評価5の映画

2020年10月15日 (木)

(2206) パッセンジャー

【監督】モルテン・ティルドゥム
【出演】クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・シーン
【制作】2016年、アメリカ

移民を乗せて別の惑星に向かう宇宙船の中で冬眠状態から目覚めた男女の運命を描いたSF作品。

5,000人の移民を乗せて宇宙空間を飛行する宇宙船アバロン号。乗客、乗員は全員冬眠状態で、自動運行をしていた。しかし、巨大な隕石が衝突し、システムエラーにより、一人の冬眠が解けてしまう。起き上がったのは技術者のジム・プレストン(クリス・プラット)。彼は船内で起きているのは自分だけであり、目的地の惑星にはあと90年かかることを知る。人がいると思って近づいたバーテンダーはアンドロイドのアーサー(マイケル・シーン)。酒と食事を好きなだけとり、娯楽施設を堪能したり宇宙服を着て船外遊泳を楽しむジムだったが、孤独に耐えきれず、自殺の一歩手前まで追い込まれる。そんなとき、冬眠中のカプセルの中にオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)という美しく若い女性がいることに気づく。彼はオーロラのインタビュー動画を見つけ、彼女に惹かれていく。そしてついに誘惑に耐えかね、彼女の冬眠カプセルを操作し、彼女を冬眠から目覚めさせてしまう。オーロラはジムが自分を起こしたとは知らず、船内にたった一人のジムと知り合い、二人は恋人同士となる。ジムはアーサーに、自分がオーロラを起こしたことは絶対に言うなと口止めしていたが、恋仲になったジムとオーロラがバーに行ったとき、二人の間に秘密は何もない、とアーサーに話す。ジムは船内の貴金属で作った指輪をサプライズでオーロラにプレゼントするために席を外すが、二人の間に秘密はないと解釈したアーサーは、ジムがオーロラの冬眠カプセルを開けた頃の話をオーロラにしてしまう。それを聞いたオーロラは、ジムに自分の人生を奪われたことにショックを受け、ジムに激しい怒りをぶつける。二人の関係は完全に引き裂かれてしまう。
一方、船内は隕石衝突の影響で、回復できないエラーが頻発するようになり、乗組員のガス(ローレンス・フィッシュバーン)も目覚める。三人は協力して船内の故障の原因を探ろうとするが、ガスは冬眠装置の故障により体内を激しく損傷しており、身につけていた高セキュリティアクセスデバイスをジムに託し、息絶える。ジムとオーロラは協力して船内を探索。隕石が船内を貫通して核融合炉のコンピュータを破壊していることを突き止める。ジムは損傷箇所をスペア部品と取り替えて再起動し、加熱した核融合炉の熱を排出しようとするが、排出口の扉が故障して開かず、熱を排出できない。ジムは宇宙服を着て船外から扉を開け、同時にオーロラが船内のレバーを引くことで熱排出は成功するが、ジムは熱噴射により吹き飛ばされ、命綱が切れて宇宙空間に放り出されてしまう。それに気づいたオーロラは慌てて宇宙服を着て船外に飛び出し、何とかジムを回収し、治療用カプセルにジムを担ぎ込むが、ジムは死亡と診断される。オーロラは蘇生措置を起動し、ジムは蘇る。ジムは医療カプセルが冬眠カプセルの代替になることを発見。オーロラにカプセルで冬眠するよう促すが、オーロラはジムと船内で暮らし続ける道を選ぶ。88年が経ち、宇宙船のクルーたちが冬眠から目覚める。彼らは船内に木がしげり、小屋が作られているようすを目の当たりにするのだった。

アポロ13」や「ゼロ・グラビティ」のような、宇宙空間から地球に生還するというサバイバルではなく、宇宙船の中で生き続けることを余儀なくされた二人の男女が生存を賭けて奮闘し、やがて自分たちの世界を創り上げるという創世記的な作品。なかなか面白い状況設定で、映像も美しく、見応えのある作品だった。未来の衣装や宇宙船のデザインも奇抜さがなく洗練されており、ギミックが豊かで観ていて楽しい。サバイバルできてよかったね、という楽しみ方もできる一方で、オーロラの立場からすると、ジムのしたことを本当に許せるのか、考えさせられる差内容でもある。ジムが起きなければ宇宙船ごと5,000人が死亡していたとは言えるが、それは結果論である。少なくともジムが若いタフガイだから成り立つ話ではあるだろう。自分としては、オーロラに蘇生されたジムが記憶を失っていて、オーロラを見て「君は誰だ? 」と尋ね、そこから二人の愛が一から始まる、なんていう終わり方もありだと思った。
全員冬眠しているのに何で照明がついているの、とか、「技術者」が何でも作れるアビリティ使いすぎ、とか、ガスは要するに管理者権限を渡すためだけに出てきたNPCなのね、とか、細かいことは気にしないほうがいい。宇宙ではご都合主義なしには生き抜けないのである。
ハンガー・ゲーム」では絶世の美女というより、どこにでもいるような平凡な少女を演じていたジェニファー・ローレンスの美しさも、本作の大きな魅力になっている。

