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2022年7月

2022年7月19日 (火)

(2391) 駅 STATION

【監督】降旗康男
【出演】高倉健、倍賞千恵子、いしだあゆみ、烏丸せつこ、宇崎竜童、根津甚八、大滝秀治
【制作】1981年、日本

北海道の警察官の人生を描いた人間ドラマ。北海道を舞台にした高倉健主演映画の代表作の一つ。

射撃のオリンピック選手である警察官、三上英次(高倉健)は、妻の直子(いしだあゆみ)と離婚。赤いミニスカートの女性を狙う連続殺人犯を警察が追う中、三上はオリンピックに集中するよう上から指示され、思い悩んでいた。そんな中、検問中に先輩警官の相馬(大滝秀治)が犯人に打ち殺されてしまう。警察は容疑者の妹、すず子(烏丸せつこ)に事情聴取。すず子は白を切るが、すず子の恋人、雪夫(宇崎竜童)は三上に接近し、すず子は兄のことを知っていると告げ、すず子を連れて兄との面会場面に警察を連れていく。三上らは、すず子に会いに来た兄、吉松五郎(根津甚八)を逮捕する。
三上は、地元の増毛で、一人手で小料理屋を営む桐子(倍賞千恵子)と知り合う。二人はすぐに意気投合し、紅白歌合戦で八代亜紀の舟唄を聞きながら、年末年始を共に過ごす。しかし桐子には男がいた。その男こそ、先輩の相馬を殺した連続殺人犯、森岡(室田日出男)だった。三上は桐子の家を訪ね、森岡を発見。三上に銃を向けようとする森岡に三上が反撃。森岡は命を落とす。三上と桐子は分かれる道を選ぶのだった。

一人の警察官を通じて、男女の様々な関係を描く。高倉健らしい、無口で生真面目な男が主人公だが、群像劇のように複数の人物の人生が描かれている。強烈なメッセージ性というより、自分に似た境遇を見つけた人がそれに共感できるかどうか、という作品だった。

【5段階評価】3

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2022年7月10日 (日)

(2390) ドリフト

【監督】ツイ・ハーク
【出演】ニコラス・ツェー、ウー・バイ、キャンディ・ロー、アンソニー・ウォン
【制作】2000年、香港

バーテンダーのタイラー(ニコラス・ツェー)は、店に来た勝気な女性、ウォン(キャシー・チュイ)と一夜をともにする。出会って9か月後、偶然再会した彼女が妊娠していることを知ったタイラーは、自分が妊娠させたと思い込み、彼女に渡す養育費を稼ぐため、アンクル・ジー(アンソニー・ウォン)の経営する護衛会社に入る。彼は資産家ホン氏のパーティの警護にあたることになる。一方、南米の暗殺組織エンゼルに所属していたジャック(ウー・バイ)は、足を洗い、身重の妻ジョー(キャンディ・ロー)と暮らすため、香港に戻る。ジョーの父親は、タイラーが警護するホン氏。ジョーはホン氏のパーティにジャックと出席。ジャックはパーティ会場で、給仕に扮したヒットマンを見つけ、警備のタイラーに知らせる。タイラーはホン氏暗殺を未然に防ぎ、それが縁でジャック夫婦と知り合いになる。
エンゼルのボス、パブロは、ジャックを呼び寄せ、再び仲間となるよう命じるが、ジャックはそれに逆らい、駐車場でパブロを暗殺。トランクに詰められた大金を奪うと、それを九龍駅のコインロッカーに預けて、そのキーをジョーに渡し、ジョーの安全を確保するため、ホン氏の邸宅に送り込む。
エンゼルと組んでいたアンクル・ジーは、ジャックを取り逃したタイラーを疑うが、彼の言葉を信じ、真相を追うことを認める。エンゼルは、ジャックの家を張る。そこに真相を知ろうとしたタイラーが現れ、エンゼルの一味がタイラーを殺害しようとしたため、様子をうかがっていたジャックはそれを妨害。タイラーとジャックはそれぞれ、エンゼルと必死の攻防を繰り返し、何とかエンゼルの攻撃を退ける。
タクシーに乗ってその現場を見ていたジョーは、そのまま九龍駅に向かう。彼女を見つけたタイラーは、タクシーを強奪してそれを追い、駅のロッカーから金を取り出すジョーを発見。そこにエンゼル一味とジャックがやってくる。タイラーは、破水してしまったジョーを守りながら敵から逃れ、建物の一室でジョーの出産を手助けする。ジャックはエンゼルの一味を一人一人仕留め、子を産み終えたジョーと合流し、抱き合う。事件から解放されたタイラーは、病院で、出産を終えたウォンと再会するのだった。

