評価4の映画

2021年2月 4日 (木)

(2318) レベッカ

【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【出演】ジョーン・フォンティン、ローレンス・オリビエ、ジュディス・アンダーソン、レジナルド・デニー
【制作】1940年、アメリカ

富豪の先妻の死を巡るサスペンス映画。第13回アカデミー賞作品賞受賞作品。

ホッパー夫人(フローレンス・ベイツ)の秘書をしていた若い女性(ジョーン・フォンティン)が、富豪のマキシム・ド・ウィンター(ローレンス・オリビエ)に見初められ、結婚する。ド・ウィンター夫人となった女性はマキシムの屋敷で暮らすことになるが、使用人のダンバース夫人(ジュディス・アンダーソン)は女性に冷たい態度を取る。マキシムにはレベッカという先妻がいたが、彼女は海で事故に遭い、命を落としていた。ダンバース夫人はレベッカ付きの使用人でレベッカを崇拝していた。ド・ウィンター夫人は、自分が常にレベッカと比べられていると感じる。
夫人はマキシムの姉ベアトリス(グラディス・クーパー)の勧めもあり、仮装パーティを開くことにし、ダンバース夫人の助言で屋敷に飾られていた絵の衣装を着るが、それは亡くなったレベッカの姿だった。マキシムに着替えろと叱責された夫人はダンバース夫人を責めるが、ダンバース夫人は夫人への悪意をむき出しにする。そのとき、海で救難信号が打ち上がり、難破船とともに小舟が見つかったとの報告が入る。夫人はマキシムが海辺の小屋にいるのを発見。マキシムは、小舟からはレベッカの死体が見つかるだろう、レベッカを海に沈めたのは自分だから、と驚きの告白をする。彼はレベッカを憎んでいた。彼女は美貌と知性と家柄を兼ね備えながら、実は性悪な女で、マキシムとの関係は冷え切っており、従弟のファベル(ジョージ・サンダース)と浮気していたのだ。ある日彼女は、海辺の小屋の中で、自分は妊娠した、産まれる子はマキシムの子ではないが屋敷を継ぐことになる、さあどうする、とマキシムを挑発。ところが彼女は直後に転倒して頭を打ち、死んでしまう。マキシムは自分が疑われるのを恐れ、彼女を船に乗せて船の壁に穴を空け、船ごと沈めたのだった。
レベッカの死について再び裁判が開かれることになり、船大工は発見された小舟には内側から穴を空けた痕跡があったと証言。マキシムは裁判官から、レベッカとの関係は良好だったのかと詰問されて、つい激昂。それを見た夫人が卒倒したため、裁判は休憩に入る。マキシムと夫人が二人で休憩をとろうとすると、ファベルが現れる。彼はレベッカから受け取ったという手紙をちらつかせてマキシムを脅迫。マキシムは脅しに屈せず、警察管区長のジュリアン大佐(C・オーブリー・スミス)を同席させてファベルの言い分を聞く。彼はレベッカが妊娠していて直前まで医者の診察を受けており、自殺するはずがなく、マキシムがレベッカを殺したのだと説明。ファベルの連れてきたダンベール夫人が、レベッカの通っていた医者の名を証言したため、大佐はマキシムやファベルとともに話を聞きに行く。ファベルは、レベッカは妊娠していたのだろう、と担当医だったベイカー医師(レオ・G・キャロル)に詰め寄るが、ベイカーは彼女は末期癌だったと証言する。レベッカは自分の命が数ヶ月と知り、マキシムに自分を殺させようとしていたのだった。医師の証言により、レベッカの死は自殺と判断され、マキシムの疑いは晴れる。ファベルは、レベッカは癌だったこと、マキシムと夫人は幸せに暮らすだろう、とダンベール夫人に報告する。ダンベール夫人は正気を失い、屋敷に火を放つ。マキシムが屋敷に戻ったときには、屋敷は業火に包まれていた。マキシムと夫人は抱き合って屋敷を見つめる。レベッカの使っていた部屋に残っていたダンベール夫人の上に、燃えさかる家屋が崩れ落ち、レベッカのベッドが炎に包まれるのだった。

序盤はシンデレラストーリーのような展開を描きつつ、マキシムが妙に海に怯えるという微妙な違和感を織り交ぜ、徐々にレベッカという女性の影が作品を覆い始める。最後はレベッカの死の真相についてのどんでん返しまで用意されている。二転三転する物語の展開から目が離せない、見応えのあるサスペンス作品。
面白いのは、タイトルにもなっているレベッカは、作品を通じて一度も画面に登場しないことだ。それでも観客は、レベッカが海辺の小屋で勝ち誇った顔でマキシムを挑発する姿を思い浮かべただろう。全く微笑みを浮かべないダンベール夫人の表情も印象的で、ラストシーンの彼女の狂気の張り付いた形相はトラウマ級。白黒だが、十分に楽しめる作品だった。

