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2023年12月

2023年12月31日 (日)

(2539) メカゴジラの逆襲

【監督】本多猪四郎
【出演】佐々木勝彦、藍とも子、平田昭彦、睦五朗
【制作】1975年、日本

巨大怪獣同士の戦いを描いた怪獣映画。「ゴジラ対メカゴジラ」の続編。

地球征服をもくろむ宇宙人ムガール(睦五朗)は、人類に恨みを持つ科学者、真船博士(平田昭彦)を味方に付け、ゴジラに倒されたメカゴジラの復活と、巨大怪獣チタノサウルスの支配を企てる。海洋開発研究所の一ノ瀬(佐々木勝彦)は、海中に沈んだメカゴジラ探索の手がかりを得るため、インターポールの村越(内田勝正)とともに、真船博士の屋敷を訪ねるが、応対したのは真船博士の娘、桂(藍とも子)。桂は父は死んだと告げる。桂は一ノ瀬に好意を抱くようになるが、桂はムガールの星の科学力によって死から生還したサイボーグだった。ムガールは、改めて地球人に対する桂の憎悪を蘇らせる。ムガール一味は、メカゴジラと桂の頭脳を連結し、チタノサウルスとメカゴジラを解き放つ。そこにゴジラが現れ、二体と死闘を繰り広げる。ゴジラは苦戦を強いられるが、チタノサウルスの弱点となる超音波と、ムガールの秘密基地に潜入した一ノ瀬の活躍で、桂の頭脳と一体化したメカゴジラの弱体化に成功し、ゴジラはメカゴジラとチタノサウルスの退治に成功。ゴジラは海に帰っていくのだった。

序盤は「ゴジラ対メカゴジラ」の戦いのシーンをダイジェスト版として映す。ゴジラが、興味本位で怪獣に近づいた子どものピンチを救うという、安易なヒーローもののような展開。制御不能な怪獣同士の戦いではなく、勧善懲悪ものになっていて悪者を退治したゴジラが海に帰っていくという、ご都合主義的な内容だった。女性サイボーグと人間の男性の実らぬ恋というドラマがあったのはよかった。

【5段階評価】2

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2023年12月30日 (土)

(2538) キングコング対ゴジラ

【監督】本多猪四郎
【出演】高島忠夫、藤木悠、有島一郎、浜美枝、佐原健二、平田昭彦
【制作】1962年、日本

巨大怪獣同士の戦いを描いた特撮怪獣映画。「ゴジラの逆襲」の続編。

北極海にゴジラが出現。パシフィック製薬の多湖宣伝部長(有島一郎)は、自社製品の宣伝のため、巨大なる魔神を探す取材部隊として、カメラマンの桜井修(高島忠夫)とテレビクルーの古江金三郎(藤木悠)を南海の孤島に送り込む。二人はそこで巨大な魔神キングコングを発見。眠らせたキングコングをいかだに乗せ、日本に持ち帰る。
ゴジラは日本に上陸し、暴れ始める。キングコングも本能でゴジラに気づき、戦いを挑むが、ゴジラが圧勝。キングコングは電圧線の電流を浴びて蓄電池体質になる。キングコングは街を破壊し、地下鉄に乗っていた桜井修の妹ふみ子(浜美枝)を手に持ったまま、国会議事堂に登り始める。修は睡眠薬でキングコングを眠らせ、ふみ子の恋人藤田一雄(佐原健二)の開発した強くしなやかな糸とヘリウムガスの入った気球を使ってキングコングを富士山麓にいたゴジラのもとに送り込む。二体は再び戦い始め、熱海城を破壊すると海に落下。ゴジラは行方が分からなくなり、キングコングは南の海に帰っていくのだった。

バリバリの模型映像が全開。乗り物だけではなく、そこに乗っている人間も模型だし、キングコングに握られたふみ子も模型。孤島に登場する大ダコが、ところどころ本物のタコなのが面白かった。

【5段階評価】2

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2023年12月29日 (金)

(2537) 尼僧物語

【監督】フレッド・ジンネマン
【出演】オードリー・ヘップバーン、ピーター・フィンチ、ディーン・ジャガー
【制作】1959年、アメリカ

尼僧になった女性の葛藤を描いた作品。

医師のバンダマル博士(ディーン・ジャガー)の娘、ガブリエル(オードリー・ヘップバーン)は尼僧になることを決意。修道院に入る。沈黙し、欲望を持たないことを求められる生活を送り、看護師としても仕事をする。ガブリエルは強い意志で尼僧を目指しつつ、コンゴで働きたいと願う自分の未熟さに苦しむ。ガブリエルはシスター・ルークとなり、ブリュッセルの療養所の看護師として働くことになる。精神病患者と向き合う激務に耐え、ついに念願のコンゴ行きを果たす。そこで医師のフォーチュナティ(ピーター・フィンチ)の助手を務めることになる。看護師としても優秀なガブリエルはフォーチュナティに認められるようになる。ガブリエルは結核にかかってしまうが、フォーチュナティが的確な治療を施し、大事には至らずにすむ。しかしガブリエルはベルギーに戻る指示がくだされ、父親と再会。ベルギーにはドイツ軍が攻め込み、父親は殺されてしまう。ガブリエルはドイツ軍を憎む気持ちを抑えることができず、尼僧をやめることを決意。その意志は固く、ガブリエルは着替えを終え、修道院を去るのだった。

修道女の暮らしぶりが克明に描かれ、興味深い。欲望を断ち、清貧、貞潔、服従の誓いを立てる暮らしは、自尊心すら許されない。試験にわざと落第するよう言われたり、コンゴで働きたいという願いを持つこともできないという葛藤になやみつつ、最後は肉親を殺されたことへの憎しみの感情に嘘をつくことができず、俗世間に戻ることを決意する。尼僧の葛藤をオードリー・ヘップバーンが好演していた。

【5段階評価】3

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2023年12月27日 (水)

(2536) 劇場版「きのう何食べた?」

【監督】中江和仁
【出演】西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、チャンカワイ、マキタスポーツ、梶芽衣子、田山涼成
【制作】2021年、日本

