評価5の映画

2021年2月13日 (土)

(2328) ライフ・イズ・ビューティフル

【監督】ロベルト・ベニーニ
【出演】ロベルト・ベニーニ、ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジョ・カンタリーニ
【制作】1997年、イタリア

ドイツ軍によるユダヤ人迫害に遭ったイタリア人の家族の運命を描いた作品。

ユダヤ系イタリア人のグイド(ロベルト・ベニーニ)は、偶然出会った小学校教師のドーラ(ニコレッタ・ブラスキ)に一目惚れ。彼女と駆け落ちして夫婦となり、息子のジョズエ(ジョルジョ・カンタリーニ)を設ける。家族で楽しく暮らす三人だったが、軍によるユダヤ人弾圧が始まり、ある日、グイドはジョズエとともにユダヤ人収容所に送り込まれてしまう。ドーラも自ら収容所に入るが、男女は別々にされてしまう。グイドは収容所生活を不安がる息子に、これはゲームで、1,000点取れば戦車に乗って家に帰れると嘘をつく。収容所の子ども達はシャワーと称してガス室に送り込まれ、殺されてしまうが、シャワー嫌いのジョズエは運よく難を逃れ、隠れて宿舎で暮らし続ける。グイドは施設内の放送設備を使ってドーラに話しかけたりして、自分たちが生きていることを伝える。やがてドイツの敗戦が濃厚となり、収容所からドイツ軍が撤退を始める。グイドはジョズエを道路脇のボックスの中に隠れさせ、誰もいなくなるまで出るな、そうすれば一等になれると言い残してドーラを探しに行く。しかし、ドイツ兵に見つかってしまい、マシンガンを持ったドイツ兵に連れ戻される。ジョズエが隠れているボックスの前に来たグイドは、穴からこちらを見つめているジョズエに満面の笑みでウインクをすると、おどけた仕草で行進。それを見たジョズエは笑みを浮かべる。しかしドイツ兵はグイドはひとけのない建物の影に連れて行き、容赦なくマシンガンを響かせるのだった。
やがて収容所からドイツ兵の一団は去り、残されたユダヤ人たちもぞろぞろと施設から出て行く。一人になったジョズエがボックスから外に出ると、建物の影から戦車の走行音が聞こえてくる。ジョズエはご褒美だ、と喜ぶ。戦車に乗っている兵士は英語でジョズエに話しかけると、ジョズエを戦車の上に招く。グイドの言った通りのご褒美にご満悦のジョズエは、戦車の上から母親を見つけ、戦車から降ろしてもらう。ジョズエは母親に勝ったよ、と言って抱きつき、ドーラと喜びを分かち合うのだった。

序盤は底抜けに明るいグイドによる不条理喜劇のような展開が続き、正直さっぱり面白くないのだが、収容所に入れられてからはグイドの明るく振る舞う姿が痛々しく胸を打つ。グイドの振る舞いがどれだけ明るく、チャップリン映画のように喜劇的でも、ユダヤ人迫害の重苦しさをかき消すことは全くなく、この先に訪れるであろう悲劇が、どうかグイド一家には起こらないでほしいと観客は願うことになる。その思いもむなしく、多くのユダヤ人が助かったにもかかわらず、ジョズエを救い、ドーラを探そうと奔走したグイドは、全くもって理不尽な、必然性のない最期を迎える。そしてジョズエとドーラが無邪気に喜び合う輪の中にグイドがいないことが、そしてグイドが作品を通じて見せていた底抜けに明るい笑顔が、最後の最後、観客の胸に重く重く響く。これは、愛する息子を生かすために奮闘した、父親の物語だったのだ。これにはやられた。序盤のスラップスティックコメディも、この余韻のために必要だったのだ、と気づかされた。
グイド役で監督のロベルト・ベニーニは、本作でアカデミー賞主演男優賞を受賞している。

【5段階評価】5

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2021年2月 7日 (日)

