評価5の映画

2020年3月19日 (木)

(2035) シンドラーのリスト

【監督】スティーブン・スピルバーグ
【出演】リーアム・ニーソン、ベン・キングズレー、レイフ・ファインズ、エンベス・デイビッツ
【制作】1993年、アメリカ

第二次世界大戦中、多くのユダヤ人をホロコーストから救った男の軌跡を追った、実話に基づく作品。第66回アカデミー賞作品賞受賞作品。

戦争の特需に乗って一儲けしようと考えたオスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)は、賃金の安いユダヤ人を雇うことを思いつき、会計士のイザック・シュターン(ベン・キングズレー)を雇って工場を運営する。ドイツ軍がユダヤ人を虐殺していく中、シンドラーは賄賂を使いながら自分の工場の従業員を収容所から取り返す。はじめは金儲けのためにやっていたシンドラーだったが、理由もなくユダヤ人を殺害する残虐なアーモン・ゲート少尉(レイフ・ファインズ)のやり方を見ている中で、ある決断を下す。それは、儲けた金で収容所のユダヤ人を買い取り、自分の工場で働かせるというものだった。シンドラーは、イザックに1,000人以上のユダヤ人リストを作らせ、工場に迎え入れる。やがて戦争は終わり、ユダヤ人は解放される。今ではシンドラーのユダヤ人と子孫は6,000人にも及ぶのだった。

問答無用に撃たれたユダヤ人が脳天から血を吹き出したり、健康状態を見るため素っ裸で走らされたり、という生々しい描写は壮絶。白黒だからなのか、男性器もはっきり映っていたりするし、女性の裸体もスピルバーグ作品とは思えないほど多い。ドキュメンタリー風の描き方をすることで、作品に強烈な迫真性を与えることに成功している。
戦争が終わり、ナチス党員として逃亡生活を余儀なくされることとなるシンドラーが、ユダヤ人の従業員たちと別れるラスト近くのシーン。シンドラーはイザックから、シンドラーの善行を説明した従業員全員の署名付きの文書とともに、工員が急ごしらえで作った指輪をプレゼントされる。それを受け取ったシンドラーは、イザックの手を取り、もっと多く救えたのに、この車を売れば10人を、このバッジで2人を救えたのに、と嘆いて嗚咽する。このシーンを見るまでは、いい映画だけど評価は4かなと考えていたのだが、ここで評価は5になった。この作品は前にも観たことがあり、一人だけ赤い服を着た少女のシーンや、若者が一列に並ばされてライフルの貫通力を試すかのように何人も殺されるシーンは印象に残っていたのだが、ラスト近くでこんな印象的なシーンがあったことを不覚にも忘れていた。3時間を超える長い作品だが、退屈さを感じさせない秀作。ただやっぱり、これほどの名作でも、ドイツ軍人はほとんどのシーンで英語を話すのだった。違う国籍同士の会話だから、とか、理由はこじつけているのだろうけれども、これだけリアリティを追求しておきながら、どうしてもひっかかるのだった。

【5段階評価】5

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2020年3月10日 (火)

(2026) リメンバー・ミー

【監督】リー・アンクリッチ
【出演】アンソニー・ゴンザレス(声)、ガエル・ガルシア・ベルナル(声)、ベンジャミン・ブラット(声)
【制作】2017年、アメリカ

音楽好きの少年が家族との絆を取り戻す姿を描いた3DCGアニメ作品。

先祖の父親が家族を捨てて音楽の道を選んだことで、音楽を忌み嫌っているリベラ家。リベラ家の少年、ミゲル(アンソニー・ゴンザレス)は伝説の歌手、エルネスト・デラクルス(ベンジャミン・ブラット)に憧れる音楽好きの少年。家族を捨てたという先祖の父親の写真は、顔の部分が破り取られていたが、持っているギターがデラクルスと同じだった。それに気づいたミゲルは、自分も音楽をやっていいんだ、と喜ぶが、祖母のエレナ(レニー・ビクター)に持っていたギターをたたき壊されてしまう。困ったミゲルはデラクルスの記念館に飾られているギターを盗み出そうとするが、その瞬間、死者の世界に迷い込んでしまう。死者たちは、祭壇に自分の写真を飾ってもらうことで、死者の日に現世の世界を見に行くことができる。ミゲルが死者の世界にいることに気づいたミゲルの先祖たちは、ミゲルを元の世界に戻そうとするが、自分を捨てた夫を恨んでいるママ・イメルダ(アラナ・ユーバック)は、ミゲルに音楽をするな、という条件を付けようとするため、ミゲルは音楽を愛していたデラクルスの手で元の世界に戻ることにする。ミゲルは、デラクルスの友人だったというヘクター(ガエル・ガルシア・ベルナル)と出会う。ヘクターは、自分の写真をミゲルに託し、それを祭壇に飾ってほしいと頼み、デラクルスに会いたいというミゲルの願いに協力する。
やっとの思いでデラクルスに出会えたミゲルだったが、実はデラクルスの歌う歌を作ったのはヘクターで、ある日、ヘクターが家族の元に戻りたいと言ったとき、デラクルスは名声欲しさにヘクターを毒殺していたのだった。ヘクターとミゲルは、警備員により大穴の下に落とされてしまう。ミゲルは、ヘクターこそが先祖であったことを知る。ママ・イメルダはヘクターと再会。家族を捨てたヘクターを恨みつつ、ヘクターがデラクルスに殺されたのだという話を聞き、ヘクターの写真をミゲルに持たせて元の世界に戻すことに協力することにする。ミゲルたちはデラクルスのコンサートステージに忍び込み、デラクレスが持っているヘクターの写真を奪おうとするが、デラクルスは自分の名声を守るため、ミゲルをステージから投げ飛ばし、ステージを続行しようとする。しかし、その一部始終はステージのカメラで観客に大写しになっていた。デラクルスは観客の大ブーイングを受け、ママ・イメルダのペット、ペピータによってステージから吹っ飛ばされてしまう。ヘクターによって元の世界に戻ったミゲルは、ひいおばあちゃんのママ・ココ(アナ・オフェリア・ムルギア)のもとに行く。すっかり元気をなくして目もうつろなママ・ココは、父親のヘクターの記憶を失いかけていた。記憶から失われるとあの世でのヘクターの存在も消えてしまう。ミゲルはママ・ココにリメンバー・ミーを歌って聴かせる。それは、ヘクターが一人娘のココのために作り、毎日歌って聴かせた曲だった。それを聞いたママ・ココはミゲルと一緒にその歌を口ずさむと、引き出しにしまっていたヘクターの顔写真を取り出す。ヘクターの写真が無事に祭壇に飾られることになったリベラ家では、死者の日に家族の演奏で大いに盛り上がるのだった。