【5段階評価】4

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2021年2月 1日 (月)

(2315) 白い恐怖

【監督】アルフレッド・ヒッチコック
【出演】イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック、マイケル・チェーホフ、レオ・G・キャロル
【制作】1945年、アメリカ

記憶を失った男と、彼の秘密に迫ろうとする女性精神科医を描いたサスペンス映画。

精神科医のコンスタンス・ピーターソン(イングリッド・バーグマン)の勤める病院に、新しい院長が着任。エドワーズ(グレゴリー・ペック)と名乗る男は周囲の想像より若く、コンスタンスはエドワーズと恋に落ちる。しかし彼はなぜか白地に線の入ったテーブルクロスや服に怯え、やがてエドワーズになりすました偽物だと判明する。男は自分がエドワーズを殺害して本人になりすましているのだと考え、コンスタンスに迷惑をかけまいと病院から失踪するが、コンスタンスは彼の記憶を呼び戻すため、恩師の精神科医ブルロフ博士(マイケル・チェーホフ)の家に彼を連れて行く。ブルロフとコンスタンスは男の記憶にある情景を聞き出し、彼が怯えているのはスキー場のシュプールであること、彼がスキー場でエドワーズと一緒だったことを突き止める。コンスタンスは男をスキー場に連れて行く。二人でスキーを滑りながら崖から落下しそうになった男は、自分が子どもの頃、階段の手すりを滑った拍子に手すりに座っていた弟を突き飛ばして事故死させていたこと、自分の名がジョン・バランタインであることを思い出す。ジョンは、弟の事故死とエドワーズ失踪の記憶が入り交じり、自分がエドワーズを殺したと思い込んだのだ。コンスタンスはそう診断して安堵するが、二人の元に警察が現れ、エドワーズの死体が発見されたこと、エドワーズは背中から銃で撃たれていたことを告げ、ジョンは逮捕されてしまう。
院長のマーチソン(レオ・G・キャロル)は病院に戻ってきたコンスタンスを慰めるが、コンスタンスは、はじめエドワーズに会ったことがないと言っていたマーチソンが、面識があったと口を滑らせたことに気づく。エドワーズは院長室に行ってジョンの夢診断によれば、マーチソンがエドワーズを撃ち殺したという真相にたどり着くことを説明する。マーチソンは開き直って銃をコンスタンスに向けるが、コンスタンスは、自分を撃てば死刑は逃れられないだろうと言い捨て、堂々と院長室から立ち去る。観念したマーチソンはコンスタンスに向けた銃を自分に向け、引き金を引く。ジョンの疑いは晴れ、コンスタンスとジョンはブルロフに見送られ、めでたく新婚旅行に旅立つのだった。

なぜ男はストライプの白地に怯えるのか。観客の興味を引きつけながら展開するサスペンスはさすが。恐怖に怯えるジョンの顔とか、バスルームの白色に圧倒されて我を忘れ、カミソリを片手にベッドで眠るコンスタンスに歩み寄るジョンの顔への光の当たり具合とか、ドキドキ感を盛り立てる演出が素晴らしい。
白黒映画だが、コンスタンスに向けた銃がぐるっと回転してこちら向きに銃を放つ瞬間、画面が真っ赤に染まる。ほんの一瞬なのでデコードの影響かと思ったが、そうではなさそうだ。若いグレゴリー・ペックの顔は、最近見たからというだけかもしれないが、ディーン・フジオカに面影が似ていると感じた。

【5段階評価】4

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2021年1月29日 (金)

(2312) 記憶にございません!

【監督】三谷幸喜
【出演】中井貴一、ディーン・フジオカ、小池栄子、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、吉田羊、斉藤由貴、田中圭
【制作】2019年、日本