【5段階評価】5

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2020年10月 3日 (土)

(2194) ベイブ

【監督】クリス・ヌーナン
【出演】ジェームズ・クロムウェル、マグダ・ズバンスキー、クリスティーン・カバナー(声)、ミリアム・マーゴリーズ(声)
【制作】1995年、オーストラリア、アメリカ

牧羊犬ならぬ牧羊ブタとなった子豚の活躍を描いたファンタジー作品。

母親を食肉工場に連れ去られた雄の子豚(クリスティーン・カバナー)が、体重当てゲーム用のブタとして養豚場から連れ出される。何の気なしに参加した羊飼いアーサー・ホゲット(ジェームズ・クロムウェル)が体重を当て、子豚を手に入れる。アーサーの家の雌の牧羊犬フライ(ミリアム・マーゴリーズ)は子豚にベイブと名付け、彼の母親代わりとなる。ベイブはアヒルのフェルディナンド(ダニー・マン)や羊のメェ(ミリアム・フリン)と仲よくなる。ベイブはある日、牧羊場で泥棒が羊をさらっている騒ぎに気づき、フライと雄犬のレックス(ヒューゴ・ウィービング)に有事を伝える。その様子に気づいたアーサーは農場に向かい、羊の全滅を防ぐ。アーサーはベイブが賢いことに気づく。
アーサーはベイブを牧羊場に連れて行き、牧羊犬として働けるかを試す。ベイブは羊の群れを動かそうとするが、羊たちはベイブを鼻で笑い、全く動こうとしない。フライはベイブに、羊を見下し、脅せ、と助言するが、ベイブは逆に、羊に丁寧にお願いして移動してもらう。ベイブがやりとげたことにフライは喜ぶが、レックスはプライドを傷つけられて憤慨し、その夜、フライと大げんか。止めに入ったアーサーの手を噛んでしまい、鎮静剤を撃たれてしまう。アーサーは、ベイブを牧羊犬コンテストに出場させることにする。
コンテスト当日。ベイブはコンテスト用の羊に話しかけるが、全く振り向いてももらえない。レックスはアーサーの牧羊場に戻り、羊たちにベイブを助けてほしいと頭を下げる。羊たちは、二度とレックスたちが羊に吠えたり噛みついたりしないことを条件に、羊だけが知る秘密のパスワードをレックスに伝授。レックスはいそいで会場に戻る。
コンテストの審査団は、ブタを出場させようとするアーサーに憤慨するが、ルール上、拒否できないため出場を認める。アーサーはベイブを連れて会場入り。観客はブタが出てきたことで大笑い。別の場所からテレビ観戦していたアーサーの妻、エズメ(マグダ・ズバンスキー)も嘲笑の的になっているアーサーを見て卒倒してしまう。
何とかベイブの競技開始に間に合ったレックスは、秘密のパスワードをベイブに伝える。ベイブは羊たちに歩み寄り、パスワードを伝える。するとはじめは全く動かなかった羊たちが、整然と並んで指定通りに行動を開始。会場は息を飲み、実況アナウンサーは言葉を失う。会場が静かに見守る中、羊たちはベイブの誘導のもと、見事な行進を披露し、最後は赤い首輪を付けた雌の羊を先頭に、指定された柵の中にきれいに収まる。アーサーが静かに柵の扉を閉めた途端、会場は大歓声に包まれる。審査員は全員が100点満点。アーサーは優勝を決め、ベイブに「よくやった」と一言。ベイブはきょとんとした顔で主人を見上げるのだった。

序盤は若干退屈で、動物を使ったドタバタ劇の様相だが、クライマックスのコンテストのシーンは感動的。見下され、馬鹿にされていたベイブが、健気に羊を完璧に誘導する姿は、涙なしには見られないだろう。コンテストの前夜、意地悪な猫に、ブタは主人に食べられるための存在だと言われてショックを受け、食欲を失ったベイブに、普段は無口なアーサーが、突然賑やかなダンスを踊ってベイブを元気づけるシーンも、味があってよかった。有名な作品ながら、子供向けという印象から鑑賞を敬遠していたが、微笑ましいだけではなく大いなる感動を与えてくれる名作だった。

【5段階評価】5

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2020年9月29日 (火)

