評価4の映画

2024年7月19日 (金)

(2738) CUBE

【監督】ビンチェンゾ・ナタリ
【出演】モーリス・ディーン・ウィント、ニッキー・グァダーニ、ニコール・デ・ボア、デビッド・ヒューレット
【制作】1997年、カナダ

複数の立方体の部屋からなる建物に閉じ込められた人々の脱出劇を描いたカルト映画。日本でも「CUBE 一度入ったら、最後」としてリメイクされている。

6面全部に扉のある立方体の中に閉じ込められた人々。部屋にはところどころ罠が仕掛けられており、不用意に移動するとむごたらしい死が待っている。黒人警官のクエンティン(モーリス・ディーン・ウィント)がリーダーとなり、女医のハロウェイ(ニッキー・グァダーニ)、数学科の女子大生レブン(ニコール・デ・ボア)、脱獄7回の経験者レン(ウェイン・ロブソン)、愛想のない会社員ワース(デビッド・ヒューレット)が行動をともにする。レンは早々に罠にかかって死亡。途中で精神障害を持った青年カザン(アンドリュー・ミラー)が加わる。はじめはみんなを奮い立たせていたクエンティンだったが、次第にワースやハロウェイ、カザンに対して攻撃的になっていく。扉の先に書かれた3つの三桁の数字を手掛かりに、レブンが謎を解き始める。ワースが外壁の設計者だと分かり、一同はついに建物の端の部屋にたどり着く。衣服をロープ代わりにしてハロウェイが外の様子を確認するが、ロープを支えきれず、ハロウェイが落ちそうになる。クエンティンが身を乗り出してハロウェイの手をつかむが、疑心暗鬼に陥っていたクエンティンは、ハロウェイを落下させ、仲間には手が滑ったと嘘をつく。
仮眠の最中、クエンティンはレブンをそっと起こし、ワースとカザンを置いて移動しようと持ち掛けるが、レブンは拒否。そこにワースとカザンが追いつくと、クエンティンはワースをスパイ扱いして殴りつけ、下の部屋に突き落とす。そこにはレンの死体があった。彼らはもとの部屋に戻ってきていた。ワースは、部屋自体も動いていることに気づく。レブンは数字の因数の数がカギであることを解き明かす。カザンはサバン症候群で、因数の数を瞬時に言うことができた。一同はカザンに因数の数を言わせて部屋を進んでいく。クエンティンが凶悪な態度をむき出しにするようになったため、ワースはレブン、カザンと協力してクエンティンを下の部屋に落下させる。ついに彼らは外壁に通じる通路の役割を果たす部屋にたどり着き、外に通じる扉を開く。その時、追ってきたクエンティンが現れ、扉を開けるバーでレブンを突き殺し、ワースの腹も刺す。カザンは出口に向かい、クエンティンもそれを追うが、まだ息のあったワースがクエンティンにしがみつき、クエンティンは動き出した部屋と外壁に挟まれて死亡する。ワースは部屋の中に倒れ、カザンたった一人が、光に包まれた屋外に進むのだった。

非現実的な設定の中でのパニック・スリラー。細い金属線で「バイオハザード」のレーザー・トラップのように体が切り刻まれたり、顔が薬品で焼けただれたり、と残酷な描写もあり、ハラハラドキドキする展開。なぜこのような建物があり、誰が何の目的でここに人を送り込んだのか。その説明は一応なされるが、さほど深刻に考えてはいけない。特殊な状況は受け入れたうえで作品にのめり込む必要がある。クエンティンが最後に追いついてくるあたりは、盛り上げようとするのはわかるが、ちょっとやりすぎ。ただ、ワースやレブンが本当に死んだのかは明らかではなく、もしかすると続編で登場したりするのかもしれなかった。
「SAW」シリーズもそうだが、こういったカルト映画はなかなかテレビ放送されることはないので、今回放映してくれたテレビ大阪のシネマクラブに感謝。ただ、いつも字幕がないのと、エンディング間際で次回告知のテロップを出すのだけはなんとかしてほしい。本作は興味があったのであえて観たが、他の作品は正直、二か国語で字幕なしだと分かった段階で観ずに消去している。次回告知を終わり際に出すのも、「ああ、ここで終わりか」って分かって極めて興ざめなので、本当にやめてほしい。エンドロールも流してくれとまでは言わないので。(このことを知り合いのテレビ大阪の人に言ったら「投書したほうがいい」と言われました(笑)。ごもっとも。)

