« 2024年7月 | トップページ | 2024年9月 »

2024年8月

2024年8月31日 (土)

(2781) 種まく旅人~みのりの茶~

【監督】塩谷俊
【出演】田中麗奈、陣内孝則、柄本明、吉沢悠、石丸謙二郎、寺泉憲、中村ゆり、徳井優、前田健
【制作】2012年、日本

祖父の茶畑の仕事を担うことにした女性と、それを支援する農水省出向の役人の奮闘を描いた作品。

デザイナーの仕事に就いていた森川みのり(田中麗奈)は、デザインを外注するという会社の方針に反発して退職。就職を世話した父親の修一(石丸謙二郎)はみのりを叱る。みのりは起業家の友人、栗原香苗(中村ゆり)を尋ねて大分に渡り、茶畑を営む祖父、森川修造(柄本明)の家を訪ねる。ちょうどその晩、農林水産省から大分県臼杵市役所農政局長に出向となった大宮金次郎(陣内孝則)が、修造の家を訪ねてくる。金次郎は現場回りを信条としており、修造とも懇意にしていた。修造は金次郎を大歓迎。翌朝、二人で修造の茶畑を見ていると、修造が心臓の病で倒れ、入院することになってしまう。修造には市の助成事業の融資の返済が迫っており、みのりは金次郎の助言を受けながら茶畑仕事を担うことにする。
市の農政課の職員、木村卓司(吉沢悠)も何かとみのりの世話を焼き、みのりの茶畑は収穫の時期に入る。みのりは茶の精製を行うが、煎り時間の加減が分からず、茶の味を出すのに苦労する。父親の修一が修造のもとを訪れ、みのりの茶畑仕事に反対するが、みのりの真剣な気持ちに触れ、そっと母親が付けていた日記を寝ているみのりの横に忍ばせる。そこには、茶を仕込むのが上手だったみのりの祖母がしていた工夫が書き込まれていた。みのりの茶は満足する味になり、それを口にした修一は、おふくろの味だ、と涙を浮かべる。
みのりと金次郎は、近所の農家にみのりの茶をふるまい、退院した修造も、みのりの茶に満足する。みのりの茶は臼杵市優秀農作物の製茶の部で優勝を獲得。表彰式に出向を終え、農水省大臣官房企画官となった金次郎がプレゼンターとして現れる。金次郎がそんな偉い人だったとは知らなかった木村とみのりは驚く。みのりは信じられない顔をしながらも、金次郎から表彰状を受け取り、嬉しそうに微笑む。みのりは、木村に手伝って貰いながら、修造と茶畑仕事を続けるのだった。

序盤でみのりが祖父の家を訪ねる辺りは「緩慢な展開だなあ」という印象で、開始30分ぐらいで、祖父の茶畑を孫娘が継ぐ作品なのね、と想像がつき、これは低評価作品だな、と予想したのだが、けっこうな感動作だった。お茶を飲むだけのシーンで泣ける映画はなかなかないだろう。石丸謙二郎の演技力に感服。「がんばっていきまっしょい」(1998)で初主演を遂げた公開当時32歳の田中麗奈の可愛らしさも作品の魅力だった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2024年8月30日 (金)

(2780) ONEPIECE 麦わらチェイス

【監督】佐藤宏幸
【出演】田中真弓(声)、岡村明美(声)、大谷育江(声)、山口智充(声)、山口勝平(声)、平田広明(声)
【制作】2011年、日本

尾田栄一郎の漫画が原作のアニメ映画、第11弾。大事な麦わら帽子を盗られたルフィ(田中真弓)が取り戻すまでを描く。前作は「ONE PIECE FILM STRONG WORLD」(2009)。次作は「ONE PIECE FILM Z」(2012)。30分の短編映画。

老いた海賊のシュナイダー(山口智充)は引退を考え、愛犬で相棒のバズ(山口智充、二役)と縁を切るため、賞金首のルフィの麦わら帽子を盗めという難題を与える。トリトリの実の能力を持つバズは、鷲となってルフィの帽子を奪う。ルフィは仲間とともに鷲を追い、海軍が手にした帽子を取り返す。

ONE PIECEのメンバーが勢ぞろいした3D映像の作品。ルフィが鷲になったバズを追うところは、まんま「スパイダーマン」だった。本作はAmazon プライムで鑑賞。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月29日 (木)

(2779) ドラゴンボール超 ブロリー

【監督】長峯達也
【出演】野沢雅子(声)、堀川りょう(声)、中尾隆聖(声)、島田敏(声)、宝亀克寿(声)、水樹奈々(声)
【制作】2018年、日本

鳥山明原作の漫画「ドラゴンボール」シリーズの劇場版第20作。「ドラゴンボールZ 復活の「F」」の続編。次作は「ドラゴンボール超 スーパーヒーロー」。孫悟空の誕生秘話が語られる。

41年前。コルド大王(大友龍三郎)から王の座を引き継いだフリーザ(中尾隆聖)は、サイヤ人に圧政を敷く。サイヤ人のベジータ王(銀河万丈)は、自分の子より強い能力を持つブロリー(森下由樹子)を辺境の星バンパに飛ばす。ブロリーの父親パラガス(宝亀克寿)は息子を追い、ベジータ王への復讐を胸にブロリーを育てる。
フリーザはサイヤ人を惑星ベジータに招集し、全滅させる。それを予感したサイヤ人のバーダック(野沢雅子)は、幼い息子カカロット(野沢雅子)をフリーザの目の届かないであろう地球に送り込む。戦力補強のために動いていたフリーザ軍のチライ(水樹奈々)とレモ(杉田智和)は、バンパにいたパラガスとブロリーを見つけ、フリーザの元に連れ帰る。フリーザはベジータ王の子が生きていることをパラガスに教え、ベジータへの復讐心をたぎらせる。
地球に送り込まれたカカロットは孫悟空として成長し、ベジータ(堀川りょう)とともにさらなる高みを目指して訓練に勤しんでいた。そんなとき、ブルマ(久川綾)の集めていた6個のドラゴンボールがフリーザ軍に盗まれる。ブルマたちは残り一個が眠る氷の大陸に向かい、フリーザ軍の兵士を発見。そこに、ドラゴンボールが7個揃ったことを知らされたフリーザが、ブロリーとともに現れる。ブロリーはフリーザに襲いかかり、フリーザと悟空の戦いを通じて戦闘能力を開花させる。フリーザはパラガスを殺してブロリーのさらなる潜在能力を引き出すが、我を忘れるほど凶暴化したブロリーはフリーザに攻撃しはじめ、その隙に悟空はベジータを連れてピッコロ(古川登志夫)のもとに瞬間移動。悟空はベジータと練習を重ねてフュージョンを成功させ、ゴジータとなって再びブロリーと戦う。ブロリーが劣勢になったのを見て、ブロリーの不幸な境遇に同情していたチライは、フリーザから預かっていたドラゴンボールを使って神龍(大友龍三郎)を呼び出し、ブロリーを元いた惑星バンパに瞬間移動させる。悟空は、バンパにいるブロリーと、それを追ったチライとレモの前に現れ、ブルマから貰ったホイポイカプセルの家を譲ると、ブロリーとの再戦を期待し、バンパを去るのだった。

ブロリーの誕生から成長するまでを描いた内容。戦闘シーンは激しすぎて何が起きているのかほとんど分からない。子どもが憧れてまねしたくなるようなレベルではなかった。子供向けというより、コアなドラゴンボールファン向けの作品だろう。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月28日 (水)

(2778) 釣りバカ日誌2

【監督】栗山富夫
【出演】西田敏行、三國連太郎、石田えり、原田美枝子、谷啓、丹阿弥谷津子、戸川純
【制作】1989年、日本

やまさき十三原作、北見けんいち作画の漫画の実写化作品の第2弾。「釣りバカ日誌」(1988)の続編。次作は「釣りバカ日誌3」(1990)。

鈴木建設の社長、スーさん(三國連太郎)は、社長としての仕事に疲れ、会社を休んで旅に出る。スーさんは旅先で謎の美人(原田美枝子)と出会い、海辺で二人で過ごすが、持病の狭心症の発作が出てしまい、彼女のホテルの部屋で休ませてもらう。スーさんは容態が回復し、その日は女性の部屋に泊まらせてもらう。彼女はどこか寂しそうだった。
スーさんの妻、久江(丹阿弥谷津子)は、行方不明になったスーさん探しを、スーさんの釣り仲間で鈴木建設のダメ社員、ハマちゃん(西田敏行)にお願いする。ハマちゃんは鹿児島にいる兄が亡くなったと会社に嘘をついて忌引き休暇を取ると、スーさんが釣りに行きたがっていた愛知の伊良湖岬に向かい、ホテルの部屋でスーさんが美女と一緒にベランダにいるのを発見。部屋にあがりこんだハマちゃんに、スーさんは女性は自分の娘だと嘘をつく。
会社に何食わぬ顔で出社したハマちゃんだったが、忌引き休暇の嘘が会社にばれていた。ハマちゃんは懲罰委員会で懲戒免職になりかかるが、懲罰免除の署名が大量に集まり、事情を知るスーさんはハマちゃんの懲罰を取り消しにさせる。スーさんは、取引先で、伊良湖岬で出会った美女と再会。彼女はシングルマザーの社長秘書、間宮弥生だった。スーさんは弥生にお礼を言い、彼女と彼女の息子を海釣りに誘い、ハマちゃんと一緒に釣りを楽しむ。三人の釣りの様子が取材記者の目に止まり、ハマちゃんと弥生が楽しそうに釣りをし、後ろ姿で顔の分からないスーさんも写っている写真が毎朝新聞に載る。会社ではハマちゃんが不倫をしていると噂になり、ハマちゃんは社長室に呼ばれる。ハマちゃんは誤解を解くため事実を語ると言い出し、スーさんは何食わぬ顔をしながらも内心はビクビク。ハマちゃんはスーさんの名は出さないながらも、この女性は後ろ姿のジジイが娘だと言って連れてきたがそれはジジイの嘘だった、と怒りをぶちまける。ハマちゃんは懲罰から逃れ、スーさんは手土産を持ってハマちゃんに詫びに行く。スーさんを許そうとしないハマちゃんだったが、憧れていた釣り竿をプレゼントされたハマちゃんは徐々に機嫌を直し、スーさんと釣り談義に花を咲かせるのだった。

長寿映画シリーズの第2作から、「男はつらいよ」シリーズ同様、マドンナ役が登場するのが恒例になっており、初代マドンナが原田美枝子。間宮弥生の社長(内藤武敏)が、弥生を美人だ美人だと繰り返し、いくら口説いても堅くて落ちない、などと今なら明らかなセクハラ発言を平気でしているのが昔の映画っぽかった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月27日 (火)

(2777) ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ

【監督】河野亜矢子
【出演】戸松遥(声)、水瀬いのり(声)、松岡禎丞(声)、井澤詩織(声)、関智一(声)
【制作】2021年、日本

川原礫(かわはられき)のライトノベルのアニメ映画。ゲームの世界で奮闘する女子高生を描いている。「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア」(2021)の続編。

MMORPG「ソードアート・オンライン」の世界、アインクラッドの100層のボスを倒してゲームのクリアを目指すプレーヤーたちは、第4層のボスの攻略に成功。一方で、2つのギルドALS(アインクラッド解放隊)とDKB(ドラゴンナイツグリゲード)の対立が顕在化していた。第5層のボスのドロップアイテムは、ギルドメンバー全員にバフを付与する効果があり、DKBはALSに抜け駆けしてボスを倒そうとしていた。それを知ったキリト(松岡禎丞(よしつぐ))とアスナ(戸松遥)は、ギルドの対立を防ぐため、自分たちがボスを倒し、フラッグを預かることにする。数人が仲間となるが、さらなる人数確保のため、アスナは親友のミト(水瀬いのり)に協力を仰ぐ。一度、アスナのピンチにパーティを離脱した過去があり、素材ハンターとして活動していたミトは、前線で戦うことはできないと断り、自作のペンダントをアスナに渡す。アスナはミトの意志を尊重して引き下がる。
キリトたちはボス戦に挑む。ボスの挙動は、キリトの知るベータ版より進化しており、キリトたちは苦戦。アスナが敵のゴーレムの頭に潰されそうになる。そこにパーティ参加を断ったはずのミトが現れ、ピンチを救うと、形勢は逆転。キリトたちはボスの攻略に成功する。ドロップアイテムのフラッグはミトが手に入れるが、ミトはキリトにフラッグを託す。ミトはこの世界の生き方を探すと言い、再会を誓いつつアスナと別れる。キリトとアスナは改めてともに進むことを誓い合うのだった。