(2322) 孤狼の血

【監督】白石和彌
【出演】役所広司、松坂桃李、真木よう子、江口洋介、石橋蓮司、竹野内豊、滝藤賢一、ピエール瀧、伊吹吾郎
【制作】2018年、日本

広島の暴力団組織に立ち向かう刑事の奮闘を描いたサスペンス作品。柚月裕子の同名小説が原作。

広島大学出身の若手刑事、日岡秀一(松坂桃李)は、呉原東署の刑事、大上章吾(役所広司)と組むことになる。大上は暴力班捜査係でありながら、暴力団関係者から賄賂を受け取り、証拠を掴むためなら放火や家屋侵入などの強引な捜査をする男。日岡は実は、県警の監察官、嵯峨大輔(滝藤賢一)から、大上の内偵のために送り込まれていた。日岡は大上の彼の傍若無人な性格と捜査の仕方にあきれ、彼が暴力団の尾谷組と癒着しており、かつての暴力団抗争で、尾谷組に敵対する五十子会(いらこかい)の金村安則(黒石高大)が殺された事件の犯人だと確信する。
大上は、尾谷組に抗争を仕掛けようとする加古村組による、呉原金融社員、上早稲(うえさわ)二郎(駿河太郎)殺害の証拠を強引な捜査で探し、離島で遺体を発見。加古村組と尾谷組の抗争を防ごうとするが、大上の不正のネタを追う新聞記者(中村獅童)が署に現れ、署長の毛利(瀧川英次)は大上に自宅謹慎を言い渡す。尾谷組は大上の謹慎中に加古村組幹部を襲撃。大上は、加古村組の上部組織の五十子会の会長、五十子正平(石橋蓮司)と、尾谷組の一ノ瀬守孝(江口洋介)の双方に手打ちをするよう頼み込むがうまく行かず、大上は姿を消してしまう。日岡は、暴力団抗争を必死で制止しようとする大上に、いつしか畏敬の念を抱くようになっていた。
日岡は、クラブのママ高木里佳子(真木よう子)から、大上に託されたというスクラップブックを渡される。それは、警察上層部と暴力団との癒着の記録だった。大上はこれを盾に自分の身を守りながら、暴力団抗争を防ごうと奮闘していたのだった。里佳子は、大上に疑いがかかっている金村安則殺害の犯人は自分であり、身ごもっていた自分が刑務所送りにならないよう、大上がかばってくれたことを日岡に伝える。しかし大上は溺死体で発見される。胃からはブタの糞が検出された。日岡は、五十子組の息のかかった養豚場で、大上が使っていたライターを発見。大上が五十子組に拷問されて死んだと確信する。帰宅した日岡は、監察官への報告書に、いつの間にか大上が、辛辣だが心のこもった添削を入れていることに気づく。大上の大きな愛情を知り、日岡は嗚咽を漏らす。日岡は、一ノ瀬らを手引きしてパーティに出席中の五十子を殺害させると、一ノ瀬を裏切り、一ノ瀬を現行犯逮捕する。強引な方法で暴力団を一網打尽にした日岡は、大上のような刑事になることを決意するのだった。

傑作サスペンス小説を重厚な映画に仕上げた素晴らしい作品。オープニングでいきなりブタの排泄映像から、糞を口にねじ込み、指を切断するというリンチの過激映像。しかし、ただ過激なだけではなく、終盤の大上失踪の真相に関わる重要な伏線になっている。大上による暴力団幹部殺し、大上の日記の内容、といった大きな謎が物語の柱となり、やがて大上の刑事としての生き様が明らかになる。映像が本格的なだけではなく、サスペンスとして純粋によくできている。
俳優陣も豪華で、過激なシーンを交えながら、複数の暴力団の抗争や大上刑事の豪腕ぶりと壮絶な最期な最後が描かれ、見応えがある。次回作にも期待したい。
ちなみに、タイトルに「狼」の文字があり、役所広司演じる主人公の名は「大上」。「おおかみ」との掛詞だったのだろうか。

【5段階評価】5

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2021年2月 5日 (金)

(2319) メジャーリーグ

【監督】デビッド・S・ウォード
【出演】トム・ベレンジャー、レネ・ルッソ、チャーリー・シーン、ジェームズ・ギャモン、ボブ・ユッカー
【制作】1989年、アメリカ

弱小野球チームの復活劇を描いたスポーツコメディ。

34年間Bクラスのプロ野球チーム、クリーブランド・インディアンス。夫の死によりオーナーになったレイチェル・フェルプス(マーガレット・ホイットン)は、チームを最下位にしてマイアミに移転することを狙い、設備のメンテナンスをおろそかにしたり移動手段の飛行機をおんぼろにするなどの妨害工作を図る。チームには少年院上がりのノーコンピッチャー、リッキー・ボーン(チャーリー・シーン)や、膝の故障を抱えたベテランキャッチャー、ジェイク・テイラー(トム・ベレンジャー)など、くせのあるメンバーが入ってくるが、チームは連戦連敗。監督に就任したルー・ブラウン(ジェームズ・ギャモン)は、リッキーのノーコンは近眼のせいだと気づき、彼にめがねをかけさせる。徐々にチームの成績は上向き、ついに60勝61敗となる。ブラウン監督はオーナーの野望を知り、成績不振なら全員の首が飛ぶことを選手達に伝える。ジェイク達は優勝するしかないと奮起し、一致団結する。
チームはそこから連戦連勝。ついに首位のヤンキースとの最終決戦となる。試合は2対2で9回を迎え、先攻のヤンキースは二死満塁。絶体絶命のピンチに、監督はリリーフにリッキーを送り、リッキーは過去2回の対決で2ホーマーと分の悪いクルー・ヘイウッド(ピート・ブコビッチ)を相手に、直球勝負で三球三振をもぎ取る。その裏、インディアンスの攻撃は、二死二塁となって打席にはジェイク。ジェイクは予告ホームランのジェスチャーから意表を突くバント。痛めた足を引きずり全力疾走してセーフをもぎ取ると、二塁ランナーの俊足ウィリー・メイズ・ヘイズ(ウェズリー・スナイプス)がホームに突っ込み、サヨナラ勝ち。球場は大興奮に包まれ、ジェイクは観客席にいた恋人のリン(レネ・ルッソ)と熱い口づけをかわし、仲間と喜び合うのだった。