(2190) あやしい彼女

【監督】水田伸生
【出演】多部未華子、倍賞美津子、小林聡美、要潤、北村匠海、志賀廣太郎、温水洋一、越野アンナ
【制作】2016年、日本

若返りを果たした老女がバンドでの活躍を通じて家族との絆を深め合うファンタジー。韓国映画「怪しい彼女」のリメイク。コメディタッチの感動作。

女手一つで娘を育て上げた瀬山カツ(倍賞美津子)は近所でも評判の悪いケチで口の悪い老女。会社勤めの娘、幸恵(小林聡美)と口げんかし、家を飛び出すと、夜中に一軒、開いている写真館を見つけ、憧れていたオードリー・ヘップバーンをイメージして写真に収まる。すると、店を出たカツの顔と体は若返り、20歳ぐらいの女性(多部未華子)になる。カツとしてバイトをしていた銭湯でのぼせた彼女は、若い頃から苦楽をともにしてきた幼なじみの中田次郎(志賀廣太郎)に介抱され、大鳥節子と名乗り、彼の家に世話になる。節子は地元のカラオケ大会で歌を披露すると、バンドをしている孫の翼(北村匠海)と、音楽プロデューサーの小林拓人(要潤)にその歌声を見初められる。翼は節子をバンドのボーカルに誘い、節子は了承。ストリートライブは評判になり、拓人の目に止まる。拓人は節子らを番組で取り上げ、ライブコンサートへの出演を決める。節子は次郎に正体を明かし、一緒に暮らしつつ、自分に優しく接してくる拓人との仲も深めていく。
コンサートの当日、翼は会場に急ぐ道中で交通事故に遭い、血まみれで会場に到着。節子は翼のためにライブは何とか成功させる。翼の運ばれた病院に到着した節子は、珍しい血液型の翼のために、適合者の自分が輸血をすると宣言。血を抜くと節子にかかった若返りの効果は切れてしまうため、次郎は苦労続きだった人生をやっとやり直せるのにいいのか、と問いただすが、節子の決意は変わらない。幸恵も母親に対して、自分の息子の翼は自分でなんとかするからお母さんは自分の人生をやり直してほしいと告げるが、節子は何度やりなおしても同じ人生を選ぶと言って、幸恵を抱きしめる。
こうして節子はもとのカツに戻り、拓人との淡い恋も幻となる。翼のバンドはボーカルを入れ替え、単独コンサートのリハーサルを迎えていた。幸恵とともに会場を見ていたカツは、風に当たるといって拓人のいる会場から姿を消す。そこにさっそうと原付に乗った男が現れ、カツの目の前に止まる。拓人かと思ったが、それは若い次郎(野村周平)だった。次郎はカツを後部座席に乗せ、スクーターを発進させるのだった。

ドタバタコメディかと思っていたら、親子愛を描いた感動作だった。映画の冒頭、若い女性(多部未華子)が傷だらけの男に輸血をするシーンから始まるので、作品の終盤にさしかかると「なるほど、そういうことね」と展開が読めてしまったのだが、脚本は巧み。これは泣ける。そして歌がいい。多部未華子自らが歌っている懐かしの曲のアレンジにも素直に感動できるし、主題歌を歌うanderlustのボーカル、越野アンナも好きになった。翼を演じた北村匠海も実際にギターを演奏したらしい。ただ、節子が翼を鼓舞するときに、歌を伝えたい相手がいるんだろう、と言っていたのだが、それって誰だったのか、よく分からなかった。

【5段階評価】5

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2020年9月24日 (木)

(2185) スクール・オブ・ロック

【監督】リチャード・リンクレイター
【出演】ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック、マイク・ホワイト、ミランダ・コスグローブ、ケビン・クラーク
【制作】2003年、アメリカ

賃金目的で小学校臨時教師の職についたダメミュージシャンの奮闘を描いたコメディ。

小太りで身勝手なパフォーマンスをするギタリストのデューイ(ジャッック・ブラック)は、自分のロックバンドを首になる。シェアハウスに同居する親友のネッドはお人好しな性格で、家賃を払えないデューイの肩代わりを続けていたが、ようやく見つけた彼女のパティ(サラ・シルバーマン)から厳しく言われ、家賃を払わなければ部屋を出てくれとデューイに告げる。お金の必要になったデューイは、ネッドあてにかかってきた小学校臨時教師の連絡に、ネッドになりすまして対応し、臨時教師のポジションに潜り込む。そこは一流私立校ホレス・グリーン学院。校長のロザリー(ジョーン・キューザック)は厳格な性格で、ネッドになりすましたデューイにきちんと教鞭をとるよう伝えるが、デューイはいきなりクラスを休憩時間にしてしまう。生徒たちは真面目で、委員長のサマー・ハサウェイ(ミランダ・コスグローブ)は何か教えてほしいとデューイに意見し、デューイはロックバンドの指導を始める。デューイは彼らの音楽の授業を見て彼らが楽器を演奏できることを知り、ロックバンドを結成する。音楽の素養のあったザック(ジョーイ・ゲイドス・Jr)がリードギター、キーボードはローレンス(ロバート・ツァイ)、ケイティ(レベッカ・ブラウン)はベースを担当し、パーカッションをしていたフレディ(ケビン・クラーク)はドラムを担当する。歌が得意なトミカ(マリアム・ハッサン)と二人の女生徒がバックコーラスを担当する。他の生徒も警備係や照明、衣装、バンド名を決める係など、それぞれの役割を与えられ、親や他の先生に内緒で練習を続ける。デューイは来るバンドバトルに出場を決めるが、前日になってネッドに教師になりすましていたことがばれ、警察に通報されてしまう。保護者会の席にいたデューイはみんなに嘘を告白しつつ、子ども達を称賛して学校を去る。
残された生徒達は、ここまでやったのだから、とバンドバトルへの出場を決意し、意気消沈して部屋で寝込んでいたデューイをたたき起こして会場に向かう。ロザリーのもとに押し寄せていた子ども達の親も、ロザリーとともに会場にやってくる。デューイたちの順番になり、デューイの率いるバンド「スクール・オブ・ロック」は、ザックが作った曲を披露。見事な演奏と子ども達のテクニックに会場は大興奮に包まれ、親たちも大満足の表情を浮かべる。優勝はデューイを首にしたバンドが手にするが、会場は「スクール・オブ・ロック」の大合唱。デューイらはアンコールに応えて会場でもう一曲披露する。
サマーはデューイから与えられたマネージャーの役がすっかり板に付き、子ども達は今日もデューイとロックバンドの練習を続けるのだった。

