評価5の映画

2019年5月26日 (日)

(1890) リップヴァンウィンクルの花嫁

【監督】岩井俊二
【出演】黒木華、Cocco、綾野剛、原日出子、地曵豪
【制作】2016年、日本

幸せを手に入れようともがく女性の数奇な運命を描いた作品。

聖林中学の臨時教師をしている皆川七海(黒木華)は、お見合いサイトで彼氏(地曵豪)を見つける。彼の名は鶴岡鉄也。彼も教師をしていた。七海は「クラムボン」というハンドルネームで、彼氏がネットショップの買物のように簡単に見つかったとネットでつぶやく。二人は結納を済ませるが、実は七海の両親は離婚しており、それを伏せて臨んだ結納だった。結納を済ませ、披露宴の相談をしていた二人だったが、七海は結婚披露宴の招待客が少ないと鉄也に言われてしまう。また、彼女は声の小ささを生徒にからかわれ、生徒の用意したマイクを使って授業をしたことが原因で学校を首になっていた。そのことや、結納の日の会話で、鉄也の母親(原日出子)が七海が主婦に専念しないことを快く思わない態度だったことから、教師の正式採用の夢を諦めるが、鉄也は自分に相談がなかったと七海を責める。
七海は、ランバラルというネット住民に、披露宴に偽物の親族や友人を招待するサービスがあることを教えてもらい、何でも屋の安室行舛(綾野剛)という男に会って披露宴代理出席サービスを依頼する。そのおかげで、披露宴はつつがなく終了するが、鉄也は、クラムボンという名義で、彼氏が簡単に手に入ったなどと書き込んでいる人物がいることを七海に話す。七海を少し疑っているようだった。
新婚生活に入った二人。七海が朝、鉄也を送り出して部屋を掃除していると、床に女性もののピアスが落ちているのを発見。七海は安室に相談する。安室は浮気調査を30万円で引き受ける。
ある日、夫の不在中に、七海の家に一人の男(和田聰宏)が尋ねてきて、鉄也が自分の恋人と浮気をしていると言って部屋に上がり込む。男は鉄也の卒業アルバムを持ってこさせ、そこに写っている女子生徒と浮気をしていると説明。七海はショックでへたり込んでしまい、男はいったん退散する。男は七海をホテルに呼び出し、彼女に肉体関係を迫る。七海はトイレにいったん入り、慌てて安室を呼び出す。安室は現場に向かうが、実はホテルにいる男と安室はグルだった。安室は手際よく部屋の中の隠しカメラをしまい込み、さも男を追い出したかのような顔で七海を安心させる。
鉄也の父親の通夜に出席した七海は、鉄也の母親のカヤ子(原日出子)に呼び出され、両親が離婚していたことを黙っていたことや、親戚を代理出席させていたことを責めると、七海がホテルで男と会っていた映像を突きつけ、七海を追い出す。七海は泣きながら家に帰り、一夜を明かす。翌朝、鉄也が電話で七海を責めたため、七海も言い返し、アルバムの写真を確認するが、部屋にやってきた男が示したはずの女子生徒の写真はなくなっていた。鉄也に三行半をたたきつけられた七海は、行く当てもなく部屋を出るしかなく、混乱した七海は安室に電話で助けを求め、何とか狭いホテルにたどり着く。仕事のない七海は、住み込みでホテル清掃のアルバイトを始める。安室は、七海に会いに来る。安室の調査によると、鉄也はマザコンで、カヤ子と週に2回は会っていたこと、カヤ子は七海の留守中に二人の家にも来ていたことを報告。七海はカヤ子の依頼した別れさせ屋にはめられたのだ、と説明する。実はその別れさせ屋の仕事自体を安室が引き受けているわけだが、七海はそれを疑いもしない。
安室は七海に披露宴代理出席のアルバイトの話を持ってくる。断るすべもなくそれに参加した七海は、自分の姉役を演じた里中真白(Cocco)と知り合い、意気投合する。彼女は女優をしているということだった。安室はさらに、月100万円稼げる住み込みのメイドの仕事を七海に紹介。そこは大豪邸で、宴会で大騒ぎをしたあとのように屋敷の中は散らかっていた。もう一人、住み込みがいると聞かされていた七海だったが、それは真白だった。七海は真白との再会を喜ぶ。真白は朝早くから女優の仕事に出る日々だったが、ある日、真白が眠り込んでいるところに、呼び出しの電話がかかる。真白は熱を出しており、仕事の関係者の恒吉冴子(夏目ナナ)が屋敷にやってくる。真白の仕事は女優と言ってもAV女優で、大豪邸は真白が気に入り借りているものだった。七海は安室に電話をして自分の雇い主は真白なのかと問いただす。安室は誰が雇い主かは言えないと言いながら、クライアントの依頼は友達がほしい、だったと明かす。七海は真白に、こんな生活はやめて二人で別の所に住もうと涙を流して話す。真白は、この涙のためなら何だって捨てられる、命だって、と言って七海の提案を受け入れる。
家探しをした二人は、ウェディングドレスのお店を見つけ、ドレスを着たまま屋敷で一夜を明かす。二人はベッドの上で横になり、真白は、世の中は幸せと優しさに満ちていて、それがあまり簡単に手に入ると自分が壊れてしまうから、自分はお金を払うんだ、と話す。七海の優しさは真白には辛いほど嬉しいのだった。真白は七海に、一緒に死んでくれと言ったら死んでくれるか、と問いかけ、七海は優しく頷く。
翌朝、真白は冷たくなっていた。屋敷に葬儀屋と安室が現れる。真白は、今夜死ぬ、と安室に連絡を入れていた。自殺だった。葬儀が営まれ、七海は真白の仕事仲間から、彼女が乳がんだったこと、治療をすれば死なずに死んだのに、彼女は体にメスが入ったら里中真白として仕事ができなくなるからそれを拒んでいたと聞かされる。
安室と七海は真白の母親(りりィ)の家に向かう。母親は、縁を切った真白がポルノ女優をしていたことを知り、一度だけ居場所をつきとめて、顔を殴るだけ殴って帰ってきたという話をすると、やおら服を脱ぎ始め、「人前で裸なんて、やっぱり恥ずかしいだけだ」と言って涙を流す。安室もたまらずに号泣。全裸になって恥ずかしさをともにする。七海は母親の出してきた焼酎をあおり、泣きながらおいしいです、と言って母親におかわりをもとめる。三人は泣き、そして笑いながら真白を偲ぶ。
七海はこじんまりとしたアパートに転居。安室は引越祝いとして大量の粗大ゴミの家具を持ち込み、七海に好きな家具を選ばせると、去って行く。七海はベランダに出て、これまでのことに思いをはせるのだった。

