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2022年9月

2022年9月30日 (金)

(2393) 哀愁しんでれら

【監督】渡部亮平
【出演】土屋太鳳、田中圭、COCO、山田杏奈、銀粉蝶、石橋凌
【制作】2021年、日本

ゆがんだ家族愛に巻き込まれていく女性の運命を描いたサスペンス作品。

児童相談所に勤める福浦小春(土屋太鳳)は、幼い頃、母親に見捨てられた経験があり、世の中の無責任な母親に嫌悪感を抱いていた。ある日、小春の自宅が火事で焼け、泊めてもらおうと訪れた彼氏(水石亜飛夢)の家では、彼氏が浮気の真っ最中。途方に暮れた小春が放心状態で歩いていると、警報の鳴る踏切で倒れている泉澤大悟(田中圭)を発見。小春は大悟を助け、そこから交際が始まる。大悟は裕福な開業医で、妻を交通事故で亡くしており、一人娘のヒカリ(COCO)を男手一つで育てていた。小春はヒカリに気に入られ、大悟と結婚する。
しばらくは幸せに暮らしていた小春だったが、ヒカリが自分の作った弁当を全く食べていないことに気づく。小春はヒカリの幼児退行を疑い、ヒカリに内緒と約束していた彼女のおねしょのことなどを大悟に話すが、その様子をヒカリはこっそり聞いていた。ヒカリは気になる男の子、ワタルと仲のよい来実への嫉妬から、彼女を教室の窓から突き落とし(ただし、映像では明確に描かれていない)、来実は命を落とす。小春はヒカリを来実の葬儀に連れて行くが、ヒカリは帰りのファミレスで涼しげな顔をして、彼女は人の邪魔をするからゲームオーバーになったのだ、と告げる。
小春はある日、大悟が大事にしていた兎の剥製を壊してしまい、それをはやし立てたヒカリに思わず手を上げてしまう。それを知った大悟は激怒し、小春を家から追い出す。彼自身、かつて母親に殴られ、鼓膜が破れて片耳が聞こえないという経歴があった。家を出た小春にヒカリが追いすがり、行かないでと懇願するが、小春はそれを振り払う。その情景は、かつて小春が母親に受けた仕打ちと全く同じだった。小春はかつての大悟と同じように踏切で倒れるが、それを救ったのは大悟だった。二人はやり直すことを決意する。
ヒカリが学校から泥だらけの足で帰宅してきたのを見て、大悟と小春は学校に乗り込み、ヒカリの靴を盗んだ犯人は誰だと生徒たちを問い詰める。別室に連れて行かれ、教師と話し合っていた二人のところにワタルが現れ、来実を殺したのはヒカリだ、と叫ぶ。帰宅した二人はヒカリにそのことを問いただすが、ヒカリはヒステリックに叫び出す。大悟の家には、人殺し、ニセ家族、と落書きがされ、石が投げ込まれた。小春は、事態を打開するための方策を大悟に耳打ちする。小春は、健常者にインスリンを注射すると死に至るという話を耳にしたことがあったのだ。学校の担当医である大悟は、小春を助手に従え、生徒たちに次々と予防接種をする。全ての生徒が倒れた学校の中、小春、大悟、ヒカリの三人は教室にいた。先生役の小春が問題を出し、ヒカリがそれに答え、大悟がそれを褒め立てる。その光景が繰り返し続くのだった。

ダークミステリー、いわゆる「イヤミス」もので、ストーリーはいくらかの含みを持たせつつも、分かりやすい内容。いろいろと危うさをはらんだ登場人物たちが、歪んでいくさまが描かれている。一方で、描かれている出来事そのものが、すべて幻想かもしれないという可能性もうかがわせる。典型的なのは、学校のあちこちで数多くの生徒たちが倒れているラストシーン。あまりに象徴的で現実感がないので、もしかすると、これは空想の世界なのかもしれないと思わせる。主演の土屋太鳳は、本作のオファーを何度も断ったというエピソードがある。

【5段階評価】3

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