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2020年10月

2020年10月31日 (土)

(2222) 沈黙の大陸

【監督】タン・ピン
【出演】リー・トンシュエ、ジャニケ・アスケボルド、マイク・タイソン、スティーブン・セガール、クロビス・フーアン
【制作】2017年、中国

中国の通信企業営業社員が、アフリカの通信網整備のために活躍するアクション映画。

中国通信企業DHテレコムの営業マン、ヤン・ジェン(リー・トンシュエ)は同僚のルアン・リン(リー・アイ)とともにアフリカの通信網整備の入札に参加。欧州のライバル企業MHMのマイケル(クロビス・フーアン)は、部族の復権を目指す軍人カバ(マイク・タイソン)を味方に付け、DHテレコムの妨害工作に走る。ヤンは入札担当者のスザンナ(ジャニケ・アスケボルド)と協力して、国内の通信網を確保。しかし、マイケルはヤンを襲って高速通信技術を盗もうとし、ヤンを支援するアサイド族長(エリック・エブアニー)を射殺。マイケルはカバを連れてヤンを捕らえ、ヤンを殺すようカバに指示する。カバは乗っていた客船からヤンを突き落として殺そうとするが、ヤンはマイケルがアサイド族長を殺したことを伝える。カバはヤンを逃がす。
ヤンは通信網のソースコードを公開することでDHテレコムの信頼性を証明。ヤンを祝福するレセプションが開かれるが、マイケルは会場に爆弾をしかけ、カバに出席者を抹殺するよう指示。しかしカバはマイケルを遠隔爆弾で殺害すると、レセプション会場で自らの罪を懺悔し、命を絶つ。ヤンはアフリカの通信網整備の立役者となるのだった。

スティーブン・セガールとマイク・タイソンが夢の共演という触れ込みだが、「沈黙」の冠がありながら、なんとマイク・タイソンはおろか、スティーブン・セガールまで脇役で、中国人の営業マンが主人公。まずここにびっくり。そしてセガールとタイソンの戦闘シーンがハイライトかと思いきや、これも序盤で戦うだけで終了。しかもセガールが殴り倒されて終わる。スティーブン・セガールが負けて終わる映画、スティーブン・セガールが脇役の映画なんて絶対ないと思っていた。中国映画すごい。そしてマイク・タイソンのボクシングが見られるのは序盤だけで、後半は火器をぶっ放すだけ。
そんなわけで、これは大外れの作品だわ、と思って観ていたのだが、一度敗北した悪役カバが再登場して心を入れ替えたり、ヤンがライバル企業からの提訴をソースコード公開という形で跳ね返したりと、盛り上がりを見せた。
とは言え、実話でもないのに、エンディングでヤンの功績を称える後日談が表示されたりして、中国の国家礼賛の香りもただよう作品だった。

【5段階評価】3

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2020年10月30日 (金)

(2221) おしゃれ泥棒

【監督】ウィリアム・ワイラー
【出演】オードリー・ヘップバーン、ピーター・オトゥール、ヒュー・グリフィス、イーライ・ウォラック
【制作】1966年、アメリカ

美術館の彫像を盗む計画を実行する男女の奮闘ぶりを描いたコミカルラブサスペンス。

贋作美術家のシャルル・ボネ(ヒュー・グリフィス)は、自分の作った贋作をオークションで高値で売り、娘のニコル(オードリー・ヘップバーン)は気が気でない。脳天気なシャルルは意に介さず、自分の父親が母親をモデルに作ったビーナス像を、彫刻家チェリーニの作品として美術館に貸し出す。シャルルの所有する作品を贋作と疑うベルナール・ド・ソルネ(シャルル・ボワイエ)は、鑑定家のサイモン・デルモット(ピーター・オトゥール)に調査を依頼。サイモンはボネの屋敷に忍び込むが、ニコルに見つかってしまう。ニコルはサイモンに銃を突きつけ、サイモンを追い出そうとするが、銃が暴発してサイモンは腕を負傷。贋作を扱っている負い目のあるニコルは警察を呼ぶこともできず、サイモンをホテルまで送る。
美術館に貸し出した彫像が、保険の対象となって美術鑑定にかけられることになってしまう。慌てたニコルは、自分の家に忍び込んだサイモンを泥棒と勘違いし、ビーナス像を盗んでほしいと依頼。ニコルに魅せられていたデルモットはそれを引き受ける。二人は美術館に潜入し、閉館後、赤外線アラーム装置をわざと2回起動させて警備員にアラームのスイッチを切らせ、彫像を盗むことに成功。掃除人に変装したニコルとともに、美術館から彫像を持ち出す。彫像は、ニコルに言い寄っていたアメリカの富豪デービス・リーランド(イーライ・ウォラック)に譲り渡し、ニコルとサイモンは恋仲になるのだった。

スタイリッシュな犯罪映画。おしゃれ泥棒という言葉のイメージ通り、主人公の男女がコミカルかつ軽快に彫像を盗み出す。ニコルとサイモンの出会いのシーンでのやりとりは、かなり不自然だが(初対面の男が自宅に忍び込んでいて、それを見つけた若い女性がその男を車に乗せて移動するだろうか)、その後の盗みを企てるシーンは楽しい。リーランドに高価な婚約指輪を返したり、ビーナス像を譲っておいて報酬を得なかったり、そこまで金に興味がないのもどうかと思うが、「おしゃれ泥棒」なので仕方ない。
ちなみに、音楽を担当しているのは「スター・ウォーズ」などであまりにも有名なジョン・ウィリアムズ(本作ではジョニー・ウィリアムズ)である。

【5段階評価】3

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2020年10月29日 (木)

(2220) スイミング・プール

【監督】フランソワ・オゾン
【出演】シャーロット・ランプリング、リュディビーヌ・サニエ、ジャン=マリー・ラムール、チャールズ・ダンス
【制作】2003年、イギリス、フランス

フランスの別荘で執筆する女性推理作家の体験を描いた作品。

スランプを自覚する女性推理作家、サラ・モートン(シャーロット・ランプリング)は、出版社のジョン(チャールズ・ダンス)から、フランスの自分の別荘で気分転換することを進められる。サラはジョンも来るのかと尋ね、ジョンは娘がいるから遅れて行くと答える。サラはフランスに向かい、使用人のマルセル(マルク・ファヨール)の出迎えで別荘に到着する。別荘は快適で、ジョンは執筆が進んでいるとジョンに報告。レストランではハンサムな店員フランク(ジャン=マリー・ラムール)と親しくなる。しかし突然、ジョンの娘ジュリー(リュディビーヌ・サニエ)が現れ、彼女の平穏は終わりを告げる。ジュリーは豊かな乳房をさらして全裸でプールを泳ぎ、毎晩のように違う男を家に連れ込む奔放さで、物静かなサラと全く相容れない。サラはジュリーを嫌悪しながらも、執筆に用いているノートPCにジュリーのフォルダを作り、ジュリーの日記を書き写したりしはじめる。サラはジュリーを食事に誘い、彼女のことを聞き出す。ジュリーは、自分と母親はジョンに捨てられたこと、母親はニースに住んでいて、小説家だったが作品は世に出なかったことなどを話す。
ある日ジュリーはフランクを家に連れてくる。ジュリーは3人で飲むことを提案するが、フランクはサラと踊りだし、ジュリーは面白くない表情を見せる。フランクとジュリーは夜のプールで泳ぎ始め、フランクの股間にジュリーが顔を埋める。バルコニーからそれを見ていたサラはプールに石を投げ込む。それに気づいたフランクはジュリーを引き剥がして帰り支度を始める。
翌日、サラはフランクの働く店に行くが、フランクは来ていない。今度はマルセルの家に向かうと、マルセルの娘だと名乗る、背の低い老婆のような女性が現れ、マルセルはいないと告げる。サラがジュリーの母親に連絡が取りたいと告げると、その女は母親は死んだと冷たく言い放ち、建物にひっこんでしまう。別荘に戻り、寝ていたジュリーに近づくと、ジュリーはサラを母親と勘違いして抱きつき、違うと分かると大声で泣き叫ぶ。サラはジュリーをなだめ、話を聞く。ジュリーはフランクを殺したことを告白。サラはジュリーとともにフランクを庭に埋め、いつも通りに暮らすのだ、とジュリーに言い聞かせる。サラはマルセルに用事を伝えて別荘に来させるようジュリーに告げる。マルセルは庭の芝刈りをするが、フランクを埋めた地面の不自然さに気づいてしまう。サラはバルコニーからマルセルに声をかけ、自らのネグリジェをはだけて乳房を見せ、マルセルを誘惑する。
ジュリーは仕事の口を見つけ、別荘を離れることになる。ジュリーは母親の作品をサラに託す。サラはジュリーの母親の作品を自分の作品としてジョンに提出。それを読んだジョンは、この作品は世に出すべきではないと言うが、サラは別の出版社で書籍にしたと言って、本をジョンに手渡す。タイトルは「スイミング・プール」だった。サラはジョンのもとを去る。入れ違いに、ジュリアというジョンの娘が現れる。ジュリーとは似つかない、歯の矯正具を付けた平凡な顔の女性だった。
サラは別荘のプールで泳ぐ女性に手を振る。それは歯の矯正具を付けたジュリアの顔だった。しかしもう一度プールを見ると、手を振るのは美しいジュリーの顔になっているのだった。

訳の分からない結末。ジョンの娘だと名乗ったジュリーは、本当の娘ジュリアとは別の娘だが、全くの他人なのか、愛人の娘なのかは判然としない。ジュリーが現実の存在なのか、サラの妄想によるものなのかもよく分からない。ジュリーがなぜフランクを殺し、サラはなぜその証拠隠滅を主導したのか。何もかも真相は語られない。監督自身、作品の真相は観客の解釈に委ねると公言している。
本ブログに何度も書いているが、ちりばめた伏線を回収せず、提示した謎を明らかにしないのは卑怯である。解釈に幅があるのはいい。しかし、それは制作者が意図したものであるべきだ。何を表現するかを放棄して観客に委ねるのは制作者の怠慢である。観客の時間をただ奪った罪は重い。
また、本作はR-15指定だったので、相当ショッキングなシーンでもあるのかと思ったが、単に性的シーンがあるというだけだった。しかしそれすらわざわざR-15にするほど大したものではない。いろんな意味で期待外れの作品だった。

【5段階評価】2

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2020年10月28日 (水)

(2219) オールド・ボーイ

【監督】パク・チャヌク
【出演】チェ・ミンシク、カン・ヘジョン、ユ・ジテ、ユン・ジンソ
【制作】2003年、韓国

15年監禁された男が、監禁の謎を追うサスペンス作品。土屋ガロン原作、嶺岸信明作画の漫画が原作。

娘ヨニの誕生プレゼントを買い、泥酔状態のオ・デス(チェ・ミンシク)は警察に捕まっており、友人のジュファン(チ・デハン)に付き添われて警察署を出る。ところがジュファンが目を離した隙にデスはいなくなる。彼は何者かに監禁されていた。デスは、理由も分からぬまま15年監禁された末、突如解放される。解放の直前、謎の女に催眠術をかけられていた。
デスは日本料理屋に入り、テレビで評判の女性料理人(カン・ヘジョン)の前に座る。デスの電話が鳴り、謎の男が彼に話しかけると、デスは気絶してしまう。女性料理人は彼を自分の部屋で介抱する。女性料理人の名はミドと言った。デスは15年間食べ続けていた中華料理の餃子の味をもとに、監禁されていたビルを突き止め、監禁ビジネスの管理人パク・チョルン(オ・ダルス)の前歯を抜いて拷問し、彼の監禁に関係する音声テープを手に入れる。ビルには大勢の若者が現れ、デスを攻撃するが、デスはハンマー片手に相手を次々となぎ倒し、背中にナイフを突き立てられながらもビルを後にする。この横スクロールアクションゲームのようなワンカット映像は特徴的。
デスはジュファンと再会し、自分を監視している者の居場所を突き止める。そこには長身の若い男(ユ・ジテ)とボディガードの男(キム・ビョンオク)がいた。デスは若い男を拷問しようとするが、男は、自分の心臓は手元のリモコンスイッチで停止できるので拷問したら死を選ぶ、そうしたら監禁の真相は分からないままだ、と話す。手出しできなくなったデスは、男にミドは大丈夫なのかと聞かれ、慌ててミドのもとに戻ると、ミドは乳房も露わな状態でパクの一味に拘束されていた。パクは自分がされたように、デスの歯を抜こうとするが、ボディガードの男がパクに大金を渡し、パクは去って行く。二人になったデスとミドは激しく愛し合い、結ばれる。
デスはジュファンの協力で自分たちの出身高校に手がかりがあることを突き止め、ミドとともに高校に向かう。卒業アルバムには、自分を監禁した若い男、イ・ウジンの姿があった。デスは、彼が転校した跡、同級の女子高生イ・スア(ユン・ジンソ)がダムで水死したことをジュファンに教えてもらう。ジュファンはネットカフェで、ジュファンは有名なあばずれだったと面白おかしくデスに説明するが、店にいたウジンが「姉さんはあばずれじゃない」と言ってジュファンを殺害する。ウジンは死んだスアの弟だった。
デスはかつての同級生に会い、スアの情報を得ようとするが、よく知っているのはあなただと言われ、自らの記憶をたどる。デスは、転校の直前、スアとウジン(アン・ヨンソク)が姉弟で愛し合っている姿をのぞき見し、そのことをジュファンに話したことを思い出す。
デスはウジンの住むペントハウスに向かい、ウジンがなぜ自分を恨んで監禁したかを話す。ウジンは「なぜ監禁したかじゃない、なぜ解放したかだ」と不敵に語る。ウジンはデスだけではなく、ミドにも催眠術をかけさせ、二人が愛し合うように仕向けていた。ウジンはレーザーポインターで紫の箱を示す。そこには一冊のアルバムがあった。そこにはデスの娘、ヨニの成長過程を示す写真が貼られていた。ヨニの成長した姿、それはミドだった。デスはウジンにより、実の娘と愛し合い、性交するよう仕向けられていたのだ。デスは、ミドの目の前にも紫の箱が置かれていることを知り、ウジンの壮絶な復讐劇を理解する。デスはミドに真実を知らせないでくれとウジンに懇願し、彼の靴をなめ、自らの舌をはさみで切り落とす。ウジンはデスの後悔と謝罪を見て満足するが、復讐を遂げて目的を失ったウジンは、自らの頭を銃で撃ち抜き、命を絶つ。
デスは、催眠術師に記憶を消すように依頼。真相を知るデスの人格は死に、別人格のデスが残る。ミドが現れ、「おじさん、愛してる」とささやくのだった。