前作同様、MMORPGの多人数バトルを描いており、ボスのギミックを戦いながら理解し、攻略法を編み出していくところは、MMORPGファンにはのめり込みやすい内容。一方で、「映画2作品で5層しかクリアせんのかい、寅さんシリーズ越え狙うんかい」と吉田裕ばりにツッコミたくもなるが、次作に期待しよう。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月26日 (月)

(2776) 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア

【監督】河野亜矢子
【出演】戸松遥(声)、水瀬いのり(声)、松岡禎丞(声)、山寺宏一(声)
【制作】2021年、日本

川原礫(かわはられき)のライトノベルが原作のアニメ映画。ゲームの世界で奮闘する女子高生を描いている。「ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」(2017)のリブートとなる続作。次作は「劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 冥き夕闇のスケルツォ」(2022)。

結城明日奈(戸松遥)は、教育ママ(林原めぐみ)に厳しく育てられている中学生。同じクラスの成績優秀な兎沢深澄(とざわみすみ)(水瀬いのり)とはゲーム仲間で、彼女からMMORPG「ソードアート・オンライン」のプレイを勧められる。明日奈は兄(間島淳司)の部屋にHMDとゲームソフトがあるのを見つけてゲームの世界に入り、ゲーム内で「ミト」と名乗る深澄を見つける。アスナがログアウトしようとすると、突如、ゲームの世界を作った茅場晶彦(山寺宏一)が現れ、100層まである世界を攻略し、このゲームをクリアしない限りログアウトはできない、キャラクターが死んだら本人も死ぬ、と宣言。「これは、ゲームであっても遊びではない」と言い残して消える。
ミトはアスナとパーティを組み、二人でゲーム攻略を始める。しかし、大量の敵に囲まれた際、アスナとはぐれたミトは、アスナのHP(ヒットポイント)が尽きかけているのを見て、パーティから離脱してしまう。アスナは巨大な敵に襲われ、絶体絶命というとき、颯爽とキリト(松岡禎丞(よしつぐ))が現れ、敵を倒してアスナを窮地から救う。
ミトとはぐれ一人になってしまったアスナは、宿屋で何もできずに過ごすよりは、と、剣を買い込んで無謀なダンジョン攻略に挑む。彼女の窮地をまたもキリトが救い、二人は第1層のボス攻略の作戦会議に参加する。キリトとアスナはパーティを組むことにする。アスナはミトが別の人達とパーティを組んでいるのを発見する。ボス戦は苦戦するが、アスナは再会したミトから受け取った得意武器レイピアを手に、キリトとともにボスを葬り、次の階層に到着する。二人はともに進んでいくのだった。

MMORPGの世界観をアニメで再現している。ラスボス戦も複数パーティによるレイド戦として描いており、雑魚の相手をするパーティとボスを相手にするパーティを分けたり、ボスの強力な範囲攻撃の発生ギミックを避けて戦う、といった、MMORPGらしい戦闘が見られる。何度も観たくなるような面白さではないが、MMORPGの序盤攻略を見ているようで、経験者には楽しい作品。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月25日 (日)

(2775) 生きる

【監督】黒澤明
【出演】志村喬、金子信雄、小田切みき、藤原釜足、日守新一、関京子、田中春男、千秋実、左卜全
【制作】1952年、日本

胃がんを患った役所の市民課長の生き様を描いた作品。

役所の市民課長として、真面目だがやる気なく30年間働いてきた渡邊勘治(志村喬)は、医者にかかり、自分が胃がんだと気づく。絶望した勘治は職場を無断欠勤し、小説家(伊藤雄之助)と豪遊するが気が晴れない。町で偶然、部下の小田切とよ(小田切みき)に出くわした勘治は、役所を辞めるという彼女を家に呼んで辞表に押印すると、彼女とともに過ごす。はじめは楽しんだとよも、何日もそれが続いて次第に気味が悪くなる。勘治はとよにすがり、君といると楽しい、その活気はなんだと尋ねる。とよは、ぬいぐるみを作り始めたと話し、課長も何か作れば、と勧める。勘治は役所でもできることがあると気づき、住民の陳情をたらい回しにして放置していた、新公園建設の調整を始める。5ヶ月後、公園は完成するが、勘治は帰らぬ人となる。
通夜には役所の助役(中村伸郎)をはじめ、関係者が多く出席。住民は、公園ができたのは渡邊さんのお陰だと話すが、助役は自分と市会議員の功績だと内心考えていた。助役ら幹部たちは、そそくさと通夜の会場を後にする。残っていた市民課や他の課の職員たちは、勘治の行動力に驚き、彼が胃がんであることを知っていたのかを話し合う。勘治は公園予定地を特飲街にしようとしている一派の脅しにも屈さず、関係部署の課長や助役を説得し続けており、自分には時間がないと言っていた。一人の男が焼香に現れる。彼は、勘治が雪の降る中、亡くなった新公園をパトロールしていた巡査(千葉一郎)だった。彼は、勘治は亡くなった日、ブランコに乗って楽しそうに歌を歌っていたと話す。市民課の職員たちは自分たちも渡邊さんの遺志を継ごうと息巻く。
新しく市民課長になった大野(藤原釜足)は、相変わらず陳情をたらい回しにするお役所仕事を続ける。それを見た市民課の木村(日守新一)は思わず立ち上がるが何も言えず、新公園を見に行く。そこでは、子どもたちが楽しそうに遊び、母親が夕食の支度ができたと子どもたちを呼ぶ声が響くのだった。

ナレーション(本木荘二郎)とともに主人公が紹介され、お役所仕事の実態を伝える場面、勘治が胃がんとわかり小説家と豪遊する場面、とよと出会った勘治が残りの人生をどう生きるか決める場面、勘治が亡くなり通夜の場で勘治が亡くなるまでの5ヶ月間の様子が語られる場面、と展開していく。勘治の心境の変化を推理する、倒叙物の推理小説のような見せ方が独特だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月24日 (土)

(2774) 奇跡のシンフォニー

【監督】カーステン・シェリダン
【出演】フレディ・ハイモア、ジョナサン・リース=マイヤーズ、ケリー・ラッセル、テレンス・ハワード、ロビン・ウィリアムズ
【制作】2007年、アメリカ

天才的な音楽の才能を持つ少年が、はぐれた親との出会いを夢見て起こす奇跡を描いた作品。

チェリストのライラ・ノバチェック(ケリー・ラッセル)とバンドのギタリスト兼ボーカル、ルイス・コネリー(ジョナサン・リース=マイヤーズ)は、あるパーティで運命的に出会い、一夜をともにする。ライラを一流の音楽家にしようとしていた父親のトマス(ウィリアム・サドラー)は、ライラをルイスに会わせず、連れ去る。ライラはルイスの子を身ごもるが、交通事故に遭ってしまう。ライラの命は助かるが、トマスはライラに子どもは死んだと伝え、孤児院に送る。
その子はエバン・テイラー(フレディ・ハイモア)と名付けられ、孤児院で11年を過ごす。音楽に強い興味を示すエバンは、両親に会うことを願い、孤児院を抜け出す。路上ミュージシャンの子どもを束ねて稼いでいたウィザードことマックスウェル・ウォラス(ロビン・ウィリアムズ)は、エバンにたぐいまれな才能があることを知り、オーガスト・ラッシュという芸名を与えて大もうけを企む。しかし、ウィザードの隠れ家に警察が踏み込み、エバンはウィザードの手引きで逃げる。逃げた先で教会のゴスペルを聴いたエバンは、幼い歌い手のホープ(ジャマイア・シモーヌ・ナッシュ)に楽譜の基本を教えてもらうと、あっというまに立派な楽譜を書き、パイプオルガンの演奏を始める。それを見たジェームズ牧師(ミケルティ・ウィリアムソン)は、オーガストをジュリアード音楽院に導く。オーガストは瞬く間に才覚を現し、彼の作った狂騒曲が数千人が集まる公園でのコンサートで披露されることになる。
音楽を辞めていたライラは、病気で倒れた父から、子どもは実は生きているという話を聞き、子どもを探すことにする。孤児施設の職員リチャード・ジェフリーズ(テレンス・ハワード)は、ライラの探しているのがエバン・テイラーだと気づくが、エバンは行方不明のままだった。ライラは我が子に会えるかもしれないとの思いから、辞めていた音楽を再開し、オーガストが出るコンサートに出演が決まる。(ライラは、オーガストが我が子エバンだとは知るよしもない。)
ウィザードはコンサートのリハーサルをしているオーガストを見つけ、施設に送り返すぞと小声でオーガストを脅して連れ帰る。ウィザードはオーガストを金づるとしか考えていないのだった。バンドに復帰したルイスは、街でオーガストを見かけ、即興のギターデュオを奏でて意気投合する。互いに親子だとは気づくはずもなく、二人は別れる。一度はコンサート出演を諦めるオーガストだったが、ルイスに励まされ、ウィザードの元から逃げ去り、コンサートに出演。見事な指揮を披露する。それを聞いたライラとルイスは、オーガストに導かれるようにステージに近づく。ルイスはライラの手を握る。オーガストは壇上から後ろを振り返り、幸せそうな二人を見つけるのだった。

できすぎの作り話と言えばそれまでだが、中盤あたりから「これは感動するでしょ」と確信できてしまう内容で、後半は半ば涙ぐみながら観ることになった。ラストは感動をあおりすぎず、上品な終わり方だった。評価5にしてもいいほど感動的だったが、エバンの才能や、ライラとルイスの一晩の情事の美化とか、都合よい作り話感もあったので、評価4。
ライラの父親を演じたウィリアム・サドラーは、「ダイ・ハード2」(1990)で敵のボスを演じた俳優。ライラとエバンを引き合わせることに一役買うリチャードを演じたテレンス・ハワードがなかなかいい男だったのが印象的だった。「ブレイブ ワン」(2007)や「アイアンマン」(2008)などにも出演しているが、今まであまり注目していなかった。バンドボーカルのルイスを演じたジョナサン・リース=マイヤーズは、エンドロールの楽曲のクレジットを見る限り、吹き替えではなく自分の声で歌っているようだった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2024年8月23日 (金)

(2773) ゴーストバスターズ/アフターライフ

【監督】ジェイソン・ライトマン
【出演】マッケナ・グレイス、フィン・ウルフハード、キャリー・クーン、セレステ・オコナー、ローガン・キム
【制作】2021年、アメリカ

祖父の遺志を継いでお化け退治に挑む子ども達を描いたSF作品。物語としては「ゴーストバスターズ2」(1989)の続編で、「ゴーストバスターズ」シリーズとしては、「ゴーストバスターズ」(2016)に続く4作目となる。