弱小チームが勝利を重ね、最後に優勝するという、本当に分かりやすいベタな筋書きなのだが、それでもやっぱり感動する。リリーフにリッキーが登場し、「ワイルド・シング」が球場に鳴り響く場面では興奮で胸が震えるし、オーナーの企みを知ったチームが一致団結するシーンや、ラストのジェイクの全力疾走も感動的。この手の作品では、序盤の振りとして、仲間同士のいがみ合いを延々と描いたりすることがあるが、本作はそこをあまりジメジメと描かず、チームメイトが基本的に仲良しで爽快だし、個性の違いによるいざこざをコミカルに描いているのがいい。唯一、身の安全を優先して消極的なプレイに終始するロジャー・ドーン(コービン・バーンセン)とジェイクとのやりとりは若干シリアスで、ロジャーの妻スザンヌがリッキーと浮気をともにしたことでロジャーとリッキーの関係が悪化するという一幕もあるのだが、これなんかは、クライマックスでロジャーとリッキーが信頼関係を取り戻すという展開のために必要な筋書きだったとしても、もうちょっといい別のエピソードにできなかったのかという気はした。
ちなみに、トム・ベレンジャーの野球選手としての動きは、残念ながらプロのものとは思えなかったが、チャーリー・シーンは野球経験者だけあって投球シーンはさまになっていた。

【5段階評価】5

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2021年1月31日 (日)

(2314) レ・ミゼラブル

【監督】トム・フーパー
【出演】ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アマンダ・サイフリッド、アン・ハサウェイ、エディ・レッドメイン
【制作】2012年、イギリス、アメリカ

ビクトル・ユーゴーの小説のミュージカル作品の劇場版。

妹の子のためにパンを盗んで19年も投獄され、看守のジャベール(ラッセル・クロウ)に目を付けられていたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は仮出所の機会を得る。ジャンは食事を提供してくれた教会で、あろうことか金目の物を盗んで逃げて警官に捕まるが、神父はそれは彼にあげたのだと警官に言い、ジャンを赦す。ジャンは心を入れ替え、時を経て立派な市長となると、我が子を養うために娼婦に堕ちてしまったファンティーヌ(アン・ハサウェイ)と出会い、彼女の子コゼット(イザベル・アレン)を救うことを使命と感じ、あくどい宿屋で働かされていた彼女を救い出すと、彼女とともに密かに生きる道を選ぶ。警察署長となったジャベールは市長の正体がジャンだと気づき、彼を逮捕することを心に誓う。
9年が経ち、美しく成長したコゼット(アマンダ・サイフリッド)は、革命の士マリウス・ポンメルシー(エディ・レッドメイン)と出会い、互いに惹かれ合う。ジャンは二人の恋を知り、一度はコゼットを失うことを恐れるが、若い二人を守ることを決意。マリウスのいる革命軍に身を投じる。ジャンは、革命軍に潜入して捕まったジャベールを見つけ、あなたに恨みはないと言って彼を密かに逃がす。革命軍は警察の総攻撃を受け、マリウスも負傷して意識を失うが、ジャンは下水道を通って必死に彼を救出。ジャベールはマリウスを抱えたジャンを発見するが、彼を逮捕することができず、苦悩の末、投身自殺する。回復したマリウスはコゼットと結婚することになるが、ジャンは自分の過去が暴かれればコゼットを不幸にするとマリウスに告げ、コゼットに黙って旅立つ。しかし、マリウスは自分の命を救出したのがジャンだと知り、ジャンのいる修道院にコゼットを連れて行く。コゼットはジャンに一緒に生きてほしいと伝えるが、その言葉を聞きながら、ジャンはファンティーヌに導かれ、あの世へと旅出つ。フランスは明日の希望に満ちた人々で埋め尽くされるのだった。

ミュージカルを完全映画化したことが売りの本作。スーザン・ボイルの歌で有名になった「夢やぶれて」も登場する。ほぼ全編にわたって歌い続けており、素のセリフが少ない。ミュージカル映画の中でも異色だろう。名だたる声優が自分で、しかもアフレコでも事前録音でもなく撮影現場で歌っているというのは驚き。ヒュー・ジャックマンやアン・ハサウェイってこんなに歌がうまいの、とびっくりした。
ストーリーも重厚で見応えがあり、「レ・ミゼラブル」を知らないという人は、傑作文学作品のあらすじを知ることができるという意味でも、観る価値はあるだろう。

【5段階評価】5

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2021年1月12日 (火)