【5段階評価】4

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2024年7月16日 (火)

(2735) 蛇鶴八拳

【監督】チェン・チーホワ
【出演】ジャッキー・チェン、ノラ・ミャオ、カム・コン、キム・チンラン、リー・マンチン
【制作】1978年、香港

少林寺拳法の極意書を守る青年の活躍を描いたカンフー映画。

少林寺八流派の長老が集まって蛇鶴八歩の拳を編み出すが、その後、長老と極意書が行方不明となる。徐英風(ジャッキー・チェン)は、わざと蛇鶴八歩の拳の極意書を持ち歩き、それを狙って戦いを挑む者の相手をしながら、左肩に痣のある者を探す。その者こそが、長老7名を殺した犯人。生き残ったリン長老(チャン・シー)が、徐英風に蛇鶴八歩の拳の伝え、犯人捜しをしていたのだ。仲間の協力を得て、徐英風は、黒龍党のボス、錢(カム・コン)が真犯人であることを発見。長老は、果し合いを錢に申し込み、徐英風と錢が戦う。互角の戦いだったが、最後は徐英風が黄振中の鉄球を使って優勢に立ち、勝利するのだった。

リズミカルなカンフーの攻防と、椅子や木の板を使ったコミカルな攻撃などが見どころ。笛を武器に戦う美女(ノラ・ミャオ)や棒術を使う赤鼻の老人(リー・マンチン)など、個性的なキャラクターが登場するのも独創性があり、のちのジャッキー・チェンのカンフー映画の原点のような作品。ノラ・ミャオは、「ドラゴン怒りの鉄拳」でブルース・リー演じる主人公チャンの恋人役を演じたことで有名。

【5段階評価】4

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2024年7月14日 (日)

(2733) プリティ・リーグ

【監督】ペニー・マーシャル
【出演】ジーナ・デイビス、ロリ・ペティ、トム・ハンクス、マドンナ、ミーガン・カバナー、ロージー・オドネル、ビル・プルマン
【制作】1992年、アメリカ

第二次世界大戦中に誕生した女子プロ野球チームの活躍を描いた作品。

第二次世界大戦が起こり、プロ野球選手も兵役に就く。プロ野球の衰退を憂うチョコレート会社の経営者ハービー(ゲイリー・マーシャル)は、女子プロ野球リーグを立ち上げる。地元の野球チームのキャッチャーでスラッガーのドティ・ヒンソン(ジーナ・デイビス)は、スカウト(ジョン・ロビッツ)の目に留まり、入団テストを勧められる。出征中の夫がいるドティは断るが、ピッチャーの妹キット(ロリ・ペティ)に説得され、二人で入団テストに参加。妹とともにロックフォード・ピーチズの選手となる。
ピーチズの監督には、かつて名選手だったが酒癖の悪さから選手寿命を縮めて引退したジミー・ドゥーガン(トム・ハンクス)が就任。はじめは女性を選手と認めず、やる気のなかったジミーだったが、次第に監督をしっかり務めるようになる。キットは完璧で間違いのないドティに反発。ストレスを感じたドティはチームを去ろうとするが、リーグ運営を担当するローエンスティン(デビッド・ストラザーン)は、キットを他チームにトレードしてしまう。
チームメイトのベティ(トレイシー・ライナー)の夫が戦死したという訃報がとどき、ドティは夫の安否に不安になる。そこに夫のボブ(ビル・プルマン)が帰ってくる。ドティは喜び、野球をやめてボブとともにチームを去ることにする。ジミーは後悔するぞと引き留めるが、ドティは去る。ワールド・シリーズに進出したピーチズは、キットの移籍したラシーン・ベルズと闘うことになる。3勝ずつで迎えた最終戦に、ドティは復帰。ドティの活躍で2対1と逆転したピーチズは、9回裏の守備につく。ベルズはランナーを一人置いてキットの打順。キットが高めのボール球に手を出すと知っているドティは、ピッチャーのエレン・スー(フレディ・シンプソン)に高めのボール球を要求。キットは2回空振りするが、3球目を強打し、ランニングホームラン。ベルズはサヨナラ勝ちし、キットはヒーローとなる。試合に負けたベティだったが、チームメイトに歓迎されている妹の姿を見てほほ笑む。試合後、ベティとキットの間のわだかまりは溶け、二人は互いに抱き合い、将来の幸せを願いあう。
時がたち、老人となったドティ(リン・カートライト)は、殿堂入りの記念集会に参加。懐かしいチームメイトたちやキット(キャスリーン・バトラー)らと再会を喜び合うのだった。

