(1954) 東京暮色
【監督】小津安二郎
【出演】笠智衆、有馬稲子、原節子、山田五十鈴
【制作】1957年、日本
父と娘二人の家族に起きるできごとを描く人間ドラマ。
銀行員の杉山周吉(笠智衆)には二人の娘がいた。長女の孝子(原節子)は、父の勧めで文筆家の沼田康夫(信欣三)と結婚したが、折り合いが悪く2歳の娘を連れて父と暮らしており、次女の明子(有馬稲子)は父親に黙って知り合いに借金をお願いして回っていた。明子は木村憲二(田浦正巳)という若者と付き合って妊娠してしまい、中絶費用を工面しようとしていたのだった。明子は、時々顔を出す雀荘の女将、相島喜久子(山田五十鈴)が自分のことを調べていることを知り合いに聞かされ、彼女が物心の付く前に家を出てしまった母親ではないかと感じる。孝子は明子に黙って喜久子に会いに行き、明子に自分が母親だと言うな、と念を押す。明子はそれに気づいてしまい、喜久子に会って自分は誰の子供か、と問いかける。彼女は周吉が自分の父親なのか疑い始めていたのだ。喜久子は周吉が父親で間違いないと告げる。明子が妊娠したらしいことを噂に聞いていた喜久子はそのことを明子に聞くが、明子はそれには答えず、「お母さん嫌い! 」と叫んで出て行ってしまう。明子中華料理屋で一人、酒を飲む。そこに憲二が現れるが、明子は店を飛び出し、列車にはねられて命を落とす。孝子は喪服姿で喜久子のもとを訪れ、母親のせいで死んだ、と喜久子を責める。喜久子は東京にいるのが嫌になったと言って、夫(中村伸郎)から打診されていた北海道行きを承諾。夜行列車の出る日の昼、周吉の家を訪ねて、応対した孝子に明子に手を合わせたいと告げるが、孝子は受け入れず、喜久子の持ってきた花だけを受け取る。喜久子はその夜、夫とともに夜行列車で旅立つ。孝子の見送りを期待したが、彼女は来なかった。孝子は周吉に、沼田とやり直すと決意を告げる。片親だった明子は、母親がいなくて寂しかったのだと悟り、娘に同じ思いはさせたくないと思ったのだった。周吉は賛成し、手伝いを雇ってひとり暮らしを始めるのだった。
淡々と出来事が語られていくのだが、話は明快で分かりやすかった。号泣するほどの悲劇ではないが、終始、暗いムードで笑顔のシーンが少ない作品。
雀荘のシーンで、「イチニッパ」や「ゴナロク」などという、今の麻雀なら「イチサン」や「ゴッパ」という点数の発声が、時代を切り取っていて面白い。また、ヒョコタキっていうセリフがあるのだが、調べてみたものの意味が分からなかった。「誰勝ってんだい」と聞かれて「やっ子ちゃんよ。ヒョコタキよ」と答えているので、バカヅキみたいな意味だろうか。麻雀国語辞典に入れようかと思ったのだが。
【5段階評価】3
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