岩井俊二監督が、黒木華を主演にすることを想定して作った小説がもとになっている。決して悪事を働こうとしたわけでも、身分不相応な幸せを得ようとしたわけでもなかった七海が、不幸に陥り、そこから這い上がる中で一人の女性と知り合い、そして彼女を失う。
なんと言っても、真白の母親の部屋での号泣シーンが感動的。こういう訳の分からない感情に涙を流すということが、自分にとって初めてで得がたい経験だった。黒木華の存在感を存分に堪能でき、文学性も感じられるいい作品。

【5段階評価】5

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2019年4月 6日 (土)

(1861) ラ・ラ・ランド

【監督】デミアン・チャゼル
【出演】ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、ジョン・レジェンド、J・K・シモンズ
【制作】2016年、アメリカ

女優を目指す女性とジャズピアニストの恋の行方を描いたミュージカル映画。数々のアカデミー賞に輝いた作品。

女優を目指すミア(エマ・ストーン)は、渋滞中の車の中で後続の運転手、セブ(ライアン・ゴズリング)にクラクションを鳴らされ、中指を立てて挑発する。夜、友人とパーティに出かけたミアは、乗ってきた車をレッカーされ、仕方なく歩いている途中で魅力的なピアノの演奏が聞こえてきた店に入る。中にはセブがいた。ミアはセブに声をかけようとするが、店のオーナー(J・K・シモンズ)から首を言い渡されたばかりのセブは、ミアを無視して突き飛ばすように店を去ってしまう。
二人はパーティで偶然に再会し、会話を交わすようになる。偶然の出会いを重ねる二人は親しくなり、「理由なき反抗」を観に行き、舞台となったプラネタリウムで口づけをかわす。幸せなカップルとなった二人だったが、セブは、クラシックなジャズをやる店を持つ夢を描いていたが、ミアが自分が定職に就いていないことを気にしていると考え、音楽の方向性の違うキース(ジョン・レジェンド)のバンドのキーボーディストとなる。ところが、ミアは夢を追おうとしないセブに不満を表明。二人の関係はギクシャクしてしまう。一人芝居の脚本を書き、それを演じたミアだったが、客はまばらで、酷評の声が耳に届く。セブは、落ち込むミアの力になろうとするが、耐えられなくなったミアは実家に戻ってしまう。ところが一人でいるセブに、映画のキャスティング担当者から電話が入り、一人芝居をしたミアを抜擢したいという声がかかる。セブは図書館の向かいに住んでいたというミアの思い出話を頼りにミアの実家の場所の当たりを付け、車のクラクションを鳴らしてミアを呼び出す。ミアは担当者に、役者への思いのたけをぶつける。
時が経ち、ミアは押しも押されもせぬ大女優となる。すでに結婚し、子供もいるミアの夫は、セブではなく別の男だった。ミアはセブとディナーにでかけ、ジャズ・バーに入る。そこはセブが夢を叶えた店だった。ミアはセブに気づき、セブもまたミアに気づく。セブはピアノを弾き、二人は想像の世界で幸せな恋人に戻る。しかし曲は終わり、ミアは店を後にするのだった。

オープニングのハイウェイのワンカットのシーンが圧巻。ミュージカル映画の不自然さが嫌いな人でも、ここまでされたら楽しいんだから仕方がない。ルームメイトとパーティに繰り出すシーンも楽しく、一気にこの映画は楽しいぞ、と思わせてくれる。ライアン・ゴズリングの演じるピアニストの指捌きにも、ごまかし感がなく、しっかりと見せてくれる。なかなかくっつかない主役の二人が恋人同士になり、このままハッピーエンドになってほしいという願いもむなしく、二人は喧嘩をしてしまう。結局二人は結ばれず、少しもの悲しいフィナーレではあるのだが、「巴里のアメリカ人」にも似た、幸せを満喫する二人のミュージカルシーンは、もし二人が生まれ変わったらきっと幸せなカップルになっていただろう、という夢と、すがすがしい余韻をを観る者に与えてくれた。久しぶりに「ああ、いい映画を観た」と思わせてくれる作品だった。