ラブコメのようなオープニングから、ガンアクションへと展開するのだが、物語がけっこうわかりづらい。最初のシーンも、タイラーが警官なのか、ウォンが警官なのか、どっちもおとり捜査官なのか、よくわからないし、実際はウォンが警官なのだが、そのことは物語と全く関係ないので、どうでもいいのだった。その後のエンゼルとジャックの攻防戦も、カット割りが不連続で、何がどうなっているのかつながりがよくわからない。立体駐車場や高層アパートで危険なパルクールアクションが行われていて、それ自体は見ごたえがあるのだが、誰が攻撃して誰が防御しているのか、誰がどの車に乗っているのか、といったあたりが「一回見ればわかるでしょ」的な不親切なつくりになっているので、観客は「これは味方を攻撃しちゃってるんだよな」とか、半分想像しながら観なくちゃいけない。パブロの暗殺も、誰が死んだのか、本当に撃ったのか血糊をぶつけただけの狂言なのか、よくわからないとか、何かと描写が説明不足だった。

【5段階評価】3

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2022年7月 3日 (日)

(2389) 蟬しぐれ

【監督】黒土三男
【出演】市川染五郎、木村佳乃、石田卓也、佐津川愛美、緒形拳、原田美枝子、ふかわりょう、今田耕司
【制作】2005年、日本

藤沢周平の小説が原作の時代劇。時代の波に翻弄される幼なじみの男女の運命を描いた作品。

下級武士、牧助左衛門(緒形拳)の息子、文四郎(石田卓也)は、武芸に秀でた若者。幼なじみのふく(佐津川愛美)は文四郎に淡い恋心を抱いていた。ある日、助左衛門が突然、捕らえられてしまう。お家騒動で敗れた側に仕えていたというのが理由で、助左衛門には何もやましいことはなかったが、助左衛門は文四郎に武芸に励めと言い残し、処刑されてしまう。文四郎は助左衛門の遺体を乗せた荷車を一人で引き、家へ引き返す。悲しみに打ちひしがれた文四郎を支えたのが、ふくだった。しかしふくは、江戸の殿様の側室入りが決まる。ふくは文四郎の家を訪ねるが、文四郎は不在。ふくは文四郎に会えないまま、江戸に発つ。
青年となった文四郎(市川染五郎)は武芸の腕を上げ、家老の里村左内(加藤武)のはからいで、咎人の息子という立場から役目を持つ立場に回復する。文四郎は幼なじみの小和田逸平(ふかわりょう)や島崎与之助(今田耕司)と再会。文四郎は与之助から、ふくが殿の子をはらんだが跡目争いに巻き込まれて流産させられたという話を聞く。再び身ごもったふくは、今は密かに地元に戻り、子を産んだという。文四郎は、里村左内から、身分回復という便宜を図ったことを種に、ふくの子をさらってこいと脅される。それは明らかに左内の罠だった。文四郎に恩義を着せたのは、捨て駒として利用するための伏線だった。文四郎は逸平らに相談し、ふくの子をさらってふくともども逃走するという計画を立てる。文四郎はふくの住む屋敷を訪ね、美しくなったふく(木村佳乃)と再会。文四郎はふくと家臣に自分の作戦を告げる。そこに左内の手の者が現れ、文四郎らを捕らえようとする。文四郎は大勢の敵を相手に逸平と奮闘。ライバルだった剣豪、犬飼兵馬(緒方幹太)をも倒し、ふくを逃がすことに成功する。
時が経ち、文四郎はふくからの手紙で呼ばれ、彼女と再会。ふくは出家することを告げ、江戸に発つ日、文四郎の家に行って文四郎の嫁にしてほしいと頼みに言ったが、文四郎の母親(原田美枝子)に断られたことを告白。自分の子が文四郎の子である道はなかったのか、と問い、文四郎は、それができなかったのが生涯の悔いだと返す。しかし二人は結ばれることなく、別の道を進むのだった。

