評価4の映画

2023年6月 3日 (土)

(2466) 里見八犬伝

【監督】深作欣二
【出演】真田広之、薬師丸ひろ子、千葉真一、松坂慶子(声)、志穂美悦子、京本政樹、夏木マリ、目黒祐樹
【制作】1983年、日本

闇の軍勢を倒す戦士たちの活躍を描いたSF時代劇。

不老不死の妖怪、玉梓(たまずさ)(夏木マリ)と蟇田素藤(ひきたもとふじ)(目黒祐樹)は、宿敵、里見一族の静姫(薬師丸ひろ子)を狙う。侍志望の若者、犬江親兵衛(真田広之)は、山中を逃げる静姫を見つけ、彼女をさらおうとするが、静姫を守る使命を負った八犬士の犬山道節(千葉真一)と犬村大角(寺田農)が現れ、新兵衛を追い払う。道節は、静姫と八犬士の関係を静姫に話し、玉梓と素藤の討伐に向かうよう説く。
愛する義妹の浜路(岡田奈々)を失った怒りに燃える犬塚信乃(しの)(京本政樹)と、誰も愛さず愛されない運命を背負った女暗殺者、犬坂毛野(いぬさかけの)(志穂美悦子)が仲間に加わり、静姫らは残る犬士を探す旅に出る。新たな仲間、犬田小文吾(こぶんご)(苅谷俊介)、犬川荘助(そうすけ)(福原拓也)が加わるが、犬士の証である光る玉を持たない親兵衛は、道節から立ち去るよう命じられる。道節のもとを去った親兵衛は、玉梓の軍勢にさらわれ、玉梓から、自分が親兵衛の母親だと教えられる。親兵衛の手首のあざがその印だった。
犬士の玉を授かった闇の軍勢の武将、犬養現八(げんぱち)(大場健二)は、捕らえられた親兵衛を助け出し、犬士の玉に導かれて道節のもとに現れる。親兵衛は、闇の軍勢によって呪いをかけられており、静姫に襲い掛かるが、雷に打たれ倒れる。目が覚めた親兵衛の手には「仁」と書かれた玉が握られており、手首のあざは消えていた。こうして八犬士が揃い、静姫と親兵衛は愛し合うが、そこに現れた大蛇によって、静姫は闇の軍勢に連れ去られてしまう。親兵衛たちは、妖怪を討つことができる弓を携え、闇の軍勢の居城に向かう。仲間が次々と犠牲になりながらも、本丸にたどり着いた親兵衛は、静姫とともに玉梓と素藤を成敗する。
静姫を城に送り届けた親兵衛は、静姫との身分の違いを感じながら城を後にし、荒れ地で、命を落とした七人の犬士の墓を建てる。すると、そこに馬に乗った静姫が現れる。二人はともに生きていくことを決め、手を取りながら馬で走り続けるのだった。

魔界転生」や「伊賀忍法帖」と同系統のエログロ歴史絵巻。夏木マリの豊かなおっぱいも見どころ。いかにも特撮の巨大ムカデ妖怪などが登場するようなチープさもあるが、仲間を増やしながら巨大な敵に立ち向かう物語には、正道RPGを進めているようなわくわく感があった。

【5段階評価】4

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2023年5月22日 (月)

(2465) ムーンライト

【監督】バリー・ジェンキンス
【出演】トレバンテ・ローズ、アレックス・ヒバート、アシュトン・サンダース、マハーシャリ・アリ、ナオミ・ハリス、アンドレ・ホランド
【制作】2016年、アメリカ

黒人青年の人生を描いた作品。第89回アカデミー賞作品賞受賞作品。

少年時代のシャロン(アレックス・ヒバート)は他の子供にいじめられて空き家に逃げ込んで隠れているところを、麻薬売人のフアン(マハーシャリ・アリ)に見つかる。フアンはシャロンに優しくし、家に招く。翌日、フアンはシャロンを家に送るが、母親のポーラ(ナオミ・ハリス)はフアンを警戒する。ポーラは麻薬の常習者だった。
成長したシャロン(アシュトン・サンダース)は、相変わらず級友にいじめを受けていた。彼と対等の付き合いをしてくれているケビン(ジャレル・ジェローム)と、夜に海岸で出会ったシャロンは、麻薬を吸いながら語り合う。二人はいつの間にかキスをし、シャロンはケビンに身を任せる。ケビンは学校で、クラスのボス格の少年テレル(パトリック・デシル)からシャロンを殴るよう指示し、ケビンは仕方なくシャロンを殴る。シャロンは顔にけがをするが、先生に相手を告訴するよう促されてもそれには従わなかった。しかし、意を決したように登校したシャロンは、問答無用にいじめの主犯格を背後から椅子で殴りつけ、警察に連行される。
青年になったシャロン(トレバンテ・ローズ)は、麻薬の売人になっていた。ある日、ケビンから久しぶりの電話が入る。ケビンはレストランのコックをしているという。店を訪ねたシャロンはケビンと再会。ケビンはシャロンにワインを進め、閉店後、家に招く。ケビンは別れた妻との間に一人の息子がいて、思い通りではないが不安のない暮らしをしていると告げる。シャロンは伏し目がちに、自分はあれ以来、ケビン以外の人に触れていないと話す。ケビンはその夜、シャロンの肩を優しく抱くのだった。

