評価5の映画

2020年8月 6日 (木)

(2136) 情婦

【監督】ビリー・ワイルダー
【出演】チャールズ・ロートン、マレーネ・ディートリッヒ、タイロン・パワー、ジョン・ウィリアムス
【制作】1958年、アメリカ

アガサ・クリスティの小説が原作の法廷サスペンス。

退院したばかりの老弁護士、ウィルフレッド・ロバーツ(チャールズ・ロートン)のもとに、レナード・ボール(タイロン・パワー)の弁護の依頼が来る。彼は偶然の出会いから親しくなった未亡人フレンチを殺害した容疑をかけられており、逮捕される。フレンチ夫人は彼に遺産を残すよう遺書を書き換えていた。レナードは無実を主張し、妻が自分のアリバイを証明してくれるとウィルフレッドに説明。ウィルフレッドは彼の弁護を決める。そこにウィルフレッドの妻クリスティーネ(マレーネ・ディートリッヒ)が現れ、彼女はドイツでレナードと結婚したが、それは生活のためで自分には別に夫がおり、レナードを愛してはいない、とウィルフレッドに説明。しかしアリバイは証言するつもりだ、と言って事務所を去る。ウィルフレッドはクリスティーネの意図を図りかねるが、彼女を証言台に上げないことを決意する。
ところが検察側はクリスティーネを証言台に立てる。すると彼女は、レナードは袖に血が付いた状態で帰宅し、女を殺したと言ってアリバイ偽装を自分に依頼したのだ、と証言する。ウィルフレッドは、これまで嘘を重ねてきた人間に質問しても意味がない、と言い捨てるが、レナードは厳しい状況に置かれる。事務所に戻ったウィルフレッドに、謎の女から電話が入り、レナードに有利な証拠があると言ってウィルフレッドを駅に呼び出す。女は名乗らず、クリスティーネが書いたという手紙をウィルフレッドに売りつける。それはクリスティーネがマックスという男に宛てた手紙で、マックスと一緒になるためにレナードを陥れるために偽証するつもりであることが書かれていた。ウィルフレッドはそれを証言台のクリスティーネに突きつける。クリスティーネはウィルフレッドを口汚く罵るが、手紙は自分が書いたことを白状する。レナードは無罪となる。ウィルフレッドはすっきりしないものを感じる。
裁判は終わり、クリスティーネは法廷の外で傍聴人らに嘘つき女呼ばわりされて混乱が起きたため、係員により法廷内に連れ戻される。法廷に残っていたウィルフレッドは、クリスティーネに偽証罪の罪の重さを説明しようとするが、クリスティーネは意に介さない。彼女は本当にレナードを愛しており、彼のために偽証をしたのだった。しかもレナードはフレンチ夫人殺しの真犯人だった。クリスティーネが妻のままレナードのアリバイを証明しようとしても証拠とならないため、彼女は別の夫がいてレナードの妻ではないという立場に立ち、あえてレナードが犯人だという証言をする。そして自らが謎の女に変装してウィルフレッドに自分の書いた手紙を渡し、自分の証言の偽装を暴かせてレナードの無実を勝ち取るという作戦をとっていたのだった。驚愕するウィルフレッドのもとにレナードが現れ、クリスティーネはレナードに抱きつく。しかしレナードには別の若い恋人がいた。クリスティーネは裏切られたのだ。クリスティーネは絶望し、法廷に残っていたナイフでレナードを刺す。レナードは倒れ、クリスティーネは連れ去られる。ウィルフレッドは、クリスティーネを弁護することを決意するのだった。

古い映画なので見るのを若干ためらったが、法廷ものは好きなので観ることにした。素晴らしい法廷サスペンスの一級品だった。古さなど全く関係がない。冒頭のウィルフレッドと看護師プリムソル(エルザ・ランチェスター)との小気味よいやりとりに始まり、テンポよく話が進展。無駄のない人物描写のあと、法廷のやりとりもウィルフレッドが長々としゃべらず、核心を突いた質問を決めて座る姿が気持ちいい。一方で体が悪く医者に止められているのに葉巻や酒をやめないので観客は彼の病状が悪化しないかとヒヤヒヤしながら法廷を見守ることになる。画面に釘付けだ。そしてクライマックスの見事などんでん返し。序盤のクリスティーネの謎の行動。謎の女がどうやってクリスティーネの手紙を持っていたのかのからくり。レナードが妻はいい女優なんだと自慢するシーン。全ての伏線が回収されて謎がスパッと解け、アガサ・クリスティの作品で感じられるカタルシスを存分に味わえる。そして最後にこれまでウィルフレッドに酒もたばこも重労働も駄目と厳しく接していたプリムソルがウィルフレッドの弁護士活動を応援する側に回り、ウィルフレッドが中味をすり替えたココアのボトルを持って「先生ブランデーをお忘れですよ」と話しかけるシーンも、ウィットに富んでいた。
ただ、モノクルの光を反射させて相手の顔に当てて嘘をついていないか確かめるシーンは、結局「見抜けてないんじゃん」という落ちなので、もう少しいい方法がなかったのかな、というのと、ドイツで結婚していたという文書をどうやって作ったのか、本当なのか嘘なのか、嘘だとしたらどうやって偽造したのかはよく分からなかった。とは言え、「好きな古い映画は」と言われたら真っ先に挙げるのでは、と思えるほどの名作だった。

【5段階評価】5

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2020年8月 4日 (火)

(2134) 暁に祈れ

【監督】ジャン=ステファーヌ・ソベール
【出演】ビリー・ムーア、ポンチャノック・マーブグラン、パンヤ・イムアンパイ、ビリー・ムーア
【制作】2017年、アメリカ、イギリス、フランス、中国