デラクルスがミゲルの先祖だと思い込ませるミスリーディングが見事。ヘクターの思いがココにあったということが後半で明かされ、なぜ主要人物とは思えない、ミゲルのひいおばあさんの名前が映画のタイトル(原題は「COCO」)になっているのか、という謎が明らかになる。ミゲルが元気を失ったママ・ココに歌って聞かせるシーンは号泣必至。音楽も素晴らしく、文句なしの名作だ。

【5段階評価】5

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2020年2月 3日 (月)

(1996) ワンダー 君は太陽

【監督】スティーブン・チョボスキー
【出演】ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、イザベラ・ビドビッチ
【制作】2017年、アメリカ

遺伝子疾患を持って生まれた少年の生き方を描いた作品。

オーガスト・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)、オギーは、遺伝子疾患を持って生まれ、度々の手術を経て顔を整形した少年。母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は5年生になった彼を普通の学校に通わせることにする。はじめは宇宙飛行士のヘルメットで顔を隠しがちだったオギーだったが、ジャック・ウィル(ノア・ジュープ)やサマー(ミリー・デイビス)などの友達を得て、得意の理科で活躍。その年の優秀な生徒として表彰されるに至るのだった。

個性の強いオギーがもちろん主人公ではあるのだが、作品の主題は彼の苦悩だけではない。彼の姉ビア(イザベラ・ビドビッチ)は、両親の関心が完全に弟に向かっていることを認識し、手のかからない娘を演じる苦しみと闘っているし、ビアの親友ミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)は離婚した母親との関係へのストレスから仲睦まじい家族で暮らすビアに嫉妬に似た感情を持っている。作品では、それぞれの登場人物の名前がサブタイトルのように表示され、サブストーリーが展開する。(そう言えば「呪怨」でも使われていたが。)こうした作風を通じて本作は、障害を持った人の苦しみを描きながらも、普通の人々もまたいろいろな悩みも同様に扱うことで、障害を特別視せず、個性の一つなのだ、ということを表現することに成功していると思える。ラストの表彰シーンは感動的だった。

【5段階評価】5

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2020年1月 1日 (水)

(1985) キス・オブ・ザ・ドラゴン

【監督】クリス・ナオン
【出演】ジェット・リー、ブリジット・フォンダ、チェッキー・カリョ、シリル・ラファエリ
【制作】2001年、フランス、アメリカ

フランスの悪徳刑事と戦う中国刑事の活躍を描いたカンフー・アクション。

中国の刑事、リュウ(ジェット・リー)は麻薬密売人の捜査のため、フランスに渡る。リュウはフランスの刑事、リチャード(チェッキー・カリョ)と組むことになるが、彼こそが麻薬密売の仲介人。リチャードは二人の娼婦を送り込み、密売人と娼婦の一人を口封じのために殺害。リュウの仕業に見せかけてリュウをも殺そうとするが、リュウはその場から逃走する。気分が悪くてトイレにいたジェシカ(ブリジット・フォンダ)は難を逃れるが、娘を人質に取られており、リチャードのいいなりになって娼婦を続ける。中国人のエビチップ屋に身を隠していたリュウは、店の外で娼婦をしていたジェシカと知り合う。リチャードは部下を使ってリュウを捕らえようとするが、リュウは何度もその危機を逃れる。チップ屋に戻ったリュウは、傷を負った腕を自分で縫おうとするが、それを見たジェシカが腕を縫うのを手伝う。そこに売春の元締めがやってきてジェシカに暴力を振るう。見かねたリュウと元締めが乱闘になり、それを見つけたリチャードの部下が店を店主ごと機関銃で乱射。リュウはリチャードの部下を倒すと、ジェシカと店を出て店主を弔う。リュウはジェシカがリチャードの犯行現場にいたことを知り、彼女を証人に立てるため、彼女の娘を救い出すことを条件に、ジェシカの協力を得る。ジェシカはリチャードのもとに戻り、リュウがいると嘘をついてリチャードを中華料理店に向かわせ、そのすきに彼の犯行が収められたビデオテープを盗みだしてリュウと合流。リュウとジェシカは娘を連れ出すために孤児院に向かうが、リチャードの部下に待ち伏せされる。二人は逃走するがジェシカが胸に銃弾を受けてしまい、リュウはジェシカを病院に担ぎ込む。リュウは単身でリチャードのいる警察署に乗り込み、向かってくる警官らを倒し、最後は得意の鍼術でリチャードの首の根に鍼を刺す。それはキス・オブ・ザ・ドラゴンと呼ばれる禁断の術で、脳に回った血が顔中から吹き出して苦しんで死ぬというもの。リュウはジェシカの娘を救い出し、彼女のもとに送り届けるのだった。