【5段階評価】5

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2018年11月18日 (日)

(1772) 聲の形

【監督】山田尚子
【出演】入野自由(声)、早見沙織(声)、悠木碧(声)、金子有希(声)
【制作】2016年、日本

大今良時原作漫画のアニメ映画か作品。耳の聞こえない少女と、その同級生だった男子高生との交流を描いた作品。

小学生の石田将也(松岡茉優)のクラスに、ろうあの少女、西宮硝子(早見沙織)が転校してくる。筆談用ノートで同級生とコミュニケーションをとるが、将也は彼女の補聴器を取り上げて教室の外に放り投げたり、耳元で大声で叫んだり、と彼女をからかい、いじめ始める。女生徒の植野直花(金子有希)も、ノートを持って会話に入り込もうとしたり、何を言ってもすぐごめんなさいという硝子をウザがり、仲間はずれにする。硝子へのいじめは補聴器の度重なる紛失という形で表面化し、クラスは一転して将也をつまはじきにする。
中学に上がっても、将也は仲良しだった島田一旗(西谷亮)から悪口を言いふらされて孤立。高校でも浮いた存在となるが、やがて永束(小野賢章)と友達になる。
将也は手話を覚え、硝子に会いに行き、持ったままだった筆談用ノートを彼女に手渡す。硝子の妹の結弦(悠木碧)は、はじめは将也を嫌悪し、ののしるが、将也の真摯な気持ちに触れ、硝子と将也のふれあいを応援するようになる。小学生時代の同級生との交流を取り戻した将也は、硝子、結弦、永束、植野、小学校時代の同級生の佐原みよこ(石川由依)、川井みき(潘めぐみ)、高校で友人となった真柴智(豊永利行)と遊園地に行き、久しぶりに友達と仲よく幸せに過ごす気分に浸る。しかし、硝子を好きになれずにいた直花は、観覧車に硝子と二人で乗り、彼女を責める。真柴は、直花と硝子が小学生の頃いろいろあったという話を川井から聞いたという話を将也にする。それを聞いた将也は川井を問いただすが、川井は逆ギレして将也が硝子をいじめていたと怒り出す。将也はいつも硝子と会う水門橋に向かうが、そこに集まった友人達をことごとく罵倒してしまう。将也は硝子と結弦とともに夏休みを過ごし、将也のことを嫌っていた硝子の母親(平松晶子)にも何とか許しを得るようになり、花火大会に硝子の家族と出かける。ところが、硝子は勉強をするからと言って途中で家に帰ってしまう。またね、と手話で伝えた将也に、硝子はたださようならをしてその場を去る。結弦から家に置き忘れたカメラを取ってくるよう頼まれた将也は、硝子の住むマンションに向かう。将也は硝子がマンションのベランダに立っているのを見つける。硝子はそのままベランダのへりを世j登り、その上に立ち、飛び降りを図る。何とか手を掴んだ将也は硝子を引き上げることに成功するが、自分自身は落下し、意識不明となってしまう。硝子は、自分がいては周りを不幸にすると感じ、自殺を図ったのだった。
硝子の家族はみな、将也の母親(ゆきのさつき)に土下座して謝罪。硝子も足下にひざまづいて号泣して詫びる。しかし直花は硝子を激しく責め、将也の看病を続ける。直花のせいで硝子は将也の看病をすることができなかった。
ある夜、将也の感情を感じ取った硝子は、水門橋に向かう。ついに将也は意識を取り戻し、導かれるように水門橋に向かう。二人は再会。硝子は泣いて詫びるが、将也は硝子に生きるのを手伝ってほしい、と硝子に頼む。二人は改めて仲よくなる。
友人達に合わせる顔のなかった将也だったが、永束は泣いて将也の復活を喜び、川井は千羽に満たなかった折り鶴を泣いて誤りながら将也に手渡す。真柴も温かくそれを見守る。直花は素直になれずにいたが、その場に現れ、硝子に「バカ」と手話で伝える。硝子は正しい手話を直花に教え、直花は照れくさそうに「唐揚げ食べにいこ~っと」と言ってその場を立ち去る。将也はみんなと文化祭を見て回りたいと提案。それまであった将也の心の壁が消え、周囲の声が飛び込んでくる。将也は思わず涙するのだった。

単純なようで複雑な若者の心を丁寧に描いた素晴らしい作品だった。特に音楽がよかった。鍵盤のきしみが聞こえるようなピアノの曲、古びたレコードのようなノイズ。音声をテーマにした映画らしい、そして女性監督らしい(こういう書き方はステレオタイプかもしれないが)繊細さが感じられた。
硝子が将也の母に泣いて詫びるシーン、文化祭で人々の顔を塞いでいたバッテンが落ち、将也の心の壁が消えた瞬間も感動的。小学校時代の将也の心ないいじめと、それを目の当たりにしてもなおごめんなさいと謝る硝子の不憫さが、目を背けたくなるほど不快で悲しいシーンなので、そこは正直何度も見たくはないのだが、それもまた、子供の頃の理不尽で理解できない行動を表すものとして、必要な描写だったのだろう。ミニスカ美少女キャラのアニメ作品ではあるが、とてもずっしりと胸に響く作品だった。

