評価5の映画

2021年1月12日 (火)

(2295) パラサイト 半地下の家族

【監督】ポン・ジュノ
【出演】ソン・ガンホ、チェ・ウシク、チャン・ヘジン、パク・ソダム、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン
【制作】2019年、韓国

裕福な家族の暮らす豪邸に寄生した貧乏な一家の運命を描いた作品。第92回アカデミー賞作品賞受賞作品。

低所得層が住む半地下の家に暮らすキム一家。息子のギウ(チェ・ウシク)は大学生の友人ミニョク(パク・ソジュン)から、IT長者パク・ドンイク(イ・ソンギュン)の高2の娘ダヘ(チョン・ジョソ)の家庭教師をしてほしいと頼まれる。ダヘの母親ヨンギョ(チョ・ヨジョン)が、幼い息子ダソン(チョン・ヒョンジュン)の絵の先生を探していると聞いたギウは、家族であることを隠して妹のギジョン(パク・ソダム)を絵の先生に据える。帰宅したドンイクは、おかかえの運転手にギジョンを送るよう命じる。ギジョンは車の中でこっそり自分のパンティを後部座席に脱ぎ捨て、ドンイクが運転手を首にするようしむけ、運転手の座に父親のギテク(ソン・ガンホ)をつかせる。キム一家はさらに計画を練り、長年家政婦をしているムングァン(イ・ジョンウン)が桃アレルギーであることを利用して、彼女が結核患者だとヨンギョに信じ込ませ、首になったムングァンの後任として、母親チュンスク(チャン・ヘジン)が家政婦になる。こうしてキム家の四人はまんまと豪邸への寄生に成功する。しかし唯一、ダソンは、四人から同じ匂いがすると言ってギテクを慌てさせる。
パク一家が、ダソンの誕生祝いのため泊まりのキャンプ旅行に出かけたのを機に、キム家は四人揃って豪邸で酒盛りをする。ところがそこにムングァンが訪ねてきて呼び鈴を鳴らし続ける。インターホンに出たチュンスクに、ムングァンは忘れ物をしたから家に入れてほしいと言ってくる。チュンスクが仕方なくムングァンを招き入れると、ムングァンは食料庫に向かう。そこにはなんと秘密の地下室への通路があった。ムングァンはパク家に内緒で、借金取りに追われている自分の夫オ・グンセ(パク・ミョンフン)を地下室にかくまっていたのだ。それを知ったチュンスクは彼らを警察に突き出そうとするが、その様子を隠れて聞いていたギウたちが階段を踏み外してムングァンの前に姿を現してしまい、彼らが家族であることがムングァンにばれ、さらにその様子を動画に撮られてしまう。形勢は逆転し、ムングァンはグンセとともにリビングでくつろぎ、キム一家に両手を挙げさせて自由を奪うが、隙を突いてキム家がムングァンとグンセに飛びかかり、リビングで乱闘となる。そこに電話がかかってくる。パク家が大雨のためにキャンプができなくなり、帰って来るというのだ。キム家はムングァンとグンセを地下室に閉じ込める。チュンスクは階段を上がってこようとするムングァンを蹴落とし、ムングァンは頭を強打して気を失ってしまう。チュンスク以外の三人は何とか豪邸を脱出。大雨の中、家に戻るが、家の中には下水が流れ込んでおり、彼らは体育館で一夜を過ごす。体育館の中でこれからどうするのかギウに尋ねられたギテクは、無計画が一番いいんだと話す。ギウは無謀な計画を立てたことを謝罪する。
嵐が去り、パク家はダソンを祝うホームパーティを開くことにし、ギウとギジョンも招待される。ギテクの運転する車でパーティの買い出しに出たヨンギョは、車内でギテクの体臭に鼻をつまみ、思わず窓を開ける。昨晩大雨の中で必死だったギテクの顔からは笑顔が消えていた。
パク家に多くの客が招待され、庭でパーティが盛り上がる中、ギウは恋仲となったダヘの部屋で彼女との口づけを終えると、ミニョクからもらった観賞用の岩石を持ってムングァンとグンセのいる地下室に向かう。ところが待ち伏せしていたグンセに襲われ、慌てて逃げた背後からグンセに岩石で殴られてしまう。正気を失ったグンセは、包丁を持ってパーティ会場の中庭に現れ、バースデーケーキをダソンに渡そうとしていたギジョンに包丁を突き立てる。幼い頃にグンセの姿を見て失神したことのあるダソンは、同じグンセの姿に再び失神。ギジョンを刺したグンセは、今度はチュンスクに襲いかかる。パニック状態となった客は逃げ出し、ドンイクは息子を病院に連れて行くため、ギテクから車の鍵を受け取ろうとするが、ギテクの投げ渡そうとした鍵は地面に落ち、そこにもみ合うグンセとチュンスクが倒れ込む。包丁を振りかざすグンセの腹部に、チュンスクがバーベキューの串を突き刺し、グンセは鍵の上に倒れる。ドンイクはグンセを押しのけて鍵を手にするが、そのときグンセの体臭に顔をしかめ、同時に、何かに気づいたような表情を浮かべる。その顔に「これはギテクと同じ匂いだ」と書かれていると思ったのか、ギテクは突如、落ちていた包丁を手にすると、そのままドンイクの胸に包丁を突き立て、姿を消す。事件の結果、ギジョンとグンセ、ドンイクが命を落とし、ギウは脳手術を受けて何とか生存。ギウとチュンスクは執行猶予付きの有罪判決を受けるが、ギテクは行方不明となる。ギテクはグンセのいた地下室に潜んでいた。彼はすでに亡くなっていたムングァンを家主不在の間に庭に埋葬し、その後はモールス信号で息子にメッセージを送り続けていた。ギウはある日、それに気づき、金を稼いで豪邸を買い、父親に地下室から出てきてもらうことを計画立てるのだった。