リチャードの残虐非道ぶりを序盤でたっぷり見せつけ、リュウがそれに立ち向かうという分かりやすい作品。アクションシーンでは、アイロンなど身近な道具を武器に見立てて戦うシーンが多く、ジャッキー・チェンの作品を思わせるが、拳銃を使わないようにお膳立てすることの多いジャッキー・チェンの作品に比べると、拳銃を持つ相手と戦うシーンがふんだんにあるところは特徴的。分かりやすいハッピーエンドで、気持ちのいい作品だった。
一方で、終盤、ジェシカが嘘をついていることは丸わかりなはずなのにリチャードがそれをあっさり信じて自ら店に出向いたり、ビデオテープがマクガフィンとなっていて、すぐに消滅させればいいのにリチャードが大事に持ち続けていたり、ダビングすることもできるだろうにしていなかったりといった設定にはちょっと無理があったりはした。

【5段階評価】5

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2019年12月26日 (木)

(1980) スター・ウォーズ/最後のジェダイ

【監督】ライアン・ジョンソン
【出演】デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー
【制作】2017年、アメリカ

スペースオペラ、「スター・ウォーズ」シリーズ第8作。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の続編。

宇宙制覇をもくろむファースト・オーダーは、レイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)率いるレジスタンス軍の壊滅と、最後のジェダイ騎士、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の討伐を狙っていた。レジスタンスのレイ(デイジー・リドリー)はチューバッカ(ヨーナス・スオタモ)とともにルークのもとを訪れ、レジスタンス軍に付くよう説得するが、ルークは、ジェダイは滅ぶべきだとそれを拒否する。
レイア将軍の乗る宇宙船は、ファースト・オーダーの宇宙船の追撃を受け、バリアを張りながら逃走を続ける。状況を打開しようと、フィン(ジョン・ボイエガ)とローズ(ケリー・マリー・トラン)は、ポー(オスカー・アイザック)と連絡を取りながら、ファースト・オーダーの宇宙船に潜入。しかし、敵の追跡装置を破壊しようとするぎりぎりのところで敵に捕らえられてしまい、セキュリティ破りのために雇ったDJ(ベニチオ・デル・トロ)の裏切りにより、レジスタンス軍が脱出艇で母艦を離れていることを敵に知られてしまう。ファースト・オーダーのハックス将軍(ドーナル・グリーソン)は脱出艇の攻撃を開始し、脱出艇は次々と撃ち落とされていく。母艦に残っていたホルド提督(ローラ・ダーン)は、自らの命を犠牲にして敵艦にワープで体当たりし、敵の攻撃を止める。レイア将軍らは反乱軍の古い基地がある石の惑星クレイトに到達する。フィンとローズは、BB-8(ブライアン・ヘーリング、デイブ・チャップマン)の活躍によってスター・デストロイヤーから脱出し、レイア将軍やポーと合流する。
レイの頼みを拒み続けていたルークは、R2-D2(ジミー・ビー)から、妹であるレイア姫の映像を見せられ、ついにレイにジェダイの教えを伝えることを決意。しかし、レイがダーク・サイドに入り込む危険を持つことを察知し、かつて自分の弟子だったカイロ・レン(アダム・ドライバー)と同じ危うさを感じる。レイは、フォースの力でレンと心を通じ合わせ、会話を続ける中で、レンの中に父親のハン・ソロを殺した悔恨の情が残っていることを感じる。レイはレンを説得しようと、敵の母艦、スター・デストロイヤーに乗り込むが、ファースト・オーダーの最高指導者スノーク(アンディ・サーキス)から、レイとの戦いに敗れたことをなじられていたレンは、レイを捕らえ、スノークの前に差し出す。スノークは圧倒的な力でレイを束縛し、レイからルークの居場所を聞き出そうとする。それを見ていたレンは、スノークを裏切り、ライトセーバーを操ってスノークの体を真っ二つに切り裂き、周囲にいたガーディアンたちをレイとともに倒す。レンは、宇宙に新しい秩序をもたらそう、とレイに手を差し出すが、レイはそれを断り、船を去る。
レンは最高指導者の立場を継ぎ、レイア将軍の基地に攻め込む。基地を守る扉が破られたとき、レイア将軍の前にルークが現れる。レンはルークに猛攻撃を浴びせるが、ルークはかすり傷一つ追わない。レンはルークに一騎打ちを挑む。ポーは、ルークが時間稼ぎをしていると悟り、仲間を連れて脱出。経路を塞いでいた岩をレイが取り除き、一同はミレニアム・ファルコン号で脱出する。ルークの正体は幻影だった。ルークの姿はレンの前から消え去る。レイとレイア将軍はルークの命が尽きたことを感じるが、レジスタンス軍は復活の狼煙を上げるのだった。

今までのEPISODE4~6、EPISODE1~3、いずれも3連作の2作目は、つなぎのパートということで、どうも話が説明口調で尻切れトンボという印象があったから、本作も「話の途中だけど、そろそろこの辺で終わるのかな」と思いながら観ていたのだが、それが意外と終わらなかった。石の惑星にたどり着くところで終わると思ったら、レンの部隊が惑星に降り立ち、レジスタンス軍との戦い。さらにはレンとルークの戦いにまで発展。そのサービス精神が嬉しかった。果たしてレンは悪役のまま終わるのか。逆にレイはレジスタンス軍に居続けるのか。次回作が楽しみだ。

【5段階評価】5

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2019年12月 2日 (月)

(1974) ブレードランナー 2049

【監督】ドゥニ・ビルヌーブ
【出演】ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、シルビア・フークス、アナ・デ・アルマス
【制作】2017年、アメリカ