麻薬漬けになって刑務所入りしたボクサーが復活する過程を描いた実話に基づく作品。

イギリス人のボクサー、ビリー・ムーア(ジョー・コール)はタイで成り上がろうとするが試合ではぱっとせず、麻薬に浸った生活を送り、警察に逮捕されてしまう。タイ語も分からないまま、彼はタイの刑務所に送り込まれる。刑務所の大部屋では新人のリンチやレイプがはびこり、所内では自殺や殺人が起きたり、看守は鎮静剤を求めると当然のように賄賂を要求するなど地獄のような環境。ビリーは看守の一人に、麻薬と引き換えにイスラム教徒を殴るよう命令され、堕落していく。しかしビリーは所内にボクシングのトレーニング施設があることを知り、購買係をしているレディボーイ(トランスジェンダーの男性)のフェイム(ポンチャノック・マーブグラン)からたばこを融通してもらい、コーチに賄賂として渡してボクシングを始める。紆余曲折がありながらも腕を上げ、プリーチャー所長(ビタヤ・パンスリンガム)から対外試合の選手に指名される。ところが麻薬と酒と体への負担からビリーの体はぼろぼろになっており、ビリーはトイレで血を吐く。これ以上攻撃を受けたら命はないと医者に宣告されるが、囚人のボス、ゲン(パンヤ・イムアンパイ)から借金返済のため試合に出るよう脅され、ビリーは試合に臨む。
対戦は一進一退だったが、ビリーの肘打ちが相手にヒットし、ノックアウト勝ち。勝者となるビリーだったが、その場で血を吐いて倒れ、病院に担ぎ込まれる。目が覚めたビリーは、看護師に付き添われてトイレに行くが、トイレを出ると看護師はいない。足に鎖は付けられていたが病院のパジャマで見えないため、ビリーはそのまま病院を抜け出てしまう。街をさまようビリーは廃線のレールの上にたたずみ、病院に戻る。脱走の道ではなく、刑期を終える道を選んだのだった。ビリーは2010年に出所し、麻薬を立つ努力を続けるのだった。

オープニングは、試合直前のボクシング選手が入念なマッサージを受けるシーン。いかにも映画らしい映像。続く試合のシーンは、どうやって撮影しているのかと思うぐらい、選手の目線と俯瞰の目線が入れ替わり、選手の生々しい息づかいが耳元で聞こえるような迫力。この選手が、麻薬を吸っているところを警察に踏み込まれ、刑務所に送り込まれる。男の名前も国籍も説明がない。刑務所で名を聞かれて答えるシーンで、ようやく主人公の名前が分かる。映画には説明のためのシーンが避けがたくあり、そこが事件が起きる前の推理小説にも似た退屈さがあるのだが、本作にそれはない。ナレーションもなく、状況だけを描くという手法が、作品に圧倒的なリアリティを与えている。説明不足で話が進むのもまた、退屈さの原因になりがちだが、本作は映像のリアリティがそれを補ってあまりある。その後も、実際の刑務所を使い、元囚人を囚人役に当てて刑務所の状況を描写しているらしく、過酷な刑務所の状況をリアリティたっぷりに描いている。
恥ずかしながら本作が日本で公開されていることを知らなかったが、この名作を放映したSTAR CHANNEL 1に感謝したい。
ちなみにラストシーンで面会に現れるビリー・ムーアの父親は、ビリー・ムーア本人が演じていた。

【5段階評価】5

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2020年7月11日 (土)

(2115) 特捜部Q キジ殺し

【監督】ミケル・ノルガード
【出演】ニコライ・リー・コス、ファレス・ファレス、ダニカ・クルチッチ、ピルウ・アスベック、サラ・ソフィー・ボウスニーナ
【制作】2014年、デンマーク、ドイツ、スウェーデン

