評価4の映画

2021年7月22日 (木)

(2346) ザ・ファブル

【監督】江口カン
【出演】岡田准一、木村文乃、山本美月、柳楽優弥、安田顕、福士蒼汰、向井理、佐藤浩市
【制作】2019年、日本

南勝久の漫画が原作。殺しを禁じられた殺し屋の活躍を描いたアクション作品。

伝説の殺し屋、ファブル(岡田准一)は、ボス(佐藤浩市)から佐藤明という偽名を与えられ、妹役の佐藤洋子(木村文乃)とともに一年間、身を潜めるよう命じられる。明と洋子は大阪のヤクザ、真黒組の海老原(安田顕)の世話になる。明はそこでイラスト工房で働く女性、清水岬(山本美月)と知り合う。
海老原の弟分、小島(柳楽優弥)が出所し、岬に目を付け、脅してアダルトビデオ出演させようとするが、海老原の勢力を転覆させようとする真黒組の砂川(向井理)は、手下を使って小島と岬を拉致する。海老原から小島を助けてほしいと頼まれた明は、岬が誘拐されたことを知り、救助に向かう。ファブルを倒そうともくろむ血気盛んなフード(福士蒼汰)はファブルに挑むが、ファブルは致命傷を与えずにフードを倒し、誰一人殺すことなく小島と岬を救出する。海老原は、自分の命令を聞かなかった小島を自らの手で葬り、砂川と手打ちにする。明は普通の人として暮らす努力を続ける決意を新たにするのだった。

凄腕スーパーマンの活躍という、漫画のような話(原作漫画ですけど)だが、パルクールの要素を取り入れたようなアクションが見所で、上半身のたくましい岡田准一の演技が光っていた。肩肘の張らない娯楽作品として楽しめたので評価は4。独特な芸風の佐藤二朗も出ているが、癖は薄めでよかった。

【5段階評価】4

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2021年7月19日 (月)

(2345) ボヘミアン・ラプソディ

【監督】ブライアン・シンガー
【出演】ラミ・マレック、グルィルム・リー、ベン・ハーディ、ジョゼフ・マゼロ、ルーシー・ボイントン、アレン・リーチ
【制作】2018年、イギリス、アメリカ

伝説のバンド、クイーンのリードボーカル、フレディ・マーキュリーの人生を描いた作品。

空港の貨物作業員だったファルーク・バルサラ(ラミ・マレック)は、地元バンドのボーカルに加入。車を売った金で作ったアルバムが注目され、一気に人気バンドとなる。ファルークはフレディ・マーキュリーと改名し、洋服店員のメアリー(ルーシー・ボイントン)と結婚。クイーンと名付けた彼らのバンドは米国ツアーを成功させ、世界的な存在となる。一方で、フレディは自分がバイセクシャルであることを自覚。メアリーに告白するが、メアリーは彼の元から離れてしまう。
フレディは、アルバム作りとツアーの繰り返すばかりのバンド人生を変えようと、ゲイ仲間のポール・プレンター(アンレン・リーチ)の支援のもとソロ活動を決断するが、バンド仲間とは決裂。音楽作りに悩むフレディは、酒とドラッグに溺れる。メアリーの説得でポールとの関係を断ち、バンド仲間に謝罪してチャリティ・コンサート「ライブ・エイド」出演を決める。練習中、フレディは自分がエイズに冒されていることを告白。仲間は悲しみながらもフレディを受け入れ、コンサートは大成功を収める。フレディはその後、45歳で人生の幕を下ろすのだった。

バンドの誕生から成功、そして決裂からの再生という、分かりやすい物語展開。クイーンの有名でパンチのある楽曲が映画を盛り上げる。ストーリーの単純さが、クイーンの魅力をストレートに伝えるのにちょうどいい。仲間割れして、病気に苦しんで、というシーンが長々と続くより、仲直りしてフレディのシャウトが響く方が観ていて気持ちいいのだ。クライマックスのライブシーンは、素晴らしい迫力。ステージ直前で、これまでフレディの生き方を認められずにいた父親(エース・バティ)と抱き合うシーンも感動的だった。

【5段階評価】4

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2021年7月18日 (日)