いじめにあい、薬物中毒の母親を持つ不幸な境遇の少年の運命を、控えめに描いている。ことさら感動的に、でもなく、悲劇的に、でもない。また、不幸な境遇に強く立ち向かっているわけでもない。運命に流されるように生きているシャロンは、ケビンに肩を抱かれているが、おそらくケビンと幸せに暮らし続けるわけではないだろう。麻薬売人のフアンが若くして亡くなっていることも暗示的だ。
アカデミー賞では、作品賞の発表の際に「ラ・ラ・ランド」と一度誤発表された逸話がある。

【5段階評価】4

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2023年5月11日 (木)

(2463) ロボコップ

【監督】ジョゼ・パジーリャ
【出演】ジョエル・キナマン、アビー・コーニッシュ、ゲイリー・オールドマン、マイケル・キートン、サミュエル・L・ジャクソン、パトリック・ガロウ
【制作】2014年、アメリカ

1987年の近未来SF作品「ロボコップ」のリブート作品。サイボーグとなった警官と家族の苦悩を描く。

悪人に敢然と立ち向かう警官、アレックス・マーフィ(ジョエル・キナマン)は、-.密輸組織のボス、バロン(パトリック・ガロウ)を逮捕するため、接近するが囮捜査で彼に接近するが、たれこみにより感づかれてしまう。相棒のジャック(マイケル・K・ウィリアムズ)は撃たれて重傷を負い、無事だったアレックスも、車に爆弾を仕込まれ、自宅で爆破に巻き込まれて瀕死の重傷を負う。
治安用ロボットを開発するオムニコープ社のCEO、レイモンド・セラーズ(マイケル・キートン)は、ロボットに否定的なアメリカの世論を覆すため、ノートン博士(ゲイリー・オールドマン)の協力を取り付け、アレックスの妻、クララ(アビー・コーニッシュ)の同意を得て、頭部と肺と片方の手のひらのみとなったアレックスをサイボーグとして再生する。
目覚めたアレックスは自分の姿に驚愕し、殺してくれとノートン博士に告げるが、妻と息子(ジョン・ポール・ラッタン)が彼を待っていると聞き、サイボーグ警官として生きることを決意する。家族との再会を果たしたアレックスだったが、機械の体を維持するため、すぐさま研究施設に逆戻りすることになる。
犯罪に関するデータを脳に叩き込まれたアレックスは、自分の爆発事故の情報も頭に入って興奮状態となる。ノートン博士は極限までアレックスの感情を抑え込み、アレックスの興奮状態は収まるが、今度は逆に、家族にすら何の感情も示さない状態となる。凶悪犯の逮捕を冷徹に次々と成し遂げるアレックスだったが、クララはアレックスと会わせてもらえず、オムニコープ社に対する不信を募らせていく。
アレックスはコンピュータによる制御を自らの意志で上書きし始め、バロン捜査の優先順位を勝手に高める。アレックスが近づいてくることを察知したバロンは大勢の部下とともに重火器で迎え撃つが、アレックスはバロンを仕留める。バロンのアジトに残された武器から、警察官の指紋を検出したアレックスは、汚職警官のもとに向かい、銃で攻撃しようとした汚職警官に反撃。黒幕が本部長(マリアンヌ・ジャン=バプティスト)だと知ったアレックスは本部長の逮捕に向かうが、セラーズと組んでいたリック・マトックス(ジャッキー・アール・ヘイリー)がアレックスの回路を遮断し、アレックスは無力化する。
アレックスを制御できなくなったと考えたセラーズは、アレックスが死んだことにしようと考え、クララにそう説明するが、アレックスはノートン博士によって解き放たれ、セラーズのもとに現れる。セラーズは赤いマーカーを腕につけており、プログラムによってアレックスはセラーズを撃つことができない。セラーズは勝ち誇ったように自分の銃をクララに向けるが、アレックスは自らの意志でプログラムを超え、セラーズを撃つ。撃たれたセラーズもアレックスを撃ち、相撃ちとなるが、セラーズは絶命し、アレックスはノートン博士によってよみがえる。目覚めたアレックスは再度、愛する妻と娘との再会を果たすのだった。

