディットに、雀を意味するピアフと名付ける。時の人となるエディットだったが、ルイ・ルプレが何者かに殺され、エディットは犯人扱いされる。作曲家のレイモン(マルク・バルベ)は落ち目のエディットを厳しく指導し、そのお陰でエディットは見事な復活を遂げる。
エディットはプロボクサーのマルセル(ジャン=ピエール・マルタンス)と恋に落ちる。マルセルは妻子持ちだったが、エディットはマルセルなしでは生きられないほど彼を愛する。マルセルは世界チャンピオンに上り詰めるが、飛行機事故に遭い、死亡。エディット自身も自動車事故を経験し、薬物依存度が増していく。死亡前夜、舞台で歌を披露することができず、ベッドに担ぎ込まれたエディットは、若い頃に産んだ娘マルセルを失った記憶を思い出す。後年、後悔などしないと歌う名曲に出会ったエディットは、体はボロボロになりながらも見事な歌唱を披露するのだった。

マリオン・コティヤールによる、40代にして老婆のようなエディット・ピアフの怪演が特徴的。受け狙いかのような細い眉毛の線と縮れ毛。歌はマリオン本人ではないだろうが、口パクとは思えない自然な演技だった。時代を交錯させながら描くのは、映画ではよくある手法。物語が分かりにくくなることがあるが、本作はそうでもなく、エディット・ピアフ本人への興味をかき立てるのに十分な内容だった。なんで突然ボクサーと恋に落ちるの、というのは、映画としては不思議だったが、伝記だからしかたがないのだった。

【5段階評価】3

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2025年5月11日 (日)

(3034) インファナル・アフェアII 無間序曲

【監督】アンドリュー・ラウ、アラン・マック
【出演】ショーン・ユー、アンソニー・ウォン、フランシス・ン、エリック・ツァン、カリーナ・ラウ、エディソン・チャン
【制作】2003年、香港

マフィアと警察の攻防を描いた作品。「インファナル・アフェア」(2002)の次作であり、その前日譚。次作は「インファナル・アフェアIII 終極無間」(2003)。

香港マフィアのボス、クワン(チェン・タンチョー)が、サングラスをした若者、ラウ(エディソン・チャン)に殺される。ラウとクワン殺害を共謀したのは、クワンの下部組織を束ねるサム(エリック・ツァン)の妻マリー(カリーナ・ラウ)だった。ラウはマリーに恋い焦がれており、「サムがラウを警察に潜入させたいと言っている」とマリーに言われ、警察学校に入ることを決意。警察学校で警察官を目指すヤン(ショーン・ユー)は、殺されたクワンが実の父であることが警察に判明し、警察学校を首になる。マフィアの一掃を目指すウォン警部(アンソニー・ウォン)は、ヤンを潜伏警察官として、クワンの跡を継いだハウ(フランシス・ン)の組織に潜入させる。
ハウとヤンは異母兄弟の関係であり、ハウはヤンを重用する。ハウは強引に組織をまとめ上げるが、ヤンの情報により、取引現場を押さえられ、警察に連行される。しかし、彼の鞄に入っていたのは、一本のビデオテープ。そこにはウォン警部がサムの妻マリーと接触し、ウォン警部がマリーにクワン殺害を指示した映像が記録されていた。ハウは組織をまとめ上げるため、抵抗派の幹部を次々と殺害させていた。腹心のロ・ガイ(ロイ・チョン)も警察のスパイであることを知り、ヤンの目の前で自ら殺害する。クワン殺害に関わったウォン警部は、車に爆弾を仕掛けられるが、ウォン警部の同僚のルク警視(フー・ジュン)が、車の運転を代わろうとしたため死亡。サムを心配して空港に向かったマリーも、ハウの部下に車でひき殺される。
香港返還による体制変更が迫る中、警察幹部はウォン警部の一件を不問に処し、彼に引き続きハウ逮捕の陣頭指揮を執らせる。ウォン警部は、これまで通じ合ってきたサムに、ハウの悪事の証言をさせることにする。それを知ったハウは、タイにいるサムの家族を拘束し、サムを呼び出してサムを脅すが、サムは先を読んでおり、タイの仲間を使って家族の安全を確保するとともに、ハワイに逃げていたハウの家族を拘束。立場が逆転して狼狽するハウのもとに、ウォン警部がラウを含む部下を連れて現れ、ハウの一味を取り囲む。ハウはサムに銃を突き付けるが、ウォン警部がハウの眉間を撃ち抜く。倒れ込むハウをヤンが抱える。ハウはヤンの胸元に盗聴器があることに気づき、彼がスパイだったと悟るが、そのまま息を引き取る。サムがマフィアのボスにのし上がり、ヤンは引き続きサムの腹心として、潜伏捜査を続ける。ラウもまた、警察官として警察に潜伏することになるのだった。

