(2470) グリーンブック
【監督】ピーター・ファレリー
【出演】ビゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニ
【制作】2018年、アメリカ
白人の雇われ運転手と、雇い主である黒人のピアニストとの交流を描いた作品。かつてのアメリカの痛烈な人種差別に立ち向かう様子を描いている。
ナイトクラブ「コパカバーナ」で用心棒をしていたトニー・バレロンガ(ビゴ・モーテンセン)は、クラブの改装によって無職の状態になる。ドクター・ドン・シャーリーという雇い主のドライバーの仕事を紹介され、医者だと思って言ってみると、相手は黒人の音楽家(マハーシャラ・アリ)だった。トニーは黒人に強い差別感情を持っており、家に来た黒人の職人が使った家のコップをそのままゴミ箱に捨ててしまうほど。ドンを前に始めは忍耐強くドンの質問に答えていたが、週100ドルでドライバーの仕事だけではなく靴磨きなどの雑用もする必要があるという説明を受けると、「自分は召使いではない。週125ドルは必要だ」と告げて立ち去る。しかしトニーの腕を買っていたドンは、彼の妻ドロレス(リンダ・カーデリーニ)に電話でトニーが8週間家を空けることの許可を得て、トニーを雇うことにする。トニーはレコード会社から、黒人が利用できる宿泊施設などが載ったグリーンブックを渡される。
車内でたばこを吹かし品のない言葉でしゃべり続ける粗野なトニーに、ドンは逐一注意する。ドンを疎ましく思うトニーだったが、彼のピアノ演奏を目の当たりにして彼の才能に驚き、敬意を感じるようになる。ドンも旅を続けるうち、手づかみでケンタッキーフライドチキンを頬張るトニーに勧められて素手でフライドチキンを食べ、骨を窓外に投げ捨てるなど、道中を楽しむようになる。
ドンの演奏は、富裕層に歓迎されるが、黒人のトイレは別だったり、バーに行くと白人に絡まれたり、根強い差別がまかり通っていた。トニーはドンの身を守りながら、次第に自らの差別意識も変わっていく。トニーは愛する妻にまめに手紙を出しており、ドンは手紙の内容をアドバイスする。手紙を受け取ったドロレスは、見違えるような手紙の内容に感激する。
最後の演奏会場でも、ドンはVIPのような待遇を受けつつも、楽屋は物置きで、レストランには黒人であることを理由に入店を断られる。ドンは「レストランで食事が取れないなら演奏はしない」とオーナーに告げる。オーナーはトニーに、ドンを説得するよう100ドル渡そうとするが、トニーはオーナーにつかみかかる。ドンはそれを制止し、トニーに「君が演奏しろというならそうする」と言うが、トニーは「こんなところ出ていこうぜ」と言って、ドンとともに黒人の集う店に行く。白人のトニーと立派な服を着たドンは、店内の注目を集める。トニーはドンを天才ピアニスト(竹内とますみではない)だと紹介。店員が演奏を促し、ドンがピアノを奏でると大喝采を受け、店のバンドと盛り上がる。店を出たトニーとドンは、クリスマスに間に合うようトニーの家に向かう。眠気で限界が来たトニーを、家まで送り届けたのはドンだった。ドンはトニーを降ろして自宅に戻り、執事を帰らせる。トニーは家族や親戚とクリスマスパーティを楽しむ。「ニガーはどうした」と親戚に聞かれたトニーは、にガーはよせ、とたしなめる。黒人差別をしていた夫の変わりようにドロレスは驚く。盛り上がるトニーの家に追加の客がやってくる。その後ろには、ワインを手にしたドンがいた。トニーはドンを歓迎し、二人は抱き合う。ドロレスもドンにハグをし、手紙の礼をする。ドンがトニーの手紙の手引きをしていることに、彼女は気づいていたのだ。始めは黒人の登場にとまどった親戚たちだったが、すぐに彼の席を用意するよう動き出し、彼を歓待するのだった。
実話に基づく作品で、胸のすく気持ちのよい作品だった。人種差別に白人が立ち向かうという紋切り型の作品になりそうなところ、本作の主人公は、金持ちの帽子を隠して紛失したように見せかけ、それを取り返したふりをして金持ちの歓心を買ったりするような、横暴で独善的な男として描かれていることで、正義漢が差別と闘うというステレオタイプとは一線を画していた。
【5段階評価】5
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