前作はB級感が漂いながらも痛快なアクション作品だったが、本作は家族愛に焦点が当たり、シリアスな内容。もちろん特撮のレベルは格段に上がっており、飽きさせずスタイリッシュな作品ではあったが、どちらが面白かったかというと、前者と言わざるを得なかった。

【5段階評価】4

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2023年3月 5日 (日)

(2452) 招かれざる客

【監督】スタンリー・クレイマー
【出演】シドニー・ポワチエ、キャサリン・ホートン、スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン
【制作】1967年、アメリカ

黒人男性と白人女性の結婚を巡る騒動を描いた作品。

黒人医師のジョン・プレンティス(シドニー・ポワチエ)と23歳の白人女性、ジョアナ・ドレイトン(キャサリン・ホートン)は結婚を決意。ジョアナはジョンを両親に会わせる。母親のクリスティーナ(キャサリン・ヘプバーン)は、驚きつつも娘の幸せを信じるが、リベラルを標榜する新聞社社長の父親マット(スペンサー・トレイシー)は素直に賛成できない。ジョンはクリスティーナとマットに、ジョアナには内緒で、二人の承諾がなければ自分は結婚しないと伝える。
プレンティス家の友人のライアン神父(セシル・ケラウェイ)は、ジョンとジョアナの結婚を素直に喜び、抵抗を示すマットを説得するが、マットの意志は変わらない。ジョンとジョアナは、ジョンの両親と会う。元郵便配達夫の父親(ロイ・グレン)は、マットと同様に息子の結婚に反対し、母親(ビア・リチャーズ)は理解を示す。二人は、プレンティス家に招かれ、四人は互いに会話を交わす。ジョンの母親と話したマットは、自分は最低だ、とつぶやき、全員を部屋に招いて、二人の結婚を認める決意を話す。ジョンとジョアナは喜び、クリスティーナは夫の翻意に涙する。マットはジョンの父親の肩に手をやり、食事の席に彼を促すのだった。

始めは、白人家庭に取り入る黒人青年の策略が展開するのかという予感がしたが、真正面から人種の異なる男女の結婚の問題を扱った作品だった。黒人と白人の結婚が、これほどの大問題なんだということが興味深かった。脚本の力で成立させており、言葉に力がある。最後に見せるマットの決意表明は感動的だった。

【5段階評価】4

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2023年2月25日 (土)

(2449) 植村直己物語

【監督】佐藤純彌
【出演】西田敏行、倍賞千恵子、古尾谷雅人、乙羽信子、若林豪、竹脇無我、山岡久乃
【制作】1986年、日本

冒険家、上村直美の半生を描いた作品。

明治大学の山岳部に入った植村直己(西田敏行)は、登山経験の豊かな小川正夫に触発され、海外での登山にあこがれる。自分が就職に向いていないと自覚する植村は、無一文の状態で海外に行き、働きながら登山をする。ヒマラヤのゴジュンバ・カンの登山隊に追加で加わることになった植村は、資金や準備にかかわっていないにもかかわらず登頂を成功させる立場になり、誇らしさよりも罪悪感を感じる。
彼は、ヨーロッパのモンブラン、アフリカのキリマンジャロ、南米のアコンカグアの単独登頂に成功。しかし北米のマッキンリーは単独登頂が認められておらず、断念。その後、エベレストが日本に解禁となり、登山隊に入った植村は日本人初の登頂メンバーとなる。しかし登山隊の中には、彼が登頂メンバーに選ばれたことに不満の声を上げる者もいた。ついにマッキンリーの単独登頂も成功させた植村は、国際的なエベレストの団体登山のメンバーに選出され、仲間のために奮闘するが、各国のエゴが渦巻く中、登頂は失敗。もともと気の小さい性格で、仲間との登山に遠慮や確執を感じるようになった植村は、単独での冒険を志すようになる。エベレストは単独で挑めるものではないことを体得した植村は、北極点、南極点の踏破を目指すことにする。
近所の豆腐屋の娘、野崎公子(倍賞千恵子)を見初めた植村は、彼女に自著を渡す。公子はそれを読んで彼の不器用な生きざまを知り、二人の関係が深まっていく。植村がグリーンランドからアラスカに至る12,000kmの単独犬ぞり踏破を企画したころ、二人は結婚する。植村は12,000kmの踏破成功のあと、北極点からグリーンランド縦断の単独犬ぞり踏破も成功させる。南極点踏破はフォークランド紛争のため断念することになり、植村は日本で登山やサバイバル技術を教え、自閉症の人に自然を体験できる野外学校を開く夢を公子に語る。植村が危険な冒険から手を引く決断をしたことを、公子は喜ぶ。植村は、学校開設の準備の勉強のためにわたったアメリカで、マッキンリーの冬季登頂に挑むが、消息を絶ってしまう。明治大学のOBら仲間が懸命に植村を探すが、見つかるのは彼の装備品と登頂の形跡だけ。装備品なしでの生存可能性はなく、捜査は打ち切られる。彼を待っている間、母(山岡久乃)を亡くし、流産も経験した公子であったが、彼女は彼の生存を信じ、彼と出会えたことを幸せだと語るのだった。