よしながふみの同盟漫画が原作のドラマの劇場版。同棲している二人の男性の日常を描いている。

弁護士の筧史朗(西島秀俊)と美容師の矢吹賢二(内野聖陽)は同棲中。史朗は賢二の誕生祝いにと京都旅行を企画。賢二は夢のような時間を喜びつつも、史朗が優しすぎるあまり、別れ話を切り出されるのではないかとか、史朗が病気で死が近いのではないか、と不安になる。史朗はそれを否定しつつも、母親の久栄(梶芽衣子)から、史朗が賢二を実家に連れてくることに苦しさを覚えており、賢二を連れてこないでほしいと言われたことを明かし、賢二に詫びる。賢二は気にしないように言うが、内心は傷ついていた。史朗は実家に赴き、正月に実家に帰らず賢二と過ごすことを宣言。おせち料理を作って正月を賢二と過ごす。
美容室で若いスタッフの田渕(松村北斗)から、頭頂部が薄くなっていると指摘された賢二は、頭髪外来に赴く。そんなことは知らない史朗は、賢二の様子がおかしいと感じて賢二を尾行。不治の病にかかっているのではと不安になる。髪を短くして金髪に染めて帰宅した賢二に、史朗は不安を口にするが、理由を聞いてほっとする。史朗は母親から肉団子の作り方を教わり、母親から家族を大事にするよう言われる。史朗と賢二は桜の下、ビールで乾杯しながら肉団子をつまみ、花見を楽しむのだった。

ちょっとしたすれ違いをコミカルに描きながら、丁寧な料理シーンを織り交ぜたほのぼの映画。同性愛者のおじさんが登場する点は「おっさんずラブ」と同じだが、それよりは肉体的なからみが控えめで、ちょっと手を重ね合う程度なので、嫌悪感は低かった。同性愛者の差別を深刻に扱うより、ほのぼのしているのは悪くなかった。

【5段階評価】3

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2023年12月26日 (火)

(2535) 白い巨塔

【監督】山本薩夫
【出演】田宮二郎、田村高廣、東野英治郎、小沢栄太郎、加藤嘉、加藤武、小川真由美、石山健二郎、藤村志保
【制作】1966年、日本

大学病院の地位争いを描いた作品。山崎豊子の同名小説が原作。

食道外科の第一人者として名を馳せる浪速大学助教授の財前五郎(田宮二郎)は、翌3月に退官を迎える東貞蔵(東野英治郎)教授の後任と目されていたが、東教授は財前のスタンドプレーを苦々しく思っており、財前に厳しく接する。出世欲の強い財前は、3月までの辛抱と、それに耐えていたが、東教授は東都大学の船尾教授(滝沢修)に相談し、自分の後釜に金沢大学の菊川昇(船越英二)を推すことにする。財前は教授選考で勝ち上がるため、岐阜の財前又一(石山健二郎)に無心をし、医学部長の鵜飼(小沢栄太郎)に高価な絵画を貢ぐ。財前は激しい選挙工作を重ね、何とか教授の地位を得る。
ところが、教授昇進に躍起になるあまり、患者への対応がおろそかになり、財前が手術を下噴門癌患者の佐々木庸平(南方伸夫)が死亡。寡婦となったよし江(村田扶実子)が訴訟を起こす。財前に何度も患者の断層写真を撮るよう進言していた里見脩二(田村高廣)は、原告に有利な証言をする。財前の誤診が争点となり、裁判は予断を許さない展開となるが、証言台に立った船尾教授が、断層写真を撮らなかったのは財前の職務怠慢だが、それをしたとしても佐々木庸平の死因となった肺がんの発見は不可能だっただろうと発言。原告は訴えを取り下げ、財前は教授の座に残ることになる。財前に逆らった里見は山陰大学へ転勤となり、里見は辞表を書いて浪速大学を去るのだった。

教授が大勢のスタッフを連れて廊下を歩く「総回診」のシーンが有名。オープニングや途中でも登場するリアルな解剖シーンも衝撃的。
大学病院のドロドロした教授ポスト争いを描いており、白黒映画だが面白かった。登場人物が多めだが、初回登場時に名前が字幕として出ることもあり、分かりやすくする工夫がされていた。病院内に多くのポストがあり、権力争いが渦巻いているのだということもうまく表現していた。

【5段階評価】4

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2023年12月25日 (月)

(2534) カリートの道

【監督】ブライアン・デ・パルマ
【出演】アル・パチーノ、ショーン・ペン、ペネロープ・アン・ミラー、ジェームズ・レブホーン
【制作】1993年、アメリカ

ニューヨークの裏社会を生きる男の運命を描いた作品。

麻薬密売人のカリート・ブリガンテ(アル・パチーノ)は、懇意にしている弁護士のデイブ・クラインフェルド(ショーン・ペン)の手腕により、30年の刑期を5年で終える。出所したカリートは悪事から足を洗うことを決意。恋人だったゲイル(ペネロープ・アン・ミラー)とよりを戻すと、資金を貯めてバハマでレンタカー店を営むことを夢見る。カリートは、自分の店に来ていた若いギャングのベニー・ブランコ(ジョン・レグイザモ)に絡まれるが、階段を突き飛ばして追い返す。カリートの子分のパチャンガ(ルイス・ガスマン)はベニーを殺して捨てようと提案するが、カリートはベニーを解放する。
一方、デイブは、服役中のイタリアンマフィアのボス、トニー・タグリアルッチ(フランク・ミヌッチ)に脅され、脱獄の手助けを強要されていた。デイブは、カリートに協力を頼み、デイブに恩のあるカリートは頼みを聞くことにする。それを知ったゲイルは激怒する。デイブはトニーの息子フランキー(エイドリアン・パスダー)とカリートを自分のモーターボートに乗せると、刑務所船を脱走してブイに待機しているトニーのもとに向かう。コカイン中毒になっていたデイブは、自分を脅したトニーを工具で殴り殺し、フランキーも殺害して海に放り込む。カリートはデイブと縁を切り、ゲイルに謝罪。デイブはトニー一味の報復により、ナイフで腹を刺されて入院する。カリートはニューヨークを脱出することにし、ゲイルに11:30発の列車の切符を手渡し、グランド・セントラル駅で待ち合わせることにする。カリートは、パチャンガにデイブを駅まで送るよう指示し、自らはデイブの病室に向かう。デイブは枕元に銃を置いて警戒していた。カリートは銃の弾をこっそり抜いてデイブに返し、病室を去る。そこに、トニーの息子ビニー(ジョセフ・シラーボ)が警官に扮して現れる。デイブはビニーに銃を向けるが弾は出ない。デイブはビニーに頭を撃ち抜かれて死亡する。
カリートは店に戻って、ため込んだ資金を手にすると店を脱出。店に来ていたビニーと仲間3人が彼を追いかける。カリートは駅で4人と撃ち合い、ゲイルの待つ列車に駆け込む。間に合ったと思った瞬間、カリートは近くにいた男に銃で撃たれる。男はベニーだった。パチャンガがカリートを裏切り、ベニーを導いたのだった。駅のホームに倒れたカリートは持っていた金をゲイルに手渡し、街を出るよう告げる。カリートはタンカの上でこれまでを回想し、目を閉じるのだった。