(2295) パラサイト 半地下の家族

【監督】ポン・ジュノ
【出演】ソン・ガンホ、チェ・ウシク、チャン・ヘジン、パク・ソダム、チョ・ヨジョン、イ・ジョンウン
【制作】2019年、韓国

裕福な家族の暮らす豪邸に寄生した貧乏な一家の運命を描いた作品。第92回アカデミー賞作品賞受賞作品。

低所得層が住む半地下の家に暮らすキム一家。息子のギウ(チェ・ウシク)は大学生の友人ミニョク(パク・ソジュン)から、IT長者パク・ドンイク(イ・ソンギュン)の高2の娘ダヘ(チョン・ジョソ)の家庭教師をしてほしいと頼まれる。ダヘの母親ヨンギョ(チョ・ヨジョン)が、幼い息子ダソン(チョン・ヒョンジュン)の絵の先生を探していると聞いたギウは、家族であることを隠して妹のギジョン(パク・ソダム)を絵の先生に据える。帰宅したドンイクは、おかかえの運転手にギジョンを送るよう命じる。ギジョンは車の中でこっそり自分のパンティを後部座席に脱ぎ捨て、ドンイクが運転手を首にするようしむけ、運転手の座に父親のギテク(ソン・ガンホ)をつかせる。キム一家はさらに計画を練り、長年家政婦をしているムングァン(イ・ジョンウン)が桃アレルギーであることを利用して、彼女が結核患者だとヨンギョに信じ込ませ、首になったムングァンの後任として、母親チュンスク(チャン・ヘジン)が家政婦になる。こうしてキム家の四人はまんまと豪邸への寄生に成功する。しかし唯一、ダソンは、四人から同じ匂いがすると言ってギテクを慌てさせる。
パク一家が、ダソンの誕生祝いのため泊まりのキャンプ旅行に出かけたのを機に、キム家は四人揃って豪邸で酒盛りをする。ところがそこにムングァンが訪ねてきて呼び鈴を鳴らし続ける。インターホンに出たチュンスクに、ムングァンは忘れ物をしたから家に入れてほしいと言ってくる。チュンスクが仕方なくムングァンを招き入れると、ムングァンは食料庫に向かう。そこにはなんと秘密の地下室への通路があった。ムングァンはパク家に内緒で、借金取りに追われている自分の夫オ・グンセ(パク・ミョンフン)を地下室にかくまっていたのだ。それを知ったチュンスクは彼らを警察に突き出そうとするが、その様子を隠れて聞いていたギウたちが階段を踏み外してムングァンの前に姿を現してしまい、彼らが家族であることがムングァンにばれ、さらにその様子を動画に撮られてしまう。形勢は逆転し、ムングァンはグンセとともにリビングでくつろぎ、キム一家に両手を挙げさせて自由を奪うが、隙を突いてキム家がムングァンとグンセに飛びかかり、リビングで乱闘となる。そこに電話がかかってくる。パク家が大雨のためにキャンプができなくなり、帰って来るというのだ。キム家はムングァンとグンセを地下室に閉じ込める。チュンスクは階段を上がってこようとするムングァンを蹴落とし、ムングァンは頭を強打して気を失ってしまう。チュンスク以外の三人は何とか豪邸を脱出。大雨の中、家に戻るが、家の中には下水が流れ込んでおり、彼らは体育館で一夜を過ごす。体育館の中でこれからどうするのかギウに尋ねられたギテクは、無計画が一番いいんだと話す。ギウは無謀な計画を立てたことを謝罪する。
嵐が去り、パク家はダソンを祝うホームパーティを開くことにし、ギウとギジョンも招待される。ギテクの運転する車でパーティの買い出しに出たヨンギョは、車内でギテクの体臭に鼻をつまみ、思わず窓を開ける。昨晩大雨の中で必死だったギテクの顔からは笑顔が消えていた。
パク家に多くの客が招待され、庭でパーティが盛り上がる中、ギウは恋仲となったダヘの部屋で彼女との口づけを終えると、ミニョクからもらった観賞用の岩石を持ってムングァンとグンセのいる地下室に向かう。ところが待ち伏せしていたグンセに襲われ、慌てて逃げた背後からグンセに岩石で殴られてしまう。正気を失ったグンセは、包丁を持ってパーティ会場の中庭に現れ、バースデーケーキをダソンに渡そうとしていたギジョンに包丁を突き立てる。幼い頃にグンセの姿を見て失神したことのあるダソンは、同じグンセの姿に再び失神。ギジョンを刺したグンセは、今度はチュンスクに襲いかかる。パニック状態となった客は逃げ出し、ドンイクは息子を病院に連れて行くため、ギテクから車の鍵を受け取ろうとするが、ギテクの投げ渡そうとした鍵は地面に落ち、そこにもみ合うグンセとチュンスクが倒れ込む。包丁を振りかざすグンセの腹部に、チュンスクがバーベキューの串を突き刺し、グンセは鍵の上に倒れる。ドンイクはグンセを押しのけて鍵を手にするが、そのときグンセの体臭に顔をしかめ、同時に、何かに気づいたような表情を浮かべる。その顔に「これはギテクと同じ匂いだ」と書かれていると思ったのか、ギテクは突如、落ちていた包丁を手にすると、そのままドンイクの胸に包丁を突き立て、姿を消す。事件の結果、ギジョンとグンセ、ドンイクが命を落とし、ギウは脳手術を受けて何とか生存。ギウとチュンスクは執行猶予付きの有罪判決を受けるが、ギテクは行方不明となる。ギテクはグンセのいた地下室に潜んでいた。彼はすでに亡くなっていたムングァンを家主不在の間に庭に埋葬し、その後はモールス信号で息子にメッセージを送り続けていた。ギウはある日、それに気づき、金を稼いで豪邸を買い、父親に地下室から出てきてもらうことを計画立てるのだった。

アジア初のアカデミー賞作品賞受賞作品ということで、日本でも相当話題になった本作。クライムサスペンス風の前半から、後半の惨劇のシーンまで、どこか浮世離れしたコミカルな雰囲気を帯びながら、韓国の貧富の差という現実を描き出している。中だるみのないハイテンポな展開が小気味よく、シナリオもよく練られている。匂いが一つの鍵になっており、クライマックスの惨劇のシーンで、言葉を使わず表情やしぐさだけで匂いにまつわるやりとりを描く演出は見事。人によって解釈が異なるような含みがあり、繰り返し観て新たな発見があるようにもなっている。評判通りの名作だった。

