(2658) 張込み
【監督】野村芳太郎
【出演】大木実、高峰秀子、宮口精二、田村高広、高千穂ひずる、浦辺粂子、清水将夫
【制作】1958年、日本
殺人事件の犯人を張り込む刑事の奮闘を描いた作品。松本清張の短編が原作。
質屋殺人事件の犯人、石井久一(きゅういち)(田村高広)を追って、警視庁の刑事、柚木隆雄(大木実)と下岡雄次(宮口精二)が佐賀に向かう。石井が、かつての恋人で、今は銀行員の後妻となった横川さだ子(高峰秀子)を訪ねる可能性があったため、佐賀にあるさだ子の家で張り込みをすることにしたのだ。横川家の真向かいが旅館だったため、彼らは二階の部屋に陣取り、旅館のおかみ(浦辺粂子)らには、サンプルの到着を待つ農業機械のセールスマンだと身分を偽って張り込みを開始する。
さだ子の夫(清水将夫)は、さだ子と年が20も離れた厳格な男で、さだ子は三人の子供たちとなんとかやっているようだったが、年より老けて見え、疲れ切っているように見えた。さだ子の日常は平凡な暮らしの繰り返しで、怪しい行動を起こす様子がない。一週間が経ち、さだ子に石井が接触する形跡がないため、柚木と下岡は東京に帰る準備をする。ところがその日になって、怪しい傘直しの男が横川家に入ると、突如、さだ子が家を出る。いつもの買い物に出る時刻より早く、何より買い物かごを持っていなかった。一人で旅館にいた柚木はあわてて後を追い、何度か見失いながらも、温泉地で石井とさだ子を見つけ、物陰に隠れて様子をうかがう。いつも沈んだ様子のさだ子がいきいきとしており、二人は物陰で熱い口づけをかわす。さだ子は、石井について東京に行かなかったことを後悔し、横川家を出て石井についていく決意を口にする。しかし、石井は重い肺病を患っていた。石井は旅館で話そうと言って、さだ子と旅館に入る。
柚木は、下岡や佐賀県警の警官と合流し、温泉から上がった石井を逮捕。柚木は何も知らず戻ってきたさだ子に、今ならバスに間に合うから家に帰りなさいと伝え、バス代を置いて立ち去る。さだ子は石井が逮捕されたことを悟り、号泣する。柚木は、さだ子がまた、夫の横川との暗く平凡な暮らしに戻ることに思いを馳せる。東京行きの切符を買った柚木は、東京に残してきた恋人の高倉弓子(高千穂ひずる)に、東京に帰ったら結婚しようと電報を打つのだった。
短編小説の長編映画化にありがちな、間延びした作品だった。平凡な暮らしのことを丁寧に描き過ぎていたり、山場の尾行も、やたら見失ったり追いついたり、山肌の発破待ちで待たされたり、を繰り返す。さすがに、実はさだ子が黒幕だった、みたいなどんでん返しはないのだった。当時は冷暖房もない蒸気機関車で、東京と佐賀を往復していたのか、といったことに驚いた。
【5段階評価】3
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