(2344) 新聞記者

【監督】藤井道人
【出演】シム・ウンギョン、松坂桃李、田中哲司、高橋和也、本田翼、北村有起哉
【制作】2019年、日本

新聞記者、望月衣塑子の自伝「新聞記者」を題材にした作品。官僚の自殺の真相を追う、内閣府情報調査室の若手職員と新聞記者の奮闘を描いている。

東都新聞の記者、吉岡エリカ(シム・ウンギョン)は、ジャーナリストだった父を失った過去を持っていた。彼女の父は、政府の汚職を暴く記事を出したものの誤報とされ、自殺を図ったことになっていたが、真相は闇の中だった。ある日、東都新聞に、羊のイラストが添えられたファックスが届く。それは、新設大学院大学に関する情報だった。エリカはチーフの陣野(北村有起哉)の指示で、ファックスの発信者を追う。
外務省から内閣府情報調査室に出向している若手官僚、杉原拓海(松坂桃李)は、上司の多田智也(田中哲司)から、政府に都合の悪い情報をもみ消すような記事の拡散を指示される日々を送っており、自らの仕事に疑問を感じていた。家には身重の妻、奈津美(本田翼)がおり、彼女は仕事に打ち込む拓海を気遣っていた。
拓海は、外務省勤務時代の上司、神崎俊尚(高橋和也)から飲みの誘いを受ける。彼には、上司の指示で行った不祥事の責任を取った過去があった。その神崎が、突如、妻(西田尚美)と娘(宮野陽名)を残して自殺する。杉原は、神崎の自殺に、内閣情報調査室がからんでいるとにらむ。神崎の自殺の真相を追っていたエリカは、神崎の葬儀の場で、拓海と出会う。エリカは神崎家を訪問し、妻の伸子から、俊尚の書斎に通される。鍵のかかった引き出しの中には、東都新聞社に送られたファックスの原稿と、一冊の本があった。それは、かつてアメリカで細菌兵器が羊の大量死に繋がったことを記したノンフィクションだった。エリカは俊尚の書斎に拓海を呼び、政府が軍事転用可能な生物兵器の研究施設を作ろうとしているという仮説を立てる。拓海は、家族もろとも我が身を危険にさらす恐怖を感じながらも、真実を把握するため、大学建設の担当者の同僚の部屋から情報を盗み出し、エリカに送る。エリカと拓海は陣野を説得し、東都新聞は「新大学で生化学兵器研究」の記事を一面で出す。エリカは、誤報を出して死んだ父親のことを明るみに出されるが、他の主要紙が問うと新聞に追随することを知り、自らを奮起させるが、そこに、多田とおぼしき声から、あなたの父親は真実を書き、それでも死んだ、という脅しの電話が入る。エリカは慌てて、内閣府に向かって走り出す。多田の席の前には、血の気を失った拓海がいた。外務省に戻って外国で数年過ごせばいい、と多田に言われた拓海は、憔悴しきった表情のまま、地下鉄の入り口に向かう。交差点の横断歩道を挟んで、エリカと拓海は向かい合うが、拓海は何事かをつぶやき、それを見ていたエリカは、思わず叫び声を上げそうになるのだった。

ラストシーンで何があったかは、観る者の想像に委ねられているが、おそらく拓海は「ごめん」とつぶやき、そのまま車道に歩き出し、それを見たエリカが目を見開いたのだろう、というのが、最もありそうな展開だ(実際、首相官邸前の交差点を高速で走る車はいないと思うが)。
森友学園の問題で自殺した職員の事件とも共通するような、大学設立に関する不正を扱っており、見ようによってはなかなか生々しい。硬派で見応えのある作品だった。ちなみに本作を最初に観たのは飛行機の中だったのだが、シム・ウンギョンを完全に上野樹里だと思っていて、「上野樹里、英語うまいじゃん」などと脳天気な感想を持ったのだった。

【5段階評価】4

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2021年7月 5日 (月)