アジア初のアカデミー賞作品賞受賞作品ということで、日本でも相当話題になった本作。クライムサスペンス風の前半から、後半の惨劇のシーンまで、どこか浮世離れしたコミカルな雰囲気を帯びながら、韓国の貧富の差という現実を描き出している。中だるみのないハイテンポな展開が小気味よく、シナリオもよく練られている。匂いが一つの鍵になっており、クライマックスの惨劇のシーンで、言葉を使わず表情やしぐさだけで匂いにまつわるやりとりを描く演出は見事。人によって解釈が異なるような含みがあり、繰り返し観て新たな発見があるようにもなっている。評判通りの名作だった。

【5段階評価】5

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2021年1月 3日 (日)

(2286) レヴェナント: 蘇えりし者

【監督】アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
【出演】レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、フォレスト・グッドラック、ドーナル・グリーソン
【制作】2015年、アメリカ

山中で熊に襲われ死にかかった男の復活劇を描いた作品。実話に基づいている。

1823年。アメリカ人の毛皮狙いのハンター集団が、先住民のアリカラ族に襲われ、逃走。ガイド役のヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は、船で逃げるのは危険だからと山中の行進を選択。ところが集団が休憩中、一人で森を見回っていたグラスは、突然子連れのグリズリーに襲われ、何とか返り討ちにしたものの瀕死の重傷を負う。医術の心得のある隊長ヘンリーが応急処置として傷を縫い、タンカで彼を運ぼうとするものの、険しい雪山の行進はままならず、グラスを毛嫌いしていたフィッツジェラルド(トム・ハーディ)は、苦しむだけだし全員が危険だからここでグラスを殺した方がいいと意見。ヘンリーは、グラスを置いていくが最期を看取ってから埋葬することにし、グラスの息子ホーク(フォレスト・グッドラック)、若いブリジャー(ウィル・ポールター)がその役を買って出、報酬につられたフィッツジェラルドも残ることを決める。
しかしフィッツジェラルドはグラスと二人になると、グラスに早く死ぬよう決断を迫り、グラスの口に布を押し込んで殺そうとする。戻ってきたホークがフィッツジェラルドに銃を突きつけ、大声でブリジャーを呼ぶが、フィッツジェラルドは先住民に気づかれるから叫ぶなと言って、大声をやめないホークをナイフで刺し殺して山中に捨ててしまう。体が動かず声も出せないグラスは、その様子を見ているしかなかった。フィッツジェラルドは先住民が近くにいるとブリジャーに嘘を言い、グラスを放置して先に行ってしまう。ブリジャーはグラスに詫びながらも彼に従うしかなかった。取り残されたグラスは這いつくばりながら動物の死骸の骨髄や草を食べ、驚異的な生命力で生き延びる。途中でポーニー族の男と遭遇し、彼に助けてもらいながら雪山を進むが、その男はフランス人のハンターに馬を奪われ殺されてしまう。グラスはフランス人の野営地から男の馬を奪い返そうとするが、そのとき、フランス人の一人が先住民の若い女性(メラウ・ナケコ)をレイプしているのを見つけ、背後から男を殴りつけると、女性にナイフを託し、馬で逃走する。
一方、フィッツジェラルドは、グラスを埋葬したとヘンリーに嘘の報告をして報酬を得ていた。ところが彼らのキャンプに、フランス人のハンターの一人が、何者かに野営地を襲われたと言って現れる。そのハンターはグラスの水筒を持っていた。ブリジャーはホークが生きていたのかと考えるが、ホーク殺害を隠していたフィッツジェラルドは、生き延びているのはグラスだと確信する。果たして、ヘンリーはグラスを発見する。フィッツジェラルドはヘンリーらが戻る前に山中へ逃走。ヘンリーとグラスはフィッツジェラルドを追い、ヘンリーはフィッツジェラルドに殺されるが、グラスとフィッツジェラルドは血で血を洗う死闘となる。息も絶え絶えの二人のもとに、アリカラ族の一団が現れる。グラスはフィッツジェラルドにとどめを刺さず、運を天に任せる。アリカラ族はフィッツジェラルドの息の根を止めると、グラスには手を出さず去って行く。一団の中には、グラスが助けた若い女がいた。彼女はアリカラ族の酋長が探していた娘のポワカだった。生き延びたグラスは、かつて殺された妻が救済されたように微笑む姿を幻の中に見るのだった。

序盤から映像の迫力がすさまじい。先住民とハンターの肉弾戦が巧みなカメラワークで映像化されている。続いて、グラスと熊との死闘も、どうやって撮影したのか全く分からないほどリアル。アリカラ族から逃れるため川を流されたり、馬もろとも崖下に落下したり、とにかく痛々しいシーンが生々しく描き出されている。息を飲む展開とはこのこと。クライマックスのフィッツジェラルドとの死闘も、斧でフィッツジェラルドの指が飛んだり、細かい演出まで徹底してこだわり抜かれて作られていることがよく分かる。
本作で、有名俳優レオナルド・ディカプリオは初のアカデミー主演男優賞を受賞しているが、本作では実際に極寒の状況で水に入ったり馬の腹の中に入ったりしたそうで、これだけのことをしたら右に出る者はいないだろうと思わせる怪演、文字通り死を賭した演技だった。話としては一人の男のドラマで、ラストシーンでアリカラ族が現れてフィッツジェラルドにとどめをさし、娘を救ったグラスには手を下さないという展開はちょっと見え見えだったが、人と人との戦い、人と厳しい自然との戦いを描いた映像の圧倒的迫力には、満点評価がふさわしいだろう。