記憶喪失になった支持率最低の総理大臣の復活劇を描いたコメディ作品。

総理大臣の黒田啓介(中井貴一)は、聴衆の投石が頭に当たり、記憶を失った状態で目覚める。秘書官の井坂(ディーン・フジオカ)はその事実を隠して総理を任務に当たらせる。記憶を失う前の黒田は、横柄で口汚く、私腹を肥やすことを考えていた男だったが、記憶を失った黒田は謙虚で遠慮深く、何とか任務をこなすうち、過去のしがらみに影響されない清廉な総理になることを決意するようになる。事務秘書官の番場のぞみ(小池栄子)は黒田を応援し、井坂は影響力の強い鶴丸官房長官(草刈正雄)を退任させる必要があると進言する。黒田は、不都合な写真を売りつけようと自分に接近していた政治ゴロの古郡(佐藤浩市)を呼び、鶴丸の弱みを握る証拠を掴むよう依頼する。
古郡は、ゴルフ協会の名誉会長である鶴丸が、ゴルフ中に不正行為を働いている写真を古郡に突きつけ、鶴丸は退任するが、鼬の最後っ屁とばかりに、古郡が持っていた、黒田の妻、聡子(石田ゆり子)と井坂の密会写真を週刊誌に暴く。しかし黒田は国会中継の場で、自分の愛が足りなかったと妻に詫び、やり直したいと改めて愛を告白。黒田を嫌っていた聡子はそれを聞いて黒田のもとに戻る。それでも黒田の支持率は微増にすぎなかったが、父親を軽蔑していた息子の篤彦(濱田龍臣)が「僕もいつか、総理大臣になりたい」と言うのを聞き、黒田は満足そうに微笑んで頷くのだった。

三谷幸喜作品らしい、ユーモラスで痛快な政治コメディ。声を上げて笑ってしまうようなシーンもあれば、妻への謝罪シーンや、最後の息子の告白のシーンでは目頭が熱くなる。「面白いなあ」としみじみ思いながら観ることができ、ずんの飯尾和樹やジャルジャルの後藤淳平、有働由美子なんかが隠れキャラ的に出ているのも面白く、サービス精神に富んだ作品。フィリピンパブがどうとか、ところどころ今ひとつなギャグもありはしたが。
ところで映画の内容ではないのだが、本作を放送したのはフジテレビの土曜プレミアム。この番組の度しがたい点は、CM明けにすっと本編に入らず、これまでのハイライトを映すのはまだしも、これから先のシーンの内容をばらすような映像やテロップを流すという愚挙を犯すことだ。本作だと、この先、アメリカの大統領が登場します、みたいなことを字幕で出したり、あろうことか大統領(木村佳乃)と黒田が握手する画面までハイライトで映してしまうのだ。本作では、アメリカンチェリーの関税に関して、黒田と大統領が反発し、大統領が「こんな傲慢な首相は初めてだ」と共同記者会見で話すシーンがあるのだが、ハイライトシーンを見てしまっているから、この後どんでん返しがあるな、と観る側は分かってしまい、案の定、大統領は、こういう腹を割って話すことが必要だ、と黒田を持ち上げて握手を求める。このフジテレビの無神経な先見せのせいで、せっかく盛り上がるシーンが台無しになっている。視聴者をつなぎ止めたいのかなんだかしらないが、映画制作者の意図をも踏みにじるようなことをしてまで、する必要のあることとはとても思えないのだった。

【5段階評価】4

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2021年1月25日 (月)