植村直己という人物は、おそらく「変わり者」だったのだろう。単独での冒険に挑む勇気の裏には、団体の中で自分の居場所を見出すのが苦手という特性が見え隠れする。そういう変わり者も、突き抜けるとこういう偉業を成し遂げるのだということを教えてくれた。
雪山や極地の映像には迫真性がある。脚色めいた誇張はない。犬ぞりを引く彼の前に立ちはだかる、猛吹雪や、当然ながら人が通ることを全く考慮していない乱氷帯。この映像だけで、この冒険がいかに過酷なものだったのかが伝わってくる。犬に逃げられそうになったり、ホワイトアウトに巻き込まれたり、といった死と隣り合わせの極限状況を描きながら、彼の冒険の過酷さを、CGのない時代に映像化しきった撮影陣の努力は相当なものだっただろう。

【5段階評価】4

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2023年2月18日 (土)

(2447) ソニック・ザ・ムービー

【監督】ジェフ・ファウラー
【出演】ジェームズ・マースデン、ベン・シュワルツ(声)、ジム・キャリー、ティカ・サンプター
【制作】2020年、アメリカ、日本

SEGAのアクションゲーム、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を題材にしたアクション映画。

宇宙のとある星に住むソニック(ベン・シュワルツ)は、素早い動きが自慢。彼は、自分を狙う悪党から逃れるため、フクロウのロングクローの作ったリングで地球にワープする。ソニックは誰にも見つからないよう孤独に暮らすが、楽しそうに野球をしている少年達がうらやましく、夜中に野球のグラウンドを走り回る。すると、ソニックの放った衝撃で町中が停電。この事件の謎を追うため、マッドサイエンティストのドクター・ロボトニック(ジム・キャリー)がやってくる。追撃をかわすため、ソニックは地球を逃げ出すことにし、ワープ用のリングを発動させる場所として保安官のトム・ワカウスキー(ジェームズ・マースデン)の家を選ぶ。トムは忍び込んだソニックを見つけ、思わず麻酔銃を放つ。ふらついたソニックは持っていたワープ用のリングを落とし、ワープ先はサンフランシスコに。ソニックが持っていたリングを収めた袋は、サンフランシスコのビルの屋上にワープしてしまう。
トムはソニックを連れてサンフランシスコに行くことにする。獣医の妻マディ(ティカ・サンプター)を味方に付け、サンフランシスコに到着。ビルの屋上でリングの袋を手に入れるが、そこに飛行メカに乗ったロボトニックが現れる。ロボトニックはソニックを捕まえようとするが、トムの友情を力に変えたソニックは、リングを使ってロボトニックをキノコの星に送り込むことに成功。ソニックはトムの家の屋根裏に部屋を用意してもらい、地球に住み続けることにするのだった。

ソニックという、マリオになりきれない準メジャーキャラが主人公ということで、あまり期待をせずに観たのだが、予想を超える面白さだった。ソニックが、地球にいる間にかなえたい願いを書いたバケツリストを実現していく様子は清々しく、トムの仲間の町の人達がロボトニックに挑むところも胸が熱くなる。ゲーム仕立てのエンドクレジットもよかった。メジャー度で言えば遥かに格上と思われる「名探偵ピカチュウ」より、格段に上出来。

【5段階評価】4

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2023年1月14日 (土)

(2442) プラスティック

【監督】ジュリアン・ギルビー
【出演】エド・スペリーアス、アルフィー・アレン、エマ・リグビー、セバスチャン・デ・スーザ、ウィル・ポールター
【制作】2015年、イギリス