筋書きは、始めは分かりづらかったが、よくできていた。前作の前日譚ということを知らずに観たのと、前作を観てからかなり時間が経ってからの鑑賞だったので、前作とは別設定の潜伏劇だと思ってしまった。前作と共通する俳優、登場人物もいるので、続けて観た方が断然いいだろう。3作目もあるが、自動録画されていなかったので、観るのはだいぶ先になりそうなのが残念。この辺は自動録画鑑賞の辛いところ。

【5段階評価】4

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2025年5月10日 (土)

(3033) 猫なんかよんでもこない。

【監督】山本透
【出演】風間俊介、松岡茉優、市川実日子、つるの剛士、矢柴俊博
【制作】2015年、日本

2匹の捨て猫と暮らす男の暮らしを描いた作品。杉作の漫画が原作。

プロボクサーを目指している杉田ミツオ(風間俊介)は、漫画家の兄貴(つるの剛士)のアパートに居候。ある日、兄貴が2匹の捨て猫を家に連れ帰ってきて、ミツオに世話を任せる。兄貴はオスの黒猫にクロ、白黒のメスにチンと名付ける。ミツオはしぶしぶ2匹を育てる。ミツオはA級ライセンスをかけた試合に勝利し、日本ランカーとなって世界に挑戦する権利を手に入れるが、その試合で網膜裂孔になり、プロボクサーの道を断たれてしまう。兄貴は結婚を機に家を出て行き、アパートにはミツオと猫2匹が残される。
無職状態のミツオは、幼稚園の給食のバイトを始める。そこには、ある日公園で、ミツオに猫の避妊と去勢を勧めてきた女性(松岡茉優)が働いていた。彼女は管理栄養士のウメさんだった。ミツオはチンに避妊手術をしたが、その日から行動的だったチンが大人しくなり、他の猫に相手にされなくなってしまったことで、罪の意識に駆られる。それもあってミツオはクロを去勢せず、次第に外に出るようになったクロは地域のボスにのし上がるが、他の猫との喧嘩が原因で猫エイズにかかり、まもなく死んでしまう。ボクシング漫画を懸賞に応募しては落ち続けていたミツオは、クロとの思い出を漫画にして応募する。夕方、チンと熟睡しているミツオのもとに、出版社からの電話が入るのだった。

なんてことはない物語だが、ちょっとした感動が味わえる作品。猫の様子が自然で、行き当たりばったりなのか、バッチリ演技しているのか、不思議だった。

【5段階評価】3

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2025年5月 9日 (金)

(3032) 世界でいちばん長い写真

【監督】草野翔吾
【出演】高杉真宙(まひろ)、松本穂香(ほのか)、武田梨奈、前原滉(こう)、田村杏太郎(きょうたろう)、黒崎レイナ、水野勝、吉沢悠
【制作】2018年、日本

