(2387) ホワイトナイツ 白夜
【監督】テイラー・ハックフォード
【出演】ミハイル・バリシニコフ、グレゴリー・ハインズ、イエジー・スコリモフスキ、イザベラ・ロッセリーニ、ヘレン・ミレン
【制作】1985年、アメリカ
ソ連に身柄を拘束されたダンサーの運命を描いた作品。ライオネル・リッチーの主題歌「セイ・ユー、セイ・ミー」がアカデミー歌曲賞を受賞した。
ニコライ・ロドチェンコ(ミハイル・バリシニコフ)は、世界的に有名なダンサー。彼の乗っていた東京行きの飛行機に機器障害が発生し、ロシアの空港に不時着することになる。するとニコライは慌て出し、自分のパスポートをトイレに破り捨てる。飛行機は着陸に成功するが、着陸時の衝撃でニコライは頭を負傷する。
KGBのチャイコ大佐(イエジー・スコリモフスキ)は、部下の調査によって彼が、ロシアからアメリカに亡命したニコライであることを知る。チャイコは彼をダンサーとしてロシアにとどめるため、ロシアに亡命した元アメリカ人のタップダンサー、レイモンド(グレゴリー・ハインズ)に、ニコライにダンスの練習をさせるよう命じる。レイモンドはいやいやながらも、妻のダーリャ(イザベラ・ロッセリーニ)とともに彼との共同生活を始める。
ダンスを始めたニコライのもとに、元恋人のガリナ(ヘレン・ミレン)が現れる。彼女は、自分に黙って一人で亡命したニコライを責め、ロシアの劇場で踊ることを勧めるが、彼女の訪問はチャイコの差し金だった。しかしニコライはアメリカに戻ることを望み、監視の目をくぐってアメリカに戻ることを企てる。ガリナもニコライの本心を知り、それに協力することにする。ダンスを通じてニコライとの友情を深めたレイモンドは、新たな命を身ごもったダーリャとともにアメリカに亡命することを決める。隠しマイクによる監視を欺くため、口論を録音したテープをカセットデッキで流しながら、三人は手作りのロープを使って窓からの脱出を図る。ところが、口論の様子を怪しんだチャイコが部下とともに三人の家にやってくる。レイモンドは三人で逃げることをあきらめ、ニコライとダーリャだけを先に行かせると、自分は家に残ってチャイコを足止めさせ、二人の亡命を成功させる。
チャイコはレイモンドを車に乗せて山林の中に連れていく。射殺されることを恐れるレイモンドだったが、そこで行われたのは人質交換だった。アメリカ側に捕らえられていたロシアの要人と引き換えに、レイモンドはアメリカ側に引き渡される。そこには再会を喜ぶダーリャと、それを見守るニコライがいた。レイモンドはニコライに感謝の意を示すのだった。
オープニングは戯曲的なダンスシーン。これはなんだろう、と思って観ていると、実は劇場でのダンス公演だったことがわかる。その後、飛行機に乗っていたニコライは、ロシアに不時着するとなると突然パスポートを破り捨てる。これもなぜなんだろう、と思って観ていると、実は彼はロシアからアメリカに亡命していたことがわかる。レイモンドも、酔ってくだをまくシーンで、タップダンスしか取り柄のない若いころ、いつのまにか戦争の駒にされていたことに気づき、亡命したことが明らかになる。観客の興味を引き寄せながら物語を紡ぐ展開は巧みだった。欲を言えば、チャイコがなぜダンスに入れ込み、ニコライのロシア残留にこだわるのか、その人物像が描かれているとよかった。ダンスシーンは本格的で、ニコライ、いやミハイル・バリシニコフの超人的な身体能力は見ごたえがある。劇中に何度も登場する、いかついカセットデッキは「HITACHI」製だった。
【5段階評価】3
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