【5段階評価】5

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2021年1月 3日 (日)

(2286) レヴェナント: 蘇えりし者

【監督】アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
【出演】レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、フォレスト・グッドラック、ドーナル・グリーソン
【制作】2015年、アメリカ

山中で熊に襲われ死にかかった男の復活劇を描いた作品。実話に基づいている。

1823年。アメリカ人の毛皮狙いのハンター集団が、先住民のアリカラ族に襲われ、逃走。ガイド役のヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)は、船で逃げるのは危険だからと山中の行進を選択。ところが集団が休憩中、一人で森を見回っていたグラスは、突然子連れのグリズリーに襲われ、何とか返り討ちにしたものの瀕死の重傷を負う。医術の心得のある隊長ヘンリー(ドーナル・グリーソン)が応急処置として傷を縫い、タンカで彼を運ぼうとするものの、険しい雪山の行進はままならず、グラスを毛嫌いしていたフィッツジェラルド(トム・ハーディ)は、苦しむだけだし全員が危険だからここでグラスを殺した方がいいと意見。ヘンリーは、グラスを置いていくが最期を看取ってから埋葬することにし、グラスの息子ホーク(フォレスト・グッドラック)、若いブリジャー(ウィル・ポールター)がその役を買って出、報酬につられたフィッツジェラルドも残ることを決める。
しかしフィッツジェラルドはグラスと二人になると、グラスに早く死ぬよう決断を迫り、グラスの口に布を押し込んで殺そうとする。戻ってきたホークがフィッツジェラルドに銃を突きつけ、大声でブリジャーを呼ぶが、フィッツジェラルドは先住民に気づかれるから叫ぶなと言って、大声をやめないホークをナイフで刺し殺して山中に捨ててしまう。体が動かず声も出せないグラスは、その様子を見ているしかなかった。フィッツジェラルドは先住民が近くにいるとブリジャーに嘘を言い、グラスを放置して先に行ってしまう。ブリジャーはグラスに詫びながらも彼に従うしかなかった。取り残されたグラスは這いつくばりながら動物の死骸の骨髄や草を食べ、驚異的な生命力で生き延びる。途中でポーニー族の男と遭遇し、彼に助けてもらいながら雪山を進むが、その男はフランス人のハンターに馬を奪われ殺されてしまう。グラスはフランス人の野営地から男の馬を奪い返そうとするが、そのとき、フランス人の一人が先住民の若い女性(メラウ・ナケコ)をレイプしているのを見つけ、背後から男を殴りつけると、女性にナイフを託し、馬で逃走する。
一方、フィッツジェラルドは、グラスを埋葬したとヘンリーに嘘の報告をして報酬を得ていた。ところが彼らのキャンプに、フランス人のハンターの一人が、何者かに野営地を襲われたと言って現れる。そのハンターはグラスの水筒を持っていた。ブリジャーはホークが生きていたのかと考えるが、ホーク殺害を隠していたフィッツジェラルドは、生き延びているのはグラスだと確信する。果たして、ヘンリーはグラスを発見する。フィッツジェラルドはヘンリーらが戻る前に山中へ逃走。ヘンリーとグラスはフィッツジェラルドを追い、ヘンリーはフィッツジェラルドに殺されるが、グラスとフィッツジェラルドは血で血を洗う死闘となる。息も絶え絶えの二人のもとに、アリカラ族の一団が現れる。グラスはフィッツジェラルドにとどめを刺さず、運を天に任せる。アリカラ族はフィッツジェラルドの息の根を止めると、グラスには手を出さず去って行く。一団の中には、グラスが助けた若い女がいた。彼女はアリカラ族の酋長が探していた娘のポワカだった。生き延びたグラスは、かつて殺された妻が救済されたように微笑む姿を幻の中に見るのだった。

序盤から映像の迫力がすさまじい。先住民とハンターの肉弾戦が巧みなカメラワークで映像化されている。続いて、グラスと熊との死闘も、どうやって撮影したのか全く分からないほどリアル。アリカラ族から逃れるため川を流されたり、馬もろとも崖下に落下したり、とにかく痛々しいシーンが生々しく描き出されている。息を飲む展開とはこのこと。クライマックスのフィッツジェラルドとの死闘も、斧でフィッツジェラルドの指が飛んだり、細かい演出まで徹底してこだわり抜かれて作られていることがよく分かる。
本作で、有名俳優レオナルド・ディカプリオは初のアカデミー主演男優賞を受賞しているが、本作では実際に極寒の状況で水に入ったり馬の腹の中に入ったりしたそうで、これだけのことをしたら右に出る者はいないだろうと思わせる怪演、文字通り死を賭した演技だった。話としては一人の男のドラマで、ラストシーンでアリカラ族が現れてフィッツジェラルドにとどめをさし、娘を救ったグラスには手を下さないという展開はちょっと見え見えだったが、人と人との戦い、人と厳しい自然との戦いを描いた映像の圧倒的迫力には、満点評価がふさわしいだろう。