【5段階評価】5

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2018年9月 3日 (月)

(1746) 遊星からの物体X

【監督】ジョン・カーペンター
【出演】カート・ラッセル、A・ウィルフォード・ブリムリー、
【制作】1982年、アメリカ

南極基地に侵入した異星生物と隊員との戦いを描いたSFホラー。

1982年の南極で、ノルウェーの隊員がヘリから走る犬を銃で攻撃していた。犬はアメリカの基地に迷い込む。ノルウェーの隊員は手榴弾で犬を狙うが誤って爆死。もう一人はアメリカの隊員がいるにもかかわらず、犬を銃撃しようとして隊員を負傷させ、それでも我を忘れたように犬への攻撃を続けたため、米基地隊長のギャリー(ドナルド・モファット)に銃殺される。
隊員のR・J・マクレディ(カート・ラッセル)らは、ノルウェーの基地を確認する。そこには焼け落ちた基地と無残な姿になった隊員の死体があり、さらに、氷の棺のようなものがあった。
米基地で確保された犬は、犬小屋の中で、突如、顔が裂け、体から無数の触手が伸びて、おぞましい姿に変化し、周囲の犬に襲いかかるが、気づいた隊員に焼かれる。事件は落着したかに見えたが、マクレディらがノルウェー基地から持ち帰った焼死体が蘇り、ベニングス(ピーター・マローニー)に襲いかかる。ベニングスに乗り移った何者かは、ベニングスに成り代わろうとしていたが、その途中で隊員に発見され、その手はおぞましい形のままだった。ベニングスに乗り移った生物は、その場で焼き殺される。
未知の生物が南極から人類の住む場所に侵出したら27,000時間で全人類に乗り移るという予測結果を知ったブレア(A・ウィルフォード・ブリムリー)は、基地の通信手段と移動手段を破壊して暴れる。彼はマクレディらに確保され、別の小屋に隔離される。隊員同士が、誰が未知の生物に乗り移られているか分からず疑心暗鬼になる中、隊員のノリス(チャールズ・ハラニン)が倒れる。除細動器を医師のコッパー(リチャード・ダイサート)が当てようとすると、ノリスの胸部が突然割れ、コッパーの両腕を飲み込むと、腕を食いちぎってしまう。ノリスの腹の中から長い首の先に顔の付いた蜘蛛のような生物が現れ、天井に張り付く。マクレディが火炎放射器で火を放つと、ノリスの頭部が伸びてちぎれ、床に落ちる。すると頭部からタカアシガニのように足と目のような突起が現れる。マクレディはそれも焼き殺す。
マクレディは、生き残った隊員達を椅子に縛り付けると、それぞれの血をシャーレに満たし、熱した銅線を血につける。どの血も、白い湯気を出すだけだったが、パーマー(デビッド・クレノン)の血は、銅線を避けて飛び散る。すると、パーマーが暴れ出し、異形の生物に姿を変えると、火炎を浴びせようと近づいたウィンドウズ(トーマス・ウェイツ)に襲いかかり、彼の頭部をくわえ込む。マクレディはパーマーに火炎を浴びせ、逃げたパーマーをダイナマイトで爆破。生物に犯されたウィンドウズにも、マクレディは火炎を浴びせて焼き殺す。
マクレディは、生き残ったチャイルズ(キース・デビッド)、ギャリーとともに、ブレアのいる小屋に向かうが、ブレアは姿を消していた。
小屋の地下には、宇宙船のような物体が作られていた。手分けしてブレアを探すマクレディたちだったが、ギャリーがブレアに襲われる。不気味な雰囲気の中、床下から異形の生物が姿を現す。マクレディはダイナマイトを放り投げて小屋ごと生き物を爆破し、外へ逃げ出す。マクレディとたびたびいがみ合っていたチャイルズも生き残っており、二人は力なく座り込みながらも互いの無事をたたえるかのように語り合うのだった。

CGのない時代に、異形の生物を描くアイディアと技術力は極めて強力。特に、ちぎれた首から足がニョキニョキ生えてくるシーンは、一度観たら忘れられないインパクト。SFホラーと言えば、「エイリアン」(1979)があまりにも有名だが、それに負けない魅力のある名作だ。

【5段階評価】5

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2018年8月 3日 (金)

(1733) ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション

【監督】クリストファー・マッカリー
【出演】トム・クルーズ、レベッカ・ファーガソン、サイモン・ペッグ、ジェレミー・レナー、ショーン・ハリス
【制作】2015年、アメリカ、中国

スパイ映画、「ミッション:インポッシブル」シリーズ第5作。「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」の続編。