【5段階評価】5

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2020年12月27日 (日)

(2279) スカイスクレイパー

【監督】ローソン・マーシャル・サーバー
【出演】ドウェイン・ジョンソン、ネーブ・キャンベル、チン・ハン、ローランド・ムーラー
【制作】2018年、アメリカ、中国

超高層ビルの火災に巻き込まれた家族を救うために奮闘する男の活躍を描いたアクション作品。

元FBIで自爆事故に巻き込まれて左脚の膝から下を失ったウィル・ソーヤー(ドウェイン・ジョンソン)は、転職して、香港の220階建ての超高層ビルのセキュリティ監査を担当することになる。ウィルはビルオーナーのジャオ(チン・ハン)からセキュリティシステムにアクセスする端末を受け取るが、それを強盗に奪われてしまう。強盗集団のボスで元軍人のコーレス・ボータ(ローランド・ムーラー)は、ビルの96階に放火し、ウィルから奪った端末でビル内の消火システムを無効化して火災を拡大させる。ウィルは、妻サラ(ネーブ・キャンベル)と娘ジョージア(マッケンナ・ロバーツ)と息子ヘンリー(ノア・コットレル)が98階に取り残されていることを知り、ビルの横にあったクレーンをよじ登ってビルに飛び移ると、ビル内でちりぢりになって逃げていた家族と合流。エレベータを使ってサラとヘンリーをビルから脱出させることに成功するが、ジョージアが強盗団に追われ、助けようとしたウィルとともに捕まってしまう。ボータは、ジョージアを人質にして、居室に逃げ込んだジャオが持つメモリードライブを持ってくるようウィルに命じる。ウィルは発電装置の中央部にあるコードを切断して居室のロックを解除して中に入り、ジャオから話を聞く。ボータはジャオのビル建設中に、ビル建設を妨害するとジャオを脅して金を巻き上げたが、ジャオは金をトラッキングしてボータの資金洗浄経路の情報を把握し、それをドライブに保管していた。ボータはジャオからドライブを奪うため、ジャオがビルから避難する際には大事なドライブを持ち去るだろうと踏んでビルに放火したのだった。
ウィルとジャオは、パラグライダーでビルから逃走するために屋上で待機しているボータらのもとに向かうが、ジャオがボータらに発砲し、銃撃戦となる。ジャオとウィルは奮闘し、次々と敵を葬り、最後はウィルがボータを突き落とし、ジョージアを助ける。ビルは炎に包まれるが、香港警察と行動をともにしていたサラが、犯人一味の持っていた端末を操作してビルのセキュリティシステムを再起動。ビルの消火システムが作動し、ウィルたちは無事に救助される。ウィルとジョージアはサラとヘンリーに再会。家族で強く抱き合い、周囲の人々が彼らを祝福するのだった。

すっかり大物ハリウッドスターとなったドウェイン・ジョンソンを主役に据えた、本格特撮娯楽アクション。「ダイ・ハード」と「タワーリング・インフェルノ」を混ぜて現代風のギミックを盛り込んだような作品。映像は本格的で展開も嘘くささが少ない。クレーンに立っているウィルがヘリから銃撃されるシーンでは、そりゃないだろと思ったが、そう言えば「ダイ・ハード」でも主役のジョン(ブルース・ウィリス)は犯人と間違われてヘリから銃撃されていた。足元がすくむような映像も大迫力で、マスコミの実況映像を見ながら様子を見守る見物人を味方に付ける辺りも自然な演出だった。
突っ込みどころがあるとすると、まず母親サラ。看護師なのに、敵側の男(ノア・テイラー)を投げ飛ばすわ、武闘派の女性ヒットマン(ハンナ・クィンリバン)と対等に渡り合うわと、強すぎ。また、8Kディスプレイが乱立する屋上での銃撃戦は、ちょっとアイディア倒れで現実味がなかった。正面にいると思わせておいて実はそれは虚像でウィル本人は背後にいたという落ちだが、どうやって自分の映像を出したのよ、と考えるとちょっと無理があった。それよりは、負傷したジャオが映像を操作してボータを混乱させ、その隙にウィルがジョージアを救い、ボータは自滅するみたいな展開のほうがジャオにも見せ場があり、よかったように思う。
とは言え、気持ちよくドキドキハラハラできる娯楽大作。映画館で観ていたら第一声は「面白かったね~」になるのは間違いない作品だろう。

【5段階評価】5

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2020年12月23日 (水)

(2275) ボーダーライン

【監督】ドゥニ・ビルヌーブ
【出演】エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ダニエル・カルーヤ
【制作】2015年、アメリカ