(2341) アリー/スター誕生

【監督】ブラッドリー・クーパー
【出演】レディー・ガガ、ブラッドリー・クーパー、サム・エリオット、ラフィ・ガブロン
【制作】2018年、アメリカ

大物歌手に見いだされた女性歌手の運命を描いた作品。「スタア誕生」のリメイク。

ロック歌手のジャック・メイン(ブラッドリー・クーパー)は、酒とドラッグに溺れる癖があり、偶然寄ったバーで歌うアリー(レディー・ガガ)の才能に惹かれ、強引に彼女を自分のステージに立たせる。アリーは大観衆に受け入れられ、二人はともにステージで歌を続ける。プロデューサーのレズ・ガブロン(ラフィ・ガブロン)はアリーをソロ歌手として抜擢。結婚を果たしたジャックとアリーだったが、ジャックは、アリーの方向性を認められず、酒に溺れていく。アリーはグラミー賞の新人賞を受賞するが、ジャックは泥酔したままステージに上がり、受賞スピーチをするアリーの横で失禁するという大失態を犯す。
ジャックはアルコール中毒者用の矯正プログラムに参加し、アリーとの生活を取り戻そうとする。ジャックを愛するアリーは、レズに次の欧州ツアーでジャックとのステージ共演を提案するが、レズは断固として拒否。アリーは拒否するなら欧州ツアーをキャンセルしてくれと言い返す。レズはジャックのもとを訪れると、ジャックの失態の尻拭いに苦労させられたとジャックを責め、今度酒浸りになったらアリーと別れろ、と警告する。そうとは知らないアリーは、欧州ツアーはなくなり、アルバム作りに専念することになった、とジャックに嘘をつき、今日のライブで一緒に歌ってほしいとジャックに告げる。ジャックはそれに賛成するが、アリーが家を出た後、自らの命を絶つ。
アリーはジャックに嘘をついたことで自分を責めるが、ジャックの兄ボビー(サム・エリオット)はアリーは悪くないと慰める。アリーは追悼コンサートで、ジャックが自分のために作ってくれた愛の歌を歌い、涙を流すのだった。

中盤までの幸せな二人の関係が徐々に崩れていき、悲劇的な結末を予感せざるを得ない中、観る者としては「リメイクとは言えハッピーエンドになってほしい」と願うわけだが、その思いもむなしく、ジャックは命を落としてしまう。そんな悲劇ではあったが、歌の力を感じられる素晴らしい作品だった。序盤、アリーがジャックにステージで歌うよう促され、躊躇しながらもステージに立ち自分の気持ちを歌声に乗せるシーンは感動的だったし、アリーがテレビショーでセクシーな衣装を来て踊る様子を見て、ジャックが失望して酒に手を出すシーンでは、派手なステージなのになぜか歌の魂が響いてこない。この辺りの見せ方は、自身が歌手でもあるブラッドリー・クーパー監督の手腕だろう。

【5段階評価】4

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2021年7月 4日 (日)

(2340) メッセージ

【監督】ドゥニ・ビルヌーブ
【出演】エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー
【制作】2016年、アメリカ

宇宙人との交流を試みる言語学者の運命を描いた作品。

地球上の12カ所に謎の巨大宇宙船が出現。言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は、アメリカ軍大佐のウェバー(フォレスト・ウィテカー)から宇宙船内の生命体との対話を依頼される。ルイーズは物理学者のイアン・ドネリー(ジェレミー・レナー)とともに船内に入り、ホワイトボードやジェスチャーを使って宇宙人と言語の交換を始める。7本足の彼らは、水中に吐いた墨がリング状に固定化されるようにして書かれる表意文字を使用。彼らの言語を理解するようになったルイーズは、彼らに地球に来た目的を尋ねる。彼らの回答は「武器を提供(offer weapon)」だった。米軍は宇宙人を警戒し、撤退を準備。中国も戦闘態勢に入り、各国との連絡回線は断たれてしまう。
中国のシャン上将(ツィ・マー)が宇宙船攻撃を決断する中、ルイーズは宇宙人の真意を問うため、単身で宇宙船内に入る。彼らは時間の流れに制約されない概念を持っていた。彼らは3,000年後、地球に助けてもらうため、時間の流れを超える概念をルイーズに提供する。彼女は、夫と結婚し、やがて離婚、授かった子どもが重い病気で夭折するという「将来の記憶」を体験する。
結局、中国の宇宙船攻撃は実施されなかった。ルイーズはパーティ会場でシャン上将と初対面する。シャン上将は、攻撃を中止するようルイーズに電話で説得された、と告白。ルイーズが、シャン上将の電話番号を知らない、と不思議がると、シャン上将は自分の携帯電話を見せて、「今知った」と話す。時間を超越するルイーズの記憶が、過去のルイーズに伝わったのだ。シャン上将は続けて、自分しか知らない妻の最期の言葉をルイーズに伝える。ルイーズはその言葉を開戦直前のシャン上将に伝えることで、シャン上将の説得に成功したのだった。かくして宇宙船との戦闘は回避され、宇宙船は世界各地で姿を消した。ルイーズは、その先に不幸が待っていることを知りながら、イアンとの結婚を受け入れるのだった。