未解決事件を追う刑事が、解決済みとなった殺人事件の再捜査に挑む。「特捜部Q 檻の中の女」の続編。

コペンハーゲン警察署で未解決事件を扱う「特捜部Q」に所属するカール(ニコライ・リー・コス)は、見知らぬ老人から解決済みの事件の再捜査を懇願される。カールは無視するが、その老人は浴槽で自殺。老人はヤーアンスンという元警部で、20年前、彼の息子トーマスと娘マリーが通っていた寄宿学校で、娘がレイプされ殺害、息子も同時に同じ部屋で殺されていた。カールは相棒のアサド(ファレス・ファレス)と新任の秘書ローセ(ヨハン・ルイズ・シュミット)とともに事件を再捜査する。レイプ殺人の犯人ビャーネは、罪の重さの割になぜか3年で出所していた。彼を担当したクルム弁護士は金持ちしか相手にしないはずなのに、唯一、貧乏なビャーネだけが例外だった。
ヤーアンスンの集めた資料には、当時の寄宿学校の女生徒キアステン(サラ・ソフィー・ボウスニーナ)の写真があった。カールは当時の通報電話から、彼女が殺人事件の通報者であることを知る。キアステン、通称キミーは寄宿学校時代、金持ちの男子生徒ディトリウ(マルコ・リソー)と付き合っていた。彼らは大麻や酒をやって、ビャーネやウルレクとつるんでいた。ホテル経営者として出世したディトリウ(ピルウ・アスベック)はウルレク(ダビド・デンシック)との交遊を続けており、ディトリウは妻の浮気相手を調べ上げ、ウルレクと一緒に浮気相手に殴るケルの暴行を加えるという行為をする間柄だった。カールはキミーを追うが、ディトリウもまた、オールベク(ピーター・クリストファーセン)という男を使ってキミーを探していた。オールベクはキミーを発見して殺害しようとするが、キミーは反撃して脱走。カールとアサドは、知り合いの家に隠れていたキミーを発見するが、キミーはカールを鉄パイプで殴りつけ、逃げてしまう。
キミーは愛するディトリウのために、ディトリウが学校から追い出したいという物理の先生に対してレイプ騒動を起こすほどであった。キミーはやがて、ディトリウの子を身ごもるが、それを聞いたディトリウはキミーの腹に触れることもせず、ヤーアンソンの娘マリーのレイプにキミーを誘う。ディトリウ、ウルレク、ビャーネ、キミーは、覆面姿でマリーとトーマスの部屋に押し入り、マリーをレイプしようとするが、トーマスがウルレクの覆面を取ってしまったため、ウルレクはトーマスを刺し殺し、耐えられなくなったキミーが部屋を飛び出して通報電話を入れたものの、ディトリウに見つかってしまったのだった。キミーはディトリウらを見限るが、ディトリウはキミーの部屋に侵入して腹を殴り、キミーを流産させてしまったのだった。キミーは死産した子をミイラ状態にしたまま持ち歩いていた。
ディトリウが自分を殺そうとしていることを知ったキミーは、ディトリウの屋敷に侵入するが、警察に逮捕される。カールは、キミーの供述によりディトリウを追い詰められると確信するが、キミーはディトリウに醜悪な脅迫文を送り続けていたことが判明し、キミーを被害者としてディトリウを告発するのは困難となる。カールはアサドを連れてウルレクの家に侵入し、事件の証拠を掴もうとするが、門番に麻酔銃を撃たれ、捕らえられてしまう。そこに、脱走したキミーが現れ、門番を撲殺すると、やってきたディトリウを捕らえ、ガソリンをかける。カールとアサドはライフルを撃ってくるウルレクを射殺し、キミーのもとに向かうが、キミーはディトリウに火を放ち、自らも焼死する。20年前の事件は解決し、カールは忙しさのあまり忘れてしまった息子との食事の約束を果たすため、息子の部屋をノックするのだった。

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」のスタッフが映画化という触れ込み。作品は極めてハードで、レイプシーンや殺害シーンは真に迫る。丁寧に捜査の過程が描かれており、じっくりと鑑賞できる素晴らしい作品だった。「クリムゾン・リバー」とも煮た雰囲気を持つ。「あるいは裏切りという名の犬」なんかもそうだったが、欧州の非英語圏の刑事物には、渋くて見応えのある当たり作品がある。
ただ、「特捜部Q」というタイトルが、なんだか「探偵学園Q」みたいなコミカルな響きがあって今ひとつかっこよくないのがもったいないのだった。

【5段階評価】5

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2020年6月30日 (火)

(2108) グランド・イリュージョン 見破られたトリック

【監督】ジョン・M・チュウ
【出演】ジェシー・アイゼンバーグ、マーク・ラファロ、リジー・キャプラン、ウディ・ハレルソン、ダニエル・ラドクリフ、モーガン・フリーマン
【制作】2016年、アメリカ

IT企業の陰謀に巻き込まれた4人組のマジシャンが奮闘するようすを描いたエンターテインメント・サスペンスとでも呼ぶべき作品。「グランド・イリュージョン」の続編。

フォー・ホースメンの一人、ダニエル(ジェシー・アイゼンバーグ)らは、彼らのマネージャー的存在、FBI捜査官のディラン(マーク・ラファロ)から、IT企業オクタ社がユーザーのプライバシーを悪用して金儲けを企んでいることを暴くと告げられる。新しく加わったルーラ(リジー・キャプラン)、メリット・マッキニー(ウディ・ハレルソン)、ジャック・ワイルダー(デイブ・フランコ)とともに、オクタ社の宣伝イベントに潜入。イベントを乗っ取って意気揚々と演説を始めようとしたところ、会場が暗転し、死んだとされたジャックが生きていること、黒幕がFBIのディランであることがステージで暴露されてしまう。四人は慌ててあらかじめ用意していた屋上のシューターから脱出するが、降りた場所はなぜかマカオだった。出迎えたのは、メリットの双子の弟で、互いに敵対しているチェイス(ウディ・ハレルソン、二役)。四人は死んだはずのウォルター(ダニエル・ラドクリフ)。彼は影の株主となってオクタ社の実権を支配していた。ウォルターは、四人の準備したシューターとは別のシューターを仕掛け、そこに催眠装置を仕掛けて、彼らを眠らせたままマカオに運んだのだった。ウォルターは四人に、世界中のコンピュータに侵入可能な電子チップの盗み取るよう脅迫。ダニエルは了承し、マカオのマジックショップに出向き、道具を揃えてチップが保管された建物に潜入。見事にチップを盗み出す。
四人の行方を探るため、ディランは服役中のサディアス・ブラッドリーを訪ねる。サディアスはディランの父親でマジシャンのライオネル・シュライク(リチャード・ラング)を死に追いやった因縁の相手。サディアスは自分を刑務所から出すよう条件を出し、ディランはサディアスを連れてマカオに向かう。ダニエルの入ったマジックショップでディランは手がかりを得るが、サディアスは姿を消す。手がかりをもとに、ディアスはチップを盗んだダニエルを発見。そこにウォルターが手下を連れて現れる。ディアスはダニエルからチップを奪った振りをしてダニエルを逃がし、ウォルター一味を相手に大立ち回りを演じるが、捕らえられてしまう。ウォルターはディランが憎む保険会社の支配者アーサー(マイケル・ケイン)の非嫡出子だった。アーサーはディランを、父親が死んだ脱出魔術用の金庫にディランを押し込み、川に沈める。ディランはサディアスの残した言葉を手がかりに扉を開けることに成功するが、水底で力尽きる。そこにダニエルが現れ、ディランを助け出す。再び結集した五人は、アーサーとウォルターに逆襲するため、彼らを大晦日のロンドンで白日のもとにさらす計画を立て、予告動画を公開。ダニエル、ルーラ、ジャックがロンドンでゲリラ公演を行い、ショーが開幕するが、ウォルターはチェイスをメリットのもとに送り込んで計画の行き先を読み、フォー・ホースメンとディランを捕まえる。ウォルターとアーサーは護送車で5人を運搬して自家用ジェットに乗せ、チップを回収。チェイスは5人を飛行機から落とせ、と指示し、5人は次々と飛行機から突き落とされる。アーサーとウォルターが高級シャンペンで乾杯するが、なぜかシャンペンはおかしな味がし、黄金色の液体はあっという間に黒変。すると、飛行機の外に、ニヤニヤしたホースメンの顔が現れる。飛行機は飛んでおらず、テムズ川に設置されたステージ上にあった。飛行機の囲いをとると、外には大勢の見物客がアーサーとウォルターを取り巻いていた。あっけに取られる二人を目の前にして、ダニエルらは、彼らの護送車の運転手をすり替え、偽の飛行機に乗せて巨大ファンとジャッキで飛行機が飛んだように見せかけ、あらかじめ催眠術をかけたチェイスに外に放り出すよう言わせ、その様子を世界中に放映していたという種明かしをする。アーサーとウォルターは逮捕され、5人は消え去る。
マカオのマジックショップの老いた女店主(ツァイ・チン)がマジック界の大物で、彼らは彼女の屋敷に招かれる。そこにはサディアスもいた。彼はディランの父親を死に追いやったのではなく、実はパートナーだった。表向きは敵対しているという演出で、ディランのマジックショーを盛り上げていたのだ。5人はサディアスから話を聞きたがるが、サディアスは部屋から立ち去るのだった。