サスペンス作品ではあるのだが、現実感のない心理的な描写が多くて、状況説明が必ずしも写実的ではないので、何が事実なのか分かりにくい。序盤で気を抜くと、何が何だか分からなくなる恐れがある。衝撃の真相が明らかになるクライマックスも、アルバムの写真だけではパッと理解できず、「ん? よく分からんけどデスがこんだけショックを受けてるってことは、ミドが娘だったってこと? 」みたいな想像で理解する形になってしまい、カタルシスを感じるに至らなかった。魅力的な謎の提示はよかったが、サスペンス作品は真相の解明はスッキリと描いてほしかった。ウジン役のユ・ジテは霜降り明星の粗品に雰囲気が似ていた。

【5段階評価】4

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2020年10月27日 (火)

(2218) ビー・バップ・ハイスクール

【監督】那須博之
【出演】仲村トオル、清水宏次朗、中山美穂、宮崎ますみ、地井武男、古川勉
【制作】1985年、日本

きうちかずひろの漫画、「ビー・バップ・ハイスクール」の実写化作品第1弾。けんかが得意な高校生2人のけんかと恋を描いた青春コメディ映画。

ダブリで愛徳高校2年生の仲村徹と加藤浩志(清水宏次朗)は、勝手に舎弟を名乗る兼子信雄(古川勉)や一年生の大前均太郞(鎌田伸一)らを従え、学生生活を送っていた。二人は同級生の泉今日子(中山美穂)に誕生会に呼ばれるが、全くなじめず、家業の酒蔵の酒を飲んで暴れてしまう。やけになった二人は他校との喧嘩に明け暮れ、戸塚水産高校の生徒と喧嘩。戸塚は卒業生の半数がヤクザになるという高校で、二人は戸塚のヘビ次(小沢仁志)とネコ次(木下秀樹)に目を付けられる。ヘビ次とネコ次はトオルとヒロシの居場所を聞くため、今日子を捕まえ、今日子を殴って髪の毛を切り落とす。今日子は親に転校させられてしまう。トオルとヒロシは戸塚高校に果たし状を叩き付け、仲間とともに工場跡地で戸塚高校と大乱闘。激しい戦いの末、ヘビ次とネコ次を倒す。今日子が忘れられない二人は花束を持って今日子の通う学校の門の前に現れ、二人で喧嘩を始める。それを見つけた今日子は嬉しそうに微笑むのだった。

不良高校生がわんさか出てくる映画で、高校生がたばこは吸うわ酒は飲むわなので、今となっては地上波放送は厳しいんだろうが、本作は東映チャンネルでの無料放送。今は亡き地井武男や阿藤海らが出演し、懐かしい作品。若い阿藤海の見た目と声質が、麒麟の田村に妙に似ていた。

【5段階評価】3

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2020年10月26日 (月)

(2217) オリエント急行殺人事件

【監督】ケネス・ブラナー
【出演】ケネス・ブラナー、ペネロペ・クルス、ジョニー・デップ、トム・ベイトマン、デイジー・リドリー、ジュディ・デンチ
【制作】2017年、アメリカ

オリエント急行の中で起きた殺人事件に名探偵が挑む推理劇。アガサ・クリスティの推理小説の映画化作品。

嘆きの壁で得意の推理を披露したエルキュール・ポアロ(ケネス・ブラナー)は、オリエント急行に乗り込む。隣の個室のエドワード・ラチェット(ジョニー・デップ)は脅迫状を受け取っており、ポアロに警備を依頼するが、ポアロはラチェットが気に入らず、断る。翌日、ラチェットは個室内で死体となって発見される。胸には不揃いな複数の刺し傷があった。列車は雪崩の影響で脱線。ポアロは復旧を待ちながら捜査を開始する。
はじめはラチェットの秘書ヘクター・マックイーン(ジョシュ・ギャッド)が怪しまれたが、医師のアーバスノット(レスリー・オドム・Jr)が一緒にいたと彼のアリバイを証明。ポアロは、残された紙片の燃えかすをもとに、ラチェットがかつてアメリカで起きた少女誘拐殺人事件の犯人、カセッティであることを突き止める。ラチェットはアームストロング家の少女デイジーを誘拐して殺害。当時妊娠中だったデイジーの母親は死亡し、父親も自殺。犯人扱いされたメイドも自殺し、彼女を追い詰めたと世間に責められた担当検事も自殺していた。捜査を進めると、乗客のそれぞれが、何らかの形でアームストロング家にかかわっていることが判明していく。ポアロがその一人、デイジーの家庭教師だったメアリ・デブナム(デイジー・リドリー)に迫ると、彼女はついにラチェットへの殺意を表明する。すると突然、元狙撃兵の医師、アーバスノットがポアロに発砲し、ポアロは腕を負傷。アーバスノットは自分が真犯人だと宣言し、ポアロに襲いかかるが、駆けつけたポアロの友人ブーク(トム・ベイトマン)がポアロを助ける。
ポアロは、居並んだ乗客に対して二つの仮説を提示する。一つは、車掌になりすました何者かがラチェットを殺し、逃走を果たしたというもの。それはありえないとブークは否定する。もう一つは、ラチェットに恨みを持つ全員が犯人であるというものだった。全員が共謀し、ラチェットを抑えつけて一人一人がラチェットにナイフを突き立て殺害。互いのアリバイを証明し合う。それが事件の真相だった。ポアロは乗客に向かって、もし自分たちが罪人ではないと思うなら、自分を殺して口を封じろと言い、乗客の前に拳銃を置く。デイジーの祖母、ハバード夫人(ミシェル・ファイファー)は、自分だけが罪を背負うと叫び、銃を手に取り自らの喉元に向けて引き金を引くが、弾は入っていなかった。ポアロはそれを見て、静かに乗客に背を向け、立ち去る。
列車は復旧し、駅に到着。ポアロは、警察は一つ目の仮説を受け入れたと乗客に告げ、列車を降りる。彼は新たな殺人事件の解決のため、ナイル川に向かうのだった。

1974年の作品「オリエント急行殺人事件」に続く二度目の映画化作品。事件が起こってからのシーンは説明調になりがちだが、登場人物の感情を巧みに描いており、若い女性から老婆まで一人一人がラチェットに激しい怨みの一撃を食らわせる殺人現場の再現シーンは胸が震えた。家庭教師のメアリ・デブナムを演じたのは「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の主人公レイを演じたデイジー・リドリー。こんなに美人だったっけと思うほどの美女だった。
続編も絶対に観ようと思えるできばえで、評価5にしてもいいぐらいだったが、赤いガウンの意味やハバード夫人が背中を刺される狂言の意味が説明不足と感じたため、1点下げた。

【5段階評価】4

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2020年10月25日 (日)

(2216) トロールズ

【監督】マイク・ミッチェル
【出演】アナ・ケンドリック(声)、ジャスティン・ティンバーレイク(声)、ズーイー・デシャネル(声)
【制作】2016年、アメリカ

歌とダンスが好きな種族トロールの活躍を描いた3DCGアニメ作品。ドリームワークス・アニメーション制作。

歌とダンスとハグが大好きな種族トロールは、彼らを食べることが幸せと信じているベルゲン族に襲われ、離れた場所に移り住む。歌が大好きなポピー王女(アナ・ケンドリック)は、仲間とパーティを開き、花火を上げて盛り上がるが、ベルゲン族のシェフ(クリスティーン・バランスキー)に見つかり、ポピーの仲間が連れ去られてしまう。ポピーは歌うことをやめたブランチ(ジャスティン・ティンバーレイク)とともに仲間を助けるため、ベルゲンの町に向かう。シェフは、幼い頃にトロールを食べ損ねたベルゲンの若い王グリスル(クリストファー・ミンツ=プラッセ)に捕まえたトロールを捧げることにし、召使いのブリジット(ズーイー・デシャネル)にトロールを預ける。ブランチとともにベルゲンの町に忍び込んだポピーは、ブリジットがグリスルに片思いをしていることを知り、彼女がグリスルとデートできるように協力。グリスルはブリジットに一目惚れし、彼女をトロールフェスに招待する。ポピーは捕まったままのクリーク(ラッセル・ブランド)を助けようとするが、シェフに捕まり、村に残った一族も捕らえられ、鍋に入れられてしまう。落ち込むポピーを見て、仲間達も意気消沈。それを見たブランチは、封印していた歌を歌い、ポピーを励ます。ポピーは勇気をもらい、仲間も元気を取り戻す。すると、ブリジットが鍋の蓋を開け、ポピー達を逃がす。ブリジットが一人で責任を背負おうとするのを見たポピーは、仲間とともにブリジットのもとに戻り、大勢のベルゲン族に、幸せは自分の中にある、と説得。トロールの楽しい歌とダンスを見て、ベルゲン族も踊り出し、活気のなかったベルゲンの町は色とりどりに輝く。その姿を見たポピーの父親ペピー(ジェフリー・タンバー)は、ポピーを女王に任命。ポピーと町は幸せに包まれるのだった。

トロールと言えばRPGの世界では醜い緑色の大型モンスターだが、本作では髪の毛を自由に操るカラフルなこびとのような種族として描かれている。楽曲「True Colors」などが、「もはやこの歌を元に映画を作ったんじゃないの」と思うぐらいストーリーにドンピシャにハマっていて感動的。最後の大勢でのダンスシーンも胸が熱くなる。歌も本格的で心地よかった。

【5段階評価】4

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2020年10月24日 (土)

(2215) フィフス・ウェイブ

【監督】J・ブレイクソン
【出演】クロエ・グレース・モレッツ、アレックス・ロー、ニック・ロビンソン、ザカリー・アーサー、リーブ・シュレイバー
【制作】2016年、アメリカ

宇宙からの侵略者と戦う若者たちを描いたSF作品。

空の上に突如巨大な宇宙船が現れ、第1波として電子機器の破壊、第2波として地震と津波、第3波では鳥を媒介した致死性ウィルスにより、人類への攻撃が行われる。第4波でついに地球外生命体アザーズが地上に降り、人間の頭脳を支配。家族四人で暮らしていた女子高生のキャシー・サリバン(クロエ・グレース・モレッツ)は、医療従事者の母親(マギー・シフ)をウィルスで失い、父親のオリバー(ロン・リビングストン)、幼い弟のサム(ザカリー・アーサー)とともにキャンプ地で共同生活を送る。そこに突如、ボーシュ大佐(リーブ・シュレイバー)率いる米軍が現れ、子ども達をバスに乗せて連れ去り、大人は皆殺しにされる。バスに乗り遅れ、一人はぐれたキャシーは、サムの連れ去られた基地を目指すが、途中でアザーズに右脚を銃撃され、気を失う。
気がつくと、若い青年エバン・ウォーカー(アレックス・ロー)が彼女を介抱していた。キャシーはエバンを信用しきれず、単身で基地を目指すことにするが、エバンは彼女に同行。エバンの献身的な協力に、キャシーは感謝し、ある晩、エバンにキスをする。その夜、森の中で休息しているエバンにアザーズが持ち場に戻れと話しかけてくる。エバンはアザーズを倒すが、キャシーはエバンを信用できず、銃を向ける。エバンはアザーズと人間の中間的な存在だった。エバンは愛を信じていなかったが、キャシーに出会い、愛が存在することを確信したと告げる。キャシーはその言葉を信じることができず、付いてきたら撃つとエバンに言い残し、立ち去る。
キャシーの高校の同級生、ベン・パリッシュ(ニック・ロビンソン)は大勢の若者や子どもたちとともに基地に連れてこられる。彼は女性軍曹(マリア・ベロ)からアザーズを倒す兵士になるよう言われ、首に小さな探知機を埋め込まれる。集められた若者は軍隊教育を受け、ベンは小隊のリーダーとなる。そこにはキャシーの弟サムも配属されていた。ベンたちは第5波となるアザーズの猛攻に立ち向かうため、戦地に派遣される。彼らには、アザーズを緑色の光として感知する探索用スコープが配布される。ベンは幼いサムを戦地に送り込むことをためらい、サムを基地に残して戦地に向かう。戦地で緑色に光るアザーズと銃撃戦を繰り広げるベンたちだったが、敵に囲まれ、建物に逃げ込む。仲間の一人、リンガー(マイカ・モンロー)は軍を抜けると宣言して首の探知機を抜き取る。途端に彼女はスコープ越しにアザーズと認識される。トリックに気づいたベンは自分の探知機も抜き取る。ベンは、軍にいる大人達がアザーズであり、探知機のない普通の人間がスコープ越しに緑色に見えていること、アザーズは自分たちを投入して人間の生き残りを掃討しようとしていること、つまり自分たちこそが第5波、フィフス・ウェイブであることに気づく。ベンは、置いてきてしまったサムを連れ戻すために基地に戻る。同時に基地に潜入していたキャシーは、ベンと出会う。キャシーを追ってきたエバンの協力も得て、ベンとキャシーはサムを発見。基地を脱出した三人は、仲間と合流。キャシはみんなと食事を取りながら、希望を胸に生き続けることを誓うのだった。

