お笑い

2012年12月26日 (水)

THE MANZAI 2012 ~おめでとうハマカーン~

THE MANZAI 2012を観た。生では観られなくて、録画で、しかも、うっかりハマカーン優勝のニュースを知ってから観てしまった。

観る前は、ハマカーンのキレ芸には完全に飽きていたので、残る決勝進出が「千鳥」、「アルコ&ピース」と知って、「うわ、今年はツマンネ」と思っていたが、ハマカーンにはいい意味で裏切られた。そして、千鳥とアルコ&ピースは悪い意味で予想通りだった。
決勝戦でのハマカーンの優勝に関して言えば、ライバルのデキがひどすぎた。特にアルコ&ピースは、1本目が序盤の10数秒の意外性だけが笑いの要素というネタで、その後は終始つまらなかったのに、しかもテリー伊藤が賢明にも「次は使えないネタ」と宣告していたにもかかわらず、2本目に同じ展開のネタをかぶせて完全に客席が冷めた。司会の高島彩の笑顔も乾いていたし、矢部も完全にコメントに困っていた。
千鳥の2本目も、1本目と同じような、特異なキャラで笑わせるネタで、こちらも客席は半笑いだった。
どちらのコンビも、1本目の審査員の評価が高すぎて次もいけると思っちゃったのだとしたら、審査員が罪だったってこともあるかもしれない。ハマカーンの優勝は出順の勝利とも言われているようだが、アルコ&ピースと千鳥が優勝できる出順があったとは思えないのだった。

というわけで、ハマカーンは、消去法でも優勝だったが、決勝ネタは1本目と状況は似せつつもツッコミのパターンに変化を持たせ、決して消去法で勝ったとは言わせない、堂々の勝利だった。

■グループ別の感想

●Aグループ
このグループが最も神がかっていた。ハマカーンが勝ち残ったことに異論はないが、他の漫才師も相当おもしろかった。

○テンダラー
スピーディでよかったが、中盤からの仁義なき戦いネタは、昨年の天丼だったので、ちょっと後半、飽きてしまったのが残念。アネキ、ヨシキのところはしつこすぎてダレた。

○ウーマンラッシュアワー
高速のしゃべりと完成度の高いネタがウリだが、後半は早すぎて若干セリフが聞き取りづらかったのと、アドリブの効かない遊びのない芸風は、最近の漫才らしいと言えばそうなのだが、スキがない反面、観客の反応を無視して一気に進めるというスタイルになるので、玄人の審査員には評価されづらいという気がした。

○ハマカーン
オードリー同様、ボケとツッコミの役割交代が奏功。確かに思い返してみれば、浜谷のキレ芸に飽きたということ以上に、そもそも神田のツッコミにおもしろみがない、要するにツッコミがポンコツだったのだと気付かされる。神田の女子っぽさも、あまりクドいと観ている方は辟易とするが、一人称は俺だし、ツッコむところはツッコむので、嫌悪感はあまりなかった。欲を言えば、あんなになよなよしなくても成立するというか、男っぽいくせに「女子は」って言う方が面白いんじゃないのという気もした。これはもしかすると作戦というより、地が出ているだけなのかもしれない。

○オジンオズボーン
昔から好きなコンビ。今回のネタはアホすぎて、個人的にはかなり笑えたけれど、いわばダジャレの寄せ集めという、飲み会での一発芸的なネタなので、ワラテンの評価は高い反面、審査員受けが今ひとつというのは、ある意味、まっとうな評価だった。

●Bグループ
トレンディエンジェルが、ただの出落ちではない実力を見せて相当よかったが、千鳥がつまらないネタで決勝という、謎の力学が働いた。

○トレンディエンジェル
斉藤のバカっぷりが飛び抜けていて、相当よかった。「カイタイシンショッこれ出版しといてっ。バカヤロー」と「iPS細胞、あれはいったい、何の略なの?」「ふぇぇ?」「知らねぇじゃねぇかよ! 」は何度見ても笑える。ただ、後半の畳みかけるところで替え歌ネタというのは、超一流が競い合う場としては、ちょっと物足りなかった。とは言え、個人的にはBグループの中では最も新鮮だったし、決勝に残ってもらいたかったコンビだ。

○NON STYLE
ネタの進め方は相変わらずで、井上の仕切るような手つきも見慣れてしまっているのだが、今回は話を進めず石田が同じところでボケ続け、そのことに井上がキレるという展開。「ボケが多い! 」、「もう(観客)飽きてるて! 」というツッコミが新鮮だった。ただ、なぜか彼らに対しては、面白いけど勝ち上がってほしくない、何度も観たくないと思ってしまう。何が原因なんだろう。