SF作品ではあるが、ルイーズの人生を描いたドラマになっているのが特徴的。離婚後に娘を失うルイーズの回想シーンで始まるため、宇宙船に向かうルイーズは、夫と別れ、子を失うという経験を乗り越えた人物だと完全にミスリードされるわけだが、実はそれは、宇宙船飛来後の将来に起きる彼女の記憶であり、夫とはこの事件を通じて知り合ったイアンで、愛娘ハンナを授かるのもこれからなのだった。この辺りの見せ方は見事だった。
宇宙人の造形がステレオタイプなタコ怪物みたいだったり、世界各国が通信を遮断する流れがやや強引だったと感じたりはしたものの、将来の記憶があるという概念について思索にふける機会を与えてくれる秀作だった。
ちなみに、二体の宇宙人に付けられた「アボット」と「コステロ」は、アメリカの昔のコメディアンの名前から来ている。

【5段階評価】4

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2021年6月27日 (日)

(2338) エンド・オブ・ホワイトハウス

【監督】アントワーン・フークア
【出演】ジェラルド・バトラー、アーロン・エッカート、モーガン・フリーマン、リック・ユーン
【制作】2013年、アメリカ

ホワイトハウスを占拠したテロリストと戦う元ボディガードの活躍を描いたアクション映画。

ベンジャミン・アッシャー米大統領(アーロン・エッカート)のシークレット・サービスを勤めるマイク・バニング(ジェラルド・バトラー)は、かつて大統領夫妻の乗った自動車の事故現場で、大統領救済を優先して大統領の妻(アシュレイ・ジャッド)を死から救えなかった過去を持っていた。彼は財務省に転勤となるが、ある日、ホワイトハウスをテロリストが襲撃。その場に居合わせたマイクはテロリスト集団を追ってホワイトハウスに進入する。
テロリストはホワイトハウスを占拠し、大統領や副大統領、国防長官らを人質に立てこもる。マイクは大統領の息子コナー(フィンリー・ジェイコブセン)を発見して無事に保護させると、テロリストを次々と倒す。テロリストの首謀者カン・ユンサク(リック・ユーン)は、大統領代理となった下院議長のアラン・トランブル(モーガン・フリーマン)に指示を出し、米軍を日本海から撤退させると、アメリカの核ミサイルを自爆させるシステムを起動し、大統領を連れて逃走を企てるが、マイクはカンを倒し、システムを停止。大統領の救出に成功するのだった。

分かりやすいヒーロー物のアクション映画で、韓国大統領(ケオン・シム)をはじめ、記号のように人が殺されるわけだが、あまり深く考えず、娯楽作品として観れば爽快な作品。テロリストによるホワイトハウス突入シーンや、大統領とともにヘリで墜落死したと見せかけて逃げようとするシーンには、それなりに説得力があったが、コナーを人質に取ろうとしているテロリストがマイクとコナーに銃を乱射する場面は、おいおい、という感じだった。

【5段階評価】4

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2021年6月21日 (月)

(2337) リービング・アフガニスタン

【監督】パーベル・ルンギン
【出演】キリル・ピロゴフ、アントン・モモット、ヒョードル・ラブロフ、ヤン・ツァトニック、ビタリー・キシュチェンコ
【制作】2018年、ロシア