普通の地球侵略SFのつもりで観ていると、キャンプ地でなぜか大人と子どもを分けるという軍の謎の行動が示される。面白くなってきたぞと思いきや、大人の兵士がいるのに子ども達を兵士として訓練し、大人達は全滅という必然性のない展開。次第に「あれ、これってもしかして子供向けのジュブナイル映画なのか」と気づく。そうなるともう、エバンズが人間とアザーズのどちらにもなれる存在だとか、愛に気づいてどうだとか、素人女子高生が女性兵士に素手で挑みかかって相手を殺すとか、全ての筋書きが予定調和で、青少年向けワクワク映画の範疇だった。アザーズの映像も、スコープ越しに緑色の画像でタコ星人みたいのが見えるだけという、テレビドラマの特撮レベルの造形。クロエ・グレース・モレッツをお目当てに観る分にはいいが、騙された感のあるB級SF映画だった。

【5段階評価】3

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2020年10月23日 (金)

(2214) 最後の1マイル~ハンセン病 果てなき旅路で~

【監督】浅野直広
【出演】笹川陽平、笹川陽一
【制作】2017年、日本

ハンセン病とその差別撲滅のために活動する日本財団会長を取り上げたドキュメンタリー映画。

日本財団会長の笹川陽平は、父親の笹川陽一同様、世界のハンセン病患者の救済に取り組んでいる。治療薬MDTの無償配布、啓蒙活動、回復者の心のケア、ローマ教皇庁への折衝など、様々な現場を飛び回っている様子が映像に捕らえられている。

ハンセン病、らい病、leprosyと呼ばれ、患者を指すleperはしばしば、世間から隔離・のけ者にされる者という一般的な意味さえ与えられている。最近まで治らない病気、ローマ法王すら根治不能な最悪の病気の例えに使っているほど、差別性が強い。本作を見ると、そのことがよく理解できる。陽平の父、笹川陽一が重度のハンセン病患者の女性を見て涙を流すシーンはぐっと来る。観ずに消そうかと一瞬思ったが、鑑賞してよかった。

【5段階評価】4

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2020年10月22日 (木)

(2213) 特捜部Q 檻の中の女

【監督】ミケル・ノルガード
【出演】ニコライ・リー・コス、ファレス・ファレス、ソニア・リクター、ミケル・ボー・フォルスゴー
【制作】2013年、デンマーク、ドイツ

未解決事件の真相を追う二人の刑事の活躍を描いたサスペンス作品。

強引な捜査をして仲間を失った殺人課の刑事カール(ニコライ・リー・コス)は、上司(ソーレン・ピルマーク)から未解決事件の整理作業をするために新設された「特捜部Q」に配属される。部署は要するに閑職で、たった一人、地下の部屋で仕事を始めるが、そこに別の刑事アサド(ファレス・ファレス)も配属される。彼は今までしてきたはんこ押し係よりましだ、と言って、未解決事件の資料を壁一面に張り出す。カールはあきれながらも、その中の一つ、フェリーから若手女性議員が飛び降り自殺した事件に興味を示す。死んだのはミレーデ・ルンゴー(ソニア・リクター)。彼女は、幼い頃に交通事故で両親を失ったことで解離性障害になった弟ウフェ(ミケル・ボー・フォルスゴー)とフェリーに乗り、自殺したとされていた。しかしカールは捜査資料から、自殺と判断するのは不自然だと考える。カールとアサドは、残された捜査資料をもとに、ウフェがフェリーの中でフード付きコートを着た正体不明の男に連れ去られ、ミレーデは弟を探していたのではないか、と推理する。
カールの推理通り、ミレーデは自殺したのではなかった。フェリーの中で弟を探していたところ、フードの男に背後から襲われ、加圧室の中に幽閉されて加圧された状態で1年以上も閉じ込められていたのだ。閉じ込めていたのはミレーデが会議の場で知り合い、一夜の関係を持った男(ピーター・プラウボー)だったが、ミレーデはなぜ彼に恨まれているのか、身に覚えがなかった。
アサドは療養施設にいて人との会話ができないウフェに辛抱強く付き合い、彼に会議出席者の写真を見せ、フェリーでウフェに関わった男を割り出す。参加者データから、男の名はダニエル・ヘイルであることが判明。捜査を進めると、ダニエル・ヘイルは湖で溺死しており、別の何者かが彼になりすまして会議に出席していたことが判明。二人はその男がミレーデに接近し、ダニエルを殺したと推理する。その男は、子どもの頃ダニエルと同じ孤児院にいたラセという男だった。
真相に近づこうとしたとき、与えられた任務の枠を超えすぎた捜査をする二人に、上司は停職を言い渡す。やる気を失うカールだったが、アサドは孤児院を突き止め、カールに報告。二人は孤児院に向かい、職員から、ラセは本名をラース・イェンセンと言い、子どもの頃に父親と妹を交通事故で失い、車椅子生活になった母親が酒浸りになってしまったため、孤児院に入ることになったと聞かされる。二人はラセの母親の家に向かう。
ラセが子どもの頃、父親の運転で家族でドライブをしていると、後ろから追い越してきた車がいた。車の後部座席に乗った少女は窓ガラス越しにラセにあかんべぇをすると、ふざけて運転する父親に目隠し。そのとき、対向車が目の前に現れ、衝突。ラセの車はそれに巻き込まれてしまい、一瞬で父親と妹を失ったのだった。ふざけていた少女の車も事故に巻き込まれたが、少女は無傷で、何の罪の意識もなく降る雪と戯れていた。ラセは大破した車の中で血を流しながらその少女を見るしかなかった。その少女こそ、幼いミレーデ・ルンゴーだったのだ。
カールとアサドは、ラセの母親の家にラセがいると見抜き、敷地の中を探す。二人が農作業小屋の中の怪しい部屋に入ろうと錠を壊そうとしたところに、ラセが現れる。彼は加圧室の加圧を抜き、ミレーデが気圧変化に対応できず死ぬ手はずを整えてから、二人の前に現れたのだ。二人は事情を聞くと言ってラセを車に乗せて走り出すが、停電でもないのに発電機を動かし続けていることを怪しみ、小屋に引き返す。その途端、ラセはカールとアサドに襲いかかり、小屋の方に走り去る。カールはラセを追って小屋に向かい、ついに加圧施設を発見。中には衰弱したミレーデがいた。カールは減圧レバーを戻してミレーデにがんばるよう声をかけるが、戻ってきたラセがカールの首を強烈に締め付ける。絞め殺されそうになったところに、足を負傷したアサドがたどり着き、ラセを殴り倒してカールを救う。
こうして事件は解決する。上司は二人の停職を解き、カールに殺人課に戻すと告げるが、カールは自分の裁量で未解決事件の捜査を続けると宣言。上司もそれを認める。カールはアサドに警察手帳を返すのだった。

序盤に謎が提示され、捜査の状況が丁寧に描かれ、少しずつ事件の真相が明らかになっていく。無邪気な子どものいたずらが、無実の第三者を巻き込んで互いの家族の運命を左右する大事故に発展し、それによって強烈な怨恨が生み出されるという過程を描いた場面は衝撃的。サスペンス作品として優れたできだった。
唯一、クライマックスでラセが無防備なカールの背後を襲ったときに首を絞めて殺そうとするというところは、ちょっと残念。本当に殺す気なら、刃物なり何なり、自分の家なんだからもっと確実な方法があったはず。まあ主人公が死ぬわけにはいかないので仕方ない。続編「特捜部Q キジ殺し」も面白かったし、今後が楽しみなシリーズ作品である。

【5段階評価】4

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2020年10月21日 (水)

(2212) 日々是好日

【監督】大森立嗣
【出演】黒木華、樹木希林、多部未華子、鶴見辰吾、郡山冬果、鶴田真由
【制作】2018年、日本

お茶を習い始めた女性の人生を描いた作品。森下典子のエッセイが原作。

大学生の典子(黒木華)は母親(郡山冬果)の勧めで従弟の美智子(多部未華子)とお茶を習うことにする。師匠の武田先生(樹木希林)の指導を受けながら、何が楽しいのかもよく分からないまま、典子はお茶の稽古を続ける。やがて美智子は結婚し、典子は就職も結婚もしないまま10年が経つ。裏切られた彼と別れ、一人暮らしを始め、新たな恋人ができる。一期一会の教えを武田先生から聞いたあと、典子は父親(鶴見辰吾)から近くに来たから寄ってもいいかという電話をもらうが、用事があると断る。父親はまた会えるからいいか、とあっさり了解するが、典子の週末の帰宅を待たず父親は倒れ、帰らぬ人となる。茶道を始めて24年が経ち、典子は武田先生から、お茶を教えてはどうかと勧められる。典子は新たな人生の始まりを感じるのだった。

茶道をテーマにした物静かな作品。号泣したり激昂したりするような演出はなく、終始、感情表現は抑え気味。黒木華らしい作品とも言える。タイトルとなった茶道の言葉は様々な読みがあるが本作は「にちにちこれこうじつ」と読む。繰り返し稽古することで茶道の形式美を体得していく。それをいいと思うか面倒と思うか。いいと思う人にとっては、茶道を始めるきっかけにもなりうる作品だろう。自分もお茶に呼ばれたことはあり、それなりの関心を持って作品を観たものの、この世界に足を踏み入れたいとは残念ながら思わなかった。俗物だが仕方ない。

【5段階評価】3

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2020年10月20日 (火)

(2211) ティアーズ・オブ・ザ・サン

【監督】アントワーン・フークア
【出演】ブルース・ウィリス、モニカ・ベルッチ、サミ・ロティビ、コール・ハウザー、イーモン・ウォーカー
【制作】2003年、アメリカ

ナイジェリアの内戦に巻き込まれたアメリカ人女性の救出に向かった米軍兵の運命を描いたアクション映画。

ナイジェリアではイスラム系フラニ族とキリスト教系イボ族の対立が激化。イボ族の支援をしている女性医師リーナ・ケンドリックス(モニカ・ベルッチ)を救うため、ウォーターズ大尉(ブルース・ウィリス)率いる部隊がナイジェリア入りする。ウォーターズはリーナを発見するが、彼女は患者を置いて逃げることはできない、と同行を拒否。ウォーターズは患者を連れて行くと嘘をついて歩ける患者とともにリーナをヘリとの合流地点に連れて行き、リーナだけを救出して現地人を置き去りにし、ヘリを離陸させる。リーナがいた教会の村人はナイジェリア軍により皆殺しにされていた。その無残な光景をヘリからリーナとともに見たウォーターズはヘリを引き換えさせ、ヘリに子どもや老人など12人を乗せ、残りの兵と現地人を連れて徒歩でカメルーンの国境を目指す。
ところが、彼らはナイジェリア軍の部隊に執拗に追跡される。怪しんだウォーターズが現地人を調べようとすると、一人の男が逃走。兵士の一人が銃撃し、捕らえると、男は発信器を持っていた。家族を人質に取られていると言い、アーサーを見張っていたと言い残す。アーサーとは、皆殺しにされたはずの大統領の息子(サミ・ロティビ)だった。ナイジェリア軍はイボ族の血を絶やすため、彼を追っていたのだった。ウォーターズはアーサーとリーナを救い出すため、仲間とともにカメルーンを目指す。しかしついにナイジェリア軍に追いつかれ、猛攻を受ける。仲間や現地人が次々と犠牲になる中、ようやく米軍の戦闘機が救援に現れ、ウォーターズは数人の仲間とともにリーナとアーサーの救出に成功する。現地人はリーナやウォーターズに感謝し、アーサーの生還を喜ぶ。ウォーターズはリーナに抱かれ、ヘリに乗り込むのだった。