天使にラブソングを・・・」か、むしろその続編、あるいは「コーラス」なんかと同系統の作品だが、面白いのは普通は、できの悪い子ども達が音楽を通じて自身を持ち更生していくのだが、本作は、できが悪いのは教師の方で、生徒達は勉強熱心で真面目であるところが面白い。その真面目な生徒達が、不真面目な教師にうまくやる気を引き出され、暮らす全体でのロックバンド活動に熱中していく。開始数分で「あ、この映画は感動するヤツだ」と分かり、クライマックスが待ち遠しくなる。そんな作品だった。デューイが、不真面目で粗野な男のようでいて、生徒達を褒めてやる気にさせ、自信を付けさせるのがうまく、見ていて心地いい。このまますっとフィナーレまで行ってもいいのに、と思ったが、やはり途中でバレてデューイが首になるという展開はあった。まあ、2球内角を攻めた後の外角のボール球のようなもんだろうか。たまには三球三振のようなスカッとする展開もいいもんだとは思うが、本作はそのボール球のシーンが長ったらしくウジウジせず、スカッと明るい展開にすぐ変わるのがよかった。最後のパフォーマンスシーンは興奮と感動で胸が高鳴った。咲の展開にわくわくし続けられる、文句なしで5点を付けられる作品。

【5段階評価】5

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2020年9月14日 (月)

(2175) ポセイドン・アドベンチャー

【監督】ロナルド・ニーム
【出演】ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン、レッド・バトンズ、キャロル・リンレイ、ステラ・スティーブンス
【制作】1972年、アメリカ

大津波で転覆した客船からの脱出を目指す人々の死闘を描いた作品。

豪華客船ポセイドン号が嵐と津波によって転覆。船は天地がひっくり返ってしまう。パーティ会場で新年を祝っていた人々は床から天井に落下し、何人かが命を落とす。勇敢な牧師スコット(ジーン・ハックマン)は、その場にとどまるよう伝えるパーサーを無視して、船底を目指すため、海上にあった巨大なクリスマスツリーを上部に渡して人々を登らせる。しかし、多くの人はパーサーとともに会場に残る選択をしたため、スコットは説得を諦め、自らもクリスマスツリーを登る。すると、船が小爆発を起こして海水が会場に浸入し、パーサーとともに残っていた大勢の人達を襲う。人々は慌ててクリスマスツリーに群がるが、「蜘蛛の糸」のごとく、クリスマスツリーは倒れてしまう。スコットはやむなくその場を後にする。
スコットと同様に残ったのは、足に怪我をしたエイカーズ(ロディ・マクドウォール)、船に詳しい少年ロビン(エリック・シーア)とその姉スーザン(パメラ・スー・マーティン)、老刑事マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)と妻のリンダ(ステラ・スティーブンス)、孫に会う予定のローゼン夫妻の夫マニー(ジャック・アルバートソン)とベル(シェリー・ウィンタース)、雑貨店主を務めてきた独身中年男性ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)、歌手のノニー・パリー(キャロル・リンレイ)の9名だけ。ロビンが船底のプロペラ室は鉄板が2.5センチしかないと言い、スコットはそこを目指すことにする。スコット達は焼けた調理室を抜けて通路に出ると、通気口を登って2階下(現状では上)を目指すが、足を怪我したエイカーズが落下し、命を落とす。たどり着いた場所から、船首に向かって進む船医の一団と遭遇。スコットは機関室を抜けて船底を目指すべきだと主張するが、船医達は機関室は爆発したと告げ、無視して先に進んでしまう。スコットとマイクは口論となるが、スコットが何とか機関室にたどり着くルートを発見。しかし、さらに海水が浸入し、ルートの途中が浸水してしまう。スコットが体にロープを巻き付けて浸水箇所に潜り、ルートを確保しようとするが、途中で障害物に体を挟まれてしまう。若い頃に潜水が得意だったベルが救出に向かい、動けなくなっていたスコットを救い出して機関室にたどり着くが、ベルは心臓発作を起こし、命を落としてしまう。スコットは勇敢なベルの命を奪う運命を嘆き、神を呪う。何とか浸水箇所を通り抜けた残りの人々は、プロペラ室を目指し、不安定な足場を登っていくが、途中で爆発による振動が起き、リンダが火の海に落下して絶命。ロゴはスコットに罵りの言葉を浴びせる。スコットは黙ってそれを聞くしかなかった。振動の影響でプロペラ室に向かう経路に蒸気が噴き出してしまう。ここまで勇敢に困難に立ち向かってきたスコットは、ついに神への怒りを露わにし、これ以上の犠牲を望むなら俺を連れて行け、と叫びながら蒸気の噴き出すバルブに飛び移ると、自分の体重をかけてバルブを閉め、水蒸気を止めると、残りの人々を頼むとロゴに言い残し、自らは炎が燃えさかる中に落下してしまう。ジェームズはロゴを奮起し、妻を失って茫然自失としていたロゴは立ち上がり、プロペラ室への扉を開ける。中に入った6人は、外から音が聞こえてくるのを確認。船底をパイプで叩き、音を出すと、それに答えるように外からも音が聞こえてきた。やがてバーナーの炎が船底を貫き始める。救出された6人は、ヘリに乗り込む。ヘリは6人を乗せて船底から飛び立つのだった。