ホースメンがイベントのスタッフになりすまして会場に潜入したり、厳しいセキュリティをかいくぐってチップを盗み出すシーンは、マジックや早着替えなどのテクニックをふんだんに使い、非常に見応えがある。ストーリーは若干ややこしく、前作の理解があったほうが楽しめるが、ストロボを使って雨を止めたり、といった魔術の種明かしも随所に盛り込みながら展開する映像は、ストーリー抜きに面白い。善人役が多いモーガン・フリーマンが前作では悪役だったが、本作では最後に善人役になるという落ちがついていた。次作も予感させるエンディングだった。ダニエル・ラドクリフが小ずるい悪役を演じるのも面白かった。こういう作品を無料で観られるのは、とても得した気分だ。

【5段階評価】5

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2020年3月19日 (木)

(2035) シンドラーのリスト

【監督】スティーブン・スピルバーグ
【出演】リーアム・ニーソン、ベン・キングズレー、レイフ・ファインズ、エンベス・デイビッツ
【制作】1993年、アメリカ

第二次世界大戦中、多くのユダヤ人をホロコーストから救った男の軌跡を追った、実話に基づく作品。第66回アカデミー賞作品賞受賞作品。

戦争の特需に乗って一儲けしようと考えたオスカー・シンドラー(リーアム・ニーソン)は、賃金の安いユダヤ人を雇うことを思いつき、会計士のイザック・シュターン(ベン・キングズレー)を雇って工場を運営する。ドイツ軍がユダヤ人を虐殺していく中、シンドラーは賄賂を使いながら自分の工場の従業員を収容所から取り返す。はじめは金儲けのためにやっていたシンドラーだったが、理由もなくユダヤ人を殺害する残虐なアーモン・ゲート少尉(レイフ・ファインズ)のやり方を見ている中で、ある決断を下す。それは、儲けた金で収容所のユダヤ人を買い取り、自分の工場で働かせるというものだった。シンドラーは、イザックに1,000人以上のユダヤ人リストを作らせ、工場に迎え入れる。やがて戦争は終わり、ユダヤ人は解放される。今ではシンドラーのユダヤ人と子孫は6,000人にも及ぶのだった。

問答無用に撃たれたユダヤ人が脳天から血を吹き出したり、健康状態を見るため素っ裸で走らされたり、という生々しい描写は壮絶。白黒だからなのか、男性器もはっきり映っていたりするし、女性の裸体もスピルバーグ作品とは思えないほど多い。ドキュメンタリー風の描き方をすることで、作品に強烈な迫真性を与えることに成功している。
戦争が終わり、ナチス党員として逃亡生活を余儀なくされることとなるシンドラーが、ユダヤ人の従業員たちと別れるラスト近くのシーン。シンドラーはイザックから、シンドラーの善行を説明した従業員全員の署名付きの文書とともに、工員が急ごしらえで作った指輪をプレゼントされる。それを受け取ったシンドラーは、イザックの手を取り、もっと多く救えたのに、この車を売れば10人を、このバッジで2人を救えたのに、と嘆いて嗚咽する。このシーンを見るまでは、いい映画だけど評価は4かなと考えていたのだが、ここで評価は5になった。この作品は前にも観たことがあり、一人だけ赤い服を着た少女のシーンや、若者が一列に並ばされてライフルの貫通力を試すかのように何人も殺されるシーンは印象に残っていたのだが、ラスト近くでこんな印象的なシーンがあったことを不覚にも忘れていた。3時間を超える長い作品だが、退屈さを感じさせない秀作。ただやっぱり、これほどの名作でも、ドイツ軍人はほとんどのシーンで英語を話すのだった。違う国籍同士の会話だから、とか、理由はこじつけているのだろうけれども、これだけリアリティを追求しておきながら、どうしてもひっかかるのだった。