扱っているテーマは重めだが、過激な映像を見所にした娯楽アクションの域を出ていなかった。ジャングルでの銃撃戦が中心だが、途中まで米軍兵は無敵状態。終盤にかけて話を盛り上げるように味方が死に始める。主人公は腕を切られたり銃弾を受けたりするが、リーナをかついで走ったり味方の負傷兵のところに匍匐前進で戻ったり、またにヒーローアビリティ全開。最後は爆弾に巻き込まれて重傷だったリーナは、救助されたとたんHPが完全に回復し、主人公を介抱する側になるというヒーローアビリティを発揮していた。それに、後半、ナイジェリア軍に襲われ、後退しながら逃走したのにカメルーン国境にたどり着くというのは、もともと進路を間違えていたのでしょうか。そしてナイジェリア軍もカメルーン国境に追い立ててしまったんでしょうか。んで、戦闘機の攻撃が無敵すぎ。戦闘機二機で、そんな簡単に歩兵部隊を壊滅できるもんかね。最初は救助ヘリは飛ばせないとかなんとか言っていたのに、そんなんだったら早く投入しとけ、という。こういう辺りがちゃんとしてないと、やっぱり盛り上がらない。ブルース・ウィリスは「アルマゲドン」ばりに最期、自らを犠牲にして味方を助けるのかと思ったらしっかり最後まで生き残ったのはちょっと意外だった。

【5段階評価】3

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2020年10月19日 (月)

(2210) ザ・ガンマン

【監督】ピエール・モレル
【出演】ショーン・ペン、ジャスミン・トリンカ、マーク・ライランス、ハビエル・バルデム
【制作】2015年、アメリカ、イギリス、スペイン、フランス

命を狙われた元スナイパーが、愛する女性と自分を守るために奮闘するバイオレンスアクション。

レアメタル採掘による富を巡って非人道的行為が横行するコンゴで、表向き警備任務に就いていたジム・テリア(ショーン・ペン)は、企業の指令により悪事にも手を染めていた。ある日、大臣暗殺計画の実行犯となったジムは、愛する女性アニー(ジャスミン・トリンカ)を残してコンゴを去る。8年が経ち、コンゴで人道的支援のNGOで働いていたジムは、突然、武装した複数の黒人に命を狙われる。返り討ちにするジムだったが、すぐに支援現場の人間を引き上げさせ、ロンドンに向かう。多国籍企業の重役となった共犯者コックス(マーク・ライランス)に心当たりを聞き、アニーの保護を頼んだフェリックス(ハビエル・バルデム)がバルセロナにいるという情報を得た聞くと、親友のスタンリー(レイ・ウィンストン)の心配をよそにバルセロナに向かう。バルセロナではアニーとフェリックスが夫婦となっていた。フェリックスはアニーとジムを再会させる。アニーはまだジムのことを思っており、彼の宿を訪ねて愛し合う。ジムはフェリックスとアニーの家に呼ばれるが、そこに暗殺集団が現れる。フェリックスは殺され、ジムはアニーを連れて脱出する。ジムとアニーはスタンリーの家に向かい、アニーを匿ってもらうと、スタンリーの情報をもとに、黒幕のコックスを追う。ジムはコックスに水族館に来るよう伝え、彼から話を聞き出そうとするが、コックスの手下に追われ、逃走。コックスはジムが落としてしまった手帳をもとにスタンリーの家をつきとめ、スタンリーを殺害。ジムは大臣暗殺計画の動画をネタにアニーを闘牛場で解放するようコックスに要求する。アニーを連れて闘牛場に現れたコックスは、手下にジムを始末させようとするが、ジムは3人の手下を葬り去る。隙を突いて逃げたアニーを追ってコックスは闘牛場の牛の出口に向かうが、ジムがアニーを上の階に引き上げ、コックスは走ってきた牛に襲われ、命を落とす。ジムはインターポールに逮捕されるが、刑期を終え、人道支援活動を続けるアニーの元に戻る。二人は強く抱き合うのだった。

ハードな映像が売りのアクション作品。主人公と敵の命の駆け引きは、あまり真剣味がなく、殺すならさっさと殺せばいいし、情報を得るならさっさと身動き取れなくすればいいのに、なんだかいろいろと脇が甘い。最後も大ボスが自ら銃を持って走って主人公に不用意に近づいて撃たれるというよくある展開。闘牛に殺されるという落ちは、オリジナリティというよりコミカルの一歩手前だった。

【5段階評価】3

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2020年10月18日 (日)

(2209) マダム・フローレンス! 夢見るふたり

【監督】スティーブン・フリアーズ
【出演】メリル・ストリープ、ヒュー・グラント、サイモン・ヘルバーク、レベッカ・ファーガソン、ニナ・アリアンダ
【制作】2016年、イギリス、フランス

カーネギーホールでコンサートを開いた音痴のソプラノ歌手と、それを支える夫との愛情を描いたコメディ。

エンターテイナーのシンクレア・ベイフィールド(ヒュー・グラント)は、フローレンス・フォスター・ジェンキンス(メリル・ストリープ)を大事にしており、彼女の望みは何でも聞くようにしている。ソプラノ歌手として活躍したいフローレンスは、自分のお気に入りのピアノ伴奏者をオーディションで選び、コズメ・マクムーン(サイモン・ヘルバーク)が選ばれる。シンクレアはフローレンスの好き嫌いをコズメに伝え、破格の報酬を支払うことにする。
翌日、フローレンスは名指揮者のカルロ・エドワーズから歌のレッスンを受ける。カルロはまじめに指導するが、初めてレッスンに参加したコズメは、彼女のあまりの音痴ぶりに言葉が出ない。帰りのエレベータではこらえきれず大笑いをしてしまう。自分に才能があると信じ込むフローレンスはリサイタルをしたいと言い出す。カルロは見え見えの嘘をついて出席を拒否。コズメもシンクレアにやめるよう進言するが、シンクレアは半ば脅すようにコズメに伴奏させる。シンクレアは買収した記者とフローレンスの知人で観客を固めてリサイタルを実施。事情を知らない若い婦人のアグネス・スターク(ニナ・アリアンダ)はあまりのひどい歌に笑いが止まらず、夫とシンクレアに会場から追い出される。コンサート後、フローレンスは体調が悪化し、帰宅し、医師の診察を受ける。彼女は18歳の時、新婚初夜に遊び人だった夫に梅毒を移されていた。診察した医者が50年間も生きているのは信じられないと言ってシンクレアに理由を聞くと、彼は音楽が彼女を支えていると答える。医者はあなたの愛情もだ、と言って帰る。シンクレアは眠ったフローレンスを置いて打ち上げで盛り上がっている自宅に戻り、アグネスやコズメらと飲み明かす。
翌朝、彼女を絶賛する新聞記事に気をよくしたフローレンスは、シンクレアの家に現れ、コズメを連れて自分の歌をレコーディング。シンクレアが、フローレンスに内緒で同棲しているキャスリーン(レベッカ・ファーガソン)とゴルフに行っている間に、フローレンスは自分の曲をラジオ局に送り、カーネギーホールを予約して戦争で苦しんでいる帰還兵1,000人を招待してしまう。
コンサート当日。酔った帰還兵と有名人で埋まった会場を見て、フローレンスはナーバスになる。シンクレアが一生懸命なだめるが、そこにコズメが歩み寄り、「きっとうまく行きます」と勇気づける。感動したフローレンスは自分の遺書にコズメに遺産を残すと書き加え、会場入りする。コズメの伴奏でフローレンスが歌い始めるが、会場はフローレンスの歌声に爆笑。やめろ、警察を呼ぶぞ、と罵声が飛び交う。恐れおののき歌うのをやめてしまうフローレンスを見て、観客を恫喝したのは、最初のリサイタルで笑い転げていたアグネスだった。力の限り謳っているんだから応援しろ、と帰還兵にどなり、会場は総立ちでフローレンスを応援。勇気づけられたフローレンスは歌を再開する。買収に応じなかったニューヨーク・タイムズの記者は、あまりのひどさに席を立ち、会場を後にしてしまう。その後もフローレンスは歌い続け、コンサートは終了。フローレンスを連れ帰ったシンクレアは自分の家に戻らず、彼女の横で眠る。
翌朝、シンクレアは、酷評記事が書かれたニューヨーク・タイムズを買い占め、何とかフローレンスの目に付かないようにするが、彼女はゴミ箱からそれを取り出し、記事を読んでしまう。彼女はショックで倒れる。目を覚ますと、彼女の横にはシンクレアがいた。自分は嘲笑されたのかと疑うフローレンスに、シンクレアは、僕はそうじゃないと元気づけ、コズメも優しく見守る。フローレンスは目を閉じ、美しい歌声で観客を魅了し、コズメとシンクレアに挟まれてステージで喝采を浴びる情景に思いをはせるのだった。

歌唱力に定評のあるメリル・ストリープが、音痴の役を自らの声で演じているのが作品に現実味を与えている。カラオケが浸透し、音痴の人の歌い方を聞き慣れている時代だからこそ、音痴の人はこうなるよな、という音の外し方やすっとんきょうな高音の出し方が分かり、吹き替えでわざとひどい歌い方をしていると感じさせることなく、力の限り歌った結果、音痴になっているという歌声が表現されている。むしろ、ヒュー・グラント演じるシンクレアの献身ぶりの方が、なぜそこまで、と現実味を感じさせないほど。ピアニスト役のサイモン・ヘルバークも、ピアノが得意な俳優で、この臆病そうな青年が、次第にフローレンスに共感していく様子も感動的。ただ、実話に基づく作品だから仕方ないのかもしれないが、シンクレアが浮気をしているという設定は、作品のすがすがしさにはそぐわなかった。

【5段階評価】4

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2020年10月17日 (土)

(2208) 沈黙 -サイレンス-

【監督】マーティン・スコセッシ
【出演】アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、アダム・ドライバー
【制作】2016年、アメリカ

日本に渡った宣教師の過酷な運命を描いた作品。遠藤周作の小説が原作。

日本で布教活動をしていたフェレイラ神父(リーアム・ニーソン)が棄教したという報せを受け、彼の教えを受けたセバスチャン・ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とフランシス・ガルペ(アダム・ドライバー)の二人の神父が日本を目指す。道中のマカオで日本人のキチジロー(窪塚洋介)を案内役にし、二人は長崎県のトモギ村にたどり着く。島には多くのキリスト教信者がおり、二人は村人に歓迎されるが、やがて密告によりキリシタンを率いていた「じいさま」(笈田ヨシ)ら四人が人質となり、踏み絵を踏んで十字架につばを吐きかけたキチジローは放免されるが、残りの三人は拷問を受け命を落とす。役人の調査が村に入ることになり、ロドリゴとガルペは別々に逃走。ロドリゴは向かった先でキチジローに再会。ロドリゴは悩みながらもキチジローの告解を聞き入れる。しかしロドリゴはキチジローの密告により敢えなく役人に捕らえられてしまう。他の信者とともに投獄されたロドリゴは、統治者の井上筑後守(イッセー尾形)や通訳係(浅野忠信)から棄教を執拗に迫られる。信者の一人(加瀬亮)は突然斬首され、ロドリゴは激しく動揺する。別の場所にいたガルペも捕らえられ、棄教しきれないまま、簀巻きにして海に放り投げられる信者(小松菜奈)を助けようとして海に泳ぎだし、信者小松菜奈)とともに溺死する。
井上筑後守の指示により、ロドリゴは棄教したフェレイラと再会。ロドリゴはフェレイラの棄教に至る話を聞くが、彼を軽蔑する。しかし、その夜、信者達が逆さ吊りの拷問を受け、死の間際にいる様子を目の当たりにしたロドリゴは、踏み絵のキリストから「自分を踏め」という声を聞き、ついに棄教を受け入れる。その後、ロドリゴは棄教した確認を何度もされながら、フェレイラとともに宗教的な禁輸品を判別する役を担いながら日本で暮らす。キチジローは引き続きロドリゴとともにいた。ロドリゴはキチジローに一緒にいてくれてありがとう、と謝辞を述べる。キチジローは棄教したロドリゴに告解をしようとし、ロドリゴは戸惑いながらもそれを聞く。やがてロドリゴは日本人の未亡人とその子を家族とし、やがてその生涯を閉じる。火葬される彼の手の中には、小さな十字架が握られているのだった。

グッドフェローズ」や「ディパーテッド」などから受けるマーティン・スコセッシ監督の印象とは異なる、江戸時代の日本が舞台の作品。一方で、物静かなすごみ、逃れられない暴力・理不尽という点では、通底するものもある。火刑や荒磯での十字架刑、簀巻き、斬首、逆さ吊りなど、残酷な処刑や拷問の写実的な暴力描写は見応えがあった。無宗教な自分には、棄教か殉教か、とか、キリスト教か仏教か、と葛藤する信条は理解が難しいし、教えに背くより死を選ぶという考えには「健康のためなら死んでもいい」にも似た矛盾を感じるが、ロドリゴ神父の苦悩は厳しい自然の風景なども効果的に取り入れ、うまく映像化されていた。
本作は英語と日本語が両方使われている。ポルトガル人が英語で会話するのかよ、というところは置いておいて、アメリカ映画だと日本人同士の会話も英語になってたり、日系アメリカ人を使って日本語がぎこちなかったり、ということがよくあるが、本作は日本人同士は日本語で話すし、しかも長崎の方言で話すので、その辺りは日本人の目から見ても自然でよかった。ハリウッド映画経験のある浅野忠信だけでなく、イッセー尾形までも長い英語のセリフを感情豊かにしゃべるのも一見の価値あり。
また、全編チェックしたわけではないが、本作はBGMが少ないのも特徴的。エンドロールも波風や虫の音が響くだけという独特なもの。確かにこの作品には、洋楽もオーケストラも、外国人には耳慣れない和楽器なども似合わない。面白い趣向だった。