見た目は悪いがスラッガーのマーラ・フーチ(ミーガン・カバナー)や、字の読めないシャーリー・ベイカー(アン・キューザック)など、登場しただけで応援したくなるような個性的な選手が登場。登場シーンでは悪者っぽいメイ(マドンナ)は、意外にもさほど悪役ぶりを発揮せず、メイの親友のドリス・マーフィ(ロージー・オドネル)のほうがキットに喧嘩を吹っかける粗野な役どころだった。
個性的な人物を登場させているが、試合内容はあまり深く描かれず、野球シーンは細切れであまり見どころはなかった。ボールをキャッチしたり打ったりするシーンは割ときちんと撮影されているが、残念ながら主役のドティのバッティングシーンはあまり上手とは言えなかった。男性でも野球の動作は素人っぽく見えるので、女子ならなおさらではある。最後がOG会のようになっていて、心温まるエンディングなのはよかった。エンドロールで、おばあさんたちが野球をしている様子が延々と流れるのはなんだかよくわからなかったが。

【5段階評価】4

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2024年7月12日 (金)

(2731) 鬼畜

【監督】野村芳太郎
【出演】緒形拳、岩下志麻、小川真由美、蟹江敬三、岩瀬浩規、吉沢美幸、石井旬、鈴木瑞穂、大竹しのぶ、田中邦衛
【制作】1978年、日本

松本清張の小説の映画化作品。三人の隠し子を押し付けられた男と妻のとった所業を描いている。

貧乏暮らしをしている菊代(小川真由美)は、6歳の長男、利一(りいち)(岩瀬浩規)、3歳の長女、良子(よしこ)(吉沢美幸)、まだ幼い次男の庄二(石井旬)を連れて、川越の印刷所、竹下印刷に向かう。そこでは竹中宗吉(緒形拳)、妻のお梅(岩下志麻)、従業員の阿久津(蟹江敬三)が働いていた。菊代は宗吉の妾で、十分な養育費がもらえず怒鳴り込みに来たのだった。お梅は驚き、夫をひっぱたく。菊代はお梅と宗吉に目いっぱい悪態をつくと、子供を残して失踪する。お梅は子供たちを露骨に毛嫌いし、邪険に扱う。次男の庄二は栄養不足で衰弱しており、宗吉は病院に運び込むが死亡する。お梅は一人片付いてよかったと宗吉に話し、宗吉は言葉を失う。庄二は死ぬ間際、印刷用のシートが覆いかぶさった状態だった。お梅の仕業かもしれなかった。
宗吉はお梅の圧力に屈するように、長女の良子を連れて東京に行き、良子がまだ父親の名前や住所を言えないことを確認した後、良子を東京タワーの展望台に置き去りにして家に帰る。利一は良子がいなくなった理由が尋常ではないことを薄々感じているようだった。お梅は利一が誰かに何かを話すのではないかと怯える。お梅は宗吉に青酸カリを渡し、少しずつ飲ませればわからないと宗吉に告げる。宗吉は利一を上野に連れていき、青酸カリをアンパンにまぶして利一に食べさせようとするが、利一は気づいたのか途中で吐き出し、毒殺は未遂に終わる。
お梅は、断崖から海に突き落とせば発見が遅れると言い、利一の服のタグを取り外して身元が調べられないようにする。宗吉は利一を連れて旅に出る。石川の東尋坊まで行ったが息子を突き落とすことはできず、二人は能登に向かう。能登の海辺で、宗吉は眠りこけた利一を抱きかかえると、海に落とし、立ち去る。
幸い、利一は海に落ちず、救助される。利一は婦警(大竹しのぶ)から優しく話しかけられ、事情を聴かれるが、利一は名前も住所も父親の名前も答えない。しかし、利一が持っていた石けり用の石が、石版印刷用の石の欠片だったことから、竹下印刷につながり、宗吉は刑事(鈴木瑞穂)に連れられて石川に向かい、利一と対面する。利一は、宗吉を見ても「父ちゃんじゃない。知らないおじさんだ」と言い続ける。宗吉は利一の足元に縋り付き、号泣しながら勘弁してくれ、と詫びる。宗吉は逮捕され、利一は石川県の児童相談所に預けられるのだった。