【5段階評価】5

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2020年12月27日 (日)

(2279) スカイスクレイパー

【監督】ローソン・マーシャル・サーバー
【出演】ドウェイン・ジョンソン、ネーブ・キャンベル、チン・ハン、ローランド・ムーラー
【制作】2018年、アメリカ、中国

超高層ビルの火災に巻き込まれた家族を救うために奮闘する男の活躍を描いたアクション作品。

元FBIで自爆事故に巻き込まれて左脚の膝から下を失ったウィル・ソーヤー(ドウェイン・ジョンソン)は、転職して、香港の220階建ての超高層ビルのセキュリティ監査を担当することになる。ウィルはビルオーナーのジャオ(チン・ハン)からセキュリティシステムにアクセスする端末を受け取るが、それを強盗に奪われてしまう。強盗集団のボスで元軍人のコーレス・ボータ(ローランド・ムーラー)は、ビルの96階に放火し、ウィルから奪った端末でビル内の消火システムを無効化して火災を拡大させる。ウィルは、妻サラ(ネーブ・キャンベル)と娘ジョージア(マッケンナ・ロバーツ)と息子ヘンリー(ノア・コットレル)が98階に取り残されていることを知り、ビルの横にあったクレーンをよじ登ってビルに飛び移ると、ビル内でちりぢりになって逃げていた家族と合流。エレベータを使ってサラとヘンリーをビルから脱出させることに成功するが、ジョージアが強盗団に追われ、助けようとしたウィルとともに捕まってしまう。ボータは、ジョージアを人質にして、居室に逃げ込んだジャオが持つメモリードライブを持ってくるようウィルに命じる。ウィルは発電装置の中央部にあるコードを切断して居室のロックを解除して中に入り、ジャオから話を聞く。ボータはジャオのビル建設中に、ビル建設を妨害するとジャオを脅して金を巻き上げたが、ジャオは金をトラッキングしてボータの資金洗浄経路の情報を把握し、それをドライブに保管していた。ボータはジャオからドライブを奪うため、ジャオがビルから避難する際には大事なドライブを持ち去るだろうと踏んでビルに放火したのだった。
ウィルとジャオは、パラグライダーでビルから逃走するために屋上で待機しているボータらのもとに向かうが、ジャオがボータらに発砲し、銃撃戦となる。ジャオとウィルは奮闘し、次々と敵を葬り、最後はウィルがボータを突き落とし、ジョージアを助ける。ビルは炎に包まれるが、香港警察と行動をともにしていたサラが、犯人一味の持っていた端末を操作してビルのセキュリティシステムを再起動。ビルの消火システムが作動し、ウィルたちは無事に救助される。ウィルとジョージアはサラとヘンリーに再会。家族で強く抱き合い、周囲の人々が彼らを祝福するのだった。

すっかり大物ハリウッドスターとなったドウェイン・ジョンソンを主役に据えた、本格特撮娯楽アクション。「ダイ・ハード」と「タワーリング・インフェルノ」を混ぜて現代風のギミックを盛り込んだような作品。映像は本格的で展開も嘘くささが少ない。クレーンに立っているウィルがヘリから銃撃されるシーンでは、そりゃないだろと思ったが、そう言えば「ダイ・ハード」でも主役のジョン(ブルース・ウィリス)は犯人と間違われてヘリから銃撃されていた。足元がすくむような映像も大迫力で、マスコミの実況映像を見ながら様子を見守る見物人を味方に付ける辺りも自然な演出だった。
突っ込みどころがあるとすると、まず母親サラ。看護師なのに、敵側の男(ノア・テイラー)を投げ飛ばすわ、武闘派の女性ヒットマン(ハンナ・クィンリバン)と対等に渡り合うわと、強すぎ。また、8Kディスプレイが乱立する屋上での銃撃戦は、ちょっとアイディア倒れで現実味がなかった。正面にいると思わせておいて実はそれは虚像でウィル本人は背後にいたという落ちだが、どうやって自分の映像を出したのよ、と考えるとちょっと無理があった。それよりは、負傷したジャオが映像を操作してボータを混乱させ、その隙にウィルがジョージアを救い、ボータは自滅するみたいな展開のほうがジャオにも見せ場があり、よかったように思う。
とは言え、気持ちよくドキドキハラハラできる娯楽大作。映画館で観ていたら第一声は「面白かったね~」になるのは間違いない作品だろう。

【5段階評価】5

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2020年12月23日 (水)

(2275) ボーダーライン

【監督】ドゥニ・ビルヌーブ
【出演】エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ダニエル・カルーヤ
【制作】2015年、アメリカ