なんだか神話の世界のファンタジー冒険もののようなタイトルだが、パニック映画の代表作。オープニングからいかにも模型の客船が何度も現れ、「せめて全景ぐらい本物使えなかったのかよ」という気はしたのだが、船内シーンになってからの迫力は相当なもの。「タイタニック」と違ってフィクションではあるのだが、次々と訪れる危機や、それに飲み込まれて人々が命を落とす状況が真に迫っていて、手に汗握る展開に目が離せない。船員の指示を無視して船底を目指す牧師の蛮勇ぶりに、何の根拠があるのか、と共感したくない気持ちも序盤は沸くのだが、自らの信念のもと人々を導き、困難を乗り越え、最後は自らを犠牲にして人々を解放するという展開は、何やら宗教の教祖のようでもあり、なにやら厳かな気持ちにすらなる。スコットといがみ合っていたロゴが、最後の最後にいかにも悔しそうな顔をするのだが、それはおそらく、焼け死んだリンダではなく、後一歩の所まで来ていたスコットの死に対するものだっただろう。
老夫婦の一人がむかし潜水が得意だったり、主人公を救ってから命を落としたり、太もももあらわな若い女性二人が最後まで生き残ったりと、フィクションならではの展開もあったりはするのだが、不朽の名作の一つであることは間違いない。

【5段階評価】5

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2020年8月26日 (水)

(2156) 機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編

【監督】富野喜幸
【出演】古谷徹(声)、池田秀一(声)、鵜飼るみ子(声)、鈴置洋孝(声)、井上瑤(声)、白石冬美(声)
【制作】1982年、日本

テレビアニメ、機動戦士ガンダムの劇場版三部作の第三編。「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編」の続編。

地球を離れて宇宙に出た地球連邦軍のホワイトベース。敵を欺くため中立地域のサイド6に着港。そこには乗組員ミライ(白石冬美)の元婚約者、カムラン(村山明)がいたが、戦争を人ごとのように考えているカムランとは、もはやミライは理解し合うことはなかった。アムロ・レイ(古谷徹)は父親テム(清川元夢)を見つけるが、彼は酸素欠乏症で精神に異常を来してしまっていた。アムロは父のもとを去る。また、アムロは偶然、宿敵シャア・アズナブル(池田秀一)とララァ・スン(潘恵子)に遭遇する。シャアはアムロがガンダムのパイロットとは気づかず、アムロは逃げるように車で走り去る。
ホワイトベースはドズル・ザビ(玄田哲章)が守る要塞ソロモンを攻撃。劣勢となったドズルはビグザムに乗り込み、玉砕。ビグザムを止めるため、スレッガー(井上真樹夫)が戦死する。ララァはエルメスに乗り込んで、集結中の連邦軍に打撃を与える。アムロはガンダムに乗り込んでララァに応戦。二人はニュータイプ同士、テレパシーで会話をするが、シャアが割って入る。アムロがシャアの乗ったゲルググを倒そうとしたとき、ララァがシャアの身代わりとなり、死んでしまう。
ジオンの公王デギン(柴田秀勝)は和平交渉のため、大集結中の連邦軍に接近するが、総帥のギレン(田中崇)は父親のデギンごとソーラーレイで連邦軍の艦隊に大打撃を与える。連邦軍はア・バオア・クーに総攻撃をかける。デギンの長女キシリア(小山まみ)は父を殺したギレンを撃ち殺し、自らは戦線を離脱しようとする。ガンダムに乗ったアムロは、ジオングに乗ったシャアと最後の戦いをし、ガンダムとジオングはともに戦闘機能を失う。二人はア・バオア・クーの中で剣で戦い合うが、それに気づいたセイラ(井上瑤)が二人の戦いをやめさせる。シャアは逃げようとするキシリアの首を撃ち落とし、復讐を果たす。アムロはニュータイプの力で仲間達を脱出させ、合流。戦争は終わりを告げるのだった。