(2308) 嵐を呼ぶ男

【監督】井上梅次
【出演】石原裕次郎、北原三枝、青山恭二、小夜福子、芦川いづみ、金子信雄、白木マリ、岡田眞澄、笈田敏夫
【制作】1957年、日本

弟思いのドラマーの運命を描いた作品。

ジャズバンドの支配人、美弥子(北原三枝)は、ドラマーのチャーリー(笈田敏夫)が抜けた代役に、流しのミュージシャンをしている国分正一(石原裕次郎)を雇う。正一の弟の英次(青山恭二)も兄の勧めで音楽の道に進んでいたが、音楽に理解のない母親の貞代(小夜福子)は、真面目な英次をヤクザな道に引きずり込んだと正一に恨み言を言い、正一がドラマーの職を得たことにも全く理解を示さない。正一は美弥子の家に住み込み、母親を見返してやろうと練習に明け暮れる。
正一は、音楽評論家の左京徹(金子信雄)が美弥子をものにしようとしていることを知り、自分を売り込む記事を書けば美弥子との仲を取り持つと左京に持ちかける。左京は約束通り正一を記事やテレビ番組で取り上げ、チャーリーと正一のドラム勝負を番組で提案する。正一はそれを受けることにするが、対決の前日、チャーリーが付き合っているダンサー、メリー(白木マリ)を巡るいざこざから、チャーリーの事務所のボクサー崩れ(高品格)にヤキを入れられ左手を負傷。正一は怪我を押して対決に挑み、左腕が動かなくなると、その手でマイクを掴み、「おいらはドラマー、ヤクザなドラマー」と歌い出す。観客は大興奮し、正一の人気は不動のものとなる。正一はジャズミュージシャン部門の人気投票で一位となり、その喜びを母親に伝えに行くが、貞代は英次が音楽の道に進むことが決定的になってしまったと嘆き、全く正一のことを認めない。正一はショックで母親の元を飛び出す。帰宅した正一に、美弥子は愛を告白。二人は恋仲となる。
それを知った左京は、英次がクラシックコンサートの指揮者に選抜されたことを正一に伝え、美弥子を諦めないと英次の出世の邪魔をすることをほのめかす。正一はやむなく美弥子のもとを去る。しかし美弥子は、左京がチャーリーや正一を美弥子の元から去るよう画策していたことに気づき、左京を呼び出して縁を切ると宣言。左京は、そのやりとりを聞いていたチャーリーと手を組み、チャーリーがもといた事務所の持永(安部徹)のもとに向かうと、正一が持永の女のメリーのもとにいることを知らせ、正一への復讐を持ちかける。正一は確かにメリーのアパートにいたが、それは酔って倒れていた正一をメリーが家に連れ帰ったためだった。正一は泥酔しながら、自分は今でも美弥子を愛しているが左京に脅されて弟の成功のために美弥子との仲を諦めたことを涙ながらにメリーに告白していた。メリーのアパートに持永の一味が現れ、事情を説明しようとするメリーを殴りつけて正一を外に連れて行く。正一は弟の邪魔だけはしないでくれと左京に頼むと、持永の一味の襲撃に立ち向かうが、集団リンチを受けて右手を潰されてしまう。
英次のコンサートの日。正一は入院先の病院から姿を消していた。英次は正一がどこかで放送を聞いていると信じてコンサートに臨む。心配する美弥子が英次の控え室から出ると、メリーが現れ、正一が弟のために美弥子を諦めたこと、どれだけ頑張っても母親に認められなかったと言っていたことを美弥子に伝える。それを横で聞いていた貞代は、自分が正一にしてきた仕打ちにようやく気づき、涙する。正一が行きつけのジャズバーにいることを知った美弥子は、貞代を連れて正一の元に向かう。英次の曲を泣きながら聞いていた正一は、貞代から感謝と謝罪の言葉を聞き、少年のような微笑みを浮かべる。英次の指揮するコンサートはフィナーレを迎え、会場は大きな拍手に包まれるのだった。

石原裕次郎が暴れん坊ヒーローを演じる娯楽作品かと思っていたら、母親に愛されない不遇な青年が、母親の理解を得られるまでを描いた感動作だった。「エデンの東」を彷彿とさせる内容で、メリーや、アパートの管理人の娘のみどり(芦川いづみ)、チャーリーといった主要な登場人物がストーリーの要所に絡んで登場人物に無駄がなく、シナリオが秀逸。石原裕次郎の主演映画はいろいろ観たが、これが最も感動的だった。殴り合うシーンの嘘っぽさはちょっと残念だったが。

【5段階評価】4

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2021年1月24日 (日)

(2307) ベン・イズ・バック

【監督】ピーター・ヘッジズ
【出演】ジュリア・ロバーツ、ルーカス・ヘッジズ、キャスリン・ニュートン、コートニー・B・バンス
【制作】2018年、アメリカ

薬物依存症の息子を守るために奔走する母親の奮闘を描いた作品。

クリスマス・イブの朝。ホリー・バーンズ(ジュリア・ロバーツ)の家に、薬物依存症の矯正施設に入院していた息子、ベン(ルーカス・ヘッジズ)が帰ってくる。継父のニール(コートニー・B・バンス)とベンの妹アイビー(キャスリン・ニュートン)は、勝手に帰ってきたことを心配するが、ホリーはベンを受け入れる。その夜、ホリーたちが家族で出席した教会の催しから帰ってくると、家が何者かに荒らされ、飼い犬のポンスがいなくなっていた。ベンはニールにお前が帰ってきたからこうなったと責められ、家を抜け出す。ホリーはベンを追い、彼を車に乗せて一緒にポンスを探しに行く。家に押し入ったのは、ベンが関わっていた麻薬組織だった。ベンは母親の隙を突いて単身で車に乗り込み、麻薬組織のリーダー、クレイトン(マイケル・エスパー)のもとに向かう。ベンはホリーに引き出してもらったお金で借金の一部を返済するが、クレイトンはベンに金だけではすまされないと言って麻薬取り引きの仲介を強要。ベンは何とかそれをやり終えると、クレイトンから一包みの薬物を報酬として渡され、ポンスを連れ戻すことに成功する。しかしポンスは車を途中で降り、薬物を摂取してショック状態となってしまう。ホリーはベンが車に残した置き手紙により彼の居場所を突き止め、何とか彼の意識を取り戻すことに成功するのだった。

