評価5の映画

2024年5月 6日 (月)

(2664) 60歳のラブレター

【監督】深川栄洋
【出演】中村雅俊、原田美枝子、井上順、戸田恵子、イッセー尾形、綾戸千絵、原沙知絵
【制作】2009年、日本

60歳を迎える男女の恋や愛情を描いた作品。

大手建設会社の専務取締役、橘孝平(中村雅俊)は定年を迎え、会社を辞して愛人(原沙知絵)の営むベンチャー企業に再就職する。30年間連れ添ったちひろ(原田美枝子)とは離婚。家族は孝平の不倫を知っており、娘のマキ(星野真里)は父親に冷たく当たる。専業主婦で仕事経験のないちひろは、独身女性翻訳家の長谷部麗子(戸田恵子)の家事手伝いを始める。ちひろは、麗子に勧められて、バツイチ作家の麻生圭一郎(石黒賢)の主催するパーティに出席し、麻生の目に留まる。麻生とデートしたちひろは、従順に夫に尽くしてきた過去を明かし、一度だけラベンダー畑を見に行きたいとわがままを言ったことがある、と話す。麻生はちひろに同情し、彼女を富良野に誘う。孝平は、麻生がスポーツカーでちひろを家まで送るのを見かけ、嫉妬する。孝平は新会社にベテランとして入ったのだが、大手企業にいた頃の影響力を喪失していることを自覚する。
麗子は、翻訳の技術的監修を医師の佐伯静夫(井上順)から受けていた。静夫は妻と死別しており、一人娘の理花(金澤美穂)と二人暮らし。静夫は血を見るのが苦手で大腸菌の研究に没頭してきた経緯を持ち、医者としては冴えない男だったが、麗子は彼に好意を抱く。麗子は料理上手のちひろに教えを請いながら、静夫と理花を食事に招き、目いっぱいもてなすが、理花は、気を遣って話しかける麗子の気持ちも、麗子に英語を教えてもらうといいと言って両者の関係をとりなそうとする父親の気持ちも一顧だにせず、煙草と酒をたしなみ、派手な服と化粧に身を包んだ麗子を罵倒し、部屋から出て行ってしまう。静夫は娘の非礼を麗子に謝罪するが、麗子は静夫を見送り、さよなら、と別れを告げる。部屋で落ち込んでいた麗子の部屋に、理花が再び現れる。ひどいことを言ったことの謝罪かと思ったら、まじめな父親に軽い気持ちで接しているのなら許さない、という宣戦布告だった。麗子は、この年で人に恋することが軽い気持ちな訳がないだろう、子供と大人を使い分けてかき回すな、と本気で言い返した後、父親は返す、と力なく告げる。理花は部屋のソファで横たわったままの麗子の横で何かをしたため始める。
ちひろの行きつけの魚屋を営む松山正彦(イッセー尾形)と光江(綾戸千絵)の夫妻は、表面上は口喧嘩ばかりだが、仲睦まじく暮らしており、糖尿気味の正彦のジョギングに妻が付き合っていた。正彦は元グループサウンズのボーカルで、追っかけをしていた光江と結婚したのだった。正彦はジョギングルートの楽器店に飾られたギターの名品マーチンを物欲しそうに眺めるのが常だったが、ついにマーチンは売れてしまう。妻の支援の甲斐もあって、正彦は担当医の静夫から、ようやく制限付きの飲酒の許可が出て喜ぶが、静夫は正彦の妻、光江の異変に気付く。彼女に脳腫瘍ができており、成功率5割ほどの手術を受けることになる。手術に臨む光江は、押し入れのふすまを直してほしいと正彦に頼む。帰宅して光江の身の回りの物を荷物詰めした静夫が押し入れを開けると、そこには、静夫が望んでやまなかったマーチンがあった。光江が誕生祝にへそくりで27万もするギターをプレゼントしてくれていたのだ。完全に死亡フラグ。静夫はそのギターを抱えて病院に入り、昏睡中の光江の横でビートルズの「ミッシェル」を歌い続ける。翌朝、光江は目を覚ます。光江の手術が成功したことを知り、静夫は光江に泣きついて喜ぶ。
麗子が静夫にさよならを言った次の日。静夫が突然、麗子の家を訪ねてくる。化粧を落とし、普段着でみすぼらしい恰好を恥ずかしがる麗子を気にも留めず、静夫は、娘に英語が分からないので訳してほしいと頼まれた、と言って、英文を読み始める。それは拙い中学生英語で、お金もなく出世もしておらず、もう年で生意気な娘までいるが、それでもよければ結婚を前提に付き合ってほしい、というラブレターだった。麗子は泣きながら一文一文を日本語に訳すと、最後の「I love you, Reiko.」は訳さず、「I love you too, Shizuo」と返す。理花が二人の交際を認めたのだった。
病院の新生児室に孫を見に来ていた孝平のもとに、彼を探して四国から来た若い男、北島進(石田卓也)が現れる。彼は、孝平とちひろが新婚旅行で訪れた写真館の主人の孫だった。ちひろは写真館で、30年後の夫に手紙を書いていた。そこには、画家志望だったあなたの絵を見てみたいと書かれていた。孝平はひざを落とす。光江に一心不乱に歌を聞かせている正彦を見た孝平は病室を飛び出して、娘のマキが八木沼等(内田朝陽)と同棲している家に上がり込み、白い布地に絵を描き殴りはじめる。翌朝、彼は愛人に辞表を渡して北海道に飛び、麻生と富良野に来ていたちひろの前に現れると、そこに自分の描いた絵を張り出す。それは紫色に塗りたくられた、お世辞にも上手とは言えないラベンダー畑の絵だった。麻生の車からそれを見たちひろは、麻生と別れ、孝平のもとに戻る。孝平はやり直そうと言い、ちひろは頷く。抱き合う二人の周りには、さっきまでなかったはずのラベンダーの花が一面に咲いているのだった。