最終作は舞台が宇宙となり、ニュータイプというテーマが大々的に取り上げられるため、二作目で感じられた戦争の生々しさから一転、SFらしい展開となる。個人的には二作目が最も見応えがあると感じるが、やはり三作目があるからこその機動戦士ガンダムであり、本作が必見であることは間違いない。セイラのシャワーシーンのおまけつきだし。

【5段階評価】5

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2020年8月25日 (火)

(2155) 機動戦士ガンダムII 哀・戦士編

【監督】富野喜幸、藤原良二
【出演】古谷徹(声)、池田秀一(声)、鵜飼るみ子(声)、鈴置洋孝(声)、井上瑤(声)、白石冬美(声)
【制作】1981年、日本

テレビアニメ、機動戦士ガンダムの劇場版三部作の第二編。「機動戦士ガンダム」の続編。

地球連邦軍の戦艦ホワイトベースに搭載されたモビルスーツ、ガンダムのパイロット、アムロ・レイ(古谷徹)は、艦長のブライト(鈴置洋孝)がアムロをガンダムから降ろすという話を耳にしてしまい、ホワイトベースを降りる。アムロは街の食べ物屋でジオン軍のランバ・ラル(広瀬正志)とハモン(中谷ゆみ)に遭遇。ランバ・ラルはアムロを放免して手下に後を付けさせ、ホワイトベースの位置を突き止め、攻撃をしかける。ランバ・ラルはグフに乗ってガンダムと戦い、アムロがガンダムのパイロットであることを知る。グフはガンダムに敗れ、ランバ・ラルは脱出する。ランバ・ラルは白兵戦を仕掛けるが、乗組員にかつて使えたジオン・ダイクンの娘アルテイシアことセイラ(井上瑤)がいるのを見つけ、「戦いの中で戦いを忘れた」と言い残し、自爆する。ジオン軍はモビルスーツ、ドムを送り込み、ホワイトベースに戦いを仕掛ける。ガンダムはドム三機によるジェットストリームアタックに翻弄されるが、そこにアムロの憧れるマチルダ中尉がホワイトベースを守るために輸送機で突っ込み、輸送機はドムに叩き落とされ、マチルダは死亡する。未亡人となったハモンは弔い合戦としてホワイトベースとガンダムに特攻をかけるが、リュウ・ホセイ(飯塚昭三)がハモンの機体にコアファイターで体当たりし、アムロを守る。
ホワイトベースはベルファストの基地に入港。ジオン側のスパイ、ミハル(間嶋里美)は幼い弟と妹を養うため、ホワイトベースに潜入。知り合いになったカイ(古川登志夫)の戦いを見て協力を決意するが、カイと乗った機体から爆風で吹き飛ばされ、命を落とす。ホワイトベースに戻ったカイは人目もはばからず号泣するが、ジオンと戦うことを強く決意する。
ホワイトベースは連邦軍の秘密基地ジャブローに入港。ジオン軍のシャア(池田秀一)に追跡され、ジオン軍の猛攻を受けるが、アムロらが撃退。ホワイトベースは再び宇宙に飛び立つのだった。

戦争による死に重点が置かれた本作。戦いの残酷さを若者に伝えるかのように自爆したランバ・ラル、夫の後を追うように特攻をかける妻ハモン。貧しい民間人ミハル。ホワイトベースを守ろうとしたマチルダ、その遺志を継いだ婚約者ウッディ(田中秀幸)。仲間を守るために自らを犠牲にしたリュウなど。子供向けのロボットアニメで白兵戦が描かれるだろうか。戦争の生々しさを容赦なく描いており、ただロボットがかっこいいというだけではない、感情を揺さぶる作品。挿入曲の「風にひとりで」「哀 戦士」もいい。

【5段階評価】5

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2020年8月24日 (月)

(2154) 機動戦士ガンダム

【監督】富野喜幸、藤原良二
【出演】古谷徹(声)、池田秀一(声)、鵜飼るみ子(声)、鈴置洋孝(声)、井上瑤(声)、白石冬美(声)
【制作】1981年、日本

テレビアニメ、機動戦士ガンダムの劇場版。地球連邦政府とジオン軍の一年戦争を描いた三部作の一作目。

ジオン公国が地球連邦政府に独立戦争を挑んだ世界。スペースコロニー、サイド7にジオン軍のモビルスーツ、ザクが現れ、連邦政府の新型兵器を攻撃。サイド7に住む少年アムロ・レイ(古谷徹)は近くに住む少女フラウ・ボゥ(鵜飼るみ子)らとともに避難することになるが、途中で父親のテム・レイ(清川元夢)が開発したモビルスーツ、ガンダムを発見。ガンダムに乗り込んでザクを倒したことから、ガンダムのパイロットとなる。ジオン軍のザビ家に恨みを持つシャア・アズナブル(池田秀一)は、ザビ家の末子ガルマ(森功至)に、偽の情報を与えて死に至らしめる。ザビ家の長男ギレン(田中崇)は盛大な葬儀を行い、ジオン軍をあおる。アムロは地球連邦軍の女性士官マチルダ中尉(戸田恵子)に恋心を抱きつつ、自分に焼き餅を焼きながらも献身的なフラウ・ボゥと葬儀の中継を見守るのだった。