○磁石
今回の出場者の中では最も期待していたコンビ。ボケの永沢の突き抜けたバカっぷりに、佐々木の歯切れのいいツッコみが快感。最近観ないなと思っていたら、解散を考えていたとのこと。ぜひ続けてほしい。残念だったのは、「ブスは待つ! 」で、客が「えぇぇぇ・・・」とあからさまに引いてしまったところ。去年、ナイツが「のり『ピーッ』」、「ドラマのヘロインとして」、「一つやらかした」と禁じ手に近い発言を畳みかけて爆笑を呼び込んだので、磁石も勝負にかけたのだろうが、あのドン引きでは審査員としても点を入れづらかっただろう。オール巨人師匠がしっかり救ってあげていたのが心憎かった。

○千鳥
ところどころ面白かったが、変なキャラを演じて笑わせるというのは、漫才というよりコントなので、そもそも気に入らなかった。しかもそんなに面白くはないので、なぜ彼らが予選1位なのか、はなはだ不可解。しかもBグループでも勝っちゃうし、訳が分からなかった。

●Cグループ
アルコ&ピースが審査員の得票を独占して勝利。審査員は、お笑いを作り上げる苦しさを知っているから、アルコ&ピースのチャレンジ精神を玄人として評価したのかもしれないが、観ている側にとって斬新さは面白いと感じることの十分条件ではないので、非常に不可解。後半の小芝居が笑いではなく「ヒューヒュー」の歓声なのは、漫才としてはアウトなわけで、それこそ「どういうモチベーションでこの場に立ってんだ」という話である。彼らのすべきことは客を笑わせることであって、感心してもらうことではない。
それと、たけし師匠が「(台本)よく作ったなぁこれ」なんて褒めそやしちゃったもんだから、他の審査員も乗っかるほうが楽だったというのもあったのかもしれない。審査員は審査員で、「見る目がない」と世間に思われるのは怖いだろうし、迷ったら「たけしに乗っとけ」と思うのも無理はない。
改めて結果発表のシーンを見返すと、テリー伊藤が「最高のネタ持って来ちゃったから、次困るね」というコメントしているときの二人の表情が、「いや・・・、実は決勝もこれなんだよな・・・」と内心思って困り果てた顔になっているのが手に取るように分かる。まあ、もともと彼らのネタは凝ったシチュエーションでニヤリとさせるようなネタが多いので、何を持ってきても爆笑を誘うのは厳しかったと思うが。

○スーパーマラドーナ
かなり面白かった。しかし、Aグループの面々やBグループのトレンディエンジェルのように、ややつきぬけたところで実力を見せつけたコンビと比べてしまうと、どうしても普通だな、となってしまったところはある。でも、普通の番組でこのグレードのネタを見せられたら、十分、絶賛に値するだろう。これもラサール石井がしっかりコメントしてあげていたのがよかった。

○アルコ&ピース
X-GUNの説教ネタと同じで、ダメだしされている人を見て笑うということ自体が悪趣味だし、長々と見せられるのは不愉快。後半の小芝居も、笑いとは遠い位置にある内容で、こっぱずかしくて見ていられない。しかも、「お前が忍者になって巻物取りに行くって同意したら、ぶん殴ってるとこだったよ」という肝心の一言が、何度も聞き直したがなんて言ってるのか分かりづらく、もしここに書いた通りだとしたら、日本語としてはかなり不正確な表現で意味がはっきり通じず、どこに笑う要素があるのか理解困難。こっちは、「えっ? 今なんて言ったの」状態で完全に置いてけぼり。痛々しいから早く終われ、と願うばかりだったのだが、「ヒューッ」なんて言ってる客もいたのは、あれはネタを知っているファンなのだろうか。今大会で一番つまらないネタだった。

○笑い飯
ロボットやマリリン・モンローネタのような、繰り返しの飽き飽き感がすぎた。替え歌を、しかも大して落ちのない歌を歌っているだけだったからな。もっと細かく畳みかけてほしかった。

○エルシャラカーニ
彼らを初めて見たときは面白かったが、一度芸風に慣れてしまうと意外性がない。今回のネタに関しては、「僕と、友達と・・・」と数えるくだりを繰り返しすぎ。人数にこだわる理由も分からない。同じ繰り返しでも、NON STYLEやテンダラーは、繰り返しになる部分を極限まで短くしている。繰り返し部分が長いのは、4分のコンテストネタではダレてしょうがない。