カード詐欺を繰り返す若者の運命を描いた作品。実話に基づいている。

サム(エド・スペリーアス)、フォーディ(ウィル・ポールター)、イェーツ(アルフィー・アレン)、ラファ(セバスチャン・デ・スーザ)の四人は、ロンドンでカード詐欺を働く若い犯罪集団。ある日、イェーツとラファは、カーセックス中の男性の車を襲撃し、男性の持つクレジットカードとスーツケースを強奪。ところがその男は犯罪組織の会計士だった。サムとフォーディが、だまし取った宝飾品を手にアジトに戻ると、そこには犯罪組織のボスのマルセル(トーマス・クレッチマン)と用心棒2名、そして会計士がおり、イェーツとラファは全裸で猿轡をされていた。マルセルは四人に、2週間以内に200万ポンド(約3億円)を要求する。四人は途方に暮れる。
サムは、思いを寄せていた女性フランキー(エマ・リグビー)がカード会社で働いていることを知り、彼女のメールをハッキング。彼女が父親の入院費に困っていることを調べ上げると、自分が弟の入院費のためにカード詐欺をしているとフランキーに告げ、彼女を仲間に引き入れる。彼らは、フランキーが手に入れた、限度額の高いクレジットカードの情報をもとに、マイアミで稼ぐことにする。ところがイェーツとラファはストリップバーで羽目を外し、詐欺に使う予定のカードを飲み代の支払いに使おうとして、店にそのカードを押収されてしまう。カードが使えなくなり、彼らは計画変更を余儀なくされる。そのときラファが、結婚のうわさがあるブルネイの王子になりすまして、宝石店から高額な宝飾品をだまし取るという詐欺を思いつく。四人は準備を進めるが、イェーツはサムと仲たがい。サムがフランキーと恋仲になったことを知ると、サムがフランキーをだまして仲間に引き入れたことをフランキーにばらす。フランキーは怒って彼らのもとを去る。マルセルは手下のタリク(メム・フェルダ)を使って彼らを監視しており、フランキーを拉致すると、サムたちを改めて脅迫。四人は計画を実行に移す。
彼らは小型ジェットをチャーターすると、ブルネイ王子を騙って宝石店の男を騙し、高額の宝飾品をロンドンに運ばせる。ブルネイ王子役のラファが乗るリムジンと、イェーツが乗るリムジンをすり替えて、後続の車に乗る宝石屋を騙すという作戦だったが、作戦が成功すると同時に、イェーツはサムを裏切り、ラファを強引に仲間にして宝石をすべて我が物にする。彼はミスターXという男と宝石の取引をしようとするが、ミスターXの手下がラファの脚を銃で撃ち、イェーツはミスターXに脅される。一方、宝石の場所をGPSで追っていたサムはマルセルに連絡を入れ、マルセル一味をイェーツのいるホテルに呼ぶ。サムとフォーディは車からマルセルが下りたことを確認すると、車に残っていた会計士を脅し、トランクに幽閉されていたフランキーを逃がして、車でマルセルを待ち伏せる。マルセルとその手下は、イェーツの取引現場となっているホテルの部屋に行くが、ミスターX側とマルセル側は激しい銃撃戦となる。ミスターXは死亡し、マルセルも銃弾を受ける。イェーツとラファはホテルから逃走。マルセルも何とか逃げ出し、自分の車に乗り込むが、そこにはサムとフォーディが待ち受けていた。サムはマルセルに銃を向けたままイェーツを追う。走ってホテルから逃げたイェーツは、脚を負傷しているラファを気遣う様子もなく、車を運転していた妊婦を車から引きずりおろして車に乗り込み、逃走。ラファは妊婦に気遣うが、追っていた警官に捕らえられる。GPSでサムの持つ宝石を追っていたサムとフォーディは、サムの車にに突っ込む。それにより、イェーツとマルセルは死亡。横転した車から出られなくなったサムは、フォーディに逃げろと叫び、フォーディは泣く泣くスーツケースを持って走り去る。ラファとサムは逮捕される。
そして2年後。サムは刑期を終えると、迷惑をかけたフランキーにこっそりと盗んだ宝石を渡す。サムとフォーディはどうやら大金持ちになっているようだった。

詐欺のテクニックが赤裸々に描かれ、映像もスタイリッシュで見ごたえのある作品。極悪非道のマルセルやミスターX、仲間を裏切ったイェーツが死に、詐欺を働きつつも自分を犠牲にして仲間を逃がしたサムと、サムを必死に助けようとしたフォーディがまんまと大金を手に入れるというエンディングは、単純な勧善懲悪ではなく、粋な終わり方。今回はムービープラスの視聴だったが、なかなかよかった。

【5段階評価】4

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2023年1月13日 (金)