逃れようとしても悪の世界に引きずり込まれてしまう男の悲しい運命を克明に描いた作品。成功に手が届いたと思ったら撃たれて死ぬという、ギャング映画の定番。オープニングで主人公が撃たれるシーンから始まるので、「この映画はこう終わりますよ」とある種、開き直っているのが潔いっちゃあ潔い。イタリアンマフィアの復讐への執念は、ステレオタイプではあったが。

【5段階評価】4

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2023年12月24日 (日)

(2533) ボルサリーノ

【監督】ジャック・ドレー
【出演】アラン・ドロン、ジャン・ポール・ベルモンド、カトリーヌ・ルーベル、ミシェル・ブーケ、アンドレ・ボレ
【制作】1970年、フランス、イタリア

フランスのギャングが成り上がる様を描いた作品。

1930年のマルセイユ。刑務所から出所したロック・シフレディ(アラン・ドロン)は、恋人のローラ(カトリーヌ・ルーベル)を探し当てる。彼女はフランソワ・カペラ(ジャン・ポール・ベルモンド)の恋人になっていた。ロックとフランソワは殴り合った末に意気投合。二人はギャングとしてマルセイユの街でのし上がっていく。彼らは食肉業界のボス、ポリ(アンドレ・ボレ)に戦いを挑む。フランソワはポリのお気に入りの若い娘、ジネット(ニコール・カルファン)をたらし込み、ポリの情報を得る。それに気づいたポリはジネットを殺害。ロックとフランソワはポリを撃ち殺す。
ロックとフランソワは、次期市長の呼び声高い弁護士のリナルディ(ミシェル・ブーケ)に接近。マルセイユ最大の実力者マレロ(アーノルド・フォア)は、リナルディに手を出さないようロックとフランソワを脅すが、リナルディは暗殺されてしまう。フランソワは、マレロの取り巻きのダンサー(クリスチャン・ティリティレ)が、自分たちとマレロを敵対させるためにリナルディを襲ったとにらみ、ロックを暗殺するが、マレロ側のフランソワ達への報復はやまない。ロックとフランソワは、あえて二人でマレロの賭場へ出向き、フランソワがバカラに興じる間に、ロックがマレロに面会。丸腰であると油断させて、得意のペーパーナイフ投げでマレロを葬ると、賭場に味方を襲撃させ、殺人の疑いから逃れることに成功する。
二人は、息のかかった男を市長に祭り上げ、地位と資産を不動のものにする。豪華なパーティのさなか、フランソワは、ロックと殺し合う前にローラとイタリアに渡ると宣言。しかし、パーティ会場を出たところを何者かに撃たれ、ロックの腕の中で息を引き取るのだった。

ギャング映画にありがちな、どれだけ成功者になっても機関銃で撃ち殺されればそれまでよ、という内容。主人公のフランソワも結局、撃ち殺されて終了。古典と言えば古典だが、あまりにも予定通りの終わり方だった。

【5段階評価】3

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2023年12月23日 (土)

(2532) ガメラ3 邪神覚醒

【監督】金子修介
【出演】中山忍、前田愛、山咲千里、手塚とおる、藤谷文子、小山優
【制作】1999年、日本

巨大怪獣ガメラの活躍を描いた作品。「ガメラ2 レギオン襲来」の続編。

ガメラに両親を殺された過去を持つ中学生の比良坂綾奈(前田愛)は、奈良県のほこらで産まれた怪獣にイリスと名付け、ガメラを倒す思いをイリスに込める。イリスは成長し、綾奈と一体化しようとするが、綾奈を心配する同級生の守部龍成(小山優)は、綾奈を救い出す。綾奈は病院に運び込まれるが、内閣官房の朝倉美都(みと)(山咲千里)は綾奈を京都に連れ去る。鳥類学者で巨大怪獣ギャオスに詳しい長峰真弓(中山忍)は、ガメラと心を通わせる能力を持つ草薙浅黄(あさぎ)(藤谷文子)と合流し、朝倉とつながりのあるプログラマー、倉田真也(手塚とおる)に導かれて朝倉が連れ去った綾奈を発見。一同は京都駅に向かうが、そこに、綾奈との一体化を目指すイリスが現れる。そこにガメラもやってきてイリスと戦う。イリスはガメラを倒して綾奈を体内に取り込む。綾奈はイリスの体内で、イリスが綾奈の親戚を皆殺しにしていたことを知る。ガメラは再び立ち上がってイリスを倒し、イリスの体内から綾奈を救い出す。その後、ギャオスの大群が日本に集結していることが判明。ガメラは深手を負いながらもギャオスに立ち向かうのだった。

イリスの造形は、序盤は触手がウネウネしていながらもなかなかセンスがよく、最終形態は「ヱヴァンゲリヲン」を彷彿とさせた。政府の動きや報道の描写はリアルで、「シン・ゴジラ」への流れも見て取れる。中山忍と前田愛のかわいさが、作品に花を添えていた。

【5段階評価】3

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2023年12月22日 (金)