【5段階評価】4

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2020年10月16日 (金)

(2207) 銀河鉄道999

【監督】りんたろう
【出演】野沢雅子(声)、池田昌子(声)、肝付兼太(声)、来宮良子(声)、城達也(声)
【制作】1979年、日本

松本零士の漫画、「銀河鉄道999」の劇場版アニメ作品。機械の体を求めて宇宙の旅に出る少年の成長を描く。

母親(坪井章子)を機械伯爵(柴田秀勝)に殺された過去を持つ少年、星野鉄郎(野沢雅子)は、機械伯爵に復讐するため、機械の体を得ようと、銀河鉄道999のチケットを盗もうとするが、警備員に追いかけられ、危ないところを謎の美女メーテル(池田昌子)に助けられる。メーテルは自分を連れて行くことを条件に999の乗車券を鉄郎に手渡す。旅の途中で様々な出会いと別れを繰り返しながら、鉄郎は次第に、機械の体を得ることを拒否するようになる。ついに鉄郎は終着駅に到着。その駅の名は機械化母星メーテル。メーテルはこの星の支配者プロメシューム(来宮良子)の娘で、メーテルはこの星の部品とするために人間を連れてくる役割を担っていた。それを知った鉄郎はメーテルに怒りをぶつける。しかしメーテルは母親のいいなりにはならず、魂だけの存在となった父親の意志とともに、惑星メーテルを破壊しようとする。ためらうメーテルにプロメシュームが飛びかかるが、鉄郎が父親の意志が込められたペンダントを奪い取り、惑星の中心部に投げ込む。旅の途中で知り合ったエメラルダス(田島令子)やキャプテン・ハーロック(井上真樹夫)も加勢し、鉄郎とメーテルは銀河鉄道999に乗り込み、崩壊する惑星からの脱出に成功。なおもプロメシュームは鉄郎の首に手をかけ、メーテルから鉄郎を奪おうとするが、鉄郎の温かさに恋心を抱いていた機械の体のウェイトレス、クレア(麻上洋子)がプロメシュームにしがみつき、プロメシュームを巻き込んで自爆。鉄郎の命を救う。鉄郎とメーテルは地球に戻る。これまでさまざまな人の姿に自分を移し替えて生きてきたメーテルだったが、自分の体を取り戻すことを決意。今度会っても鉄郎は気づかないだろうと告げ、鉄郎に優しく口づけをすると、鉄郎を残して冥王星に旅立つのだった。

宇宙空間を走る蒸気機関車が様々な星を旅するという独創的な世界観の中、少年の成長する姿を描いている。キャプテン・ハーロックやクイーン・エメラルダスといった松本零士作品の人気キャラも登場し、豪華な内容。原作はけっこう文学的、哲学的な要素を含んでおり、終盤のプロメシュームとの戦いも、単純な機械と人間というだけではなく、プロメシュームとメーテルの親子の対立、愛する人のために命を捧げるクレアなど、重い意味が込められており、単純な子供向けアニメではない。ラストのキスシーンも、ハリウッド映画でよくあるそれではなく、鉄郎が少年から大人に一歩踏み出したことを暗示していて感動的。エンディングで流れるゴダイゴの大ヒット曲「銀河鉄道999」も映画の内容にマッチしていて、映画の余韻をほろ苦くも爽やかなものにしてくれていた。

【5段階評価】3

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2020年10月15日 (木)

(2206) パッセンジャー

【監督】モルテン・ティルドゥム
【出演】クリス・プラット、ジェニファー・ローレンス、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・シーン
【制作】2016年、アメリカ

移民を乗せて別の惑星に向かう宇宙船の中で冬眠状態から目覚めた男女の運命を描いたSF作品。

5,000人の移民を乗せて宇宙空間を飛行する宇宙船アバロン号。乗客、乗員は全員冬眠状態で、自動運行をしていた。しかし、巨大な隕石が衝突し、システムエラーにより、一人の冬眠が解けてしまう。起き上がったのは技術者のジム・プレストン(クリス・プラット)。彼は船内で起きているのは自分だけであり、目的地の惑星にはあと90年かかることを知る。人がいると思って近づいたバーテンダーはアンドロイドのアーサー(マイケル・シーン)。酒と食事を好きなだけとり、娯楽施設を堪能したり宇宙服を着て船外遊泳を楽しむジムだったが、孤独に耐えきれず、自殺の一歩手前まで追い込まれる。そんなとき、冬眠中のカプセルの中にオーロラ・レーン(ジェニファー・ローレンス)という美しく若い女性がいることに気づく。彼はオーロラのインタビュー動画を見つけ、彼女に惹かれていく。そしてついに誘惑に耐えかね、彼女の冬眠カプセルを操作し、彼女を冬眠から目覚めさせてしまう。オーロラはジムが自分を起こしたとは知らず、船内にたった一人のジムと知り合い、二人は恋人同士となる。ジムはアーサーに、自分がオーロラを起こしたことは絶対に言うなと口止めしていたが、恋仲になったジムとオーロラがバーに行ったとき、二人の間に秘密は何もない、とアーサーに話す。ジムは船内の貴金属で作った指輪をサプライズでオーロラにプレゼントするために席を外すが、二人の間に秘密はないと解釈したアーサーは、ジムがオーロラの冬眠カプセルを開けた頃の話をオーロラにしてしまう。それを聞いたオーロラは、ジムに自分の人生を奪われたことにショックを受け、ジムに激しい怒りをぶつける。二人の関係は完全に引き裂かれてしまう。
一方、船内は隕石衝突の影響で、回復できないエラーが頻発するようになり、乗組員のガス(ローレンス・フィッシュバーン)も目覚める。三人は協力して船内の故障の原因を探ろうとするが、ガスは冬眠装置の故障により体内を激しく損傷しており、身につけていた高セキュリティアクセスデバイスをジムに託し、息絶える。ジムとオーロラは協力して船内を探索。隕石が船内を貫通して核融合炉のコンピュータを破壊していることを突き止める。ジムは損傷箇所をスペア部品と取り替えて再起動し、加熱した核融合炉の熱を排出しようとするが、排出口の扉が故障して開かず、熱を排出できない。ジムは宇宙服を着て船外から扉を開け、同時にオーロラが船内のレバーを引くことで熱排出は成功するが、ジムは熱噴射により吹き飛ばされ、命綱が切れて宇宙空間に放り出されてしまう。それに気づいたオーロラは慌てて宇宙服を着て船外に飛び出し、何とかジムを回収し、治療用カプセルにジムを担ぎ込むが、ジムは死亡と診断される。オーロラは蘇生措置を起動し、ジムは蘇る。ジムは医療カプセルが冬眠カプセルの代替になることを発見。オーロラにカプセルで冬眠するよう促すが、オーロラはジムと船内で暮らし続ける道を選ぶ。88年が経ち、宇宙船のクルーたちが冬眠から目覚める。彼らは船内に木がしげり、小屋が作られているようすを目の当たりにするのだった。

アポロ13」や「ゼロ・グラビティ」のような、宇宙空間から地球に生還するというサバイバルではなく、宇宙船の中で生き続けることを余儀なくされた二人の男女が生存を賭けて奮闘し、やがて自分たちの世界を創り上げるという創世記的な作品。なかなか面白い状況設定で、映像も美しく、見応えのある作品だった。未来の衣装や宇宙船のデザインも奇抜さがなく洗練されており、ギミックが豊かで観ていて楽しい。サバイバルできてよかったね、という楽しみ方もできる一方で、オーロラの立場からすると、ジムのしたことを本当に許せるのか、考えさせられる差内容でもある。ジムが起きなければ宇宙船ごと5,000人が死亡していたとは言えるが、それは結果論である。少なくともジムが若いタフガイだから成り立つ話ではあるだろう。自分としては、オーロラに蘇生されたジムが記憶を失っていて、オーロラを見て「君は誰だ? 」と尋ね、そこから二人の愛が一から始まる、なんていう終わり方もありだと思った。
全員冬眠しているのに何で照明がついているの、とか、「技術者」が何でも作れるアビリティ使いすぎ、とか、ガスは要するに管理者権限を渡すためだけに出てきたNPCなのね、とか、細かいことは気にしないほうがいい。宇宙ではご都合主義なしには生き抜けないのである。
ハンガー・ゲーム」では絶世の美女というより、どこにでもいるような平凡な少女を演じていたジェニファー・ローレンスの美しさも、本作の大きな魅力になっている。

【5段階評価】5

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2020年10月14日 (水)

(2205) 劇場版SOARA LET IT BE -君が君らしくあるように-

【監督】伊藤秀隆
【出演】堀田竜成、石渡真修、吉田知央、沢城千春、上田慎一郎
【制作】2019年、日本

3年生を送る会でバンド演奏を披露する男子高校生の様子を描いた青春映画。アニメと現実のはざまにあるという架空の2.5次元芸能事務所「ツキノ芸能プロダクション」のALIVEシリーズが原作。

高校二年生の大原空(堀田竜成)は、中学の時に授業で作った楽曲がネットで高評価されたものの、その後の作品をネットで酷評され、音楽作りを封印してきた。彼は卒業する3年生を送る会の幹事を任され、バンドをやることを決意。幼なじみの神楽坂宗司(吉田知央)、クラスメートの在原守人(石渡真修)、高校1年生の七瀬望(沢城千春)と宗像廉(上田慎一郎)とバンドを結成。ライブは大成功を収める。5人はバンド活動を続けることを決意。バンド名をSOARAと決め、オーディションに臨むのだった。

アニメの世界観をそのまま実写の世界に持ってきた作風。セリフもアニメの声優のようなノリが随所にあり、BL的な世界観。こういった作品では男子高校生をちゃかすような元気な女子高生キャラが登場したりするが、本作にそうしたヒロインは一切登場しない。終始、仲良し男子高校生たちの姿が綴られている。明らかに女子をターゲットにした作品だが、男子同士がやたらいちゃついたり、女言葉をしゃべったり妙にかわいこぶったりするような非現実的なキャラはおらず、男性が観ていてもあまり不快感はない。
また、この手の作品では、メンバーの一人が怪我をしたり親の強烈な反対に遭ったり強烈にモチベーションを下げたり仲間同士で喧嘩したりしてバンド解散の危機が訪れつつそれを乗り越える、みたいな展開がよくあるが、本作がよかったのは、そうした間延びした暗いシーンがなく、終始前向き。演奏を開始する直前だけ、一瞬、主役の空がネット炎上した過去を思い出して固まるシーンがあるものの、主役の5人は常に仲良し、常に信頼し合っていて、観ていて心地いい。ライブのシーンは素直に感動的だった。
本作はBS日テレとTOKYO MX1で放映されたのだが、面白いのは深夜テレビドラマのように5回の30分番組に分けて放送されたこと。映画を観る自分としては「これは映画なのか、映画と連動したテレビドラマなのか」とずいぶん調べてから視聴した。販売ソフトのように副音声でオーディオコメンタリーが付いていたり、撮影風景も織り込んだりして、映画を観たファンももう一度楽しめる内容になっていて、こうしたファンサービスは大歓迎だ。唯一、その5回が一週間おきだったため、全て観るのにほぼ1ヶ月かかるのは、ちょっと間延びした。やっぱり映画なので、一気に観たかった。まあそこはテレビの宿命だろう。もっとも、自分は録画溜めしてビンジウォッチしたので関係ないんですけど。

【5段階評価】4

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2020年10月13日 (火)

(2204) ラストスタンド

【監督】キム・ジウン
【出演】アーノルド・シュワルツェネッガー、フォレスト・ウィテカー、エドゥアルド・ノリエガ、ピーター・ストーメア
【制作】2013年、アメリカ

改造車でメキシコ逃亡を図ろうとする逃走犯を迎え撃つ保安官の活躍を描いたアクション作品。

麻薬王のガブリエル・コルテス(エドゥアルド・ノリエガ)が仲間の協力を得て脱獄し、1,000馬力の改造車シボレー・コルベットZR1でメキシコへの逃走を図る。脱走ルートの国境の町ソマートンの保安官、レイ・オーウェンズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は仲間とともに彼を迎え撃つ。コルテスの部下が逃走経路確保のために町に現れ、軍隊並みの火力で襲いかかるが、レイは4人の仲間とともに彼らを退治し、ボスのトーマス・ブレル(ピーター・ストーメア)もレイに倒される。町を駆け抜け、国境に向かうコルテスをレイがシボレー・カマロZL1で追いかけ、最後は肉弾戦でコルテスを倒す。コルテスを追っていたFBIのジョン・バニスター捜査官(フォレスト・ウィテカー)はレイに感謝の言葉を述べるのだった。