アフガン侵攻から撤退を始めたソ連の部隊を描いた作品。

1989年。アフガニスタンでソ連の戦闘機が撃墜され、脱出したパイロットのアレキサンダー(ヤチズラフ・シカリーフ)がゲリラ組織ハシャムの捕虜となる。パイロットはバシリエフ中将(ビタリー・キシュチェンコ)の一人息子だった。中将はドミトリッチ大佐(キリル・ピロゴフ)に息子の救出を指示する。グレコローマン・レスリング経験のある中尉(アントン・モモット)が大佐の部隊に合流。ギリシャとあだ名され、ゲリラ兵との戦いに巻き込まれていく。ソ連兵のアブダサラモフ(ヤン・ツァトニック)は、武器を横流しすると嘘をついて現地人から金を巻き上げるが、あえなく捕らえられ、人質にされてしまう。アブダサラモフの入れられた牢には先客としてアレキサンダーがいた。ハシャムはソ連側に、身代金と交換に二人を返し、制圧している峠の通行を約束するという連絡をしてくる。中将は迷うが、ドミトリッチに説得され、取り引きに応じることにする。
返還されることになった捕虜の二人は、川で体を洗うよう指示されるが、そのことを知らないアレキサンダーは川を泳いで逃亡。しかし、逃げた先で仲よくなったはずの現地の少年に見つかり、撃たれて命を落とす。捕虜の返還は予定通り実施されるが、アレキサンダーは遺体としてソ連側に引き渡される。空爆される危険を回避するため、ハシャムはさらに二人の人質を要求。ドミトリッチは拒否しようとするが、ボロージャ(ヒョードル・ラブロフ)とギリシャがその役を買って出る。ドミトリッチはしぶしぶ了承する。しかし、アレキサンダーの死体を見て中将は激怒。ソ連軍の峠越えは無事に果たされるが、その直後、ハシャムの拠点が空爆され、ギリシャとボロージャは必死で逃走する。戦地から戻ったギリシャは、ベンチに寝転び、戦地での経験に思いをはせるのだった。

「開戦は簡単だが、誰も終わらせ方を知らない。」ハシャムの指導者の言葉が全編を貫くメッセージ。人質を救出する感動の作戦でもなく、残虐なゲリラを蹴散らすソ連兵の活躍でもない。戦闘は生臭く局地的で、対局に影響は全くない。指揮官の私情に作戦が左右されるかのようだが、指揮官は中央の命令に従ったまでと言い張り、その真否は明示的ではない。戦争のむなしさを感じることのできる写実的な作品だった。

【5段階評価】4

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2021年6月 7日 (月)

(2333) ウエストワールド

【監督】マイケル・クライトン
【出演】リチャード・ベンジャミン、ジェームズ・ブローリン、ユル・ブリンナー
【制作】1973年、アメリカ

巨大テーマパークで起きたロボットの暴走を描いたパニック映画。「ジュラシック・パーク」の原点とも言える作品。

部隊は巨大テーマパーク「デロス」。「古代ローマ」、「中世」、「西部開拓時代」の3つの世界には、人間と見分けが付かないほど精巧なロボットが配備されていて、訪問客の夢を叶える。
弁護士のマーティン(リチャード・ベンジャミン)は、経験者のジョン・ブレイン(ジェームズ・ブローリン)に連れられ、デロスにやってくる。始めは嘘くさい、と入り込めないマーティンだったが、酒場に現れマーティンを挑発する黒ずくめのガンマン(ユル・ブリンナー)との撃ち合いに勝利し、美女とベッドをともにして、すっかりデロスを気に入る。
一方、デロス運営に携わる技術者陣は、ロボットに、まるで感染症のように故障が相次いでいることに気づく。技術者たちは原因を突き止めることができない。コンピュータが設計した部分もあり、設計者も完全にはロボットの回路を理解できていないのだ。ロボットは決して人間を傷つけないようになっているはずだったが、ガラガラヘビのロボットがブレインの腕を噛み、酒場の大乱闘ではロボットが人間に殴りかかったり、ついには中世の時代の騎士が、客との一騎打ちの場面で、コントロール室の指示を無視して客を殺してしまう。
酒場の乱闘から一夜明け、マーティンとブレインが西部の町を歩いていると、マーティンに倒されたガンマンが現れる。ブレインはガンマンとの撃ち合いに挑むが、ガンマンに撃ち殺されてしまう。マーティンは慌てて逃げるが、ガンマンは彼を執拗に追いかける。西部の町を抜け、古代ローマのエリアに逃げ込んだマーティンは、コントロール室への出入り口を見つけ、中に入る。追ってきたガンマンの顔に強酸を浴びせ、最後はたいまつの火を放ってガンマンを倒す。床にへたり込むマーティンの脳裏に、デロスの宣伝文句がこだまするのだった。

1973年という時代に、自立型ロボットやAIが出現する未来を、ここまで想像していることに驚く。一部をコンピュータが設計しているためにロボットの思考回路を技術者が把握できていないというあたりは、深層学習で起きていることそのままだし、ロボットが自然言語を話し、不気味の谷を越えて人間との見分けがつかない点は、当時の未来予想としては楽観的だが、現実味を帯びてきた。ロボットに感染症のような症状が広がるというのも、ネットによる制御、自律的改善学習、人間の理解の及ばない判断処理など、成立する条件は揃っているように思える。ユル・ブリンナーの顔が外れて回路がむき出しになるという映像の魅力や、単純なハラハラドキドキ感だけでなく、「フューチャーテリング」作品としても素晴らしかった。