アメリカで多くの死者を出して問題となっているオピオイド中毒を扱い、薬物依存の恐ろしさ、そこから抜け出すことも難しさをストレートに描いている。しかし、禁断症状で半狂乱になって叫んだり、暴力を振るったりといった、目を背けたくなるようなどぎついシーンは使っていない。ベンは常に感情を抑え込んでおり、冷静に薬物依存から抜け出そうと歯を食いしばっている。しかし周囲は彼を不審がり、継父はベンへの嫌悪感をあらわにするし、母親ですら彼への不信感をはっきりと伝え、ベンは常に感情の爆発の危険にさらされる。麻薬組織も、ベンとの縁を切ろうとせず、彼を薬物の世界に引き込もうとする。しかしベンは継父に感情的になることをせず、クレイトンにも冷静に犬を返してくれ、とだけ伝える。施設での訓練により、そこまで自分を抑制できるようになった彼でも、最後はショック状態になるのが分かっていながら、クレイトンに渡された麻薬に手を出してしまう。ホリーは継父とは別の意味でベンが再度薬物に手を出すことを確信しており、最後まで必死にベンを探し続け、彼をショック状態から救い出す。この愛情表現はなかなか深い。ジュリア・ロバーツやルーカス・ヘッジズの演技が素晴らしかった。
本作はBSテレ東4Kで観たが、番組の冒頭にジュリア・ロバーツとキャスリン・ニュートンのインタビューがあったのは、ちょっと嬉しいボーナスだった。

【5段階評価】4

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2021年1月16日 (土)

(2299) ムトゥ 踊るマハラジャ

【監督】K・S・ラビクマール
【出演】ラジニカーント、ミーナ、サラット・バーブ、ジャヤバーラティ、スバーシュリー
【制作】1995年、インド

とある使用人の活躍と出生の秘密を描いたミュージカル映画。

独身の富豪ラージャー(サラット・バーブ)に仕える使用人のムトゥ(ラジニカーント)は腕利きで、周囲の信頼を集める人気者。芝居好きのラージャーは、芝居で見かけた女優のランガナーヤキ(ミーナ)に一目惚れし、彼女との結婚を決意する。ある日、芝居の舞台になだれ込んできた悪漢からランガナーヤキを守るため、ラージャーは、ムトゥに彼女を連れて逃げるよう指示するが、ムトゥとランガナーヤキは一緒に逃亡を続けるうちに恋仲となる。
ラージャーの伯父アンバラッタール(ラーダー・ラビ)は、財産目当てに娘のパドミニ(スバーシュリー)をラージャーに嫁がせようとするが、ラージャーの心がランガナーヤキにあることを知り、手下のカーリ(ポンナーンバラム)を使ってムトゥがランガナーヤキを自分と結婚するよう脅しているという嘘を吹き込む。それを真に受けたラージャーはムトゥを追放してしまう。それを見たラージャーの母親シバガーミ(ジャヤバーラティ)はラージャーに驚愕の真実を話す。実はムトゥは使用人の身分ではなく、本来の地主であるシバガーミの兄(ラジニカーント、二役)の跡継ぎだった。彼がいとこに騙されて土地を奪われたとき、いとこを罰することをせずむしろ財産を譲って聖者として過ごすことに決め、その際、シバガーミが身分を内緒にすることを条件にムトゥを引き取り、使用人として育てていたのだった。ラージャーは自分の行いを悔い、聖者を屋敷に招こうとするが、アンバラッタールはカーリとともに夜道を行くラージャーを襲って川に投げ捨て、翌朝、カーリがムトゥがラージャーを殺したと叫んで回る。そこにムトゥが現れ、カーリに向かってラージャーに何をしたと激怒。あまりの怒りにカーリはアンバラッタールの指示であることを白状する。今度はアンバラッタールは大勢の人に追われる番となるが、そこにラージャーとパドミニが姿を現す。ラージャーは聖者に救助され、無事だったのだ。おそらくパドミニが介抱し、ラージャーはパドミニを愛することを決めたのだろう。アンバラッタールはラージャーに謝罪し、許しを得る。ラージャーはムトゥとランガナーヤキの手を握らせ、二人の愛を祝福する。ムトゥは晴れて屋敷に戻る。ラージャーはムトゥをご主人様と呼ぶが、ムトゥはラージャーが身につけていた使用人の手ぬぐいを自分の腰に巻き、いつものように高らかに歌声を響かせるのだった。