【5段階評価】5

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2020年3月10日 (火)

(2026) リメンバー・ミー

【監督】リー・アンクリッチ
【出演】アンソニー・ゴンザレス(声)、ガエル・ガルシア・ベルナル(声)、ベンジャミン・ブラット(声)
【制作】2017年、アメリカ

音楽好きの少年が家族との絆を取り戻す姿を描いた3DCGアニメ作品。

先祖の父親が家族を捨てて音楽の道を選んだことで、音楽を忌み嫌っているリベラ家。リベラ家の少年、ミゲル(アンソニー・ゴンザレス)は伝説の歌手、エルネスト・デラクルス(ベンジャミン・ブラット)に憧れる音楽好きの少年。家族を捨てたという先祖の父親の写真は、顔の部分が破り取られていたが、持っているギターがデラクルスと同じだった。それに気づいたミゲルは、自分も音楽をやっていいんだ、と喜ぶが、祖母のエレナ(レニー・ビクター)に持っていたギターをたたき壊されてしまう。困ったミゲルはデラクルスの記念館に飾られているギターを盗み出そうとするが、その瞬間、死者の世界に迷い込んでしまう。死者たちは、祭壇に自分の写真を飾ってもらうことで、死者の日に現世の世界を見に行くことができる。ミゲルが死者の世界にいることに気づいたミゲルの先祖たちは、ミゲルを元の世界に戻そうとするが、自分を捨てた夫を恨んでいるママ・イメルダ(アラナ・ユーバック)は、ミゲルに音楽をするな、という条件を付けようとするため、ミゲルは音楽を愛していたデラクルスの手で元の世界に戻ることにする。ミゲルは、デラクルスの友人だったというヘクター(ガエル・ガルシア・ベルナル)と出会う。ヘクターは、自分の写真をミゲルに託し、それを祭壇に飾ってほしいと頼み、デラクルスに会いたいというミゲルの願いに協力する。
やっとの思いでデラクルスに出会えたミゲルだったが、実はデラクルスの歌う歌を作ったのはヘクターで、ある日、ヘクターが家族の元に戻りたいと言ったとき、デラクルスは名声欲しさにヘクターを毒殺していたのだった。ヘクターとミゲルは、警備員により大穴の下に落とされてしまう。ミゲルは、ヘクターこそが先祖であったことを知る。ママ・イメルダはヘクターと再会。家族を捨てたヘクターを恨みつつ、ヘクターがデラクルスに殺されたのだという話を聞き、ヘクターの写真をミゲルに持たせて元の世界に戻すことに協力することにする。ミゲルたちはデラクルスのコンサートステージに忍び込み、デラクレスが持っているヘクターの写真を奪おうとするが、デラクルスは自分の名声を守るため、ミゲルをステージから投げ飛ばし、ステージを続行しようとする。しかし、その一部始終はステージのカメラで観客に大写しになっていた。デラクルスは観客の大ブーイングを受け、ママ・イメルダのペット、ペピータによってステージから吹っ飛ばされてしまう。ヘクターによって元の世界に戻ったミゲルは、ひいおばあちゃんのママ・ココ(アナ・オフェリア・ムルギア)のもとに行く。すっかり元気をなくして目もうつろなママ・ココは、父親のヘクターの記憶を失いかけていた。記憶から失われるとあの世でのヘクターの存在も消えてしまう。ミゲルはママ・ココにリメンバー・ミーを歌って聴かせる。それは、ヘクターが一人娘のココのために作り、毎日歌って聴かせた曲だった。それを聞いたママ・ココはミゲルと一緒にその歌を口ずさむと、引き出しにしまっていたヘクターの顔写真を取り出す。ヘクターの写真が無事に祭壇に飾られることになったリベラ家では、死者の日に家族の演奏で大いに盛り上がるのだった。

デラクルスがミゲルの先祖だと思い込ませるミスリーディングが見事。ヘクターの思いがココにあったということが後半で明かされ、なぜ主要人物とは思えない、ミゲルのひいおばあさんの名前が映画のタイトル(原題は「COCO」)になっているのか、という謎が明らかになる。ミゲルが元気を失ったママ・ココに歌って聞かせるシーンは号泣必至。音楽も素晴らしく、文句なしの名作だ。

【5段階評価】5

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2020年2月 3日 (月)

(1996) ワンダー 君は太陽

【監督】スティーブン・チョボスキー
【出演】ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、イザベラ・ビドビッチ
【制作】2017年、アメリカ

遺伝子疾患を持って生まれた少年の生き方を描いた作品。

オーガスト・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)、オギーは、遺伝子疾患を持って生まれ、度々の手術を経て顔を整形した少年。母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は5年生になった彼を普通の学校に通わせることにする。はじめは宇宙飛行士のヘルメットで顔を隠しがちだったオギーだったが、ジャック・ウィル(ノア・ジュープ)やサマー(ミリー・デイビス)などの友達を得て、得意の理科で活躍。その年の優秀な生徒として表彰されるに至るのだった。

