(2752) 東京島
【監督】篠崎誠
【出演】木村多江、福士誠治、窪塚洋介、柄本佑、染谷将太、山口龍人、テイ龍進、サヘル・ローズ、宮武祭
【制作】2010年、日本
桐野夏生の小説の実写映画化作品。大勢の男とともに無人島で暮らす一人の女性の運命を描いている。
夫の隆(鶴見辰吾)とともに無人島に漂流した清子(木村多江)は、さらに漂着した日本人のフリーター16人と共同で暮らすことになる。無人島は東京島と名付けられる。隆は崖から落とされて死亡し、清子は、16人の中で最も粗暴で威圧的な性格のカスカベ(山口龍人)を夫とする。やがて中国人の6名も島に現れるが、彼らは日本人とは独立して生活。日本人の輪から外されていたワタナベ(窪塚洋介)は、中国人グループと行動をともにする。カスカベも崖から落ちて死亡。清子の夫はくじ引きで選ぶことになり、GMとあだ名される男(福士誠治)が新たな夫となる。
清子は過去の記憶を失っているGMにユタカと名付け、親密になるが、中国人たちが船を作り上げたことを知った清子は、ユタカら日本人を裏切り、中国人のリーダー、ヤン(テイ龍進)の女になる条件を呑み、船に乗り込む。しかし船は航海の末、東京島に戻ってきてしまう。清子が再会したユタカは、自分の名が森軍司であることを思い出していた。しばらくして清子の妊娠が発覚。清子は軍司の子だと主張し、男たちに大事に扱われるが、出産に不安を感じた清子は、ヤンの子だとヤンに告げて中国人グループに合流。彼らは新たに漂着したフィリピン女性グループと暮らしており、彼女らが乗ってきたモーターボートを修理していた。女性グループの一人、キム(サヘル・ローズ)は日本語が堪能で、清子の出産に立ち会い、清子は男女の双子を産む。清子は女児にチキ、男児にチータと名付ける。
助けが来ないことに業を煮やしたオラガ(柄本佑)は、島を出ようとすることをいっそ禁止にしようと主張し、仲間たちは賛同。反対する軍司を殴りつけ、島を出ようとしている中国人を襲撃に行く。清子はキムとともに必死に逃げるが、日本人グループは清子から赤ちゃんを奪い取ろうとする。チータは軍司が命がけで守り、チキを抱いた清子とキムはボートに乗り込み、島を脱出する。
10年後。東京島ではチータ(宮武祭)を王子とあがめる集団が形成されており、清子は東京でチキ(宮武祭、二役)の10歳の誕生日をキムと祝う。その席には、ワタナベが背負っていた亀の甲羅も置かれているのだった。
無人島ものには「青い珊瑚礁」(1980)や「キャスト・アウェイ」(2000)、「スウェプト・アウェイ」(2002)などいろいろあるが、多数の男と一人の女性、という設定は独特。孤島で他の集団と緊張関係になるという設定は「ザ・ビーチ」(2000)でも見られるが、本作は無人島で暮らす絶望感や食べる物に困っての醜い生存競争といった要素は描かれず、極限状況の設定を持ち込んでいる割には、なんだかのんびりしていて緊迫感がなかった。唯一の女性、清子の奪い合いも、命がけではなく理性的だし、住民同士はおおむね仲良し。女性二人だけでモーターボートに乗って脱出に成功するのも、なんだかな、だった。最後、チキがワタナベの口ずさんでいた歌を歌ったり、チキの誕生会の席にワタナベが身に着けていたウミガメの甲羅があったりしたが、ワタナベが東京に戻っているのかどうか、よくわからなかったし、最後に清子がチキに「聞いてほしいことがあるんだ」と言って終わるのも、何を言いたかったのかわからない。実の親はワタナベってことか。そんな伏線はなかったが。単に東京島での出来事を話す展開とは思えず、いろいろすっきりしなかった。
【5段階評価】2
| 固定リンク
コメント