序盤はドタバタコメディでおバカミュージカルのノリなのだが、後半、一転してシリアスな展開となるのが面白い。ミュージカルシーンは、アメリカのミュージカルのように街の中を背景とせず、大がかりな舞台やセットの中で踊るようなスタイル。カット割りを多用し、凝った作りになっている。ランガナーヤキ役のミーナ、パドミニ役のスバーシュリーはどちらも美人女優だが、腰の辺りの贅肉もふくよかで、この辺りはインド人の好みなのかもしれない。終盤で、アンバラッタールが怒った人々に追いかけられるのだが、その数が異様に多く、「こんなにエキストラ必要ないだろ」とツッコみたくなること間違いなし。唯一恋が実らなかった脇役のテーナッパン(センディル)にも、出家するという落ちを用意し、放っておかないところも微笑ましい。そんな妙なこだわりも含めて、いわゆるボリウッドムービーの代表作として、一度は観ておきたい作品。

【5段階評価】4

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2021年1月15日 (金)

(2298) ウエスト・サイド物語

【監督】ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンズ
【出演】ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノ、ラス・タンブリン
【制作】1961年、アメリカ

若い不良集団の抗争と一組の男女の恋を描いたミュージカル映画。第34回アカデミー賞作品賞受賞作品。

ポーランド系アメリカ人の若者集団、ジェット団と、プエルトリコ系アメリカ人のシャーク団は、空き地の縄張り争いをしていた。ジェット団のリーダー、リフ(ラス・タンブリン)は元ジェット団の兄貴分トニー(リチャード・ベイマー)に協力を求める。シャーク団のリーダー、ベルナルド(ジョージ・チャキリス)は妹のマリア(ナタリー・ウッド)を地元のダンスパーティに連れて行く。マリアとトニーはそのダンスパーティで出会い、互いを運命の人だと確信する。ベルナルドは反対するが、二人は夜に隠れて会い、互いの愛を深めていく。
リフとベルナルドは縄張り争いを一対一の決闘で決着を付けることにする。決闘の場に現れたトニーは、なんとか無益な争いを阻止しようとするが、興奮したリフとベルナルドがナイフを取り出し、ベルナルドがリフを刺してしまう。それを見たトニーは衝動的にベルナルドをナイフで切りつける。パトカーのサイレンが聞こえ、ジェット団とシャーク団は逃げ出し、その場には倒れたリフとベルナルドだけが残される。二人はそのまま命を落とす。
兄の死を悲しむマリアの部屋にトニーが現れる。マリアはトニーを責めるが、トニーは自分が止めようとしたことを説得し、二人で街を出ようと言って去って行く。ベルナルドの恋人アニタ(リタ・モレノ)はマリアのトニーへの真実の愛を理解し、警察の尋問を受けることになったマリアに代わってトニーにメッセージを伝えに行くが、トニーを匿っているジェット団がアニタに暴行を働く。怒ったアニタは、マリアを好きだったチノ(ホセ・デ・ベガ)が、マリアとトニーの関係を知ってマリアを撃ち殺した、という嘘の伝言をトニーに伝えるよう吐き捨て、その場を去る。それを知らされたトニーはショックを受け、自分を殺せと叫びながら街を歩く。しかし暗闇の中にマリアが現れ、トニーは喜びながらマリアに駆け寄るが、そこにチノが現れてトニーを撃ち、トニーはマリアの腕の中で息を引き取る。マリアは銃ではなく憎しみがみんなの命を奪ったと叫び、くずおれる。刑事が現れチノは捕まり、ジェット団とシャーク団は協力してトニーの亡骸を運ぶ。集まった若者達は無言でちりじりになっていくのだった。

芝居のさなかに唐突に歌い出す典型的なミュージカル映画。有名な曲がいくつもある。ジェット団とシャーク団の勇ましい曲だけでなく、恋愛を歌うメロディアスな曲も目立つ。シャーク団の男女が掛け合いをしながら歌う「アメリカ」は、ラップバトルの原型のようで歌詞が楽しく、こういう時代からアメリカ人は歌の掛け合いになじんでいるのだなと分かる。

【5段階評価】4

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2021年1月13日 (水)