麻薬密輸組織を捜査する人々を描いたアクションサスペンス作品。

誘拐事件を捜査していたFBI捜査官のケイト・メイサー(エミリー・ブラント)は、踏み込んだ家の中で大量の死体を発見。彼女は黒幕となる麻薬組織を捜査するため、国防総省のマット・グレイバー(ジョシュ・ブローリン)のチームに参加する。マットのパートナー、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)とともに、麻薬組織の重要人物ギレルモ(エドガー・アレオラ)をメキシコからアメリカに護送するが、国境手前で渋滞しているところに、麻薬組織の一味が乗っていると思われる車が2台現れる。マットのチームは、多くの一般人の車がいる中で、彼らを銃殺。ケイト自身も、麻薬組織に買収された警官に狙われたため、相手を射殺する。ケイトはマットやアレハンドロのやり方にいらだちを感じる。
マットとアレハンドロはギレルモから、密入国用のトンネルの場所を聞き出し、捜査に向かう。しかし、アレハンドロの目的は私怨を晴らすことにあった。一方のマットは、アレハンドロの協力を得て、麻薬組織に混乱を起こして秩序を取り戻すことを狙っていた。アレハンドロはトンネルを抜けてメキシコに出ると、麻薬密輸に絡んでいる警官シルビオ(マキシミリアーノ・ヘルナンデス)を銃で脅して、組織のボス、マニュエル・ディアス(ベルナルド・サラシーノ)の車を止めさせる。アレハンドロはシルビオを射殺してディアスの足を撃ち、ディアスの車でソノラ・カルテルの麻薬王ファウスト・アラルコン(フリオ・セサール・セディージョ)の屋敷に侵入。ガード係を次々と射殺してアラルコン一家のディナーの場に現れる。アレハンドロは、容赦なくアラルコンの二人の子どもと妻を撃ち殺すと、アラルコンにもとどめを刺す。アレハンドロの妻と娘はアラルコンによって惨殺されていたのだ。
アメリカに戻ったアレハンドロはケイトのもとに現れ、捜査が適法であったという文書に無理矢理サインをさせる。ケイトは帰って行くアレハンドロに銃を向けるが、引き金を引くことはできなかった。メキシコでは、父の死を知らないシルビオの子どもが、母親に見守られてサッカーをしている。どこかでマシンガンの音が鳴り響き、人々は顔を上げるが、何事もなかったかのようにサッカーは続くのだった。

オープニングの死体発見や小屋の爆発、死体が吊り下げられている市街地を走り抜ける捜査車両など、ドキュメンタリー映画のようなシリアスな映像。コミカルな要素は一切なく、麻薬に汚染されたメキシコとアメリカの国境の状況がリアルに描かれている。メキシコの町並みや人々の暮らしの様子も興味深く、なかなか近づくことのできない地区の様子が感じ取れるのも作品の魅力になっている。
アレハンドロがアラルコンの屋敷に侵入するシーンは、警備の甘さにご都合主義を感じたが、女性捜査官の視点で物語を進めたり、名もないメキシコ警官の家族のシーンをメインストーリーに絡めたりと、脚本も巧み。BS12土曜洋画劇場が扱う作品は秀作が多い。

【5段階評価】5

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2020年11月 6日 (金)

(2228) プラダを着た悪魔

【監督】デビッド・フランケル
【出演】アン・ハサウェイ、メリル・ストリープ、エイドリアン・グレニアー、スタンリー・トゥッチ
【制作】2006年、アメリカ

ファッション雑誌社で働く女性の奮闘を描いた作品。

大学を卒業したアンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)はジャーナリスト志望。キャリアを積むため、ファッション雑誌「ランウェイ」の出版社への就職を希望し、運よく鬼編集長ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)の目に止まり、第二アシスタントとして採用される。第一アシスタント、エミリー(エミリー・ブラント)の蔑視を受け流し、公私混同の無茶な要求を繰り返す傲慢なミランダに振り回されつつも、アンドレアは奮闘。ファッションに興味のない彼女だったが、ミランダの右腕ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)の協力もあり、次第にミランダに認められ、年に一度の重要イベント、パリ・コレ取材のクルーに抜擢される。しかし、仕事に没頭するあまり、恋人のネイト(エイドリアン・グレニアー)との関係にひびが入り、パリでは憧れのイケメン作家クリスチャン・トンプソン(サイモン・ベイカー)と一夜の関係を持つ。
クリスチャンから、ミランダが編集長を降ろされ、ジャクリーヌ・フォレ(ステファニー・ショスタク)が新編集長になるという話を聞いたアンドレアは、ミランダにそれを伝えようとするが、ミランダはナイジェルが就くはずだった要職にジャクリーヌを抜擢するという裏工作に出て、自らの編集長降板を回避。冷徹なミランダを見て、アンドレアはアシスタントをやめる決心が付く。
アンドレアはネイトとよりを戻し、再就職の面接に向かう。面接相手は、「ミランダから直接ファックスが届き、そこには『アンドレアには失望させられた。雇わなかったら大馬鹿者だ』と書いてあった。いい仕事をしたようだ」とアンドレアに告げる。アンドレアは、ミランダが自分を認めてくれたことに驚く。
アンドレアは忙しそうに車に乗り込むミランダを見かける。ミランダはアンドレアを無視するように車に乗り込むが、ふと微笑み、そして厳しい顔でドライバーに車を出すよう指示する。ミランダの車を見送ったアンドレアは、街の雑踏に溶け込んでいくのだった。

どんなに技能があっても他社に偉そうな人間には虫唾が走るので、ミランダはとても好きにはなれない人物だが、このステレオタイプを通り越すほど典型的な鬼上司がいるからこそ、主人公アンドレアの変わるさま、変わらないさまが観る者に感動を与える。主役から脇役まで、隙のない素敵な作品。ファッションに興味がない人でも十分に楽しめる。

【5段階評価】5

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2020年10月15日 (木)

(2206) パッセンジャー

【監督】モルテン・ティルドゥム
【出演】クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・シーン
【制作】2016年、アメリカ

