(2764) CURE
【監督】黒沢清
【出演】役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川安奈、洞口依子、螢雪次朗、でんでん
【制作】1997年、日本
連続的な猟奇殺人の鍵を握る記憶障害の青年と、事件の謎を追う刑事の運命を描いたサイコスリラー作品。
一般市民が突然、人を殺害し首元をX字に切り裂く事件が連続して発生。刑事の高部賢一(役所広司)は、精神科医の佐久間真(うじきつよし)とともに事件を追う。千葉の白里海岸で、記憶をなくし会話の要領を得ない男(萩原聖人)が、小学生の教師の花岡(戸田昌宏)に保護される。男の服の首元には「間宮」と書かれたタグがあった。間宮はライターに火を付けながら、花岡に身の上話を促す。後日、花岡もまた、妻を殺害して首筋をX字に切り裂く。間宮はその後、警官(でんでん)の世話になるが、間宮と話し込んだその警官もまた、突然、同僚の警官を背後から銃で撃ち殺し、首を切り裂く事件を起こす。間宮は病院に送られるが、間宮を診察した女医(洞口依子)もまた、間宮に深層心理を暴かれ、公衆トイレで男を殺した上に、首を切り裂いて顔の皮を剥ぐという凶行に至る。
高部には文江(中川安奈)という妻がいたが、精神を病んでおり、激務の高部は妻の世話に疲弊していた。高部は間宮を尋問するが、間宮はのらりくらりと質問をかわして高部に逆質問をし、高部は激昂する。高部は間宮が催眠術を研究している医学生だったことを突き止め、佐久間によって隔離病棟に送り込まれた間宮の尋問に向かう。間宮は高部の心理を言い当てるような発言を繰り返し、高部は妻の世話が重荷になっていることを白状してしまう。
佐久間もまた独自に間宮を調べ、19世紀末に行われた催眠術の記録映像を高部に見せる。佐久間もまた間宮の影響を受けており、自室の壁に大きなXのひっかき傷をつける異常行動をするに至っていた。佐久間は自らの喉をX字に切り裂いて自殺。間宮は病室から脱走する。高部が、間宮の研究していた過去の睡眠術医学者のゆかりの廃病院に向かうと、そこに間宮が現れる。間宮が話を始めるが、高部は間宮に銃を突きつけ発砲。瀕死の間宮が高部に向かって指でX字を切ろうとするが、高部はさらに銃弾を撃ち込み間宮を殺害する。高部は憑き物が落ちたように、平然とファミリーレストランで食事をとる。ファミレスの店員は、客にコーヒーを提供すると、やおら包丁を取り上げ、どこかに向かって歩き出すのだった。
黒沢清の出世作とも言える作品。間宮という男を媒介として、催眠状態になった者が誰かを惨殺するという行為が伝播していくという話。「らせん」(1998)のウィルス増殖のような話でもあるし、松岡圭祐原作の「催眠」(1999)にも似ていた(「催眠」は自死の伝播だが)。役所広司の演技に注目が集まりがちだが、若い萩原聖人の堂々とした怪演も光っていた。
【5段階評価】4
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