子供を殺すというショッキングなテーマを扱った作品。育児放棄という社会問題を取り上げた作品でもあった。岩下志麻の鬼のような児童虐待ぶりは迫力があり、緒形拳による気弱で不安定な宗吉の演技も見ごたえがあった。公開当時21歳の大竹しのぶの婦警さん役が作品に花を添えていた。

【5段階評価】4

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2024年7月10日 (水)

(2729) 名探偵コナン 黒鉄の魚影

【監督】立川譲
【出演】高山みなみ(声)、林原めぐみ(声)、山崎和佳奈(声)、種﨑敦美(声)
【制作】2023年、日本

名探偵コナン劇場版シリーズ第26作。洋上施設で起きる殺人事件と人物探索システムを巡る攻防を描いている。「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」の続作。「魚影」はサブマリンと読ませる。

江戸川コナン(高山みなみ)らは、ホエールウォッチングをしに八丈島に向かう。八丈島沖にはインターポールが洋上施設を建設。顔認証システムを発展させた老若認証システムと全世界の監視カメラを接続することで、年代を超えて人物の検索を可能にしようとしていた。コナンは白鳥刑事とともに施設内に入る。
システムの開発者、直美・アルジェント(種﨑敦美)が、黒ずくめの組織に誘拐される。彼らは記録映像に残された自らの痕跡を消去することに用いようとする。システムの機能によって、灰原哀(林原めぐみ)が、かつて組織にいたシェリーではないかと黒ずくめの組織は疑い、ホテルに泊まっていた哀を誘拐。潜水艦に拉致する。哀は直美を連れて潜水艦からの脱出に成功する。
組織を施設内に導いたのは、施設職員のレオンハルト(諏訪部順一)。レオンハルトは罪を認めて自殺したと思われたが、コナンは、職員に扮装した黒ずくめの組織の一員、ピンガ(村瀬歩)が殺害したと推理。ピンガは施設を抜けて海中に逃げ去る。老若認証システムが欠陥システムだと知った黒ずくめ組織のジン(堀之紀)は、施設を攻撃。さらに潜水艦も爆破し、潜水艦に逃げ込もうとしたピンガは爆発に巻き込まれる。
コナンは、潜水艦の位置をFBI捜査官の赤井秀一(池田秀一)に知らせるため、海中から光を放つが、爆発の衝撃で気を失う。哀は阿笠博士(緒方賢一)の発明した海中スクーターで海に潜り、コナンを発見。人工呼吸をしてコナンの意識を取り戻し、救い出す。コナンとキスをしたことになった哀だったが、助けに来た毛利蘭(山崎和佳奈)に突然キスをし、コナン(新一)の唇を蘭に返すのだった。

自殺に見せかけた殺人事件のトリックを推理するシーン、阿笠博士のクイズなども盛り込みつつ、犯罪組織との戦いを描いたアクションサスペンス調の作品。直美と哀が幼馴染だった(哀はしらばっくれるが)という過去も明かされるなど、哀に焦点が当たった作品でもあった。あまり面白いと思わなくなっていた名探偵コナンシリーズだったが、本作はよくできていた。

【5段階評価】4

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2024年7月 8日 (月)