「ブレードランナー」の続編。

2049年のカリフォルニア。LA警察の捜査官、KD6-3.7(ライアン・ゴズリング)、通称Kは、タイレル社製の旧式レプリカントを解任する任務に就く新型レプリカント。農民としてひっそりと暮らす元軍人レプリカントのサッパー・モートン(デイブ・バウティスタ)を倒したKは、木の根元に箱が埋まっているのを発見。Kはそれを上司のジョシ(ロビン・ライト)に報告し、帰宅。Kは、自宅設置型のホログラム、ジョイ(アナ・デ・アルマス)に、外への移動が可能となるエマネーターをプレゼント。ジョイは初めて雨の降るアパートの屋外に出る。そこにジョシから連絡が入る。埋まっていた箱の中味は、分娩の際に死亡した30年前の女性の遺骨で、その骨にはレプリカントの製造番号が刻まれていた。レプリカントが子供を産むなどありえないと否定したジョシは、産まれた子供を含め、全ての痕跡を消すようKに命令する。Kは手始めにタイレル社を吸収したウォレス社を訪ねるが、遺骨のレプリカントの製造は「大停電」の前で、確たる情報はなかった。Kが調査に来たことを知ったウォレス社のラブ(シルビア・フークス)はKに接近。Kは、遺骨の女性がデッカードという男性と関係があることを教わる。ウォレス(ジャレッド・レト)はラブに、レプリカントが産んだ子供を連れてくるよう命じる。
Kは、サッパーの家のピアノに隠された写真を発見。そこには、遺骨の埋まった木の横に立つ、乳飲み子を抱えた女性が写っていた。再び木を調べたKは、木の根元に「6 10 21」という数字が刻まれているのを発見。それを見て、Kの中の記憶が蘇る。
ラブは警察に保管された遺骨を盗み出す。焦るジョシはKに状況を尋ねるが、Kは数字のことは黙っていた。Kには少年の頃、小さな木製の馬のおもちゃを大事にしていた記憶があり、そのおもちゃに同じ数字が刻まれていたのだ。DNA室で捜査を進めるKに、ジョイが話しかける。遺骨の女性が産んだ子供とは、Kのことなのではないかと。調べた結果、同じDNAを持つ男児と女児がいることが判明。女児は遺伝子疾患で死に、男児は消息不明ということだった。Kはジョイを連れて、二人がいたモレルコール孤児院に向かう。そこはロス郊外の廃棄物処理場だった。突然、処理場の住民から襲撃され、Kの飛行自動車は不時着。Kは大勢に取り囲まれるが、突然、Kの周囲に空から爆撃が降り注ぎ、Kは助かる。ラブがKを監視し、子供を見つけさせようとしているのだった。捜査を続けるKは、ドーム型の施設を発見。中では男(レニー・ジェームズ)が大勢の子供達を働かせていた。Kは男に命じて30年前の孤児の記録を調べるが、ページは破り取られていた。施設の様子が自分の記憶と結びついたKは、記憶を頼りに施設内を歩き、隠されていた木馬を発見する。ジョイは、Kは製造されたのではなく男の子として産まれたのだと言い、彼にジョーという名前を与える。
自分に埋め込まれた記憶の秘密を探るため、Kは、アナ・ステリン博士(カーラ・ジュリ)のもとを訪ねる。彼女は免疫不全で、ガラスのドームの中で暮らしていた。彼女はウォレス社と契約し、レプリカントに記憶を授けていた。アナは、自分の記憶を生かしながらレプリカントに記憶を与えているのだと言う。Kは、アナに自分の記憶が本物か確かめたいと告げる。アナはガラスを隔てた装置の前にKを座らせ、記憶を読み取る。ふいに彼女は涙を流し、記憶は本物だと告げる。Kはちくしょう、と叫んで部屋を後にする。施設を出たところでKは逮捕され、ジョシのもとに連れて行かれる。Kは子供を見つけて処分した、と嘘をつく。その夜、帰宅したKのもとに、以前会った娼婦のマリエット(マッケンジー・デイビス)が現れる。ジョイが彼女に同期し、Kはマリエットと一夜をともにする。朝、起きたマリエットはこっそりKのジャケットに追跡用の発信器を忍ばせると、部屋を後にする。
追っ手が来ると確信していたKが部屋を出ようとすると、ジョイが一緒に行きたいと言い、追跡を逃れるため、自分をオンラインから切り離し、スティックの中にメモリを移すようKを説得する。何かあればジョイが消滅してしまうことを恐れるKだったが、ジョイはそれは普通の女性と同じだと言い、Kはそれに従う。ジョイを通じてKを監視していたラブはすぐさまKの部屋に向かうが、部屋はもぬけの殻。ラブはジョシのオフィスを訪ね、Kの居場所を話さないジョシを刺し殺し、端末でKの居場所を探し当てる。
Kは街で木馬の成分を分析してもらい、それが汚染された場所にあることを突き止め、ジョイと現地に向かう。蜂の生体反応を手がかりに、建物に入ったKは、デッカード(ハリソン・フォード)に遭遇。自分を捕らえようとしていると考えたデッカードは、Kを攻撃するが、Kに敵意がないことを知り、Kをバーカウンターにいざなう。Kは子供を産んだレプリカントの名を尋ねる。その名はレイチェルだった。しかしデッカードは、子供に危害が及ぶことを避けるため、子供のもとを去り、隠遁していたのだった。そこにラブが手下を従えて現れ、問答無用にデッカードを連れ去る。Kを攻撃するラブを見て、やめて、と叫ぶジョイだったが、ラブは不敵な笑みを浮かべてジョイの全てであるメモリスティックを踏み壊す。消える瞬間のジョイが、Kにかけた最後の言葉は「I love you」だった。
現場に取り残されたKを救出したのは、彼に発信器を忍ばせたマリエットの一味だった。指導者のフレイザ(ヒアム・アッバス)は、秘密が漏れないようデッカードの殺害をKに依頼。レイチェルが産んだのは女の子であったと告げる。
連れ去られたデッカードの前にウォレスが現れる。彼は産まれた子供を手に入れようとし、彼の前にレイチェル(ショーン・ヤング、ローレン・ペタ(演技はローレン・ペタが行い、顔にショーン・ヤングを合成))を連れてくるが、デッカードは偽物と見破る。ラブは偽物を撃ち殺し、デッカードをオフ・ワールドに連れて行こうとするが、そこにKが現れる。死闘の末、ラブを倒し、デッカードを救出したKは、彼をアナ博士のもとに連れて行く。Kは悟っていた。アナが自分の記憶をもとに、Kの記憶を作っていたことを。雪の降る中、施設に入っていくデッカードを見送ったKは、施設玄関の階段の上で仰向けに寝転がり、動きを止める。デッカードは初めて見る娘に、ぎこちなく微笑むのだった。