(2441) インヘリタンス

【監督】ボーン・スタイン
【出演】リリー・コリンズ、サイモン・ペッグ、チェイス・クロフォード、コニー・ニールセン
【制作】2020年、アメリカ

自宅の裏庭に監禁された男を発見した女性検事の運命を描いたサスペンス作品。

富豪の銀行家アーチャー・モンロー(パトリック・ウォーバートン)が急死。妻のキャサリン(コニー・ニールセン)と、下院議員に立候補中の息子のウィリアム(チェイス・クロフォード)は巨額の遺産を手にするが、長女の女性検事ローレン・モンロー(リリー・コリンズ)の相続額ははるかに少なかった(と言っても100万ドルだが)。アーチャーの顧問弁護士ハロルド・シューリス(マイケル・ビーチ)はローレンに、遺言とは別に、アーチャーから預かっていたというビデオメッセージを渡す。そこには、アーチャーから裏庭の地下室に、墓場まで持っていくべき秘密があるというメッセージが遺されていた。
ローレンが地下室を調べると、中に首輪をかけられた老人がつながれていた。ローレンは男の指紋を取ってエミリオ・サンチェス刑事(ジョエル・ヘレラ)に調べるよう依頼する。ローレンは男に話しかける。男はモーガン・ワーナーと名乗り、モンロー家の事情をよく知っていた。ローレンはモーガンの求めに応じて食事を与え、それと引き換えに話を聞き出す。彼はアーチャーの旧友だったが、若い頃に二人の乗った車が人を轢き殺してしまい、死体を山に埋めたものの、その直後にアーチャーに殴られ、地下室に監禁されてしまったというのだ。ローレンは、モーガン・ワーナーという行方不明者がいないかエミリオに調査を依頼する。モーガンを信用していいか迷うローレンだったが、モーガンの言う通り、アーチャーに愛人がいる事実や、山中に実際に白骨死体があることを確認し、ローレンはモーガンの話を信じざるを得なくなる。モーガンはアーチャーのせいで長年、地下室で同じものだけを食べて生き続けてきた苦しみを訴え、ローレンに解放を懇願する。ローレンは良心に従い、彼を解放するとともに、生活に必要な資金を提供し、ハロルドに命じてケイマン諸島に旅立たせる。
その頃、モーガンの調査結果が自宅に届く。ローレンは地下室の整理をしていたため、その書類を母親のキャサリンが開封。ローレンは書類が届いていることに気づき、慌てて帰宅すると、書類を開けて驚いている母親と対面する。母親は、男は極悪人カーソンだと告げる。果たして、指紋の鑑別結果が指した人物の名はモーガンではなかった。また行方不明者のモーガンの写真は全くの別人だった。ローレンは慌ててハロルドのいた空港に行くが、ハロルドとパイロットは死体となっていた。ローレンは地下室に戻り、そこに母親が倒れているのを発見する。地下室にカーソンが現れ、明かりを消すとローレンに襲い掛かり、手錠と鎖でローレンを地下室に拘束する。カーソンは暴行されてぐったりしたキャサリンと、自由を奪われたローレン相手に、得意げに真相を語り始める。カーソンは若いとき、アーチャーの妻キャサリンに薬物を飲ませて彼女をレイプ。そのことでカーソンとアーチャーが口論中、人を轢いてしまう。カーソンは、名家アーチャーの弱みを握って骨までしゃぶりつくそうと考え、まだ息のあった被害者の首を折って殺害。遺体を山に埋めるが、アーチャーが隙をついてカーソンを昏倒させ、地下室に閉じ込めていたのだった。カーソンはアーチャーから受ける暴力に耐えながら復讐の機会をうかがっており、ある日、アーチャーがカーソンに打とうとした毒薬の注射を逆にアーチャーに打つことに成功。逃げ出したアーチャーが外で絶命したのだった。カーソンは、自分がお前の父親だ、と勝ち誇ったようにローレンに叫ぶが、キャサリンが背後からカーソンを撃ち殺す。自分がアーチャーの実の娘ではないという真実を知ったローレンだったが、キャサリンはローレンに寄り添い、あなたはモンロー家の一員だと伝えて手を握る。二人は地下室に油をまくと火を放ち、地下室の外から炎をじっとみつめるのだった。