個性の強いオギーがもちろん主人公ではあるのだが、作品の主題は彼の苦悩だけではない。彼の姉ビア(イザベラ・ビドビッチ)は、両親の関心が完全に弟に向かっていることを認識し、手のかからない娘を演じる苦しみと闘っているし、ビアの親友ミランダ(ダニエル・ローズ・ラッセル)は離婚した母親との関係へのストレスから仲睦まじい家族で暮らすビアに嫉妬に似た感情を持っている。作品では、それぞれの登場人物の名前がサブタイトルのように表示され、サブストーリーが展開する。(そう言えば「呪怨」でも使われていたが。)こうした作風を通じて本作は、障害を持った人の苦しみを描きながらも、普通の人々もまたいろいろな悩みも同様に扱うことで、障害を特別視せず、個性の一つなのだ、ということを表現することに成功していると思える。ラストの表彰シーンは感動的だった。

【5段階評価】5

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2020年1月 1日 (水)

(1985) キス・オブ・ザ・ドラゴン

【監督】クリス・ナオン
【出演】ジェット・リー、ブリジット・フォンダ、チェッキー・カリョ、シリル・ラファエリ
【制作】2001年、フランス、アメリカ

フランスの悪徳刑事と戦う中国刑事の活躍を描いたカンフー・アクション。

中国の刑事、リュウ(ジェット・リー)は麻薬密売人の捜査のため、フランスに渡る。リュウはフランスの刑事、リチャード(チェッキー・カリョ)と組むことになるが、彼こそが麻薬密売の仲介人。リチャードは二人の娼婦を送り込み、密売人と娼婦の一人を口封じのために殺害。リュウの仕業に見せかけてリュウをも殺そうとするが、リュウはその場から逃走する。気分が悪くてトイレにいたジェシカ(ブリジット・フォンダ)は難を逃れるが、娘を人質に取られており、リチャードのいいなりになって娼婦を続ける。中国人のエビチップ屋に身を隠していたリュウは、店の外で娼婦をしていたジェシカと知り合う。リチャードは部下を使ってリュウを捕らえようとするが、リュウは何度もその危機を逃れる。チップ屋に戻ったリュウは、傷を負った腕を自分で縫おうとするが、それを見たジェシカが腕を縫うのを手伝う。そこに売春の元締めがやってきてジェシカに暴力を振るう。見かねたリュウと元締めが乱闘になり、それを見つけたリチャードの部下が店を店主ごと機関銃で乱射。リュウはリチャードの部下を倒すと、ジェシカと店を出て店主を弔う。リュウはジェシカがリチャードの犯行現場にいたことを知り、彼女を証人に立てるため、彼女の娘を救い出すことを条件に、ジェシカの協力を得る。ジェシカはリチャードのもとに戻り、リュウがいると嘘をついてリチャードを中華料理店に向かわせ、そのすきに彼の犯行が収められたビデオテープを盗みだしてリュウと合流。リュウとジェシカは娘を連れ出すために孤児院に向かうが、リチャードの部下に待ち伏せされる。二人は逃走するがジェシカが胸に銃弾を受けてしまい、リュウはジェシカを病院に担ぎ込む。リュウは単身でリチャードのいる警察署に乗り込み、向かってくる警官らを倒し、最後は得意の鍼術でリチャードの首の根に鍼を刺す。それはキス・オブ・ザ・ドラゴンと呼ばれる禁断の術で、脳に回った血が顔中から吹き出して苦しんで死ぬというもの。リュウはジェシカの娘を救い出し、彼女のもとに送り届けるのだった。

リチャードの残虐非道ぶりを序盤でたっぷり見せつけ、リュウがそれに立ち向かうという分かりやすい作品。アクションシーンでは、アイロンなど身近な道具を武器に見立てて戦うシーンが多く、ジャッキー・チェンの作品を思わせるが、拳銃を使わないようにお膳立てすることの多いジャッキー・チェンの作品に比べると、拳銃を持つ相手と戦うシーンがふんだんにあるところは特徴的。分かりやすいハッピーエンドで、気持ちのいい作品だった。
一方で、終盤、ジェシカが嘘をついていることは丸わかりなはずなのにリチャードがそれをあっさり信じて自ら店に出向いたり、ビデオテープがマクガフィンとなっていて、すぐに消滅させればいいのにリチャードが大事に持ち続けていたり、ダビングすることもできるだろうにしていなかったりといった設定にはちょっと無理があったりはした。

【5段階評価】5

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2019年12月26日 (木)

(1980) スター・ウォーズ/最後のジェダイ

【監督】ライアン・ジョンソン
【出演】デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、ジョン・ボイエガ、マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー
【制作】2017年、アメリカ

スペースオペラ、「スター・ウォーズ」シリーズ第8作。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の続編。

