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2020年8月 4日 (火)

(2134) 暁に祈れ

【監督】ジャン=ステファーヌ・ソベール
【出演】ビリー・ムーア、ポンチャノック・マーブグラン、パンヤ・イムアンパイ、ビリー・ムーア
【制作】2017年、アメリカ、イギリス、フランス、中国

麻薬漬けになって刑務所入りしたボクサーが復活する過程を描いた実話に基づく作品。

イギリス人のボクサー、ビリー・ムーア(ジョー・コール)はタイで成り上がろうとするが試合ではぱっとせず、麻薬に浸った生活を送り、警察に逮捕されてしまう。タイ語も分からないまま、彼はタイの刑務所に送り込まれる。刑務所の大部屋では新人のリンチやレイプがはびこり、所内では自殺や殺人が起きたり、看守は鎮静剤を求めると当然のように賄賂を要求するなど地獄のような環境。ビリーは看守の一人に、麻薬と引き換えにイスラム教徒を殴るよう命令され、堕落していく。しかしビリーは所内にボクシングのトレーニング施設があることを知り、購買係をしているレディボーイ(トランスジェンダーの男性)のフェイム(ポンチャノック・マーブグラン)からたばこを融通してもらい、コーチに賄賂として渡してボクシングを始める。紆余曲折がありながらも腕を上げ、プリーチャー所長(ビタヤ・パンスリンガム)から対外試合の選手に指名される。ところが麻薬と酒と体への負担からビリーの体はぼろぼろになっており、ビリーはトイレで血を吐く。これ以上攻撃を受けたら命はないと医者に宣告されるが、囚人のボス、ゲン(パンヤ・イムアンパイ)から借金返済のため試合に出るよう脅され、ビリーは試合に臨む。
対戦は一進一退だったが、ビリーの肘打ちが相手にヒットし、ノックアウト勝ち。勝者となるビリーだったが、その場で血を吐いて倒れ、病院に担ぎ込まれる。目が覚めたビリーは、看護師に付き添われてトイレに行くが、トイレを出ると看護師はいない。足に鎖は付けられていたが病院のパジャマで見えないため、ビリーはそのまま病院を抜け出てしまう。街をさまようビリーは廃線のレールの上にたたずみ、病院に戻る。脱走の道ではなく、刑期を終える道を選んだのだった。ビリーは2010年に出所し、麻薬を立つ努力を続けるのだった。

オープニングは、試合直前のボクシング選手が入念なマッサージを受けるシーン。いかにも映画らしい映像。続く試合のシーンは、どうやって撮影しているのかと思うぐらい、選手の目線と俯瞰の目線が入れ替わり、選手の生々しい息づかいが耳元で聞こえるような迫力。この選手が、麻薬を吸っているところを警察に踏み込まれ、刑務所に送り込まれる。男の名前も国籍も説明がない。刑務所で名を聞かれて答えるシーンで、ようやく主人公の名前が分かる。映画には説明のためのシーンが避けがたくあり、そこが事件が起きる前の推理小説にも似た退屈さがあるのだが、本作にそれはない。ナレーションもなく、状況だけを描くという手法が、作品に圧倒的なリアリティを与えている。説明不足で話が進むのもまた、退屈さの原因になりがちだが、本作は映像のリアリティがそれを補ってあまりある。その後も、実際の刑務所を使い、元囚人を囚人役に当てて刑務所の状況を描写しているらしく、過酷な刑務所の状況をリアリティたっぷりに描いている。
恥ずかしながら本作が日本で公開されていることを知らなかったが、この名作を放映したSTAR CHANNEL 1に感謝したい。
ちなみにラストシーンで面会に現れるビリー・ムーアの父親は、ビリー・ムーア本人が演じていた。

【5段階評価】5

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