IMFのスパイ、イーサン・ハント(トム・クルーズ)は、不法密輸寸前だった大量のVXガスの奪取に成功。新たな指令を受けるため、レコード店に向かう。しかし、そこは敵の手に落ちており、イーサンは個室に閉じ込められ、仲介人の女性は謎の男(ショーン・ハリス)に殺される。捕らえられたイーサンは、厳しい拷問を受けそうになるが、そこにいた女性イルサ(レベッカ・ファーガソン)に助けられる。難を逃れたイーサンは新たな情報を得ようと本部に連絡するが、IMFはこれまでの強引な捜査手法を問題視され、CIAの傘下に置かれて実質的に解体されてしまう。
イーサンはエージェントの仲間、ベンジー(サイモン・ペッグ)を偽のオペラチケットで呼び出し、作戦の協力を依頼。オペラ劇場にいるはずの謎の男を捜す。イーサンは、そこで、オーストリアの首相に銃を向けている暗殺者を見つけ、その男を倒す。さらにイーサンはイルサを発見。イルサもまた、首相に銃口を向けていた。イーサンは迷った末、オーストリア首相の腕を撃ち、首相暗殺を防ぐと、イルサを連れて劇場を脱出する。イルサから押収した口紅に仕込まれたUSBメモリをもとに、イーサンはベンジーとともにモロッコに向かい、イルサと再会。イルサは、謎の男は、元イギリスMI6のソロモン・レーンで、彼は死んだことになっているスパイを世界中から集め、ならず者国家、ローグ・ネイションを組織しているとイーサンに教える。イルサはMI6の密命により、レーンの部下として潜入調査中の身だった。イルサは、レーンを裏切った手下によってカサブランカの発電所の地下に隠された極秘データを手にするよう、レーンに指示されていた。イーサンはベンジー、イルサとともに発電所に潜入。水中のメモリを取り出すことに成功する。しかし、イルサが二人を裏切り、メモリを持って逃走。二人を振り切ると自分のボス、MI6のアトリー長官(サイモン・マクバーニー)のもとにデータを持ち込む。しかし、アトリーは、データが本物である保証がないと言って、イルサにレーンのもとに戻るよう指示。イルサは仕方なくUSBを持ってレーンのもとに向かうが、USBは空だった。アトリーがデータを密かに消去していたのだ。イーサンはイルサを追うが、逆にベンジーを人質に取られてしまう。データの暗号解除にはイギリス首相の声が必要であり、イーサンはレーンから暗号解除したデータの提供を指示される。イーサンはベンジーを救うため、アトリーに変装してイギリス首相(トム・ホランダー)に接触。暗号の解除に成功すると、遅れてやってきたアトリーを麻酔銃で昏倒させ、シンジケートがアトレー自身によるもので、レーンがアトレーを裏切ったことを自白させる。イーサンは、その場にいたCIAのアラン(アレック・ボールドウィン)の手柄にして、レーンとの取り引き場所である、夜のレストランの屋外席に向かう。そこには、イルサと人質のベンジーがいた。レーンはベンジーを通じてデータを渡すようイーサンに伝えるが、イーサンはデータは隠し口座の番号であり、それはすべて記憶の中にあるとレーンに告げる。やむなくレーンはベンジーを解放し、手下にイーサンを捕らえさせようとするが、イーサンはイルサとともに逃走。イルサは最強の敵であったヤニク(イェンス・フルテン)を倒す。イーサンはレーンに追われ、工事中のビルの地下に逃げ込む。倒れ込んだイーサンを見てレーンも地下に飛び降りるが、そこはIMFのメンバーたちが仕掛けた強化ガラスの罠だった。レーンはついにガラスの檻の中に捕らえられてしまう。
イルサはイーサンに、会おうと想えばまた会えると告げ、その場から去って行く。
IMFの解体を主張していたアランだったが、IMFの真実を知り、IMFの解体を指示したのはシンジケートを暴く作戦の一環だったと主張。彼自身がIMFの長官となるのだった。

ジャッキー・チェンの映画を観るような生身のアクションが大迫力。バイクのチェイスシーンも迫力があり、イルサ役のレベッカ・ファーガソンがバイクで疾走するシーンは、久々に「どうやって撮影したんだろう」と思わせるできばえ。ストーリーはそこそこ難解だが、映像で解説を見せるなど飽きさせない工夫が満載。オープニングもいきなり離陸する飛行機にしがみついて潜入するイーサンの活躍で、序盤のかったるさも全くない。面白い作品だった。

【5段階評価】5

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2018年2月 8日 (木)