【5段階評価】4

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2021年2月 4日 (木)

(2318) レベッカ

【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【出演】ジョーン・フォンティン、ローレンス・オリビエ、ジュディス・アンダーソン、レジナルド・デニー
【制作】1940年、アメリカ

富豪の先妻の死を巡るサスペンス映画。第13回アカデミー賞作品賞受賞作品。

ホッパー夫人(フローレンス・ベイツ)の秘書をしていた若い女性(ジョーン・フォンティン)が、富豪のマキシム・ド・ウィンター(ローレンス・オリビエ)に見初められ、結婚する。ド・ウィンター夫人となった女性はマキシムの屋敷で暮らすことになるが、使用人のダンバース夫人(ジュディス・アンダーソン)は女性に冷たい態度を取る。マキシムにはレベッカという先妻がいたが、彼女は海で事故に遭い、命を落としていた。ダンバース夫人はレベッカ付きの使用人でレベッカを崇拝していた。ド・ウィンター夫人は、自分が常にレベッカと比べられていると感じる。
夫人はマキシムの姉ベアトリス(グラディス・クーパー)の勧めもあり、仮装パーティを開くことにし、ダンバース夫人の助言で屋敷に飾られていた絵の衣装を着るが、それは亡くなったレベッカの姿だった。マキシムに着替えろと叱責された夫人はダンバース夫人を責めるが、ダンバース夫人は夫人への悪意をむき出しにする。そのとき、海で救難信号が打ち上がり、難破船とともに小舟が見つかったとの報告が入る。夫人はマキシムが海辺の小屋にいるのを発見。マキシムは、小舟からはレベッカの死体が見つかるだろう、レベッカを海に沈めたのは自分だから、と驚きの告白をする。彼はレベッカを憎んでいた。彼女は美貌と知性と家柄を兼ね備えながら、実は性悪な女で、マキシムとの関係は冷え切っており、従弟のファベル(ジョージ・サンダース)と浮気していたのだ。ある日彼女は、海辺の小屋の中で、自分は妊娠した、産まれる子はマキシムの子ではないが屋敷を継ぐことになる、さあどうする、とマキシムを挑発。ところが彼女は直後に転倒して頭を打ち、死んでしまう。マキシムは自分が疑われるのを恐れ、彼女を船に乗せて船の壁に穴を空け、船ごと沈めたのだった。
レベッカの死について再び裁判が開かれることになり、船大工は発見された小舟には内側から穴を空けた痕跡があったと証言。マキシムは裁判官から、レベッカとの関係は良好だったのかと詰問されて、つい激昂。それを見た夫人が卒倒したため、裁判は休憩に入る。マキシムと夫人が二人で休憩をとろうとすると、ファベルが現れる。彼はレベッカから受け取ったという手紙をちらつかせてマキシムを脅迫。マキシムは脅しに屈せず、警察管区長のジュリアン大佐(C・オーブリー・スミス)を同席させてファベルの言い分を聞く。彼はレベッカが妊娠していて直前まで医者の診察を受けており、自殺するはずがなく、マキシムがレベッカを殺したのだと説明。ファベルの連れてきたダンベール夫人が、レベッカの通っていた医者の名を証言したため、大佐はマキシムやファベルとともに話を聞きに行く。ファベルは、レベッカは妊娠していたのだろう、と担当医だったベイカー医師(レオ・G・キャロル)に詰め寄るが、ベイカーは彼女は末期癌だったと証言する。レベッカは自分の命が数ヶ月と知り、マキシムに自分を殺させようとしていたのだった。医師の証言により、レベッカの死は自殺と判断され、マキシムの疑いは晴れる。ファベルは、レベッカは癌だったこと、マキシムと夫人は幸せに暮らすだろう、とダンベール夫人に報告する。ダンベール夫人は正気を失い、屋敷に火を放つ。マキシムが屋敷に戻ったときには、屋敷は業火に包まれていた。マキシムと夫人は抱き合って屋敷を見つめる。レベッカの使っていた部屋に残っていたダンベール夫人の上に、燃えさかる家屋が崩れ落ち、レベッカのベッドが炎に包まれるのだった。