■国民ワラテンについて

最後は、ワラテンの結果と勝敗とのギャップについてである。もちろん、ワラテンの結果と勝者が一致すべきかについては、かならずしもYESとは思わない。例えば、Aグループでワラテンを獲ったオジンオズボーンは、プロの目からは拙いと思われてもしかたのないネタだったし、Bグループも、NON STYLEにワラテンが入ったものの、これまでの実績面からプロから厳しく評価されるのは仕方ない。
とはいえ、今大会、ワラテンを獲得をしたコンビは全て敗者になっており、しかも優勝したハマカーンに至っては、Aグループ戦でも決勝戦でも、ワラテンが最下位。さすがにこれでは、ワラテンの得点はむしろ疫病神。面白さを反映できているとは言い難い。
おそらく笑いの質より手数を反映しがちなシステムになっているということだろう。Cグループで笑い飯にワラテンが行ったのも、今年の笑い飯は少しネタがおとなしかったが、手数は多いので点が入ったのではないだろうか。この辺りは改善の余地があるように思った。
加えて、このセンスのないネーミングもなんとかしてほしいと思う。

いずれにせよ、ハマカーン優勝おめでとう。

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2009年12月13日 (日)

M-1 2009

今年もやってきたM-1の季節。

過去、サンドウィッチマンやナイツ、オードリーの活躍を予見していた自分としては、今年も優勝、いや最終決戦に残る3組は当ててみたいところ。

まず決勝進出の各組を見てみよう。

■ナイツ

ナイツは一昨年から去年が旬だった。一昨年の敗者復活で見せた、

「スカトロスマップ」「ぜってぇビストロだよいいかげんにしろ田舎帰れこの野郎」

「亀井静香と結婚しまして」「またおっさんじゃねぇか、工藤静香だよ。一大スキャンダルだよ。」

という鋭いツッコミには、実は単なるダジャレの連発である塙のボケを盛り上げる勢いがあった。

ただ、そろそろ、このスタイルは限界かな。見飽きてしまった。
また、トップバッターというのもハンディだ。
いっそ、昔やっていたプロ野球ネタなんかのほうが受けるのではないかという気がする。

もう一つ気になるのは、塙自身の性格なので仕方ないのだろうが、漫才後の講評での審査員に対する鼻につく受け答え。審査される側でありながらあまりにも偉そうで、審査員の心証を損ねる可能性がある。
去年は「何も考えずにボケてるわけじゃないんで」とか語っちゃって、案の定、最終決戦では一票も入らなかった。

■南海キャンディーズ

今年、漫才をしているところを見たことがないので何とも言えないが、個人的には、2005年のダダスベリの最低得点が、正当な評価だろうという気がする。
確かに、山ちゃんのツッコミの言葉選びには独特のセンスがある。ただ、あのセンスが光るのはアドリブのときだ。よくそのツッコミの発想が出たな、というところに笑いがある。

アドリブが魅力である点は、しずちゃんのボケについても同様だ。
何をしでかすか分からない怪しい魅力が彼女の笑いの源泉だが、これも、あらかじめ用意された漫才のネタとして見せられると、制御不能なしずちゃんと、それに振り回される山ちゃんという構図が、最高の形では表現されないのである。

しずちゃんは、今年も女性司会者をいじるのだろうか。
あれをやったら冷えた笑いが起きておしまいだろう。

■東京ダイナマイト

彼らについても、今年、漫才をしているところを見たことがないので何とも言えない。
だが、2004年のタクシーネタは好きだったし、M-1ではやっていないが、ボケとエクササイズネタも秀逸。松田が健康器具の上で激しいアクションをしたのち「効果は未知数! 」とハイテンションでボケ、「未知数なのかよ」とハチミツ次郎がニコニコしながら冷静につっこむスタイルは、他にない魅力。ダークホースではあるが、優勝の可能性はあると思う。

課題は、松田のボケが羽目を外しすぎて、会場がついて行けなくなること。
ライブでやるようなぶっとんだネタに走ると、審査員も基本的にオーソドックスな笑いを評価するだろうし、点がつかないだろう。

■ハリセンボン

安定感はある。キャラ芸のようでいて、しゃべりもしっかりしているので、安心して見られる。
ただ、あまり大爆笑した記憶はない。2007年の「ドーンタッチミー」はけっこう好きだったけど。
笑いの基本が、はるかが春菜の身体的特徴をいじって、「角野卓造じゃねぇよ」的に突っ込むというパターンなので、この繰り返しだとちょっと飽きてくる。
また、やはり、女性であるのはハンディだ。男同士の「もしかしてホントに怒ってる? 」というのの一歩手前のようなおかしさに比べると、女性のはやっぱりフィクションの言葉遊びのように見えてしまう。
上沼恵美子が審査員として言っていた、女性がやると下品になってしまう、というのは、本人ならではの述懐だなと思う。