(2727) 砂の器

【監督】野村芳太郎
【出演】丹波哲郎、森田健作、加藤剛、島田陽子、緒形拳、加藤嘉、春田和秀、佐分利信、山口果林
【制作】1974年、日本

蒲田操車場で起きた殺人事件を扱った作品。刑事の説明、過去の回想、ピアノ協奏曲が同時進行するクライマックスシーンが圧巻。

蒲田操車場で顔を殴打された身元不明の死体が発見される。刑事の今西栄太郎(丹波哲郎)と吉村弘(森田健作)が遺留品のマッチをもとに店の従業員に話を聞くと、殺された男には東北訛りがあり、もう一人の若い男に「かめだ」と言っていたという証言が得られる。若い男は白いスポーツシャツを着ており、相当の返り血を浴びたはずだが、シャツは発見されていない。その恰好で遠くに行くとは思えないため、男は蒲田近くに住んでいるのか、蒲田でシャツを処分したのかと思われた。今西と吉村は東北まで行くが手掛かりは得られない。帰りの食堂車で、二人は新進気鋭の音楽家、和賀英良(えいりょう)(加藤剛)を見かける。
手掛かりのないままだったが、ようやく死体の身元が判明する。岡山に住む三木謙一だった。謙一の養子の彰吉(松山省二)が、謙一が旅に出ると言って50日も戻らないので捜索願を出していたのだ。謙一が東北弁を話すはずはないと彰吉は言う。今西は国語研究所で、東北訛りと同じ音韻は出雲の一部にもあると聞かされ、島根県の地図を調べると、「亀嵩(かめだけ)」という地名を発見する。三木謙一はそこで長年巡査をしていた。亀嵩に赴いた今西が人々に話を聞くと、三木謙一は温情のある立派な人物で、乞食の親子の面倒を見たこともあり、彼を恨むような人はいないということだった。
吉村は、中央線の甲府付近で列車から紙吹雪を撒いている女がいたという新聞の随筆を読み、女が撒いたのは紙ではなく切り刻んだスポーツシャツではないかと考え、筆者の川野栄造(穂積隆信)に連絡。その女性の情報を教えてもらう。吉村は情報をもとに、高級クラブ「ボヌール」の女給、高木理恵子(島田陽子)に会う。吉村が理恵子に、中央線に乗らなかったかと聞くと、理恵子は否定し、そのまま席を外して行方をくらます。吉村は中央線沿線をしらみつぶしに調べ、血の付いた布の欠片を発見。鑑識の結果、血は三木謙一の血液型O型と一致する。理恵子は和賀の情婦だった。和賀には後援者の前大蔵大臣、田所重喜(しげき)(佐分利信)の娘、佐知子(山口果林)という婚約者がいた。理恵子は和賀の子を身ごもっており、和賀は堕ろすよう理恵子に命じていた。理恵子は生む決心をするが、出血流産し、そのまま命を落とす。
今西は、謙一が旅の途中で訪れた伊勢に向かい、謙一が宿泊中に行ったという映画館を訪ねる。事務所の壁には、田所重喜の写真があった。今西は、そこで別の写真に気づく(それが何かは後でわかる)。今西が亀嵩で話を聞いた、謙一の知人、桐原小十郎(笠智衆)から今西に手紙が届く。そこには謙一が養子にした乞食親子の名前と本籍地が記されていた。今西は本籍地の石川県上沼郡大畑村に向かい、親子の縁者(菅井きん)に話を聞く。父親の本浦千代吉が病を患って、母親は出ていき、千代吉は息子の秀夫を連れて村を離れたということだった。
今西は続いて、和賀英良の本籍地である大阪市浪速区の区役所を訪ねる(なぜ和賀英良の本籍を調べたのかは後でわかる)。区の職員(松田明)の説明によると、英良の両親は空襲で死亡しており、戸籍も焼失したため、本人の申し立てにより戸籍が作り直されたということだった。現地で話を聞くと、英良の両親とされる夫婦には子供はおらず、従業員の小僧をかわいがっていたということだった。
警視庁で合同捜査会議が開かれ、今西は和賀英良の逮捕状を要求。事件の全容を話す。和賀英良の本名は本浦秀夫。彼の父親、千代吉(加藤嘉)はらい病を患い、幼い秀夫(春田和秀)を連れて各地を転々としながら亀嵩にたどり着いた。謙一(緒形拳)は、息子と離れたがらない千代吉を説得してらい病の隔離病院に送り、秀夫を我が子として育てることにするが、秀夫は謙一の家を出ていき、大阪の和賀夫婦の世話になる。空襲を機に、秀夫は戸籍を捏造し、和賀英良として高校を出、音楽家としての道を歩んだのだった。謙一が映画館で見たものは、田所重喜や佐知子と並ぶ、和賀英良の写真だった。和賀英良が本浦秀夫だと気づいた謙一は、急遽、東京に向かって和賀に会い、まだ生きている父親に会うよう説得。自分の過去が明かされることを恐れた和賀が、秀夫の首に縄をつけてでも父親のもとに連れていくと話す謙一を殺害したのだった。
和賀は、自ら作曲したピアノ協奏曲「宿命」を大ホールで披露していた。今西と吉村は、和賀英良こと本浦秀夫の逮捕状を手に、ホールで待機するのだった。