泣ける映画はこれまでにも観てきたが、本作ほど泣いている時間の長い作品はなかった。後半は泣いては落ち着き、泣いては落ち着き、の繰り返しだった。
まず、描き方の品がいい。絶叫してみたり、人が死んでみたり、みたいなお涙頂戴ではなく、抑制のきいた芝居になっている。ところどころ、それは作り話すぎるだろ、というところはなくもないが、三組の男女の話がどれもよかった。
また、オムニバス形式だが、登場人物の重なり合い具合もいい。全然重ならないのは、別々の話をくっつけただけじゃん、となるが、あんまり絡めすぎると作り話感(そんなに都合よくいくかよ的な)が増す。孝平と麗子は面識はないままだし、ちひろと静夫も接点はない。正彦と光江も麗子とは会わない。上のあらすじは、人物ごとにまとめて書いているが、作品では個々の話がもっと織り交ざって進行する。最初に登場する、首都高を迷いながら走る田舎の若者は何者なのか、という大きな謎が背骨のように物語の軸に居残り続け、後半にやっと明かされるというのも巧みな脚本。ベタなタイトルの作品だが、こんなに感動するとは思わなかった。
一方、何のとりえもない専業主婦という設定にしては、ちひろを演じる原田美枝子は、美人すぎた。もうちょっと性格俳優的な人の配役で観てみたかった気がした。もう一つ残念だったのは、孝平が仕事面でうまくいかなくなるという描写に時間を使い過ぎたこと。大手企業を離れて影響力を失った彼が、分かれた妻とよりを戻すという展開は、逆に言えば愛人とのベンチャー企業経営に挫折し、元妻に逃げ戻った都合のいい男とも受け取れてしまう。業務の流れが他の登場人物ともからまず、時間をかけて描く意味が薄かった。それであればむしろ彼の絵画に対するぬぐい切れぬ憧憬の念、妻に絵描きの夢を語っていた過去などを描くのもありだった。

【5段階評価】5

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2024年4月14日 (日)

(2642) SING/シング: ネクストステージ

【監督】ガース・ジェニングス
【出演】マシュー・マコノヒー(声)、リース・ウィザースプーン(声)、ボビー・カナベイル(声)、ボノ(声)
【制作】2021年、アメリカ

地方の劇場で活躍する動物たちが、より大きな舞台を求めて奮闘する3DCGアニメ作品。「SING/シング」の続編。

地元の劇場で大評判のステージを披露しているバスター・ムーン(マシュー・マコノヒー/内村光良)ら一団は、ショービズ都市レッドショア・シティでの興行を目指す。伝説の大物歌手クレイ・キャロウェイ(ボノ/稲葉浩志)を仲間に引き入れ、見事なステージを披露するのだった。

やはり音楽の力はすごい。3DCGによる、音楽に負けないダイナミックな映像が、感動を盛り上げる。観ていて思わず声が出るほどの素晴らしい作品だった。ゴリラのジョニー(タロン・エガートン/大橋卓弥)が苦労してダンスを身に付けたり、ステージのボス、ジミー・クリスタル(ボビー・カナベイル/大塚明夫)のわがまま娘ポーシャ(ホールジー/アイナ・ジ・エンド)が主役を明け渡して脇役を生き生きと演じたり、15年間歌ってこなかったクレイがヤマアラシのアッシュ(スカーレット・ヨハンソン/長澤まさみ)のパフォーマンスを目にして歌に加わったり、感動的な話が目白押し。胸が熱くならざるを得なかった。いつもはアニメだろうが何だろうがオリジナル音声で鑑賞するのだが、本作はやはり、MISIAや稲葉浩志のように、音楽活動でしかお目にかかれない人物の声優ぶりが聞けるとあって、日本語吹き替えを楽しんだ。稲葉浩志はライオンの役だが、話し声は甘めのハイトーンだった。

【5段階評価】5

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2024年3月25日 (月)