(1694) アイアムアヒーロー

【監督】佐藤信介
【出演】大泉洋、長澤まさみ、有村架純、徳井優、吉沢悠、片瀬那奈、塚地武雅
【制作】2016年、日本

花沢健吾原作漫画の映画化作品。ウィルスにより凶暴化したゾンビから仲間を守る男の活躍を描いた作品。

芽の出ない漫画家の鈴木英雄(大泉洋)は、彼女の徹子(片瀬那奈)から愛想を尽かされるが、彼女からお詫びの電話が入り、会いに行く。ところが徹子はウィルスによりゾンビ化しており、英雄に襲いかかる。なんとか退けた英雄は職場に行くが、仲間はみんなゾンビ化していた。パニック状態になっている町から、助けを求められた女子高生の比呂美(有村架純)とタクシーで逃げる英雄だったが、同乗した男(風間トオル)も感染しており、運転手が噛まれてしまい、タクシーは横転。無事だった英雄と比呂美は神社で一夜を過ごすが、翌朝、英雄は比呂美も感染していることに気づく。比呂美にゾンビの症状が現れ、仕方なく英雄は逃げ出すが、山中でゾンビに襲われる。もはや絶体絶命というとき、ゾンビから英雄を救ったのは、比呂美だった。彼女は感染し、右目は感染者特有の血走った目になりながらも、英雄には襲いかからず、大人しく英雄に付いてくる。
英雄はウィルスが死ぬという噂の富士山を目指し、アウトレットモールにたどり着く。そこにもゾンビがいたが、彼を武装した女性(長澤まさみ)が救う。彼女は藪と呼ばれている看護師だった。モール内にも大量のゾンビがいたが、生き残った人々は屋上で生活していた。しかし、食料が底をついたため、食料庫を目指すことにする。無事に食料庫にたどり着いた英雄達だったが、ゾンビがそこに集まってしまう。次々と仲間が犠牲となり、藪と比呂美、そして英雄だけが生き残る。英雄は命綱の散弾銃を撃ち続け、ゾンビを全滅させる。3人は車でアウトレットモールを後にするのだった。

有村架純と長澤まさみという、当時をときめく2大女性アイドルが共演する夢のような作品。有村架純は早々に感染し、ほぼぼーっとしているだけの役どころではあるのだが、守ってあげたい可愛らしさを存分に発揮している。ZQN(ゾキュン)と呼ばれる大量のゾンビを英雄が倒していくシーンは、地上波放送できるとは思えないつくり。いわばB級ホラーののりだが、今回は「music.jp」の無料分で視聴した。原作も好きで全巻持っているが、満足できるできばえだった。

【5段階評価】5

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2018年2月 1日 (木)

(1690) ハクソー・リッジ

【監督】メル・ギブソン
【出演】アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テリーサ・パーマー
【制作】2016年、アメリカ、オーストラリア

第二次世界大戦で、武器を持つことを拒否して沖縄戦で衛生兵として活躍した兵士を描いた作品。実話に基づいている。

両親と兄と4人で暮らすデズモンド・ドス(アンドリュー・ガーフィールド)は、病院で看護師のドロシー・シュッテ(テリーサ・パーマー)に一目惚れ。恋を育みながらも、兵役に志願する。しかし、彼は親から人を殺すのは最大の罪だ、と教わっており、訓練中にライフルを持つことを拒否。上官の命令に背いたということで軍事裁判にかけられる。デズモンドの父親のトム(ヒューゴ・ウィービング)は、元上官だった戦争軍務司令官マスグローブ准将から、武器を持つことを拒否する権利は認められるという文書を手に入れ、裁判に提出。デズモンドは衛生兵として出征することになる。
赴任地は沖縄だった。ハクソー・リッジと呼ばれる断崖で、米兵は日本軍の決死の抵抗に苦戦。戦艦からの砲撃後に崖の上に登るも、日本軍の反撃に遭い、撤退を余儀なくされる。負傷した米兵が多数取り残される中、デズモンドは単身、息のある兵士を探してはロープを使って崖の下のキャンプに負傷兵を降ろす。その中には二人の日本人も含まれていた。
態勢を立て直した米軍は再度、崖を登るが、デズモンドは負傷してしまい、帰国する。そして彼は良心的兵役拒否者では初めて名誉勲章を授かるのだった。

肉弾戦のシーンは、「プライベート・ライアン」には及ばないと思ったが、「硫黄島からの手紙」と並ぶ迫力。攻撃をしない衛生兵が主役ということで、戦闘シーンはあまり面白くないのかと思いきや、戦争の迫力と残酷さを十分に描写してから、一人、また一人、と負傷兵を救出し続けるシーンを描くことで、負傷した兵士達をなんとか救いたいという感情移入をしながら、デズモンドの救出劇がいかに無謀で命がけであるかをうまく物語っていた。

【5段階評価】5

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2017年11月24日 (金)

