(2741) 時雨の記
【監督】澤井信一郎
【出演】渡哲也、吉永小百合、林隆三、佐藤友美、神山繁
【制作】1998年、日本
思いを寄せていた女性との暮らしを願う壮年の男性と、相手の女性との恋を描いた作品。
建設会社の専務を務める壬生孝之助(渡哲也)は、20年前に出会って一目ぼれした堀川多江(吉永小百合)に偶然再会。強引に彼女との交際を始める。孝之助には妻(佐藤友美)も二人の息子もおり、仕事にも自らを捧げてきたが、スペインでの仕事を片付けたら引退し、自分の思うままに生きることを決意。多江はとまどいながらも純粋な孝之助の愛を受け入れていく。しかし、孝之助は狭心症を患っており、仕事の合間に訪れた多江の家で発作を起こし、他界する。多江は、孝之助の親友、庄田(林隆三)から、彼が多江と二人で住むために吉野に建てようとしていた庵の設計図面を受け取り、涙する。多江は孝之助への思いを抱きながら生き続けることにするのだった。
壮年の男女の純愛を描いている。感情を高ぶらせたようなシーンはなく、抑制のきいた上品な作品だった。一方で、渡哲也と吉永小百合だから成り立つ作品でもあり、これが現実だとすると、小太りの禿げ上がった会社専務が、40代後半のおばさんにストーカー行為を働く話にもなりかねないわけで、ずいぶんと美化されたお話だった。招かれた多江の家で紳士のふるまいから豹変して抱き着いて唇を奪う壬生の行為は、普通に考えれば極めて汚らわしい行為なのに、なんだかきれいごとになっている。会社専務が仕事の合間に女性と逢瀬を重ねたり家まで一人で出かけたりできるものかね、というのも疑わしい。そしてとってつけたような狭心症で他界。死ぬと不倫が正当化されるわけでもなく、妻の無念はいかばかりか。純愛映画として描かれていることへの違和感や嫌悪感がさほど沸いたわけではないが、作り話だなあ、とも思った。
なお、本作はBS松竹東急で鑑賞したが、BS松竹東急って東映の映画も流すんだ、と知った。BS松竹東急の映画番組は、邦画でも字幕が選択できるし、ノーカットでエンドロールまで放送してくれるので、ありがたい。
【5段階評価】3
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