宇宙制覇をもくろむファースト・オーダーは、レイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)率いるレジスタンス軍の壊滅と、最後のジェダイ騎士、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)の討伐を狙っていた。レジスタンスのレイ(デイジー・リドリー)はチューバッカ(ヨーナス・スオタモ)とともにルークのもとを訪れ、レジスタンス軍に付くよう説得するが、ルークは、ジェダイは滅ぶべきだとそれを拒否する。
レイア将軍の乗る宇宙船は、ファースト・オーダーの宇宙船の追撃を受け、バリアを張りながら逃走を続ける。状況を打開しようと、フィン(ジョン・ボイエガ)とローズ(ケリー・マリー・トラン)は、ポー(オスカー・アイザック)と連絡を取りながら、ファースト・オーダーの宇宙船に潜入。しかし、敵の追跡装置を破壊しようとするぎりぎりのところで敵に捕らえられてしまい、セキュリティ破りのために雇ったDJ(ベニチオ・デル・トロ)の裏切りにより、レジスタンス軍が脱出艇で母艦を離れていることを敵に知られてしまう。ファースト・オーダーのハックス将軍(ドーナル・グリーソン)は脱出艇の攻撃を開始し、脱出艇は次々と撃ち落とされていく。母艦に残っていたホルド提督(ローラ・ダーン)は、自らの命を犠牲にして敵艦にワープで体当たりし、敵の攻撃を止める。レイア将軍らは反乱軍の古い基地がある石の惑星クレイトに到達する。フィンとローズは、BB-8(ブライアン・ヘーリング、デイブ・チャップマン)の活躍によってスター・デストロイヤーから脱出し、レイア将軍やポーと合流する。
レイの頼みを拒み続けていたルークは、R2-D2(ジミー・ビー)から、妹であるレイア姫の映像を見せられ、ついにレイにジェダイの教えを伝えることを決意。しかし、レイがダーク・サイドに入り込む危険を持つことを察知し、かつて自分の弟子だったカイロ・レン(アダム・ドライバー)と同じ危うさを感じる。レイは、フォースの力でレンと心を通じ合わせ、会話を続ける中で、レンの中に父親のハン・ソロを殺した悔恨の情が残っていることを感じる。レイはレンを説得しようと、敵の母艦、スター・デストロイヤーに乗り込むが、ファースト・オーダーの最高指導者スノーク(アンディ・サーキス)から、レイとの戦いに敗れたことをなじられていたレンは、レイを捕らえ、スノークの前に差し出す。スノークは圧倒的な力でレイを束縛し、レイからルークの居場所を聞き出そうとする。それを見ていたレンは、スノークを裏切り、ライトセーバーを操ってスノークの体を真っ二つに切り裂き、周囲にいたガーディアンたちをレイとともに倒す。レンは、宇宙に新しい秩序をもたらそう、とレイに手を差し出すが、レイはそれを断り、船を去る。
レンは最高指導者の立場を継ぎ、レイア将軍の基地に攻め込む。基地を守る扉が破られたとき、レイア将軍の前にルークが現れる。レンはルークに猛攻撃を浴びせるが、ルークはかすり傷一つ追わない。レンはルークに一騎打ちを挑む。ポーは、ルークが時間稼ぎをしていると悟り、仲間を連れて脱出。経路を塞いでいた岩をレイが取り除き、一同はミレニアム・ファルコン号で脱出する。ルークの正体は幻影だった。ルークの姿はレンの前から消え去る。レイとレイア将軍はルークの命が尽きたことを感じるが、レジスタンス軍は復活の狼煙を上げるのだった。

今までのEPISODE4~6、EPISODE1~3、いずれも3連作の2作目は、つなぎのパートということで、どうも話が説明口調で尻切れトンボという印象があったから、本作も「話の途中だけど、そろそろこの辺で終わるのかな」と思いながら観ていたのだが、それが意外と終わらなかった。石の惑星にたどり着くところで終わると思ったら、レンの部隊が惑星に降り立ち、レジスタンス軍との戦い。さらにはレンとルークの戦いにまで発展。そのサービス精神が嬉しかった。果たしてレンは悪役のまま終わるのか。逆にレイはレジスタンス軍に居続けるのか。次回作が楽しみだ。

【5段階評価】5

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2019年12月 2日 (月)

(1974) ブレードランナー 2049

【監督】ドゥニ・ビルヌーブ
【出演】ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、シルビア・フークス、アナ・デ・アルマス
【制作】2017年、アメリカ