(2622) アリータ:バトル・エンジェル

【監督】ロバート・ロドリゲス
【出演】ローラ・サラザール、クリストフ・バルツ、キーアン・ジョンソン、ジャッキー・アール・ヘイリー
【制作】2019年、アメリカ

記憶を失ったサイボーグの少女の活躍を描いた作品。木城ゆきとの漫画「銃夢」(がんむ)が原作。

2563年。没落戦争(ザ・フォール)と呼ばれる戦争から300年経った時代。クズ鉄町アイアンシティに住む医師のダイソン・イド(クリストフ・バルツ)は、空中都市ザレムから落ちてきたスクラップの中に、頭部と胸部だけの少女のサイボーグを発見。体を再生させてアリータ(ローラ・サラザール)と名付ける。それはイドの娘の名前だった。イドは医師である一方、犯罪者を退治するハンター・ウォリアーでもあり、それを見たアリータは自らもハンター・ウォリアーとなる。仲よくなった青年ヒューゴ(キーアン・ジョンソン)が、ザレムに行くためにお金を貯めていることを知り、アリータは賞金目当てに危険なスポーツ、モーターボールへの出場を決意。アイアンシティの支配者ベクター(マハーシャラ・アリ)は、火星の技術で作られたアリータの体を求め、アリータの出場するモーターボールに、反則上等の選手やハンター・ウォリアーを出場させる。アリータは敵だらけの中で奮闘するが、ヒューゴから、悪者ハンター・ウォリアーのザパン(エド・スクライン)に襲われていると通信を受け、競技場を飛び出してヒューゴを助けに行く。ザパンの策略により、ヒューゴは殺人犯に仕立てられており、アリータはヒューゴを助けることができなくなり、ザパンは勝ち誇ったように自慢の剣をヒューゴの腹に突き刺す。アリータはヒューゴを抱えて逃げる。そこにイドの妻だったチレン(ジェニファー・コネリー)が現れ、ヒューゴを救う手立てを教える。アリータはヒューゴの頭部に自分の血管を接続し、首を持ち帰ったように見せかけて、警備ロボット、センチュリアンの目を逃れると、イドの元に戻り、ヒューゴにサイボーグの体を与えてもらう。アリータはベクターのもとを訪れ、自分の使命がザレムの壊滅であった記憶を取り戻すと、かつては歯が立たなかったグリュシカ(ジャッキー・アール・ヘイリー)を一刀両断にし、ベクターに乗り移っているノバ(エドワート・ノートン)に宣戦布告してベクターの息の根を止める。ヒューゴはくず鉄の町とザレムを繋ぐ太いパイプを登ってザレムを目指しており、アリータはそれを追うが、防衛装置に阻まれヒューゴは落下。アリータは自らの使命を果たすため、モーターボールチャンピオンを目指して戦い続けるのだった。

特撮が素晴らしく、CG全開でユニークなハンター・ウォリアーが多数登場するのが楽しい。フィギュアを集めたくなるようなかっこよさ。続編が楽しみだ。ただ、本作は日本での人気が今ひとつだったからか、テレビ放映される気配がなく、Amazon Primeで観た。原作が日本の漫画なのに、日本での話題性が低いのは不思議だ。
本ブログでは、アニメ作品のように声だけの出演の場合、「出演」欄の出演者名の後ろに「(声)」と加筆するのだが、本作のローラ・サラザールは「(声)」を付けるべきなのか迷った。声だけではなく、動きもローラ・サラザールがつけているかもしれないからだ。他にもグリュシカの顔はジャッキー・アール・ヘイリーの原型をとどめているとは思えなかった。今後は「(体)」とか「(声・動き)」とか追加しないといけないのかもしれない。

【5段階評価】5

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2024年3月24日 (日)

(2621) ウェイ・ダウン

【監督】ジャウマ・バラゲロ
【出演】フレディ・ハイモア、アストリッド・ベルジュ=フリスベ、リアム・カニンガム、サム・ライリー、ファムケ・ヤンセン
【制作】2021年、スペイン、フランス

スペイン銀行の金庫に収められた財宝を奪おうとするグループの奮闘を描いた作品。

財宝ハンターのウォルター(リアム・カニンガム)は、1645年に沈没した船の積み荷を海底から引き揚げるが、すぐさまスペイン税関に押収され、財宝はスペイン銀行の「工学の奇跡」と呼ばれる金庫に保管される。ウォルターは、原油流出事故を独創的なアイディアで解決したケンブリッジ大学の学生、トム(フレディ・ハイモア)を仲間に引き込み、スリの技術に長けたロレイン(アストリッド・ベルジュ=フリスベ)、コンピュータの専門家クラウス(アクセル・シュタイン)、ダイバーのジェームズ(サム・ライリー)、調達係のシモン(ルイス・トサール)とともに、金庫に潜入する作戦を練る。シモンとトムが清掃員に扮して銀行内に細工をし、ロレインが絵画の鑑定士になりすまして銀行内にある金庫室の鍵の複製データを取る。スペイン銀行の警備主任グスタボ(ホセ・コロナド)は異変を察知し、ワールドカップに揺れる銀行前広場の封鎖を提案するが、総裁(エミリオ・グチエレス・カバ)は聞き入れない。トムは工学の奇跡の謎を解明する。それは、金庫室全体がはかりになっており、重さの変化に反応して金庫室が閉じ、水が流れ込むという仕組みだった。トムは、はかりを液体窒素で凍らせれば、反応を鈍らせることができると考え、シモンが液体窒素を噴射する役目を追う。
ワールド・カップの決勝の日。銀行前の広場に設けられたスペイン・オランダ戦のパブリックビューに大群衆が集まる中、ジェームズ、ロレイン、トムが屋上からスペイン銀行に潜入。はかりを凍らせ、金庫室の潜入に成功する。ところが、屋上の潜入の痕跡が警備にばれ、警備映像に細工をしていることもグスタボに気づかれてしまう。さらに、ジェームズが裏切りを働き、ロレインが金庫室の中から発見した、埋もれた財宝のカギを握るコインを奪い取ってしまう。液体窒素の効果が弱まり、はかりが反応して金庫室に大量の水が流入するが、ジェームズは潜水で金庫室から脱出。トムは、金庫室が満水になると水が止まるのは、重さを感知しているからだと推理し、シモンに、はかりに重しを乗せてくれと指示。シモンはありったけの液体窒素ボンベをはかりに乗せ、天に祈る。トムとロレインは脱出に成功し、大群衆の中に逃げ込む。追っ手の警備員が迫るが、潜入用の服を脱ぎ捨て、スペインサポーターの姿になったところで、スペインのイニエスタが延長戦の決勝ゴールを決め、大群衆が沸き立つ。警備員は身動きが取れなくなり、トムとロレインは脱出に成功する。
ジェームズは、イギリスへの忠誠心のためにコインを奪い取ったが、MI6に持ち込まれたそのコインは偽物だった。ウォルターはジェームズの裏切りを予感していたのだ。コイン奪取に成功した5人は、埋もれた財宝の場所を探し出す。それはイングランド銀行の真下。ウォルターはため息をつく。オリンピック開催を1か月後に控えたロンドンで、彼らの新たな挑戦が始まるのだった。