高校の思い出に世界一長い写真を撮ろうと奮闘する高校生を描いた青春映画。

序盤は純白のドレスに身を包んだ女性(武田梨奈)に会う青年(高杉真宙)が登場。この二人の関係は何なんだろう、というところから物語が始まる。序盤、新郎新婦に思えた二人は、従弟の関係。高校時代、序盤に登場した彼、写真部の内藤宏伸(ひろのぶ)はクラスで目立たない存在で、部長の三好奈々恵(松本穂香)に馬鹿にされる日々。ある日、宏伸の従姉でアンティークショップを営む竹中温子(武田梨奈)に荷物運搬の手伝いを強制される。彼はそこで、アンティークなカメラを発見。カメラ店の宮下賢一(吉沢悠)に見てもらうと、それは水平に回転しながら3360度を撮影できるパノラマカメラであることが分かる。宏伸は、温子の紹介で、小出智也(水野勝)のヒマワリ畑で360度のヒマワリ畑の撮影に挑戦。見事な写真ができあがる。それがきっかけで、宏伸は一方的に片思いしていたクラスのマドンナ、安藤レイカ(黒崎レイナ)と親しくなる。
宏伸は、このカメラは360度だけではなく、カメラを水平に13回転半させながら撮影を続けることで、世界一長い写真を撮ることができることを知る。引っ込み思案だった宏伸が奈々恵やレイカたちとクラスを説得し、高校生活の思い出に写真撮影に挑戦する。校庭に集まった仲間たちは、宏伸の構えるカメラを中心として輪を作り、次々とポーズを変えながら、写真撮影を敢行する。
時が戻って現代。新婦の温子と宮下賢一との披露宴で、宏伸は披露宴の様子をパノラマカメラに収める。そこには、カメラの仕事を続ける奈々恵もいた。後日、学校で再会した宏伸と奈々恵は、今もカメラを続けていることを話し合う。宏伸は、パノラマ写真を披露した文化祭の最終日のことを思い出すのだった。

タイトルは意味深長だが、文字通り、物理的に横に長い写真の話だった。従姉の温子、クラスメイトの奈々恵という、二人の美女を中心に物語が進む。もう一人の美少女レイカは、最終的に医学部に合格したクラスメイト(前原瑞樹)になびき、温子はカメラ店の賢一と結婚。奈々恵は、レイカと親しくなる宏伸に焼き餅を焼いたり、文化祭最終日に花飾りを宏伸の背中に貼り付けたり、実は宏伸を気にしていたことをほのめかしつつも、奈々恵と宏伸が最終的にどうなったかは描かれない。薄着が多い温子にメロメロになる館沼淳(前原滉)の一方的な片思いなども交え、ほろ苦く楽しい青春を描いたさわやかな作品だった。

【5段階評価】4

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2025年5月 8日 (木)

(3031) 火天の城

【監督】【出演】西田敏行【制作】

安土城築城の総棟梁となった男の奮闘ぶりを描いた時代劇映画。

織田信長(椎名桔平)に命じられた(西田敏行)。

中盤までは普通に面白いのだが、それ以降、急にお涙ちょうだいの安っぽい展開になった。妻が死ぬところまではともかく、女が実は間者で彼女を愛していた熊蔵が殺されるところは、やりすぎ。また、太い柱をみんなで引っ張り上げるシーンも、縄には体重以上の力は働いていないので、手から血を流して引っ張る必要が実はなく、ひもを伸ばして足でもかけて全体重を乗せればいいだけ。それでも、調整が成功したところは感動的だった。

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2025年5月 7日 (水)

(3030) 虹をつかむ男

【監督】山田洋次
【出演】西田敏行、吉岡秀隆、田中裕子、田中邦衛、笹野高史、柳沢慎吾、すまけい、松金よね子、倍賞千恵子、前田吟
【制作】1996年、日本

家出をした若者と、古い映画館を営む男性との交流を描いた、映画愛あふれる作品。

就職活動に落ちこぼれた若者、平山亮(りょう)(吉岡秀隆)は、父親(前田吟)と喧嘩して家出。徳島の光町の古い映画館オデオン座の社長、白銀活男(しろがねかつお)(西田敏行)と出会い、彼の元で働くことにする。活男は、映画愛は強いが経営には無頓着で、オデオン座は慢性的な経営不振。それでも活男とオデオン座は地元民に愛されていた。亮は安月給に不満ながらも、活男の人柄に惚れ、映画館勤めを続ける。
活男は幼なじみの十成(となり)八重子(田中裕子)に好意を寄せていたが、本人はそのことを表に出さない。しかし、映写技師の常さん(田中邦衛)や周囲の人には活男の片思いはお見通しだった。八重子は結婚経験があったが、夫を病気で失っていた。八重子の父(高原駿雄)が亡くなり、八重子は、前の夫と同じ会社に勤める服部という男との再婚を決める。八重子にアプローチを続けていた活男は、そのことを八重子から聞かされ、ショックを隠して八重子を祝福する。八重子は、活男が自分を好きであることに気づいていた。八重子は、活男の思いに答えず別の男との結婚を決めたことを活男に謝り、涙する。
活男は、とうとう映画館をたたむ決意をするが、常さんが1,200万の貯金を活男に渡し、オデオン座は窮地を脱することになる。活男は、将来のある亮をあえて首にして実家に帰らせる。亮は実家から感謝の手紙を活男に送る。活男は満足げに手紙を読み終えると、映画館にふらっとやって来た男(上島竜兵)に、ここで働かないかと気安く声をかけるのだった。

