(2449) 植村直己物語
【監督】佐藤純彌
【出演】西田敏行、倍賞千恵子、古尾谷雅人、乙羽信子、若林豪、竹脇無我、山岡久乃
【制作】1986年、日本
冒険家、上村直美の半生を描いた作品。
明治大学の山岳部に入った植村直己(西田敏行)は、登山経験の豊かな小川正夫に触発され、海外での登山にあこがれる。自分が就職に向いていないと自覚する植村は、無一文の状態で海外に行き、働きながら登山をする。ヒマラヤのゴジュンバ・カンの登山隊に追加で加わることになった植村は、資金や準備にかかわっていないにもかかわらず登頂を成功させる立場になり、誇らしさよりも罪悪感を感じる。
彼は、ヨーロッパのモンブラン、アフリカのキリマンジャロ、南米のアコンカグアの単独登頂に成功。しかし北米のマッキンリーは単独登頂が認められておらず、断念。その後、エベレストが日本に解禁となり、登山隊に入った植村は日本人初の登頂メンバーとなる。しかし登山隊の中には、彼が登頂メンバーに選ばれたことに不満の声を上げる者もいた。ついにマッキンリーの単独登頂も成功させた植村は、国際的なエベレストの団体登山のメンバーに選出され、仲間のために奮闘するが、各国のエゴが渦巻く中、登頂は失敗。もともと気の小さい性格で、仲間との登山に遠慮や確執を感じるようになった植村は、単独での冒険を志すようになる。エベレストは単独で挑めるものではないことを体得した植村は、北極点、南極点の踏破を目指すことにする。
近所の豆腐屋の娘、野崎公子(倍賞千恵子)を見初めた植村は、彼女に自著を渡す。公子はそれを読んで彼の不器用な生きざまを知り、二人の関係が深まっていく。植村がグリーンランドからアラスカに至る12,000kmの単独犬ぞり踏破を企画したころ、二人は結婚する。植村は12,000kmの踏破成功のあと、北極点からグリーンランド縦断の単独犬ぞり踏破も成功させる。南極点踏破はフォークランド紛争のため断念することになり、植村は日本で登山やサバイバル技術を教え、自閉症の人に自然を体験できる野外学校を開く夢を公子に語る。植村が危険な冒険から手を引く決断をしたことを、公子は喜ぶ。植村は、学校開設の準備の勉強のためにわたったアメリカで、マッキンリーの冬季登頂に挑むが、消息を絶ってしまう。明治大学のOBら仲間が懸命に植村を探すが、見つかるのは彼の装備品と登頂の形跡だけ。装備品なしでの生存可能性はなく、捜査は打ち切られる。彼を待っている間、母(山岡久乃)を亡くし、流産も経験した公子であったが、彼女は彼の生存を信じ、彼と出会えたことを幸せだと語るのだった。
植村直己という人物は、おそらく「変わり者」だったのだろう。単独での冒険に挑む勇気の裏には、団体の中で自分の居場所を見出すのが苦手という特性が見え隠れする。そういう変わり者も、突き抜けるとこういう偉業を成し遂げるのだということを教えてくれた。
雪山や極地の映像には迫真性がある。脚色めいた誇張はない。犬ぞりを引く彼の前に立ちはだかる、猛吹雪や、当然ながら人が通ることを全く考慮していない乱氷帯。この映像だけで、この冒険がいかに過酷なものだったのかが伝わってくる。犬に逃げられそうになったり、ホワイトアウトに巻き込まれたり、といった死と隣り合わせの極限状況を描きながら、彼の冒険の過酷さを、CGのない時代に映像化しきった撮影陣の努力は相当なものだっただろう。
【5段階評価】4
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