痛快娯楽アクション。武器オタクのルイス(ジョニー・ノックスビル)、恋人を殺されたサラ副保安官(ジェイミー・アレクサンダー)、サラの元彼で収監中だったフランク(ロドリゴ・サントロ)、勝ち目のない戦いに引き気味だった中年副保安官のフィギー(ルイス・ガスマン)らがレイに加担し、勇敢に敵に立ち向かう姿は見ていて楽しく、のんきな町の人々の協力も得ながら敵を全滅させる。もちろん主役のレイは主人公アビリティ(負傷しても攻撃力が落ちない、敵の弾が当たらない、敵は一撃で死ぬ)全開。それでも「ターミネーター3」以来10年ぶりのシュワちゃんの活躍は、プロレスファンがお定まりのプロレスの試合を楽しむように、映画ファンをに喜びを与えてくれるのだった。復帰作としては上出来と言える。

【5段階評価】4

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2020年10月12日 (月)

(2203) スパニッシュ・プリズナー

【監督】デビッド・マメット
【出演】キャンベル・スコット、スティーブ・マーティン、レベッカ・ピジョン、フェリシティ・ハフマン、リッキー・ジェイ
【制作】1997年、アメリカ

用意周到な詐欺集団に狙われた会社員の運命を描いたサスペンス作品。

会社員のジョー・ロス(キャンベル・スコット)は、会社に莫大な利益をもたらす「プロセス」を発明。社長のクライン(ベン・ギャザラ)とともにカリブのリゾート地で株主に概要を説明。社長はジョーに秘密を漏らさないよう告げる。ジョーはホテルのテニスコートでジミー・デル(スティーブ・マーティン)という富豪と知り合いになる。ジミーは、エマ・ダシルバというテニス選手の妹がいると話し、ジョーに、ニューヨークで妹と三人で食事を取ろうと約束し、妹に渡してくれと包装された本を託す。中味がボロボロの本だったため、ジョーは本屋できれいな状態の同じ本を探し、それを妹が泊まっているというホテルの従業員に託す。「プロセス」を記したノートは、オフィスの金庫に保管する。
ところが、数々のすれ違いでジョーはいつまでもジミーの妹には会えない。妹へのプレゼントを携えてホテルに向かったジョーは、エマ・ダシルバという女性が老婆であることを知る。ジミーが詐欺師であることに気づいたジョーは、カリブで偶然出会ったFBI女性捜査官のマキューン(フェリシティ・ハフマン)に連絡。彼女はジミーを追っていた。ジョーはジミーの要求に従った振りをして「プロセス」のノートを手に彼に会うことになり、マキューンらはジョーに盗聴マイクをつけ、ジョーを待ち合わせ場所に送り出す。しかしいつまで待ってもジミーは現れない。不審に思ったジョーが改めて彼女に電話を入れるが繋がらない。電話帳でFBIを調べて電話をするが、マキューンは男性だった。あわてて「プロセス」のノートを確認するが、中味は全て白紙。マキューンらにすり替えられていたのだった。彼は警察に捜査されるが、状況証拠は、彼が会社の秘密を売却して大金を得て、ノートが盗まれたと狂言の供述をしていることを示していた。ジョーは、カリブで一緒だった弁護士のジョージ・ラング(リッキー・ジェイ)に連絡をとり、彼の家に向かうが、ジョージはジョーの持ち物のナイフを胸に刺されて死んでいた。途方に暮れたジョーは、彼に言い寄っていたスーザン(レベッカ・ピジョン)の家に向かう。スーザンはジョーの無罪を信じ、彼に協力するが、彼女もまた、ジミーやマキューンを名乗る女性らとグルだった。ジョーは、日本人観光客2名しか乗っていない船の中でジミーとスーザンに追い詰められる。ジミーは自殺に見せかけてジョーを殺そうとしており、手には拳銃が握られていた。ジョーはなすすべなく甲板に出て、日本人観光客の男性に助けを求めるが、男性はなぜかジョーの襟に盗聴マイクをつけ、「プロセスのありかを聞き出せ」と命じて立ち去る。ジョーに歩み寄るジミーが、ジョーの求めに応じてプロセスのありかを話し、おもむろに拳銃をジョーに向けると、座席にいた日本人観光客とおぼしき女性がやおらライフルを構え、ジミーに発砲。ジミーはあえなく倒れる。ライフルはスタンガンで、日本人観光客に見えた二人は、連邦執行官だった。連邦執行官は、社長のクラインが、ジョーを犯人に仕立て上げ、利益を独占しようとしていたのだと告げる。昏倒したジミーはUSマーシャルの車両に運び込まれ、スーザンも逮捕される。ジョーは、事件の全容を把握しかねるように立ち尽くすのだった。

ジョーの周囲にいる人ほぼ全員がジョーを騙しにかかっていたという壮大な詐欺事件。社長がそこまでする必要があったのかとか、細かいつっこみはいろいろあるが、物語としてはよくできていた。ただ、用いられている楽曲が今ひとつ地味で物足りなかった。1997年と言えば、「タイタニック」や「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」、「メン・イン・ブラック」などのそうそうたる作品が制作された年であり、それに比べると10~20年ぐらい古い作品のよう。話としては面白かったのだが、作品全体の評価としてはからい点数にならざるを得なかった。

【5段階評価】3

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2020年10月11日 (日)

(2202) ウインド・リバー

【監督】テイラー・シェリダン
【出演】ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、グラハム・グリーン、ケルシー・アスビル、ジェームズ・ジョーダン
【制作】2017年、アメリカ

雪原を10kmも走って息絶えた少女の謎に挑むFBI捜査官とハンターを描いたサスペンス映画。実話に基づく作品。

ハンターをしているコリー・ランバート(ジェレミー・レナー)は、ピューマ退治を依頼され、ワイオミング州のネイティブ・アメリカン居留地、ウインド・リバーの雪原に向かう。コリーはそこで血と足跡を発見する。その先で若い女性(ケルシー・アスビル)が死んでいた。女性の名はナタリー。ネイティブアメリカンの18歳の少女だった。ワイオミング州では、殺人事件はFBIが捜査することになっており、女性捜査官のジェーン・バナー(エリザベス・オルセン)がやってくる。ナタリーには額を殴られた裂傷や強姦の痕跡があったが、直接の死因は、極寒の地を走り続けて肺が凍って出血したことによる窒息死だった。死因が他殺ではなく事故死であれば、FBIは捜査から外され、わずかな部族警察が調査することになるため、事件の迷宮入りは必須。ジェーンは地元に詳しいコリーに協力を依頼。ナタリーの父親マーティン(ギル・バーミンガム)は、コリーに、息子のチップが事件にかかわっているかもしれないと話し、犯人を見つけたら敵(かたき)を取るよう依頼。コリーはそれに応じる。ジェーンとコリーは、部族警察のベン・ショーヨ(グラハム・グリーン)とともに、チップがいるという場所に向かう。建物の中にいたサム(ジェラルド・トカラ・クリフォード)が発砲してきたため、ジェーンが彼を射殺。逃げるチップ(マーティン・センスマイヤー)をコリーがスコップで殴って捕まえる。コリーは、ジェットスキーの走行跡が山中に伸びているのを発見し、ジェリーとそれを追うと、雪山の中に裸の死体を発見する。
その夜、コリーはチップから、ナタリーの恋人の名がマットだったことを聞き出す。ジェリーは、捜査の結果、雪山の死体の正体がマットであったことをコリーに報告。マットは地元の掘削所の警備員だった。コリーはジェリーに、自分の娘エミリーが16歳のときに死んだことを告白。休みができたコリーが二人きりになるため妻をホテルに呼んだところ、親が留守だと聞いたエミリーの友人が家に集まり、友人ではない者も集まってパーティ状態となる。コリーは、エミリーの親友ナタリーからの連絡で、エミリーが姿を消したことを知る。エミリーは、家から30kmも離れたウインド・リバー地区で遺体となって発見される。コヨーテに食われており検死もできなかったのだった。
翌日、ジェーンはベンや保安官とともに掘削所のマットの部屋の捜査に向かう。その場にいた警備員たちは少女が雪山で死んでいたことを知っており、不自然な態度を示す。ジェーンたちと警備員は互いに銃を向けあい、一触即発の状態になるが、ジェーンがその場を治め、マットの部屋のドアをノックする。
・・・事件の真相はこうだった。部屋に一人でいるマット(ジョン・バーンサル)のところに、マットに恋するナタリーが現れる。二人がベッドで楽しく会話をしていると、マットの同部屋のピート・ミケンズ(ジェームズ・ジョーダン)が、戻ってこないはずだったのに仲間とともに帰ってきてしまう。酔ったピートはナタリーをめざとく見つけ、執拗にマットとナタリーをからかう。堪忍袋の緒が切れたマットはピートにつかみかかり、ピートもマットに飛びかかる。ナタリーもマットを挑発する男に挑みかかるが、額を殴られ昏倒。マットも頭を殴られ気絶する。その間にナタリーはピートに犯されてしまう。ようやく起き上がったマットがピートに飛びかかってナタリーを逃がそうとするが、他の男達にリンチされてしまう。ナタリーは、その隙に裸足のまま部屋を逃げ出し、10kmも走って逃げた末に息絶えたのだった。
・・・ジェーンのノックに答えたのは、ドアの向こうにいたピートの放った銃弾だった。防弾チョッキを着ていたジェーンは吹っ飛び、その瞬間、ジェーンたちと警備員との壮絶な撃ち合いになる。警察官は全員撃ち殺され、ジェーンも銃を奪われる。ジェーンが撃ち殺されようとしたとき、別行動を取っていたコリーが警備員達を狙撃。警備員達は次々と撃ち殺されるが、ピートだけは負傷しながらも雪山に逃げ込む。現場に駆けつけたコリーはジェーンに応急措置を施すと、ピートを追い、逃げる彼を捕らえると、車道から10km離れた雪山に連れていく。コリーはピートを裸足にし、正直に話をすれば逃がしてやると告げる。ピートはナタリーを強姦し、邪魔をしたマットを殴り殺したことを告白。それを聞いたコリーはピートにここから車道まで走って逃げろと命じてピートの耳元で銃を撃つ。慌てたピートは雪山を走り出すが、やがてナタリーと同じように肺を痛め、絶命する。
ジェーンは一命を取り留めていた。ジェーンを見舞ったコリーは、マーティンのもとを訪ね、復讐を遂げたことを報告。死を選ぼうとしていたマーティンは、息子のチップからの電話でそれを思いとどまったと話す。二人はしばらくの間、同じ場所に座り、ナタリーに思いをはせるのだった。

ネイティブ・アメリカンの女性に対する犯罪や失踪が闇に葬られていることを訴える作品。娘を失った過去を持つ白人男性が、同じ不幸を背負ったネイティブ・アメリカンの父の復讐に加担するという展開は無理がなく、主題を引き立たせ、繰り返し起きる事件の理不尽さを巧みに描いている。
なぜナタリーは氷点下の雪原を10kmも走り続けて死んだのか、という強烈な謎が序盤に提示され、終盤で驚愕の真相が示されるという展開は、サスペンス映画としても魅力的。しかもこんなくだらないできごとが二人を死に追いやったのかという衝撃が、ネイティブ・アメリカンに対する犯罪のむごさ、この地をとりまく人々の罪の意識の低さ、問題の根深さを強烈に表現している。死体や銃撃の映像はリアルで激しい一方で、全体的には雪山の寂しげな景色とも相まって物静かな雰囲気に包まれていることも、本作の主題を観る者に重く響かせることに一役買っていた。「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のジェレミー・レナーと「GODZILLA ゴジラ」のエリザベス・オルセンという配役も素晴らしい。ちなみに二人は「アベンジャーズ」シリーズでも共演している。「ダンス・ウィズ・ウルブズ」や「ダイ・ハード3」のグラハム・グリーンもよかった。
しかし、物足りないのは音響面だった。雪山の寒々しさを感じさせるような風の音や、重要なシーンでのBGMが乏しく、音の貧弱なシーンが目立った。タイトルが「ウインド・リバー」なんだから、それこそ川の流れのごとく、常に風の吹く音が聞こえているぐらいでもよかった。

【5段階評価】4

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2020年10月10日 (土)

(2201) ジョニーは戦場へ行った

【監督】ダルトン・トランボ
【出演】ティモシー・ボトムズ、キャシー・フィールズ、ドナルド・サザーランド、ジェイソン・ロバーズ、ダイアン・バーシ
【制作】1971年、アメリカ

戦争で瀕死の重傷を負った青年の意識を描いた作品。

軍隊入りした青年ジョー(ティモシー・ボトムズ)は、恋人のカリーン(キャシー・フィールズ)を置いて戦地に向かうが、瀕死の重傷を負い、両手両足を切断され、顔の大部分も失う。軍医のティラリー大佐(エドワード・フランツ)はジョーには意識がないと診断し、ジョーは意識のない肉塊として生かされる。しかし彼には意識があり、部屋の振動と頭や体の触覚だけで自分の周囲を感じ、首を動かして意志を伝えようとしていた。彼は、戦地で出会ったキリストのような男(ドナルド・サザーランド)や、自分が子どもの頃の父親、恋人のカリーンに思いをはせるうち、モールス信号でコミュニケーションを取る手段を思いつく。
やがて、ジョーに献身的に接していた一人の看護師(ダイアン・バーシ)が、ジョーの首の動きが、けいれんではなく意識的な動きだと気づく。ジョーは軍の司令官に望みは何かと聞かれ、殺してくれ、と答える。司令官は鎮静剤を打つよう看護師に伝えて立ち去るが、看護師はジョーの願いを聞き入れ、呼吸を止めようとする。しかし戻ってきた司令官は看護師を追い出し、鎮静剤を打つ。ジョーは自殺することもできず、ベッドの上で「SOS、助けてくれ」と念じ続けるのだった。