映画館が舞台ということで、いくつかの映画の映像が実際に流れる。「トイレの花子さん」(1995)、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989)、「鞍馬天狗・天狗廻状」(1952)、「野菊の如き君なりき」(1955)、「かくも長き不在」(1961)、「雨に唄えば」(1952)、「禁じられた遊び」(1952)、「東京物語」(1953)、「男はつらいよ」(1969)。さすがに3,000本以上も映画を観ていると、半分以上は観たことがあるというのが、この手の趣味では結構楽しい。ラストは「男はつらいよ」(1969)に焦点が当たり、車寅次郎も、CG合成でちょこっと登場。思えば亮の父親は倍賞千恵子と前田吟だし、亮が通う職安には佐藤蛾次郎が現れるのだった。本作は、撮影直前に亡くなった渥美清を悼む形での制作だが、今回の放映は、これまた亡くなった西田敏行を悼んでのものだった。

【5段階評価】4

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2025年5月 6日 (火)

(3029) ラブ・アクチュアリー

【監督】リチャード・カーティス
【出演】ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、アラン・リックマン、ビル・ナイ、マルティン・マカッチョン、エマ・トンプソン
【制作】2003年、イギリス、アメリカ、フランス

夫婦や親子、恋人たちのクリスマスの愛を描いた群像劇コメディ作品。

登場するのは、イギリス首相のデビッド(ヒュー・グラント)と公邸のスタッフのナタリー(マルティン・マカッチョン)、妻を亡くしたダニエル(リーアム・ニーソン)と妻の連れ子サム(トーマス・サングスター)、サムの片思いの相手ジョアンナ(オリビア・オルソン)、撮影のラブシーンのリハーサルの代役(スタンドイン)を担当しているジョン(マーティン・フリーマン)とジュディ(ジョアンナ・ペイジ)、撮影スタッフのトニー(アブダル・サリス)、その友人でイギリスではもてないのでアメリカにナンパに行こうと考えるコリン(クリス・マーシャル)、新婚のジュリエット(キーラ・ナイトレイ)と新郎のピーター(キウェテル・イジョフォー)、ピーターの友人で実はジュリエットが好きなマーク(アンドリュー・リンカーン)、下品なロック歌手ビリー・マック(ビル・ナイ)とそのマネージャーのジョー(グレゴール・フィッシャー)、ダニエルの相談相手の女性カレン(エマ・トンプソン)、カレンの夫で会社社長のハリー(アラン・リックマン)、ハリーが恋愛を後押しする奥手の女性社員サラ(ローラ・リニー)、サラの好きな相手カール(ロドリゴ・サントロ)、ハリーを誘惑する女性ミア(ハイケ・マカチュ)、恋人(シエンナ・ギロリー)が弟と浮気していることを知ってコテージ暮らしを始めた作家ジェイミー(コリン・ファレル)と家政婦に来たオーレリア(ルシア・モニス)、などなど。それぞれがクリスマスにハッピーエンドを迎え、1ヶ月後に空港で多くの再会があるのだった。

主役級の有名俳優が多数登場する賑やかな作品。Mr.ビーンことローワン・アトキンソンもちょい役で出演しており、最後には「スターシップ・トゥルーパーズ」(1997)のデニス・リチャーズまで登場。アメリカでモテモテになるコリンや、オーレリアにプロポーズするジェイミー、ジョアンナに気に入られるサム、ナタリーの家を尋ね当てるデビッドなど、できすぎな展開もあるが、妻のカレンに浮気がバレるハリーや、ジュリエットに好きな気持ちを伝えて去るマークなど、ほろ苦い部分もあった。ベタだがジョアンナの歌のシーンや、ジェイミーのプロポーズのシーンは感動的。長いし登場人物が絡み合っているのでしっかり覚えていないと訳が分からなくなってくる部分はあるが、楽しい作品だ。