金庫破りに挑む一団の活躍を描く作品はいろいろある(作中でもトムが「オーシャンズ11」を引き合いに出している)が、本作は、主人公たちが盗賊ではなく、自分たちが探し当てたにもかかわらずスペイン政府に横取りされた財宝を取り戻すという設定になっており、感情移入しやすい。また、本作では誰も死なない。警備員を殺したり、誰かが犠牲になったり、という盛り上げ方をしていないのが、上質なクライム・サスペンスの条件の一つ。しかも、それが決して非現実的なスタイリッシュさにしていないのもいい。そして、実際のサッカー・ワールドカップのスペインの大進撃を物語に組み込んでいる点が最もユニーク。ラストシーンは、スペインチームファンならずとも、快哉を叫びたくなるだろう。
今回はムービープラスの無料放送の自動録画だったが、得した気分になる作品だった。

【5段階評価】5

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2024年2月25日 (日)

(2593) インデペンデンス・デイ

【監督】ローランド・エメリッヒ
【出演】ウィル・スミス、ジェフ・ゴールドブラム、ビル・プルマン、ビビカ・A・フォックス、マーガレット・コリン
【制作】1996年、アメリカ

エイリアンの侵略に立ち向かう人々を描いたSF作品。

巨大な宇宙船が地球に接近。全長が24kmもある飛行物体が世界中に現れる。トーマス・J・ホイットモア大統領(ビル・プルマン)は国民を混乱に陥れないよう、避難せずホワイトハウスに残る。科学者のデイビッド・レビンソン(ジェフ・ゴールドブラム)は、宇宙船が衛星通信を使ってカウントダウンをしていることを突き止め、大統領の補佐をしている元妻のコニー(マーガレット・コリン)を通じて、大統領に宇宙人が攻撃してくると進言。大統領は妻のマリリン(メアリー・マクドネル)に避難するよう告げるが、飛行物体からの攻撃が一斉に始まり、マリリンの乗ったヘリは爆発に巻き込まれてしまう。デイビッドと父親のジュリアス(ジャド・ハーシュ)は、大統領とともにエアフォース・ワンで脱出。宇宙人が捕獲されているエリア51に向かう。
休暇中だった海兵隊のスティーブン・ヒラー大尉(ウィル・スミス)は、事態を知り、同棲中のジャスミン(ビビカ・A・フォックス)と連れ子のディラン(ロス・バグレー)を残して海兵隊に復帰。ジャスミンはエイリアンの攻撃に巻き込まれながらもなんとか逃げ出し、瀕死の重傷を負ったマリリンを発見する。ヒラーは飛行物体の攻撃に向かうが、敵の戦闘機に追撃される。ヒラーは敵機を墜落させることに成功し、中にいた宇宙人を殴り倒してエリア51に宇宙人を運び込むと、ヘリを飛ばしてジャスミンを発見。マリリンもエリア51に運び込まれるが、帰らぬ人となる。
デイビッドは、敵のコンピュータにウィルスを仕込んでバリアを無効化する作戦を思いつき、大統領は実行に移す。エリア51にて保管・研究されていたた敵戦闘機にヒラーとデイビッドが乗り込み、宇宙空間に停止している敵の母艦に侵入。デイビッドはウィルスを感染させることに成功する。大統領自ら戦闘機に乗り込んで陣頭指揮を執り、バリアが解けた飛行物体に猛攻を仕掛ける。最後は10年前に宇宙人に捕獲された経験を持つ老パイロットのラッセル・ケイス(ランディ・クエイド)がミサイルごと飛行物体の中心部に特攻し、飛行物体は大破する。人類は敵の弱点を共有し、世界中の飛行物体の撃墜に成功する。デイビッドとヒラーは敵の母艦からの脱出に成功し、ヒラーはジャスミンと、デイビッドはコニーと抱き合うのだった。

大統領が戦闘機に乗り込んで無事に帰還したり、敵の母艦にコンピュータウィルスをアップロードしたりと、娯楽大作的なご都合主義はあるものの、見事な特撮と多彩な登場人物で、圧倒的な戦闘力を持ったエイリアンに勝利するという痛快で見ごたえのある作品になっている。大統領が基地にいる人々に演説をするシーンは感動的。大統領がヒーローとして絵になるのはいかにもアメリカ映画だった。日本ではこうはならないだろう。なお、本作はセル版を持っているが、今回アマゾンプライムで観直した。

【5段階評価】5

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2024年2月 5日 (月)