(2531) 幸せへのまわり道

【監督】マリエル・ヘラー
【出演】マシュー・リス、トム・ハンクス、クリス・クーパー、スーザン・ケレチ・ワトソン
【制作】2019年、アメリカ

実在するテレビ司会者と、雑誌記者との交流を描いた作品。

雑誌「エスクァイア」の記者、ロイド・ボーゲル(マシュー・リス)は、子ども向けテレビ番組の司会者フレッド・ロジャース(トム・ハンクス)の紹介記事を書くことになり、フレッドの番組製作現場に向かう。フレッドは、ロイドを歓迎し、彼のインタビューに答えつつも、顔に怪我をしているロイドに質問を投げかける。ロイドは、姉ロレイン(タミー・ブランチャード)の結婚式に現れた父親のジェリー(クリス・クーパー)を長い間恨んでおり、顔の傷はジェリーに殴りかかったときにできたものだった。ジェリーは、ロイドの母親が病気に伏せっているときに、家族を捨てて家を出ていた。そのまま母親はなくなっており、ロイドはジェリーに強い怒りを持ち続けていた。
ジェリーはロイドに謝罪をしようと、ロイドの家を訪ねるが、ロイドははねつける。しかしロイドの妻アンドレア(スーザン・ケレチ・ワトソン)が、ロイドの不在中にジェリーとジェリーの現在の妻ドロシー(ウェンディ・マッケナ)を家に上げてしまう。不愉快さを隠せないロイドが、母親が死ぬ間際まで叫んでいたとジェリーを強く責めると、ジェリーは頭を抱えて苦しみ、倒れてしまう。ジェリーは病に冒されており、死期が迫っていた。
ロイドはフレッドと話すうちに、怒りは自分で鎮めることができること、ジェリーの存在がいまのロイドを作り上げていることを認めるようになる。ロイドはジェリーの家を訪ね、自宅療養中のジェリーとともに過ごすことにする。フレッドもジェリーの家を訪問し、ボーゲル一家とひとときを過ごす。ジェリーはやがて天に召され、ロイドは幼い息子とともに過ごす時間を増やすことを決意する。フレッドは番組収録を終えると、スタジオのピアノを一人奏でるのだった。

子ども番組用の街のミニチュアセットを効果的に使った場面転換など、映画らしい趣向を凝らした作品。フレッドの謙虚な言葉には説得力があった。最近、誰かを許せないという怒りを抱えている人におすすめの作品。

【5段階評価】4

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2023年12月21日 (木)

(2530) 愛は静けさの中に

【監督】ランダ・ヘインズ
【出演】ウィリアム・ハート、マーリー・マトリン、パイパー・ローリー、フィリップ・ボスコ
【制作】1986年、アメリカ

聾学校の教師と、聾唖の女性従業員との恋を描いた作品。

聾学校の教師ジェームズ・リーズ(ウィリアム・ハート)は、学校で清掃員をしているサラ・ノーマン(マーリー・マトリン)という美しく若い聾唖の女性に興味を持つ。ジェームズは彼女に会話を教え始め、二人は恋に落ちていく。サラはジェームズの愛を受け入れつつも、彼が自分に声を出させようとすることに抵抗する。ジェームズは彼女に声を出すことを強要しないようにしながらも、自分の思い通りにならないサラにいらだちを覚えてつらくあたってしまい、サラはジェームズの元を離れてしまう。ジェームズはサラの母親(パイパー・ローリー)の家を訪ね、サラに会いたいと話す。サラはジェームズに会わないことで寂しさを感じるようになる。サラは聾学校の卒業パーティに出席してジェームズに再会。二人は再び心を通わせ合うのだった。

本作でアカデミー主演女優賞を受賞したマーリー・マトリンは、本人も聴覚障害者。作品内では障害者の差別のような暗い描写はなく、男女の思いがすれ違う要素として、聴覚障害が取り上げられている形式。恋物語自体はさほど特徴的ではなかったが、公開当時21歳のマーリー・マトリンの美しさは出色だった。

【5段階評価】3

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2023年12月20日 (水)

(2529) 憧れを超えた侍たち 世界一への記録

【監督】三木慎太郎
【出演】栗山英樹、大谷翔平、ダルビッシュ有、村上宗隆、源田荘亮、佐々木朗希、山本由伸、ラーズ・ヌートバー
【制作】2023年、日本

WBCの日本代表の活躍を捕らえたドキュメンタリー映画。

栗山英樹が監督に決まり、メジャーリーガーを含む選手決めからキャンプ、そして予選、本戦の戦いを伝えている。

鈴木誠也の怪我による離脱、源田の右手小指骨折、メキシコ戦での3点差に追いついたとたんに2点差を付けられた絶望的な流れなど、決して順風満帆ではなかった日本代表の戦いぶりが思い出される。結果は分かっているのだが、途中に出てくる選手達の声が興味を引きつけてくれた。

【5段階評価】3

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2023年12月19日 (火)

(2528) 大忠臣蔵

【監督】大曾根辰夫
【出演】市川猿之助、高田浩吉、板東蓑助、高千穂ひづる、石黒達也、有馬稲子、山田五十鈴
【制作】1957年、日本

仮名手本忠臣蔵の映画化作品。藩主の仇討ちをもくろむ義士を描いている。

浅野内匠頭(北上弥太郎)は、吉良上野介(石黒達也)に斬りかかるが、加古川本蔵(板東蓑助)に止められ、切腹を命ぜられる。家臣の大石内蔵助(市川猿之助)は藩主の後を追って自害するのではなく、吉良上野介を成敗することを決意。それを悟られぬよう酒を飲んで遊んでいる風を装いながら、準備を進め、討ち入りを果たす。宿願を遂げる家臣らはみな、切腹となるのだった。

早口で昔の言葉が多いので、日本語でありながら何を言っているのか分かりづらい作品だったが、今回のBS松竹東急は、字幕付きだったのがよかった。

【5段階評価】2

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2023年12月17日 (日)