人造人間レプリカントの記憶と感情、そして子を産む奇跡に焦点を当てた重厚なSF作品。近未来の世界観や町の様子が細かいところまで作り込まれ、観るたびに発見がある。SONYやATARI、PEUGEOTなどの企業ロゴが出てくるのも近未来に思いをはせられ、楽しい。強力わかもとは見つけられなかったが。言語の壁がなくなり、街の中に日本語や韓国語など、雑多な言語が混じり合っているのも面白い。
血を流し、水の中では呼吸もできなくなり、見た目では人と区別の付かないレプリカント。そのKの恋人となるのが、ホログラムのジョイ。彼女もまた、人間と同じように、いや人間以上にレプリカントのKを純粋に愛する。人の感情を理想的に創造できる世界が現実になれば、人にとって理想的な感情をプログラムされたレプリカントやホログラムが現実のものとなったとき、人はどこまで人との触れ合いを求めるのか。そんなことをも考えさせられる作品だった。

【5段階評価】5

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2019年11月 3日 (日)

(1963) チョコレート・ファイター

【監督】プラッチャヤー・ピンゲーオ
【出演】ジージャー・ヤーニン、アマラー・シリポン、タポン・ポップワンディー、ポンパット・ワチラバンジョン、阿部寛
【制作】2008年、タイ

母親を愛する少女がマフィアと戦う様子を描いたアクション作品。

日本のヤクザ、マサシ(阿部寛)と、タイ・マフィアのボス、ナンバー8(ポンパット・ワチラバンジョン)の女、ジン(アマラー・シリポン)が愛し合い、女の子が産まれる。ナンバー8に狙われたマサシは日本に帰り、ジンは子供にゼンと名付けて育てる。ゼン(ジージャー・ヤーニン)は知能に障害があったが格闘の才能に長けており、近くの道場やテレビのカンフー映画などから体技を学び取る。ジンが大病を患い、治療費が必要となったため、ゼンの幼なじみのムン(タポン・ポップワンディー)は、ゼンとともにジンが貸していたお金の回収を始める。荒くれ男達は支払いを拒否するが、ゼンは襲いかかる男達をなぎ倒し、借金を回収していく。ナンバー8はゼンとジンを呼び出し、ジンを拉致しようとする。ゼンは男達を倒していくが、疲れて倒れ込んでしまう。そこに日本刀を持ったマサシが現れ、ジンを救い出そうとする。ジンはマサシをかばおうとしてナンバー8の刃を腹に受けて瀕死になってしまう。怒りが頂点に達したゼンは、雑居ビルの壁を逃げ回るナンバー8を追い詰め、道路にたたき落とす。ジンは命を落とすが、ゼンはマサシとともに暮らすのだった。

全盛期のジャッキー・チェンの映画を彷彿とさせるほどの見事な格闘シーン。全体を通して陰鬱な雰囲気で、コミカルな要素はないが、それが母親のために我を忘れて戦う少女という設定を引き立て、格闘シーンの迫力を高めている。エンドロールでは、撮影のNGシーンや蹴りが本当に当たって怪我をするシーンなどもあり、ここもジャッキー・チェンの映画と同じ。オープニングロゴからエンドロールまできちんとオリジナル音声で放送するBS日テレの「日曜ロードSHOW!」は素晴らしい。

【5段階評価】5

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2019年10月 3日 (木)