オクラホマ州サマービルで、老人(ボブ・ガントン(CGでハロルド・ライミスを再現))がお化け退治に挑むが、失敗に終わり、老人は死亡する。老人はかつてのゴーストバスターズのメンバー、イゴン・スペングラー。イゴンの娘でシングルマザーのキャリー(キャリー・クーン)は、家賃滞納で立ち退きをさせられ、息子のトレバー(フィン・ウルフハード)と科学好きの娘フィービー(マッケナ・グレイス)を連れて、イゴンの家に住むことにする。
フィービーは家にお化けがいることに気づき、トレバーは倉庫にあったゴーストバスターズの車を復活させる。フィービーの同級生でポッドキャスターのポッドキャスト(ローガン・キム)は、フィービーに古代の遺跡を見せる。トレバーは地元の若い娘ラッキー(セレステ・オコナー)に一目惚れし、親しくなる。四人は、フィービーの祖父イゴンがゴーストバスターとして、家族や仲間との関係を犠牲にしてゴーザの復活を阻止しようと奮闘していたことを知る。
ゴーザはフィービーの先生ゲイリー・グルーバーソン(ポール・ラッド)とキャリーの体を乗っ取り、自らの番犬に変身させ、姿(オリビア・ワイルド)を表す。フィービーたちはゴーザをイゴンの家までおびき寄せ、イゴンが仕込んでいた罠を発動させてゴーザを退治しようとするが、ゴーザの力は強力でうまくいかない。そこにフィービーからの電話を受けていた元ゴーストバスターズのレイモンド・スタンツ(ダン・エイクロイド)が仲間のピーター・ベンクマン(ビル・マーレイ)とウィンストン・ゼドモア(アーニー・ハドソン)を伴って現れ、フィービーに加勢。最後はフィービーの横にイゴンの幽霊が寄り添い、ゴーザやその他の幽霊たちの退治に成功する。キャリーは、イゴンが自分をずっと見守ってくれていたことを知り、イゴンの幽霊に抱きつく。イゴンはキャリーを優しく抱きながら姿を消していき、天に召されるのだった。

2作目から実に32年も経ってからの続編である。また、監督のジェイソン・ライトマンは、1-2作目の監督アイバン・ライトマンの息子。ドラマチックだ。2014年に亡くなったハロルド・ライミスをCGで合成して映像に登場させているが、あえてセリフをなくし、幽霊なので少しかすんでいることで、違和感がなく映像に溶け込んでいた。続編はつまらないことが多いが、本作は大当たりだった。序盤がちょっと退屈だったので、そこがスピーディだとなおよかった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2024年8月22日 (木)

(2772) 地球へ…

【監督】恩地日出夫
【出演】井上純一(声)、沖雅也(声)、秋吉久美子(声)、古谷徹(声)、岸田今日子(声)
【制作】1980年、日本

竹宮惠子の漫画が原作のSFアニメ作品。超能力を持つ人々と人類との地球を巡る対立を描いている。

地球が著しい環境汚染で滅亡寸前となり、人類は人工惑星で試験管ベビーを育て、成人検査を行って地球に住むにふさわしい人類を選別して育て直す制度を実行。人類の中から、盲目などの先天的障害を持つ一方でテレパシー能力を持つミュウの存在が確認される。人類はミュウを迫害し、ミュウは地下に隠れ住んでいた。ジョミー・マーキス・シン(井上純一)はあるときからミュウの能力を備えはじめ、ミュウの指導者ソルジャー・ブルー(志垣太郎)はジョミーを後継者に選ぶ。ジョミーは指導者となり、ミュウを地球を導くことにする。
マザーコンピュータが生み出したアンドロイド、キース・アニアン(沖雅也)は、ミュウと徹底的に戦うが、ジョミーはキースと対峙し、共通の敵はマザーコンピュータ(岸田今日子)だと告げ、マザーコンピュータを攻撃。マザーコンピュータはキースにジョミーを撃てと命じ、キースは操られるようにジョミーを撃ってしまう。マザーコンピュータが破壊されると、コンピューターテラが起動する。テラは人類だけでは完璧なシステムとは限らないのでミュウを誕生させたのだ、とキースが知りたがっていたミュウ誕生の秘密を語る。ジョミーの子、トォニイ(古谷徹)は人類とミュウの行く末を見守ることを誓う。地球に降り立った人類とミュウは、ともに新たな日の出を迎えるのだった。

昭和のSFアニメ。環境汚染された地球、コンピュータに支配された人類、ミュータントの存在といったSFの古典的な設定てんこもりの内容。10年以上の時をかける壮大な物語だが、ぶっちゃけ退屈だった。往年の名作ではあるのだが。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月21日 (水)

(2771) 小さなバイキング ビッケ

【監督】エリック・カズ
【出演】デクラン・ミーレ・ハウエル(声)、デビッド・シャール(声)、オーウェン・フロスト(声)、バイオレット・タッカー・スティール(声)
【制作】2020年、ドイツ、フランス、ベルギー

バイキングの父親を持つ少年の活躍を描いた3DCGアニメ作品。

バイキングのハルバル(デビッド・シャール)は航海中にライバルのスベン(ティム・マクマラン)と遭遇し、スベンの持っていた魔法の剣を手に入れる。バイキングに憧れている、ハルバルの息子ビッケ(デクラン・ミーレ・ハウエル)は、魔法の剣があらゆる物を黄金に変える魔力を持っていることを発見。海賊たちはいろいろなものを黄金に変えて喜ぶが、ハルバルははずみで愛する妻イルバ(エバ・サベージ)を黄金に変えてしまう。
ビッケとハルバルは嘆き悲しむが、新しく仲間になった美青年レイフ(オーウェン・フロスト)は、イルバを元に戻せるかも知れないと言い出す。かつてオーディンが兄弟げんかの絶えないロキとソーを人間界に追放しており、オーディンの住むアースガルズへと続く虹の橋ビフレストがかかる秘密の島に行けば、イルバを元の姿に戻せるかもしれない、というのだ。ハルバルは仲間と秘密の島を目指すことにする。ビッケは仲良しの少女イルビ(バイオレット・タッカー・スティール)と樽に隠れて船に乗り込む。
ハルバルの一行はスベンの一団に見つかり、船ごと魔法の剣やイルバを奪われてしまう。ビッケは打ち上げられた無人島の廃木と着ている服で帆船を作り、スベンたちを追い、酒場で剣とイルバを奪い返す。船を取り戻したハルバル一行は、秘密の島にたどり着く。レイフとビッケは険しい崖を登って島の中央の祭壇にたどり着く。レイフはそこで本性を現す。彼こそがロキだったのだ。ロキは自分で魔法の剣に振れられないため、ビッケに魔法の剣を運ばせていた。巨大化したロキになすすべないビッケだったが、魔法の剣につきまとう子リスがハンマーを使うことや、魔法を浴びても黄金に変わらなかったことを思い出し、子リスを祭壇に投げ入れる。子リスの真の姿はソー(マイケル・ハンラッティ)だった。ロキとソーは、また二人で喧嘩を始めるが、見かねたオーディンが二人をアースガルズに連れ去る。魔法の力は解け、イルバはもとの姿に戻る。ハルバルはビッケをバイキングの戦士と認め、イルバや仲間とともに航海に出るのだった。

わんぱく少年の小さな冒険というこじんまりした話ではなく、北欧神話を絡めた物語となっており、爽快感のある作品。作品を見直すと、レイフはロキとソーの話をするときに「悪いのはソーなんだが」と言っていたり、短い子供向けの作品ながら伏線がしっかり張られているのが分かる。ビッケがアイディアをひらめくたびに出てくる、パッと周囲に星が広がるシーンは、さすがに子どもっぽい安っぽさを感じてしまった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月20日 (火)

(2770) ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密

【監督】デビッド・イェーツ
【出演】エディ・レッドメイン、ジュード・ロウ、エズラ・ミラー、マッツ・ミケルセン、ダン・フォグラー、キャサリン・ウォーターストン
【制作】2022年、イギリス、アメリカ

J・K・ローリングの小説が原作のファンタジー映画。ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」(2018)の続編。

魔法動物学者のニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、キリンの出産に立ち会う。そこにクリーデンス・ベアボーン(エズラ・ミラー)らが現れ、親キリンとニュートを魔法で攻撃し、キリンの赤ちゃんを連れ去ってしまう。親キリンは息絶えるが、もう一匹赤ちゃんを産んでいた。ニュートはその赤ちゃんを連れ帰る。クリーデンスからキリンの赤ちゃんを受け取ったゲラート・グリンデルバルド(マッツ・ミケルセン)は赤ちゃんキリンの首を掻いて殺す。キリンには、善良で美しい魂の持ち主を見抜いてひざまずく習性があり、ゲラートは死んだキリンを魔法で操って自分の前でひざまずかせることで、魔法使いの指導者の選挙で勝利を得ようとしていた。ニュートは仲間とともに選挙の場に現れてゲラートの嘘を暴く。ニュートの助手、バンティ(ビクトリア・イェイツ)が連れてきた本物のキリンは、一度はアルバス・ダンブルドア(ジュード・ロウ)の前でひざまずくが、アルバスは固辞し、別の者がいるはずだとキリンに話すと、キリンは別の候補者だったビセンシア・サントス(マリア・フェルナンダ・カンディド)にひざまずく。野望を阻止されたゲラートはアルバスと魔法で戦うが、決着は付かず、消えていく。
魔法の力を持たないニュートの協力者ジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)は、愛するクイニー・ゴールドスタイン(アリソン・スドル)と結婚することになり、お祝いのパーティには、ニュートの恋人、ティナ・ゴールドスタイン(キャサリン・ウォーターストン)もやってくる。アルバスはパーティを見守った後、立ち去るのだった。

魔法動物との戦いは、見たこともない映像で迫力は感じるのだが、なにせ見たことがないだけに、どういう恐ろしさなのか、どういうルールで戦っているのか(なにをされると負けで、何をすると勝てるのか)が分からない。結果的に映像の派手さや独特さだけに着目するしか楽しみようがない。また、話自体が長くて暗く、退屈でもあった。クイニーやユスフ・カーマ(ウィリアム・ナディラム)がゲラート側につくのも、取り込まれたのか騙されたふりをしているのかよくわからず、クリーデンスがダンブルドアの血を引いていることがどういう意味を持つのかもよく分からないままだった。「ハリー・ポッター」のホグワーツ魔法学校やそのテーマ曲が作中に登場するというファンサービスがあった。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月19日 (月)

(2769) ジュラシック・ワールド/新たなる支配者

【監督】コリン・トレボロウ
【出演】クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、イザベラ・サーモン、サム・ニール、ローラ・ダーン、キャンベル・スコット
【制作】2022年、アメリカ