【5段階評価】4

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2025年5月 5日 (月)

(3028) ブルークリスマス

【監督】岡本喜八
【出演】勝野洋、竹下景子、仲代達矢、岡田英次、岡田裕介、小沢栄太郎、沖雅也、田中邦衛、大滝秀治、中条静夫、天本英世
【制作】1978年、日本

青い血を持つ者の出現に怯える人類の選択を描いたSF作品。タイトルからは想像のつかない異色作。

宇宙学者の兵藤光彦(岡田英次)が、UFOや宇宙人の存在を肯定する説を唱え、総スカンを食らうが、彼は何者かに拉致される。国営放送JBCの報道部員、南一矢(仲代達矢)は、大河ドラマの主演に抜擢された新人女優の高松夕子(新井晴美)と交際している芸能記者の木所(岡田裕介)から、夕子の血が青かったという話を聞かされる。南は一笑に付すが、世間ではUFOの目撃談や、青い血を持つ者の出現が噂されるようになる。南は、兵藤博士がアメリカにいるという噂の真相を確かめるため、ニューヨークで調査を進める。ようやく兵藤博士と対面できた南だったが、兵藤博士は何者かに拘束されてしまう。南は強制帰国させられ、上司(小沢栄太郎)から調査の中止を命じられる。パリ支局に飛ばされた南は、そこで兵藤博士を見かけるが、彼の頭にはロボトミー手術の跡があり、意志を奪われていた。
国防庁の職員、沖退介(勝野洋)は、特殊部隊に転属となり、青い血を持つ者を隔離する任務を負っていた。彼は理髪店に勤める西田冴子(竹下景子)と親しくなり、彼女の処女を奪うが、彼女の流した血は青かった。沖は彼女とともに田舎で暮らすことを決意する。しかし、沖には国防庁司令から、青い血を持つ者の抹殺を命じられる。沖の担当する対象敵性物は冴子だった。クリスマスイブの夜。家で沖を待つ冴子の前に沖が現れ、冴子は喜ぶが、沖は機関銃で冴子を銃撃。家を出ると、外で待ち構えた国防庁の陣営に銃を向けようとし、銃殺される。沖の流す赤い血に、冴子の青い血が流れ、混じり合うのだった。

人類の一部が青い血を持つようになるという、魅力的な設定を持ち込んでいるのだが、その設定を生かし切れておらず、有名俳優が続々と登場しているにもかかわらず、社会ドラマとしても、人間ドラマとしても、驚きや感動のない、消化不良な作品だった。国連を始めとする機関が、なぜ青い血の者は人間ではない恐怖の対象だという印象を人類に植え付けようとしているのか、よく分からないし、ヒトラーのユダヤ人虐殺にも重ねているようだったが、人類が過去の過ちを乗り越えて賢明な道を進んだわけでもなかった。南がパリで兵藤博士と偶然再会したり、沖の殺害対象が冴子だったり、ご都合主義なところもあった。公開当時25歳の竹下景子の可愛らしさは一見の価値あり。

【5段階評価】2

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2025年5月 4日 (日)