(2527) 勝手にふるえてろ

【監督】大九明子
【出演】松岡茉優、渡辺大知、北村匠海、石橋杏奈、片桐はいり
【制作】2017年、日本

綿矢りさの同名小説の映画化作品。交際経験のないOLの恋愛を描く。

花火会社に勤める経理職のOL、江藤良香(よしか)(松岡茉優)は、中学時代の旧友の一宮(北村匠海)をイチと呼び、10年以上、片思いを続けていた。交際経験のない良香に、同僚の霧島(渡辺大知)が交際を申し込んでくる。良香は告白されたことに喜びつつも、自分が本当に好きなイチに自分の気持ちをぶつけることを決意。同窓会を企画してイチを呼ぶ。級友の家にイチと数人が集まる企画が実現し、良香はイチと二人きりで話すチャンスを得る。絶滅動物が好きな良香は、同じ趣味を持つイチと意気投合して幸せの絶頂。イチが自分を「キミ」と呼ぶのに気づき、そのことを聞くと、イチは「ああ、名前なに」と聞き返す。イチは自分の名前を覚えていなかったのだ。良香は絶望のどん底に沈む。
良香は、次第に霧島との仲が深まり、彼と付き合うことを考え始める。しかし、彼は良香の親友、月島来留美(石橋杏奈)から、良香が交際経験がないということを聞かされていた。良香は、霧島が自分が処女であることに可愛さを感じていると受け止め、彼を振ってしまう。良香は妊娠したと偽って産休を取り、来留美にも悪態をついて会社を去る。霧島にも冷たい視線を投げかけられ、良香は真の孤独を味わう。良香はたまらず霧島を電話で呼び出す。霧島は良香のわがままな態度にあきれながらも、素直に好きだと告げる。良香は霧島に飛びつき、勝手にふるえてろ、と言って口づけをするのだった。

松岡茉優の初主演作。個性派俳優に囲まれた松岡茉優が、アンモナイトの化石を愛でながら妄想をまき散らしたりオリジナル曲を歌い出したり、という独特の演出は、好みのわかれるところだろう。個人的には、あまり好きではないが、本作はストーリーはまともなので、耐えられた。

【5段階評価】3

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2023年12月16日 (土)

(2526) 二十才の微熱

【監督】橋口亮輔
【出演】袴田吉彦、遠藤雅、片岡礼子、山田純世
【制作】1993年、日本

ゲイの若者の生きざまを描いた青春映画。

19歳の大学生、島森樹(たつる)(袴田吉彦)は、ゲイ向け風俗店で働いていた。高校生の宮島信一郎(遠藤雅)は、樹に好意を寄せており、信一郎の幼馴染のあつみ(山田純世)は、信一郎の煮え切らない態度にいらだっていた。樹はサークルの先輩、鈴木頼子(片岡礼子)に飲みに誘われ、親交を深める。樹は頼子の家に呼ばれるが、頼子の父親(石田太郎)は、樹の客だった。頼子の家族と夕食をともにする樹だったが、気まずさから食卓で食べ物を吐いてしまう。
店に戻った樹は、マスター(佐藤恒治)から、信一郎が客とトラブルを起こしているので行ってほしいと言われる。ホテルの部屋に行くと、若い男(橋口亮輔)の前で信一郎が委縮していた。樹も硬直してしまって客の要求にこたえられず、二人は客から苦情を言われ、樹は嗚咽してしまう。しかし、客から解放された二人は、朝方の都心を歩きながら談笑するのだった。

大きな物語性はなく、ゲイの世界に身を置く青年の、一般人にはなじみの薄い日常を描いている。この手の落ちのない映画は、好きな部類の作品ではなかった。同じ橋口亮輔監督作品で、同じく同性愛の若者が登場する「渚のシンドバッド」も、共感できず面白くなかった。顔をしかめるような気持ち悪い描写がなかったのが救い。

【5段階評価】2

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2023年12月15日 (金)

(2525) U-571

【監督】ジョナサン・モストゥ
【出演】マシュー・マコノヒー、ビル・パクストン、ハーベイ・カイテル、ジョン・ボン・ジョビ
【制作】2000年、アメリカ

ドイツの潜水艦に突入した米海兵の死闘を描いた戦争映画。

ドイツ軍の潜水艦U-571が英軍の攻撃を受け損傷。U-571の救難信号を傍受した米軍は、この潜水艦が戦局を左右するエニグマ暗号機を積載していることを知り、ドイツ兵になりすました米兵を送り込み、奪取する計画を立てる。ドイツの潜水艦に偽装した米潜水艦S-33の艦長ダルグレン(ビル・パクストン)は、副長のアンディ・タイラー大尉(マシュー・マコノヒー)、クロフ曹長(ハーベイ・カイテル)や、ドイツ語のできる通信手ウェンツ(ジャック・ノーズワージー)らを送り込む。ゴムボートでU-571に接近したアンディらは、U-571の甲板にいるドイツ兵を急襲。犠牲を出しながらもU-571を制圧し、エニグマ暗号機を入手する。ところが、捕虜を連れてS-33に帰還しようとしたところ、突如現れたドイツ潜水艦に、S-33を撃沈されてしまう。ダルグレン艦長は死亡。アンディらは故障したU-571に再度乗り込み、ドイツ潜水艦の魚雷を回避し、逆襲に成功する。彼らは味方の支配圏に逃げ込もうと蓄電池を頼りに海上を進むが、ドイツの駆逐艦と遭遇してしまう。やり過ごすのは無理と判断したアンディは、駆逐艦の通信用アンテナを砲撃により破壊し、潜水して逃避する。駆逐艦は大量の爆雷を放ち、U-571を攻撃。U-571は損傷を受けながらも深く潜航し、爆雷から逃れると、死んだ米兵を含んだ廃棄物を海に放出。撃沈されたと見せかけて駆逐艦の前方に浮上し、故障した後方魚雷を修理して駆逐艦を仕留める作戦に出る。損傷により制御不能となったU-571は一気に浮上を始め、アンディは若くて小柄なトリガー(トム・グイリー)に後方魚雷の発射装置を復活させる。トリガーは浸水した発射装置のレバーを命を犠牲にして操作し、魚雷は復活。猛攻を受けながらも海上に出たU-571は後方魚雷で駆逐艦を撃沈させる。生き残ったメンバーは沈みゆくU-571からゴムボートで脱出。ついに米軍機に発見されるのだった。