(2573) シェフ 三ツ星フードトラック始めました

【監督】ジョン・ファブロー
【出演】ジョン・ファブロー、エムジェイ・アンソニー、ジョン・レグイザモ、ソフィア・ベルガラ、オリバー・プラット
【制作】2014年、アメリカ

評判の失墜した腕利きシェフの復活と家族との交流を描いた作品。

ロサンゼルスのフランス料理店ガロワーズで働く腕利きのシェフ、カール・キャスパー(ジョン・ファブロー)は、有名な料理ブロガー、ラムジー・ミシェル(オリバー・プラット)の来店を前に、新作料理の準備に余念がなかった。ところがオーナーのリーバ(ダスティン・ホフマン)は、定番料理を出すよう命令。しかたなくそれに従うと、ラムジーは、シェフに勇気がないと料理を酷評する。仲間からツイッターを気にするな、とやたら言われたカールは逆に気になり、息子のパーシー(エムジェイ・アンソニー)にツイッター登録してもらってネットの書き込みを確認。腹の立ったカールは、ラムジーに暴言を打ち返すが、それが公開メッセージになっており、カールのフォロワーが激増する。ラムジーがガロワーズを再訪することになり、カールは今度こそ新作料理で迎え討とうとするが、またもリーバは、リピーターを大事にせよ、と定番料理を出すよう指示し、反論するカールに従わないなら首だと宣告。怒ったカールは店を出て行く。席に着いたラムジーは、全く同じ料理が振る舞われたことにあきれ、シェフは逃げた、とネットに書き込む。我慢ならなくなったカールは店に戻り、命がけで作った料理を酷評するだけのラムジーに、たまりにたまった怒りをぶつけ、激しく罵る。ところがその様子を他の客が撮影しており、映像がネットに流出。カールはレストランを首になった上に、評判が地に墜ちて再就職もできなくなる。
カールの元妻イネズ(ソフィア・ベルガラ)は、これまで息子の相手より仕事を優先してきたカールに、パーシーが父親と過ごしたがっているから、マイアミ旅行に一緒に来てほしいとカールに話す。マイアミに同行したカールは、そこでキューバサンドイッチのおいしさを知り、これをロスで提供したら受けるのではないかとイネズに相談。イネズは同意する。カールはイネズに、始めからそのつもりで自分をマイアミに呼んだのか、と問うが、イネズは「何のこと? 」ととぼける。
カールは、イネズの元夫マービン(ロバート・ダウニー・Jr)を訪ねて援助を依頼。マービンからおんぼろのフードトラックを譲り受ける。カールはパーシーと一緒にフードトラックを掃除し、調理設備や食材を購入。パーシーにバイト代として調理ナイフを買い与える。ガロワーズの同僚でカールを慕うマーティン(ジョン・レグイザモ)は、2番手に昇格したばかりのガロワーズを辞めてカールに合流。カールは息子にサンドイッチの作り方を手ほどきし、パーシーは熱心に父親の仕事ぶりを学ぶ。ロサンゼルスに戻ることになり、夏休み中のパーシーは、母親と飛行機で、ではなく、父親とフードトラックでロスを目指すことを望み、母親の了解を得る。カール、パーシー、マーティンは三人で、フードトラックでロスを目指す。パーシーは父親の知らない間に旅の様子をネットに上げており、行く先々で、フードトラックの前には長蛇の列ができる。カールは、パーシーは宣伝部長だ、と喜び、群がるお客さんに料理を振る舞う。楽しかった旅も終わりを迎え、カールはパーシーに、ロスに着いたら学校に行くようにパーシーに話す。パーシーは、放課後と週末だけども手伝いたいと言うが、カールはそれを断る。パーシーをイネズのもとに送り届けたカールは、一人暮らしの寂しい家に戻る。そこに、パーシーからの動画が届く。それはカールとパーシーが過ごした期間の1日1秒の動画をつなげたものだった。カールはそれを見ながら、パーシーとの楽しかった日々を思い出し、パーシーがこの旅をいかに楽しんでいたのかを知る。カールはすぐさまパーシーに電話し、放課後と週末、仕事を手伝ってくれないかと話し、パーシーは大喜びして、パパが手伝ってほしいと言っていると母親に報告する。かくして、カールとマーティンとパーシー、さらにイネズも加わり、四人でフードトラックを営業。大評判のフードトラックに、あの批評家ラムジーが現れる。警戒心露わにカールが応じると、ラムジーはなんと、カールに投資したいと言い、ブログの収益で店を買ったので、かつてのようにオーナーの言いなりではなく、自分の出したい料理をそこで出してくれ、と持ちかける。そして、カールのサンドイッチを食べたかったが売ってくれないと思って他の人に買わせて食べた、と言って、食べ終わった包み紙を見せながらカールのサンドイッチを絶賛する。
6ヶ月後、カールはラムジーの店で開店祝いを開いていた。そこには料理をつまみ食いしようとしてパーシーにたしなめられるラムジーや、幸せそうにダンスをするカールとイネズの姿があるのだった。