世間の評判はよくないようだが、なかなか面白い作品だった。ローレンがモーガンを逃がしたところで、どんでん返しがあることを観客は予想するわけだが、きちんとその期待に応え、身の毛のよだつどんでん返しが起きる。これがよかった。さらによかったのがタイトルの妙。「インヘリタンス」は遺産や相続という意味だが、これには二つの意味が込められている。一つは、ローレンが遺産として相続したのが、カーソンというとんでもない人物であるということ。これはカーソン(モーガンになりすましているときの)やローレンが作中で口にしている。もう一つは、作中でははっきりと語られないが、なぜローレンの相続額が極端に少なかったのか、という謎。また、なぜアーチャーとローレンはたびたび衝突を繰り返してきたのか。それは、ローレンがアーチャーの実の子ではなかったからだということが暗示される。ローレンの周囲の人々は、アーチャーは娘を誇りに思っていたとローレンに言っていたが、それは実は、アーチャー自身が自らに、ローレンを自分の娘だと認めないといけないと言い聞かせているようにも思えるのだった。
ちなみに、カーソンは劇中で何度も何かのレシピを唱えているのだが、それが何の意味なのかはよくわからなかった。

【5段階評価】4

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2023年1月12日 (木)

(2440) 俺たちは天使じゃない

【監督】ニール・ジョーダン
【出演】ロバート・デ・ニーロ、ショーン・ペン、デミ・ムーア、レイ・マカナリー、ジェームズ・ルッソ
【制作】1989年、アメリカ

二人の脱獄囚が神父になりすましてカナダに逃げようとする様を描いたコメディ作品。1955年の同名映画のリメイク。

カナダ国境にあるアメリカの刑務所から、凶悪殺人犯のボビー(ジェームズ・ルッソ)が脱獄を企てる。たまたま近くにいたネッド(ロバート・デ・ニーロ)とジミー(ショーン・ペン)は、彼の脱獄に巻き込まれる形で刑務所を脱走する。ボビーと離れた二人が道を歩いていると、老婦人(エリザベス・ローレンス)の運転する車が通りかかる。老婦人は二人を神父と勘違いし、車に乗せる。国境の町では涙の聖母の祭りの時期を迎えており、多くの神父がいた。二人はレベスク神父(ホイト・アクストン)に、著名な書籍の作者であるブラウン神父とライリー神父だと勘違いされ、そのまま教会に連れて行かれる。
ネッドは神父のふりをしながら何とかカナダに渡る手段を探す。ネッドが懺悔室に隠れて足かせをはずそうとしていると、保安官が横の部屋に入ってくる。彼は妻以外の女と寝たと罪を告白し、強引にネッドを寝た相手モリー(デミ・ムーア)と引き合わせる。モリーには聾唖の娘がおり、娘の聾唖を直せない宗教に、モリーは全く関心がなかった。
刑務所長(レイ・マカナリー)が部下を引き連れて町に現れ、血眼になって脱獄囚を探し始める。ネッドは、教会に置かれている涙の聖母をカナダの姉妹教会に運ぶ行進があると聞き、それに参加することにする。行進に加わるには病気を持った人を連れて歩く必要があり、ネッドはモリーに娘を貸してほしいと頼むが、モリーは100ドルを要求。ネッドはジミーに協力を求める。ジミーは信者が差し出した紙幣を集め始める。ネッドが町を歩いていると銃声が鳴り響く。隠れていたボビーが銃を盗もうと店に入り、撃たれたのだ。脱獄囚が打たれたと聞いてジミーだと勘違いしたネッドは、ボビーに神父になりすましている姿を見せてしまう。留置場に入れられたボビーは、自分を助け出さないと巻き添えにするとネッドを脅す。ネッドはジミーにそのことを話すが、その矢先、ジミーがくじによって儀式の前のスピーチをすることになってしまう。壇上に上げられたジミーは、たまたま手にしていた熊対策の銃のチラシを見ながら適当なことを話し始めるが、次第に気分が乗ってきて、素晴らしい演説を披露。町の人々は大喝采し、聞いていたモリーも涙する。スピーチの最中に牢屋の鍵をくすねてボビーを連れ出したネッドは、ボビーを涙の聖母の乗った神輿に隠す。モリーはお金なしで娘をネッドに預ける。ネッドとジミーは、モリーの娘を連れて行進に参加する。ところが、国境の橋の上でボビーの存在がバレてしまい、ボビーはモリーの娘を人質にとる。ジミーはボビーにつかみかかり、仁王立ちになったボビーは保安官たちによって銃撃され、橋の下の川に落下。そのはずみでモリーの娘も川に落ちてしまう。ネッドは意を決して川に飛び込むと、流れてきた涙の聖母に捕まり、川岸にたどり着く。そのとき、モリーの娘が「抜けて・・・きた」と声を出す。人々は娘が声を出したことに感動するが、ネッドとジミーは、自分たちが刑務所を抜けてきたことがバレたと考え、大慌て。しかしレベスク神父は「カトリックを抜けた? 」と二人に尋ね、事なきを得る。
危機を脱した二人は、晴れてカナダに渡ろうとするが、ジミーは神父として生きることを決意。アメリカに戻る。ネッドはモリーと新たな人生を歩む道を選ぶのだった。