チャンバラ主体の派手な時代劇ではなく、人間ドラマに焦点が当てられている。幼なじみが結ばれないという運命を描き、切ない作品だが、幼なじみというのは、実際は狭い人間関係の中で身近にいる存在というだけであって、そこで芽生えた恋心が最終的に結ばれるべきものであるかというと、そうではないのが普通では、と思えるので、本作の文四郎とふみが、本当にお互いに相手が運命の人だったのだということを観客に伝えるには、蛇の毒を吸ったとか、荷車を押したぐらいではない、運命的な描写が必要だと思った。
また、石田卓也演じる少年時代の文四郎が、少年というよりそこそこ成長した青年なので、それが大人になって市川染五郎になりましたというのが最初は理解できず、別人かと思ってしまった。ふくも、佐津川愛美が演じるのは素朴な田舎娘で、それが江戸に行って木村佳乃の演じる見目麗しい女性に成長しているのだが、こちらはしっかりと「今から大人になったふくが登場します」という振りがしっかりあったので分かりやすかったし、江戸で身分が代わり、男も知ってすっかり垢抜け、今だ独り身で幼なじみとつるんでいる文四郎とは住む世界の違う、高嶺の花の存在になったたという演出はありだった。
もう一つ残念だったのは、ライバル剣豪、犬飼兵馬のくだりの必要性のなさ。そもそも兵馬との関係性や、兵馬の人間性の描写が少なく、文四郎の生涯のライバルという感じもなければ、極悪非道の憎き相手という感じもない。なので、何でふくの屋敷で一対一で戦い、そんでもって一太刀で倒せちゃうの、というのが疑問だし、感動が沸かない。例えば、兵馬と文四郎がふくを取り合う仲だったとかの確執があるならまだしも、そういった形でメインストーリーに絡むこともないので、単にとってつけただけのシーンになってしまっていた。

【5段階評価】3

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2022年7月 2日 (土)

(2388) ノーゲーム・ノーライフ ゼロ

【監督】いしづかあつこ
【出演】松岡禎丞(声)、茅野愛衣(声)、日笠陽子(声)、田村ゆかり(声)、釘宮理恵(声)
【制作】2017年、日本

榎宮祐(かみやゆう)のライトノベルが原作のアニメ作品。種族間の争いを終結させるために奮闘する青年と、ロボット少女の運命を描く。

唯一神となることを狙い、エルフやドワーフなどの種族が争いを続ける世界。そこに生きる人類の一人、リク(松岡禎丞)は、機械生命体であるエクスマキナの少女、シュヴィ(茅野愛衣)に遭遇。シュヴィはリクの心を知りたいと言い、ともに暮らすようになる。仲間を死なせたくないと強く願うリクは、集落をコローネ(日笠陽子)に任せると、シュヴィとともに誰を死なせることなく争いを終結させる旅に出る。リクはシュヴィにプロポーズし、二人は夫婦となる。リクは各種族に多種族の情報を流し、彼らの強大な力を星の一点に集結させ、それを奪い取る形で自らが唯一神となるという作戦を実行に移す。しかし、死の灰により体がボロボロになったリクに変わり、作戦に必要な装置の設置に向かったシュヴィは、天翼種のジブリール(田村ゆかり)に発見されてしまう。シュヴィはジブリールの圧倒的な攻撃力により、防戦むなしく倒されるが、その直前、かつて自らが所属していたエクスマキナのサーバに連結し、その意思を残す。
シュヴィの消滅を知ったリクは、遺志を継いで作戦を決行。しかし、唯一神となろうとした瞬間、体が消滅に向かってしまう。そこに、リクがいつも夢で戦っていたゲームの神、テト(釘宮理恵)が現れ、唯一神となる。こうして世界は、争いのない平和な世界となるのだった。

現在の「ノーゲーム・ノーライフ」の過去を語る形の作品で、原作のファンはより楽しめる作品だろう。初見の者には、各種族の特徴や世界観の描写が不十分で分かりづらい部分がある。とは言え、概略は理解できる仕上がりで、映像も美しかった。

【5段階評価】3

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