(3027) ナイト・オブ・フォーチュン

【監督】ラッセ・リスケル・ノアー
【出演】レイフ・アンドレー、イェンス・ヨルン・スポッテイグ、イェスパー・ローマン
【制作】2022年、デンマーク

遺体安置所で妻の遺体と対面することになった男を描いた作品。24分の短編映画。

老いた男カール・ベリストローム(レイフ・アンドレー)が、遺体安置所の係の者(イェスパー・ローマン)に連れられ、妻カレンの棺と対峙する。「もしかすると口が少し垂れていて肌が黄色いかもしれません」と言われ、カールは棺の蓋を開けることができず、トイレの個室に閉じこもる。すると隣から、紙をくれと言って男が壁の下の隙間から手を伸ばしてくる。カールはトイレットペーパーを引き出して男に渡す。男はトーベン(イェンス・ヨルン・スポッテイグ)と名乗り、妻イェッテの棺の蓋を一緒に開けてほしいとカールに頼む。カールは断り切れず、トーベンと二人で蓋を開ける。トーベンは遺体の女性(ボディル・ラッセン)を前に、謝罪をしたためた手紙を読み始める。すると、そこに大勢の遺族が係の者に連れられて入ってくる。その遺体はトーベンの妻ではなかった。後から来た男性(ディック・カイソ)の妻ロッテだった。カールとトーベンは、遺族たちとロッテを悼む。
カールはトーベンと別れ、再度、自分の妻の棺に対峙する。そこに係の者が現れ、トーベンはここの有名人で、3年前に妻を亡くしたが、ひどいボートの事故で遺体が見つからず、別れを告げられていないのだとカールに教える。カールは新米の係員セーレン(オリバー・デュー)から遺品を受け取り、棺の蓋を開けられないまま安置所を出る。外のベンチにはトーベンが座っていた。カールは迷いながらもトーベンに近づき、横に座る。二人は何となく笑い合う。カールはトーベンを連れて妻の棺の前に戻り、ようやく蓋を開けると、妻(マーギット・クリステンセン)の額に口づけをする。トーベンは、自分の妻が、そしてカールの妻も好きだったという歌、幸運の騎士(ナイト・オブ・フォーチュン)を口ずさむのだった。

何かとんでもないオチが待っているのかと思いながら観ていたが、そういうことはなく、妻を亡くした恰幅のよいおじさんたちのお話だった。映画らしいできばえだが、面白かったかというと微妙。

【5段階評価】2

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2025年5月 3日 (土)

(3026) 栄光への5000キロ

【監督】蔵原惟繕
【出演】石原裕次郎、浅丘ルリ子、ジャン=クロード・ドルオー、ロバート・A・キナラ、仲代達矢、エマニュエル・リバ、三船敏郎、伊丹十三
【制作】1969年、日本

過酷なラリーに挑戦するドライバーと、彼を待つ恋人を描いた作品。

日本人ドライバー、五代高行(たかゆき)(石原裕次郎)は、恋人の坂木優子(浅丘ルリ子)、ケニア人のジュマ・キンゴリー(ロバート・A・キナラ)、フランス人のピエール・ルデュック(ジャン=クロード・ドルオー)、その妻アンナ(エマニュエル・リバ)と、ジプシー・クルーというフリーランスのチームでラリーに参戦。五代は無理な走行で路上の落石を避けきれず、大事故を起こす。右こめかみに傷跡を残しつつも奇跡の復帰を遂げた五代は、日産のチームに参入し、日本グランプリに出場。UACに所属したピエールは五代の妨害役を命じられ、不満ながらもその役に徹し、グランプリはUACが優勝。五代は惜しくも2位となる。
五代を待ち続ける生き方に悩んでいた優子は、ファッションデザイナーのジャック・シャブロル(アラン・キュニー)と再会。ジャックはデザイナーの実力のある優子を誘う。優子は迷いながらもサファリラリーに出る五代と別れ、ジャックとパリに向かう。ラリーで重要な出発順の抽選で、五代は90番という不利な順番になる。ラリー本番の日。五代と、改めてナビゲーターに迎え入れられたジュマは、スタート地点に、パリにいるはずの優子が立っているのを見つける。
五代は驚異的な走りで順位を上げ、3番出発からトップになったピエールとの一騎打ちとなる。ところがピエールは、過去にもあった、路上に突然現れた鹿に衝突するアクシデントに見舞われ、リタイアを余儀なくされる。ライバルの脱落により、五代とジュマの車が優勝。五代は優子とホテルの部屋で抱き合うのだった。

3時間近い大作だが、終始退屈だった。レースの映像は、巧みなカメラワークで迫力があるのだが、レースの全体像がよく分からないので、結果をナレーションで知ることになり、抜きつ抜かれつのドキドキ感が薄い。全体的に音楽も暗かった。ようやくサファリラリーの後半から、五代とピエールの一騎打ちという分かりやすい構図になった。石原裕次郎の英語でのやりとりや、浅丘ルリ子のフランス語は見事だった。

【5段階評価】2

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