ロバート・デ・ニーロが肩をすくめながら両手を挙げるしぐさがこれでもか、と見られる作品。ニセ神父であることがばれそうでばれない様子が楽しく、二人の仕草も、真に受ける周囲の人々も、また、疑ってかかる人々もみんなユーモラス。ずっと臆病でおどおどしていたジミーが、演説の経験を経て人が変わり、ボビーに飛びかかるところはほほえましかった。
序盤にデミ・ムーアの豊満な胸をちょこっと拝むことができるのだが、必要なシーンだったのかは謎。サービスカットかも。

【5段階評価】4

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2023年1月 7日 (土)

(2435) ミスター・ベースボール

【監督】フレッド・スケピシ
【出演】トム・セレック、高倉健、高梨亜矢、塩屋俊、デニス・ヘイバート、穂積隆信
【制作】1992年、アメリカ、イギリス

中日ドラゴンズに移籍した大リーガーの活躍を描いた野球映画。

ワールドシリーズでMVPに輝いた経歴を持つスラッガー、ジャック・エリオット(トム・セレック)は、成績不振や素行の悪さから、所属するヤンキースを追われ、トレードされることになる。トレード先は日本の中日ドラゴンズだった。やる気の出ないジャックは、厳しい内山監督(高倉健)やチームメイトと対立。通訳の西村洋次(塩屋俊)の忠告を聞かず、監督のバントの指示にも素直に従わない。成績の振るわないジャックは、試合で頭にデッドボールを受け、チームメイトの助っ人外国人、マックス・デュボア(デニス・ヘイバート)の忠告も聞かず、乱闘を起こして処分を受ける。
そんな中、ジャックは、彼にCMの口を持ってきた謎の美女、ヒロ子(高梨亜矢)と恋人の関係となる。ヒロ子はジャックを実家に連れて行く。驚いたことに、ヒロ子の父親は内山監督だった。ジャックは内山家のもてなしに極めて失礼な対応を見せ、ヒロ子は怒って席を立ってしまう。内山監督はジャックを連れて散歩に出ると、自分自身がジャックの可能性を信じて球団に招いたのだと話す。ジャックは改心し、日本流のトレーニングに励み、純粋に野球のボールを打ちたいという強い思いを取り戻す。
心を入れ替え、チームメイトとも打ち解けたジャックは大活躍。内山監督自身が持っている7試合連続ホームランに並び、チームもライバル巨人と優勝争いをする状態になる。そんなジャックに、ドジャースへのシーズン中移籍の話が舞い込む。ジャックは喜び、一緒にいたヒロ子に話すが、ヒロ子は自分より野球を優先するジャックに失望する。
8試合連続ホームランのかかった巨人との直接対決の試合。ジャックは相手から敬遠作戦をとられ、記録に挑むことができない。そして6対5の一点差で迎えた9回裏。二死満塁で打席がジャックに回る。内山監督はジャックに打ての指示を送るが、ジャックは2ストライクの状況から意表を突いたスクイズバントを行う。一塁への捨て身の突進により二走者が帰還し、チームはサヨナラ勝利。ジャックは監督と抱き合って喜ぶ。監督はジャックとヒロ子の中を取り持つため、娘を説得。ヒロ子と父親の関係も修復される。
年が明け、ジャックはデトロイトタイガースに移籍。選手権コーチとなる。ヒロ子もアメリカでデザイナーとして働きながらジャックを応援するのだった。

日本の野球文化や食事のマナーなどが扱われているのが特徴。いわゆるトンデモ日本描写ではなく、誠実に日本の習慣を描いているので、日本人が観て不愉快になるようなことはなく、「そうか、日本では当たり前のことも外国人には奇妙に映るのか」といった気づきやあるあるが楽しい。ラストシーンはハッピーエンドなわけだが、それが日本でのプレーを続けることではなく、大リーグに戻ることであったのは、さすがにそうなのか、とちょっと寂しかった。
作品に登場する野球選手の中には、実際の元プロ野球選手がいたりして、本当に野球がうまいのも面白い。ジャック役のトム・セレックも、打つシーンだけでなく、シートノックのシーンも違和感なく演じているし、デニス・ヘイバートも、本当に助っ人外国人のような立派なバッティングフォームを見せる。レオン・リーやアニマル・レスリーなど、実際の助っ人外国人が出演しているのも、日本人には楽しい趣向だった。

【5段階評価】4

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