「ブレードランナー」の続編。

2049年のカリフォルニア。LA警察の捜査官、KD6-3.7(ライアン・ゴズリング)、通称Kは、タイレル社製の旧式レプリカントを解任する任務に就く新型レプリカント。農民としてひっそりと暮らす元軍人レプリカントのサッパー・モートン(デイブ・バウティスタ)を倒したKは、木の根元に箱が埋まっているのを発見。Kはそれを上司のジョシ(ロビン・ライト)に報告し、帰宅。Kは、自宅設置型のホログラム、ジョイ(アナ・デ・アルマス)に、外への移動が可能となるエマネーターをプレゼント。ジョイは初めて雨の降るアパートの屋外に出る。そこにジョシから連絡が入る。埋まっていた箱の中味は、分娩の際に死亡した30年前の女性の遺骨で、その骨にはレプリカントの製造番号が刻まれていた。レプリカントが子供を産むなどありえないと否定したジョシは、産まれた子供を含め、全ての痕跡を消すようKに命令する。Kは手始めにタイレル社を吸収したウォレス社を訪ねるが、遺骨のレプリカントの製造は「大停電」の前で、確たる情報はなかった。Kが調査に来たことを知ったウォレス社のラブ(シルビア・フークス)はKに接近。Kは、遺骨の女性がデッカードという男性と関係があることを教わる。ウォレス(ジャレッド・レト)はラブに、レプリカントが産んだ子供を連れてくるよう命じる。
Kは、サッパーの家のピアノに隠された写真を発見。そこには、遺骨の埋まった木の横に立つ、乳飲み子を抱えた女性が写っていた。再び木を調べたKは、木の根元に「6 10 21」という数字が刻まれているのを発見。それを見て、Kの中の記憶が蘇る。
ラブは警察に保管された遺骨を盗み出す。焦るジョシはKに状況を尋ねるが、Kは数字のことは黙っていた。Kには少年の頃、小さな木製の馬のおもちゃを大事にしていた記憶があり、そのおもちゃに同じ数字が刻まれていたのだ。DNA室で捜査を進めるKに、ジョイが話しかける。遺骨の女性が産んだ子供とは、Kのことなのではないかと。調べた結果、同じDNAを持つ男児と女児がいることが判明。女児は遺伝子疾患で死に、男児は消息不明ということだった。Kはジョイを連れて、二人がいたモレルコール孤児院に向かう。そこはロス郊外の廃棄物処理場だった。突然、処理場の住民から襲撃され、Kの飛行自動車は不時着。Kは大勢に取り囲まれるが、突然、Kの周囲に空から爆撃が降り注ぎ、Kは助かる。ラブがKを監視し、子供を見つけさせようとしているのだった。捜査を続けるKは、ドーム型の施設を発見。中では男(レニー・ジェームズ)が大勢の子供達を働かせていた。Kは男に命じて30年前の孤児の記録を調べるが、ページは破り取られていた。施設の様子が自分の記憶と結びついたKは、記憶を頼りに施設内を歩き、隠されていた木馬を発見する。ジョイは、Kは製造されたのではなく男の子として産まれたのだと言い、彼にジョーという名前を与える。
自分に埋め込まれた記憶の秘密を探るため、Kは、アナ・ステリン博士(カーラ・ジュリ)のもとを訪ねる。彼女は免疫不全で、ガラスのドームの中で暮らしていた。彼女はウォレス社と契約し、レプリカントに記憶を授けていた。アナは、自分の記憶を生かしながらレプリカントに記憶を与えているのだと言う。Kは、アナに自分の記憶が本物か確かめたいと告げる。アナはガラスを隔てた装置の前にKを座らせ、記憶を読み取る。ふいに彼女は涙を流し、記憶は本物だと告げる。Kはちくしょう、と叫んで部屋を後にする。施設を出たところでKは逮捕され、ジョシのもとに連れて行かれる。Kは子供を見つけて処分した、と嘘をつく。その夜、帰宅したKのもとに、以前会った娼婦のマリエット(マッケンジー・デイビス)が現れる。ジョイが彼女に同期し、Kはマリエットと一夜をともにする。朝、起きたマリエットはこっそりKのジャケットに追跡用の発信器を忍ばせると、部屋を後にする。
追っ手が来ると確信していたKが部屋を出ようとすると、ジョイが一緒に行きたいと言い、追跡を逃れるため、自分をオンラインから切り離し、スティックの中にメモリを移すようKを説得する。何かあればジョイが消滅してしまうことを恐れるKだったが、ジョイはそれは普通の女性と同じだと言い、Kはそれに従う。ジョイを通じてKを監視していたラブはすぐさまKの部屋に向かうが、部屋はもぬけの殻。ラブはジョシのオフィスを訪ね、Kの居場所を話さないジョシを刺し殺し、端末でKの居場所を探し当てる。
Kは街で木馬の成分を分析してもらい、それが汚染された場所にあることを突き止め、ジョイと現地に向かう。蜂の生体反応を手がかりに、建物に入ったKは、デッカード(ハリソン・フォード)に遭遇。自分を捕らえようとしていると考えたデッカードは、Kを攻撃するが、Kに敵意がないことを知り、Kをバーカウンターにいざなう。Kは子供を産んだレプリカントの名を尋ねる。その名はレイチェルだった。しかしデッカードは、子供に危害が及ぶことを避けるため、子供のもとを去り、隠遁していたのだった。そこにラブが手下を従えて現れ、問答無用にデッカードを連れ去る。Kを攻撃するラブを見て、やめて、と叫ぶジョイだったが、ラブは不敵な笑みを浮かべてジョイの全てであるメモリスティックを踏み壊す。消える瞬間のジョイが、Kにかけた最後の言葉は「I love you」だった。
現場に取り残されたKを救出したのは、彼に発信器を忍ばせたマリエットの一味だった。指導者のフレイザ(ヒアム・アッバス)は、秘密が漏れないようデッカードの殺害をKに依頼。レイチェルが産んだのは女の子であったと告げる。
連れ去られたデッカードの前にウォレスが現れる。彼は産まれた子供を手に入れようとし、彼の前にレイチェル(ショーン・ヤング、ローレン・ペタ(演技はローレン・ペタが行い、顔にショーン・ヤングを合成))を連れてくるが、デッカードは偽物と見破る。ラブは偽物を撃ち殺し、デッカードをオフ・ワールドに連れて行こうとするが、そこにKが現れる。死闘の末、ラブを倒し、デッカードを救出したKは、彼をアナ博士のもとに連れて行く。Kは悟っていた。アナが自分の記憶をもとに、Kの記憶を作っていたことを。雪の降る中、施設に入っていくデッカードを見送ったKは、施設玄関の階段の上で仰向けに寝転がり、動きを止める。デッカードは初めて見る娘に、ぎこちなく微笑むのだった。

人造人間レプリカントの記憶と感情、そして子を産む奇跡に焦点を当てた重厚なSF作品。近未来の世界観や町の様子が細かいところまで作り込まれ、観るたびに発見がある。SONYやATARI、PEUGEOTなどの企業ロゴが出てくるのも近未来に思いをはせられ、楽しい。強力わかもとは見つけられなかったが。言語の壁がなくなり、街の中に日本語や韓国語など、雑多な言語が混じり合っているのも面白い。
血を流し、水の中では呼吸もできなくなり、見た目では人と区別の付かないレプリカント。そのKの恋人となるのが、ホログラムのジョイ。彼女もまた、人間と同じように、いや人間以上にレプリカントのKを純粋に愛する。人の感情を理想的に創造できる世界が現実になれば、人にとって理想的な感情をプログラムされたレプリカントやホログラムが現実のものとなったとき、人はどこまで人との触れ合いを求めるのか。そんなことをも考えさせられる作品だった。

【5段階評価】5

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