移民を乗せて別の惑星に向かう宇宙船の中で冬眠状態から目覚めた男女の運命を描いたSF作品。

5,000人の移民を乗せて宇宙空間を飛行する宇宙船アバロン号。乗客、乗員は全員冬眠状態で、自動運行をしていた。しかし、巨大な隕石が衝突し、システムエラーにより、一人の冬眠が解けてしまう。起き上がったのは技術者のジム・プレストン(クリス・プラット)。彼は船内で起きているのは自分だけであり、目的地の惑星にはあと90年かかることを知る。人がいると思って近づいたバーテンダーはアンドロイドのアーサー(マイケル・シーン)。酒と食事を好きなだけとり、娯楽施設を堪能したり宇宙服を着て船外遊泳を楽しむジムだったが、孤独に耐えきれず、自殺の一歩手前まで追い込まれる。そんなとき、冬眠中のカプセルの中にオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)という美しく若い女性がいることに気づく。彼はオーロラのインタビュー動画を見つけ、彼女に惹かれていく。そしてついに誘惑に耐えかね、彼女の冬眠カプセルを操作し、彼女を冬眠から目覚めさせてしまう。オーロラはジムが自分を起こしたとは知らず、船内にたった一人のジムと知り合い、二人は恋人同士となる。ジムはアーサーに、自分がオーロラを起こしたことは絶対に言うなと口止めしていたが、恋仲になったジムとオーロラがバーに行ったとき、二人の間に秘密は何もない、とアーサーに話す。ジムは船内の貴金属で作った指輪をサプライズでオーロラにプレゼントするために席を外すが、二人の間に秘密はないと解釈したアーサーは、ジムがオーロラの冬眠カプセルを開けた頃の話をオーロラにしてしまう。それを聞いたオーロラは、ジムに自分の人生を奪われたことにショックを受け、ジムに激しい怒りをぶつける。二人の関係は完全に引き裂かれてしまう。
一方、船内は隕石衝突の影響で、回復できないエラーが頻発するようになり、乗組員のガス(ローレンス・フィッシュバーン)も目覚める。三人は協力して船内の故障の原因を探ろうとするが、ガスは冬眠装置の故障により体内を激しく損傷しており、身につけていた高セキュリティアクセスデバイスをジムに託し、息絶える。ジムとオーロラは協力して船内を探索。隕石が船内を貫通して核融合炉のコンピュータを破壊していることを突き止める。ジムは損傷箇所をスペア部品と取り替えて再起動し、加熱した核融合炉の熱を排出しようとするが、排出口の扉が故障して開かず、熱を排出できない。ジムは宇宙服を着て船外から扉を開け、同時にオーロラが船内のレバーを引くことで熱排出は成功するが、ジムは熱噴射により吹き飛ばされ、命綱が切れて宇宙空間に放り出されてしまう。それに気づいたオーロラは慌てて宇宙服を着て船外に飛び出し、何とかジムを回収し、治療用カプセルにジムを担ぎ込むが、ジムは死亡と診断される。オーロラは蘇生措置を起動し、ジムは蘇る。ジムは医療カプセルが冬眠カプセルの代替になることを発見。オーロラにカプセルで冬眠するよう促すが、オーロラはジムと船内で暮らし続ける道を選ぶ。88年が経ち、宇宙船のクルーたちが冬眠から目覚める。彼らは船内に木がしげり、小屋が作られているようすを目の当たりにするのだった。

アポロ13」や「ゼロ・グラビティ」のような、宇宙空間から地球に生還するというサバイバルではなく、宇宙船の中で生き続けることを余儀なくされた二人の男女が生存を賭けて奮闘し、やがて自分たちの世界を創り上げるという創世記的な作品。なかなか面白い状況設定で、映像も美しく、見応えのある作品だった。未来の衣装や宇宙船のデザインも奇抜さがなく洗練されており、ギミックが豊かで観ていて楽しい。サバイバルできてよかったね、という楽しみ方もできる一方で、オーロラの立場からすると、ジムのしたことを本当に許せるのか、考えさせられる内容でもある。ジムが起きなければ宇宙船ごと5,000人が死亡していたとは言えるが、それは結果論である。少なくともジムが若いタフガイだから成り立つ話ではあるだろう。自分としては、オーロラに蘇生されたジムが記憶を失っていて、オーロラを見て「君は誰だ? 」と尋ね、そこから二人の愛が一から始まる、なんていう終わり方もありだと思った。
全員冬眠しているのに何で照明がついているの、とか、「技術者」が何でも作れるアビリティ使いすぎ、とか、ガスは要するに管理者権限を渡すためだけに出てきたNPCなのね、とか、細かいことは気にしないほうがいい。宇宙ではご都合主義なしには生き抜けないのである。
ハンガー・ゲーム」では絶世の美女というより、どこにでもいるような平凡な少女を演じていたジェニファー・ローレンスの美しさも、本作の大きな魅力になっている。

【5段階評価】5

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2020年10月 3日 (土)

(2194) ベイブ

【監督】クリス・ヌーナン
【出演】ジェームズ・クロムウェル、マグダ・ズバンスキー、クリスティーン・カバナー(声)、ミリアム・マーゴリーズ(声)
【制作】1995年、オーストラリア、アメリカ