殺害の動機は弱い気がするが、オーケストラの演奏を背景に、秀夫の幼少時代の回想と、今西の事件の全容の説明が同時に進む演出は見事。回想シーンはオーケストラの演奏がBGMとしてあるだけで無音声であり、これは、人形浄瑠璃における三味線と、声を出さず動く人形、そして語りをする太夫と同じスタイルになっているということらしい。回想シーンはちょっと長いなあと思ったが、名シーンだった。公開当時21歳の島田陽子のスレンダーなヌードも登場。とても美人である。

【5段階評価】4

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2024年6月16日 (日)

(2705) 桜色の風が咲く

【監督】松本准平
【出演】小雪、田中偉登、吉沢悠、吉田美佳子、リリー・フランキー
【制作】2022年、日本

視力と聴力を失った息子とその母親の生き様を描いた作品。実話に基づいている。

福島令子(小雪)と正美(吉沢悠)夫婦の三男、智(遠藤千空(せんくう))は、3歳の正月のとき、右目に異常が現れる。医者(リリー・フランキー)にかかり、治療を受け続けるが、最終的に眼球癆と診断され、右目を失明する。小学生になり、明るく生きる智(森優理斗)だったが、左目にも異常が出て、ついに全盲になってしまう。東京の盲学校に通うことになった智(田中偉登)は、女子学生、増田真奈美(吉田美佳子)の声とピアノの演奏を気に入るが、次第に聴力が衰えていく。処方される薬を信用できなくなった智は、食事療法や運動療法にも挑戦するが、効果はなく、ついに全盲聾となる。息子が絶望の淵に立たされていることを感じた令子は、心中することまで考えるが、夫の正美は、それは智が迷惑がるから死にたいなら一人で死ね、と強く諭す。
ある日、母親の支度が遅いと文句を言う智に言い返したくなった令子は、点字を打つのももどかしく、智の指に自分の指を当て、点字をタイプするように直接、文字を伝える。この指点字により、智は孤独から解放される。同級生の山本正人(山崎竜太郎)も指点字で、君には思索がある、と智を励ます。智は、自分が全盲聾であることでたどり着く場所があるのではないかと考え、大学進学を決意。智の覚悟を聞いた正美は、まだ未成年の智とビールを飲み交わす。智はまだ盲聾者で大学に進学した人が日本にいない時代に大学を卒業し、大学教授となったのだった。

全盲聾という状態に置かれた中で思索を繰り返し、だからこそ見える景色、だからこそたどり着ける境地を目指すという前向きな気持ちを持つことに、素直に感動する。自分が不幸だと考えている人は、本作を観てみるといいだろう。実はその不幸は、人生を豊かに、あるいは新たな成長の機会の糧だと考え直すことができるかもしれない。
個人的には、この実在の人物、福島智教授の講義を直接拝聴したことがあり、署名入りの書籍も持っている。こういう人が使命感を持って社会に貢献していることは、尊いことだと思う。一方で、こういう人には普通に生きてほしいとも思う。聖人君子である必要はない。立派な人物でなければいけないわけではない。誰だって、肩の力を抜いて人生を楽しむ権利があることも、再認識した気がした。

【5段階評価】4

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2024年6月 4日 (火)

(2693) イエスタデイ

【監督】ダニー・ボイル
【出演】ヒメーシュ・パテル、リリー・ジェームズ、ジョエル・フライ、エド・シーラン、ケイト・マッキノン
【制作】2019年、イギリス、アメリカ