(2296) 天気の子

【監督】新海誠
【出演】醍醐虎汰朗(声)、森七菜(声)、小栗旬(声)、本田翼(声)、吉柳咲良(声)
【制作】2019年、日本

東京に家出した少年と天気を変える能力を手にした少女の運命を描いたアニメ映画。

病気の母親を看病していた天野陽菜(森七菜)は、雨の中、一筋の光が差しているのを見つけ、その光が当たる廃ビルの屋上の神社で、不思議な能力を手に入れる。同じ頃、東京に家出してきた16歳の少年、森嶋帆高(醍醐虎汰朗)は、住む場所がなくビル街で野宿していたとき、ゴミ箱の中に拳銃があるのを見つけ、鞄にそれをしまい込む。生活に困った帆高は、東京に行くフェリーで偶然出会った須賀圭介(小栗旬)を訪ね、彼の経営する事務所で住み込みの雑用係を始める。ある日、街を歩いていた帆高は、かつてが怪しい男にビルの中に連れ込まれそうになっている陽菜を見つけ、彼女を助ける。帆高は以前、陽菜がアルバイトをしていたマクドナルドで毎晩過ごしており、陽菜に内緒でハンバーガーをもらったことがあったのだ。陽菜は帆高に、自分が祈ると空が晴れるという能力があるところを見せる。それを見た帆高は、異常気象で雨ばかり降る東京で、空を晴れにする依頼をネットで募集し、報酬を得るという仕事を始める。晴れた空に感謝する人々を見て、陽菜は自分の役目に喜びを感じるが、その能力は大きな代償を伴うものだった。天気の巫女は異常気象を元に戻す代わりに人柱となって天に消えていくというのだ。捜索願が出ていて拳銃所持の疑いもあった帆高は警察に追われており、陽菜とその弟の凪(吉柳咲良)とともにラブホテルの一室で一夜を明かすが、朝になると、陽菜の姿は消えていた。帆高は陽菜にもう一度会うため、警察に追われながら、陽菜が能力を手にしたという廃ビルの屋上を目指す。屋上の神社にたどり着いた帆高は、積乱雲の上の世界に飛ばされる。空を落下しながら帆高は、雲の中の魚に囲まれた陽菜を発見。帆高は陽菜と一緒に地上に戻ることを願い、陽菜もそれに答え、二人は手を取り合って元の世界に戻る。その後、逮捕された帆高は保護観察処分となって地元に帰る。3年後、帆高は地元の高校を卒業し、東京に向かう。東京はあれから3年間雨が降り続けており、多くの土地が水没していた。帆高は3年ぶりに会った圭介にけしかけられ、再び陽菜に会いに行く。陽菜は田端の高台で空に祈りを捧げていた。二人は抱き合い、再会を喜び合うのだった。

オープニングの窓ガラスを落ちる雨の雫から、写実的な映像と天気の描写が美しい。CGっぽくない手描き風の背景が、実写映画のように視点の転回に伴ってなめらかに変化するという丁寧な作り。その一方で、雲の上の想像の世界の映像は幻想的で、ジブリ映画のようでもあった。帆高が神社を目指して非常階段を駆け上がるシーンは、音楽も相まって感動的。「君の名は。」の登場人物が作品内に隠れキャラ的に登場しているのも、ファンには楽しい仕掛けだ。

【5段階評価】4

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2021年1月 4日 (月)

(2287) ワンダーウーマン

【監督】パティ・ジェンキンス
【出演】ガル・ガドット、クリス・パイン、デビッド・シューリス、ロビン・ライト、エレナ・アナヤ
【制作】2017年、アメリカ

アメコミ・ヒーロー、ワンダーウーマンの活躍を描いたSFアクション作品。

女ばかりのアマゾン族が住むセミッシラ島の王女ダイアナ(ガル・ガドット)は、母親ヒッポリタ女王(コニー・ニールセン)の妹アンティオペ(ロビン・ライト)から武術の指導を受け、美貌と強さを兼ね添えた女性に成長。ある日、ドイツに潜入しているアメリカのスパイ、スティーブ・トレバー(クリス・パイン)がセミッシラ島に現れ、彼を追ってきたドイツ軍との戦いでアンティオペが命を落とす。スティーブはドイツ軍が開発している毒ガス兵器の情報をイギリスに持ち帰る密命を帯びていた。ダイアナは、ドイツの策略は、幼い頃から聞かされていた戦争を引き起こす邪神アレスのしわざと考え、反対する母親を説得して、戦争を終わらせるためスティーブとともにイギリスに渡る。
スティーブは、ドクター・ポイズンことイザベル・マル博士(エレナ・アナヤ)から盗んだ毒ガス兵器のノートをもとに、ドイツを早めに叩くよう英軍上層部を説得するが、理解が得られない。しかしパトリック・モーガン卿(デビッド・シューリス)が協力を申し出て、スティーブとダイアナは、仲間とともにドイツ軍との戦いに挑む。
毒ガス兵器開発を進めている好戦的な性格のルーデンドルフ総監(ダニー・ヒューストン)が、アレスの乗り移った姿だと確信したダイアナは、激闘の末、彼を倒すが、毒ガス兵器の開発はやまず、兵器は飛行機に積載されてしまう。そこに現れたのはモーガン卿だった。彼こそがアレスだった。モーガン卿との死闘のさなか、スティーブは毒ガス兵器を積んだ飛行機に乗り込み、空中で爆破。それを見たダイアナは潜在能力が覚醒。モーガン卿を倒す。それにより、ドイツ兵は憑き物が落ちたように戦いの終結を喜ぶ。
時が移り現代。第一次世界大戦当時のダイアナの活躍を収めた写真を眺めるのは、劣らぬ美貌をたたえたダイアナだった。