麻薬密輸組織を捜査する人々を描いたアクションサスペンス作品。

誘拐事件を捜査していたFBI捜査官のケイト・メイサー(エミリー・ブラント)は、踏み込んだ家の中で大量の死体を発見。彼女は黒幕となる麻薬組織を捜査するため、国防総省のマット・グレイバー(ジョシュ・ブローリン)のチームに参加する。マットのパートナー、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)とともに、麻薬組織の重要人物ギレルモ(エドガー・アレオラ)をメキシコからアメリカに護送するが、国境手前で渋滞しているところに、麻薬組織の一味が乗っていると思われる車が2台現れる。マットのチームは、多くの一般人の車がいる中で、彼らを銃殺。ケイト自身も、麻薬組織に買収された警官に狙われたため、相手を射殺する。ケイトはマットやアレハンドロのやり方にいらだちを感じる。
マットとアレハンドロはギレルモから、密入国用のトンネルの場所を聞き出し、捜査に向かう。しかし、アレハンドロの目的は私怨を晴らすことにあった。一方のマットは、アレハンドロの協力を得て、麻薬組織に混乱を起こして秩序を取り戻すことを狙っていた。アレハンドロはトンネルを抜けてメキシコに出ると、麻薬密輸に絡んでいる警官シルビオ(マキシミリアーノ・ヘルナンデス)を銃で脅して、組織のボス、マニュエル・ディアス(ベルナルド・サラシーノ)の車を止めさせる。アレハンドロはシルビオを射殺してディアスの足を撃ち、ディアスの車でソノラ・カルテルの麻薬王ファウスト・アラルコン(フリオ・セサール・セディージョ)の屋敷に侵入。ガード係を次々と射殺してアラルコン一家のディナーの場に現れる。アレハンドロは、容赦なくアラルコンの二人の子どもと妻を撃ち殺すと、アラルコンにもとどめを刺す。アレハンドロの妻と娘はアラルコンによって惨殺されていたのだ。
アメリカに戻ったアレハンドロはケイトのもとに現れ、捜査が適法であったという文書に無理矢理サインをさせる。ケイトは帰って行くアレハンドロに銃を向けるが、引き金を引くことはできなかった。メキシコでは、父の死を知らないシルビオの子どもが、母親に見守られてサッカーをしている。どこかでマシンガンの音が鳴り響き、人々は顔を上げるが、何事もなかったかのようにサッカーは続くのだった。

オープニングの死体発見や小屋の爆発、死体が吊り下げられている市街地を走り抜ける捜査車両など、ドキュメンタリー映画のようなシリアスな映像。コミカルな要素は一切なく、麻薬に汚染されたメキシコとアメリカの国境の状況がリアルに描かれている。メキシコの町並みや人々の暮らしの様子も興味深く、なかなか近づくことのできない地区の様子が感じ取れるのも作品の魅力になっている。
アレハンドロがアラルコンの屋敷に侵入するシーンは、警備の甘さにご都合主義を感じたが、女性捜査官の視点で物語を進めたり、名もないメキシコ警官の家族のシーンをメインストーリーに絡めたりと、脚本も巧み。BS12土曜洋画劇場が扱う作品は秀作が多い。

【5段階評価】5

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2020年11月 6日 (金)

(2228) プラダを着た悪魔

【監督】デビッド・フランケル
【出演】アン・ハサウェイ、メリル・ストリープ、エイドリアン・グレニアー、スタンリー・トゥッチ
【制作】2006年、アメリカ

ファッション雑誌社で働く女性の奮闘を描いた作品。

大学を卒業したアンドレア・サックス(アン・ハサウェイ)はジャーナリスト志望。キャリアを積むため、ファッション雑誌「ランウェイ」の出版社への就職を希望し、運よく鬼編集長ミランダ・プリーストリー(メリル・ストリープ)の目に止まり、第二アシスタントとして採用される。第一アシスタント、エミリー(エミリー・ブラント)の蔑視を受け流し、公私混同の無茶な要求を繰り返す傲慢なミランダに振り回されつつも、アンドレアは奮闘。ファッションに興味のない彼女だったが、ミランダの右腕ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)の協力もあり、次第にミランダに認められ、年に一度の重要イベント、パリ・コレ取材のクルーに抜擢される。しかし、仕事に没頭するあまり、恋人のネイト(エイドリアン・グレニアー)との関係にひびが入り、パリでは憧れのイケメン作家クリスチャン・トンプソン(サイモン・ベイカー)と一夜の関係を持つ。
クリスチャンから、ミランダが編集長を降ろされ、ジャクリーヌ・フォレ(ステファニー・ショスタク)が新編集長になるという話を聞いたアンドレアは、ミランダにそれを伝えようとするが、ミランダはナイジェルが就くはずだった要職にジャクリーヌを抜擢するという裏工作に出て、自らの編集長降板を回避。冷徹なミランダを見て、アンドレアはアシスタントをやめる決心が付く。
アンドレアはネイトとよりを戻し、再就職の面接に向かう。面接相手は、「ミランダから直接ファックスが届き、そこには『アンドレアには失望させられた。雇わなかったら大馬鹿者だ』と書いてあった。いい仕事をしたようだ」とアンドレアに告げる。アンドレアは、ミランダが自分を認めてくれたことに驚く。
アンドレアは忙しそうに車に乗り込むミランダを見かける。ミランダはアンドレアを無視するように車に乗り込むが、ふと微笑み、そして厳しい顔でドライバーに車を出すよう指示する。ミランダの車を見送ったアンドレアは、街の雑踏に溶け込んでいくのだった。

どんなに技能があっても他社に偉そうな人間には虫唾が走るので、ミランダはとても好きにはなれない人物だが、このステレオタイプを通り越すほど典型的な鬼上司がいるからこそ、主人公アンドレアの変わるさま、変わらないさまが観る者に感動を与える。主役から脇役まで、隙のない素敵な作品。ファッションに興味がない人でも十分に楽しめる。