(1946) 祈りの幕が下りる時

【監督】福澤克雄
【出演】阿部寛、松嶋菜々子、小日向文世、溝端淳平、桜田ひより
【制作】2018年、日本

東野圭吾の推理小説の映画化作品。「麒麟の翼 ~劇場版・新参者~」の続編。

東京の日本橋の刑事、加賀恭一郎(阿部寛)は、精神を病んで家を出て仙台で亡くなった母親の田島百合子(伊藤蘭)が、かつて交際していた綿部俊一という男を16年間、捜し続けていた。加賀の従弟の松宮脩平(溝端淳平)は、滋賀県に住む女性、押谷道子(中島ひろ子)が腐乱死体となって発見された事件と、河川敷で焼死体が発見された事件との関連を見抜く。焼死体のDNAが、道子の死体が発見された部屋の住人、越川睦夫のものと一致したのだ。道子がなぜ東京に来たのかを捜査した脩平は、彼女が中学時代の同級生、浅居博美(松嶋菜々子)の母親(キムラ緑子)を勤め先で偶然見かけ、博美に会いに行ったことを知る。博美は道子の死を知っていた。博美は道子から、母親を見つけたから引き取ってほしいと問われるが、母親を激しく恨んでいた博美は、それを断っていた。彼女の部屋には、剣道着姿の加賀と一緒に写った写真があった。脩平は加賀に話を聞く。博美は芝居の演出家で、中学生の剣技指導を加賀に依頼しに来たことがあった。彼女は、自分は子供を堕ろしたことがある、自分は人殺しなんだ、という話を加賀にしていた。越川の部屋にあったカレンダーには、月ごとに日本橋周辺の橋の名前が書き込まれており、その橋の名と筆跡は、田島百合子の部屋にあったものと一致していた。加賀は、探し続けていた綿部俊一と越川睦夫が同一人物ではないか、と考える。彼女は中学生の頃に父親が自殺し、施設で育っており、中学卒業後、苗村(及川光博)という教師と交際していた。綿部俊一の正体は苗村かと思われたが、綿部を知る女性、宮本康代(烏丸せつ子)はそれを否定する。
捜査に加わった加賀は、父親が滋賀のビルで飛び降り自殺をしたという博美の話が嘘であると見抜き、博美に問いただす。博美はそれは罪に問われるのか、と開き直る。事件の関係者が自分の周辺にいることに気づいた加賀は、博美が自分に会ったのは偶然ではないのではないか、と考え始める。もし自分の亡くした肉親に恋人がいたら、その子供に会いたくなるのではないか。そう考えたのだ。加賀は、改めて博美に会いに行き、真相を博美から聞く。
中学生の博美(桜田ひより)の母親は、浮気をした挙げ句、夫名義で多額の借金をして家族を捨てていた。借金取りに追われ、夜逃げをした博美と父親の忠夫(小日向文世)が、とある食堂で食事をしていると、原発作業員の横山一俊(音尾琢磨)という男に話しかけられる。横山は二人が夜逃げをした親子だと見抜き、博美にこっそり、お小遣いを上げるから食堂裏のバンに来い、とささやく。博美は、父親が吹っ切れたように豪華な旅館に泊まったにもかかわらず、持ち金が全くないことに気づき、父親が自殺しようとしていると直感。意を決した博美は、横山の車に近寄る。横山は舌なめずりをするような顔つきで博美を車の中に引き入れる。博美がいないことに気づいて外を探し回っていた忠夫は、乱れた服装で駆け寄ってくる博美を発見。その手は血まみれだった。博美は横山を受け入れることができず、車の中にあった箸で横山の首を突き殺していたのだ。それを見て全てを悟った忠夫は、博美にある提案をする。それは、自分が自殺したことにして横山に成り代わり、原発作業員として働くというものだった。博美は号泣しながらも、その提案を受け入れざるを得なかった。二人はその後も、人目を忍んで会っていた。カレンダーの橋の名前は、密会をする場所を意味していたのだった。二人は不幸な境遇の中でもかすかな幸せを感じていたが、博美との密会が苗村にバレてしまう。忠夫は、苗村が博美の交際相手だと知りつつも、苗村を絞殺する。そして博美の演出した舞台の初日。博美は忠夫を舞台に招待していた。そこに居合わせたのが、博美の同級生の押谷道子だった。彼女は死んだはずの博美の父親に気づき、彼に声をかける。忠夫は道子も殺さざるを得なかった。自分を偽って逃げ続ける暮らしに疲れた忠夫は、博美に舞台の賛辞を伝えた後、自害を決意する。父親の自殺の気配を察知した博美は、河川敷で忠夫がテントにガソリンを撒いているのを見る。博美は必死で止めるが、忠夫のもう疲れた、という告白に同情。焼け死ぬのはごめんだ、とかつて忠夫が言っていたことを覚えていた博美は、父親が須子でも苦しまずに逝けるよう、自らの手で父親の首を絞めたのだった。
加賀は博美から、父親の書いた加賀宛ての手紙を手渡す。そこには、加賀の母親がなぜ、家族を捨てて失踪したのかが記されていた。水商売上がりの彼女は、夫の家族からさげすまれていた。精神的に不安定になった彼女は、ある日、いつの間にか息子の前で包丁を手にしている自分に気づき、このままでは息子にとんでもないことをしてしまうのではないか、と考え、家を去ったのだった。なぜ母親が自分を捨てたのかが分からなかった加賀は、それをやっと知ることになった。加賀の父親(山崎努)が、息子の活躍を空から見守ることができるなら、命が尽きるのが待ち遠しいぐらいだと言っていた、という話を、父親の看護をしていた金森登紀子(田中麗奈)から聞かされていた加賀は、博美の父親も同じように考えて死を選んだのだろうと考えるのだった。

真相を再現するクライマックスが圧巻。中学生の博美と父親が泣きながら抱き合って別れを惜しむシーンは感動的だった。東野圭吾原作の映画の中では、かなり当たりの部類だった。同じ加賀恭一郎シリーズでも「さまよう刃」はひどかったからな。

【5段階評価】5

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2019年7月 1日 (月)

(1909) チェンジリング

【監督】クリント・イーストウッド
【出演】アンジェリーナ・ジョリー、ジェフリー・ドノバン、ジョン・マルコビッチ、ジェイソン・バトラー・ハーナー
【制作】2009年、アメリカ

失踪した息子を必死で探す母親の果敢な行動を描いた作品。行方不明の息子が見つかったと警察から連絡が入った母親の前に現れた子供は、息子とは別人。再捜査を訴える母親を、警察は精神病院に送り込む。母親の運命は。そして息子は見つかるのか。実話に基づく作品。