文学的で深淵な作品。ベッドに横たわり看護されるシーンはモノクロで、ジョーの意識下の情景はカラーで描かれている。カラーのシーンは、ジョーの過去の記憶の場合もあれば、すでに重傷を負った現在のジョーの想像の場合もあり、その境界はあいまいである。ジョーが自分には腕がないとキリスト風の男に訴えるシーンは現在の彼の意識だろうし、手紙をよこさなかったとカリーンや彼女の父親がジョーを責めるシーンもまた彼の想像だろう。出征前夜のカリーンとの一夜は過去の記憶と思われるが、もしかするとそれもジョーの妄想かもしれない。また、見ようによってはベッドの人物はジョーではない何者かで、その者がジョーという未来の人物を空想しているとも考えられる。終盤で彼の名前を聞けと司令官が部下に命じていることも、この人物が実はジョーではないのではないかと思わせる。そして実際にはベッドの上のモノクロの男もまた、作者による想像の人物である。こうなると、どこまでが空想でどこまでが現実なのか、どれが記憶でどれが想像なのか、見れば見るほど、考えれば考えるほど、いかようにでも解釈できることが分かってくる。
原作は反戦メッセージ性の強い作品であるが、映画は人の記憶と想像の世界を映像で表現することに挑んだ、「メメント」のような実験的、前衛的な作品で、この意欲作が1971年に作られたというのは意外だった。
まあ、ここまで解説しといて評価2かよ、という感じだが。だって退屈だったんだもん。

【5段階評価】2

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2020年10月 9日 (金)

(2200) TAXi

【監督】ジェラール・ピレス
【出演】サミー・ナセリ、フレデリック・ディーファンタル、マリオン・コティヤール、エマ・シェーベルイ
【制作】1998年、フランス

超絶技巧のタクシー運転手と運転の苦手な刑事のコンビが活躍するコミカルアクション「TAXi」シリーズ第1弾。

ピザ屋の配達の仕事をやめたダニエル・モラレース(サミー・ナセリ)は恋人リリー(マリオン・コティヤール)と過ごす時間を犠牲にしてタクシーの免許を取得。最初の客になった婦人カミーユ(マヌエラ・グーレリ)に親切にし、気に入られる。カミーユの息子は警察官のエミリアン・クタン=ケルバレーク(フレデリック・ディーファンタル)。彼はおっちょこちょいで車の運転が苦手。彼は連続銀行強盗事件の犯人を追っていた。
ある日、ダニエルはカミーユに呼ばれ、警官だとは知らずにエミリアンを乗せ、改造タクシーで爆走を披露。エミリアンは彼の罪を見逃す代わりに捜査に協力するよう伝える。二人は共同で捜査し、車の情報に詳しいダニエルは犯人がドイツ人であることを突き止める。ダニエルはベンツに乗る彼らにレーシングコースで競走を持ちかけ、圧勝。リーダー(リチャード・サメル)が挑発に乗りやすいタイプであることを見抜く。
強盗団の最後の銀行強盗が行われ、彼らは二台の赤いベンツをトラックの中でグレーに塗り替えるといういつものトリックで警察を欺こうとするが、ダニエルは信号待ちをしている彼らを再度挑発。公道でカーチェイスが始まる。ダニエルは高速に乗り、強盗団は馬力なら負けないと張り切る。ダニエルは建設中の高速道路に乗り入れ、爆走すると、建設途中の地点で急ブレーキ。ようやくダニエルの車を追い抜いたと喜ぶ強盗団だったが、高速の切れ目をジャンプした先は、まだどこにも接続されていない高架区間。彼らは行き場を失い、御用となる。お手柄のダニエルはエミリアンとともに勲章を授与されるが、免許は剥奪。ダニエルには警察がスポンサーのF1レーサーの役割が与えられるのだった。

おバカな警察のコミカルな捜査と、カーアクションが融合した娯楽作品。運転が得意なドライバーとドジな刑事という取り合わせが面白く、「TAXi NY」ではドライバーが女性になってリメイクされている。マリオン・コティヤールのおっぱいがおがめる貴重な作品でもある。

【5段階評価】3

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2020年10月 8日 (木)

(2199) きかんしゃトーマス Go!Go!地球まるごとアドベンチャー

【監督】デビッド・ストーテン
【出演】ジョン・ハスラー(声)、イボンヌ・グランディ(声)、ピーター・アンドレ(声)、キース・ウィッカム(声)
【制作】2018年、イギリス

きかんしゃトーマスの劇場版第14作。トーマスが新たな仲間とともに世界一周を目指す。

レースカーのエース(ピーター・アンドレ)の自由さにあこがれたトーマス(ジョン・ハスラー)は世界一周を夢見てアフリカに渡る。そこでケニアの機関車ニア(イボンヌ・グランディ)と出会ったトーマスは、二人でリオデジャネイロに渡り、サンフランシスコを目指す。途中でニアをからかおうとして別ルートに向かったトーマスは、ニアを追って中国に渡る。トーマスはニアとともにソドー島に戻り、仲間に歓迎されるのだった。

トップハム・ハット卿(キース・ウィッカム)は機関車の上司で、整備士は機関車に命令するが、運転士は割と無個性で機関車の性格に合わせて行動するという微妙な関係性が面白い。線路の幅は世界共通なのかな、とか余計なことを考えてはいけない。
日本語吹き替え版では、エースの役をISSAが演じている。挿入歌も歌っているので、ISSAファンには外せない「ISSAく」だろう。

【5段階評価】2

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2020年10月 7日 (水)

(2198) シーズンズ 2万年の地球旅行

【監督】ジャック・ペラン、ジャック・クルーゾ
【出演】-
【制作】2015年、フランス

2万年前から現代に至る自然と人間の関わりを描いたドキュメンタリー。

2万年前の氷河期を乗り越え、生き残った動物たちが、木々の生い茂る森の中で豊かな命をはぐくむ。やがて人類が農耕を始め、森は減少。牛や猪は家畜化され、餌を失った狼も、食料を与えてくれるヒトに飼い慣らされ、犬になる。人類は瞬く間に科学技術を発展させ、一部の生物は里山に新たな生態系を作り出し、一部は住む場所を奪われていく。時が経ち、人類はようやく生物多様性の重要性を知る。自然破壊という人為的な冬の時代を乗り越えた自然界は、人類との新たな共生の時代に入るのだった。

哺乳類を中心に、鳥類、は虫類、両生類、昆虫類の様子を捉えている。同じ監督コンビによる「オーシャンズ」同様、生物の映像美を追及しながら、人類に警鐘を鳴らすため、映画としての創作的な部分も取り入れているのが特徴的。本作では、木々の影がみるみるうちに伸びていく様子や、古代の人類、蜂など動物がダメージを受けているシーンなどで人為的な撮影手法が採られていた。
本作は、日本語版のナレーターが木村文乃と笑福亭鶴瓶だったのだが、木村文乃の自然なナレーションに比べて、笑福亭鶴瓶はどうしても怪盗グルーがちらつく。しかもイントネーションだけではなく、「しっかり立たんとオオカミに食べられてしまうでぇがんばりや」だの「餌をもらわなあきません」だの、言葉自体もかなりコテコテの関西弁。これがフランス制作の自然の映像と合わない。さらにときどき標準語でも関西弁でもない妙なイントネーションになったりもして、「シュレック」の「これ関西弁で吹き替えする必要あるんかいな」という不自然さとは違う聞きづらさがあり、映像に没入しづらかったのは残念。関西弁をナレーションに使うというチャレンジ精神は買うが意図がくみ取れなかった。

【5段階評価】3

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2020年10月 6日 (火)

(2197) ラン・オール・ナイト

【監督】ジャウム・コレット=セラ
【出演】リーアム・ニーソン、ジョエル・キナマン、エド・ハリス、ジェネシス・ロドリゲス、ボイド・ホルブルック
【制作】2015年、アメリカ

元殺し屋が無実の息子を守るためにマフィアと戦うバイオレンスアクション。

元殺し屋で酒浸りの生活を送るジミー・コンロン(リーアム・ニーソン)はマフィアのボス、ショーン・マグワイア(エド・ハリス)と親しい仲。ジミーの息子マイク(ジョエル・キナマン)はボクシングジムでコーチをしている堅気の男で、身ごもっている妻のガブリエラ(ジェネシス・ロドリゲス)と二人の娘と暮らしていた。ある日、ショーンの息子ダニー(ボイド・ホルブルック)は、金を要求してきたマフィア2人を撃ち殺すが、その様子をマイクに目撃されてしまう。マイクは逃走し、ダニーはマイクを殺すため、マイクの家に向かうが、マイクの家を訪れていたジミーが、マイクに銃を向けているダニーに気づき、とっさに射殺する。ジミーは素直にショーンに電話を入れ、やむを得ずダニーを殺したと報告するが、ショーンはマイクを殺して息子を失った苦しみを味わわせた後ジミーを殺すと宣言し、非情な殺し屋プライス(コモン)を送り込む。ジミーはマイクとその家族を山荘に逃がそうとするが、マイクはジミーとともにマフィアと戦う道を選ぶ。警察と殺し屋の追撃をかわしたジミーは、ショーンにマイクを狙うなと伝えるが、ショーンは聞き入れない。ジミーは「一線を越える」と宣言し、ショーンの根城であるバーに乗り込み、ショーンの手下を全滅させると、操車場に逃げたショーンの息の根を止める。山荘にいるマイク一家に合流したジミーだったが、そこに執念深く殺し屋プライスが現れ、ジミーを攻撃。致命傷を受けたジミーは、最後の力を振り絞って、マイクを狙うプライスを殺害。かけつけたマイクに見守られ、息を引き取るのだった。

家族を守るために強大な悪に立ち向かう男。いかにもリーアム・ニーソン主演のアクション映画という作品。ニューヨークの喧噪や深夜の静寂、ゴミ収集などの労働の様子などが映像に織り込まれ、視点が俯瞰的な位置からニューヨーク市街をかけめぐる映像は独創的だったが、物語との関係はやや希薄。
悪者を皆殺しにして最後は自らが犠牲となって家族を守る、という流れは、この手の作品ではよくある。しかし本作では、警察にまでマフィアの影響が及ぶ絶望的な状況の中、主人公が、自分への嫌悪感を露わにしていた刑事に「お前が殺した人のリストを見せてくれれば息子の話を聞いてやろう」と言われたことを信用し、殺害者リスト、いわば自分の罪を書き記した紙を手に死ぬことで贖罪を果たす。この演出により、最後に主人公が命を落とすシーンに、正義が貫かれたという感慨が加わった。ここはうまかった。
とは言え、主人公キャラのスペシャルアビリティ「敵の弾が当たらない」「負傷しても一晩で回復」「大勢に囲まれても捕まらない」を使いまくって戦うので、予定調和感は否めないのだった。

【5段階評価】3

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2020年10月 5日 (月)

(2196) ドラえもん 新・のび太の日本誕生

【監督】八鍬新之介
【出演】水田わさび(声)、大原めぐみ(声)、白石涼子(声)、大塚芳忠(声)、かかずゆみ(声)、木村昴(声)、関智一(声)
【制作】2016年、日本

劇場版ドラえもん第36作。「ドラえもん のび太の日本誕生」のリメイク。

家出を決意したのび太(大原めぐみ)達が、ドラえもん(水田わさび)やジャイアン(木村昴)やスネ夫(関智一)、静香ちゃん(かかずゆみ)とともに7万年前の日本に向かい、家で生活を満喫。彼らはヒカリ族のククル(白石涼子)と遭遇。ククルは一族をクラヤミ族を統べるギガゾンビ(大塚芳忠)に挑み、ドラえもんやのび太たちとともにギガゾンビを倒し、タイムパトロールにギガゾンビを引き渡す。

オリジナルを観たのは7万年前ならぬ7年前。記憶は若干あやふやだが、比較的本作はオリジナルに忠実なようだ。27年も前だが、ドラえもんの冒険譚の面白さは時代を選ばないということなんだなと思う。普通に面白かった。

【5段階評価】4

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2020年10月 4日 (日)

