(2781) 種まく旅人~みのりの茶~
【監督】塩谷俊
【出演】田中麗奈、陣内孝則、柄本明、吉沢悠、石丸謙二郎、寺泉憲、中村ゆり、徳井優、前田健
【制作】2012年、日本
祖父の茶畑の仕事を担うことにした女性と、それを支援する農水省出向の役人の奮闘を描いた作品。
デザイナーの仕事に就いていた森川みのり(田中麗奈)は、デザインを外注するという会社の方針に反発して退職。就職を世話した父親の修一(石丸謙二郎)はみのりを叱る。みのりは起業家の友人、栗原香苗(中村ゆり)を尋ねて大分に渡り、茶畑を営む祖父、森川修造(柄本明)の家を訪ねる。ちょうどその晩、農林水産省から大分県臼杵市役所農政局長に出向となった大宮金次郎(陣内孝則)が、修造の家を訪ねてくる。金次郎は現場回りを信条としており、修造とも懇意にしていた。修造は金次郎を大歓迎。翌朝、二人で修造の茶畑を見ていると、修造が心臓の病で倒れ、入院することになってしまう。修造には市の助成事業の融資の返済が迫っており、みのりは金次郎の助言を受けながら茶畑仕事を担うことにする。
市の農政課の職員、木村卓司(吉沢悠)も何かとみのりの世話を焼き、みのりの茶畑は収穫の時期に入る。みのりは茶の精製を行うが、煎り時間の加減が分からず、茶の味を出すのに苦労する。父親の修一が修造のもとを訪れ、みのりの茶畑仕事に反対するが、みのりの真剣な気持ちに触れ、そっと母親が付けていた日記を寝ているみのりの横に忍ばせる。そこには、茶を仕込むのが上手だったみのりの祖母がしていた工夫が書き込まれていた。みのりの茶は満足する味になり、それを口にした修一は、おふくろの味だ、と涙を浮かべる。
みのりと金次郎は、近所の農家にみのりの茶をふるまい、退院した修造も、みのりの茶に満足する。みのりの茶は臼杵市優秀農作物の製茶の部で優勝を獲得。表彰式に出向を終え、農水省大臣官房企画官となった金次郎がプレゼンターとして現れる。金次郎がそんな偉い人だったとは知らなかった木村とみのりは驚く。みのりは信じられない顔をしながらも、金次郎から表彰状を受け取り、嬉しそうに微笑む。みのりは、木村に手伝って貰いながら、修造と茶畑仕事を続けるのだった。
序盤でみのりが祖父の家を訪ねる辺りは「緩慢な展開だなあ」という印象で、開始30分ぐらいで、祖父の茶畑を孫娘が継ぐ作品なのね、と想像がつき、これは低評価作品だな、と予想したのだが、けっこうな感動作だった。お茶を飲むだけのシーンで泣ける映画はなかなかないだろう。石丸謙二郎の演技力に感服。「がんばっていきまっしょい」(1998)で初主演を遂げた公開当時32歳の田中麗奈の可愛らしさも作品の魅力だった。
【5段階評価】4
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