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2024年8月13日 (火)

(2763) 回路

【監督】黒沢清
【出演】麻生久美子、加藤晴彦、小雪、有坂来瞳、松尾政寿、役所広司、武田真治、風吹ジュン
【制作】2001年、日本

インターネットを通じて広がる恐怖を描いたホラー作品。

観葉植物業者の従業員、工藤ミチ(麻生久美子)は、連絡の取れない同僚の田口(水橋研二)の家を訪ねる。田口は家にいたが、ミチが目を離した隙に、何の前触れもなく部屋で首を吊って自殺してしまう。職場仲間の矢部俊夫(松尾政寿)は、「助けて」という電話を受けて田口の家に行く。帰りに赤いテープで目張りされた扉を見つけ、中に入ると、黒い服の女性ににじり寄られ、悲鳴を上げる。矢部の様子はおかしくなり、ある日、ミチの目の前で、壁のシミとなって姿を消してしまう。ミチの友人、佐々木順子(有坂来瞳)も、赤いテープで囲われた扉の中に入ってしまい、ミチが救出して自宅に連れ帰るが、ある日、壁のシミとなって消えてしまう。
大学生の川島亮介(加藤晴彦)は、家のパソコンで、慣れないインターネット接続に挑むが、怪しげな部屋の映像が勝手に映り、「幽霊に会いたいですか」という文字が現れたため、あわてて画面を消す。大学のパソコンルームに相談に行った川島は、唐沢春江(小雪)にパソコンを調べてもらう。川島は、春江の先輩の吉崎(武田真治)から、あの世の幽霊がいられる場所が飽和し、この世で誰かが偶然作った仕組みが回路となって、幽霊がこの世にあふれ出ることになったのだ、と話す。それが赤いテープで囲われた扉と、インターネット回線だということだ。川島も幽霊を目撃するようになり、春江も奇行を繰り返すようになる。春江は川島にどこかに連れて行ってほしいと頼み、川島は春江を連れて電車に乗るが、電車は途中で止まってしまい、春江は川島のもとから消える。家に戻った春江は、幽霊に出会ったようだった。春江が抱いたのは恐怖ではなく、孤独ではないという安心感だった。
街はひとけがなくなってしまい、川島は車の中で気を失っているミチを見つけ、声をかける。二人は春江を探して廃工場に向かう。そこに春江が現れるが、春江は持っていた拳銃で自分の首を撃ち抜き、死んでしまう。車で走り去ろうとした二人だったが、ガソリンが尽きていた。川島は工場にあったガソリンを取りに戻るが、ガソリンを運ぶ容器の蓋が奥の部屋に転がり込んでしまう。そこは赤いテープで扉の囲われた部屋だった。川島もそこで、幽霊に魅入られてしまう。ミチは川島を連れ、ひとけの失せた街を車で走り抜け、ボートで沖に出ると、一隻の船の船長(役所広司)と合流する。彼らはまだ人のいる場所を求めて進んでいくのだった。

いくらでも怖い演出ができそうな設定の中、「ぎゃーっ!!」というような映像は控えめ。工場の塔の上から飛び降りる女性のシーンがあり、よくある人の落下シーンは、落ちていくシーンのあとカット割りがあって、地面に倒れている姿に変わり、落下の瞬間は映像になっていないことが多いが、本作は人が地面に激突する場面がはっきりと映像になっている。「」(2006)にも似たシーンがあり、黒沢清監督お得意の特撮なんだろう。また、「助けて」という電話口の声が、脳の奥に届くような音響効果になっていたのは効果的だった(音響の環境設定にもよるだろうが)。後半、突然、どこで入手したのか拳銃を取り出したり、工場の中にガソリンがあったり、と、急に設定が雑になるのが気になった。川島の部屋にセガサターンのソフトが転がっていて「GRANDIA」があるのが懐かしかった。

【5段階評価】3

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