ビートルズを誰も知らない世界で、ビートルズの歌で有名になっていくミュージシャンの人生を描いた作品。

世界が12秒停電になり、量販店でバイトをしながら音楽活動をしているジャック・マリス(ヒメーシュ・パテル)はバスに轢かれる。気がつくと、誰もビートルズを知らない世の中に変わっていた。ジャックはライブや地元番組でビートルズの歌を自分の曲として歌い始める。すると、有名アーティストのエド・シーラン(エド・シーラン)の目に止まり、彼の前座を務めることになる。エドのマネージャー、デブラ(ケイト・マッキノン)はジャックをデビューさせることにする。ジャックのマネージャーを担当してきた幼なじみで中学教師のエリー(リリー・ジェームズ)は、彼の成功を喜ぶ。ずっと男女の関係にはならずにいた二人は、ホテルの部屋で結ばれそうになるが、直前でエリーは拒み、二人の関係は終わる。
ジャックのデビューを記念するライブの直後、ジャックの知らないレオ(ジャスティン・エドワーズ)とリズ(サラ・ランカシャー)という男女が彼を訪ねてくる。二人はビートルズを記憶していた。責められることを覚悟したジャックだったが、二人はジャックがこの世にビートルズの曲を蘇らせたことに感謝し、ビートルズについて調べたメモをジャックに手渡す。ジャックはメモをもとに海沿いの一軒家を訪ねる。そこには78歳になったジョン・レノン(ロバート・カーライル)が住んでいた。ジャックは長生きしているジョンに会えたことに感激し、エリーへの愛を表現することを決意する。大きなライブで、ビートルズの曲を披露したジャックは、ステージの上からエリーに愛を告白。さらに、ビートルズの曲は自分で作曲したのではないことを告白し、楽曲を無料で公開する。スーパースターの道を自ら閉ざしたジャックはエリーと結ばれ、子ども達にビートルズの曲を楽しんでもらう人生を歩み始めたのだった。

ビートルズの曲の偉大さを再認識させられる作品。パラレルワールドものだが、小難しい理屈を語らないのがよい。ビートルズのほかにコカコーラやハリー・ポッターも世の中に存在しなくなっているというのも面白かった。終盤、見た瞬間に「年をとったジョン・レノンだ」と分かる老人が登場。クレジットに役者名がないのでCGなのかと思ったが、何とロバート・カーライルが演じていた。まあ、長髪真ん中分けにして丸眼鏡かけたらそれっぽくなるのかもしれないが、驚いた。

【5段階評価】4

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2024年5月22日 (水)

(2680) ジェイコブス・ラダー

【監督】エイドリアン・ライン
【出演】ティム・ロビンス、エリザベス・ペーニャ、ダニー・アイエロ、マコーレー・カルキン
【制作】1990年、アメリカ

ベトナム帰還兵の精神的な苦しみを描いた作品。

1971年10月6日、メコン川デルタ地帯。修士卒で仲間から教授と呼ばれている米兵ジェイコブ・シンガー(ティム・ロビンス)らは、ベトナム戦争に従軍中、戦闘状態に入る。仲間が何人か錯乱状態になり、ジェイコブは大混乱から逃れるが、正面から来た何者かに腹部を刺され、意識を失う。気が付くと、彼は電車の中でまどろんでいた。家では恋人のジェジー(エリザベス・ペーニャ)が彼を待っていた。彼には妻サラ(パトリシア・カレンバー)と三人の息子がいたが、ジェジーと同棲しているのだった。末っ子のゲイブ(マコーレー・カルキン)は事故死しており、ジェイコブは彼の写真を見て涙ぐむ。ジェイコブは電車に引かれそうになったり、車に追われたりし、悪魔に追われているような感覚に悩まされる。戦友のポール(プルイット・テイラー・ビンス)も同じ悩みを彼に打ち明けるが、彼は直後に車の爆発で死亡。葬儀で集まった戦友たちは、ベトナム戦争で何かの人体実験が行われたのではないかと話し合い、弁護士のギャリー(ジェイソン・アレクサンダー)に相談。ギャリーは一度依頼を引き受けるが、その後、断りの連絡を入れてくる。ジェイコブはギャリーに抗議するが、はねつけられる。すると、突然、黒ずくめの男たちに車に拉致され、過去を探るなと脅される。車から逃げ出したジェイコブは病院に運び込まれ、怪しい廃墟のようになった場所に連れ込まれる。そこにジェイコブの治療を担当していた整体師のルイス(ダニー・アイエロ)が現れ、彼を車いすに乗せて救い出す。彼の整体により、ジェイコブは再び歩けるようになる。
帰宅したジェイコブのもとに、ベトナムの件を知っているという化学者から会いたいと連絡が入る。化学者の名はマイケル(マット・クレイブン)。マイケルはジェイコブを人気のないところに連れていくと、自分のかかわった人体実験について話し出す。マイケルは、米兵を興奮させて攻撃的にする薬「ラダー」を開発し、米兵に投与。その結果、米兵は互いに殺し合ったのだと言う。ジェイコブを刺したのも、敵兵ではなく仲間だった。話を聞いたジェイコブは、サラたちと住んでいた家に向かう。中には人の住んでいる気配があり、階段にはゲイブが座っていた。ジェイコブがゲイブに近づくと、ゲイブは彼を二階へといざない、光に包まれる。ジェイコブは、ベトナムの野戦病院のベッドの上におり、息を引き取る。ベトナム戦争でBZという幻覚剤が実験的に兵士に使われたという報告があるが、国防省は否定したのだった。