恐竜が人類と共存するようになった世界を描いたSF作品。「ジュラシック・ワールド/炎の王国」(2018)の続編。

ジュラシック・ワールドの従業員だったオーウェン・グレイディ(クリス・プラット)とクレア・ディアリング(ブライス・ダラス・ハワード)は、ベンジャミン・ロックウッドの孫娘メイジー(イザベラ・サーモン)と山奥で暮らしていた。近くにはオーウェンが育てたベロキラプトル、ブルーが住んでおり、彼女は子どものベータを育てていた。指名手配犯の密猟者レイン・デラコート(スコット・ヘイズ)は、ベータを捕獲し、メイジーをさらう。
テキサスではDNAの操作により巨大化したイナゴが大量発生。農作物が食い荒らされるが、恐竜の保護活動を認められたバイオシン社の種で育った穀物には被害がなく、科学者のエリー・サトラー(ローラ・ダーン)は、バイオシン社を怪しむ。エリーは、ジュラシック・パークで行動をともにしたアラン・グラント(サム・ニール)を誘ってバイオシン社の研究施設「サンクチュアリ」に向かう。そこには、おなじくジュラシック・パークでともに恐竜と戦ったイアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)もいた。アランとエリーは、施設内で育成されているイナゴのDNAの採取に向かう。
オーウェンとクレアは、メイジーを追って恐竜の闇市場が開かれるマルタ島に向かう。メイジーとベータは、バイオシン社のCEO、ルイス・ドジスン(キャンベル・スコット)と通じている闇商人、ソヨナ・サントス(ディーチェン・ラックマン)が引き取っていた。クレアはソヨナに襲われるが、スタンガンで逆襲し、メイジーとベータがサンクチュアリに送り込まれたことを聞き出す。闇取引の世界に身を落としていた元軍人のケイラ・ワッツ(ディワンダ・ワイズ)は恐竜に追われているクレアを救い、サンクチュアリ行きの飛行機に乗り込む。オーウェンはデラコートと争うが、デラコートは恐竜に食い殺される。オーウェンは恐竜に追われながらもバイクでクレアに追いつき、クレアとともに飛行機でサンクチュアリを目指す。飛行機は巨大翼竜ケツァルコアトルスに襲われながらも、何とかサンクチュアリに到着する。
メイジーは、サンクチュアリの研究者ヘンリー・ウー(B・D・ウォン)から、自らの出生の秘密を聞かされる。メイジーの母親シャーロット(エルバ・トリル)は、自らのDNAをコピーして妊娠・出産していた。自分がクローンだと思っていたメイジーは、母親がいたことに驚く。シャーロットは自分に遺伝性疾患があることを知り、自分のDNAから遺伝性疾患の情報を消してメイジーを生んでいた。巨大イナゴの誕生に手を染めてしまったヘンリーは、遺伝性疾患の操作方法を知ることで、自らの過ちを正したいとメイジーに話す。
サンクチュアリの地下研究室に潜入したアランとエリーは、イナゴのDNAの採取に成功。自力で逃げ出したメイジーと合流した二人は、バイオシン社の広報部長ラムジー・コール(マムドゥ・アチー)の協力を密かに得て、メイジーとともに施設の脱出を試みる。それに気づいたドジスンは、彼らの乗っているハイパーループポッドを停止させる。アランはエリー、メイジーとともに坑道跡を抜け、ドジスンに捨て台詞を吐いてバイオシン社を出たイアンと合流。機械音痴のイアンの運転する車は、崖地を転落するが、そこにはオーウェンとクレア、ケイラがいた。クレアとオーウェンはメイジーの無事を喜ぶ。
ドジスンは証拠隠滅のためにイナゴを焼き払うが、イナゴは施設を抜け出し、サンクチュアリは火の海となる。ドジスンは恐竜の胚を収めたスプレー缶(「ジュラシック・パーク」(1993)で登場したものだろう)を抱えて施設から逃げようとするが、口から毒液を吐く恐竜ディロフォサウルスに襲われてしまう。アランたちは、翼竜の飛行高度を制限する装置を起動させ、ベータを確保。巨大イナゴの問題解決を誓うヘンリーとともにヘリで脱出。ラムジーはバイオシン社の企みを国会で証言することになり、アラン、エリー、イアンも意見聴取に臨む。ヘンリーは遺伝子疾患を持つイナゴを放ち、アランたちはベータをブルーに返す。人類は新たな世界で恐竜と共存することになるのだった。

ジュラシック・ワールド」シリーズ完結編となる作品。前作で「アラン博士(サム・ニール)も出ていたら受け狙いのやりすぎ」と書いたが、本作では、アラン博士のみならず、エリーとイアン、さらには、「ジュラシック・パーク」で恐竜の胚を盗もうとしたドジスンまで(俳優は違うが)登場。ドジスンを襲うのが、1作目でドジスンに買収されて胚を盗んだデニスが襲われたのと同じディロフォサウルスだったりと、シリーズファンには楽しいオマージュが見られた。主人公の不死身さはお約束だが、映像や音響に迫力があり、映画館で観たら大満足の作品だろう。結局、ジュラシックシリーズ6作は、「ジュラシック・パークIII」(2001)に評価4を付けた以外は、全て評価5という結果だった。

【5段階評価】5

| | コメント (0)

2024年8月18日 (日)

(2768) ジェイソン・ボーン

【監督】ポール・グリーングラス
【出演】マット・デイモン、アリシア・ビキャンデル、トミー・リー・ジョーンズ、バンサン・カッセル、ジュリア・スタイルズ
【制作】2016年、アメリカ

「ジェイソン・ボーン」シリーズ第5作。「ボーン・レガシー」(2012)の続作。5作目にして主人公の名前がシンプルに映画タイトルになり、前作では主役がジェレミー・レナーに変わったが、マット・デイモンが主役に復帰している。

元CIAのニッキー・パーソンズ(ジュリア・スタイルズ)は、CIAの極秘作戦の情報を盗み取り、トレッドストーン計画に関わっていたジェイソン・ボーン(マット・デイモン)に接近。CIA長官のロバート・デューイ(トミー・リー・ジョーンズ)はジェイソンの殺害を暗殺者のアセット(バンサン・カッセル)に指示。CIAに勤めるヘザー・リー(アリシア・ビキャンデル)はニッキーとジェイソンの捕獲作戦のリーダーを志願し、デューイに認められる。民衆の暴動に揺れるアテネでジェイソンはニッキーと会い、ニッキーからジェイソンの父親の話を聞く。追っ手が現れたため二人はバイクで逃げるが、アセットはヘザーの指示で先回りして狙撃準備に入り、バイクの後ろに乗っていたニッキーが撃たれる。ジェイソンは彼女を助けようとするが、ニッキーは、ジェイソンを撃とうと狙い続けるアセットに再度撃たれて絶命。死ぬ間際、ニッキーはコインロッカーの鍵を投げ渡す。
ロッカーの中身を取り出したジェイソンは、父親の過去を知るマルコム・スミス(ビル・キャンプ)に接近。デューイは通信機越しにスミスに情報を与えないよう指示し、アセットを向かわせるが、ジェイソンはマルコムを脅して、ジェイソンの父親は息子であるジェイソンが殺人者にならないようにするため、トレッドストーン計画を妨害しようとして殺されたのだ、という情報を聞き出す。二人の前に現れたアセットはマルコムごとジェイソンを銃撃するが、ジェイソンは逃走。現地で指示を出していたヘザーの運転する車に乗り込むと、ヘザーは、デューイ長官はネット界の寵児、ディープドリーム社CEOのアーロン・カルーア(リズ・アーメッド)とともにラスベガスに向かうと告げ、目的は違うが自分もデューイを消そうとしているとジェイソンに話し、持っていたスマートフォンを渡す。
デューイは、アーロンを使って、プライバシーを無視した世界の監視システムを構築しようとしていたが、アーロンはデューイの計画から降りると宣言しており、デューイはテロによる暗殺と見せかけてアーロンの殺害をアセットに指示。発表会のステージで真相を暴露しようとしているアーロンを見て、デューイは壇上にいるアーロンとヘザーの即時暗殺をアセットに指示するが、ジェイソンが会場に侵入して暗殺を阻止。ジェイソンは人混みに紛れてデューイの部屋に入る。デューイこそ、ジェイソンの父親の殺害を指示した男だった。デューイの側近が部屋に現れジェイソンを撃ち、ひるんだジェイソンにデューイが銃でとどめを刺そうとするが、デューイは撃たれて倒れる。撃ったのはヘザーだった。
ジェイソンは建物の外に出ると、装甲車で逃げようとしているアセットを発見し、車で追いかける。逃げるアセットを追い詰めたジェイソンは、死闘の末、アセットの息の根を止める。
ヘザーは情報長官のエドウィン・ラッセル(スコット・シェパード)の車に乗り、自分はジェイソンの信用を得ているので組織に戻るよう説得する、説得できなければ消えてもらうと話す。車を降りたヘザーは公園でジェイソンに再会。ヘザーの誘いにジェイソンは考えておくとだけ言って立ち去る。ヘザーが自分の車に乗り込むと、そこには録音機が置かれていた。それを再生すると、ヘザーがエドウィンに話した会話が記録されていた。ジェイソンはヘザーの話を盗聴していたのだ。ジェイソンはどこかへと歩いて行くのだった。

1作目の「ボーン・アイデンティティ」(2002)から14年経ち、公開当時のマット・デイモンは46歳。腕利き暗殺者としては、ちょっと歳を取り過ぎてしまったかもしれない。1~3作目のシリアスなアクションシーンの迫力に比べると、カット割りを多くして迫力があるように見せるというありきたりなものになってしまったのは残念。次に繋がる展開だけに、次作を期待したいが、主人公役を変更しないと厳しいかも。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2024年8月17日 (土)

(2767) 必殺! III 裏か表か

【監督】工藤栄一
【出演】藤田まこと、松坂慶子、村上弘明、京本政樹、三田村邦彦、柴俊夫、鮎川いずみ、伊武雅刀、川谷拓三
【制作】1986年、日本

テレビドラマ「必殺仕事人」の映画化作品。両替商の陰謀を巡る攻防を描いている。「必殺! ブラウン館の怪物たち」の続編。次作は「必殺4 恨みはらします」。

南町奉行所の同心、中村主水(藤田まこと)の知人で八丁堀の同心、清原英三郎(川谷拓三)は、両替商の枡屋からみかじめ料をせしめていたが、ある日、両替商組合の策略により殺される。清原の妻、おこう(松坂慶子)は両替商の家の出で、真砂屋徳次(伊武雅刀)は、おこうに両替商の世界に戻るよう進言。おこうは両替商の主人となる。
仙右衛門(成田三樹夫)が主人を務める枡屋のそろばん係だった彦松(岸部一徳)は、計算を間違えた廉(かど)で仕事を首になり、一家心中する。彦松の家族を知る鍛冶屋の政(村上弘明)は、主水に無念を語る。主水は枡屋に出向き、彦松の葬式代を出すよう詰め寄るが、仙右衛門の代わりに話を聞いた枡屋の肝煎の徳次は、冷酷な表情のまま主水を追い返す。徳次はさらに、おゆみ(野坂クミ)という少女を金で雇って主水に接近させる。おゆみは主水と懇ろになると、自分と主水の関係を人前で言いふらし、死んでやるとお堂の上に登る。すると何者かがおゆみを突き落とす。おゆみは死に、主水は町人たちに白い目で見られるようになる。主水の仲間の参(笑福亭鶴瓶)は惨殺され、見せしめに首をさらされる。窮地に追い詰められた主水は、おゆみが桝屋の策略によって殺されたことを知り、怒り心頭に発する。
主水たちが潜伏する隠れ家に真砂屋の手の者が集まってくる。組紐屋の竜(京本政樹)がおとりとなって敵を引きつけ、奮闘するが、敵の刃に倒れる。主水たちは桝屋の屋敷に殴り込みに入る。飾り職人の秀(三田村邦彦)は必殺武器の簪を折られ、刀で応戦。壱(柴俊夫)は大勢に囲まれ、命を落とす。主水は徳次を追い詰めるが、徳次にとどめを刺したのはおこうだった。夫を殺された恨みを晴らしたおこうの行いを、主水は闇に葬るのだった。

前作、前々作のコメディ調おバカ作品とは打って変わって、シリアスな作品となっている。仕事人たちも必殺技連発の無敵状態で戦うのではなく、大勢を前に必死の応戦をするスタイル。もっとも主水と秀は無双状態ではあったが。物語としては、両替商の桝屋と真砂屋の関係や、彼らがどういう悪事を働いているのかがよく分からず、勧善懲悪ものに期待される爽快感に欠ける内容だった。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月16日 (金)

(2766) アナコンダ

【監督】ルイス・ロッサ
【出演】ジェニファー・ロペス、ジョン・ボイト、アイス・キューブ、エリック・ストルツ、ジョナサン・ハイド、オーウェン・ウィルソン
【制作】1997年、アメリカ、ブラジル