また、自動録画でいい映画に出会ってしまった。多少の親子げんかやすれ違いのシーンはあるものの、終始ポジティブで明るく楽しい内容。ネットの炎上は、ともすれば自殺したくなるほど落ち込むようなシーンとして描くこともできるが、カールはネット音痴という設定もあり、本作では、その辺りはからっと軽めに描いている。
料理のシーンも丁寧に作られており、エンドロールでは主役のジョン・ファブローが料理方法のレクチャーを受けているメイキング映像が登場する。見終わったあと「キューバサンドイッチ食べたい! 」になることは間違いなく、ダイエット中の人には危険な作品だ。
主人公はカールだが、本作の魅力は息子のパーシーの存在抜きには語れないだろう。焦げたサンドイッチを出そうとして父親に咎められ「はい、シェフ」と敬意を持って応じたり、カールとマーティンが車の運転中に下品な歌で盛り上がっているのを苦笑いしながら聞いていたり、マイアミから母親の家に帰り着いた後に何度も父親に抱きついたり、仕事を手伝ってくれという父からの電話を嬉しそうに母親に報告したり、愛らしいシーンがいっぱい。これ見よがしではなく、父親への無償の愛と尊敬の念をうまく描いている。マーティンとカールの息の合った掛け合いには思わず微笑んでしまうし、イネズはカールにストレスフルな苦言を呈したりあれこれ指図したりせず、カールの成功とパーシーの成長を信じて見守る、ほどよい距離感。監督、脚本、主演、製作を務めたジョン・ファブローに脱帽だ。
残念なのは邦題。原題は「Chef」だけなので、何か付け足したかったんだろうけれども、青春映画みたいな副題で、名作のタイトルとしては軽すぎだった。

【5段階評価】5

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2024年1月11日 (木)

(2550) 劇場版 おいしい給食 卒業

【監督】綾部真弥
【出演】市原隼人、佐藤大志、土村芳、直江喜一、登坂淳一、いとうまい子
【制作】2022年、日本

テレビドラマ「おいしい給食」の映画化作品第2弾。「劇場版おいしい給食 Final Battle」の続編。

黍名子中学校の教師、甘利田幸男(市原隼人)は、大の給食好き。担任する3年1組の神野ゴウ(佐藤大志)を勝手にライバル視し、給食に出されたナポリタンとかき玉汁の食べ方で神野に敗北感を味わう。甘利田が駄菓子屋でホームランバーを食べていると、学年主任の宗方早苗(土村芳)が現れ、甘利田にチョコレートボンボンを渡す。それと知らずに食べた酒に弱い甘利田は、すっかり記憶をなくしてしまう。
黍名子市の給食試食会が開かれることになり、甘利田は喜び勇んで参加。ところが甘利田の期待に反し、出された給食は味より栄養管理を重視しており、給食の魅力が激減。甘利田は給食センターの四方田岳(登坂淳一)に給食の本質を問いかけ、会場を去る。甘利田が学校に戻ると、早苗がやってきて「この前の話、私なりに考えてます」と告げる。甘利田は自分が何を言ったのか気になり、駄菓子屋の店主のお春(木野花)に事情を聞くと、彼は酔った勢いで、早苗に「奥さんにするなら宗方先生がいい、検討してほしい」と言っていたと聞かされる。
給食の方針が変わり、甘利田は給食に満足できなくなる。生徒達も同じで、食べ残しが増えていく。神野は食べ残しが増加しているというデータを携えて給食センターに乗り込む。味より健康管理という方針を推し進めていたのは、甘利田を敵視する教育委員会の鏑木優(直江喜一)だった。神野は会議の場で給食の改善を要求するが、鏑木は鼻で笑い、相手にしない。そこに、神野を追ってきた甘利田が乱入し、鏑木に生徒が食べ残すような給食にはサービスの心がないと熱弁を振るい、神野を連れて会議室を後にする。会議に参加していた四方田は甘利田を追い、おいしい給食を出したいと告げる。
卒業の日を迎え、黍名子中学校の校長、箕輪光蔵(酒井敏也)は、甘利田が3月一杯で函館に転勤することを告げる。早苗は甘利田の函館行きにショックを受けつつも、彼の酔った勢いの求婚を真に受けると甘利田に告げる。甘利田は黍名子中学校の最後の給食を満喫し、神野に別れを告げるのだった。

前作も給食をここまで面白く映画にできるのかと感動したが、本作はそれを上回るできばえ。給食に異常な愛情を示す甘利田の動きや言葉には思わず吹き出してしまうし、給食センターの会議で熱く語る甘利田には涙を禁じ得ない。「シコふんじゃった。」に次ぐコメディ邦画の最高峰と言ってもいいほどのできだった。テレビドラマの映画化作品は、テレビドラマを見ていないと話しについて行けないことがよくあるが、本作はテレビドラマを見ていなくても十分に楽しめる。市原隼人の演技力とサービス精神に脱帽。万人に進められる作品だ。

【5段階評価】5

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2023年11月14日 (火)

(2511) 友だちのうちはどこ?