序盤はシンデレラストーリーのような展開を描きつつ、マキシムが妙に海に怯えるという微妙な違和感を織り交ぜ、徐々にレベッカという女性の影が作品を覆い始める。最後はレベッカの死の真相についてのどんでん返しまで用意されている。二転三転する物語の展開から目が離せない、見応えのあるサスペンス作品。
面白いのは、タイトルにもなっているレベッカは、作品を通じて一度も画面に登場しないことだ。それでも観客は、レベッカが海辺の小屋で勝ち誇った顔でマキシムを挑発する姿を思い浮かべただろう。全く微笑みを浮かべないダンベール夫人の表情も印象的で、ラストシーンの彼女の狂気の張り付いた形相はトラウマ級。白黒だが、十分に楽しめる作品だった。

【5段階評価】4

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2021年2月 1日 (月)

(2315) 白い恐怖

【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【出演】イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、マイケル・チェーホフ、レオ・G・キャロル
【制作】1945年、アメリカ

記憶を失った男と、彼の秘密に迫ろうとする女性精神科医を描いたサスペンス映画。

精神科医のコンスタンス・ピーターソン(イングリッド・バーグマン)の勤める病院に、新しい院長が着任。エドワーズ(グレゴリー・ペック)と名乗る男は周囲の想像より若く、コンスタンスはエドワーズと恋に落ちる。しかし彼はなぜか白地に線の入ったテーブルクロスや服に怯え、やがてエドワーズになりすました偽物だと判明する。男は自分がエドワーズを殺害して本人になりすましているのだと考え、コンスタンスに迷惑をかけまいと病院から失踪するが、コンスタンスは彼の記憶を呼び戻すため、恩師の精神科医ブルロフ博士(マイケル・チェーホフ)の家に彼を連れて行く。ブルロフとコンスタンスは男の記憶にある情景を聞き出し、彼が怯えているのはスキー場のシュプールであること、彼がスキー場でエドワーズと一緒だったことを突き止める。コンスタンスは男をスキー場に連れて行く。二人でスキーを滑りながら崖から落下しそうになった男は、自分が子どもの頃、階段の手すりを滑った拍子に手すりに座っていた弟を突き飛ばして事故死させていたこと、自分の名がジョン・バランタインであることを思い出す。ジョンは、弟の事故死とエドワーズ失踪の記憶が入り交じり、自分がエドワーズを殺したと思い込んだのだ。コンスタンスはそう診断して安堵するが、二人の元に警察が現れ、エドワーズの死体が発見されたこと、エドワーズは背中から銃で撃たれていたことを告げ、ジョンは逮捕されてしまう。
院長のマーチソン(レオ・G・キャロル)は病院に戻ってきたコンスタンスを慰めるが、コンスタンスは、はじめエドワーズに会ったことがないと言っていたマーチソンが、面識があったと口を滑らせたことに気づく。エドワーズは院長室に行ってジョンの夢診断によれば、マーチソンがエドワーズを撃ち殺したという真相にたどり着くことを説明する。マーチソンは開き直って銃をコンスタンスに向けるが、コンスタンスは、自分を撃てば死刑は逃れられないだろうと言い捨て、堂々と院長室から立ち去る。観念したマーチソンはコンスタンスに向けた銃を自分に向け、引き金を引く。ジョンの疑いは晴れ、コンスタンスとジョンはブルロフに見送られ、めでたく新婚旅行に旅立つのだった。

なぜ男はストライプの白地に怯えるのか。観客の興味を引きつけながら展開するサスペンスはさすが。恐怖に怯えるジョンの顔とか、バスルームの白色に圧倒されて我を忘れ、カミソリを片手にベッドで眠るコンスタンスに歩み寄るジョンの顔への光の当たり具合とか、ドキドキ感を盛り立てる演出が素晴らしい。
白黒映画だが、コンスタンスに向けた銃がぐるっと回転してこちら向きに銃を放つ瞬間、画面が真っ赤に染まる。ほんの一瞬なのでデコードの影響かと思ったが、そうではなさそうだ。若いグレゴリー・ペックの顔は、最近見たからというだけかもしれないが、ディーン・フジオカに面影が似ていると感じた。

【5段階評価】4

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