人々と巨大蛇との死闘を描いた動物パニック作品。続編は「アナコンダ2」(2004)。

アマゾンの先住民族シリシャマ族を追うドキュメンタリー映画の撮影のため、アマゾンの川を航行するテリー・フロレス(ジェニファー・ロペス)の一行は、座礁した船の上で救援を求めるポール・サローン(ジョン・ボイト)を救出する。航行を続ける船のスクリューにロープが絡まり、人類学者のスティーブン(エリック・ストルツ)が酸素ボンベを背負って水中に潜り、ロープを取り除くが、突如、水中で苦しみ出す。船に運び上げると、口の中からなぜか毒蜂が出てくる。スティーブンは応急措置を施され、ベッドに運ばれる。毒蜂を仕込んだのはサローンだった。はじめは紳士的だったサローンは、次第に凶暴な性格を露わにし、船を支配していく。彼は蛇専門の密漁ハンターだった。
現地ガイドのマテオ(ビンセント・カステラノス)が、一行の見えないところで巨大蛇に襲われ、行方不明になる。サローンは猿を餌にアナコンダをおびき寄せる。アナコンダが餌に食いつき、サローンは生け捕りにしようとするが、録音技師のゲアリー(オーウェン・ウィルソン)が巨大ヘビに捕まり、水中に引きずり込まれてしまう。
テリーは、カメラマンのダニー(アイス・キューブ)、リポーターのウェストリッジ(ジョナサン・ハイド)と協力してサローンを襲い、船の柱に縛り付ける。ウェストリッジとダニーが船を操舵するが、船が岩礁に乗り上げてしまう。ウェストリッジとダニー、テリーは川岸の木にロープを縛り付けて船を動かすことにする。その間、船上ではゲアリーの恋人だったデニス(カリ・ウーラー)が、復讐のためナイフを手に、縛られたサローンに近づくが、サローンは両脚でデニスを絞め殺し、川に突き落とすと、落ちたナイフを手に入れ自分を縛るロープを切断する。木にロープを縛り付けていたダニーとテリーにアナコンダが接近。二人は必死に泳いで船に戻るが、二人からアナコンダを引き離そうとしたウェストリッジはアナコンダの犠牲となってしまう。アナコンダはさらにダニーを襲ったため、テリーはアナコンダを銃で撃ち殺す。それに怒ったサローンがダニーとテリーに銃を突きつけるが、何者かがサローンに麻酔銃用の針を突き刺す。ベッドから這い上がったスティーブンだった。彼らはサローンを川に突き落とし、先に進む。
川岸に廃屋を発見したテリーとダニーは、燃料を求めて廃屋に入る。そこにはサローンが待ち構えていた。サローンは二人を縛り上げると、猿の血を二人に浴びせ、アナコンダをおびき寄せる。巨大アナコンダが現れ、二人に襲いかかろうとしたところを、サローンが網でアナコンダを捕らえ、生け捕りに成功したかに見えたが、アナコンダは網をかいくぐってサローンに襲いかかり、サローンは丸呑みされてしまう。ダニーは廃屋にガソリンをまいて火を付け、ダニーとテリーは廃屋を脱出。アナコンダは火だるまになりながらも二人を追うが、ダニーがアナコンダの脳天に斧を打ち込み、とうとうアナコンダは川に沈んでいく。窮地を脱した三人の前に、シリシャマ族が姿を現すのだった。

CGを使ったB級ホラーだが、出演者がジェニファー・ロペスをはじめ、「真夜中のカーボーイ」(1969)や「ミッション:インポッシブル」(1996)のジョン・ボイト、「シャンハイ・ヌーン」(2000)のオーウェン・ウィルソン、「メンフィス・ベル」(1990)のエリック・ストルツなど、本格的な俳優が多数登場しているという珍しい作品。オープニングで何かに襲われ自殺するちょい役のハンターも、演じているのは「コン・エアー」(1997)で強姦魔を演じたダニー・トレホである。ただし、続作以降は無名俳優ばかりのちゃんとした(?)B級映画になっている。
なお、クライマックスシーンで、アナコンダから吐き出されたサローンが、怯えるテリーにウィンクをしたように見えたのだが、この意味が分からなかった。瀕死でまばたきぐらいしかできないということだったのかもしれないが、何かを合図しているようにも見えた。
「アナコンダ」シリーズは「アナコンダ2」から「アナコンダ4」までは観ていたが、初回作は本ブログで取り上げていなかったので、今回観られてようやくすっきりした。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月15日 (木)

(2765) ドッペルゲンガー

【監督】黒沢清
【出演】役所広司、永作博美、ユースケ・サンタマリア、柄本明
【制作】2003年、日本

ドッペルゲンガーに遭遇した男女の運命を描いた作品。

ホームセンターで買い物を済ませ、車に乗り込んだ永井由佳(永作博美)は、弟の隆志(鈴木英介)を見かけ、声をかける。由佳が帰宅すると、なぜか隆志は家でテレビを見ていた。ホームセンターで見たという話をしても隆志は知らないと答え、由佳は別人に話しかけたのかと考える。そこに警察から、隆志が自殺したとの連絡が入る。家にいたはずの隆志の姿が消えており、由佳は困惑するが、電話を切ると、隆志の部屋からキーボードを打つ音が聞こえてくる。由佳と死んだはずの隆志との同居生活が始まる。
メディカルサイテック社の研究者、早崎道夫(役所広司)は、同僚の青木(戸田昌宏)、高野(佐藤仁美)とともに、人の意志でアームが動く着座式人工人体の開発に取り組んでいた。開発に行き詰まっていた彼の前に、彼と同じ姿をしたドッペルゲンガーが現れる。傲慢で怒りっぽい性格の本人に対し、ドッペルゲンガーは陽気で奔放であり、スランプに苦しむ道夫を見て深夜の研究室に向かい、室内をめちゃくちゃに荒らす。同期の上長、村上(柄本明)はこれまで道夫を支援してきたが、彼を見限らざるをえなくなる。道夫は会社の重圧から解き放たれる。
高野から由佳の話を聞いていた道夫は、由佳に会い、彼女が弟のドッペルゲンガーと暮らしていることを知る。由佳は隆志のドッペルゲンガーと付き合っていかなければならないのかを悩んでいた。道夫のドッペルゲンガーは会社から人工人体を盗み出す。さらには、隆志のドッペルゲンガーを殴り殺してひとけのない海沿いの土地に埋め、そこにいた見知らぬ男を殴り殺して大金を手に入れると、君島(ユースケ・サンタマリア)という男を雇って道夫の助手にする。道夫は研究を再開。道夫はドッペルゲンガーと会って金を受け取り、ライバル社のメディコン産業の研究情報の入手を依頼。道夫は、自分にはできない悪事をドッペルゲンガーに任せているかのようだった。
道夫は、君島の手引きで開発場所を工場に変える。そこに由佳が訪ねてきてともに働きたいと告げる。しかし由佳が話しかけていたのは道夫のドッペルゲンガーだった。ドッペルゲンガーは調子のいい受け答えをして由佳に覆い被さり、暴行しようとする。そこに道夫と君島が帰ってくる。由佳は一度走り去るが、戻ってきて道夫の研究を手伝い始める。道夫は人工人体の開発に成功し、完成品をメディコン産業に売却する算段を取り付ける。そこに道夫のドッペルゲンガーが現れ、開発の成功を祝いながら、地位と名誉は道夫に、カネと女は自分に、と語り出す。道夫はドッペルゲンガーがいなくなれ、と強く念じるがドッペルゲンガーは消えない。そこに君島が由佳と現れ、ドッペルゲンガーの頭を殴りつける。最初は君島を制止する道夫だったが、血まみれのドッペルゲンガーが叫び声を上げたのを見て、道夫自身がドッペルゲンガーを殴り殺す。
道夫は、君島、由佳とともにメディコン産業のある新潟に人工人体を運ぶ。道中、エンジンがオーバーヒートしたため、道夫は君島を連れて冷却用の水を汲みに川に向かう。君島が自らの権利を主張し始めたため、道夫は君島を川に突き落として車に戻り、由佳には君島はクビにした、と告げる。道夫は道夫のドッペルゲンガーがよく吹いていた口笛を吹き始める。それは、まるでドッペルゲンガーの邪悪な部分が道夫に同化したかのようだった。
道夫の行く手に復活した君島が現れ、道夫を殴り倒すと、車ごと人工人体を奪って逃走。道夫は君島を追いかけ、君島の乗る車の前に立ちはだかるが、君島は道夫を轢いてそのまま走り去る。君島は、人工人体を2,000万円で買い取ると言い寄る村上をも殴り倒して先へ進む。
道夫は車を入手して由佳と君島を追いかけ、君島を倒して車と人工人体を取り返すと、メディコン産業に到着。開発部長のタケダ(ダンカン)らが道夫と由佳を出迎えるが、道夫は急に翻意してタケダを殴り倒してその場を後にすると、海沿いの崖で由佳とともに人工人体を解き放つ。人工人体は自走して崖から海に落ちていくのだった。

ドッペルゲンガーを、一人の人間の二面性が分裂した存在として描いている。道夫は、自身のドッペルゲンガーを殺すことで、ドッペルゲンガーの性格を取り込む。一方、会社の重役だった村上は、横領を機に会社を首になり、道夫にまとわりついて欲望を露わにする。もしかすると道夫にまとわりつく村上は、村上のドッペルゲンガーだったのかもしれないし、ドッペルゲンガーなどいなくても、人は自らの中にドッペルゲンガーを作り出し、その性格を内在化することで豹変することもある、ということなのかもしれない。
新潟を目指す後半では、人工人体を巡って道夫と君島、村上が入り乱れるめまぐるしい展開。川に突き落とされた君島が復活した経緯や、村上が拳銃を入手する過程の描写を省略し、速いテンポで話が進んでいくが、道夫がドアを開く一撃で君島を倒したり、と、ご都合主義的にも見えた。永作博美が可愛すぎて、恐怖シーンでも、「怖いよぉ」より「可愛いなあ」が先に立ってしまった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月14日 (水)

(2764) CURE

【監督】黒沢清
【出演】役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川安奈、洞口依子、螢雪次朗、でんでん
【制作】1997年、日本

連続的な猟奇殺人の鍵を握る記憶障害の青年と、事件の謎を追う刑事の運命を描いたサイコスリラー作品。

一般市民が突然、人を殺害し首元をX字に切り裂く事件が連続して発生。刑事の高部賢一(役所広司)は、精神科医の佐久間真(うじきつよし)とともに事件を追う。千葉の白里海岸で、記憶をなくし会話の要領を得ない男(萩原聖人)が、小学生の教師の花岡(戸田昌宏)に保護される。男の服の首元には「間宮」と書かれたタグがあった。間宮はライターに火を付けながら、花岡に身の上話を促す。後日、花岡もまた、妻を殺害して首筋をX字に切り裂く。間宮はその後、警官(でんでん)の世話になるが、間宮と話し込んだその警官もまた、突然、同僚の警官を背後から銃で撃ち殺し、首を切り裂く事件を起こす。間宮は病院に送られるが、間宮を診察した女医(洞口依子)もまた、間宮に深層心理を暴かれ、公衆トイレで男を殺した上に、首を切り裂いて顔の皮を剥ぐという凶行に至る。
高部には文江(中川安奈)という妻がいたが、精神を病んでおり、激務の高部は妻の世話に疲弊していた。高部は間宮を尋問するが、間宮はのらりくらりと質問をかわして高部に逆質問をし、高部は激昂する。高部は間宮が催眠術を研究している医学生だったことを突き止め、佐久間によって隔離病棟に送り込まれた間宮の尋問に向かう。間宮は高部の心理を言い当てるような発言を繰り返し、高部は妻の世話が重荷になっていることを白状してしまう。
佐久間もまた独自に間宮を調べ、19世紀末に行われた催眠術の記録映像を高部に見せる。佐久間もまた間宮の影響を受けており、自室の壁に大きなXのひっかき傷をつける異常行動をするに至っていた。佐久間は自らの喉をX字に切り裂いて自殺。間宮は病室から脱走する。高部が、間宮の研究していた過去の睡眠術医学者のゆかりの廃病院に向かうと、そこに間宮が現れる。間宮が話を始めるが、高部は間宮に銃を突きつけ発砲。瀕死の間宮が高部に向かって指でX字を切ろうとするが、高部はさらに銃弾を撃ち込み間宮を殺害する。高部は憑き物が落ちたように、平然とファミリーレストランで食事をとる。ファミレスの店員は、客にコーヒーを提供すると、やおら包丁を取り上げ、どこかに向かって歩き出すのだった。