(1646) エイプリルフールズ

【監督】石川淳一
【出演】戸田恵梨香、松坂桃李、菜々緒、寺島進、浜辺美波、里見浩太朗、富司純子
【制作】2015年、日本

エイプリルフールの日に起こる嘘にまつわる大騒動を描いた群像劇。コメディタッチでありながら、感動的なシーンを随所に織り交ぜた作品。

エイプリールフールの4月1日。子供をはらんだ新田あゆみ(戸田恵梨香)は、相手の男、牧野亘(松坂桃李)に電話し、認知してくれ、と告げる。しかし亘は意に介さず、イタリアレストランで別の女性、麗子(菜々緒)に会う。あゆみはレストランに乗り込むと、亘に殴りかかり、バッグの中から拳銃を取り出して発砲、店内は騒然となる。
亘は医者のふりをして手当たり次第に女をナンパする医学部生だった。店内にいた男(大和田伸也)は隙を突いてあゆみから銃を奪い取ろうとするが、足を撃たれてしまう。あゆみは対人恐怖症だったが、亘から「芋けんぴを食べるといい」と優しくされ、清掃員仲間の先輩に後押しされ、亘に告白したのだった。拳銃の弾は残り一発となり、あゆみは自分のこめかみに銃を当てる。とっさにフロアスタッフ(ユースケ・サンタマリア)がナプキンで拳銃を弾き飛ばし、あゆみを救うが、足を撃たれた男が逆上してあゆみに発砲。とっさに亘は身を挺してあゆみをかばう。幸いにも弾はそれるが、倒れ込んだ衝撃であゆみは産気づく。麗子は突然、私は実はCAではなく助産師だ、と嘘をつき、ホールスタッフ(ユースケ・サンタマリア)やオーナーシェフ(小澤征悦)らも次々に嘘をつき、店内でお産をすることになる。あゆみは嘘つきに囲まれながらも無事に赤ちゃんを出産する。
あゆみはなぜ本物の拳銃を持っていたのか。時を同じくして、ヤクザの宇田川勇司(寺島進)は舎弟(高橋努)を連れて小学生の江藤理香(浜辺美波)を誘拐。しかし宇田川は、理香の実の父親だった。宇田川は鉄砲玉として暴力団幹部(千葉真一)のタマを取りに行くことになっており、娘に会おうとしていたのだった。宇田川は理香に優しく接することができず、強引に理香を中華料理屋や遊園地に連れて行く。理香は学校の成績が悪く、万引き癖があり、自分は親に愛されていないと感じていた。理香の母親の絵里子(山口紗弥加)は宇田川と別れ、ドライバーをしている男(滝藤賢一)と再婚していた。宇田川は理香の家の前で母親に電話し、できが悪いのは自分の血を引いたからだからで、子供に罪はない、ちゃんとしかって抱きしめてやれ、と話す。宇田川は理香を家に帰そうとするが、理香は宇田川はお父さんだと気がついていた。そこに、誘拐事件の連絡を受けた父親が車で乗り込んでくると、必死になって舎弟と宇田川に飛びかかり、理香を逃がそうとする。宇田川は父親に土下座をして無礼をわび、車で走り去る。宇田川は幹部のいるゴルフ練習場に向かい、拳銃の入ったバッグを持って乗り込む。しかし、中に拳銃はなく、宇田川はバッグの中の芋けんぴを幹部に手渡すのだった。それはあゆみのバッグだった。中華料理屋で食事をしているとき、理香が舎弟のバッグとあゆみのバッグをすり替えていたのだった。
理香は家に戻り、家族の絆は強まる。あゆみと亘はともに生きていくことを決めるのだった。

主要な登場人物はほかにも、自分は宇宙人だと思い込む引き籠もりの中学生(浦上晟周)、占い師の老婆(りりィ)、不治の病に冒された妻(富司純子)とそれを悟られまいとする夫(里見浩太朗)、取り逃した殺人犯を追う刑事(高嶋政伸)など、多くの登場人物がストーリーに関わる。
伝説のゲーム「街」に似た、オムニバス形式でありながら登場人物が関わり合うという面白さが際立つ。やはり評価5をつけた「キサラギ」と同じ、古沢良太の脚本がすばらしかった。
理香が小学生にしては色気があると思ったら、公開当時15歳の浜辺美波。「世田谷区、39丁目」で注目していたが、いまやテレビや映画で主役級の活躍。子役はいっぱいいるだろうに、中学生で小学生役に抜擢されるだけの演技力と魅力はさすがだ。

【5段階評価】5

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2017年10月21日 (土)

(1626) サクラサク

【監督】田中光敏
【出演】緒形直人、藤竜也、南果歩、矢野聖人、美山加恋、津田寛治
【制作】2014年、日本

さだまさし原作小説の映画化作品。認知症を患った男と、その息子の家族との心の絆を描いている。

とある会社の部長をしている大崎俊介(緒形直人)は、上司(大杉漣)から取締役への昇格を内示される。しかし、父親の俊太郎(藤竜也)の痴呆が進行しており、俊介の妻の昭子(南果歩)は俊太郎の世話を拒否。娘の咲子(美山加恋)も祖父に感心を示さず、息子の大介(矢野聖人)も同じだった。部屋で失禁した父親の世話をする俊介は、無関心を装う大介の頬を殴る。何も言わない大介だったが、実は俊太郎のために、家族に内緒で大人用のおむつを買い、それを家の外に捨てに行っているのが大介だった。大介は俊太郎の尊厳を守ろうとしていたのだ。
俊介は家族を連れて、強引にドライブ旅行に出る。俊太郎が幼い頃に家族で過ごした寺を探すためだ。俊太郎の記憶は曖昧となり、その捜索は俊介の昇格が決まる取締役会の日にまで及んだ。しかし、俊太郎をきっかけとして家族の絆を取り戻した俊介は、昇格よりも家族旅行を選ぶ。ついに5人は寺を発見。そこには、俊太郎の記憶にある桜の木はなく、切り株があるだけだった。5人は切り株の前に並んで座る。5人の心の中には満開の桜があるのだった。

恍惚の人」同様、認知症の老人を題材にしている。妻は家庭を顧みずに仕事に没頭してきた夫に不満があり、義理の父の世話を拒否。授業参観に父親に来てもらったことのない娘も家族に無関心。そんな中、大学にも行かずにバイト暮らしをしている息子だけが、祖父の理解者だった。話としてはけっこうステレオタイプなのだが、それがむしろいい。人が記憶をなくし、尊厳を失っていくというのは、それだけ人の心を打つテーマなのだろう。認知症を患いながらも、旅先の祭りにさまよい込んだ俊太郎が奏でる横笛の音色は感動的だった。
ちなみに、息子の嫁の名前が「昭子」なのは、「恍惚の人」と同じだ。