狭い潜水艦の中に男ばかりがひしめく硬派な戦争映画。艦長への昇進を望みながらも、現艦長から、仲間思いが故の冷徹な決断力の欠如を指摘され、昇進を見送りにされたアンディ大尉が、U-571で厳しい決断を重ね、作戦を通じて艦長として成長する姿が描かれている。極限状況の中で船がきしむ音や駆逐艦のソナーが緊張感を演出していた。
ドイツ兵になりすました米兵が再びドイツ潜水艦で味方陣内に逃げ込まなければならないという絶望的な状況設定が、作り込み過ぎの設定に見えたが、戦時中は珍しくないことだったのだろうか。レバー操作だけで魚雷管が治ったり、魚雷一本で敵駆逐艦が大破したりするのは安易だったが、ここは映画のわかりやすさを重視したということだろう。

【5段階評価】3

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2023年12月11日 (月)

(2524) アドレナリンドライブ

【監督】矢口史靖
【出演】安藤政信、石田ひかり、松重豊、徳井優、角替和枝
【制作】1999年、日本

ヤクザの裏金を手に入れた若い男女の逃避行を描いた作品。

レンタカー店に勤める気弱な青年、鈴木悟(安藤政信)は、車の運転中、同乗していた先輩社員(徳井優)のいたずらで目を塞がれた弾みで、前方のジャガーに追突。先輩社員は逃げてしまい、ジャガーに乗っていたヤクザの黒岩(松重豊)は、悟を組事務所に連れて行く。そこでは、ノミ行為で得た裏金の仕分け作業が行われていた。悟が黒岩に落とし前を求められた瞬間、ガス漏れによる爆発事故が発生。偶然近くのコンビニにいた、引っ込み思案な看護師の佐藤静子(石田ひかり)は、爆発音に気づいて現場に駆けつけ、救急隊員に促されて、悟を駆けつけた救急車に運び込む。救急車には瀕死の黒岩と、裏金の入ったジュラルミンケースも運び込まれる。走り出した救急車の中で黒岩が暴れ、開いた後部ハッチから悟と静子は投げ出されてしまい、救急車は道路脇の川に突っ込んでしまう。静子は救急車に飛び込んで黒岩に救命措置を施そうとするが、悟は社内に散らばった大量の紙幣をかき集め始める。はじめはその行為を咎める静子だったが、悟とともに救急車から脱出し、黒岩を乗せたまま川に沈む救急車を見下ろす。悟と静子が手に入れた裏金は2億円を超えていた。二人は札束を山分けして別れる。
ところが、川に沈んだはずの黒岩は生きており、静子の勤める病院に担ぎ込まれる。黒岩が子分を使って悟を探そうとしていることに気づいた静子は、悟とともに金を持って逃走。二人はたどり着いた先のホテルのスイートルームに宿泊する。悟は札束をホテルの金庫にしまうが、静子は持ち歩くことにする。意気投合した二人は高級な服を身につけ、レストランで食事をするが、口喧嘩がきっかけで別行動となる。
黒岩は、静子の居場所を突き止め、ベテラン看護師(角替和枝)を味方に付けて病院を抜け出すと、静子のホテルの部屋を探索。ホテルに帰っていた静子を松葉杖で殴り、部屋の金庫を開けるよう要求するが、静子は暗証番号を知らないと主張。一方の悟も黒岩の子分達に見つかってしまう。子分たちは黒岩を裏切り、静子を拘束してホテルの金庫を持ち出してバンに運び込むが、待ち伏せしていた黒岩に襲われる。悟はバンに乗り、静子と黒岩を乗せて逃走するが、子分達の車に追われて横転。バンは金庫の中身ごと炎上し、一同はなすすべなくそれを見つめる。
ホテルに戻った悟は、一文無しになって呆然とするが、実は静子は、金庫の中身をあらかじめ取り出しており、泡の張った浴槽の中に隠していた。二人はスポーツカーに乗り込み、走り去るのだった。

現実味の薄いコメディだが、気弱な二人が大金をまんまと手に入れられるか、ドキドキする展開が面白い。この手の作品では、一攫千金が泡と消えるのも定番なので、そうならないといいなあと見ていたら、バンごと金庫が炎上。「ああ、こっちの展開かぁつまらん」と思ったら、最後にどんでん返しがあったのは痛快。二人の恋の予感もあるハッピーエンド。公開当時27歳の石田ひかりの超ミニスカート姿も魅力的だった。

【5段階評価】4

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2023年12月10日 (日)

(2523) アルキメデスの大戦

【監督】山崎貴
【出演】菅田将暉、柄本佑、舘ひろし、浜辺美波、笑福亭鶴瓶、國村隼、小林克也、橋爪功、田中泯
【制作】2019年、日本

三田紀房の漫画「アルキメデスの大戦」の実写版。巨大戦艦建造阻止のために奮闘する数学者を描く。

1945年4月7日、戦艦大和は米軍の攻撃機の猛攻に遭い、撃沈する。その12年前。海軍の山本五十六少将(舘ひろし)は、今後の戦争は空母が制すると考えるが、嶋田繁太郎少将(橋爪功)は巨大な戦艦が必要と主張。山本は空母より安い戦艦の建造費の見積もりが怪しいとにらみ、数学の得意な若者、櫂直(かいただし)(菅田将暉)に建造費の見積もりを依頼する。軍人嫌いの櫂は、協力を否定。山本に付き添っていた田中正二郎少尉(柄本佑)は櫂の失礼な態度に腹を立てるが、山本は戦艦建造案が通れば必ず無謀な戦争が起こると主張。山本の依頼を無視して渡米をしようとしていた櫂だったが、直前で思いとどまり、依頼を受けることにする。山本は櫂を少佐にし、田中少尉をつける。はじめは嫌がっていた田中だったが、山本の優秀さに惚れ込み、熱心に協力するようになる。戦艦の情報を集めるため、軍艦に乗り込んだり、大阪の商人(笑福亭鶴瓶)の協力を得たりしながら、櫂は用いられる鉄の量から建造費を導く推定式を完成。戦艦の建造費が見積もりの倍近いことを明らかにする。平山忠道技術中将(田中泯)は、金額があからさまになって他国に戦艦の規模を予測されるのを防ぐ深謀遠慮によるものだと説明。新造艦最終決定会議の結論は、平山案に傾きかけるが、櫂は、平山案には大波による剪断力に弱い欠陥があることを指摘。自ら書き上げた、剪断力を確保した設計図を示す。平山はそれを認め、自らの案を撤回する。
一ヶ月後、平山は櫂を呼び出し、櫂の導いた数式の提供を要求。櫂が拒否すると、平山は、櫂自身が設計図を通じて戦艦を創り上げたこと、それを実際に見たいと思わないはずがないと指摘。櫂は言葉に詰まる。さらに平山は、戦争の負け方を知らず、国が滅びるまで戦う日本人が生まれ変わるには、国の依り代となる美しい戦艦が海に沈むことが必要だと説く。9年後、戦艦大和は完成し、櫂は大和が海を行く姿を見て涙するのだった。