1928年。シングル・ワーキング・マザーのクリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)は、息子のウォルター(ガトリン・グリフィス)と外出の約束をしていた日、急な仕事が入ったため、約束は明日守るとお詫びをして職場に向かう。仕事から帰ると、家に息子の姿がない。警察に電話をしても、子供の失踪は24時間以内に捜査はしない、と取り合ってくれない。24時間経ってもウォルターは帰ってこなかった。教会は、腐敗した警察を批判。当時のロス市警は、汚職と不当な捜査にまみれていた。5ヶ月が経ったある日、ロス市警のジョーンズ警部(ジェフリー・ドノバン)がクリスティンの職場に現れ、ウォルターが見つかったという報せを届ける。クリスティンは喜んで迎えに行くが、列車から降りた子供(デボン・コンティ)はウォルターではなかった。うろたえるクリスティンに、ジョーンズ警部は、月日が経っているせいだと言って無理矢理クリスティンと少年の写真をマスコミに撮らせる。デービス市警本部長(コルム・フィオール)は市警の功績だ、とマスコミの前で強調する。
クリスティンは、柱に付けていたウォルターの背丈の印より、その子の身長が7cmも背が低いこと、割礼をしていることから、この少年が別人と確信。ジョーンズ警部に息子を探してほしいと再度訴えるが、ジェームズは取り合わず、警察お抱えの医師をクリスティンの家に送り込む。医師は背が縮んだのも医学的に説明できる、とクリスティンの訴えをはねつける。教会のグスタブ・ブリーグレブ牧師(ジョン・マルコビッチ)はクリスティンに警察の実情を話し、ともに警察と戦おうと呼びかけるが、クリスティンは自分は息子を探したいだけだ、と言って牧師のもとを去る。歯医者や学校の教師から、少年とウォルターは別人だという証言も得て、クリスティンは再びジョーンズ警部に息子の再捜査を訴えるが、ジョーンズはクリスティンを精神障害だと決めつけ、精神病院送りにしてしまう。病院の中には、警察に不都合だと見なされた女性がことごとく送り込まれており、二度と出ることがかなわない状態になっていた。クリスティンは、警察に再捜査を訴えないという書面にサインを求められるが拒絶し、病院を出られない状態になってしまう。
その頃、サンフォード(エディ・アルダーソン)というカナダ人の少年が不法滞在で逮捕される。彼は、ゴードン・ノースコット(ジェイソン・バトラー・ハーナー)という異常者に脅され、彼の子供連続殺人に加担していたという恐ろしい告白をする。彼が見たという子供の写真の中には、ウォルター・コリンズのものもあった。ジョーンズ警部はそのことをもみ消そうとするが、サンフォードを担当していたレスター・ヤバラ刑事(マイケル・ケリー)は現場で子供の白骨死体を発見。ロスは大騒ぎとなる。このことから、警察がウォルターだと主張した子供は偽物であることが明らかとなり、ブリーグレブ牧師はクリスティンを救い出す。牧師はさらに、警察の腐敗と戦う敏腕弁護士サミー・ハーン(ジェフ・ピアソン)を雇い、彼はプロボノ活動としてこの件を引き受ける。腐敗したロス市警は糾弾され、ジョーンズ警部は無期限の停職処分となり、デービス本部長も更迭される。しかし、ハーン弁護士がウォルターは殺されたと主張したのに対し、クリスティンは息子の生存を信じていた。死刑を宣告されたノースコットは処刑の前日、クリスティンに面会を申し出る。裁判の席でノースコットが「自分がウォルターを殺すはずがない。あの子は天使だ」と言っていたことを、クリスティンは信じようとしていた。クリスティンはノースコットに息子を殺したのか、と何度も詰め寄るが、とうとうノースコットはその答えを言わず、絞首刑となる。
事件から7年が経ったとき、ノースコットの事件の遺族からクリスティンに連絡が入る。息子が見つかったのだという。急いで警察に向かったクリスティンは、見つかった少年が、事件のことを黙っていたことを咎められると思い、声を上げられずにいたが、母親と父親に会いたくなって正体を明かした、と取調室で話しているのを聞く。彼はウォルターのおかげでノースコットの家から逃げることができたが、ウォルターの生死は分からないと言った。少年と両親が抱き合っているのを見て、クリスティンは自分の息子の生存を確信する。彼女は生涯、息子を捜索し続けたのだった。

絶望的な状況でも決して自暴自棄にならず、強い意志で息子の生存を信じ続ける母親をアンジェリーナ・ジョリーが好演。いい顔をしておきながら卑劣極まりないジョーンズ警部の演技も秀逸。この男が終盤の法廷で完全に言い負かされ、打ちのめされるシーンで胸のすく思いになる。
クリント・イーストウッド監督作品と知らずに観たが、ぐっと引き込まれ、静かな感動に揺さぶられる佳品で、あらためてクリント・イーストウッド監督が好きになった。実話に基づく作品であり、ウォルターとの再会がないのは残念ではあるが、ほかの子供の再会のシーンを入れているのも心憎い。

【5段階評価】5

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2019年5月26日 (日)