黒沢清の出世作とも言える作品。間宮という男を媒介として、催眠状態になった者が誰かを惨殺するという行為が伝播していくという話。「らせん」(1998)のウィルス増殖のような話でもあるし、松岡圭祐原作の「催眠」(1999)にも似ていた(「催眠」は自死の伝播だが)。役所広司の演技に注目が集まりがちだが、若い萩原聖人の堂々とした怪演も光っていた。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2024年8月13日 (火)

(2763) 回路

【監督】黒沢清
【出演】麻生久美子、加藤晴彦、小雪、有坂来瞳、松尾政寿、役所広司、武田真治、風吹ジュン
【制作】2001年、日本

インターネットを通じて広がる恐怖を描いたホラー作品。

観葉植物業者の従業員、工藤ミチ(麻生久美子)は、連絡の取れない同僚の田口(水橋研二)の家を訪ねる。田口は家にいたが、ミチが目を離した隙に、何の前触れもなく部屋で首を吊って自殺してしまう。職場仲間の矢部俊夫(松尾政寿)は、「助けて」という電話を受けて田口の家に行く。帰りに赤いテープで目張りされた扉を見つけ、中に入ると、黒い服の女性ににじり寄られ、悲鳴を上げる。矢部の様子はおかしくなり、ある日、ミチの目の前で、壁のシミとなって姿を消してしまう。ミチの友人、佐々木順子(有坂来瞳)も、赤いテープで囲われた扉の中に入ってしまい、ミチが救出して自宅に連れ帰るが、ある日、壁のシミとなって消えてしまう。
大学生の川島亮介(加藤晴彦)は、家のパソコンで、慣れないインターネット接続に挑むが、怪しげな部屋の映像が勝手に映り、「幽霊に会いたいですか」という文字が現れたため、あわてて画面を消す。大学のパソコンルームに相談に行った川島は、唐沢春江(小雪)にパソコンを調べてもらう。川島は、春江の先輩の吉崎(武田真治)から、あの世の幽霊がいられる場所が飽和し、この世で誰かが偶然作った仕組みが回路となって、幽霊がこの世にあふれ出ることになったのだ、と話す。それが赤いテープで囲われた扉と、インターネット回線だということだ。川島も幽霊を目撃するようになり、春江も奇行を繰り返すようになる。春江は川島にどこかに連れて行ってほしいと頼み、川島は春江を連れて電車に乗るが、電車は途中で止まってしまい、春江は川島のもとから消える。家に戻った春江は、幽霊に出会ったようだった。春江が抱いたのは恐怖ではなく、孤独ではないという安心感だった。
街はひとけがなくなってしまい、川島は車の中で気を失っているミチを見つけ、声をかける。二人は春江を探して廃工場に向かう。そこに春江が現れるが、春江は持っていた拳銃で自分の首を撃ち抜き、死んでしまう。車で走り去ろうとした二人だったが、ガソリンが尽きていた。川島は工場にあったガソリンを取りに戻るが、ガソリンを運ぶ容器の蓋が奥の部屋に転がり込んでしまう。そこは赤いテープで扉の囲われた部屋だった。川島もそこで、幽霊に魅入られてしまう。ミチは川島を連れ、ひとけの失せた街を車で走り抜け、ボートで沖に出ると、一隻の船の船長(役所広司)と合流する。彼らはまだ人のいる場所を求めて進んでいくのだった。

いくらでも怖い演出ができそうな設定の中、「ぎゃーっ!!」というような映像は控えめ。工場の塔の上から飛び降りる女性のシーンがあり、よくある人の落下シーンは、落ちていくシーンのあとカット割りがあって、地面に倒れている姿に変わり、落下の瞬間は映像になっていないことが多いが、本作は人が地面に激突する場面がはっきりと映像になっている。「」(2006)にも似たシーンがあり、黒沢清監督お得意の特撮なんだろう。また、「助けて」という電話口の声が、脳の奥に届くような音響効果になっていたのは効果的だった(音響の環境設定にもよるだろうが)。後半、突然、どこで入手したのか拳銃を取り出したり、工場の中にガソリンがあったり、と、急に設定が雑になるのが気になった。川島の部屋にセガサターンのソフトが転がっていて「GRANDIA」があるのが懐かしかった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月12日 (月)

(2762) らせん

【監督】飯田譲治
【出演】佐藤浩市、中谷美紀、真田広之、鶴見辰吾、佐伯日菜子、松重豊、菅原隆一
【制作】1998年、日本

鈴木光司の小説の映画化作品。呪いのビデオを巡る人々の運命を描いたホラー映画。「リング」(1998)の続編。

監察医の安藤満男(佐藤浩市)は、自分の幼い息子、孝則(菅原隆一)を水死させた過去を持っていた。安藤は、大学時代の友人で、変死した高山竜司(真田広之)の解剖を担当。高山の死因は心不全だった。竜司の胃の中から、数字の暗号が記された紙片が見つかる。暗号は「DNA PRESENT」を意味していた。竜司の恋人だった高野舞(中谷美紀)から、高山は呪いのビデオを見て死んだと聞かされた安藤は、高山の元妻、浅川玲子(松嶋菜々子)の上司、吉野賢三(松重豊)からくだんのビデオを受け取り、それを見る。安藤は山村貞子(佐伯日菜子)の呪いを実感し、ビデオが本当に人を死に至らしめると確信する。
安藤は、この世からビデオを抹消することが、高山から託された自分の使命だと考え、ビデオのマスターを受け取るため、吉野の職場に向かう。吉野は拒否するが、後日、自宅に安藤を呼び出す。吉野は以前から咳き込んでおり、首には謎の斑点が浮き出ていた。吉野はビデオとともに、浅川がとっていたメモを安藤に渡すと、安藤の目の前で絶命する。吉野はビデオは見ていないと主張しており、貞子の呪いはビデオ以外でも拡散するようだった。高山の遺体からは、謎のウィルスが発見される。ウィルスはビデオを見ることで感染するかのようだった。
舞と行動をともにするようになった安藤は、ある晩、舞と体を重ねる。舞はその後、出産の形跡を持った変死体として発見される。安藤とともに浅川のメモを調べていた山下(鶴見辰吾)の首筋にも、吉野と同じ斑点の症状が現れていた。ビデオを見た安藤が一週間が経っても自分が死なない理由は、自分が舞と関係を持ったことで、呪いの増殖に手を貸したためだと思われた。ウィルスはビデオだけではなく、メモによっても増殖するようだった。
研究室に戻った安藤は、舞の姿となってこの世に復活した貞子と対面する。貞子の目的は自分の味わった恐怖を広めることだった。貞子は、安藤の息子、孝則の復活を餌に、高山を復活させるよう安藤に命じる。安藤は山下とともに、高山のDNAを舞の体の受精卵に移植する。孝則が再び安藤の前に現れ、高山も復活する。高山は、浅川のメモを小説として出版し、貞子の恐怖がウィルスとして人々に増殖させると語る。ウィルスをきっかけに人類が変化することが起きる、安息が起きるのはずっと先だ、と言い残して、高山は舞と立ち去る。安藤は息子の手を取り、海岸にたたずむのだった。

前作が、普通に怖いホラー映画だったのに比べると、本作は、解剖されて内臓を取り出された高山の死体が動いてしゃべり出したり、っていう恐怖映像はあるが、貞子がテレビから這い出てきたり、ぎょろりと目をむいたり、といった「ぎぇー!!」っていう怖さはない。貞子の呪いの真相が、貞子の怨念を生物のように増殖させることにあるのだ、ということが示される解決編のような内容だった。原作は、「リング」「らせん」の次に「ループ」という作品があるが、今のところは映画化されておらず、本作が完結編に位置づけられている。本作はAmazonプライムで鑑賞した。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月11日 (日)

(2761) あぶない刑事フォーエヴァー THE MOVIE

【監督】成田裕介
【出演】舘ひろし、柴田恭兵、仲村トオル、加藤雅也、本上まなみ、マイク真木、小林稔侍
【制作】1998年、日本

テレビドラマ「あぶない刑事」劇場版シリーズ第5作。テロ組織と闘う刑事の奮闘を描いている。「あぶない刑事リターンズ」(1996)の続編。続編は「まだまだあぶない刑事」(2005)。

神奈川県警港警察署の刑事、鷹山敏樹(舘ひろし)と大下勇次(柴田恭兵)は、凶悪犯の城島誠(永澤俊矢)の逮捕に失敗。県警の緒方本部長(西岡徳馬)は鷹山と大下を辞職させるよう港警察署の深町課長に命令。深町は二人に捜査にかかわらないよう命じるが、鷹山と大下は、命令を無視して城島を追う。城島のボス、伊達章一郎(加藤雅也)は、城島を切り捨て、横浜沖のタンカーを乗っ取る。伊達もまた、組織の捨て駒とされる。鷹山と大下はタンカーに乗り込み、人質になっていた下村恵美(本上まなみ)を救出。横浜に突っ込もうとしているタンカーの停止に成功するのだった。

本作もヒーローアビ全開のお気楽映画。安全な時限爆弾。全く当たらない敵の弾。敵の銃撃に応戦しながら「行くぜ!」とか、もう見てらんない、という。エンディングロールでは、過去作のハイライトシーンが流れていた。最後まで放送してくれるBS日テレに感謝。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月10日 (土)

(2760) やさしい女

【監督】ロベール・ブレッソン
【出演】ドミニク・サンダ、ギイ・フライジャン、ジャン・ロブレ
【制作】1969年、フランス

若い女が自殺に至るまでを描いた作品。ドストエフスキーの小説が原作。

若い女(ドミニク・サンダ)がベランダから飛び降りて自殺する。女の夫(ギイ・フライジャン)は、同居する老女(ジャン・ロブレ)に彼女とのいきさつを告白する。
男が営む古物買取の店に、その女はやってきた。男は彼女の美しさに惹かれ、彼女に求婚。彼女は結婚は退屈で猿真似だと言いつつも、男と結婚する。しばらくは幸せな暮らしを送る二人だったが、ある日、老女の持ってきたカメオを女が高く買い取ったことから、男と女に亀裂が生じり、男は女が他の男と接することに嫉妬するようになる。男はわざと目のつくところに拳銃を置いて寝たふりをする。女は拳銃を手に取り、男の顔に銃を突きつけると、銃を元の場所に置いて立ち去る。男は女と寝るベッドをともにするのをやめる。女は病を患い、男ははじめのうちは優越感に浸るが、やがて女に謝罪し、店はくだらない、旅に出ようと告げる。女は貞淑な妻になる、と宣言。男は女を抱き寄せ、キスをするが、女は無表情のまま。そして女はベランダから飛び降りたのだった。男は、棺に納められた女の顔を抱き寄せ、「目を開けて、一瞬でいい」と告げるが、それがかなうことはなく、棺にふたがされるのだった。

結婚初夜。女はテレビの音を大音量にしてバスルームで服を脱ぎ、バスタオル姿になると、男の待つベッドの上で飛び跳ねてはしゃぎ、大声で笑う。しかし、全編を通じて、女の笑顔は一度も映らない。笑い声がもう一度ぐらいあるのと、泣く場面もあるが、常に無表情である。男と結婚したときから、女の不幸は始まったのかもしれないし、誰も彼女を幸せにはできなかったのかもしれない。音楽もほとんどないが、女がレコードを聴く場面でかかる、ブツ切れの曲が印象的だった。
フランス映画らしいと言えばらしいのだが、例によって、意味不明な映画は好きではないので、評価は2。今回観たのはBS松竹東急の「ミッドナイトシネマ」での2Kデジタル修復版。しぶい作品を放送したものだ。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月 9日 (金)