ベッタベタなヒーロー名だし、主人公は女性だし、マーベルコミックヒーローの作品の中では最もつまらないだろうという先入観で見始めたのだが、どっこい一番よかったかも、というほどの作品だった。序盤の絵画風の映像で神話の時代の物語を女王が語るシーンはオリジナリティが高く、見応えがあった。こういうところをしっかり作り込むのには惚れ惚れする。ドイツ兵とワンダーウーマンやアマゾン族との戦いも、スローモーションも織り交ぜながらアマゾン族の高い身体能力と戦闘技術を巧みに表現。CGを駆使してやたら凝った表現をした結果、映像がごちゃごちゃしすぎて何が起きているかほとんど分からない作品もある中、見せたいものを分かりやすく見せることに徹しながら、迫力もオリジナリティもあるという映像表現は、簡単なようでなかなかできない。また、アマゾン族の戦士たちも、よく集めたなと思うぐらい、力強さと美しさを兼ね備えた大勢の女性が演じている。ワンダーウーマンのコスチュームも、胸元やふとももは露わだがいやらしさはなく、かわいさやセクシーさではなく女性の「かっこよさ」を描いた作品だった。

【5段階評価】4

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2021年1月 1日 (金)

(2284) パディントン2

【監督】ポール・キング
【出演】ベン・ウィショー(声)、ヒュー・グラント、ブレンダン・グリーソン、ヒュー・ボネビル、サリー・ホーキンス
【制作】2017年、イギリス、フランス

飛び出す絵本を手に入れるため奮闘するクマと人々との交流を描いたコメディ作品。

ブラウン一家の家族としてロンドンで暮らすクマ、パディントン(ベン・ウィショー)は、骨董品屋でロンドンの風景を題材にした飛び出す絵本を見て、ペルーで暮らすルーシーおばさん(イメルダ・スタウントン)にプレゼントしようと決める。ところが、その本は宝のありかを示す秘密の本だったことから、落ち目の俳優フェニックス・ブキャナン(ヒュー・グラント)が骨董品屋に忍び込み、絵本を盗み出す。フェニックスが家に入るところをたまたま目撃したパディントンは、彼を追いかけるが、警官はパディントンが骨董品屋に盗みに入ったと勘違いし、パディントンを逮捕。パディントンは刑務所行きとなる。
刑務所で恐れられているコックのナックルズ(ブレンダン・グリーソン)に、持っていたマーマレードサンドを気に入られたパディントンは、ナックルズをはじめ、囚人達と友達になる。ナックルズとその仲間は、パディントンが無実の罪で投獄されていることを知り、濡れ衣を晴らそうと言ってパディントンとともに脱獄する。ナックルズたちは一緒に外国に逃げようとパディントンを誘うが、パディントンは断り、ブラウン家に電話。ブラウン家はパディントンのために捜査を続け、ブキャナンが犯人であることを突き止めていた。パディントンとブラウン一家はブキャナンが乗った電車に乗り込み、ブキャナンを退治する。
絵本は捜査の証拠品として持ち去られてしまったが、ブラウン一家や街の人々は、ルーシーおばさんをロンドンに招待していた。パディントンは喜び、やってきたルーシーおばさんに抱きつくのだった。

前作に続いて、本作も心が温まり、家族愛にほろっとするいい作品だった。コメディタッチだが、下品さは少なく(冒頭にゲップのシーンはあるが)、「Mr.ビーン」シリーズほど笑わそうとしすぎていない。刑務所で強面の囚人達がスイーツのレシピを知っていて、みんなでケーキパーティをするシーンも純粋に楽しいし、飛び出す絵本の中でパディントンとルーシーおばさんが歩き回るシーンも映像としてとても巧み。丁寧に作られた作品だった。

【5段階評価】4

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