どこが現実でどこが幻覚か、よくわからないまま話が進むのだが、結果的に、ジェイコブはベトナムで戦死しており、帰国後のことは全てが死ぬ間際に彼が見た幻だったということがわかる。ところどころ現実を超越したシーンがあることについて、すべて説明がつく形だ。「ホーム・アローン」でスターとなったマコーレー・カルキンが、主人公の末っ子役として重要な役どころを演じているが、本作ではクレジットなしである。

【5段階評価】4

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2024年5月17日 (金)

(2675) 異人たちとの夏

【監督】大林宣彦
【出演】風間杜夫、片岡鶴太郎、秋吉久美子、名取裕子、永島敏行
【制作】1988年、日本

少年時代に亡くなった両親に出会った男の運命を描いた作品。

脚本家の原田英雄(風間杜夫)は、離婚してマンションで一人暮らし。ある日、同じマンションに住む唯一の住人(名取裕子)がシャンパンを手に秀雄の部屋の玄関に現れる。彼女はシャンパンを一人では飲みきれないので一緒に飲もうと誘ってくるが、仕事中だった英雄は彼女を追い返す。
ある日、仕事終わりに、故郷の浅草に行って寄席に入った英雄は、客席に父親(片岡鶴太郎)によく似た男がいて驚く。男は英雄を見つけると当たり前のように外に秀雄を連れ出し、家に連れて帰る。中には母親(秋吉久美子)がおり、二人は英雄を歓迎する。二人は本当に英雄の両親だった。英雄の両親は、英雄が12歳の時に交通事故で亡くなっていた。英雄は優しく温かい両親との再会を喜ぶ。
英雄が自宅のマンションに戻ると、以前追い返した女がいた。ご機嫌の英雄は、女性に今度飲もうと声をかけ、後日、家に招く。彼女の名は藤野桂(けい)。英雄と桂は愛し合うようになる。桂は胸に火傷の痕があると言い、決して胸を見ないよう英雄に約束させる。英雄は両親の家をたびたび訪ねるようになるが、なぜかほほがこけ、目にクマができてやつれていく。桂は英雄が両親の亡霊に会っている話を聞き、両親に会いに行くのをやめさせようとするが、英雄は約束を守らず、鏡に映る彼の顔は死人のような形相になっていく。とうとう英雄は両親にもう会えないと切り出す。両親は悲しみつつも、英雄が衰弱していることを知り、英雄の頼みを聞き入れる。三人は最後の思い出に、と今半のすき焼きを食べに行く。しかし、すき焼きが煮えた頃には、二人の姿は幻のように消えかかっていた。英雄は子供のように泣きながら「行かないで!」と訴えるが、二人は英雄の前から消えてしまう。家に帰った英雄は、桂に慰められていた。英雄のマンションに、英雄の仕事仲間の間宮一郎(永島敏行)が現れる。衰弱している英雄が心配で訪ねてきたのだ。間宮はロビーで英雄を待つが、管理人(奥村公延)に、マンションには英雄しかおらず、もう一人の住人だった女性は胸をチーズナイフでめった刺しにして自殺したと告げる。間宮は急いで明かりのついている女性の部屋に飛び込む。中には老人のような顔になった英雄と、桂がいた。桂が胸をはだけると、そこにはいくつもの刺し傷があった。桂は英雄に冷たく追い返された夜、自殺したのだった。桂の体は宙に浮き、英雄を道連れにしようとする。英雄はそれを受け入れようとするが、間宮が英雄を守り、桂は一人で消滅する。英雄と間宮は、英雄の両親が住んでいた辺りに行き、両親を弔うと、その場を去るのだった。

子供の頃に亡くした両親との再会という感動的な話と、男に取り付いた女の亡霊という怪談話が同居する珍しい作品。英雄のやつれた顔が、恐怖映画の特殊メイクのようなので、ぞっとする怖さがある。両親との再会は悲しくも心温まる話なのだが、恐怖映画嫌いな人は、観ないほうがいいかもしれない。

【5段階評価】4

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