牧羊犬ならぬ牧羊ブタとなった子豚の活躍を描いたファンタジー作品。

母親を食肉工場に連れ去られた雄の子豚(クリスティーン・カバナー)が、体重当てゲーム用のブタとして養豚場から連れ出される。何の気なしに参加した羊飼いアーサー・ホゲット(ジェームズ・クロムウェル)が体重を当て、子豚を手に入れる。アーサーの家の雌の牧羊犬フライ(ミリアム・マーゴリーズ)は子豚にベイブと名付け、彼の母親代わりとなる。ベイブはアヒルのフェルディナンド(ダニー・マン)や羊のメェ(ミリアム・フリン)と仲よくなる。ベイブはある日、牧羊場で泥棒が羊をさらっている騒ぎに気づき、フライと雄犬のレックス(ヒューゴ・ウィービング)に有事を伝える。その様子に気づいたアーサーは農場に向かい、羊の全滅を防ぐ。アーサーはベイブが賢いことに気づく。
アーサーはベイブを牧羊場に連れて行き、牧羊犬として働けるかを試す。ベイブは羊の群れを動かそうとするが、羊たちはベイブを鼻で笑い、全く動こうとしない。フライはベイブに、羊を見下し、脅せ、と助言するが、ベイブは逆に、羊に丁寧にお願いして移動してもらう。ベイブがやりとげたことにフライは喜ぶが、レックスはプライドを傷つけられて憤慨し、その夜、フライと大げんか。止めに入ったアーサーの手を噛んでしまい、鎮静剤を撃たれてしまう。アーサーは、ベイブを牧羊犬コンテストに出場させることにする。
コンテスト当日。ベイブはコンテスト用の羊に話しかけるが、全く振り向いてももらえない。レックスはアーサーの牧羊場に戻り、羊たちにベイブを助けてほしいと頭を下げる。羊たちは、二度とレックスたちが羊に吠えたり噛みついたりしないことを条件に、羊だけが知る秘密のパスワードをレックスに伝授。レックスはいそいで会場に戻る。
コンテストの審査団は、ブタを出場させようとするアーサーに憤慨するが、ルール上、拒否できないため出場を認める。アーサーはベイブを連れて会場入り。観客はブタが出てきたことで大笑い。別の場所からテレビ観戦していたアーサーの妻、エズメ(マグダ・ズバンスキー)も嘲笑の的になっているアーサーを見て卒倒してしまう。
何とかベイブの競技開始に間に合ったレックスは、秘密のパスワードをベイブに伝える。ベイブは羊たちに歩み寄り、パスワードを伝える。するとはじめは全く動かなかった羊たちが、整然と並んで指定通りに行動を開始。会場は息を飲み、実況アナウンサーは言葉を失う。会場が静かに見守る中、羊たちはベイブの誘導のもと、見事な行進を披露し、最後は赤い首輪を付けた雌の羊を先頭に、指定された柵の中にきれいに収まる。アーサーが静かに柵の扉を閉めた途端、会場は大歓声に包まれる。審査員は全員が100点満点。アーサーは優勝を決め、ベイブに「よくやった」と一言。ベイブはきょとんとした顔で主人を見上げるのだった。

序盤は若干退屈で、動物を使ったドタバタ劇の様相だが、クライマックスのコンテストのシーンは感動的。見下され、馬鹿にされていたベイブが、健気に羊を完璧に誘導する姿は、涙なしには見られないだろう。コンテストの前夜、意地悪な猫に、ブタは主人に食べられるための存在だと言われてショックを受け、食欲を失ったベイブに、普段は無口なアーサーが、突然賑やかなダンスを踊ってベイブを元気づけるシーンも、味があってよかった。有名な作品ながら、子供向けという印象から鑑賞を敬遠していたが、微笑ましいだけではなく大いなる感動を与えてくれる名作だった。

【5段階評価】5

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2020年9月29日 (火)

(2190) あやしい彼女

【監督】水田伸生
【出演】多部未華子、倍賞美津子、小林聡美、要潤、北村匠海、志賀廣太郎、温水洋一、越野アンナ
【制作】2016年、日本

若返りを果たした老女がバンドでの活躍を通じて家族との絆を深め合うファンタジー。韓国映画「怪しい彼女」のリメイク。コメディタッチの感動作。

女手一つで娘を育て上げた瀬山カツ(倍賞美津子)は近所でも評判の悪いケチで口の悪い老女。会社勤めの娘、幸恵(小林聡美)と口げんかし、家を飛び出すと、夜中に一軒、開いている写真館を見つけ、憧れていたオードリー・ヘップバーンをイメージして写真に収まる。すると、店を出たカツの顔と体は若返り、20歳ぐらいの女性(多部未華子)になる。カツとしてバイトをしていた銭湯でのぼせた彼女は、若い頃から苦楽をともにしてきた幼なじみの中田次郎(志賀廣太郎)に介抱され、大鳥節子と名乗り、彼の家に世話になる。節子は地元のカラオケ大会で歌を披露すると、バンドをしている孫の翼(北村匠海)と、音楽プロデューサーの小林拓人(要潤)にその歌声を見初められる。翼は節子をバンドのボーカルに誘い、節子は了承。ストリートライブは評判になり、拓人の目に止まる。拓人は節子らを番組で取り上げ、ライブコンサートへの出演を決める。節子は次郎に正体を明かし、一緒に暮らしつつ、自分に優しく接してくる拓人との仲も深めていく。
コンサートの当日、翼は会場に急ぐ道中で交通事故に遭い、血まみれで会場に到着。節子は翼のためにライブは何とか成功させる。翼の運ばれた病院に到着した節子は、珍しい血液型の翼のために、適合者の自分が輸血をすると宣言。血を抜くと節子にかかった若返りの効果は切れてしまうため、次郎は苦労続きだった人生をやっとやり直せるのにいいのか、と問いただすが、節子の決意は変わらない。幸恵も母親に対して、自分の息子の翼は自分でなんとかするからお母さんは自分の人生をやり直してほしいと告げるが、節子は何度やりなおしても同じ人生を選ぶと言って、幸恵を抱きしめる。
こうして節子はもとのカツに戻り、拓人との淡い恋も幻となる。翼のバンドはボーカルを入れ替え、単独コンサートのリハーサルを迎えていた。幸恵とともに会場を見ていたカツは、風に当たるといって拓人のいる会場から姿を消す。そこにさっそうと原付に乗った男が現れ、カツの目の前に止まる。拓人かと思ったが、それは若い次郎(野村周平)だった。次郎はカツを後部座席に乗せ、スクーターを発進させるのだった。