(2759) 天国の日々

【監督】テレンス・マリック
【出演】リチャード・ギア、ブルック・アダムス、サム・シェパード、リンダ・マンズ
【制作】1978年、アメリカ

労働者の男女と農場主の恋と葛藤を描いた作品。

若い工場労働者のビル(リチャード・ギア)は、上司と喧嘩して工場を辞め、恋人のアビー(ブルック・アダムス)、妹のリンダ(リンダ・マンズ)とともに旅立ち、麦刈り人として働くことにする。農場主のチャック(サム・シェパード)は美しいアビーを見初め、自分の土地にとどまるよう説得。アビーはビルとリンダを自分の兄妹だと偽り、彼らとともにいられることを条件に土地にとどまる。アビーはチャックと結婚するが、ビルはチャックの目を盗んでアビーと逢瀬を重ねる。それに気づいたチャックは、大量発生したバッタの駆除作業をしていたとき、ビルに挑みかかる。チャックの持っていた火が麦畑に燃え移り、農場は焼け落ちる。翌朝、チャックは銃を手にビルの前に現れるが、ビルはチャックの胸にナイフを突き立てる。チャックに生きる意志はないようだった。ビルはアビーとリンダを連れて逃走するが、追手がかかり、ビルは撃ち殺される。アビーはリンダを施設に入れるが、リンダはすぐそこを逃げ出すのだった。

文学的な作品なのだが、退屈気味で感情移入は難しかった。広大な小麦畑や、周辺の動物たちの映像美が見事ではあるが、抑揚にかけ、何が言いたい映画だったのかよくわからず、見応えのない内容だった。若いリチャード・ギアが見られる作品ではあった。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月 8日 (木)

(2758) 運動靴と赤い金魚

【監督】マジッド・マジディ
【出演】ミル=ファロク・ハシェミアン、バハレ・セッデキ、アミル・ナジ、ダリウシュ・モクタリ
【制作】1999年、イラン

妹の靴を無くした少年が、妹を悲しませないように奮闘するさまを描いた作品。

靴屋で赤い靴を修理してもらった少年アリ(ミル=ファロク・ハシェミアン)は、八百屋でジャガイモを買っている間に、入り口に置いていた靴を廃品回収屋に持ち去られてしまう。その靴は妹ザーラ(バハレ・セッデキ)が通学に使う靴だった。家が貧しく、家賃も払えず八百屋のジャガイモもツケで買っていることを知っているアリは、靴を無くしたことなど、とても親には言えない。アリは、先に学校に行くザーラに自分の古びた運動靴を履かせ、妹が下校した後に靴を交換して、アリが学校に行くという作戦をとる。ザーラは学校が終わると走って家に帰り、途中で待っているアリが靴を履き替えて学校に全速力で走るが、何度も遅刻し、先生に目をつけられてしまう。事情を話せば靴を無くしたことが父親(アミル・ナジ)にばれ、怒られると思っているアリは、先生にも何も事情を説明できず、涙ながらに叱責に耐える。父親と高級住宅街で庭師の仕事を探すアリは、偶然仕事にありつき、父親は高額の報酬をもらう。アリは父親に、ザーラの靴を買ってあげてほしいとお願いする。
学校でマラソン大会が開かれることになり、3等の賞品が運動靴になっているのを知ったアリは大会に参加。毎日全速力で学校に走って通っていたアリは、足腰が鍛えられており、ライバルに転ばされたりしながらも無我夢中で走ると、なんと1等でゴールイン。アリの先生は大喜びするが、3等の運動靴目当てだったアリはあからさまに落ち込み、家に帰る。その頃、父親は、街で二人分の靴を買っていた。そうとは知らないアリは、待っている妹に何も告げられず、ボロボロの運動靴と靴下を脱ぐと、皮のすりむけた両足を中庭の池に入れる。アリの足の周りには、まるで赤い靴のように金魚が群がるのだった。

同じイラン映画の「友だちのうちはどこ?」と同様、大人にとっては些細な大問題を抱えた少年が、大人に何も言えず涙ながらに奮闘する姿がいたましくほほえましい。マラソン大会に優勝して、アリはたいそう落ち込んでいるのだが、父親は靴を手に入れており、観客は「この先はどう転んでもハッピーエンドだろう」とわかる。でも本作は、そのシーンは描かない。金魚が足元にまとわりつくだけで、この後、どんな歓喜が少年に訪れるかは、観る者の想像に任せている。心憎い演出だ。さすがにこの手のイラン映画が2本続くと、イランでは「子供は大人に口答えするな」というのが基本的教育方針なのかしら、などと勘ぐってもしまうのだった。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2024年8月 7日 (水)

(2757) レッド・スコルピオン

【監督】ジョセフ・ジトー
【出演】ドルフ・ラングレン、アル・ホワイト、T・P・マッケンナ、M・エメット・ウォルシュ、ルーベン・オージー
【制作】1989年、アメリカ

ドルフ・ラングレン主演のアクション映画。ソ連のスペツナズの活躍を描いている。

ソ連のスペツナズの一員、ニコライ(ドルフ・ラングレン)は、ボルテーク将軍(T・P・マッケンナ)から、アフリカの指導者スンダタ(ルーベン・オージー)の暗殺指令を受ける。スンダタの側近カルンダ(アル・ホワイト)に接近するため、ニコライは酒場でわざと乱闘騒ぎを起こし、カルンダが収監されている牢屋に入ると、中にいたアメリカ人ジャーナリストのデューイ・ファーガソン(M・エメット・ウォルシュ)と3人で監獄を脱走。カルンダがスンダタと合流した夜、スンダタを殺害しようとするが、その行動はスンダタに読まれており、暗殺は失敗。ニコライは気絶させられ、道に放り出される。
ボルテーク将軍は、戻ってきたニコライを首にし、処刑しようとしたため、ニコライはソ連軍を脱走。砂漠をさまよって倒れたところをアフリカの原住民に助けられ、行動をともにするうち、戦士の証であるサソリの紋章を胸に刻まれる。ソ連軍によるアフリカ集落の無差別襲撃を目の当たりにしたニコライは、スンダタの拠点に戻る。スンダタはニコライの胸の紋章を見て、ニコライを仲間と認めると、息を引き取る。ニコライは残された仲間とともにロシアの拠点を攻撃。ニコライに銃を向けたボルテーク将軍を、乗っていたヘリごと強力火器で粉砕するのだった。

ソ連の非情な兵士が、自国のやり方に反発して民衆の味方になるという痛快アクション映画。上半身裸で短パン姿のドルフ・ラングレンの肉体美を愛でる映画と言えるだろう。主人公アビリティ全開で、戦闘シーンは派手で大味。強力な武器を手に入れて敵を無双していくアクションゲームのような作品だった。
本作はテレビ東京系の「シネマクラブ」で観たが、相変わらず吹替のみ、字幕なし、カットあり、とがっかり放映だった。いつもは観ないのだが、本ブログでドルフ・ラングレンの主演映画を扱ったことがなかったのと、残念ながらドルフ・ラングレン主演映画のような「キワ物」は、テレビ東京系にしか期待できない面もあり(MONDO TVとかならあるかもだが)、観てみることにしたのだった。予想通りの作品だったが、タイトルにもなっているサソリの紋章はカッコよかった。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月 6日 (火)

(2756) 22年目の記憶

【監督】イ・ヘジュン
【出演】パク・ヘイル、ソル・ギョング、リュ・ヘヨン、ユン・ジェムン、イ・ビョンジュン、チョン・グックアン
【制作】2014年、韓国

金日成(キム・イルソン)を演じることを求められた男の運命を描いた作品。

1972年、売れない中年役者、キム・ソングン(ソル・ギョング)は、妻と死別し、老いた母と幼い息子テシクと三人暮らし。ソングンは、リア王の芝居で役をもらうが、観客席の息子が見ている前でセリフを忘れ、恥をかく。楽屋で落ち込んでいる彼の前に、演劇科のホ・サムウン教授(イ・ビョンジュン)が現れ、非常に特別な公演のオーディションに参加してほしいと言われる。服を脱がされたり拷問を受けたりする謎のオーディションを経て、ソングンはオーディションに合格。彼の役目とは、南北首脳会談に臨む韓国大統領の会談リハーサルのために、北朝鮮の金日成役を演じるというものだった。役人のオ(ユン・ジェムン)の管轄のもと、訓練とでも呼ぶべき厳しい稽古が続くうち、ソングンは役に飲み込まれたのか、自分自身が金日成であると思い込み、息子にジョンイルと呼びかけてしまうほどになる。
22年の時がたち、成人してマルチ商法を手掛けるようになったテシク(パク・ヘイル)は、多額の借金を抱えていた。テシクは、都市開発のために明け渡しを求められている父の土地を売却して借金を返済することを思い立ち、売却に必要な実印を探すため、父に会うが、ソングンは自分を金日成と思い込んだまま痴呆症のようになっていた。テシクは、体の関係を持ったことのあるソン・ヨジュン(リュ・ヘヨン)を家事手伝いに雇い、父と過ごした家で再び父とともに暮らし始めるが、自身を金日成だと思い込んでるソングンに手を焼く。家の明け渡しが迫る中、22年の時を経て、とうとう南北会談が実現することとなり、長官となったオがソングンを迎えに来る。
ソングンは息子の見守る中、韓国大統領(チョン・グックアン)を相手に、金日成本人を超えるような役回りを見せる。あまりの過熱ぶりに大統領はリハーサルを中断して席を立ってしまい、オ長官は大統領に謝罪しながらも、リア王のセリフを堂々とそらんじるソングンを見て、「見事だ、バカ野郎」とほほ笑みながらつぶやく。金日成は南北会談実現前に逝去し、ソングンも数日後に亡くなる。テシクはマルチ商法から足を洗い、妊娠中のヨジュンのもとに向かうのだった。

現実に着想をえているのか、全くのフィクションなのか分らないが、非常に独創性の高い状況設定。序盤はコミカルな展開で、ソングンがどう金日成を演じるのか楽しみにしながら話が進むのだが、結局会談リハーサルが実現しないままソングン指導チームは解散となり、ソングンは老いてテシクの物語になっていく。この辺りは正直、中だるみ気味で、なんだかつまんないなぁと思えてくるのだが、ついにソングンによる会談リハーサルが実現することになり、一気に盛り上がる。終盤のソングンとテシクの親子愛も感動的で、目頭が熱くなった。
ソル・ギョングは「シルミド」(2003)では金日成暗殺を目指す部隊の隊員を演じている。金日成となんだか縁の深い俳優だ。「パーフェクト・バディ 最後の約束」では全身まひの富豪を演じている。本作では、やせたソングンが金日成に似せるために太るという役どころで、終盤ではかなり首周りに肉がついている。特撮なのか、役に合わせた体作りが有名な俳優なので自ら太ったのかもしれない。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月 5日 (月)

(2755) トゥームレイダー ファースト・ミッション

【監督】ローアル・ユートハウグ
【出演】アリシア・ビキャンデル、ドミニク・ウェスト、ダニエル・ウー、ウォルトン・ゴギンズ、クリスティン・スコット・トーマス
【制作】2018年、アメリカ