(2195) 歓喜の歌

【監督】松岡錠司
【出演】小林薫、伊藤淳史、安田成美、由紀さおり、根岸季衣、浅田美代子、光石研、田中哲司、藤田弓子
【制作】2008年、日本

二つのママさんコーラスのコンサートをダブルブッキングしてしまった市役所職員と周囲の騒動を描いたコメディ。立川志の輔の創作落語が原作。

みたま文化会館の主任、飯塚正(小林薫)はいいかげんな性格で、妻のさえ子(浅田美代子)の信頼は地に墜ち、水商売の女に入れ込んで200万のツケがたまる始末。大晦日の10日前、大晦日の晩の枠に二つのママさんコーラスグループをダブルブッキングしてしまったことが発覚する。正は部下の加藤俊輔(伊藤淳史)とともに各グループを回るが埒があかない。みたま町コーラスガールズのリーダー、五十嵐純子(安田成美)は、みたまレディースコーラスのリーダー、松尾みすず(由紀さおり)に、合同コンサートを提案する。しかし、両方の招待した観客が会場に収まらないため、その案も実行は無理。途方に暮れた正だったが、出前の料理を間違えてお詫びに餃子を持ってきた中華料理屋の気遣いに触れ、自分に足りなかったのは誠意だったと気づく。彼は会場を一晩で改装するという計画を立ち上げ、工事業者に頼み込む。純子の機転もあり、工事が開始される。
家族での食事の約束をさんざんすっぽかされたさえ子は、離婚を言い渡そうとするが、娘の千夏(於保佐代子)にとりなされ、一旦は取り下げ、大晦日のコンサートを鑑賞することにする。何とか本番を迎え、すっかり意気投合した両グループは順番に素敵な歌声を披露。しかし、中華料理屋と裁縫店を切り盛りする大田登紀子(藤田弓子)が急な仕事で出演できていないことを知った正は、加藤を連れて車で迎えに行き、彼女を無理矢理会場に送り込む。正は店にいた客(筒井道隆)の対応を始めるが、裁縫などとてもできない。そこにさえ子が現れ、愚痴を言いながらも正に協力。正は心を入れ替えるからもう一度チャンスをくれと頼み込み、さえ子は「年越しそば食べにいこっか。家族三人で」と優しく返す。正は泣いて喜び、正に感謝を伝えようとコーラスグループの人達が待っている会場に、さえ子とともに戻るのだった。

個性的な登場人物がいろいろ登場するのだが、小さな町ということであちこちで人間関係がつながっているのが楽しく、最後はハッピーエンドで痛快な作品。落語が原作というが、こんなエピソードが折り重なった話を本当に一人で演じているのか、ぜひ立川志の輔の落語を聞いてみたいと思った。クライマックスでは、ものすごい歌声の持ち主、相崎陽子(平澤由美)のソロパートが聞けるのかと思ったが、それがなかったのはちょっと残念。

【5段階評価】4

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2020年10月 3日 (土)

(2194) ベイブ

【監督】クリス・ヌーナン
【出演】ジェームズ・クロムウェル、マグダ・ズバンスキー、クリスティーン・カバナー(声)、ミリアム・マーゴリーズ(声)
【制作】1995年、オーストラリア、アメリカ

牧羊犬ならぬ牧羊ブタとなった子豚の活躍を描いたファンタジー作品。

母親を食肉工場に連れ去られた雄の子豚(クリスティーン・カバナー)が、体重当てゲーム用のブタとして養豚場から連れ出される。何の気なしに参加した羊飼いアーサー・ホゲット(ジェームズ・クロムウェル)が体重を当て、子豚を手に入れる。アーサーの家の雌の牧羊犬フライ(ミリアム・マーゴリーズ)は子豚にベイブと名付け、彼の母親代わりとなる。ベイブはアヒルのフェルディナンド(ダニー・マン)や羊のメェ(ミリアム・フリン)と仲よくなる。ベイブはある日、牧羊場で泥棒が羊をさらっている騒ぎに気づき、フライと雄犬のレックス(ヒューゴ・ウィービング)に有事を伝える。その様子に気づいたアーサーは農場に向かい、羊の全滅を防ぐ。アーサーはベイブが賢いことに気づく。
アーサーはベイブを牧羊場に連れて行き、牧羊犬として働けるかを試す。ベイブは羊の群れを動かそうとするが、羊たちはベイブを鼻で笑い、全く動こうとしない。フライはベイブに、羊を見下し、脅せ、と助言するが、ベイブは逆に、羊に丁寧にお願いして移動してもらう。ベイブがやりとげたことにフライは喜ぶが、レックスはプライドを傷つけられて憤慨し、その夜、フライと大げんか。止めに入ったアーサーの手を噛んでしまい、鎮静剤を撃たれてしまう。アーサーは、ベイブを牧羊犬コンテストに出場させることにする。
コンテスト当日。ベイブはコンテスト用の羊に話しかけるが、全く振り向いてももらえない。レックスはアーサーの牧羊場に戻り、羊たちにベイブを助けてほしいと頭を下げる。羊たちは、二度とレックスたちが羊に吠えたり噛みついたりしないことを条件に、羊だけが知る秘密のパスワードをレックスに伝授。レックスはいそいで会場に戻る。
コンテストの審査団は、ブタを出場させようとするアーサーに憤慨するが、ルール上、拒否できないため出場を認める。アーサーはベイブを連れて会場入り。観客はブタが出てきたことで大笑い。別の場所からテレビ観戦していたアーサーの妻、エズメ(マグダ・ズバンスキー)も嘲笑の的になっているアーサーを見て卒倒してしまう。
何とかベイブの競技開始に間に合ったレックスは、秘密のパスワードをベイブに伝える。ベイブは羊たちに歩み寄り、パスワードを伝える。するとはじめは全く動かなかった羊たちが、整然と並んで指定通りに行動を開始。会場は息を飲み、実況アナウンサーは言葉を失う。会場が静かに見守る中、羊たちはベイブの誘導のもと、見事な行進を披露し、最後は赤い首輪を付けた雌の羊を先頭に、指定された柵の中にきれいに収まる。アーサーが静かに柵の扉を閉めた途端、会場は大歓声に包まれる。審査員は全員が100点満点。アーサーは優勝を決め、ベイブに「よくやった」と一言。ベイブはきょとんとした顔で主人を見上げるのだった。

序盤は若干退屈で、動物を使ったドタバタ劇の様相だが、クライマックスのコンテストのシーンは感動的。見下され、馬鹿にされていたベイブが、健気に羊を完璧に誘導する姿は、涙なしには見られないだろう。コンテストの前夜、意地悪な猫に、ブタは主人に食べられるための存在だと言われてショックを受け、食欲を失ったベイブに、普段は無口なアーサーが、突然賑やかなダンスを踊ってベイブを元気づけるシーンも、味があってよかった。有名な作品ながら、子供向けという印象から鑑賞を敬遠していたが、微笑ましいだけではなく大いなる感動を与えてくれる名作だった。

【5段階評価】5

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2020年10月 2日 (金)

(2193) 007 ムーンレイカー

【監督】ルイズ・ギルバート
【出演】ロジャー・ムーア、ロイス・チャイルズ、マイケル・ロンズデール、リチャード・キール
【制作】1979年、イギリス、フランス、アメリカ

スパイ映画007シリーズ第11作。「007 私を愛したスパイ」の続編。スペースシャトルを使った悪しき野望に立ち向かうスパイの活躍を描いている。

オープニングは飛行機からの落下シーン。パラシュートなしで飛行機から落とされた007ことジェームズ・ボンド(ロジャー・ムーア)は、敵のパラシュートを落下中に奪い取り、追ってきたジョーズ(リチャード・キール)をかわして地上に帰還。アメリカからイギリスへの空輸中にハイジャックされたスペースシャトルの謎を追い、アメリカに渡る。
スペースシャトル製造を行うヒューゴ・ドラックス(マイケル・ロンズデール)の工場に向かった007は、施設内でグッドヘッド博士(ロイス・チャイルズ)と出会う。彼女はCIAのスパイで、彼女もまたヒューゴ・ドラックスの秘密を追っていた。007はヒューゴの謎を追ってベニス、リオデジャネイロを回る。007はグッドヘッドとともにヒューゴの基地に潜入。ヒューゴは、若く優秀な男女を乗せた大量のスペースシャトルを宇宙に飛ばし、彼らを秘密裏に建造した宇宙ステーションに集め、地球に神経毒をばらまいて地球上の人類を絶滅させて優性人種の子孫を地上に送り込むという計画を実行しようとしていた。スペースシャトルのパイロットと入れ替わって宇宙ステーションに到着した007とグッドヘッドは、レーダー探知妨害装置を破壊して地上からの援軍を呼び、宇宙ステーションを壊滅させると、再びスペースシャトルに乗り込み、地球に発射された神経毒カプセルを破壊し、帰途に就くのだった。

007シリーズの中でも最もコミカルで、完全な娯楽作品として作られている。悪役として登場したジョーズは、巨乳メガネっ子のドリー(ブランシュ・ラベレック)と仲良しカップルになって最後は007の味方をするし、日本人の姿をしたチャン(トシロー・スガ)は007を暗殺するため剣道着と竹刀で007に襲いかかり、歯が立たないとなるとチェーンを首に巻き付けて絞め殺そうとする。そりゃ竹刀じゃ歯が立たないだろっていう。
それでも、オープニングのパラシュートのシーンはインパクトがあるし、当時は珍しいスペースシャトルが大々的にフィーチャーされ、見所は多くて印象的。無駄に美女が出てきたり、007を倒すのに巨大蛇を出したりロープウェイという不安定な場所で戦ったりと、真面目には見ていられないが、記憶には残る作品。

【5段階評価】4

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2020年10月 1日 (木)

(2192) 遙かなる大地へ

【監督】ロン・ハワード
【出演】トム・クルーズ、ニコール・キッドマン、トーマス・ギブソン、ロバート・プロスキー、コルム・ミーニイ
【制作】1992年、アメリカ

アメリカでの土地獲得を目指す青年と女性の奮闘を描いた作品。

アイルランドの貧乏な借地人の息子ジョセフ(トム・クルーズ)は、父親の葬儀に地主の代理人スティーブン(トーマス・ギブソン)に地代滞納を理由に家に火を付けられ、その恨みを晴らすため、地主のダニエル・クリスティへの復讐を決意。ロバに乗ってクリスティの屋敷を目指す。酒場でダニエルを見つけたものの、彼は気のいい老人でジョセフは引き金を引けず、馬小屋で夜を明かす。朝になり、ダニエルの美しい娘、シャノン(ニコール・キッドマン)に目を奪われたジョセフは、物音に気づいたシャノンにピッチフォークで足を刺される。クリスティは父親に助けを求めて走り去り、それを追ったジョセフはダニエルに銃を向けるが銃は暴発し、ジョセフは気を失う。屋敷で介抱されたジョセフはスティーブンを見つけ、彼に殴りかかる。ジョセフは取り巻きに取り押さえられ、スティーブンは決闘を申し込む。その夜、屋敷での退屈な暮らしに飽き飽きしていたシャノンは、若者にタダで土地を分け与えるというアメリカに向かうことを決意。ジョセフを下僕として連れて行こうとする。一度は断るジョセフだったが、翌朝の決闘の日、馬車で迎えに来たシャノンに着いていくことを決める。
二人はボストンに到着するが、こそ泥に騙され一文無しとなる。ジョセフは持ち前の腕っ節の強さを賭けボクシングで披露し、そこを仕切るボスのケリー(コルム・ミーニイ)に気に入られて宿屋を世話してもらう。シャノンはジョセフの妹ということにして、二人で鶏加工場で働き始めるが、ジョセフは現状に満足せず、ボクシングのファイターとして活躍し始め、連戦連勝。ところがイタリア人との戦いでコテンパンにやられ、怒ったケリーに試合場から放り出される。目が覚めたジョセフは、スティーブンがシャノンを探している姿を発見。慌てて宿に戻る。そこにはケリーがおり、ジョセフとシャノンは宿から放り出されてしまう。一文無しとなった二人は留守の屋敷に忍び込み、夫婦の振りをしようと言い合い、口づけを交わす。そこに家主が帰ってきて、逃げる二人を銃で追い、発砲。シャノンは背中に銃弾を受けてしまう。困ったジョセフはシャノンをスティーブンのもとに連れて行き、シャノンのもとを去る。
8ヶ月後。鉄道敷設の作業者として働き始めたジョセフは、かつてシャノンが目指していたオクラホマの土地を目指す人達を発見。オクラホマを目指すことに決める。そこではいくつかの土地の区画に立てられた旗を最初に手にした者がその土地を手に入れるというレースが行われていた。ジョセフはレースへの参加を決める。そこには怪我の癒えたシャノンとスティーブン、そしてシャノンの両親も来ていた。レース当日。暴れ馬を何とか乗りこなすジョセフは、スティーブンが目を付けていた土地を奪うことに成功。怒ったスティーブンが馬に乗ってジョセフに襲いかかろうとしたため、ジョセフはスティーブンに飛びかかって落下。地面の岩に後頭部を打ち付け、倒れてしまう。シャノンはジョセフに駆け寄り、シャノンの行為に失望したスティーブンは土地を諦めて去って行く。ジョセフはシャノンに愛を告白し、息絶える。シャノンは自分も初めて会ったときからずっと好きだったと告げて悲しむが、ジョセフは息を吹き返す。二人は口づけを交わすと、二人で地面に旗を突き立てるのだった。

当時夫婦だったトム・クルーズとニコール・キッドマンの共演作品。当時はまだアクションスターというイメージではなかったが、ボクシングのシーンでは鍛えた肉体を疲労している。
内容的に、大草原を旅するロードムービーのような展開を想像していたが、移動のシーンは限定的で大草原のシーンも後半のみ。街のシーンが長いのは意外だった。アメリカンドリームを実現する運命の浮沈、そして男女二人の出会いと別れの起伏の双方が激しく変化するダイナミックな作品。

【5段階評価】4

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