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2022年6月

2022年6月12日 (日)

(2387) ホワイトナイツ 白夜

【監督】テイラー・ハックフォード
【出演】ミハイル・バリシニコフ、グレゴリー・ハインズ、イエジー・スコリモフスキ、イザベラ・ロッセリーニ、ヘレン・ミレン
【制作】1985年、アメリカ

ソ連に身柄を拘束されたダンサーの運命を描いた作品。ライオネル・リッチーの主題歌「セイ・ユー、セイ・ミー」がアカデミー歌曲賞を受賞した。

ニコライ・ロドチェンコ(ミハイル・バリシニコフ)は、世界的に有名なダンサー。彼の乗っていた東京行きの飛行機に機器障害が発生し、ロシアの空港に不時着することになる。するとニコライは慌て出し、自分のパスポートをトイレに破り捨てる。飛行機は着陸に成功するが、着陸時の衝撃でニコライは頭を負傷する。
KGBのチャイコ大佐(イエジー・スコリモフスキ)は、部下の調査によって彼が、ロシアからアメリカに亡命したニコライであることを知る。チャイコは彼をダンサーとしてロシアにとどめるため、ロシアに亡命した元アメリカ人のタップダンサー、レイモンド(グレゴリー・ハインズ)に、ニコライにダンスの練習をさせるよう命じる。レイモンドはいやいやながらも、妻のダーリャ(イザベラ・ロッセリーニ)とともに彼との共同生活を始める。
ダンスを始めたニコライのもとに、元恋人のガリナ(ヘレン・ミレン)が現れる。彼女は、自分に黙って一人で亡命したニコライを責め、ロシアの劇場で踊ることを勧めるが、彼女の訪問はチャイコの差し金だった。しかしニコライはアメリカに戻ることを望み、監視の目をくぐってアメリカに戻ることを企てる。ガリナもニコライの本心を知り、それに協力することにする。ダンスを通じてニコライとの友情を深めたレイモンドは、新たな命を身ごもったダーリャとともにアメリカに亡命することを決める。隠しマイクによる監視を欺くため、口論を録音したテープをカセットデッキで流しながら、三人は手作りのロープを使って窓からの脱出を図る。ところが、口論の様子を怪しんだチャイコが部下とともに三人の家にやってくる。レイモンドは三人で逃げることをあきらめ、ニコライとダーリャだけを先に行かせると、自分は家に残ってチャイコを足止めさせ、二人の亡命を成功させる。
チャイコはレイモンドを車に乗せて山林の中に連れていく。射殺されることを恐れるレイモンドだったが、そこで行われたのは人質交換だった。アメリカ側に捕らえられていたロシアの要人と引き換えに、レイモンドはアメリカ側に引き渡される。そこには再会を喜ぶダーリャと、それを見守るニコライがいた。レイモンドはニコライに感謝の意を示すのだった。

オープニングは戯曲的なダンスシーン。これはなんだろう、と思って観ていると、実は劇場でのダンス公演だったことがわかる。その後、飛行機に乗っていたニコライは、ロシアに不時着するとなると突然パスポートを破り捨てる。これもなぜなんだろう、と思って観ていると、実は彼はロシアからアメリカに亡命していたことがわかる。レイモンドも、酔ってくだをまくシーンで、タップダンスしか取り柄のない若いころ、いつのまにか戦争の駒にされていたことに気づき、亡命したことが明らかになる。観客の興味を引き寄せながら物語を紡ぐ展開は巧みだった。欲を言えば、チャイコがなぜダンスに入れ込み、ニコライのロシア残留にこだわるのか、その人物像が描かれているとよかった。ダンスシーンは本格的で、ニコライ、いやミハイル・バリシニコフの超人的な身体能力は見ごたえがある。劇中に何度も登場する、いかついカセットデッキは「HITACHI」製だった。

【5段階評価】3

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2022年6月 6日 (月)

(2386) 禁断の惑星

【監督】フレッド・M・ウィルコックス
【出演】レスリー・ニールセン、ウォルター・ピジョン、アン・フランシス、ウォーレン・スティーブンス
【制作】1956年、アメリカ

地球外惑星にたどり着いた宇宙船の乗組員の運命を描いたSF作品。

超高速移動が可能となった2200年代。消息不明となった人類の救出のため、ジョン・J・アダムス船長(レスリー・ニールセン)率いる宇宙船が、惑星アルテア4に向かう。アルテア4に接近すると、モービアス言語学博士(ウォルター・ピジョン)から通信が入る。アダムスは生存者の存在に喜ぶが、博士はこちらに問題はないから引き返せと言う。アダムスはそれには従わずアルテア4に着陸。すると、ロビーと名乗るロボットが車に乗って現れ、アダムスらを博士のもとに招待する。そこには屋敷を建てて何不自由なく暮らす博士と、娘のアルタ(アン・フランシス)がいた。モービアス博士は、自分と一緒にいた乗組員は惑星に住む悪魔に殺されたと説明。博士は妻とともに惑星に残ることを主張したが、乗組員は地球に戻ることを決定。しかし、地球に戻ろうとする人々が惑星の悪魔に殺され、惑星を愛していた自分や妻は襲われなかったのだと言う。惑星には、かつてクレルという種族が高い文明を築いており、モービアス博士は、意識を実体化する装置などを紹介する。アルタは初めて父親以外の男性に出会い、やがてアダムスを愛するようになる。
そんな中、アダムスらの宇宙船に何者かが侵入して通信装置を破壊されるという事件が起き、やがて船員の一人が殺害される。アダムスらは防御を固めるが、ついに透明の巨大な怪物が現れ、宇宙船への襲撃を企てる。アダムスらはバリアと光線銃で怪物を退けたものの、複数人の乗組員が犠牲となる。怪物の正体は、モービアス博士の潜在意識が生み出したものだった。モービアス博士は、自分自身や娘が地球に連れていかれることを嫌い、無意識のうちに怪物を実体化させていたのだ。しかし怪物は博士の意識を超えて暴走を始め、博士やアダムス、アルタに襲い掛かろうとする。博士は身を挺して怪物の前に立ちはだかり、怪物は姿を消すが、博士は虫の息になる。博士は自爆装置を起動させ、アダムスはアルタを連れてアルテア4から飛び立つ。アダムスとアルタは、光に包まれて消える惑星を宇宙船から見届けるのだった。

自律歩行するロボット、電子音の背景音楽、円盤型の宇宙船など、典型的で古典的なSF作品。文明が発達し、科学技術が意識を実体化させる領域にまで達したことで、人の潜在的な否定的意識がそれを打ち消す怪物となって暴走を始めるという悲劇を描いていた。SFと言えば人類と自我を持った機械との戦いが定番だが、科学技術の力を借りながらも、本作はロボットはわき役で、人の意識に焦点を当てた作品になっている。

【5段階評価】3

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