ずっとテレビ放映されるのを待ち続けていた作品。ジブリ作品は毎年のように同じ作品を放送するのに、ガンダムは自分の知る限り、この10年以上、テレビでは放映してこなかった。「なぜだ。」とにかくこの有名なアニメ作品。「認めたくないものだな。自分自身の若さ故の過ちというものを」「二度もぶった。親父にもぶたれたことないのに」「坊やだからさ」など、名台詞もいっぱい。ロボットアニメのようでいて戦争のむなしさを描いた不朽の名作だ。

【5段階評価】5

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2020年8月18日 (火)

(2148) ジュラシック・ワールド/炎の王国

【監督】J・A・バヨナ
【出演】クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、レイフ・スポール、イザベラ・サーモン
【制作】2018年、アメリカ

恐竜を利用した金儲けの企みを阻止しようとする人々の奮闘を描いたSFアクション。「ジュラシック・ワールド」の続編。

生きた恐竜のテーマパーク、ジュラシック・ワールドが崩壊し、恐竜が野生化。一方、テーマパークのある島が火山活動に見舞われ、恐竜を放置するか救出するかで世論が別れるが、政府は放置する方針を発表。ジュラシック・ワールドの元管理者で恐竜保全活動をしているクレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)はロックウッド財団のイーライ・ミルズ(レイフ・スポール)から恐竜の救出を依頼される。クレアはジュラシック・ワールドでベロキラプトルの飼育をしていたオーウェン・グレイディ(クリス・プラット)を説得し、仲間とともに島に向かう。島にはハンターのケン・ウィートリー(テッド・レビン)の部隊がおり、彼らとともにオーウェンが飼育したベロキラプトルのブルーの捕獲に向かう。ところがオーウェンがブルーを見つけると、ケンらはオーウェンの指示を無視してベロキラプトルに襲いかかり、オーウェンにも麻酔銃を撃ち込み、ベロキラプトルを連れ去ってしまう。ミルズの依頼は嘘で、彼らは恐竜の保護ではなく、捕獲した恐竜を競売にかけて金儲けをしようと企んでいたのだった。オーウェンらは噴火が活発化した島から何とか逃げ出し、ハンターの船に潜り込むことに成功。恐竜を運ぶ車両の列に連なってロックウッド邸を目指すが、途中でケンに見つかり、檻に入れられてしまう。オーウェンは隣の檻に頭部の骨が発達したスティギモロクがいるのを見つけ、それを誘導して檻の扉を破って脱出する。イーライは科学者のヘンリー・ウー(B・D・ウォン)とともに戦闘型の恐竜インドラプトルを開発。試作段階だが2,300万ドルを超える高値が付く。そこに、オーウェンの放ったスティギモロクが乱入し、会場は大パニックとなる。会場の騒動に気づいたケンは檻に入れられたインドラプトルを見つけ、麻酔銃で倒した後、檻の中に入る。ところがインドラプトルはすぐに意識を取り戻し、ケンを捕食。檻を抜け出して人々を襲い始める。オーウェンとクレアは、ベンジャミン・ロックウッド(ジェームズ・クロムウェル)の孫娘、メイジー(イザベラ・サーモン)と合流。屋敷から逃げようとするが、インドラプトルに追いかけられる。屋上に逃げたオーウェンたちは追い詰められるが、ブルーがインドラプトルに飛びかかる。最期はインドラプトルがガラス製の天窓を割って落下し、下の部屋にあったトリケラトプスの化石の骨が刺さって絶命する。
屋敷からは次々と恐竜が逃げていき、ブルーもオーウェンの問いかけを拒むように藪の中に消えていく。街には恐竜が出没するようになり、ジュラシック・パークを知る数学者のイアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)は科学技術を制御しきれない人類を皮肉るように「ジュラシック・ワールドへようこそ」と告げるのだった。

ジュラシック・ワールドの球形ポッドなどはもちろん、人がTレックスに食われて体が真っ二つになったり、蚊の入った琥珀の杖、「ジュラシック・パーク」や「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」で活躍したイアン・マルコムの登場など、過去の作品を思い出させる演出が楽しい。アラン博士(サム・ニール)も出ていたら受け狙いのやりすぎで、ほどよい味付けだった。ヘンリー・ウーはすっかりマッド・サイエンティストになってしまったが、試作段階のインドラプトルの売却を非難したり、多少の人間性は残しているようであり、次作以降も登場の可能性がありそうだ。

【5段階評価】5

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2020年8月 6日 (木)