■笑い飯

彼らの旬も、2003年の奈良県立歴史民俗博物館なんだよな。
当時は、哲夫の子供じみたボケと大人げないツッコミ、西田の何を考えているのか分からないが何か面白いことを言ってやるぞという怪しい「たくらみ顔」が大きな魅力だったのだが、最近は特に西田の返しに怪しさがなくなってしまって、普通の漫才師になってしまった感がある。2005年が最大のチャンスだったが、最終決戦であえてマリリン・モンローネタを持ってきた結果、ブラマヨに優勝をさらわれた。

ただ、彼らにとって、今年は有利な気がする。

まず、全体的に小粒である。強烈な優勝候補がいない。
次に、笑い飯はレッドカーペット、エンタ、オンエアバトルといったポピュラーなネタ見せ番組での露出が少ないので、観客にとっては新鮮に映る可能性がある。

もう一つ、最近のM-1では、観ている側に、単に面白い漫才師を選ぶだけではなく、感動的なドラマが欲しいという潜在的な期待がある。その典型が、敗者復活からの優勝を成し遂げたサンドウィッチマンだ。
サンドウィッチマンがすごかったのは、どうみてもその筋の風貌をしたおっさんが、「このアンケート、なにで知りましたか」「お前だよ! 今お前から聞いたわ、お前って書いとけお前って! 」とまじめにツッコむという構図の新鮮さで、会場を一気に味方に付けたところだった。

その点、今年の大きなトピックは、これまで初回を除いて全てのM-1決勝に出場していながら、一度も優勝できなかったコンビが、念願の優勝にかけるというドラマの存在である。
番組として、この部分を大いに取り上げれば、会場が「優勝させてやりたい」と思う可能性がある。今年は例年に比べるとネタ見せの順番もいい。

出鼻に「優勝候補でーす」と言って会場を冷やしてしまったあの失態と、一時期やっていた、相手の動きに自分の動きを足して繰り返す、マリリン・モンローやロボットのネタを封印し、ひたむきに、2003年当時のやんちゃで怪しい笑い飯流Wボケ漫才ができれば、感動の優勝の可能性がある。

■ハライチ

なんでハライチが決勝進出?

1分ネタですら持たせるのがギリギリなのに、よく4分の尺で上がって来られたな。どんなネタをやったんだ。
去年のザ・パンチ同様、全く期待していないし、頼むから決勝に残らないでほしい。

■モンスターエンジン

潜在的な魅力はあると思うのだが、正直、それほど好きなタイプではない。神々のコントも微妙だし、レッドカーペットのゴッドハンド洋一も、もういいよっていう。
去年のM-1の漫才ネタはまあまあよかったとは思うが、彼らよりは、オジン・オズボーンの方が好きだ。

■パンクブーブー

ボケの質がけっこう高く、ツッコミの声質も聞いてて心地いい。全盛期のタイムマシーン3号を彷彿とさせる。

決勝進出8組の中では一番安心して楽しめそうなコンビだ。普通に考えれば優勝候補なのだが、ぱっとしない感がある。なんというか、小粒なのだ。

また、いわゆるネタ見せ番組での露出が多く、漫才ネタを目にする機会が多いので、観客が「ああこのネタ見た」となってしまうと爆笑が来ない恐れがある。

「お前、ローソンの店員やって」
「ローソンの制服じゃねーよ、おしゃれジャケット! 」

で会場が沸けば、チャンスあり。

■敗者復活組

一押しはハイキングウォーキング。個人的には磁石とか好きだが、あまりにも華がない。

○ハイキングウォーキング
顔芸、キモ芸に目が行きがちだが、シャベリの実力はある。

「かしこ、かしこまりましたかしこ! 」「かしこかしこうるせぇよ! 」
「そうなっちゃいます? 」「そうなっちゃうよ」

は、会場でも十分ウケると思う。

相方を無視して一方的にボケるスタイルは、2003年のアンタッチャブルの、

「おれ絶対受験無理だよー、だって受けてねぇも~ん! 」
「じゃあねぇよ! 受けてるバージョンでお送りしましょってなもんですよ! 」

の勢いに近いものを感じる。

○磁石
見た目は大人しいが、ボケの質が高い。

○タイムマシーン3号
ちょっと旬を過ぎたかな。

○我が家
得意ネタで行けばけっこう笑えるかも。ただ、M-1は基本的に下ネタなしだからな。

■最終決戦

というわけで、最終決戦の予想を次のようにしておこう。

・笑い飯
・東京ダイナマイト
・ハイキングウォーキング

(次点)
・パンクブーブー

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