PCゲーム「トゥームレイダー」の映画化作品。アンジェリーナ・ジョリー主演「トゥームレイダー」の前日譚。

資産家の娘、ララ・クロフト(アリシア・ビキャンデル)は、行方不明の父リチャード(ドミニク・ウェスト)を探すため、父の残した手掛かりをもとに、ルー・レン(ダニエル・ウー)の船で、日本沖の絶海の孤島にあるという邪馬台国の卑弥呼の墓を探す。たどり着いた島には、トリニティという組織の現地リーダー、マサイアス・ボーゲル(ウォルトン・ゴギンズ)が、漂流者や密入国者を奴隷化して、墓の探索をしていた。ララとルーはトリニティに捕まるが、隙を見てララは逃走。島で隠遁生活をしている父リチャードに再会する。リチャードは、墓の秘密がトリニティに渡るのを阻止することを使命としていた。ララは父に協力すべく、ボーゲルの持つ通信装置を奪うが、墓の入り口を調べていたリチャードがボーゲルに見つかる。ララはボーゲルに代わって墓の入り口のパズルを解き、ボーゲルやリチャードとともに墓の中に入る。途中の罠を潜り抜け、ララらは卑弥呼の墓にたどり着く。卑弥呼は凶悪な伝染病にかかっており、それを封じるために自らの墓を封印していたのだった。ボーゲルの部下の一人が、伝染病に感染して絶命。リチャードも感染してしまう。リチャードは、卑弥呼の感染した指を持ち去ったボーゲルを墓から脱出させないようララに言い残し、卑弥呼の墓をダイナマイトで爆破。ララは死闘の末、ボーゲルの持っていた卑弥呼の指をボーゲルの口に押し込み、ボーゲルに死を与えると、崩壊する卑弥呼の墓から脱出。ララを探していたルーと合流する。
ロンドンに戻ったララは、父が死亡したという書類にサインし、父が保有していた企業グループの経営をアナ・ミラー(クリスティン・スコット・トーマス)に任せるが、彼女こそがトリニティの一味であることに気づく。彼女は金を借りた質店に行き、彼女の代名詞となる二丁拳銃を調達するのだった。

アンジェリーナ・ジョリーの当たり役をアリシア・ビキャンデルが熱演。アンジェリーナ・ジョリーがボヨンボヨンさせながら走る姿に比べると胸は控えめだが、胸の谷間もあらわにアクション全開。全力疾走するシーンは本作でも何度も登場する。卑弥呼の墓に出てくる罠は、ゲームのギミックのようで楽しいし、登山用のピッケルを使って急斜面を登る姿もゲームと重なる。ちょっとゲームを買いたくなった。続編を期待させる終わり方で、次回作が楽しみ。敵役のウォルトン・ゴギンズは「シャンハイ・ヌーン」(2000)や「プレデターズ」(2010)などでちょくちょく見かける悪役顔の俳優。
本作はBS-TBSの土曜デラックスで鑑賞したが、この番組は、冒頭やエンドロールなどのカットが多い、吹替のみ、字幕なし、と、映画ファンとしては残念。本作は話題作なので鑑賞したが、普段はこの番組は録画されていても消してしまうことが多い。BS-TBSの映画番組は総じて最低ランクだ。

【5段階評価】4

| | コメント (0)

2024年8月 4日 (日)

(2754) あぶない刑事リターンズ

【監督】村川透
【出演】舘ひろし、柴田恭兵、仲村トオル、伊原剛志、浅野温子、小林稔侍、大橋一重
【制作】1996年、日本

テレビドラマ「あぶない刑事」の劇場版第4弾。「もっともあぶない刑事」の続作。

原子力発電所をロシア製のミサイルで攻撃しようとするテロリスト集団「ブレーメン」のボス、柊誠(伊原剛志)を倒すため、港警察署の刑事、タカこと鷹山敏樹(舘ひろし)とユウジこと大下勇次(柴田恭兵)が活躍するお話。

毎度、ウケ狙いのコミカルなシーンと、やたらとかっこつける銃撃シーンが繰り返される。本作はミサイルまで登場して派手だが、当然ながら主役二名はやられることはない。映画館でテレビドラマの特別編を観る感じ。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月 3日 (土)

(2753) Like the ones I used to know

【監督】アニー・サンピエール
【出演】スティーブ・ラプランテ、リルー・ロワ=ラヌエット、ラリッサ・コリボー、ジェレミー・ヤコブ
【制作】2021年、カナダ

クリスマスイブに、別れた妻のもとにいる子供を自宅に連れ帰ろうとする父親を描いた作品。18分の短編映画。

親戚一同でクリスマスパーティをしている家の外で、我が子が出てくるのを車中で待っていたデニス(スティーブ・ラプランテ)は、しびれを切らして家の呼び鈴を鳴らす。遅れているサンタが来たのかと思って玄関に集まった子供たちは、デニスを見てがっかり。娘のジュリー(リルー・ロワ=ラヌエット)は父親に抱き着いて喜ぶが、弟のマチュー(ローラン・ルメール)は、父親に「後で来てよ」と冷たい一言を放つ。
デニスは元妻クリスチャン(ラリッサ・コリボー)と離婚しており、クリスチャンはマーティン(ジェレミー・ヤコブ)と再婚していた。この日、デニスは、ジュリーとマチューを自分の家に連れ帰る約束をしており、クリスチャンはマチューを送り出そうとするが、マチューは行きたくないと泣き喚く。デニスはマチューを連れ帰ることを諦め、ジュリーに声をかけるが、ジュリーも「明日迎えにくるんでしょ」と答える。クリスチャンとマーティンのキスを見て、デニスはたまらずトイレに駆け込んで涙ぐみ、親戚たちがバカ騒ぎしている中、トイレの窓から外に出ていく。それに気づいたジュリーは、家を出て父親一人の車に乗り込み、やっぱり行くと言って父親に抱き着く。喜んだデニスが車を出そうとすると、雪でスリップして車が動かない。ジュリーがデニスを慰めようとしたその時、クリスチャンたちや遅れてやってきたサンタ(ミンゴ・ランディアン)が車を押してくれ、車は無事に走り去るのだった。

デニスがトイレの窓から出ていくのを見て、飛び降り自殺する気か、と焦ったが、心温まる結末が待っていた。まだ幼いジュリーが父親に見せる母性愛が愛おしい。最後にデニスの車を押しているのは、映像ではわかりにくいがおそらくクリスチャンとマーティン。デニスが子供と過ごせるよう後押ししているようで、不幸のどん底だったデニスにハッピーエンドが訪れる「いい話」だった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

2024年8月 2日 (金)

(2752) 東京島

【監督】篠崎誠
【出演】木村多江、福士誠治、窪塚洋介、柄本佑、染谷将太、山口龍人、テイ龍進、サヘル・ローズ、宮武祭
【制作】2010年、日本

桐野夏生の小説の実写映画化作品。大勢の男とともに無人島で暮らす一人の女性の運命を描いている。

夫の隆(鶴見辰吾)とともに無人島に漂流した清子(木村多江)は、さらに漂着した日本人のフリーター16人と共同で暮らすことになる。無人島は東京島と名付けられる。隆は崖から落とされて死亡し、清子は、16人の中で最も粗暴で威圧的な性格のカスカベ(山口龍人)を夫とする。やがて中国人の6名も島に現れるが、彼らは日本人とは独立して生活。日本人の輪から外されていたワタナベ(窪塚洋介)は、中国人グループと行動をともにする。カスカベも崖から落ちて死亡。清子の夫はくじ引きで選ぶことになり、GMとあだ名される男(福士誠治)が新たな夫となる。
清子は過去の記憶を失っているGMにユタカと名付け、親密になるが、中国人たちが船を作り上げたことを知った清子は、ユタカら日本人を裏切り、中国人のリーダー、ヤン(テイ龍進)の女になる条件を呑み、船に乗り込む。しかし船は航海の末、東京島に戻ってきてしまう。清子が再会したユタカは、自分の名が森軍司であることを思い出していた。しばらくして清子の妊娠が発覚。清子は軍司の子だと主張し、男たちに大事に扱われるが、出産に不安を感じた清子は、ヤンの子だとヤンに告げて中国人グループに合流。彼らは新たに漂着したフィリピン女性グループと暮らしており、彼女らが乗ってきたモーターボートを修理していた。女性グループの一人、キム(サヘル・ローズ)は日本語が堪能で、清子の出産に立ち会い、清子は男女の双子を産む。清子は女児にチキ、男児にチータと名付ける。
助けが来ないことに業を煮やしたオラガ(柄本佑)は、島を出ようとすることをいっそ禁止にしようと主張し、仲間たちは賛同。反対する軍司を殴りつけ、島を出ようとしている中国人を襲撃に行く。清子はキムとともに必死に逃げるが、日本人グループは清子から赤ちゃんを奪い取ろうとする。チータは軍司が命がけで守り、チキを抱いた清子とキムはボートに乗り込み、島を脱出する。
10年後。東京島ではチータ(宮武祭)を王子とあがめる集団が形成されており、清子は東京でチキ(宮武祭、二役)の10歳の誕生日をキムと祝う。その席には、ワタナベが背負っていた亀の甲羅も置かれているのだった。

無人島ものには「青い珊瑚礁」(1980)や「キャスト・アウェイ」(2000)、「スウェプト・アウェイ」(2002)などいろいろあるが、多数の男と一人の女性、という設定は独特。孤島で他の集団と緊張関係になるという設定は「ザ・ビーチ」(2000)でも見られるが、本作は無人島で暮らす絶望感や食べる物に困っての醜い生存競争といった要素は描かれず、極限状況の設定を持ち込んでいる割には、なんだかのんびりしていて緊迫感がなかった。唯一の女性、清子の奪い合いも、命がけではなく理性的だし、住民同士はおおむね仲良し。女性二人だけでモーターボートに乗って脱出に成功するのも、なんだかな、だった。最後、チキがワタナベの口ずさんでいた歌を歌ったり、チキの誕生会の席にワタナベが身に着けていたウミガメの甲羅があったりしたが、ワタナベが東京に戻っているのかどうか、よくわからなかったし、最後に清子がチキに「聞いてほしいことがあるんだ」と言って終わるのも、何を言いたかったのかわからない。実の親はワタナベってことか。そんな伏線はなかったが。単に東京島での出来事を話す展開とは思えず、いろいろすっきりしなかった。

【5段階評価】2

| | コメント (0)

2024年8月 1日 (木)

(2751) メゾン・ド・ヒミコ

【監督】犬童一心(いぬどういっしん)
【出演】柴咲コウ、オダギリジョー、田中泯、西島秀俊、歌澤寅右衛門(とらうえもん)、青山吉良
【制作】2005年、日本

ゲイ向けの老人ホームで働くことになった女性と周囲の人々との交流を描いた作品。

塗装会社の事務員、吉田沙織(柴咲コウ)は、母と死別しており、自分と母を捨ててゲイバーを経営していた父親の吉田照男、源氏名「卑弥呼」(田中泯)を恨んでいた。卑弥呼は末期がんにかかり、ゲイバーをやめてゲイ向けの老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」を始める。卑弥呼の恋人、岸本春彦(オダギリジョー)は、沙織を「メゾン・ド・ヒミコ」でのアルバイトに勧誘。借金のある沙織は、しぶしぶ「メゾン・ド・ヒミコ」で働くことにする。
はじめはゲイの人たちを毛嫌いしていた沙織だったが、次第に入所者と打ち解けていく。入所者の一人、ルビィ(歌澤寅右衛門)が脳卒中で倒れ、介護が必要な状態になる。入所者たちは、ルビィがゲイだとは知らない息子家族にルビィを引き取ってもらう。沙織はその選択に猛反対し、「メゾン・ド・ヒミコ」を辞めてしまう。しかし、「メゾン・ド・ヒミコ」から壁の落書きを消す依頼が沙織の塗装会社に届き、沙織は入所者たちと再会。沙織は温かく迎えられる。壁の落書きは「サオリに会いたい」なのだった。

沙織が、許せないと思っていた父に理解を示すようになったり、入所者の山崎(青山吉良)と女装やコスプレを楽しんだり、春彦と抱き合おうとするも中断したり、いろいろあるわけだが、いろいろあるというだけで、とりとめのない作品だった。特に、沙織が「メゾン・ド・ヒミコ」を辞めた後、塗装会社の専務(西島秀俊)に抱かれる辺りは、「なんでそうなる?」という感じでほとんど感情移入できなかった。なお、同性愛の作品は正直、苦手なのだが、本作での男性同士のからみは、春彦が病の床にある卑弥呼に口づけをするシーンぐらいで、どぎついシーンがないのは助かった。

【5段階評価】3

| | コメント (0)

« 2024年7月 | トップページ | 2024年9月 »