(1890) リップヴァンウィンクルの花嫁

【監督】岩井俊二
【出演】黒木華、Cocco、綾野剛、原日出子、地曵豪
【制作】2016年、日本

幸せを手に入れようともがく女性の数奇な運命を描いた作品。

聖林中学の臨時教師をしている皆川七海(黒木華)は、お見合いサイトで彼氏(地曵豪)を見つける。彼の名は鶴岡鉄也。彼も教師をしていた。七海は「クラムボン」というハンドルネームで、彼氏がネットショップの買物のように簡単に見つかったとネットでつぶやく。二人は結納を済ませるが、実は七海の両親は離婚しており、それを伏せて臨んだ結納だった。結納を済ませ、披露宴の相談をしていた二人だったが、七海は結婚披露宴の招待客が少ないと鉄也に言われてしまう。また、彼女は声の小ささを生徒にからかわれ、生徒の用意したマイクを使って授業をしたことが原因で学校を首になっていた。そのことや、結納の日の会話で、鉄也の母親(原日出子)が七海が主婦に専念しないことを快く思わない態度だったことから、教師の正式採用の夢を諦めるが、鉄也は自分に相談がなかったと七海を責める。
七海は、ランバラルというネット住民に、披露宴に偽物の親族や友人を招待するサービスがあることを教えてもらい、何でも屋の安室行舛(綾野剛)という男に会って披露宴代理出席サービスを依頼する。そのおかげで、披露宴はつつがなく終了するが、鉄也は、クラムボンという名義で、彼氏が簡単に手に入ったなどと書き込んでいる人物がいることを七海に話す。七海を少し疑っているようだった。
新婚生活に入った二人。七海が朝、鉄也を送り出して部屋を掃除していると、床に女性もののピアスが落ちているのを発見。七海は安室に相談する。安室は浮気調査を30万円で引き受ける。
ある日、夫の不在中に、七海の家に一人の男(和田聰宏)が尋ねてきて、鉄也が自分の恋人と浮気をしていると言って部屋に上がり込む。男は鉄也の卒業アルバムを持ってこさせ、そこに写っている女子生徒と浮気をしていると説明。七海はショックでへたり込んでしまい、男はいったん退散する。男は七海をホテルに呼び出し、彼女に肉体関係を迫る。七海はトイレにいったん入り、慌てて安室を呼び出す。安室は現場に向かうが、実はホテルにいる男と安室はグルだった。安室は手際よく部屋の中の隠しカメラをしまい込み、さも男を追い出したかのような顔で七海を安心させる。
鉄也の父親の通夜に出席した七海は、鉄也の母親のカヤ子(原日出子)に呼び出され、両親が離婚していたことを黙っていたことや、親戚を代理出席させていたことを責めると、七海がホテルで男と会っていた映像を突きつけ、七海を追い出す。七海は泣きながら家に帰り、一夜を明かす。翌朝、鉄也が電話で七海を責めたため、七海も言い返し、アルバムの写真を確認するが、部屋にやってきた男が示したはずの女子生徒の写真はなくなっていた。鉄也に三行半をたたきつけられた七海は、行く当てもなく部屋を出るしかなく、混乱した七海は安室に電話で助けを求め、何とか狭いホテルにたどり着く。仕事のない七海は、住み込みでホテル清掃のアルバイトを始める。安室は、七海に会いに来る。安室の調査によると、鉄也はマザコンで、カヤ子と週に2回は会っていたこと、カヤ子は七海の留守中に二人の家にも来ていたことを報告。七海はカヤ子の依頼した別れさせ屋にはめられたのだ、と説明する。実はその別れさせ屋の仕事自体を安室が引き受けているわけだが、七海はそれを疑いもしない。
安室は七海に披露宴代理出席のアルバイトの話を持ってくる。断るすべもなくそれに参加した七海は、自分の姉役を演じた里中真白(Cocco)と知り合い、意気投合する。彼女は女優をしているということだった。安室はさらに、月100万円稼げる住み込みのメイドの仕事を七海に紹介。そこは大豪邸で、宴会で大騒ぎをしたあとのように屋敷の中は散らかっていた。もう一人、住み込みがいると聞かされていた七海だったが、それは真白だった。七海は真白との再会を喜ぶ。真白は朝早くから女優の仕事に出る日々だったが、ある日、真白が眠り込んでいるところに、呼び出しの電話がかかる。真白は熱を出しており、仕事の関係者の恒吉冴子(夏目ナナ)が屋敷にやってくる。真白の仕事は女優と言ってもAV女優で、大豪邸は真白が気に入り借りているものだった。七海は安室に電話をして自分の雇い主は真白なのかと問いただす。安室は誰が雇い主かは言えないと言いながら、クライアントの依頼は友達がほしい、だったと明かす。七海は真白に、こんな生活はやめて二人で別の所に住もうと涙を流して話す。真白は、この涙のためなら何だって捨てられる、命だって、と言って七海の提案を受け入れる。
家探しをした二人は、ウェディングドレスのお店を見つけ、ドレスを着たまま屋敷で一夜を明かす。二人はベッドの上で横になり、真白は、世の中は幸せと優しさに満ちていて、それがあまり簡単に手に入ると自分が壊れてしまうから、自分はお金を払うんだ、と話す。七海の優しさは真白には辛いほど嬉しいのだった。真白は七海に、一緒に死んでくれと言ったら死んでくれるか、と問いかけ、七海は優しく頷く。
翌朝、真白は冷たくなっていた。屋敷に葬儀屋と安室が現れる。真白は、今夜死ぬ、と安室に連絡を入れていた。自殺だった。葬儀が営まれ、七海は真白の仕事仲間から、彼女が乳がんだったこと、治療をすれば死なずに死んだのに、彼女は体にメスが入ったら里中真白として仕事ができなくなるからそれを拒んでいたと聞かされる。
安室と七海は真白の母親(りりィ)の家に向かう。母親は、縁を切った真白がポルノ女優をしていたことを知り、一度だけ居場所をつきとめて、顔を殴るだけ殴って帰ってきたという話をすると、やおら服を脱ぎ始め、「人前で裸なんて、やっぱり恥ずかしいだけだ」と言って涙を流す。安室もたまらずに号泣。全裸になって恥ずかしさをともにする。七海は母親の出してきた焼酎をあおり、泣きながらおいしいです、と言って母親におかわりをもとめる。三人は泣き、そして笑いながら真白を偲ぶ。
七海はこじんまりとしたアパートに転居。安室は引越祝いとして大量の粗大ゴミの家具を持ち込み、七海に好きな家具を選ばせると、去って行く。七海はベランダに出て、これまでのことに思いをはせるのだった。

岩井俊二監督が、黒木華を主演にすることを想定して作った小説がもとになっている。決して悪事を働こうとしたわけでも、身分不相応な幸せを得ようとしたわけでもなかった七海が、不幸に陥り、そこから這い上がる中で一人の女性と知り合い、そして彼女を失う。
なんと言っても、真白の母親の部屋での号泣シーンが感動的。こういう訳の分からない感情に涙を流すということが、自分にとって初めてで得がたい経験だった。黒木華の存在感を存分に堪能でき、文学性も感じられるいい作品。

【5段階評価】5

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