【監督】アッバス・キアロスタミ
【出演】ババク・アハマドプール、アハマッド・アハマドプール、ホダバフシュ・デファイ
【制作】1987年、イラン

友だちのノートを間違えて持ち帰った少年の涙ぐましい奮闘ぶりを描いた作品。

8歳の少年アハマッド・アハマドプール(ババク・アハマドプール)は、友だちのモハマッド・レザ・ネマツァデ(アハマッド・アハマドプール)のノートを間違えて家に持ち帰ってしまう。ネマツァデは、ノートに宿題をしてこないことで3回も先生(ホダバフシュ・デファイ)に注意されており、次にノートに宿題をしてこなければ退学だと叱られていた。アハマッドは、ノートを返しに行かないといけないと母親(イラン・オリタ)に説明しようとするが、母親はアハマッドに次々と手伝いをさせながら、宿題をしろ、終わったらパンを買いに行け、と言ってアハマドの話に取り合わない。アハマッドは母親の目を盗んでネマツァデのノートを手に家を飛び出す。
アハマッドの住むコケルからネマツァデの住むポシュテまで、丘を越えて走って向かった彼だが、肝心のネマツァデの家がわからない。町の住人に聞いて回りながら、頼りないヒントを手掛かりに家を探すが見つからない。コケルに向かったという話を聞いてコケルに戻ると、祖父(ラフィア・ディファイ)に説教を受け、そこにいた職人の男がネマツァデという名だったので、仔馬に乗ってポシュテに戻る男を必死で走って追いかけるが、その家にいる少年は彼の探している友人ではなかった。このあたりにはネマツァデの名が多いようなのだ。
夜になってしまい、ようやく扉職人の老人が連れて行ってくれると言うのでついていく。足の遅い老人は、道の途中で顔が洗いたいとのんきなことを言い、そこにあった小さい花を、ノートに挟めと言ってアハマッドに手渡す。それどころではないアハマッドが老人をせかして目指す場所にたどり着くと、そこは人違いであることを確認済みの仔馬の男の家だった。アハマッドは、ノートを服の中に隠し、ノートを返したふりをして老人のもとに戻る。老人に無駄足だったと気づかせたくなかったのだろう。仕方なく家に帰ったアハマッドは、絶望から食欲もないまま、済ませていなかった宿題をする。
翌日、教室にアハマッドの姿はなく、教室に現れた先生は、宿題の確認を始める。ネマツァデは、2枚ほどの紙を机の上に出すが、ノートに宿題をしてこなかったので顔面蒼白だ。先生は一人ひとりのノートを確認していく。ネマツァデの順番になる直前に、アハマッドが教室に遅れて入ってくる。アハマッドは席に着くと、ネマツァデの分も済ませた宿題のノートを出し、ネマツァデにノートを渡す。宿題はアハマッドが仕上げていた。先生はネマツァデのノートを確認し、「よろしい」と言ってサインする。そのノートには、ポシュテの扉職人の老人がくれた花が挟まっていたのだった。

映画が始まって間もなく、自分のカバンから友だちのノートが出てきて絶望の淵に立たされるアハマッドに完全に感情移入するだろう。大人にとっては何でもないことでも、子供にとっては大事件。子供には、大人に状況を的確に伝える力がない。いや、大人がそもそもわかろうとしていない。しかしアハマッドは、子供を理解しようとしない大人にも、親切だが勘違いをする老人にも、決して泣き叫んだり怒りをぶつけることなく、けなげに定かでない目的のために走り続ける。そしてあっという間に迎えるラストシーンの小さな押し花に、観客は打ちのめされるのだ。
この花は、結果的に完全に無駄に終わった、アハマッドのコケルとポシュテの2往復に及ぶ奮闘の証明とも言える花。作中、終始感情的な抑揚のない描写に徹しておきながら、最後にこういう演出を持って来て、ため込んできた感動を一気に花開かせるのが心憎い。この作品に評価3をつけるわけにはいかない。4にするか迷ったが、心地よい感動に敬意を表し、評価5にした。
なお、主人公の役名と、友人役を演じた役者名が同じアハマッド・アハマドプールなのは、誤記ではない。二人は実の兄弟だそうだ。

【5段階評価】5

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2023年10月29日 (日)

(2503) 遠い空の向こうに

【監督】ジョー・ジョンストン
【出演】ジェイク・ギレンホール、クリス・クーパー、ローラ・ダーン、クリス・オーウェン、
【制作】1999年、アメリカ

ロケット打ち上げに挑む高校生を描いた作品。実話に基づいている。

炭坑で働く父(クリス・クーパー)を持つ高校生、ホーマー・ヒッカム(ジェイク・ギレンホール)は、ソ連のスプートニク1号の打ち上げ成功を知り、ロケットに興味を持つ。父親のジョンは、アメフトに奮闘する長男ジム(スコット・トーマス)を目にかけており、ホーマーがロケットにうつつを抜かすことに反対。ホーマーは、父親に認められていないことを知りつつ、クラスメートのクエンティン・ウィルソン(クリス・オーウェン)や、親友のロイ・リー・クック(ウィリアム・リー・スコット)、シャーマン・オデル(チャド・リンドバーグ)とともに、ロケット作りを始める。女性教師ライリー(ローラ・ダーン)は科学コンテストに優勝すれば奨学金が得られる、とホーマーを応援する。
失敗続きのロケット作りだったが、ついに空高くロケットを飛ばすことに成功する。しかし、近所で山火事があり、落下したロケットが原因だとしてホーマーたちは逮捕されてしまい、ロケット作りは頓挫。さらにジョンが炭坑で大けがを負い、働けなくなったため、ホーマーは嫌がっていた坑夫になることを決意し、高校も退学してしまう。しかし、ライリー先生に励まされてロケット作りを再開。嫌いだった数学の勉強をして、ロケットの落下地点を計算して山火事の冤罪を晴らす。ホーマーら4人は科学コンテストに出場。地区大会で優勝する。本戦に進んだホーマーだったが、展示物が盗まれてしまう。そのことを知った母親のエルシー(ナタリー・キャナーデイ)は、ジョンを説得して息子のロケットの部品を作り直すことに協力させる。その結果、ホーマーは見事にコンテストで優勝する。
ホーマーは、父親に感謝の言葉を伝える。ジョンは、ホーマーが憧れていたブラウン博士に会えたことを知り、「ヒーローに会えてよかったな」と言うが、ホーマーは、ブラウン博士は偉大な人だが、僕のヒーローじゃないと答える。ホーマーにとってのヒーローは、強い意志で炭坑の仕事を続ける父親だったのだ。その後、4人は別々の道に進むが、ホーマーはNASAの技術者として大成するのだった。