ドタバタコメディかと思っていたら、親子愛を描いた感動作だった。映画の冒頭、若い女性(多部未華子)が傷だらけの男に輸血をするシーンから始まるので、作品の終盤にさしかかると「なるほど、そういうことね」と展開が読めてしまったのだが、脚本は巧み。これは泣ける。そして歌がいい。多部未華子自らが歌っている懐かしの曲のアレンジにも素直に感動できるし、主題歌を歌うanderlustのボーカル、越野アンナも好きになった。翼を演じた北村匠海も実際にギターを演奏したらしい。ただ、節子が翼を鼓舞するときに、歌を伝えたい相手がいるんだろう、と言っていたのだが、それって誰だったのか、よく分からなかった。

【5段階評価】5

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2020年9月24日 (木)

(2185) スクール・オブ・ロック

【監督】リチャード・リンクレイター
【出演】ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック、マイク・ホワイト、ミランダ・コスグローブ、ケビン・クラーク
【制作】2003年、アメリカ

賃金目的で小学校臨時教師の職についたダメミュージシャンの奮闘を描いたコメディ。

小太りで身勝手なパフォーマンスをするギタリストのデューイ(ジャッック・ブラック)は、自分のロックバンドを首になる。シェアハウスに同居する親友のネッドはお人好しな性格で、家賃を払えないデューイの肩代わりを続けていたが、ようやく見つけた彼女のパティ(サラ・シルバーマン)から厳しく言われ、家賃を払わなければ部屋を出てくれとデューイに告げる。お金の必要になったデューイは、ネッドあてにかかってきた小学校臨時教師の連絡に、ネッドになりすまして対応し、臨時教師のポジションに潜り込む。そこは一流私立校ホレス・グリーン学院。校長のロザリー(ジョーン・キューザック)は厳格な性格で、ネッドになりすましたデューイにきちんと教鞭をとるよう伝えるが、デューイはいきなりクラスを休憩時間にしてしまう。生徒たちは真面目で、委員長のサマー・ハサウェイ(ミランダ・コスグローブ)は何か教えてほしいとデューイに意見し、デューイはロックバンドの指導を始める。デューイは彼らの音楽の授業を見て彼らが楽器を演奏できることを知り、ロックバンドを結成する。音楽の素養のあったザック(ジョーイ・ゲイドス・Jr)がリードギター、キーボードはローレンス(ロバート・ツァイ)、ケイティ(レベッカ・ブラウン)はベースを担当し、パーカッションをしていたフレディ(ケビン・クラーク)はドラムを担当する。歌が得意なトミカ(マリアム・ハッサン)と二人の女生徒がバックコーラスを担当する。他の生徒も警備係や照明、衣装、バンド名を決める係など、それぞれの役割を与えられ、親や他の先生に内緒で練習を続ける。デューイは来るバンドバトルに出場を決めるが、前日になってネッドに教師になりすましていたことがばれ、警察に通報されてしまう。保護者会の席にいたデューイはみんなに嘘を告白しつつ、子ども達を称賛して学校を去る。
残された生徒達は、ここまでやったのだから、とバンドバトルへの出場を決意し、意気消沈して部屋で寝込んでいたデューイをたたき起こして会場に向かう。ロザリーのもとに押し寄せていた子ども達の親も、ロザリーとともに会場にやってくる。デューイたちの順番になり、デューイの率いるバンド「スクール・オブ・ロック」は、ザックが作った曲を披露。見事な演奏と子ども達のテクニックに会場は大興奮に包まれ、親たちも大満足の表情を浮かべる。優勝はデューイを首にしたバンドが手にするが、会場は「スクール・オブ・ロック」の大合唱。デューイらはアンコールに応えて会場でもう一曲披露する。
サマーはデューイから与えられたマネージャーの役がすっかり板に付き、子ども達は今日もデューイとロックバンドの練習を続けるのだった。

天使にラブソングを・・・」か、むしろその続編、あるいは「コーラス」なんかと同系統の作品だが、面白いのは普通は、できの悪い子ども達が音楽を通じて自身を持ち更生していくのだが、本作は、できが悪いのは教師の方で、生徒達は勉強熱心で真面目であるところが面白い。その真面目な生徒達が、不真面目な教師にうまくやる気を引き出され、暮らす全体でのロックバンド活動に熱中していく。開始数分で「あ、この映画は感動するヤツだ」と分かり、クライマックスが待ち遠しくなる。そんな作品だった。デューイが、不真面目で粗野な男のようでいて、生徒達を褒めてやる気にさせ、自信を付けさせるのがうまく、見ていて心地いい。このまますっとフィナーレまで行ってもいいのに、と思ったが、やはり途中でバレてデューイが首になるという展開はあった。まあ、2球内角を攻めた後の外角のボール球のようなもんだろうか。たまには三球三振のようなスカッとする展開もいいもんだとは思うが、本作はそのボール球のシーンが長ったらしくウジウジせず、スカッと明るい展開にすぐ変わるのがよかった。最後のパフォーマンスシーンは興奮と感動で胸が高鳴った。咲の展開にわくわくし続けられる、文句なしで5点を付けられる作品。