(2136) 情婦

【監督】ビリー・ワイルダー
【出演】チャールズ・ロートン、マレーネ・ディートリッヒ、タイロン・パワー、ジョン・ウィリアムス
【制作】1958年、アメリカ

アガサ・クリスティの小説が原作の法廷サスペンス。

退院したばかりの老弁護士、ウィルフレッド・ロバーツ(チャールズ・ロートン)のもとに、レナード・ボール(タイロン・パワー)の弁護の依頼が来る。彼は偶然の出会いから親しくなった未亡人フレンチを殺害した容疑をかけられており、逮捕される。フレンチ夫人は彼に遺産を残すよう遺書を書き換えていた。レナードは無実を主張し、妻が自分のアリバイを証明してくれるとウィルフレッドに説明。ウィルフレッドは彼の弁護を決める。そこにウィルフレッドの妻クリスティーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が現れ、彼女はドイツでレナードと結婚したが、それは生活のためで自分には別に夫がおり、レナードを愛してはいない、とウィルフレッドに説明。しかしアリバイは証言するつもりだ、と言って事務所を去る。ウィルフレッドはクリスティーネの意図を図りかねるが、彼女を証言台に上げないことを決意する。
ところが検察側はクリスティーネを証言台に立てる。すると彼女は、レナードは袖に血が付いた状態で帰宅し、女を殺したと言ってアリバイ偽装を自分に依頼したのだ、と証言する。ウィルフレッドは、これまで嘘を重ねてきた人間に質問しても意味がない、と言い捨てるが、レナードは厳しい状況に置かれる。事務所に戻ったウィルフレッドに、謎の女から電話が入り、レナードに有利な証拠があると言ってウィルフレッドを駅に呼び出す。女は名乗らず、クリスティーネが書いたという手紙をウィルフレッドに売りつける。それはクリスティーネがマックスという男に宛てた手紙で、マックスと一緒になるためにレナードを陥れるために偽証するつもりであることが書かれていた。ウィルフレッドはそれを証言台のクリスティーネに突きつける。クリスティーネはウィルフレッドを口汚く罵るが、手紙は自分が書いたことを白状する。レナードは無罪となる。ウィルフレッドはすっきりしないものを感じる。
裁判は終わり、クリスティーネは法廷の外で傍聴人らに嘘つき女呼ばわりされて混乱が起きたため、係員により法廷内に連れ戻される。法廷に残っていたウィルフレッドは、クリスティーネに偽証罪の罪の重さを説明しようとするが、クリスティーネは意に介さない。彼女は本当にレナードを愛しており、彼のために偽証をしたのだった。しかもレナードはフレンチ夫人殺しの真犯人だった。クリスティーネが妻のままレナードのアリバイを証明しようとしても証拠とならないため、彼女は別の夫がいてレナードの妻ではないという立場に立ち、あえてレナードが犯人だという証言をする。そして自らが謎の女に変装してウィルフレッドに自分の書いた手紙を渡し、自分の証言の偽装を暴かせてレナードの無実を勝ち取るという作戦をとっていたのだった。驚愕するウィルフレッドのもとにレナードが現れ、クリスティーネはレナードに抱きつく。しかしレナードには別の若い恋人がいた。クリスティーネは裏切られたのだ。クリスティーネは絶望し、法廷に残っていたナイフでレナードを刺す。レナードは倒れ、クリスティーネは連れ去られる。ウィルフレッドは、クリスティーネを弁護することを決意するのだった。

古い映画なので見るのを若干ためらったが、法廷ものは好きなので観ることにした。素晴らしい法廷サスペンスの一級品だった。古さなど全く関係がない。冒頭のウィルフレッドと看護師プリムソル(エルザ・ランチェスター)との小気味よいやりとりに始まり、テンポよく話が進展。無駄のない人物描写のあと、法廷のやりとりもウィルフレッドが長々としゃべらず、核心を突いた質問を決めて座る姿が気持ちいい。一方で体が悪く医者に止められているのに葉巻や酒をやめないので観客は彼の病状が悪化しないかとヒヤヒヤしながら法廷を見守ることになる。画面に釘付けだ。そしてクライマックスの見事などんでん返し。序盤のクリスティーネの謎の行動。謎の女がどうやってクリスティーネの手紙を持っていたのかのからくり。レナードが妻はいい女優なんだと自慢するシーン。全ての伏線が回収されて謎がスパッと解け、アガサ・クリスティの作品で感じられるカタルシスを存分に味わえる。そして最後にこれまでウィルフレッドに酒もたばこも重労働も駄目と厳しく接していたプリムソルがウィルフレッドの弁護士活動を応援する側に回り、ウィルフレッドが中味をすり替えたココアのボトルを持って「先生ブランデーをお忘れですよ」と話しかけるシーンも、ウィットに富んでいた。
ただ、モノクルの光を反射させて相手の顔に当てて嘘をついていないか確かめるシーンは、結局「見抜けてないんじゃん」という落ちなので、もう少しいい方法がなかったのかな、というのと、ドイツで結婚していたという文書をどうやって作ったのか、本当なのか嘘なのか、嘘だとしたらどうやって偽造したのかはよく分からなかった。とは言え、「好きな古い映画は」と言われたら真っ先に挙げるのでは、と思えるほどの名作だった。

【5段階評価】5

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