いきなり戦艦大和轟沈のシーンから始まる。「タイタニック」を彷彿とさせる大迫力。船が傾き甲板を人が滑り落ちたり、手すりから落下した人が船体に当たりながら海に落ちたり、船体が大きく会場に持ち上がったり、といったシーンは、もはやパクリのレベル。ただこれは、「タイタニック」がやりたいことを全部やってしまったからだ、とも言えるだろう。
登場人物の造形は明快で、人数も多すぎず、物語は分かりやすい。最後の平山の大和必要説には説得力があり、このような考え方があるのか、と衝撃を受けた。通説なのだろうか。どんでん返しの効いた素晴らしい内容だった。

【5段階評価】4

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2023年12月 6日 (水)

(2522) 蜜蜂と遠雷

【監督】石川慶
【出演】松岡茉優、森崎ウィン、鈴鹿央士、松坂桃李、斉藤由貴、鹿賀丈史
【制作】2019年、日本

恩田陸の小説の映画化作品。ピアノコンクールに出場するピアニスト達を描いている。

子どもの頃からピアノに勤しんでいた栄伝亜夜(松岡茉優)は、芳ヶ江国際ピアノコンクールに出場。子ども時代に、コンクールでピアノが弾けずに会場を去るという経験を乗り越えようとしていた。コンクールには、自由奔放なピアニスト、風間塵(鈴鹿央士)や、亜夜の幼なじみのマサル・カルロス・レヴィ・アナトール(森崎ウィン)、生活者の音楽を目指す高島明石(松坂桃李)らも出場。亜夜は彼らと接しながらコンクールを勝ち進む。
それぞれが自らの思いをピアノに込め、結果的に明石は予選で敗退し、1位はマサル、2位が亜夜、3位が塵となった。亜夜は悩みながらも自分の演奏を成し遂げ、過去を克服するのだった。

小説として描かれた音楽を映画で再現するのは挑戦的な営みである。「BECK」のように音楽を聴かせないという「逃げ方」をする作品もある中、本作では音楽然り、俳優陣の演奏の姿しかり、映画の中に刻み込んでいるのが潔かった。文学作品を映画化したらこうなるという正道を行く作品。

【5段階評価】3

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2023年12月 5日 (火)

(2521) リトル・ブッダ

【監督】ベルナルド・ベルトルッチ
【出演】アレックス・ビーゼンダンガー、イン・ルオチェン、キアヌ・リーブス、ブリジッド・フォンダ、クリス・アイザック
【制作】1993年、フランス、イギリス

仏教の高僧の生まれ変わりと目された少年の旅と仏陀の半生を描いた作品。

輪廻転生が信じられているブータンで、高僧のノルブー(イン・ルオチェン)は、亡くなった師匠ドルジェーの生まれ変わりがシアトルにいるらしいとの情報を得て、シアトルに渡る。ノルブーは、生まれ変わりと目される少年ジェシー・コンラッド(アレックス・ビーゼンダンガー)に会い、仏陀の絵本を渡す。ジェシーは母親のリサ(ブリジッド・フォンダ)と本を読みながら、仏教に関心を寄せていく。ノルブーは託宣を得るためにジェシーをブータンに連れて行く。始めは生まれ変わりの話に否定的だった父親のディーンだったが、仕事で忙しい母親の代わりにジェシーに同行することを決断する。
旅の中、新たな生まれ変わりの候補として、ネパールの少年ラジュ(ラジュ・ラル)や、ギータ(グラシュマ・マカール・シングー)という少女も加わる。三人はほどなく打ち解け、旅を通じてブッダ(キアヌ・リーブス)の半生を体験する。ブータンの寺院にたどり着いたノルブーは、三人の候補を生まれ変わりとして丁重に扱い、瞑想に入ったまま息を引き取る。三人の候補は、それぞれの方法で遺灰をまくのだった。

ゴーダマ・シッダールタが産まれ、ブッダとなる過程を織り交ぜながら話が進む。昔話だけだと退屈になるが、コンラッド家が、高僧の生まれ変わりという、一見するとうさんくさい話にどう向き合うかという物語を主軸とすることで、観る者の関心を巧みに引きつけていく。ジェシーは、特に神がかった能力を見せるわけでもない普通の少年であるところも、話に嘘くささがなく、よかった。少年が素直に生まれ変わりの可能性を感じ、仏教の風習に溶け込んでいくという、心温まる作品でもあった。

【5段階評価】3

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2023年12月 4日 (月)