【5段階評価】5

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2017年10月 3日 (火)

(1609) グエムル 漢江の怪物

【監督】ポン・ジュノ
【出演】ソン・ガンホ、コ・アソン、ペ・ドゥナ、パク・ヘイル、ピョン・ヒボン
【制作】2006年、韓国

汚染物質が原因で生まれた怪物にさらわれた少女を救おうとする家族の戦いぶりを描いた作品。

大量の有毒な薬品が漢江に流され、巨大な両生類のような怪物が発生。河川敷で売店をしているパク一家の中学生の少女、ヒョンソ(コ・アソン)が怪物にさらわれ、飲み込まれてしまう。
ヒョンソは死んだと思われたが、ヒョンソの父親、カンドゥ(ソン・ガンホ)にヒョンソからの電話が入る。ヒョンソは死んでおらず、怪物によって下水溝の中に放り込まれていた。
カンドゥは娘を探そうとするが、怪物と戦ったことで保菌者扱いされ、病院に隔離されていた。カンドゥは父親のヒボン(ピョン・ヒボン)、弟のナミル(パク・ヘイル)、妹のナムジュ(ペ・ドゥナ)とともに病院を脱走。ヒョンソを探し出そうとするが、ヒボンは怪物によって地面にたたきつけられて死亡。カンドゥは関係者に見つかり、また病院に戻される。ナミルは学生運動の経験から火炎瓶を作り、ナムジュはアーチェリー選手であることを生かして、それぞれ別々に怪物を追う。
カンドゥは娘が生きていると訴え続けるが、ウィルスが原因で妄想に取り憑かれていると診断され、話を信じてもらえない。カンドゥは隙を見て医療スタッフ一人を人質に取り、脱走。ついにカンドゥはグエムルの巣にたどり着くが、ヒョンソは脱出が失敗して怪物に飲み込まれていた。カンドゥは必死でそれを追いかけ、米軍の放った薬品によって弱った怪物の口の中からヒョンソと幼い少年を救い出す。ナミルが火炎瓶で怪物を追い、ナミルと行動を共にしていた浮浪者が怪物にガソリンを浴びせる。ナミルは最後の火炎瓶を投げつけようとするが、手が滑ってしまう。そこにナムジュが現れ、矢に火を付けて火箭にして怪物に放ち、怪物は炎上。川の中に逃げ込もうとする怪物の正面から、カンドゥが標識の鉄パイプを突き刺し、ついに怪物は絶命する。ヒョンソはナムジュに抱かれ、介抱されるが、息を吹き返す気配はない。怪物を倒したカンドゥは、倒れて動かない少年を介抱。身寄りのない少年と二人で暮らすのだった。

序盤、米科学者が韓国人の助手に、ほこりをかぶった毒薬の瓶の中身を川に流せと命令する。理由は「俺はホコリが嫌いだ」。この科学者がクレイジーなのか、何らかの策略があってなのかよく分からず、なんとも薬品を水道に流す理由がしょぼすぎるのだが、怪物が現れるまでのタイミングを早める意味ではよかった。「レリック」のように、怪物がなかなか全容を表さないのが、こうした怪物映画の定番だが、本作は序盤から全身をさらし、人々を襲う。実写とCGがよく融合していて、若干、怪物のテクスチャがテカテカしすぎなのを除けば違和感がない。米軍が登場して消毒薬を散布しまくったり、学生が消毒反対のデモを行ったり、危険地帯に浮浪者が住み続けていたり、と、現代社会を切り取るような描写があるのも、ただただ怪物との戦いだけを追うアクション映画ではない魅力がある。日本ではこけてしまった作品だが、十分面白かった。
疑問だったのが2点ほど。カンドゥは序盤、居眠りばかりしているのだが、中盤以降には、睡眠剤を打たれても効かずに医師が驚くというシーンがある。これを観るとやはりカンドゥの中でウィルスによって何かが覚醒したのかと思わせるのだが、結局ウィルス騒ぎはデマだったという。じゃあなんでカンドゥは寝なくなったのか。娘を救いたい執念だ、というだけでは説明が困難だ。
そしてラストシーン。ヒョンソは死んだのか、息を吹き返したのか。同時に、怪物を倒したカンドゥは、なぜ娘のもとに駆け寄らず、倒れた少年の方に歩いて行ったのか。ヒョンソは死んでしまったと観念したのか。そうは思えない。エンディングでカンドゥは、少年と二人で売店の中で暮らしている。売店に住めたらいいなと語っていた少年の夢が叶ったようで微笑ましいシーンだが、ヒョンソは壁に貼られた写真の中にいて、これが遺影なのか、別のところで暮らしているだけで存命なのかは、はっきりと描かれていない。ただ、ヒョンソが生きていてみんなで幸せに暮らしましたいうハッピーエンドより、こちらの方が、現実を超越して悪夢のように現れ、そして消えた怪物が、現実の世界に暗い影を落とし、爪痕を残したのだという余韻を感じさせているように思う。隠れた監督のファインプレーだろう。

【5段階評価】5

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