最後のホーマーのロケット打ち上げの場所に、これまで一度も見に来たことのなかった父親がやってくるシーンが感動的。原題の「October Sky」は「Rocket Boys」のアナグラムになっている。邦題が「ロケットボーイ」じゃなくてよかった。

【5段階評価】5

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2023年6月18日 (日)

(2470) グリーンブック

【監督】ピーター・ファレリー
【出演】ビゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ
【制作】2018年、アメリカ

白人の雇われ運転手と、雇い主である黒人のピアニストとの交流を描いた作品。かつてのアメリカの痛烈な人種差別に立ち向かう様子を描いている。

ナイトクラブ「コパカバーナ」で用心棒をしていたトニー・バレロンガ(ビゴ・モーテンセン)は、クラブの改装によって無職の状態になる。ドクター・ドン・シャーリーという雇い主のドライバーの仕事を紹介され、医者だと思って言ってみると、相手は黒人の音楽家(マハーシャラ・アリ)だった。トニーは黒人に強い差別感情を持っており、家に来た黒人の職人が使った家のコップをそのままゴミ箱に捨ててしまうほど。ドンを前に始めは忍耐強くドンの質問に答えていたが、週100ドルでドライバーの仕事だけではなく靴磨きなどの雑用もする必要があるという説明を受けると、「自分は召使いではない。週125ドルは必要だ」と告げて立ち去る。しかしトニーの腕を買っていたドンは、彼の妻ドロレス(リンダ・カーデリーニ)に電話でトニーが8週間家を空けることの許可を得て、トニーを雇うことにする。トニーはレコード会社から、黒人が利用できる宿泊施設などが載ったグリーンブックを渡される。
車内でたばこを吹かし品のない言葉でしゃべり続ける粗野なトニーに、ドンは逐一注意する。ドンを疎ましく思うトニーだったが、彼のピアノ演奏を目の当たりにして彼の才能に驚き、敬意を感じるようになる。ドンも旅を続けるうち、手づかみでケンタッキーフライドチキンを頬張るトニーに勧められて素手でフライドチキンを食べ、骨を窓外に投げ捨てるなど、道中を楽しむようになる。
ドンの演奏は、富裕層に歓迎されるが、黒人のトイレは別だったり、バーに行くと白人に絡まれたり、根強い差別がまかり通っていた。トニーはドンの身を守りながら、次第に自らの差別意識も変わっていく。トニーは愛する妻にまめに手紙を出しており、ドンは手紙の内容をアドバイスする。手紙を受け取ったドロレスは、見違えるような手紙の内容に感激する。
最後の演奏会場でも、ドンはVIPのような待遇を受けつつも、楽屋は物置きで、レストランには黒人であることを理由に入店を断られる。ドンは「レストランで食事が取れないなら演奏はしない」とオーナーに告げる。オーナーはトニーに、ドンを説得するよう100ドル渡そうとするが、トニーはオーナーにつかみかかる。ドンはそれを制止し、トニーに「君が演奏しろというならそうする」と言うが、トニーは「こんなところ出ていこうぜ」と言って、ドンとともに黒人の集う店に行く。白人のトニーと立派な服を着たドンは、店内の注目を集める。トニーはドンを天才ピアニスト(竹内とますみではない)だと紹介。店員が演奏を促し、ドンがピアノを奏でると大喝采を受け、店のバンドと盛り上がる。店を出たトニーとドンは、クリスマスに間に合うようトニーの家に向かう。眠気で限界が来たトニーを、家まで送り届けたのはドンだった。ドンはトニーを降ろして自宅に戻り、執事を帰らせる。トニーは家族や親戚とクリスマスパーティを楽しむ。「ニガーはどうした」と親戚に聞かれたトニーは、にガーはよせ、とたしなめる。黒人差別をしていた夫の変わりようにドロレスは驚く。盛り上がるトニーの家に追加の客がやってくる。その後ろには、ワインを手にしたドンがいた。トニーはドンを歓迎し、二人は抱き合う。ドロレスもドンにハグをし、手紙の礼をする。ドンがトニーの手紙の手引きをしていることに、彼女は気づいていたのだ。始めは黒人の登場にとまどった親戚たちだったが、すぐに彼の席を用意するよう動き出し、彼を歓待するのだった。

実話に基づく作品で、胸のすく気持ちのよい作品だった。人種差別に白人が立ち向かうという紋切り型の作品になりそうなところ、本作の主人公は、金持ちの帽子を隠して紛失したように見せかけ、それを取り返したふりをして金持ちの歓心を買ったりするような、横暴で独善的な男として描かれていることで、正義漢が差別と闘うというステレオタイプとは一線を画していた。

【5段階評価】5

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