(2520) 劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン

【監督】石立太一
【出演】石川由依(声)、浪川大輔(声)、子安武人(声)、水橋かおり(声)、諸星すみれ(声)
【制作】2020年、日本

暁佳奈の小説が原作のアニメ作品。代筆を仕事とする少女の運命を追う。

祖母の葬儀に出たデイジー・マグノリア(諸星すみれ)は、祖母の母親が代筆を依頼した女性の足跡をたどる。女性の名はヴァイオレット・エヴァーガーデン(石川由依)。自動手記人形、ドールと呼ばれ、依頼主の代わりに手紙を書くことを生業としていた人物である。孤児だったヴァイオレットは少女時代、戦地に駆り出される。世話をしたのはギルベルト・ブーゲンビリア(浪川大輔)。ヴァイオレットはギルベルトを厚く信頼していた。ギルベルトは戦地で重傷を負って動けなくなり、ヴァイオレットを一人で行かせる。別れ際にギルベルトは「愛してる」とヴァイオレットに告げる。ヴァイオレットはその後、C.H郵便社で自動手記人形の職に就きつつ、ギルベルトの無事を信じていた。ある日、ヴァイオレットはユリス(水橋かおり)という入院中の少年の依頼を受ける。両親と幼い弟シオン(松本惠)への手紙の依頼だった。ヴァイオレットは手紙を書き、ユリスがなくなった日に手紙を三人に渡すことを約束する。
そんなとき、C.H郵便社の社長クラウディア・ホッジンズ(子安武人)は宛先不明の手紙の中に、ギルベルトに似た筆跡を見つける。クラウディアはヴァイオレットを連れてギルベルトがいる島に向かい、ヴァイオレットを待たせてギルベルトに会う。しかしギルベルトは、ヴァイオレットを不幸にしたことを理由に、ヴァイオレットに会うことを拒否。ヴァイオレットはギルベルトの自宅に向かい、雨の中、ドア越しにギルベルトに会いたいと伝えるが、ギルベルトは帰ってくれと答える。クラウディアは泣き崩れるヴァイオレットを連れて郵便局を兼ねる灯台で夜を明かすことにする。そこに郵便社から、ユリスが危篤だという通信が入る。ヴァイオレットは郵便社に戻ると言うが、外は嵐で早くても3日はかかる。郵便社のアイリス・カナリー(戸松遥)とベネディクト・ブルー(内山昴輝)が手紙を携えてユリスの病院に向かい、ユリスが思いを伝えたかった友人のリュカ(佐藤利奈)に電話を繋ぐ。ユリスはリュカに、感謝の言葉と、面会を断った事への謝罪を伝えると、息を引き取る。アイリスは両親とシオンにユリスの手紙を渡す。両親は泣きながら手紙を読み、シオンは大好きだった兄からの手紙を喜ぶ。その様子はヴァイオレットにも伝えられる。
翌日、ヴァイオレットはギルベルトへの手紙を、先生をしているギルベルトの教え子に託す。島の農作業の手伝いを終えたギルベルトはヴァイオレットの手紙を読む。そこには彼女からの感謝の言葉が綴られていた。その場にいたギルベルトの兄、ディートフリート(木内秀信)の後押しを受け、ギルベルトはヴァイオレットの乗る船めがけて疾走する。港を出た船の上でギルベルトに気づいたヴァイオレットも、迷わず甲板を駆けて船尾から海に飛び込み、海岸で二人は再会を果たす。ヴァイオレットの声は涙で言葉にならず、ギルベルトはヴァイオレットを抱き寄せ、愛してると伝える。
その後、ヴァイオレットは郵便社をやめ、島の灯台で代筆の仕事を引き継ぐことになったと言う。ヴァイオレットを追って島まで来たデイジーは、改めて両親に感謝の言葉を手紙に乗せるのだった。

タイトルの響きだけだとヱヴァンゲリヲンぽいので、SF戦争アニメ的な想像を勝手にしていたが、全く違った。背景の映像が繊細に美しく作り込まれており、さらに、アルファベットではない特有の文字を使うことによってパラレルワールド的な世界観を作り出しており、見応えがあった。物語は全体的には物静かで、派手な映像はないが、後半に向けて話は盛り上がる。ユリスの手紙のシーンは感動的で泣けた。映像もシナリオも美しい作品だった。

【5段階評価】3

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2023年12月 3日 (日)

(2519) ルパン三世 風魔一族の陰謀

【監督】内藤誠
【出演】古川登志夫(声)、塩沢兼人(声)、銀河万丈(声)、小山茉美(声)、加藤精三(声)、荘真由美(声)
【制作】1987年、日本

劇場版「ルパン三世」第4作。「ルパン三世 バビロンの黄金伝説」の続作。

ルパン三世(古川登志夫)と次元(銀河万丈)、峰不二子(小山茉美)は、石川五右衛門(塩沢兼人)の結婚式に臨んでいた。五右衛門の結婚相手は、墨縄家の娘、紫(荘真由美)。挙式の最中、突然、盗賊が乱入し、墨縄家に伝わる壺を奪って逃走。ルパン達の活躍で壺は取り返すが、紫をさらわれてしまう。壺を狙ったのは風魔一族。五右衛門は壺と引き換えに紫を助けようとするが、墨縄家の長老(宮内幸平)は壺の方が大事だとそれを拒否。ルパンは壺を盗み出し、次元、五右衛門とともに風魔一族との取り引きに向かう。三人は紫を取り戻すが、壺を奪われてしまう。
風魔一族のボス(広瀬正志)の狙いは、洞窟の奥に眠る財宝。壺から財宝の手がかりを手に入れたボスは、手下を連れて財宝を目指す。ルパン達も紫とともに財宝の眠る洞窟を目指す。洞窟には墨縄家の施したからくり仕掛けの罠が点在。それらをかいくぐりながら、ルパン達はついに、地下に隠された黄金の城を発見する。しかし、事前に洞窟前のほこらにある仕掛けを解除しておかないと洞窟は崩壊するように仕組まれており、洞窟は崩壊を始める。風魔一族と戦っていたルパン達は、紫を助けるために洞窟に入った長老と銭形警部(加藤精三)とともに洞窟を脱出。風魔一族のボスは黄金の城とともに洞窟の底に沈む。風魔一族のボスとの戦いに苦戦し、紫を危険な目に遭わせた五右衛門は、自らの未熟さを恥じ、紫との婚約を解消。黄金の瓦を一枚手に入れた不二子はルパンの元を去り、ルパンと次元も紫に別れを告げ、車で走り去るのだった。

声優陣を総入れ替えしたことで、旧声優陣やファンの不評を買ったという曰く付きの作品。そのせいなのかずっとテレビ放映されていなかったので、今回は貴重な鑑賞機会だった。コミカルなアクションシーンは楽しく、ルパン達のお宝狙いは幻となるというのもおなじみの展開。ただ、実写版「ルパン三世」でも感じたが、やはり主要キャラクターには元祖声優陣の声が頭をよぎった。それをあまり感じさせない栗田貫一や山寺宏一はすごいし、それだけの印象を作品に刻んだ元祖声優陣もすごい。

【5段階評価】3

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