【5段階評価】5

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2020年9月14日 (月)

(2175) ポセイドン・アドベンチャー

【監督】ロナルド・ニーム
【出演】ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレイ、ステラ・スティーブンス
【制作】1972年、アメリカ

大津波で転覆した客船からの脱出を目指す人々の死闘を描いた作品。

豪華客船ポセイドン号が嵐と津波によって転覆。船は天地がひっくり返ってしまう。パーティ会場で新年を祝っていた人々は床から天井に落下し、何人かが命を落とす。勇敢な牧師スコット(ジーン・ハックマン)は、その場にとどまるよう伝えるパーサーを無視して、船底を目指すため、海上にあった巨大なクリスマスツリーを上部に渡して人々を登らせる。しかし、多くの人はパーサーとともに会場に残る選択をしたため、スコットは説得を諦め、自らもクリスマスツリーを登る。すると、船が小爆発を起こして海水が会場に浸入し、パーサーとともに残っていた大勢の人達を襲う。人々は慌ててクリスマスツリーに群がるが、「蜘蛛の糸」のごとく、クリスマスツリーは倒れてしまう。スコットはやむなくその場を後にする。
スコットと同様に残ったのは、足に怪我をしたエイカーズ(ロディ・マクドウォール)、船に詳しい少年ロビン(エリック・シーア)とその姉スーザン(パメラ・スー・マーティン)、老刑事マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)と妻のリンダ(ステラ・スティーブンス)、孫に会う予定のローゼン夫妻の夫マニー(ジャック・アルバートソン)とベル(シェリー・ウィンタース)、雑貨店主を務めてきた独身中年男性ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)、歌手のノニー・パリー(キャロル・リンレイ)の9名だけ。ロビンが船底のプロペラ室は鉄板が2.5センチしかないと言い、スコットはそこを目指すことにする。スコット達は焼けた調理室を抜けて通路に出ると、通気口を登って2階下(現状では上)を目指すが、足を怪我したエイカーズが落下し、命を落とす。たどり着いた場所から、船首に向かって進む船医の一団と遭遇。スコットは機関室を抜けて船底を目指すべきだと主張するが、船医達は機関室は爆発したと告げ、無視して先に進んでしまう。スコットとマイクは口論となるが、スコットが何とか機関室にたどり着くルートを発見。しかし、さらに海水が浸入し、ルートの途中が浸水してしまう。スコットが体にロープを巻き付けて浸水箇所に潜り、ルートを確保しようとするが、途中で障害物に体を挟まれてしまう。若い頃に潜水が得意だったベルが救出に向かい、動けなくなっていたスコットを救い出して機関室にたどり着くが、ベルは心臓発作を起こし、命を落としてしまう。スコットは勇敢なベルの命を奪う運命を嘆き、神を呪う。何とか浸水箇所を通り抜けた残りの人々は、プロペラ室を目指し、不安定な足場を登っていくが、途中で爆発による振動が起き、リンダが火の海に落下して絶命。ロゴはスコットに罵りの言葉を浴びせる。スコットは黙ってそれを聞くしかなかった。振動の影響でプロペラ室に向かう経路に蒸気が噴き出してしまう。ここまで勇敢に困難に立ち向かってきたスコットは、ついに神への怒りを露わにし、これ以上の犠牲を望むなら俺を連れて行け、と叫びながら蒸気の噴き出すバルブに飛び移ると、自分の体重をかけてバルブを閉め、水蒸気を止めると、残りの人々を頼むとロゴに言い残し、自らは炎が燃えさかる中に落下してしまう。ジェームズはロゴを奮起し、妻を失って茫然自失としていたロゴは立ち上がり、プロペラ室への扉を開ける。中に入った6人は、外から音が聞こえてくるのを確認。船底をパイプで叩き、音を出すと、それに答えるように外からも音が聞こえてきた。やがてバーナーの炎が船底を貫き始める。救出された6人は、ヘリに乗り込む。ヘリは6人を乗せて船底から飛び立つのだった。

なんだか神話の世界のファンタジー冒険もののようなタイトルだが、パニック映画の代表作。オープニングからいかにも模型の客船が何度も現れ、「せめて全景ぐらい本物使えなかったのかよ」という気はしたのだが、船内シーンになってからの迫力は相当なもの。「タイタニック」と違ってフィクションではあるのだが、次々と訪れる危機や、それに飲み込まれて人々が命を落とす状況が真に迫っていて、手に汗握る展開に目が離せない。船員の指示を無視して船底を目指す牧師の蛮勇ぶりに、何の根拠があるのか、と共感したくない気持ちも序盤は沸くのだが、自らの信念のもと人々を導き、困難を乗り越え、最後は自らを犠牲にして人々を解放するという展開は、何やら宗教の教祖のようでもあり、なにやら厳かな気持ちにすらなる。スコットといがみ合っていたロゴが、最後の最後にいかにも悔しそうな顔をするのだが、それはおそらく、焼け死んだリンダではなく、後一歩の所まで来ていたスコットの死に対するものだっただろう。
老夫婦の一人がむかし潜水が得意だったり、主人公を救ってから命を落としたり、太もももあらわな若い女性二人が最後まで生き残ったりと、フィクションならではの展開もあったりはするのだが、不朽の名作の一つであることは間違いない。

【5段階評価】5

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