【5段階評価】5

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2020年10月15日 (木)

(2206) パッセンジャー

【監督】モルテン・ティルドゥム
【出演】クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・シーン
【制作】2016年、アメリカ

移民を乗せて別の惑星に向かう宇宙船の中で冬眠状態から目覚めた男女の運命を描いたSF作品。

5,000人の移民を乗せて宇宙空間を飛行する宇宙船アバロン号。乗客、乗員は全員冬眠状態で、自動運行をしていた。しかし、巨大な隕石が衝突し、システムエラーにより、一人の冬眠が解けてしまう。起き上がったのは技術者のジム・プレストン(クリス・プラット)。彼は船内で起きているのは自分だけであり、目的地の惑星にはあと90年かかることを知る。人がいると思って近づいたバーテンダーはアンドロイドのアーサー(マイケル・シーン)。酒と食事を好きなだけとり、娯楽施設を堪能したり宇宙服を着て船外遊泳を楽しむジムだったが、孤独に耐えきれず、自殺の一歩手前まで追い込まれる。そんなとき、冬眠中のカプセルの中にオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)という美しく若い女性がいることに気づく。彼はオーロラのインタビュー動画を見つけ、彼女に惹かれていく。そしてついに誘惑に耐えかね、彼女の冬眠カプセルを操作し、彼女を冬眠から目覚めさせてしまう。オーロラはジムが自分を起こしたとは知らず、船内にたった一人のジムと知り合い、二人は恋人同士となる。ジムはアーサーに、自分がオーロラを起こしたことは絶対に言うなと口止めしていたが、恋仲になったジムとオーロラがバーに行ったとき、二人の間に秘密は何もない、とアーサーに話す。ジムは船内の貴金属で作った指輪をサプライズでオーロラにプレゼントするために席を外すが、二人の間に秘密はないと解釈したアーサーは、ジムがオーロラの冬眠カプセルを開けた頃の話をオーロラにしてしまう。それを聞いたオーロラは、ジムに自分の人生を奪われたことにショックを受け、ジムに激しい怒りをぶつける。二人の関係は完全に引き裂かれてしまう。
一方、船内は隕石衝突の影響で、回復できないエラーが頻発するようになり、乗組員のガス(ローレンス・フィッシュバーン)も目覚める。三人は協力して船内の故障の原因を探ろうとするが、ガスは冬眠装置の故障により体内を激しく損傷しており、身につけていた高セキュリティアクセスデバイスをジムに託し、息絶える。ジムとオーロラは協力して船内を探索。隕石が船内を貫通して核融合炉のコンピュータを破壊していることを突き止める。ジムは損傷箇所をスペア部品と取り替えて再起動し、加熱した核融合炉の熱を排出しようとするが、排出口の扉が故障して開かず、熱を排出できない。ジムは宇宙服を着て船外から扉を開け、同時にオーロラが船内のレバーを引くことで熱排出は成功するが、ジムは熱噴射により吹き飛ばされ、命綱が切れて宇宙空間に放り出されてしまう。それに気づいたオーロラは慌てて宇宙服を着て船外に飛び出し、何とかジムを回収し、治療用カプセルにジムを担ぎ込むが、ジムは死亡と診断される。オーロラは蘇生措置を起動し、ジムは蘇る。ジムは医療カプセルが冬眠カプセルの代替になることを発見。オーロラにカプセルで冬眠するよう促すが、オーロラはジムと船内で暮らし続ける道を選ぶ。88年が経ち、宇宙船のクルーたちが冬眠から目覚める。彼らは船内に木がしげり、小屋が作られているようすを目の当たりにするのだった。

アポロ13」や「ゼロ・グラビティ」のような、宇宙空間から地球に生還するというサバイバルではなく、宇宙船の中で生き続けることを余儀なくされた二人の男女が生存を賭けて奮闘し、やがて自分たちの世界を創り上げるという創世記的な作品。なかなか面白い状況設定で、映像も美しく、見応えのある作品だった。未来の衣装や宇宙船のデザインも奇抜さがなく洗練されており、ギミックが豊かで観ていて楽しい。サバイバルできてよかったね、という楽しみ方もできる一方で、オーロラの立場からすると、ジムのしたことを本当に許せるのか、考えさせられる内容でもある。ジムが起きなければ宇宙船ごと5,000人が死亡していたとは言えるが、それは結果論である。少なくともジムが若いタフガイだから成り立つ話ではあるだろう。自分としては、オーロラに蘇生されたジムが記憶を失っていて、オーロラを見て「君は誰だ? 」と尋ね、そこから二人の愛が一から始まる、なんていう終わり方もありだと思った。
全員冬眠しているのに何で照明がついているの、とか、「技術者」が何でも作れるアビリティ使いすぎ、とか、ガスは要するに管理者権限を渡すためだけに出てきたNPCなのね、とか、細かいことは気にしないほうがいい。宇宙ではご都合主義なしには生き抜けないのである。
ハンガー・ゲーム」では絶世の美女というより、どこにでもいるような平凡な少女を演じていたジェニファー・ローレンスの美しさも、本作の大きな魅力になっている。

【5段階評価】5

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